(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転体の軸方向に貫通したクーラント流通孔の先端側を開放する大径孔部、前記大径孔部に連設された小径孔部と前記大径孔部との境界に形成され、前記軸方向に直交する後端面、前記大径孔部の前記先端側に嵌入された筒状の固定部、に囲まれて形成された第一溝部と、
前記第一溝部の前記先端側の側面であり、前記固定部の端面に形成された第一シール面と、
前記軸方向に移動可能な状態で前記第一溝部に遊挿された円筒状のフロート部と、
前記第一シール面と密接可能な形状を有し、前記第一シール面と対向した前記フロート部の端面に形成された第二シール面と、
前記クーラント流通孔に遊挿され、前記クーラント流通孔と連通した流入口を有する筒状の挿入部から前記流入口と連通した状態で前記軸方向に延びた筒状の基部の外周面に周方向に形成された環状の第二溝部と、
前記第二溝部に配設され、外周面が前記フロート部の内周面に当接したOリングと
を具備することを特徴とするロータリーユニオンのクーラント防漏装置。
【背景技術】
【0002】
ロータリーユニオン10は、切削加工機等の工作機に取付けられ、被加工物を保持する回転チャック等の回転部分にクーラント、エアー等の流体を送給するものである。
図10,11に示すように、ロータリーユニオン10は、工作機の回転部分に接続される回転体20と、回転体20を回転可能に支持するハウジング30から主に構成されている。そして、ロータリーユニオン10は、回転体20とハウジング30のそれぞれに穿設されて連通したクーラント流通孔21と、複数の流通孔31を有している。これにより、クーラントやエアー等の複数の流体をクーラント流通孔21や複数の流通孔31に流通させて、工作機械の回転部分に送給することができる。
【0003】
ハウジング30は、筒状のハウジング本体40と、ハウジング本体40の端部に覆設された蓋体50から構成されている。蓋体50のハウジング本体40側には、環状の収容溝部51が設けられており、収容溝部51の中央部分である挿入部52には、蓋体50を貫通した流入口53が穿設されている。
【0004】
クーラント流通孔21は、回転体20を軸方向に貫通して穿設されている。そして、回転体20は、先端部22が蓋体50の収容溝部51に収容されている。このとき、挿入部52は、クーラント流通孔21に挿入され、流入口53とクーラント流通孔21が連通した状態になる。これにより、流入口53から流入したクーラントをクーラント流通孔21に流通させることができる。
【0005】
また、挿入部52の外径は、クーラント流通孔21の直径よりも小さく、挿入部52と回転体20の内周面との間には隙間が設けられている。これにより、回転体20の回転を阻害せずに、クーラントをクーラント流通孔21に流通させることができる。
【0006】
その一方で、上記構成により、クーラントを高圧で流入口53に流入させるとクーラントの一部が挿入部52と回転体20の内周面との隙間から漏出して収容溝部51内に流入する。このため、蓋体50には、収容溝部51内に流入したクーラントを排出する排出孔54が、側面から収容溝部51に貫通して設けられている。
【0007】
しかしながら、クーラント流通孔21内に気泡がある状態でクーラントを高圧で流入させた場合や、高圧で流通しているクーラントの流れを急激に止めた場合などに、所謂ウォータハンマ現象によりクーラント流通孔21内で大きな圧力上昇が起きることがある。これにより、クーラントが逆流し、挿入部52と回転体20の内周面との隙間から多量のクーラントが漏出する。そして、排出孔54の排出能力以上にクーラントが漏出した場合に、クーラントがハウジング本体40側に流入することがあった。これにより、流通孔31を流通する他の流体が汚染され、または流通が阻害されるという問題があった。
【0008】
そのため、従来のロータリーユニオン10では、挿入部52と回転体20との隙間の幅を調整することで、クーラントの漏出量を低減することを試みた。しかしながら、幅が小さくても隙間がある場合は上述のようにクーラントが漏出し、挿入部52を回転体20の内周面に当接させて隙間を無くした場合は回転体20の回転が阻害され、摩擦による発熱が問題になった。
【0009】
更に、クーラント流通孔21内にOリングを配設することにより、挿入部52と回転体20の内周面との隙間を無くすことこも試みられた。この場合は、回転体20が非常に高速で回転するためOリングが破損し、クーラントの漏出を防ぐことができなかった。従って、クーラントの漏出を十分に防ぐことができるロータリーユニオン10は従来なかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、回転体の回転を阻害せず、且つクーラントの漏出を低減できるロータリーユニオンのクーラント防漏装置の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明にかかるロータリーユニオンのクーラント防漏装置は、
「軸方向に貫通したクーラント流通孔を有する回転体の内周面に周方向に形成された環状の第一溝部と、
前記第一溝部に配設されたOリングと、
前記クーラント流通孔に遊挿され、前記クーラント流通孔と連通した流入口を有する筒状の挿入部の先端面から前記流入口と連通した状態で前記軸方向に延び、前記挿入部よりも外径が小さい筒状の基部の外周面、前記基部の先端の前記外周面に配設され、前記外周面よりも外径が大きい環状の固定部、及び前記挿入部の先端面、に囲まれて形成された第二溝部と、
前記第二溝部の前記挿入部側の側面であり、前記挿入部の先端面に形成された第一シール面と、
前記Oリングの内周面に外周面が当接し、前記軸方向に移動可能な状態で前記第二溝部に遊挿された円筒状のフロート部と、
前記第一シール面と密接可能な形状を有し、前記第一シール面と対向した前記フロート部の端面に形成された第二シール面とを具備する」ものである。
【0012】
本構成のロータリーユニオンのクーラント防漏装置(以下、単にクーラント防漏装置と称する場合がある)は、クーラント流通孔に遊挿された挿入部から筒状の基部がクーラント流通孔の軸方向に延びている。そして、挿入部の先端面と、基部の外周面と、基部の先端の外周面に配設された固定部に囲まれて第二溝部が形成されている。この第二溝部には、円筒状のフロート部が軸方向に移動可能な状態で遊挿されている。また、回転体の内周面に形成された第一溝部にOリングが配設されており、Oリングの内周面は、フロート部の外周面に当接している。つまり、フロート部は、Oリングに支持されて、第二溝部内で基部の外周面との間に隙間を有した状態になっている。
【0013】
本構成のクーラント防漏装置の流入口にクーラントを流入させた場合に、フロート部はクーラントにより第二溝部の第一シール面に押圧される。つまり、フロート部の第二シール面が第二溝部の第一シール面に密接して、フロート部と基部との隙間が閉塞される。そして、Oリングの内周面はフロート部の外周面に当接した状態であるため、回転体の内周面と基部の外周面との隙間がフロート部とOリングにより閉塞された状態になる。この状態で回転体を回転させると、フロート部はOリングに接触しているため、回転体と共に回転する。フロート部は円筒状であり、円環状の第二シール面が第一シール面に接触している面積が小さいため、摩擦抵抗も小さい。つまり、回転体の回転が阻害されず、摩擦による発熱も小さくなる。そして、回転体の回転時においてもフロート部は第一シール面に押圧された状態であるため、第一シール面と第二シール面の接触部分からクーラントが漏出しにくい。
【0014】
請求項2の発明にかかるロータリーユニオンのクーラント防漏装置は、上記構成において、
「前記基部と、前記固定部とが前記挿入部と別体で形成され、
前記基部の外周面と、前記外周面の前記固定部と反対側の端部に形成され、前記外周面よりも外径が大きい環状部と、前記環状部に連設され、前記流入口に嵌入される筒状の嵌入部とが一体で形成されて、
前記第二溝部が前記固定部、前記基部の外周面、及び前記環状部に囲まれて形成されており、
前記第一シール面が前記環状部の前記外周面側の端面に形成されている」ものである。
【0015】
本構成のクーラント防漏装置は、基部が挿入部と別体で形成されており、第一シール面が形成された環状部と、嵌入部を備えている。そして、基部は、嵌入部を流入口に嵌入させることにより、挿入部に取付けられている。基部が挿入部と別体であることにより、挿入部と異なる材料で基部を形成することができる。例えば、基部を挿入部より硬度の高い材料で形成した場合は、回転する第二シール面と密接する第一シール面が摩耗しにくくなる。
【0016】
請求項3の発明にかかるロータリーユニオンのクーラント防漏装置は、
「回転体の軸方向に貫通したクーラント流通孔の先端側を開放する大径孔部、前記大径孔部に連設された小径孔部と前記大径孔部との境界に形成され、前記軸方向に直交する後端面、前記大径孔部の前記先端側に嵌入された筒状の固定部、に囲まれて形成された第一溝部と、
前記第一溝部の前記先端側の側面であり、前記固定部の端面に形成された第一シール面と、
前記軸方向に移動可能な状態で前記第一溝部に遊挿された円筒状のフロート部と、
前記第一シール面と密接可能な形状を有し、前記第一シール面と対向した前記フロート部の端面に形成された第二シール面と、
前記クーラント流通孔に遊挿され、前記クーラント流通孔と連通した流入口を有する筒状の挿入部から前記流入口と連通した状態で前記軸方向に延びた筒状の基部の外周面に周方向に形成された環状の第二溝部と、
前記第二溝部に配設され、外周面が前記フロート部の内周面に当接したOリングとを具備する」ものである。
【0017】
本構成のクーラント防漏装置は、回転体の内周面に形成された第一溝部に円筒状のフロート部が遊挿されている。また、挿入部から延びた基部の外周面に第二溝部が形成されており、この第二溝部にOリングが配設されている。そして、フロート部の内周面は、Oリングの外周面と当接している。つまり、フロート部は、Oリングに支持されて、第一溝部内で回転体の内周面との間に隙間を有した状態になっている。
【0018】
本構成のクーラント防漏装置の流入口にクーラントを流入させた場合、フロート部はクーラントにより第一溝部の第一シール面に押圧される。つまり、フロート部の第二シール面と第一溝部の第一シール面が密接して、フロート部と回転体の内周面との隙間が閉塞される。そして、Oリングの外周面はフロート部の内周面に当接した状態であるため、基部の外周面と回転体の内周面との隙間が、フロート部とOリングにより閉塞された状態になる。この状態で回転体を回転させると、フロート部は第一溝部に遊挿された状態であり、Oリングに当接しているため回転しない。つまり、回転体のみが第一シール面と第二シール面とが当接した状態で回転する。この際、第一シール面と第二シール面との接触面積が小さく摩擦抵抗が小さいため回転体の回転が阻害されない。また、フロート部はクーラントにより第一シール面に押圧された状態であるため、第一シール面と第二シール面の接触部分からクーラントが漏出しにくい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の効果として、回転体の回転を阻害せず、且つクーラントの漏出を低減できるロータリーユニオンのクーラント防漏装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第一実施形態乃至第三実施形態であるロータリーユニオンのクーラント防漏装置1〜3について
図1〜9を用いて説明する。
【0022】
第一実施形態のクーラント防漏装置1を備えたロータリーユニオン10は、
図1〜5に示すように、クーラント防漏装置1以外の構成は、従来のロータリーユニオンと同様の構成である。ロータリーユニオン10は、軸方向に貫通したクーラント流通孔21を有する略円筒状の回転体20と、回転体20を回転可能に支持したハウジング30とで主に構成されている。ハウジング30は、筒状のハウジング本体40と、ハウジング本体40の端部に覆設された蓋体50から構成される。蓋体50のハウジング本体40側には、環状の収容溝部51と、収容溝部51の中央部分である挿入部52が設けられている。挿入部52には、蓋体50を貫通した流入口53が開口している。そして、収容溝部51には、回転体20の先端部22が収容されており、挿入部52がクーラント流通孔21に遊挿された状態になっている。つまり、クーラント流通孔21と流入口53が連通している。なお、回転体20とハウジング本体40は、ステンレスで形成されており、蓋体50はアルミニウムで形成されている。
【0023】
そして、本実施形態のクーラント防漏装置1は、蓋体50に基部61を備えている。基部61は、挿入部52と別体でステンレスで形成されており、略円筒状を呈している。基部61に形成された第二溝部69には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製で円筒状のフロート部66が遊挿されている。また、クーラント防漏装置1は、回転体20の内周面に周方向に形成された環状の第一溝部23に配設されたOリング24を備えている。Oリング24の内周面は、フロート部66の外周面に当接した状態になっている。
【0024】
基部61は、
図4に示すように、端部の外周面に形成された基部61よりも外径が大きい環状部63、及び環状部63に連設された円筒状の嵌入部65と一体で形成されている。そして、基部61の先端には固定部としてワッシャ64が取付けられている。つまり、環状部63と基部61の外周面とワッシャ64とで第二溝部69が構成されており、この第二溝部69にフロート部66が遊挿されている。フロート部66は、基部61の外径よりも内径が大きく、第二溝部69の軸方向の長さよりも短くなっている。これにより、フロート部66は軸方向に移動可能であると共に、回転可能に支持されている。そして、環状部63の基部61外周面側の端面が第一シール面67であり、第一シール面67と対向しているフロート部66の端面が第二シール面68である。第一シール面67と第二シール面68は基部61の軸方向に直交する平面になっており、互いに密接可能な形状になっている。
【0025】
なお、ワッシャ64は、基部61にフロート部66を遊挿したのち、基部61の先端に挿入して基部61先端の内径を広げることにより、加締止めされている。また、ワッシャ64の外径は、フロート部66の外径よりも小さく、フロート部66の内径よりも大きくなっている。嵌入部65の外径は、流入口53の内径と略同一になっており、環状部63の外径は挿入部52の外径と略同一になっている。
【0026】
基部61は、挿入部52の先端に環状部63が当接するまで嵌入部65を流入口53に嵌入させた状態で接着剤により固定されている。基部61は、流入口53と連通した状態になっている。なお、接着剤としては、エポキシ樹脂系の接着剤を使用することができる。
【0027】
ここで、ロータリーユニオン10の構成について説明する。ハウジング本体40は、軸方向に貫通した収容孔部41を有しており、筒状になっている。そして、収容孔部41の両端には、軸受42,43がそれぞれ取付けられている。
【0028】
回転体20は、筒状の大径部20bの両端に円筒状の第一小径部20aと第二小径部20cが形成された形状を呈している。そして、第一小径部20aの先端部22の外周面には雌ネジが形成されている。回転体20は、第一小径部20aをハウジング本体40の収容孔部41に取付けられた二個の軸受42,43に挿通させると共に、ハウジング本体40から突出した先端部22の雌ネジにナット44を螺合させることにより、ハウジング本体40に回転可能に支持されている。そして、先端部22の内周面には、周方向に亘って第一溝部23が設けられており、第一溝部23にはゴム製のOリング24が配設されている。
【0029】
蓋体50の収容溝部51は、第一小径部20aの先端部22に螺合されたナット44よりも大きく形成されている。また、収容溝部51の周囲には、蓋体50の軸方向に貫通した複数の貫通孔55が穿設されている。ここでは、収容溝部51に沿って等角度間隔に四個の貫通孔55が設けられている。更に、蓋体50には、側面から収容溝部51に貫通した排出孔54が穿設されている。
【0030】
蓋体50は、収容溝部51をハウジング本体40側に向けた状態で貫通孔55に挿通したボルト56をハウジング本体40の孔部に形成されたの雌ネジ(図示しない)と螺合して、ハウジング本体40に取付けられている。このとき、収容溝部51にナット44が螺合された第一小径部20aの先端部22が収容され、フロート部66が遊挿された基部61が挿入部52と共にクーラント流通孔21に遊挿された状態になる。
【0031】
ここで、基部61の長さは、第二溝部69に遊挿されたフロート部66がOリング24に当接する位置になるように調整されている。また、フロート部66は、Oリング24の幅よりも長い。従って、Oリング24の内周面がフロート部66の外周面に当接した状態になっており、フロート部66が軸方向に移動した場合にもOリング24がフロート部66に当接した状態が保たれる。
【0032】
本実施形態のクーラント防漏装置1は、蓋体50の挿入部52に取付けられた基部61に形成された第二溝部69、第二溝部69に遊挿されたフロート部66、回転体20の第一溝部23に配設されたOリング24とで構成されている。つまり、本実施形態のクーラント防漏装置1では、
図5(a)に示すように、フロート部66がOリング24に支持されて、第二溝部69内に基部61の外周面との間に隙間を有した状態で配置されており、回転体20の内周面とフロート部66の外周面との隙間がOリング24により閉塞されている。
【0033】
なお、ロータリーユニオン10は、ハウジング本体40と回転体20に穿設されて連通した複数の流通孔31を有している。詳細には、ハウジング本体40に、外周面から収容孔部41に貫通した複数のハウジング流通孔31aがハウジング本体40の軸方向に離れて設けられている。
図1では、二個のハウジング流通孔31aが設けられた場合を示している。そして、回転体20には、第二小径部20cの先端側から回転体20の軸方向に穿設され、第一小径部20aの外周面においてハウジング流通孔31aと対向した位置に開口した複数の回転体流通孔31bが穿設されている。ハウジング本体40の内周面、あるいは回転体20の第一小径部20aの外周面には、複数のハウジング流通孔31aのそれぞれと対向する回転体流通孔31bを連通させる環状溝31cが設けられている。
図1では、ハウジング本体40の内周面に環状溝31cが設けられている場合を示している。そして、ハウジング流通孔31a、回転体流通孔31b、及び環状溝31cが連通して流通孔31が形成される。上記構成により、ロータリーユニオン10は、ハウジング流通孔31aから流入した複数の流体を加工機の回転部分に送給することができる。
【0034】
更に、ハウジング本体40の外周面には潤滑油流入孔45が穿設されている。潤滑油流入孔45は、ハウジング本体40の壁内に軸方向に穿設されて二個の軸受42,43と繋がった潤滑油流通路46と連通している。これにより、潤滑油流入孔45から潤滑油を流入することで軸受42,43に潤滑油を送給し、軸受42,43を円滑に回転させることができる。
【0035】
クーラント防漏装置1を装着したロータリーユニオン10は、従来と同様に使用することができる。具体的には、回転体20の第二小径部20c側を加工機の回転チャック等の回転部分に連結し、ハウジング30を加工機の非回転部分に固定する。そして、流入口53に、クーラントを貯留させるクーラントタンクと高圧ポンプで主に構成されるクーラント流入手段91を接続する。これにより、加工機の回転部分にクーラントを送給することができる。
【0036】
本実施形態のクーラント防漏装置1を備えたロータリーユニオン10のクーラント流通孔21に、クーラントを流通させると、
図5(b)に示すように、クーラントによりフロート部66が環状部63に押圧される。つまり、フロート部66の第二シール面68が環状部63の第一シール面67に密接してフロート部66と基部61との隙間が閉塞される。そして、回転体20の内周面とフロート部66との隙間は、Oリング24により閉塞されている。従って、クーラントの漏出を低減することができる。なお、ワッシャ64の外径がフロート部66よりも小さいことにより、回転体20の内周面とワッシャ64との隙間にクーラントが流入し易く、フロート部66がクーラントに押圧され易い。
【0037】
この状態で回転体20を回転させると、フロート部66は、基部61の第二溝部69に遊挿されており、Oリング24に当接していることにより、回転体20及びOリング24と共に回転する。このとき、フロート部66は、第二シール面68のみが第一シール面67に当接しているため、接触面積が小さく、フロート部66の回転する摩擦抵抗が小さい。つまり、回転体20の回転が阻害されず、発熱も小さい。そして、フロート部66はクーラントにより環状部63側に押圧され、第一シール面67と第二シール面68とが密接した状態が保たれるため、クーラントが漏出しにくい。
【0038】
更に、本実施形態のクーラント防漏装置1では、クーラントの液圧でフロート部66が第一シール面67押圧され、クーラントが漏出するフロート部66と基部61との隙間が閉塞される構成になっている。つまり、クーラントの液圧が高いほど、フロート部66がより強く第一シール面67に押圧される。このため、ウォータハンマが生じてクーラント流通孔21内が高圧になった場合であってもクーラントの漏出を防ぐことができる。
【0039】
従って、本実施形態のクーラント防漏装置1を備えたロータリーユニオン10では、漏出するクーラントを低減することができる。また、フロート部66が回転する摩擦抵抗が小さいため、回転体20の回転を阻害しない。
【0040】
また、本実施形態のクーラント防漏装置1では、基部61が挿入部52と別体になっていることにより、蓋体50と異なる材料で基部61を形成することができる。クーラント防漏装置1では、基部61が硬度の高いステンレスで形成されている。一方、通常のロータリーユニオンでは、蓋体50がアルミニウムで形成されている。このため、挿入部52が回転するフロート部66との接触により摩耗して隙間が閉塞できなくなり、クーラントが漏出する場合がある。これに対して、クーラント防漏装置1では、基部61が摩耗しにくいため、長期に亘ってクーラントの漏出を低減することができる。
【0041】
なお、フロート部66は、PTFE以外の、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂により形成することができる。これらのフッ素樹脂は摩擦係数が小さく、回転する際の摩擦抵抗をより低減できるため好適である。なお、フロート部66は、金属やセラミックス製にしてもよい。この場合は、フロート部66が摩耗しにくい。
【0042】
次に、第二実施形態のクーラント防漏装置2について、
図6,7を用いて説明する。本実施形態のクーラント防漏装置2は、基部61aが挿入部52aと一体で形成されている点で第一実施形態のクーラント防漏装置1と相違している。このため、本実施形態のクーラント防漏装置2では、基部61aを含めた蓋体50がステンレスにより形成されている。なお、蓋体50は硬度の高い金属であればよく、例えばチタン製にしてもよい。また、第一実施形態のクーラント防漏装置1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施形態のクーラント防漏装置2では、蓋体50の挿入部52aの先端面から挿入部52aよりも外径が小さい円筒状の基部61aがクーラント流通孔21の軸方向に延出している。基部61aの先端の外周面には、固定部としてワッシャ64aが取付けられている。つまり、挿入部52aの先端面と、基部61aの外周面と、ワッシャ64aにより第二溝部69aが構成されている。そして、第二溝部69aにPTFE製で円筒状のフロート部66aが軸方向に移動可能な状態で遊挿されている。また、挿入部52aの先端面には第一シール面67aが形成されており、第一シール面67aと対向したフロート部66aの端面に第二シール面68aが形成されている。第一シール面67aと第二シール面68aは、基部61aの軸方向に直交する平面になっており、互いに密接可能な形状になっている。
【0044】
基部61aとフロート部66aは、第一実施形態のクーラント防漏装置1と同様にクーラント流通孔21に遊挿されている。そして、回転体20の内周面に形成された第一溝部23aに配設されたOリング24aの内周面とフロート部66aの外周面が当接した状態になっている。なお、挿入部52aと一体に形成された支持部62aは、従来と同様の形状の挿入部の先端部分を切削加工することにより製作することができる。
【0045】
本実施形態のクーラント防漏装置2も第一実施形態のクーラント防漏装置1と同様に、フロート部66aがOリング24aに支持されて、第二溝部69a内に基部61aの外周面との間に隙間を有した状態で配置されている。そして、フロート部66aの外周面と回転体20の内周面との隙間がOリング24aにより閉塞されている。
【0046】
クーラント流通孔21にクーラントを流通させた場合は、クーラントによりフロート部66aが第一シール面67aに押圧される。そして、第二シール面68aと第一シール面67aが密接してフロート部66aと基部61aとの隙間が閉塞される。従って、本実施形態のクーラント防漏装置2を備えたロータリーユニオンでは、第一実施形態と同様にクーラントの漏出を低減することができる。
【0047】
また、クーラント防漏装置2は、クーラントの液圧によりフロート部66aが第一シール面67aに押圧される構成である。このため、クーラントの液圧が高いほどフロート部66aが強く押圧されて隙間が閉塞される。これにより、ウォータハンマが生じるなどしてクーラント流通孔21内が高圧になった場合でも、クーラントの漏出を低減することができる。
【0048】
更に、本実施形態のクーラント防漏装置2では、フロート部66aが回転体20とOリング24aと共に回転する。この際、フロート部66aは第二シール面68aのみが第一シール面67aと当接するため接触面積が小さく、摩擦抵抗が小さい。従って、回転体20の回転を阻害しない。
【0049】
加えて、本実施形態のクーラント防漏装置2では、基部61aが蓋体50の挿入部52aと一体で形成されているため、部品点数が少ない。
【0050】
次に、第三実施形態のクーラント防漏装置3について、
図8,9を用いて説明する。本実施形態のクーラント防漏装置3は、フロート部66bとOリング24bの配置が第一実施形態及び第二実施形態のクーラント防漏装置1,2と相違している。なお、クーラント防漏装置3の回転体20とハウジング本体40は、ステンレスで形成されており、蓋体50はアルミニウムで形成されている。また、第一実施形態及び第二実施形態のクーラント防漏装置1,2と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
本実施形態のクーラント防漏装置3では、挿入部52bと基部61bが一体になっており、基部61bの外周面には、環状の第二溝部69bが周方向に形成されている。そして、第二溝部69bにOリング24bが配設されている。また、回転体20の内周面に環状の第一溝部23bが周方向に設けられている。そして、第一溝部23bにPTFE製で円筒状のフロート部66bが遊挿されており、クーラント流通孔21の軸方向に移動可能に支持されている。
【0052】
ここで、クーラント流通孔21の先端側には、大径孔部25が先端側を開放して形成されている。そして、大径孔部25よりも径が小さい小径孔部26がクーラント流通孔21内に連設されている。大径孔部25と小径孔部26の境界部分には、回転体20の軸方向に直交する後端面27が形成されている。そして、大径孔部25の先端側にはステンレス製で円筒状の固定部28が嵌入されている。固定部28の軸方向の長さは、大径孔部25よりも短くなっている。これにより、固定部28の端面と大径孔部25の内周面と後端面27とに囲まれて第一溝部23bが形成されている。なお、固定部28は、大径孔部25にフロート部66bを遊挿したのち、接着剤で大径孔部25の先端側に固定されている。
【0053】
フロート部66bの内周面は、Oリング24bの外周面に当接した状態になっている。つまり、フロート部66bは、
図9(a)に示すように、Oリング24に支持されて、第一溝部23a内に回転体20の内周面との間に隙間を有した状態で位置している。そして、フロート部材66bの内周面と基部61bとの隙間がOリング24bにより閉塞されている。また、フロート部66bの回転体20先端側の端面が第二シール面68bであり、第二シール面68bと対向した固定部28の端面が第一シール面67bである。第一シール面67bと第二シール面68bは、回転体20の軸方向に直交する平面になっており、互いに密接可能な形状になっている。
【0054】
本実施形態のクーラント防漏装置3を備えたロータリーユニオンに、クーラントを流通させると、
図9(b)に示すように、クーラントによりフロート部66bが第一シール面67bに押圧される。つまり、フロート部66bの第二シール面68bが第一溝部23bの第一シール面67bに密接して、フロート部66bと回転体20との隙間が閉塞される。そして、Oリング24bの外周面はフロート部66bの内周面に当接しており、フロート部66bの内周面と基部61bの外周面との隙間はOリング24bにより閉塞された状態になっている。
【0055】
この状態で回転体20を回転させると、フロート部66bは、第一溝部23bに遊挿されており、Oリング24bを介して基部61bに支持されているため回転せず、回転体20のみが回転する。このとき、回転体20は、第一シール面67bのみが第二シール面68bに当接しているため、接触面積が小さく、回転する摩擦抵抗が小さい。つまり、回転体20の回転が阻害されず、発熱も小さい。そして、フロート部66bはクーラントにより第一シール面67bに押圧され、第一シール面67bと第二シール面68bとが密接した状態であるため、クーラントが漏出しにくい。
【0056】
第三実施形態のクーラント防漏装置3では、クーラント流通孔21の軸方向に移動可能な状態でフロート部66bが第一溝部23bに遊挿されており、フロート部66bの内周面と基部61bの外周面との隙間がOリング24bにより閉塞されている。これにより、クーラント流通時にフロート部66bがクーラントに押圧され、第一溝部23bの第一シール面67bとフロート部66bの第二シール面68bが密接する。つまり、回転体20の内周面と基部61bの外周面との隙間がフロート部66bとOリング24bにより閉塞されるため、第一実施形態及び第二実施形態のクーラント防漏装置1,2と同様に、クーラントの漏出を低減することができる。
【0057】
また、第三実施形態のクーラント防漏装置3は、クーラントの液圧によりフロート部66bが第一シール面67bに押圧される構成である。このため、クーラントの液圧が高いほどフロート部66bが強く押圧されて隙間が閉塞される。これにより、ウォータハンマが生じるなどしてクーラント流通孔21内が高圧になった場合でも、クーラントの漏出を低減することができる。
【0058】
更に、第三実施形態のクーラント防漏装置3では、回転体20のみが回転する。このとき、回転体20とフロート部66bは、第一シール面67bと第二シール面68bのみで接触しているため、接触面積が小さい。従って、摩擦抵抗が小さく、回転体20の回転を阻害しない。また、回転体20が回転している場合であってもフロート部66bはクーラントに押圧された状態を保つため、クーラントの漏出を低減することができる。
【0059】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【解決手段】ロータリーユニオンのクーラント防漏装置1を、クーラント流通孔21を有する回転体20の内周面に形成された環状の第一溝部23と、第一溝部23に配設されたOリング24と、流入口53を有する筒状の挿入部52の先端面から軸方向に延びた挿入部52よりも外径が小さい筒状の基部61の外周面、基部61よりも大径の固定部64、挿入部52の先端面、に囲まれて形成された第二溝部69と、挿入部52の先端面に形成された第一シール面67と、Oリング24の内周面に外周面が当接し、軸方向に移動可能な状態で第二溝部69に遊挿された円筒状のフロート部66と、第一シール面67と密接可能な形状を有するフロート部66の端面に形成された第二シール面68とを具備する構成とする。