【実施例】
【0062】
次に、本発明の効果を確認するために、その各種の実施例を比較例との対比において示す。
【0063】
(蓋材本体の作製)
コート紙(55g/m
2)と厚さ16μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、それらをポリウレタン系ドライラミネート接着剤により貼合わせて基材層とした。
【0064】
次に、上記基材層のアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムにアンカーコート剤を塗布した後、更にその上にグラビアコート法により熱封緘層を形成した。これによって得られた基材層/アンカーコート剤/熱封緘層の積層体をもって蓋材本体とした。
【0065】
ここに、上記熱封緘層(5)としては、下記の3種類のものを作製した。
【0066】
・ラッカー型(A)・・・ポリスチレン製容器の蓋材に適するものとして、主成分アク
リル樹脂及びポリエステル樹脂からなるヒートシールラッカー(A)を、塗布量
5g/m
2の割合でグラビアコート法により塗布し、ラッカー型の熱封緘層を形
成した。
【0067】
・ラッカー型(B)・・・ポリスチレン製容器の蓋材に適するものとして、主成分酸変 性ポリプロピレン樹脂(無水マイレン酸グラフト変性 変性率1.0%)と、粘
着付与剤、ブロッキング防止剤からなるヒートシールラッカー(B)を、塗布量 5g/m
2の割合でグラビアコート法により塗布し、ラッカー型の熱封緘層を形 成した。
【0068】
・シーラントフィルム型・・・主成分ポリエチレン系のイージーピールフィルムからな
る厚さ30μmのシーラントフィルムを、ウレタン系接着剤層を介して押出しラ
ミネート法により積層し、シーラントフィルム型の熱封緘層を形成した。
【0069】
(付着防止層の形成)
付着防止層の材料として、下記のバインダー及び疎水性微粒子を用意した。
【0070】
バインダー
A:エチレン−メタクリル酸共重合体
(融点95℃、メタクリル酸含有量10重量%)
B:ポリメチルメタクリレート(軟化点 105℃ )
C:エチレン−酢酸ビニル共重合体(融点82℃、酢酸ビニル含有量20%)
D:ポリエチレンワックス(融点 67℃)
【0071】
疎水性微粒子
SP(I):疎水性湿式シリカ 平均粒径 2700nm
SP(II):疎水性湿式シリカ 平均粒径 3900nm
SP(III):疎水性湿式シリカ 平均粒径 1300nm
SP(IV):疎水性乾式シリカ 一次粒子 10nm
【0072】
上記各種バインダーをメチルエチルケトンとメチルシクロヘキサンの50:50の混合溶媒で稀釈した溶液中に、疎水性微粒子を表1に示す各種配合割合で混合し、均一分散させてコート液を作製した。
【0073】
そして、これらの各種コート液を、蓋材本体の前記熱封緘層の外面にグラビアコート法により、表1に示すように塗布量、乾燥条件を各種に変えて塗布し、かつ強制乾燥して付着防止層を形成した。
【0074】
(作製試料の種類)
上記により得た表1に示す各種蓋材の試料1〜20のうち、試料1〜3、5は付着防止層におけるバインダーの種類を変えてその影響を調べたものである。試料4は、バインダーなしのものである。試料6、7は、疎水性湿式シリカ微粒子の粒径を変えてその影響を調べたものである。
【0075】
試料8から熱封緘層の種類を変えた。試料8〜9、17は塗布量、試料11〜13、16は、疎水性湿式シリカ粒子とバインダーの配合比率を各種に変えてその影響を調べたものである。
【0076】
試料14、15は、蓋材本体における熱封緘層の種類をシーラントタイプに変えて影響を調べたものである。
【0077】
試料18は、疎水性湿式シリカ微粒子ではなく、疎水性乾式シリカ微粒子(一次粒子径 10nm)を使用し、試料19,20は、コート液の乾燥条件を変えてその影響を調べたものである。
【0078】
(評価試験)
(1)付着防止性能
各試料No.1〜20の蓋材の裏面、即ち付着防止層の外面上に、アロエヨーグルト(森永乳業株式会社製 商標「森永アロエヨーグルト」)を約0.5ccの液滴として滴下し、試料をゆっくりと傾けたときに上記液滴が「転がりはじめたときの傾斜角度」を測定して、次の基準で判定評価した。
◎・・・30度以下
○・・・31度以上60度以下
×・・・61度以上
【0079】
(2)シール性
試料No.1〜20の蓋材を、120〜180℃×0.2MPa×1.0secの熱圧シール条件で容器本体(ポリスチレン製容器、試料No.14、15はポリエチレン製容器)のフランジ面上にヒートシールした。
【0080】
そして、付着防止層を設けていない蓋材本体のままの蓋材におけるシール強度(蓋材の耐剥離強度・密封性)を基準値として、シール強度の低下率を下記の基準で判定評価した。
◎・・・付着防止層なしのものとほぼ同等
○・・・強度低下20%未満
×・・・強度低下20%以上
【0081】
(3)密着性
試料No.1〜20の各蓋材の付着防止層の面に、黒い布を巻き付けた重り(500g)を垂直に載せ、ゆっくりと長さ200mm擦り、布に付着したシリカを目視で確認した。
【0082】
そして、黒い布における疎水性微粒子及び付着防止層の転移付着量(剥離量)を目視検査し、下記の評価基準で評価した。
◎・・・ほとんど付着なし
○・・・許容範囲と認められる僅かな付着あり
×・・・明らかに多くの付着あり
【0083】
上記(1)〜(3)の各評価試験の結果を、表2に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
表2の「付着防止性」試験の結果に示すように、本発明による内容物付着防止蓋材においては、試料を僅かに傾けるだけでヨーグルト液滴が転がり移動を始める。このことは、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の粘稠な液体成分を含むような内容物に対し、蓋材裏面への該内容物の付着防止効果に優れたものであることを示す。しかも「シール性」試験の結果に示すように、付着防止層の存在によってヒートシール性(シール強度)を大きく損なうことなく、良好な密封性を維持しつつ、上記付着防止性能を付与しうる。加えて、「密着性」試験の結果に見られるように、疎水性粒子及びそれを含む付着防止層の密着性が良好で、不本意な疎水性微粒子の分離脱落、付着防止層の部分剥離等のおそれがなく、長期に亘って内容物付着防止性能を安定に維持しうると共に、容器内への異物混入のおそれのない衛生上も問題のないものであることを確認し得た。