【課題を解決するための手段】
【0023】
前述のような課題を解決するべく、本発明者等が流動焼結炉の出側における焼却灰の付着、堆積の発生状況について、調査、検討を重ねた。なおここで、実際の焼却灰の付着、堆積の発生状況は、焼却炉の運転を停止して、流動焼結炉の出側の排ガス流路部品を分解して調べるため、付着、堆積した焼却灰は、高温によって溶融した後、冷却過程で凝固した状態、すなわちいわゆる焼結された状態で調べることになる。そしてこのような焼結灰の焼結状況について調査、検討を行った結果、次のような知見が得られた。
【0024】
すなわち、先ず第1の知見として、焼却灰の焼結は、一般的に下水焼却灰の融点として知られている1100℃以上と比較して低い900℃以下で起こっていることが判明した。
また第2の知見として、焼却炉に供給される脱水汚泥中のリン濃度が高くなるほど焼結が生じやすくなることが判明した。
【0025】
ここで、既に述べたように従来の一般的な汚泥の焼却のための管理では塩基度(CaO/SiO
2)による管理を行っており、また特許文献1に示されるような管理指標値Aも、Al
2O
3などの他成分も加味してはいるが、基本的にはCaO、SiO
2を主体とする成分比とされている。しかしながら、本発明で問題としている焼却灰の焼結は、一般のSiO
2やCaO、Al
2O
3などが灰成分の主体である場合の溶融温度よりかなり低温(ここでは、900℃以下)の温度域で起こっている。SiO
2や、Al
2O
3などの高融点物質の溶融は、900℃程度以下の温度域では生じないことから、これらの物質は840〜900℃の焼却温度では主体的な反応物質としては働かないものと考えられる。そしてそのため、従来の一般的な汚泥の焼却のための塩基度(CaO/SiO
2)による管理や、特許文献1に示されるような指標値Aによる汚泥管理では、840〜900℃程度の温度域での運転時における焼却灰の付着、堆積による詰りなどを確実かつ安定的に、しかも安価に防止することが困難であったと考えられる。
【0026】
そこで、塩基度(CaO/SiO
2)や、それに類する特許文献1に示されるような管理指標値Aとは全く異なる指標を用いて、汚泥成分を管理する必要があると本発明者等は考えた。そして、前述のような第1〜第3の知見に基づき、流動焼却炉に供給された汚泥中のリン酸が840〜900℃程度の温度域まで加熱される間の昇華もしくは分解、それに伴う他のリン酸化合物への変化、さらにその溶融といった、リン酸の挙動が焼結灰の粘着性増加(焼結)に大きな影響を与えていると考え、種々実験検討を重ねた。その結果、流動焼却炉内で焼却される汚泥の成分として、リン酸に対して、塩基物質(とりわけAl
2O
3、Fe
2O
3、Na
2O
3、K
2O、CaO、MgO)を充分に含有させておくことにより、840〜900℃程度の温度域で溶融しやすいリン化合物の生成を抑制し、前述の問題を解決し得ることを見出した。
【0027】
ここで、リン化合物としては多種多様のものがあり、リン化合物の沸点・融点も多様である。しかもあるリン化合物が分解して他のリン化合物に変化することによって、その沸点・融点も変化することが知られている。例えば生活排水などの下水中に含まれることが多いリン化合物や、その加熱による昇華・分解によって生成されると考えられるリン化合物の代表的な例について、それらの沸点・融点を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示しているように、五酸化リン、リン酸、リン酸二水素塩やリン酸一水素塩などのリン酸化合物は、600℃程度以下の比較的低温度域で昇華したり分解したりして、他の物質と反応する。このとき、塩基類が十分存在しない状態では、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウムなど、融点が600〜900℃程度の中温度域にあるポリリン酸アルカリ塩を生成することが多い。
【0030】
このことから、流動焼却炉では、炉内に供給された汚泥が温度上昇して、先ず汚泥中に含まれる600℃以下の低沸点の遊離リン酸やリン酸アルカリ塩などのリン酸化合物が、炉内で強反応物質として他分子と反応し、中温度域(600〜900℃程度)の融点を有するポリリン酸アルカリ塩などを生成し、さらにこのような中温度域(600〜900℃程度)の融点のリン酸化合物の生成量が多くなれば、その灰成分中の化合物の中温度域での溶融によって焼結灰粒子の粘着性が増し、焼却炉出口側において排ガス流路内面に付着しやすくなるとともに、焼結灰粒子同士が結合しやすくなり、堆積が進行しやすくなってしまうものと考えられる。このことは、前述の第1〜第3の知見とよく符合する。
【0031】
また一方、リン酸は、塩基類が十分に存在すれば、900℃程度以上の比較的融点の高いリン酸塩、例えば表1に示したリン酸アルミニウム(AlPO
4)や、リン酸カリウム(K
3PO
4)を生成することが知られている。そこで、汚泥中のリン酸に対して塩基類が充分に存在していれば、これらの高融点のリン酸塩に変化して、高温でも焼却灰の溶融が開始して焼却灰の粘着性が増すことを防止可能となると考えられる。
【0032】
しかしながら実際上は、下水の生物学的リン処理過程(活性汚泥処理過程)においては、リン含有量が高くなるほど、結果的に、リン(リン酸)に対する塩基物質の割合が低下する。このことが、実機の焼却炉内では、リン酸、リン酸二水素塩やリン酸一水素塩の形態から、中温度域(600〜900℃程度)の融点を有するポリリン酸アルカリ塩などを生成しやすい状況を招き、焼結灰の溶融温度を低下させるものと考えた。
【0033】
そしてこれらの知見・検討から、流動焼却炉で焼却される汚泥中に含まれるリン(リン酸)に対する塩基物質の量を予め増加させておけば、前述の問題を解決し得ると考えた。そしてさらに実験、検討を重ねた結果、汚泥中における塩基物質類のうちでも、特にNa、K、Ca、Mg、Al、Fe、そのほかCu、Zn,Ba等の各イオンを含有する塩基物質(例えばK
2O、Na
2O、CaO、MgO、Al
2O
3、およびFe
2O
3等、あるいはこれらのほか、更にCuO,ZnO、BaO等)のリン酸PO
4に対する割合を評価値(指標)として用いれば、前述のような840〜900℃の温度域における焼結灰の付着、堆積のしやすさを評価し得ることを見出した。すなわち、840〜900℃の温度域における焼結灰の付着、堆積のしやすさは、焼却原料(脱水汚泥)成分中のリン量(mol×3 価)と、塩基類を形成するNa、K、Ca、Mg、Al、Feの総量(mol×価数の総量)、もしくはNa、K、Ca、Mg、Al、Fe、Cu、Zn、Baの総量(mol×価数の総量)との比によって予測し得ることを見出した。
【0034】
具体的には、脱水汚泥中に含有される各成分の割合をmol換算して求めた下記(1)式のX1の値、もしくは下記(2)式のX2の値(以下これらを評価値X1、評価値X2と記す)
X1={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)}/P(mol×3)・・・(1)
X2={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)+Cu(mol)+Zn(mol)+Ba(mol×2)}/P(mol×3)・・・(2)
が、1.0以上であれば、840〜900℃の温度域において焼結灰が溶融しにくくなって、その付着、堆積の問題が生じにくくなること、さらに評価値X1もしくはX2が1.05以上であれば、より確実かつ安定して付着、堆積を防止し得ることを見出した。
そしてさらにその評価値Xを用いて、焼却炉で焼却する脱水汚泥の成分を調整すれば、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0035】
具体的には、本発明の基本的な態様(第1の態様)の下水汚泥の焼却処理方法は、
少なくとも余剰汚泥を含む脱水汚泥を、流動焼却炉により焼却処理する下水汚泥の焼却処理方法において、
焼却処理温度を840〜900℃の範囲内の温度とし、
かつ流動焼却炉に供給される脱水汚泥中の各成分のうちのNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とを、脱水汚泥を流動焼却炉に供給する前に分析して、下記の(1)式によってX1の値を求め、そのX1の値が1.0以上となるように、流動焼却炉で焼却される脱水汚泥の成分を調整し、
さらに流動焼却炉から排出された焼却灰を、該焼却灰中に含まれるリン成分を再利用するために捕集することを特徴とする下水汚泥の焼却処理方法。
X1={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)}/P(mol×3)・・・(1)
【0036】
さらに本発明の第2の態様の下水汚泥の焼却処理方法は、前記第1の態様の下水汚泥の焼却処理方法において、
前記流動焼却炉に供給される脱水汚泥中の各成分のうちの前記Na、K、Ca、Mg、Al、Feのほか、更にCu、Zn、Baのそれぞれの含有量と、前記Pの含有量とを、脱水汚泥を流動焼却炉に供給する前に分析して、前記(1)式によるX1の値に代えて下記の(2)式によって求められるX2の値が1.0以上となるように、流動焼却炉で焼却される脱水汚泥の成分を調整することを特徴とするものである。
X2={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)+Cu(mol)+Zn(mol)+Ba(mol×2)}/P(mol×3)・・・(2)
【0037】
また本発明の第3の態様の下水汚泥の焼却処理方法は、前記第1、第2のいずれかの態様の下水汚泥の焼却処理方法において、
前記流動焼却炉から排出されて捕集された焼却灰中からリン成分を回収することを特徴とするものである。
【0038】
また本発明の第4の態様の下水汚泥の焼却処理方法は、前記第3の態様の下水汚泥の焼却処理方法において、
前記リン成分を回収するにあたっては、
焼却灰に酸性溶液を加えてリン酸及び金属成分を溶出させ、リン酸を回収する第1の回収方法と、
焼却灰をアルカリ性反応液と混合し、焼却灰中のリンを液中に抽出したのち、リン抽出液と処理灰とを含む液を固液分離し、分離されたリン抽出液にカルシウム分を加えてリン酸カルシウム結晶を取り出す第2の回収方法と
のうちのいずれか1の回収方法を適用することを特徴とするものである。
【0039】
さらに本発明の第5の態様の下水汚泥の焼却処理方法は、前記第1〜第4のいずれかの態様の下水汚泥の焼却処理方法において、
前記X1もしくはX2の値が1.0未満である場合に、前記脱水汚泥を、少なくともFeイオン、Alイオン、Caイオンのうちのいずれか1種以上を含有する塩基物質の添加もしくは増量によって調整することを特徴とするものである。
【0040】
また本発明の第6の態様の下水汚泥の焼却処理方法は、前記第5の態様の下水汚泥の焼却処理方法において、
前記塩基物質が、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第2鉄、炭酸カルシウム、消石灰、及び生石灰のうちのいずれか1以上を含む物質であることを特徴とするものである。
【0041】
ここで、前記脱水汚泥は、余剰汚泥と生汚泥とが混合されたものであってもよい。
【0042】
また本発明の第7の態様の下水汚泥の焼却処理方法は、前記第1〜第6の態様のうちのいずれかの態様の下水汚泥の焼却処理方法において、
脱水汚泥中の各成分の前記分析を、期間を置いて行うことを特徴とするものである。
【0043】
上記のような汚泥焼却方法を用いた下水処理方法、すなわち流動焼却炉を適用した汚泥焼却工程を組み入れた下水処理方法の全体的なプロセスの態様としては、次の(a)〜(i)の態様が好適である。
【0044】
(a)少なくとも活性汚泥処理段階を含む水処理によって、下水を浄化処理するとともに、余剰汚泥を含む汚泥を水から分離、取り出すための水処理工程と、
前記水処理工程で分離、取り出された汚泥を濃縮し、脱水して脱水汚泥とする汚泥処理工程と、
前記脱水汚泥を流動焼却炉により焼却する汚泥焼却工程と
を有する下水の処理方法において、
前記流動焼却炉により、840〜900℃の範囲内の温度で脱水汚泥を焼却するにあたり、
流動焼却炉で焼却される脱水汚泥中の各成分のうちのNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とを、流動焼却炉に供給する前に分析し、前記(1)式によってX1の値を求め、そのX1の値が1.0以上となるように、前記水処理工程から汚泥処理工程を経て焼却工程に至るまでの間において汚泥の成分を調整し、
さらに、前記流動焼却炉から排出された焼却灰を、その焼却灰中に含まれるリン成分を再利用するために捕集する。
【0045】
(b)前記(a)の態様の下水処理方法において、
前記流動焼却炉に供給される脱水汚泥中の各成分のうちの前記Na、K、Ca、Mg、Al、Feのほか、更にCu、Zn、Baのそれぞれの含有量と、前記Pの含有量とから、前記(1)式によるX1の値に代えて前記(2)式によって求められるX2の値が1.0以上となるように、流動焼却炉で焼却される脱水汚泥の成分を調整する。
【0046】
(c)前記(a)の態様の下水処理方法において、
前記流動焼却炉から排出されて捕集された焼却灰中からリン成分を回収する。
【0047】
(d)前記(c)の態様の下水処理方法において、
前記リン成分を回収するにあたっては、
焼却灰に酸性溶液を加えてリン酸及び金属成分を溶出させ、リン酸を回収する第1の回収方法と、
焼却灰をアルカリ性反応液と混合し、焼却灰中のリンを液中に抽出したのち、リン抽出液と処理灰とを含む液を固液分離し、分離されたリン抽出液にカルシウム分を加えてリン酸カルシウム結晶を取り出す第2の回収方法と
のうちのいずれか1の回収方法を適用する。
【0048】
(e)前記(a)〜(d)のいずれかの態様の下水処理方法において、
流動焼却炉に供給する前の脱水汚泥のX1もしくはX2の値が1.0未満である場合に、前記水処理工程から汚泥処理工程を経て焼却工程に至るまでの間においてFeイオン、Alイオン、Caイオンのうちの1種以上を含有する塩基物質の添加、もしくはその塩基物質添加量の増量を行う。
【0049】
(f)前記(e)の態様の下水処理方法において、
前記水処理工程を実施するための水処理設備が、活性汚泥法によって排水を処理する反応槽と、その反応槽で反応した後の余剰汚泥を沈殿させる最終沈殿池とを含み、
かつ前記汚泥処理工程を実施するための汚泥処理設備が、汚泥を脱水する脱水機を含み、
前記最終沈殿池から余剰汚泥を引き抜いて前記脱水機に至らせるまでの間、もしくは前記脱水機から流動焼却炉内に至るまでの間の、いずれか1以上の箇所において前記塩基物質の添加、もしくはその塩基物質添加量の調整を行なう。
【0050】
(g)前記(e)の態様の下水処理方法において、
前記水処理工程を実施するための水処理設備が、物理的に排水から生汚泥を分離するための最初沈殿池と、活性汚泥法によって排水を処理する反応槽と、その反応槽で反応した後の余剰汚泥を沈殿させる最終沈殿池とを含み、
かつ前記汚泥処理工程を実施するための汚泥処理設備が、汚泥を脱水する脱水機を含み、
前記最初沈殿池から生汚泥を引き抜くとともに前記最終沈殿池から余剰汚泥を引き抜いて生汚泥と余剰汚泥を混合し、さらに前記脱水機に至らせるまでの間、もしくは前記脱水機から流動焼却炉内に至るまでの間の、いずれか1以上の箇所において前記塩基物質の添加、もしくはその塩基物質添加量の調整を行なう。
【0051】
(h)前記(e)〜(g)のいずれかの態様の下水処理方法において、
前記塩基物質が、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第2鉄、及び炭酸カルシウムのうちのいずれか1以上を含む物質である。
【0052】
(i)前記(a)〜(h)のいずれかの態様の下水処理方法において、
脱水汚泥中の各成分の前記分析を、期間を置いて行う。
【0053】
また一方、本発明の第8〜第11の各態様では、前述の下水汚泥の焼却処理方法を適用して下水を処理するための下水処理設備を規定している。
【0054】
すなわち本発明の第8の態様の下水処理設備は、
少なくとも活性汚泥処理段階を含む水処理によって、下水を浄化処理するとともに、余剰汚泥を含む汚泥を水から分離、取り出すための水処理設備と、
前記水処理設備で分離、取り出された汚泥を濃縮し、脱水して脱水汚泥とする汚泥処理設備と、
前記脱水汚泥を流動焼却炉により焼却する汚泥焼却設備と
を有する下水の処理設備において、
前記水処理設備は、活性汚泥法によって排水を処理する反応槽と、その反応槽で反応した後の余剰汚泥を沈殿させる最終沈殿池とを含み、
かつ前記汚泥処理設備が、汚泥を脱水する脱水機を含み、
前記最終沈殿池から余剰汚泥を引き抜いて前記脱水機に至らせるまでの間、もしくは前記脱水機から流動焼却炉内に至るまでの間の、いずれか1以上の箇所に、Feイオン、Alイオン、Caイオンのうちの1種以上を含有する塩基物質を添加するための添加装置が設けられており、
しかも前記汚泥処理設備と前記流動焼却炉との間に、脱水汚泥中のNa、K、Ca、Mg、Al、Fe、Cu、Zn、Baの各成分のうち少なくともNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とを分析するための分析装置が設けられており、
さらに、前記分析装置による分析結果に基づいて、前記(1)式によるX1の値もしくは前記(2)式によるX2の値を求める演算装置を有し、
前記演算装置によって求められたX1もしくはX2の値に応じて前記添加装置を制御するように構成し、
さらに前記流動焼却炉から排出された焼却灰を、その焼却灰中に含まれるリン成分を再利用するために捕集する集塵機を備えていることを特徴とするものである。
【0055】
また本発明の第9の態様の下水処理設備は、
少なくとも活性汚泥処理段階を含む水処理によって、下水を浄化処理するとともに、余剰汚泥を含む汚泥を水から分離、取り出すための水処理設備と、
前記水処理設備で分離、取り出された汚泥を濃縮し、脱水して脱水汚泥とする汚泥処理設備と、
前記脱水汚泥を流動焼却炉により焼却する汚泥焼却設備と
を有する下水の処理設備において、
前記水処理設備が、物理的に排水から生汚泥を分離するための最初沈殿池と、活性汚泥法によって排水を処理する反応槽と、その反応槽で反応した後の余剰汚泥を沈殿させる最終沈殿池とを含み、
かつ前記汚泥処理設備が、汚泥を脱水する脱水機を含み、
その汚泥処理設備には、前記最初沈殿池から生汚泥を引き抜くとともに前記最終沈殿池から余剰汚泥を引き抜いて生汚泥と余剰汚泥を混合し、さらに前記脱水機に至らせるまでの間、もしくは前記脱水機から流動焼却炉内に至るまでの間の、いずれか1以上の箇所に、Feイオン、Alイオン、Caイオンのうちの1種以上を含有する塩基物質を添加するための添加装置が設けられており、
しかも汚泥処理設備と前記流動焼却炉との間に、脱水汚泥中のNa、K、Ca、Mg、Al、Fe、Cu、Zn、Baの各成分のうち少なくともNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とを分析するための分析装置が設けられており、
さらに、前記分析装置による分析結果に基づいて、前記(1)式によるX1の値もしくは前記(2)式によるX2の値を求める演算装置を有し、
前記演算装置によって求められたX1もしくはX2の値に応じて前記添加装置を制御するように構成し、
さらに前記流動焼却炉から排出された焼却灰を、その焼却灰中に含まれるリン成分を再利用するために捕集する集塵機を備えていることを特徴とするものである。
【0056】
そしてまた本発明の第10の態様の下水処理設備は、第8、第9のいずれかの態様の下水処理設備において、
前記集塵機により捕集された焼却灰中からリン成分を回収するリン回収設備を備えていることを特徴とするものである。
【0057】
さらに本発明の第11の態様の下水処理設備は、第10の態様の下水処理設備において、
前記リン回収設備が、
焼却灰に酸性溶液を加えてリン酸及び金属成分を溶出させ、リン酸を回収する第1の回収設備と、
焼却灰をアルカリ性反応液と混合し、焼却灰中のリンを液中に抽出したのち、リン抽出液と処理灰とを含む液を固液分離し、分離されたリン抽出液にカルシウム分を加えてリン酸カルシウム結晶を取り出す第2の回収設備と
のうちのいずれか1の回収設備であることを特徴とするものである。
【0058】
ここで、前記添加装置は、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第2鉄、及び炭酸カルシウムのうちのいずれか1以上を含む物質を添加する装置であることが好ましい。