(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記容器本体の前記大径部分を容器本体の中心軸線を通る面によって切断したときときの断面は、矩形、半円形、半楕円形、多角形、または曲線形状であることを特徴とする請求項1記載の滴下容器。
【背景技術】
【0002】
少量の薬液が封入された滴下容器のうち、特に1回あたりの使用量が少量(一滴程度)であるものは、使用時において滴下容器から採取皿に採取するか、または、そのまま局部に塗布や投与するのに用いられることが多い。薬液が低沸点成分を含む歯科用液体材料である場合、手指からの体温の伝熱(伝導、輻射)により薬液が揮発し、容器内部の内圧を上昇させることによりユーザが意図する量以上、例えば、一滴採取量以上に薬液を滴下させてしまう不具合がある。この不具合の発生は、要冷蔵とされている薬液を冷蔵庫から取り出した時に多い。従来の滴下容器は、ボトル形状の容器本体側面に薄肉の断熱ラベル(厚み0.3mm程度)を貼付しているが、ラベルの断熱性能不足と容器本体底面に断熱対策が施されていないことにより、上述の不具合は解消されていない。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、以下の滴下容器が開示されている。この滴下容器は、ボトル形状の容器本体の側面と底面を覆うように厚肉の断熱カバーが装着されている。そして、この断熱カバーの内面には、複数のリブが形成されている。このような構成の滴下容器によれば、容器本体は断熱カバーおよびリブ間の空隙により断熱されるので、一滴採取量以上に薬液を滴下させてしまう不具合を解消することができる。また、特許文献2には、以下の滴下容器が開示されている。この滴下容器は、ボトル形状の容器本体を収容するボトル容器を備えている。このような構成の滴下容器によれば、容器本体はボトル容器により断熱されるので、一滴採取量以上に薬液を滴下させてしまう不具合を解消することができる。
【0004】
また、特許文献3には、以下の滴下容器が開示されている。この滴下容器は、ボトル形状の容器本体の側面が空隙を持ってジャケットにより覆われている。このような構成の滴下容器によれば、容器本体はジャケットおよび空隙により断熱されるので、一滴採取量以上に薬液を滴下させてしまう不具合を解消することができる。また、特許文献4には、以下の滴下容器が開示されている。この滴下容器は、流体の強制排出機構を備えている。このような構成の滴下容器によれば、強制排出機構により常に一滴採取量の薬液を滴下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
本発明の第一実施形態に係る滴下容器1は、
図1および
図2に示すように、容器本体2とノズル3とグリップ4とキャップ5とで構成されている。
容器本体2は、細長い棒状であって一端側が閉塞され他端側が注出口2aとして開口されている。容器本体2は、一端側が他端側よりも大径、すなわち一端側の径D2が太く他端側の径D1が細くなるように形成されている。容器本体2の小径部分21と大径部分22の間の継ぎ目に段差面22aが形成されている。
【0015】
ノズル3は、容器本体2の注出口2aから容器本体2の軸方向外側に伸びる略三角錐状に形成されている。
容器本体2の他端側の小径部分21にはグリップ4が装着される。
キャップ5は、未使用時にノズル3を覆うように容器本体2に取り付けられる。
【0016】
本発明の第二実施形態に係る滴下容器1は、
図3および
図4に示すように、容器本体2とノズル3とグリップ4とキャップ5とで構成されている。
容器本体2は、注出口2aが設けられた細長い棒状の小径部分21と、閉鎖底が形成された大径部分22からなる。容器本体2の小径部分21と大径部分22の間の継ぎ目に段差面22aが形成されている。
【0017】
ノズル3は、容器本体2の注出口2aから容器本体2の軸方向外側に伸びる略三角錐状に形成されている。
容器本体2の他端側の小径部分21にはグリップ4が装着される。
キャップ5は、未使用時にノズル3を覆うように容器本体2に取り付けられる。
【0018】
つぎに、第一実施形態に係る滴下容器と第二実施形態に係る滴下容器を含めて、本発明の滴下容器について説明する。
容器本体2の小径部分21における、容器本体2の中心軸線に垂直な面により形成される断面形状は、例えば、
図5(A)および
図6(A)に示す楕円(小径部分21の長径と短径がそれぞれ8〜13mm、かつ長径>短径)、
図5(B)および
図6(B)に示す円(小径部分21の径が8〜13mm)、
図5(C)および
図6(C)に示す四角形(小径部分21の一辺の長さと対角線の長さがそれぞれ8〜13mm)等の多角形等、どのような形状でもよく、持ちやすさなどの包材としての機能と、生産性、デザイン性から選定する。
【0019】
なお、小径部分21の径D1は、上述した楕円、円、および四角形を含め、最も長いところと最も短いところがそれぞれ8〜13mmの範囲にあることが好ましい。容器本体2の小径部分21の径D1が上述の範囲にあると、一滴滴下を可能にするグリップ4の厚みの確保と、ユーザがペンのように持ちやすいグリップ4の太さとを両立させることができる。
【0020】
また、容器本体2の小径部分21の肉厚は0.3〜0.9mmの範囲内にあることが好ましい。容器本体2の小径部分21の径D1と肉厚が上述の範囲にあると、ユーザが親指と人差し指等によりグリップ4を介して、小径部分21を加圧した場合、小径部分21が大きく変形することなく適度な変形をするので、一滴滴下を可能とすることができる。
【0021】
容器本体2の中心軸線を通る平面で切断した大径部分22の断面形状は、
図1のように矩形であってもよいし、
図3のように半円形でもあってもよい。大径部分22のこの断面形状はこれらに限定されるわけではなく、他の形状、例えば、半楕円形、三角形等の多角形、曲線形状等種々の形状であってもよい。
【0022】
大径部分22の長さLcは、5〜50mmの範囲にあることが好ましく、5〜10mmの範囲にあることが更に好ましい。
【0023】
容器本体2の大径部分22における、容器本体2の中心軸線に垂直な面により形成される断面形状は、例えば、
図5(A)および
図6(A)に示す楕円、
図5(B)および
図6(B)に示す円、
図5(C)および
図6(C)に示す四角形等の多角形等、どのような形状でもよい。
【0024】
なお、大径部分22の径D2は、上述した楕円、円、および四角形を含め、最も長いところと最も短いところがそれぞれ9〜18mmの範囲にあることが好ましい。ここで、大径部分22の径D2とは、容器本体2の中心軸線に垂直な面により形成される、大径部分22の断面のうち、最も断面積が大きい部分または範囲における径と定義する。
大径部分22の長さLcと径D2が上述の範囲にあると、溶液本体2に収容する薬液の容量を十分に確保することができ、また、大径部分22が透明または半透明の材料によって形成されている場合には、薬液の残量を視覚的に確認しやすくできる。
【0025】
容器本体2の一端側に大径部分22を設けることにより、薬液の収納量を確保することができると同時に、大径部分22が透明または半透明の材料によって形成されている場合には、薬液の残量を視覚的に確認することができる。大径部分22が透明または半透明の材料によって形成されているから、薬液量が十分にあるときは、大径部分22を上にしていても液面の存在を確認できる。薬液量が減少して液面の存在を確認しにくい場合は、滴下容器1を水平にすることにより、大径部分22に液面の存在を確認できる。それにより、薬液量がどの程度あるか把握できる。薬液量が更に減少した場合は、大径部分22が下になるように、滴下容器1を傾斜させるか、または、逆さまに立てると、容器本体に収納されている薬液は、大径部分22に集まる。ユーザは、大径部分22を観察することにより、薬液の残量を確認することができる。なお、グリップ4を透明または半透明の材料によって形成すれば、容器本体に収納されている薬液の量を確認することができる。
【0026】
また更に、大径部分22には、印刷あるいはラベルによる薬液等の表示が容易になる。薬液(医療用具)の容器への表示事項は、製造販売業者の名称および住所、製品名、内容量、製造記号、使用期限、保管条件など多数あり、相応の広い表示スペースを容器上に必要とする。そして、容器本体2の大径部分22面に表示することにより視認性が良好となる。特に
図5(A)の楕円形状は、広い表示スペースを確保しやすいことにより使用者が視認しやすいような表示事項のレイアウトが容易に行えるため好適である。
【0027】
段差面22aの外形は、小径部分21の断面形状と同様に、楕円、円、四角形等の多角形等、どのような形状でもよい。段差面22aの外形は、小径部分21の断面形状に対応するように形成してよい。例えば、小径部分21の断面が円、楕円、四角形の場合は、段差面22aの外形は、それぞれ円、楕円、四角形であってもよい。更に、段差面22aの外形は、小径部分21の断面形状に対応していなくてもよい。例えば、小径部分21の断面が円である場合、段差面22aの外形は楕円、四角形であってもよい。小径部分21の断面および段差面22aの外形を円以外の形状にすると、平面上で転がりにくい利点がある。
【0028】
段差面22aの外形と、小径部分21の断面が共に円である場合には、段差面22aは、容器本体2の小径部分21の外周に沿ってリング状に形成される。段差面22aの外形が四角形であり、小径部分21の断面が円である場合には、段差面22aは、四隅の4つの部分に形成されてよい。段差面22aは、グリップ4の移動に対するストッパとして機能することができればよく、段差面22aの形状は任意である。
【0029】
ここで段差面22aが形成される条件を説明する。容器本体2の中心軸線に垂直な面により形成される、大径部分22の断面のうち、小径部分21に最も近い断面における径を大径部分22の径D3と定義する。段差面22aが形成されるためには、円周方向の少なくとも一部分において、大径部分22の径D3が小径部分21の径D1より大きければよい。すなわち、円周方向のうち、D3>D1である領域では、段差面22aが形成される。グリップ4を、容器本体2の小径部分21に嵌めるとき、段差面22aは、グリップ4の移動に対するストッパとして機能する。
【0030】
このような「くびれ形状」の容器本体2は、コストパフォーマンスに優れたダイレクトブロー成形またはインジェクションブロー成形によって形成できる。容器本体2の材質は、限定されるものではないが、ポリオレフィンまたはEVOH等のガスバリア性の高い層を含む多層プラスチック材料等が挙げられる。
【0031】
ノズル3の形状は、液滴が見やすければ、どのような形状でもよい。
図1および
図3の例においては、グリップ4の径Dは、ユーザが直感的にグリップ4を持つ形状にするため、容器本体2の一端側を大径部分22の径D2と同等以上(D≧D2)に形成されている。
図1および
図3の例を含めて、本発明の滴下容器のグリップ4の径Dは、ユーザが直感的にグリップ4を持つ形状にするため、大径部分22の径D3と同等以上(D≧D3)に形成されている。
【0032】
グリップ4は、断熱効果を発揮させるためおよび意図した通りの滴下(一滴滴下)を可能とするために、好適には厚みを2mm以上に形成する。
【0033】
グリップ4の長さLは、ユーザの手指が容器本体2に触らない長さにするためおよび視覚的に目立たせるために、50mm以上あることが好ましい。
【0034】
グリップ4は、ユーザによる親指と人差し指等での加圧を微調整するために、好適には表面が例えば
図7(A)に示す円周方向のラインの滑り止め加工、
図7(B)に示す軸方向のラインの滑り止め加工、もしくは
図7(C)に示すダイヤカット状の滑り止め加工が施されている。
【0035】
グリップ4の材質は、熱伝導率が低くかつユーザの手指のグリップ感のよい例えば熱硬化性エラストマーや熱可塑性エラストマー等の弾性体が好適である。熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。グリップ4の材料中には、熱伝導率の高いシリカフィラー等の添加量は少ない方がよい。
キャップ5は、略三角錐台状や角柱状に形成されている。
【0036】
図1および
図3の例を含めて、本発明の滴下容器のキャップ5を除いた長さLt(以後、単に「滴下容器1の長さLt」ということがある。)は、内容量に応じた長さに設計するが、100〜200mmの範囲にあることが好ましい。滴下容器1の長さLtがこの範囲内にあると、塗布部位に直接塗布または滴下する歯科用液体材料において、使用者(歯科医)が筆またはペンを握るように使用できるという利点がある。なお、滴下容器1の長さLtは、グリップ4の長さLと大径部分22の長さLcの和に等しい。
【0037】
容器本体2の大径部分22の径D2に対する滴下容器1の長さLtの比をアスペクト比と定義する。アスペクト比Lt/D2は、5〜22の範囲にあることが好ましい。アスペクト比Lt/D2がこの範囲内にあると、使用者が握りやすいという利点がある。
【0038】
図8に示すように、従来の滴下容器1´においては、容器内の液体の量を確認できるようにする等の理由から、滴下容器の底面を露出させている場合があった。この場合、親指、人差し指、中指等が容器に接触する部分からの伝熱により液体が膨張して一滴以上が滴下されてしまう問題があった。
【0039】
しかし、発明者の研究結果より、伝熱のほかに手のひらからの輻射熱が大きく影響していることが発見された。すなわち、従来の滴下容器1´はその径が比較的大きく、長さが短かった。従って、液体を滴下するとき、ユーザは滴下容器全体を手の中に入れ底面を手のひらに対向させて、親指,人差し指,中指等で滴下容器の側面をつまむように持つことが多かった。親指、人差し指、中指等で滴下容器の側面をつまむように持つ場合、手のひらからの輻射熱が容器の底面に直接達する。更に手のひらと容器の底面の距離は短いので、輻射熱量は大きいものとなった。
【0040】
また、滴下するとき、すなわちノズルを下に向けるとき、容器の底には、液体の蒸気や空気を含む気体が存在する。この気体は輻射熱により熱膨張する。気体の比熱は液体の比熱よりも小さく、また気体の膨張率は液体の膨張率よりも大きい。そこで、気体の膨張により、液体が使用者の意思に関係なく数滴滴下してしまうことが頻繁にあった。また、親指,人差し指,中指等が容器に接触する部分からの伝熱により溶媒が膨張し、容器の内圧が上昇した。
【0041】
本発明に係る滴下容器は、従来の滴下容器に比較し、
図9および
図10に示すように、グリップを親指、人差し指等で持つようになっているので、指が容器に接触することがなくなり、更に、手の甲から、容器の底部分に存在する気体に達する輻射熱量は非常に小さくなる。このことから、液体が数滴滴下してしまうことを防止することができる。
【0042】
図9に示すように第一実施形態の滴下容器1によれば、容器本体2が棒状に形成されているので小型であり、断熱性を有するグリップ4によりユーザの手指温度の伝熱を遮断する機能を有する。またユーザの手指から大径部分22への輻射熱を遮断する機能を有し、大径部分22の上端に溜まった気体への輻射熱を遮断することができる。そのため容器本体の内容物の温度変化を小さくすることができる。使用時にはグリップ4を把持してスクイズすることにより一滴滴下を可能とし、意図しない過剰な滴下を防止することができる。
【0043】
更に、容器本体2は、一端側が他端側よりも大径に形成され、他端側がグリップ4で覆われているので、グリップ4の端部が容器本体2の一端側の端部と当接することになり、グリップ4の容器本体2からの抜けを防止し、また、グリップ4を視覚的に目立たせることができる。
【0044】
更に、グリップ4は、表面が滑り止め加工されているので、ユーザによる親指と人差し指等での加圧を微調整することができ、一滴採取を確実に行うことができる。また、滴下容器1がペン型の形状であることにより、従来から歯科用材料で広く使用されているコンポジットレジ用のシリンジとデザイン的な統一感があり、従来の容器よりもスリムで斬新な形状となる。
【0045】
第二実施形態の滴下容器は、第一実施形態の滴下容器についての上記効果を有するとともに、
図10に示すように、容器本体2の小径部分21の長さを比較的大きくすることができるので、断熱性を有するグリップ4の長さを比較的大きくすることができる。それによって、ユーザの手指から小径部分21への伝熱を遮断する機能と、ユーザの手指から大径部分22への輻射熱を遮断する機能が更に良好となる。特に、大径部分22の上端に溜まった空気への輻射熱を更に遮断することができる。そのため容器本体の内容物の温度変化を更に小さくすることができる。従って、意図しない過剰な滴下をより確実に防止することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、滴下容器1の内容物として薬液を例示したが、沸点が低くてユーザの手指温度の伝熱により滴下が困難な液体であれば使用可能である。