特許第5976110号(P5976110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5976110粘着剤組成物及びそれを用いた粘着テープ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976110
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及びそれを用いた粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20160809BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20160809BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20160809BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160809BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160809BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   C09J133/06
   C09J133/02
   C09J133/14
   C09J7/02 Z
   C09J11/06
   C09J11/04
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-522283(P2014-522283)
(86)(22)【出願日】2012年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2012066334
(87)【国際公開番号】WO2014002203
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145079
【氏名又は名称】株式会社寺岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】戸高 勝則
(72)【発明者】
【氏名】土屋 靖史
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−051894(JP,A)
【文献】 特開平08−003521(JP,A)
【文献】 実開昭62−157654(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数が4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)50〜90質量%、
カルボキシル基含有モノマー(A2)3〜20質量%、
水酸基含有モノマー(A3)3〜20質量%、及び、
炭素原子数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A4)3〜15質量%
を構成成分として含み、重量平均分子量が70万〜200万、理論Tgが−40℃以下である、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有するアクリル系共重合体(A)と、
架橋剤(B)と
を含有する粘着剤組成物であって、
カルボキシル基含有モノマー(A2)と水酸基含有モノマー(A3)の合計含有量が15質量%以上である粘着剤組成物。
【請求項2】
架橋剤(B)が、少なくともイソシアネート系架橋剤(B1)を含む請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
架橋剤(B)が、少なくともエポキシ系架橋剤(B2)を含む請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
遮光性フィラー又は顔料を含む請求項1から3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
基材の片面又は両面に、請求項1から4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する片面又は両面粘着テープ。
【請求項6】
粘着剤層の厚さが5〜100μmである請求項記載の片面又は両面粘着テープ。
【請求項7】
基材が、両面にスキン層を有する発泡体であり、該スキン層の厚さは発泡体の全体厚に対して0.5%〜15%であり、かつ該発泡体の厚さ方向の割裂力が15N/cm2以上である請求項5又は6に記載の片面又は両面粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性、耐荷重性、加工性、耐衝撃性、耐人工皮脂、耐人工汗油等の諸特性に優れた粘着剤組成物及びそれを用いた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットPCの普及に伴い、その使用環境が多岐に渡って来ている。例えば、水没時に製品内部に水が浸入するのを防ぐ為に、カバーパネルと筐体の間には防水性が必要とされる。また、直接人の肌に触れ高温多湿下で使用されるので、耐皮脂性及び耐汗油性が必要とされる。また、製品のスリム化に伴い、カバーパネルと筐体の固定に用いられる粘着テープは細幅化されて来ているので、細幅の加工性と十分な耐荷重性が必要とされる。さらに、パソコンや大型テレビのLCDと筐体側ガイドフレームを固定する際に使用される粘着テープは意匠性を考慮して細幅化が進んでいるので、この用途に使用される材料であるSUS304、ガルバリウム鋼板、EGI鋼板などの金属類や、ポリカーボネート板、アクリル板、ガラス板に対する耐荷重性が必要とされる。
【0003】
特許文献1には、発泡体基材の両面に、アクリル系ポリマーを主成分とするアクリル系粘着剤層が設けられた両面粘着テープが記載されている。また、特許文献2には、黒色着色されている発泡体基材の両面に、アクリル系ポリマーを主成分とするアクリル系粘着剤層が設けられた携帯電話のレンズ固定用両面粘着テープが記載されている。
【0004】
特許文献3には、発泡体基材の両面に、炭素数4〜12の(メタ)アクリレート及びカルボキシル基を有するビニルモノマーをモノマー成分として有するアクリル系共重合体と、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂とを含有するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する両面粘着テープが記載されている。
【0005】
特許文献4には、携帯電子機器の部品固定用に用いられる防水用両面粘着テープであって、発泡体基材の両面にアクリル系共重合体と粘着付与樹脂とを含有する粘着剤層が設けられた両面粘着テープが記載されている。
【0006】
特許文献5には、ポリエチレン発泡体からなる基材の両面にアクリル共重合体と粘着付与樹脂とを含有する粘着剤層が設けられた両面粘着テープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−122166号公報
【特許文献2】特許4842358号公報
【特許文献3】特開2010−260880号公報
【特許文献4】特許4623198号公報
【特許文献5】特開2009−084367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、近年の製品の小型化、薄型化、大画面化に伴い細幅の粘着テープであっても十分な防水性や耐荷重性等の特性が必要になる点に鑑み、上述した粘着テープに関する従来技術を更に改良するものである。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、防水性、耐荷重性、加工性、耐衝撃性、耐人工皮脂、耐人工汗油等の諸特性に優れた粘着剤組成物及びそれを用いた粘着テープを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、炭素原子数が4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)50〜90質量%、
カルボキシル基含有モノマー(A2)3〜20質量%、
水酸基含有モノマー(A3)3〜20質量%、及び、
炭素原子数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A4)3〜15質量%
を構成成分として含み、重量平均分子量が70万〜200万、理論Tgが−40℃以下である、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有するアクリル系共重合体(A)と、
架橋剤(B)と
を含有する粘着剤組成物であって、
カルボキシル基含有モノマー(A2)と水酸基含有モノマー(A3)の合計含有量が15質量%以上である粘着剤組成物である。
【0011】
また本発明は、基材の片面又は両面に、本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する片面又は両面粘着テープである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着剤組成物は、吸水性成分を比較的多く含むにもかかわらず防水性に優れており、さらに耐荷重性、加工性、耐衝撃性、耐人工皮脂、耐人工汗油等の諸特性も優れている。そして、本発明の片面又は両面粘着テープは上記各特性に優れるので、そのような特性が必要な分野における様々な用途に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例の耐荷重性の測定法を説明する為の模式図である。
図2】実施例の割裂力の測定法を説明する為の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)と架橋剤(B)を含有する組成物である。
【0015】
アクリル系共重合体(A)は、以下に説明する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)、カルボキシル基含有モノマー(A2)、水酸基含有モノマー(A3)及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A4)を構成成分として含む、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有するアクリル系重合体である。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)は、炭素原子数が4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0017】
カルボキシル基含有モノマー(A2)の具体例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシ−1−ブテン、2−カルボキシ−1−ペンテン、2−カルボキシ−1−ヘキセン、2−カルボキシ−1−ヘプテンが挙げられる。カルボキシル基含有モノマー(A2)は、防水性及び耐荷重性を向上する為の成分である。カルボキシル基含有モノマー(A2)の含有量が本発明の範囲よりも低いと、十分な防水性及び耐荷重性が得られない。
【0018】
水酸基含有モノマー(A3)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A4)は、炭素原子数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。中でも、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
アクリル系共重合体(A)の構成成分(単量体単位)100質量%中、成分(A1)の含有量は50〜90質量%(好ましくは50〜80質量%)、成分(A2)の含有量は3〜20質量%(好ましくは3〜12質量%)、成分(A3)の含有量は3〜20質量%(好ましくは3〜18質量%)。成分(A4)の含有量は3〜15質量%(好ましくは3〜12質量%)である。また成分(A2)と成分(A3)の合計含有量は、好ましくは13質量%以上である。
【0021】
アクリル系共重合体(A)は、少なくとも以上説明した成分(A1)〜(A4)を共重合させることにより得られる。重合方法は特に限定されないが、ポリマー設計が容易な点からラジカル溶液重合が好ましい。またアクリル系共重合体(A)とそのモノマーとからなるアクリルシロップをまず調製し、このアクリルシロップに架橋剤(B)と追加の光重合開始剤を配合して重合させても良い。
【0022】
アクリル系共重合体(A)の製造には、本発明の効果を損なわない範囲内で、成分(A1)〜(A4)以外のモノマーを共重合させても良い。
【0023】
アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は70万〜200万、好ましくは70〜150万である。これら範囲の下限値は、耐荷重性及び加工性の点で意義が有る。また上限値は粘着剤組成物の塗工性の点で意義が有る。この重量平均分子量はGPC法により測定される値である。
【0024】
アクリル系共重合体(A)の理論Tgは−40℃以下、好ましくは−50℃〜−75℃である。この理論TgはFOXの式により算出される値である。
【0025】
本発明においては、以上説明したアクリル系共重合体(A)を樹脂成分として用いるが、本発明の効果を損なわない範囲内において他の種類の樹脂成分を併用することもできる。ただし、ロジン系樹脂は含まないことが好ましい。ロジン系樹脂を併用すると、粘着剤中の低分子量分が増えて耐荷重性や耐人工皮脂性が低下してしまうからである。
【0026】
本発明に用いる架橋剤(B)は、アクリル系共重合体(A)と反応して架橋構造を形成する為に配合される化合物である。特に、アクリル系共重合体(A)のカルボキシル基及び/又は水酸基と反応し得る化合物が好ましい。架橋剤(B)の配合量は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.001〜1質量部である。
【0027】
架橋剤(B)は、イソシアネート系架橋剤(B1)又はエポキシ系架橋剤(B2)、若しくはその両方を含むことが好ましい。これにより、防水性、耐荷重性、加工性、耐衝撃性、耐人工皮脂、耐人工汗油等の諸特性に優れた粘着テープが得られる。
【0028】
イソシアネート系架橋剤(B1)の具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びこれらの変性プレポリマーが挙げられる。これらは二種以上を併用しても良い。イソシアネート系架橋剤(B1)の配合量は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して好ましくは0.02〜1質量部、より好ましくは0.05〜0.2質量部である。
【0029】
エポキシ系架橋剤(B2)の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等のエポキシ基を2個以上有する化合物が挙げられる。これらは二種以上を併用しても良い。エポキシ系架橋剤(B2)の配合量は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して好ましくは0.001〜0.5質量部、より好ましくは0.001〜0.1質量部である。
【0030】
本発明の粘着剤組成物は、更に遮光性フィラー又は顔料を含んでいても良い。遮光性フィラーの具体例としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒色無機フィラー等が挙げられる。顔料の具体例としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。
【0031】
本発明の粘着テープは、基材の片面又は両面に本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する。粘着剤層の厚さは、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜100μmである。
【0032】
粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物を架橋反応させることにより形成できる。例えば、粘着剤組成物を基材上に塗布し、加熱又は紫外線照射により架橋反応させて基材上に粘着剤層を形成できる。また例えば、粘着剤組成物を離型紙又はその他のフィルム上に塗布し、加熱又は紫外線照射により架橋反応させて粘着剤層を形成し、この粘着剤層を基材の片面又は両面に貼り合せることもできる。
【0033】
粘着剤組成物の塗布には、例えば、ロールコーター、ダイコーター、リップコーター等の塗布装置を使用できる。塗布後に加熱する場合は、加熱による架橋反応と共に粘着剤組成物中の溶剤も除去できる。
【0034】
粘着テープの基材の具体例としては、発泡体(例えば、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリウレタンフォーム)、プラスチックフィルム、光学用フィルム(例えば、フィルム導光板、反射防止フィルム、導電性フィルム、視野角拡大フィルム、位相差フィルム、偏光板)が挙げられる。
【0035】
粘着テープの基材としては、発泡体が好ましく、両面にスキン層を有する発泡体がより好ましい。この発泡体は、好ましくは0.05〜2.0mm厚のテープ状物である。スキン層の厚さは、発泡体の全体厚に対して好ましくは0.5%〜15%である。両面にスキン層を有する発泡体を用いると、粘着剤層の表面状態が均一になり、粘着テープを強く巻き取ることが可能となり、また粘着剤層の表面の平滑性に優れるので被着体への密着性が向上し、その結果、より優れた防水性と耐荷重性が発現する。両面にスキン層を有する発泡体の厚さ方向の割裂力は、15N/cm以上であることが好ましい。これにより、更に優れた耐荷重性が発現する。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。以下の記載において「部」は質量部、「%」は質量%を意味する。
【0037】
<製造例1〜17(アクリル系共重合体(A)の調製)>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた反応装置に、表1に示す量(%)の成分(A1)〜(A4)と、酢酸エチル、連鎖移動剤としてn−ドデカンチオール及びラジカル重合開始剤としてラウリルパーオキサイド0.1部を仕込んだ。反応装置内に窒素ガスを封入し、攪拌しながら窒素ガス気流下で68℃、3時間、その後78℃、3時間で重合反応させた。その後、室温まで冷却し、酢酸エチルを添加した。これにより、固形分濃度30%のアクリル系共重合体(A)を得た。
【0038】
<実施例1〜13及び比較例1〜11(粘着テープの作製)>
表2に示す通り、製造例1〜17で得たアクリル系共重合体(A)の固形分100部に対して、架橋剤(B)としてイソシアネート系架橋剤(B1)又はエポキシ系架橋剤(B2)を加えて混合し、粘着剤組成物を調製した。
【0039】
この粘着剤組成物を、シリコーン処理された離型紙上に乾燥後の厚みが0.05mmになるように塗布した。次いで、120℃で溶媒を除去・乾燥すると共に架橋反応させて、粘着剤層を形成した。この粘着剤層を、両面に約0.005mm厚のスキン層を有するPE発泡体(0.2mm厚)の両面に貼り合せた。そして23℃、50%Rhで7日間養生して、粘着テープを得た。
【0040】
<製造例18:(アクリルシロップの調製)>
攪拌機、温度計、還流冷却器、UVランプ及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、表1に示す量(%)の成分(A1)〜(A4)と、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.01部及び光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名ダロキュア1173)0.01部を添加し、窒素雰囲気下でUV光を照射してアクリルシロップを調製した。アクリルシロップ中のアクリルポリマー濃度は約13%、重量平均分子量は約150万であった。
【0041】
<実施例14(粘着テープの作製)>
製造例18で得たアクリルシロップ100部に対して、架橋剤(B)としてヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名NKエステルA−HD−N)0.08部、追加の光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名ダロキュア1173)0.5部を添加して均一に撹拌した。撹拌混合時に混入した空気泡を脱泡操作により除去して、UV硬化型粘着剤組成物を調製した。
【0042】
このUV硬化型粘着剤組成物を、表面を離型剤処理した厚さ0.05mのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に硬化後の厚さが0.05mmになるように塗布した。その上を厚さ50μmのPETフィルムで被覆し、紫外線を照射して粘着剤層を形成した。この粘着剤層を、両面に約0.005mm厚のスキン層を有するPE発泡体(0.2mm厚)の両面に貼り合せた。そして23℃、50%Rhで7日間養生して、粘着テープを得た。
【0043】
<実施例15(粘着テープの作製)>
実施例1に記載の粘着剤組成物を、両面に約0.20mm厚のスキン層を有するPP発泡体(2.0mm厚)の両面に貼り合せた。そして23℃、50%Rhで7日間養生して、粘着テープを得た。
【0044】
<参考例1(粘着テープの作製)>
実施例1に記載の粘着剤組成物を、両面にスキン層を有しないPE発泡体の両面に貼り合せた。そして23℃、50%Rhで7日間養生して、粘着テープを得た。
【0045】
<参考例2(粘着テープの作製)>
実施例1に記載の粘着剤組成物を、両面にスキン層を有しないウレタンフォーム発泡体の両面に貼り合せた。そして23℃、50%Rhで7日間養生して、粘着テープを得た。
【0046】
【表1】
表1中の略号は、以下の通りである。
「2−EHA」:2−エチルヘキシルアクリレート、
「BA」:n−ブチルアクリレート、
「MA」:メチルアクリレート、
「AA」:アクリル酸、
「2−HEA」:2−ヒドロキシエチルアクリレート。
【0047】
【表2】
表2中の略号は、以下の通りである。
「コロネートL」:日本ポリウレタン社製イソシアネート系架橋剤、
「TETRAD−C」:三菱瓦斯化学社製エポキシ系架橋剤。
【0048】
<評価試験>
各実施例及び比較例で得た粘着テープを、以下の方法で評価した。結果を表3〜5に示す。
【0049】
(防水性)
粘着テープを幅5mmで40mm×50mmの枠状に裁断し、一方の離型紙を剥離して2.0mm厚のガラス板に貼り合せ、更にもう一方の離型紙を剥離して2.0mm厚のガラス板を貼り合せた。このサンプルに対して、オートクレーブを用いて23℃で1時間の加圧処理(0.5Mpa)を行い、その後JIS IPX7(防水規格)に基づき一時的に水没させて、以下の基準で防水性を評価した。また、このサンプルに対して、オートクレーブを用いて23℃で1時間の加圧処理(0.1Mpa、0.25Mpa、0.5Mpa)を行い、その後JIS IPX8(防水規格)に基づき水深10cmの水中に沈め、以下の基準で防水性を評価した。
「○」:枠内に水が浸入しなかった。
「×」:枠内に水が浸入した。
【0050】
(耐人工皮脂・人工肝油性)
粘着テープを幅5mmで40mm×50mmの枠状に裁断し、一方の離型紙を剥離して2.0mm厚のガラス板に貼り合せ、更にもう一方の離型紙を剥離して2.0mm厚のガラス板を貼り合せた。そして、オートクレーブを用いて23℃、0.5Mpa、1時間の加圧処理を行った。このサンプルを、人工皮脂(トリオレイン33.3%、オレイン酸20.0%、スクワレン13.3%、ミリスチルオクタドデシレート33.4%)又は人工汗油に1時間浸漬した。その後サンプルを取り出し、85℃、85%Rhの雰囲気下で72時間静置し、その後通常の雰囲気下に240時間放置した。そのサンプルを目視観察し、以下の基準で耐人工皮脂・人工肝油性を評価した。
「○」:テープの剥れ無し。
「×」:テープの剥れ有り。
【0051】
(耐荷重性)
粘着テープを25mm×25mmのサイズに裁断し、一方の離型紙を剥離した。そして図1示すように、フック2に粘着テープ1(基材1a、粘着層1b)を貼り合せ、次いでもう一方の離型紙を剥離し、被着体3に貼り合せた。この被着体3としては、SUS304、ポリカーボネート板、アクリル板、EGI鋼板、ガルバリウム鋼板、ガラス板を用いた。そしてフック2に1kgfの荷重(錘4)をかけ、85℃で60分間保持し、以下の基準で耐荷重性を評価した。
「○」:60分間フック2は落下しなかった。
「×」:60分以内にフック2が落下した。
【0052】
(加工性)
粘着テープを5mm×125mmのサイズで10本に細断した状態のまま、65℃、80%Rh雰囲気下に1日放置した。そして1本毎に180°方向に離型紙ごと剥離し、隣接した部分との癒着を目視にて確認し、以下の基準で加工性を評価した。
「○」:隣接した部分との癒着がほとんど無く、隣接部分を剥すことなく剥離できた。
「×」:隣接した部分に著しい癒着があり、隣接部分が同時に剥れてしまった。
【0053】
(耐衝撃性)
粘着テープを幅5mmで40mm×50mmの枠状に裁断し、一方の離型紙を剥離して、4mm厚のポリカーボネート板に貼り合せ、更にもう一方の剥離紙を剥離し、4mm厚のアクリル板に貼り合せ、20分間養生した。このサンプルを23℃、50%Rh下で、デュポン式衝撃試験機にて300gの錘を高さ600mmから落下させ、テープが剥離した時の落下させた回数を測定し、以下の基準で耐衝撃性を評価した。
「○」:テープが剥離した時に錘を落下させた回数が5回以上。
「×」:テープが剥離した時に錘を落下させた回数が5回未満。
【0054】
(発泡体のスキン層厚さ)
175倍のマイクロスコープにて、基材である発泡体のスキン層の厚さを測定した。
【0055】
(発泡体の厚さ方向の割裂力)
粘着テープを25mm×25mmにサイズに裁断し、一方の離型紙を剥離した。そして図2示すように、フック2に粘着テープ1(基材1a、粘着層1b)を貼り合せ、次いでもう一方の離型紙を剥離し、被着体3に貼り合せた。そしてフック2を上方向に50mm/minの速度で引張り、発泡体が切れた時の強度[N/cm]を測定した。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
表3〜5の評価結果から明らかなように、両面にスキン層を有する発泡体に本発明の粘着剤組成物を両面に塗工した各実施例の粘着テープは、防水性、耐荷重性、加工性、耐衝撃性、耐人工皮脂、耐人工汗油等の諸特性について優れていた。
【符号の説明】
【0059】
1 粘着テープ
1a 基材
1b 粘着層
2 フック
3 被着体
4 錘
図1
図2