【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
ヘッドレストフレームをヘッドレストステーに対して回動可能な状態で支持させたヘッドレストであって、
外縁部に第一係止部が設けられた左右一対の側壁部を有するU字状部材からなり、当該側壁部に第一ステー挿入孔が設けられた固定部材と、
円弧長孔状の第二ステー挿入孔が設けられた左右一対の側壁部を有するU字状部材からなる回動部材と、
固定部材に対して回動部材を回動可能に結合するための第一結合ピンと、
第一係止部に係止されて回動部材の後方回動を規制する第一被係止部が下端縁における左部又は右部に設けられたロックプレートと、
回動部材に対してロックプレートを回動可能に結合するための第二結合ピンと、
回動部材を初期位置に復帰する向きに常時付勢するための回動部材付勢バネと、
第一被係止部が第一係止部に係止される向きにロックプレートを常時付勢するためのロック付勢バネと、
がユニット化され、
固定部材の第一ステー挿入孔及び回動部材における第二ステー挿入孔に、正面視逆U字状のヘッドレストステーの横ステー部を挿入した状態で固定部材に溶接結合することによって機構部が構成され、
回動操作範囲にあるヘッドレストの後方回動の規制を、ヘッドレストステーの横ステー部が第二ステー挿入孔の前端部に当接する、又は、第一被係止部が第一係止部に当接することによって行うことを特徴とするヘッドレスト
を提供することによって解決される。
【0009】
本発明のヘッドレストに係る構成は、上述した、折り畳み式と前後調整式(平行リンクタイプ、上振りタイプ及び下振りタイプ)のいずれのヘッドレストにも好適に採用することができる。このため、不使用時のヘッドレストを折り畳んでドライバー等の後方視界を確保することや、使用時のヘッドレストの前後位置を調整して着席者の頭部や首部が受けるダメージを軽減することが可能になる。また、本発明のヘッドレストでは、ヘッドレストステーの横ステー部が第二ステー挿入孔の前端部に当接する等、部材と部材の当接によって、ヘッドレストの後方回動を確実に規制することもできるため、安全性を高めることも可能となっている。さらに、ロックプレート等の構成部材は、厚さ2mm程度の薄い鋼板の一般的なプレスによって加工することができる(ファインブランキング等の特殊プレスで加工する必要がない)ため、低コスト化や軽量化を図ることも可能になる。なお、第一ステー挿入孔や、第二ステー挿入孔や、後述する第三ステー挿入孔は、ヘッドレストステーの横ステー部を挿入可能な形状であればよく、切欠形状であってもよい。
【0010】
本発明のヘッドレストにおいては、
第一係止部が、ヘッドレストの使用時に第一被係止部を係止する複数の使用時用第一係止部と、ヘッドレストの格納時に第一被係止部を係止する格納時用第一係止部とで構成され、
固定部材の調整最終段位置に、第二係止部が設けられ、
ロックプレートに、第二被係止部と第一カム接触部とが設けられ、
機構部がカバーケースで包み込まれ、
第一カムを有する操作手段がカバーケースに設けられ、
ヘッドレストが使用範囲にあるときには、ヘッドレストの位置を前方調整可能で、且つ、ヘッドレストの後方回動が規制された状態とされ、
ヘッドレストの不使用時には、操作手段を操作して第一カムを第一カム接触部に接触させることで第一被係止部を第一係止部から離脱させてヘッドレストを前方の格納位置に移動させることが可能な状態となり、
車両の異常停止時には、慣性力によるヘッドレストの前方回動を許容しながらも、第二被係止部が第二係止部に係止される前方調整限界位置でヘッドレストが停止するとともに、その位置では第一被係止部が使用時用第一係止部に係止されることによってヘッドレストの後方回動も規制された状態となるようにする
ことも好ましい。
【0011】
これにより、折り畳み式と前後調整式の特徴を兼ね備えるとともに、操作手段の操作によらなければ後方回動しない構造のヘッドレスト(以下において、「第一実施態様のヘッドレスト」と呼ぶことがある。)を提供することが可能になる。また、第一実施態様のヘッドレストでは、事故等による異常停止時に発生した慣性力によってヘッドレストが前方の格納位置まで移動することなく、前方調整限界位置で前方回動も後方回動もできない状態となる。このため、異常停止時に生じた慣性力によって前のめりになった反動で後方に移動する着用者の頭部が、前方に迫り出したヘッドレスト(前方の格納位置にあるヘッドレスト)の先端部に突き当たらないようにするだけでなく、その頭部を前方調整限界位置でサポートすることも可能になる。さらに、第一実施態様のヘッドレストでは、ロックプレートの切替動作(第一係止部と第一被係止部の係止の切替)を、乗り越しバネを使用することなく行うので、誤動作を防ぐことも可能となっている。
【0012】
本発明のヘッドレストにおいては、
第二カムと円弧長孔状の第三ステー挿入孔とを有し、ヘッドレストが使用範囲にあるときには回動部材に連動して前方回動するロック規制部材が設けられ、
第一係止部が、ヘッドレストの使用時に第一被係止部を係止する複数の使用時用第一係止部と、ヘッドレストの格納時に第一被係止部を係止する格納時用第一係止部とで構成され、
固定部材の前方調整限界位置に、第二係止部が設けられ、
ロックプレートに、第一カム接触部と第二カム接触部と第二被係止部とが設けられ、
機構部がカバーケースで包み込まれ、
第一カムを有する操作手段がカバーケースに設けられ、
ヘッドレストが使用範囲にあるときには、ヘッドレストの位置を前方調整可能な状態とされ、
使用範囲を越えてヘッドレストをさらに前方に回動させると、ヘッドレストステーの横ステー部が第三ステー挿入孔の後端部に当接してロック規制部材が回動部材に連動しなくなり、第二カムが第二カム接触部に接触することで第一被係止部を第一係止部から離脱させてヘッドレストを後方の初期位置に移動させることが可能な状態となり、
ヘッドレストの不使用時には、操作手段を操作して第一カムを第一カム接触部に接触させることで第一被係止部を第一係止部から離脱させてヘッドレストを前方の格納位置に移動させることが可能な状態となり、
車両の異常停止時には、慣性力によるヘッドレストの前方回動を許容しながらも、第二被係止部が第二係止部に係止される前方調整限界位置でヘッドレストが停止するようにする
ことも好ましい。
【0013】
これにより、操作手段を操作することなく最後方位置まで復帰させることができるようにした前後調整式の特徴と、格納時にのみ操作手段の操作が必要とした折り畳みの特徴とを兼ね備えたヘッドレスト(以下において、「第二実施態様のヘッドレスト」と呼ぶことがある。)を提供することが可能になる。
【0014】
本発明のヘッドレストにおいては、
第二カムと円弧長孔状の第三ステー挿入孔とを有し、ヘッドレストが使用範囲にあるときには回動部材に連動して前方回動するロック規制部材が設けられ、
第一係止部が、ヘッドレストの使用時に第一被係止部を係止する複数の使用時用第一係止部で構成され、
ロックプレートに、第二カム接触部が設けられ、
ヘッドレストが使用範囲にあるときには、ヘッドレストの位置を前方調整可能な状態とされ、
使用範囲を越えてヘッドレストをさらに前方に回動させると、ヘッドレストステーの横ステー部が第三ステー挿入孔の後端部に当接してロック規制部材が回動部材に連動しなくなり、第二カムが第二カム接触部に接触することで第一被係止部を第一係止部から離脱させてヘッドレストを後方の初期位置に移動させることが可能な状態となるようにする
ことも好ましい。
【0015】
これにより、操作手段を設けない構造(操作手段を操作する必要のなり構造)の前後調整式のヘッドレスト(以下において、「第三実施態様のヘッドレスト」と呼ぶことがある。)を提供することが可能になる。
【0016】
本発明のヘッドレストにおいては、
第一係止部が、ヘッドレストの使用時に第一被係止部を係止する1個の使用時用第一係止部と、ヘッドレストの格納時に第一被係止部を係止する格納時用第一係止部とで構成され、
固定部材に、第二係止部が設けられ、
ロックプレートに、第二被係止部と第一カム接触部とが設けられ、
機構部がカバーケースで包み込まれ、
第一カムを有する操作手段がカバーケースに設けられ、
ヘッドレストが使用位置にあるときには、第一被係止部が第一係止部に係止されることによってヘッドレストの後方回動が規制されるとともに、第二被係止部が第二係止部に係止されることによってヘッドレストの前方回動も規制され、
ヘッドレストの不使用時には、操作手段を操作して第一カムを第一カム接触部に接触さ
せることで第一被係止部を第一係止部から離脱させてヘッドレストを前方の格納位置に移動させることが可能な状態となるようにする
ことも好ましい。
【0017】
これにより、操作手段の操作によらなければ、使用位置から前方の格納位置への移動、及び、格納位置から使用位置へ回動しない構造の折り畳み式のヘッドレスト(以下において、「第四実施態様のヘッドレスト」と呼ぶことがある。)を提供することが可能になる。
【0018】
本発明のヘッドレストにおいては、
第二カムと円弧長孔状の第三ステー挿入孔とを有し、ヘッドレストが使用範囲にあるときには回動部材に連動して前方回動するロック規制部材と、
固定部材の後部に対して回動可能に結合された第三リンク部材と、
回動部材の上部と第三リンク部材の上部とに対して回動可能に結合された第四リンク部材と、
が設けられ、
第一係止部が、ヘッドレストの使用時に第一被係止部を係止する複数の使用時用第一係止部で構成され、
ロックプレートに、第二カム接触部が設けられ、
第四リンク部材にカバーケースが取り付けられ、
ヘッドレストが使用範囲にあるときには、ヘッドレストの位置を前方調整可能な状態とされ、
使用範囲を越えてヘッドレストをさらに前方に回動させると、ヘッドレストステーの横ステー部が第三ステー挿入孔の後端部に当接してロック規制部材が回動部材に連動しなくなり、第二カムが第二カム接触部に接触することで第一被係止部を第一係止部から離脱させてヘッドレストを後方の初期位置に移動させることが可能な状態となるようにする
ことも好ましい。
【0019】
これにより、操作手段を設けない構造(操作手段を操作する必要のない構造)で、且つ、平行リンク機構を採用した前後調整式のヘッドレスト(以下において、「第五実施態様のヘッドレスト」と呼ぶことがある。)を提供することが可能になる。
【0020】
本発明のヘッドレストにおいては、
左右に延びる連結部を有するヘッドレストフレームを回転部材に一体的に取り付け、
機構部がカバーケースで包み込まれ、
カバーケースの外形状を為す薄肉の表層部の内面側がリブで補強されて、
カバーケースの内部には、ヘッドレストフレームの連結部の前面及び後面に密着する前後一対の壁部が設けられ、
カバーケースが、左側ケースと右側ケースとに分割可能な形態とされ、
左側ケース及び右側ケースの分割端には、他側のケースの表層部内面に密着されて保持される複数の小突起が設けられ、
左側ケース及び右側ケースをそれぞれ左側及び右側からヘッドレストフレームの連結部に組み付けることで、当該連結部に対して左側ケース及び右側ケースを一体化させる
ことも好ましい。
【0021】
これにより、カバーケースの剛性を維持しながらも軽量化することや、ヘッドレストフレームに左側ケースと右側ケースとの連結機能を持たせることや、ヘッドレストフレームを骨材としてカバーケースを補強することが可能になる。この構成は、上述した全ての実施態様のヘッドレストで採用することができる。
【0022】
本発明のヘッドレストにおいては、
左右に延びる連結部を有するヘッドレストフレームを回転部材に一体的に取り付け、
機構部がカバーケースで包み込まれ、
カバーケースの内部には、ヘッドレストフレームの連結部の前面及び後面に密着する前後一対の壁部が設けられ、
カバーケースが、左側ケースと右側ケースとに分割可能な形態とされ、
ヘッドレストフレームの連結部の左側及び右側からそれぞれ組み付けられた左側ケース及び右側ケースの前面に対して左側ケースと右側ケースとに跨る状態でクッションシートを貼り付けることで、当該連結部に対して左側ケース及び右側ケースが一体化されるとともに、その外面を表皮で覆う
ことも好ましい。
【0023】
これにより、ユニットと表皮の隙間にウレタン等を注入して一体発泡しなくてもクッション層を形成することが可能になり、ヘッドレスト製造の最終工程を発泡工場で行う必要がなくなる。したがって、ヘッドレストの物流コストや製造コストを抑えることが可能になる。また、クッションシートに左側ケースと右側ケースとの連結機能を持たせることができるので、係合構造等を採用することなく左側ケースと右側ケースとを連結することが可能になる。この構成は、上述した全ての実施態様のヘッドレストで採用することができる。