(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出部により検出された前記頂点位置を通るアキシャル面、又は、当該頂点位置より所定の距離離れた位置のアキシャル面により前記3次元医用画像を切断したアキシャル断面画像、当該アキシャル断面画像の位置を前記3次元医用画像の他の画像に重畳した重畳画像の少なくとも一つを所定の表示部に表示するように制御する制御部、
を更に備える、請求項1に記載の画像処理装置。
前記肺野領域抽出部は、前記3次元医用画像を構成する画素の中で画素値が所定の閾値以下の画素を特定することで、空気領域を抽出し、当該抽出した空気領域内の一つの画素をシード点とした領域拡張法を行なうことで前記肺野領域を抽出し、
前記肺野底部領域抽出部は、前記3次元医用画像の各画素が前記肺野領域として抽出された画素であるか否かを、前記被検体の下肢部から頭部に向かう体軸方向に沿った複数の走査方向にて判定し、各走査方向にて最初に前記肺野領域として判定した画素により形成される領域を前記肺野底部領域として抽出する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、画像処理装置の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態に係る画像処理装置は、X線CT(Computed Tomography)装置やX線診断装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などの医用画像診断装置により撮影された被検体胸部の3次元医用画像を用いて、横隔膜上端の位置を検出する装置である。
【0010】
(実施形態)
まず、本実施形態に係る画像処理装置の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る画像処理装置の構成を説明するための図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る画像処理装置30は、医用画像データベース20に接続され、また、医用画像データベース20は、医用画像診断装置10と接続される。
【0012】
医用画像診断装置10は、X線CT装置や、X線診断装置、MRI装置などの医用画像診断装置である。医用画像データベース20は、各種の医用画像のデータを管理するシステムであるPACS(Picture Archiving and Communication System)のデータベースや、医用画像が添付された電子カルテを管理する電子カルテシステムのデータベースなどである。具体的には、医用画像データベース20は、肺気腫の検査が行なわれた被検体の胸部を撮影した3次元医用画像を記憶している。
図2は、本実施形態に係る画像処理装置による画像処理対象となるデータの一例を説明するための図である。
【0013】
例えば、医用画像データベース20は、
図2に示すように、画像処理装置30の画像処理対象である3次元X線CT画像、すなわち、肺気腫の検査が行なわれた被検体の胸部を医用画像診断装置10であるX線CT装置により撮影した3次元X線CT画像などを記憶している。
【0014】
なお、以下では、被検体の胸部を撮影した3次元X線CT画像が画像処理装置30の画像処理対象である場合について説明するが、本実施形態は、画像処理装置30の画像処理対象が、被検体の胸部を撮影した3次元MRI画像や、被検体の胸部を撮影した3次元X線画像である場合であっても、適用可能である。
【0015】
図1に戻って、本実施形態に係る画像処理装置30は、入力部31と、表示部32と、肺野領域抽出部33と、肺野底部領域抽出部34と、検出部35と、制御部36とを有する。
【0016】
入力部31は、マウス、キーボードなどを有し、画像処理装置30の操作者からの各種設定要求を受け付ける。例えば、入力部31は、画像処理対象となる3次元X線CT画像の指定を操作者から受け付ける。これにより、画像処理装置30は、後述する制御部36の処理により、操作者が指定した3次元X線CT画像を医用画像データベース20から取得する。
【0017】
表示部32は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイなどのモニタを有する。表示部32は、入力部31を介して操作者からコマンドを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、画像処理装置30により実行された画像処理の結果を表示したりする。
【0018】
肺野領域抽出部33は、画像処理対象となる3次元医用画像を構成する各画素の画素値に基づいて、当該3次元医用画像から肺野領域を抽出する。具体的には、まず、肺野領域抽出部33は、3次元医用画像を構成する画素の中で画素値が所定の閾値以下の画素を特定することで、空気領域を抽出する。
図3A及び
図3Bは、肺野領域抽出部を説明するための図である。
【0019】
例えば、肺野領域抽出部33は、3次元X線CT画像を構成する画素の中でCT値が空気のCT値と見なされる「閾値:−950HU」以下の低CT値領域を特定することで、
図3Aに示すように、空気領域を抽出する。
図3Aに示す一例では、肺野領域抽出部33は、閾値以下の領域の画素値を「1」、閾値より大きい領域の画素値を「0」とする2値化処理を行なうことで、空気領域が白で描出された2値化画像を生成する。なお、
図3Aでは、空気領域の2値化画像を2次元で示しているが、実際には、肺野領域抽出部33が生成する空気領域の2値化画像は、3次元画像である。
【0020】
そして、肺野領域抽出部33は、空気領域内の一つの画素をシード点とした領域拡張法を行なうことで肺野領域を抽出する。ここで、横隔膜は、肺野底部と接しているが、解剖学的に、肝臓が右側に位置するために、右肺野にある横隔膜上端の位置は、左肺野にある横隔膜上端の位置より高い位置にある。そこで、本実施形態では、肺野領域抽出部33は、空気領域にて被検体の右側に位置する領域内の一つの画素をシード点とした領域拡張法を行なうことで右肺野領域を抽出する。
【0021】
例えば、肺野領域抽出部33は、
図3Bの左図に示すように、空気領域の右側の領域内にある一画素をシード点とする。そして、肺野領域抽出部33は、シード点を起点として画素値が「1」の画素を順次特定することで、画素値が「1」の領域を拡張する。これにより、肺野領域抽出部33は、
図3Bの右図に示すように、右肺野領域を抽出する。
図3Bに示す一例では、肺野領域抽出部33は、領域拡張法により右肺野領域として抽出された領域の画素値を「1」、右肺野領域以外の領域の画素値を「0」とする2値化処理を行なうことで、右肺野領域が白で描出された2値化画像を生成する。なお、
図3Bの右図では、右肺野領域の2値化画像を2次元で示しているが、実際には、肺野領域抽出部33が生成する右肺野領域の2値化画像は、3次元画像である。
【0022】
ここで、シード点は、操作者により設定される場合であっても良いし、肺野領域抽出部33により設定される場合であっても良い。操作者が手動によりシード点を設定する場合、例えば、操作者が入力部31を介して入力した指示に基づいて、後述する制御部36は、
図3Aで示した空気領域の3次元2値化画像からコロナル断面画像を生成し、生成したコロナル断面画像を表示部32にて表示させる。そして、操作者は、表示されたコロナル断面画像を参照して、シード点となる画素を、入力部31を介して設定する。
【0023】
また、シード点が自動的に設定される場合、肺野領域抽出部33は、空気領域において右肺野領域である可能性の高い一画素を検出する。具体的には、肺野領域抽出部33は、画像データ(空気領域の3次元2値化画像)を画像サイズの半分のサイズで左右に分割する。例えば、肺野領域抽出部33は、撮影時の被検体の体位及び医用画像診断装置10の座標系の情報など画像データに付与されている付帯情報を参照して、画像データを被検体の右側及び左側に分割する。そして、肺野領域抽出部33は、例えば、右側の画像データの中心に位置する一画素を、右肺野領域である可能性の高い画素として検出し、検出した画素をシード点として設定する。
【0024】
あるいは、シード点が自動的に設定される場合、肺野領域抽出部33は、例えば、右側の画像データにおいて、所定サイズの3次元領域内にある画素(ボクセル)の画素値がすべて「1」である領域を抽出し、抽出した領域の中心に位置する一画素を、右肺野領域である可能性の高い画素として検出し、検出した画素をシード点として設定する。
【0025】
図1に戻って、肺野底部領域抽出部34は、肺野領域抽出部33により抽出された肺野領域から、肺野底部領域を抽出する。具体的には、肺野底部領域抽出部34は、3次元医用画像の各画素が肺野領域として抽出された画素であるか否かを、被検体の下肢部から頭部に向かう体軸方向に沿った複数の走査方向にて判定する。そして、肺野底部領域抽出部34は、各走査方向にて最初に肺野領域として判定した画素により形成される領域を肺野底部領域として抽出する。なお、本実施形態では、肺野底部領域抽出部34は、肺野領域抽出部33により抽出された右肺野領域から肺野底部領域を抽出する。
図4は、肺野底部領域抽出部を説明するための図である。
【0026】
すなわち、肺野底部領域抽出部34は、右肺野領域の2値化画像において、
図4の左図に示すように、被検体の下肢部から頭部に向かう体軸方向に沿った複数の走査方向を設定する。そして、肺野底部領域抽出部34は、各走査方向にある画素の画素値が「0」であるか「1」であるかを判定する。そして、肺野底部領域抽出部34は、
図4の右図に示すように、各走査方向にて最初に画素値が「1」であると判定した画素(ボクセル)により形成される領域を肺野底部領域として抽出する。
図4の右図に示す一例では、肺野底部領域抽出部34は、肺野底部領域として抽出された領域の画素値を「1」、肺野底部領域以外の領域の画素値を「0」とする2値化処理を行なうことで、肺野底部領域が白で描出された2値化画像を生成する。なお、
図4の右図では、肺野底部領域の2値化画像を2次元で示しているが、実際には、肺野底部領域抽出部34が生成する肺野底部領域の2値化画像は、3次元画像である。ここで、肺野底部領域抽出部34により抽出された肺野底部領域を、以下、肺野底部領域マスクと記載する場合がある。
【0027】
図1に戻って、検出部35は、肺野底部領域抽出部34により抽出された肺野底部領域の被検体の頭部側の頂点位置を検出する。具体的には、検出部35は、肺野底部領域が存在する範囲内における3次元医用画像の複数のアキシャル面それぞれにて肺野底部領域が占める面積に基づいて、頂点位置を検出する。
【0028】
換言すると、検出部35は、肺野底部領域として抽出された領域の中で、真に横隔膜と広範囲で接している領域を特定し、特定した領域の中で最も高い位置(最も頭部側にあるアキシャル面の位置)を横隔膜の上端位置として検出する。以下、検出部35が行なう処理の具体例について、
図5、
図6A、
図6B、
図6C及び
図6Dを用いて説明する。
図5は、検出部の処理を説明するためのフローチャートであり、
図6A、
図6B、
図6C及び
図6Dは、検出部を説明するための図である。
【0029】
まず、
図5に示すように、検出部35は、肺野底部領域が抽出されたか否かを判定する(ステップS1)。ここで、肺野底部領域が抽出されていない場合(ステップS1否定)、検出部35は、待機状態となる。
【0030】
一方、肺野底部領域が抽出された場合(ステップS1肯定)、検出部35は、スライス番号「i」を「0」と設定する(ステップS2)。ここで、スライス番号「i」は、3次元X線CT画像を構成する複数のアキシャル断面画像の中で、肺野底部領域マスクが存在するアキシャル断面画像の数(スライス数)により決定される範囲の整数となる。例えば、スライス数が「100」である場合、「i」は、「0」から「99」の整数となる。
【0031】
そして、検出部35は、スライス番号「i」の面積「Si」を算出し(ステップS3)、算出した「Si」を配列「A[i]」として保存する(ステップS4)。そして、検出部35は、未処理のスライスがあるか否かを判定する(ステップS5)。例えば、検出部35は、「i」が「99」であるか否かを判定する。
【0032】
未処理のスライスがある場合、すなわち、「i」が「99」より小さい整数である場合(ステップS5肯定)、検出部35は、「i=i+1」として「i」をインクリメントし(ステップS6)、ステップS5における面積算出処理を行なう。
【0033】
すなわち、ステップS3の処理において、まず、検出部35は、
図6Aに示すように、肺野底部領域の2値化画像から、肺野底部領域マスクを通るスライス番号「i」のアキシャル断面画像を生成する。そして、ステップS3の処理において、検出部35は、
図6Aに示すように、スライス番号「i」のアキシャル断面画像にて、肺野底部領域に対応する画素値「1」の画素数をカウントすることで、面積「Si」を算出する。そして、検出部35は、ステップS4の処理において、「Si」を配列「A[i]」として保存する。
【0034】
これにより、検出部35は、
図6Bに示すように、スライス番号(要素番号)が「0」から「99」の100個の配列「A」を保存する。すなわち、検出部35は、
図6Bに示すように、スライス番号「0」の面積を示す配列「A[0]=120」や、スライス番号「1」の面積を示す配列「A[1]=250」、スライス番号「50」の面積を示す配列「A[50]=185」などを保存する。
【0035】
図5のフローチャートに戻ると、未処理のスライスがない場合(ステップS5否定)、検出部35は、「A」を面積値(画素数)に基づいて降順にソートする(ステップS7)。そして、検出部35は、ソートした結果、上位15位のうち、Aの最小要素番号を探索することで、頂点位置を検出し(ステップS8)、検出処理を終了する。
【0036】
すなわち、検出部35は、ステップS7の処理において、
図6Cに示すように、「A」を面積値(画素数)に基づいて降順にソートする。そして、検出部35は、ステップS7の処理において、
図6Cに示すように、上位15位の配列を特定する。そして、検出部35は、ステップS8の処理において、
図6Dに示すように、上位15位のうち、要素番号(スライス番号)が最小である「i=1」を横隔膜上部が位置するスライス面(アキシャル面)であると検出する。なお、上記では、3次元X線画像の撮影時に再構成されたアキシャル断面画像の枚数により、スライス数が設定される場合について説明した。しかし、本実施形態は、3次元X線画像の撮影時より細かいスライス間隔で右肺野領域の2値化画像からアキシャル断面画像を生成して、上記した肺野底部領域マスクの頂点位置の検出処理が実行される場合であっても良い。
【0037】
図1に戻って、制御部36は、画像処理装置30の全体制御を行なう。すなわち、制御部36は、操作者が指定した画像データの転送要求を医用画像データベース20に送信したり、医用画像データベース20から転送された画像データを肺野領域抽出部33に転送したりする。また、制御部36は、検出部35の処理結果を表示部32に表示するように制御する。
【0038】
一例を挙げると、制御部36は、検出部35により検出された頂点位置を通るアキシャル面により3次元医用画像を切断したアキシャル断面画像、当該アキシャル断面画像の位置を3次元医用画像の他の画像に重畳した重畳画像の少なくとも一つを表示部32に表示するように制御する。
図7A、
図7B及び
図7Cは、制御部の制御により表示される画像の一例を説明するための図である。
【0039】
例えば、制御部36は、
図7Aに示すように、検出部35により探索されたスライス番号に対応するアキシャル面により3次元X線CT画像を切断したアキシャル断面画像を表示させる。
【0040】
また、制御部36は、3次元X線CT画像からコロナル断面画像を生成する。そして、制御部36は、例えば、
図7Bに示すように、コロナル断面画像に、横隔膜上部の位置に対応するアキシャル面の位置を示す点線を重畳させたうえで、表示部32に表示するように制御する。
図7Bに示す一例では、コロナル断面画像に描出された右肺野底部領域の頂点に横隔膜上部が位置していることが示されている。あるいは、制御部36は、3次元X線CT画像からサジタル断面画像を生成し、サジタル断面画像に、横隔膜上部の位置に対応するアキシャル面の位置を示す点線を重畳させたうえで、表示部32に表示するように制御しても良い。
【0041】
また、制御部36は、
図7Cに示すように、アキシャル断面画像において、肺気腫領域を抽出し、抽出した肺気腫領域をさらに表示させてもよい。また、肺気腫領域の抽出及び表示処理は、上述したコロナル断面画像やサジタル断面画像において実行されてもよい。なお、アキシャル断面画像の位置が重畳される画像は、上述したように、3次元医用画像のコロナル断面画像やサジタル断面画像に限定されるものではない。アキシャル断面画像の位置が重畳される画像は、例えば、3次元医用画像のボリュームレンダリング画像や、3次元医用画像をサジタル面やコロナル面以外の任意の断面で切断したMPR(Multi Planar Reconstruction)画像、3次元医用画像のMIP(Maximum Intensity Projection)画像等、3次元医用画像の他の画像であっても良い。
【0042】
ここで、肺気腫の画像診断を行なう際のガイドラインでは、医師が参照すべき断面として、横隔膜上端の位置を通るアキシャル面の他に、大動脈弓上縁付近の上肺野や、気管分岐点付近の中肺野、右横隔膜上の1〜3cm付近の下肺野のアキシャル面も指定されている。そこで、制御部36は、横隔膜上部が位置するアキシャル面の他に、上肺野や中肺野、下肺野が位置するアキシャル面を表示させても良い。また、制御部36は、横隔膜上部が位置するアキシャル面を示す点線の他に、上肺野や中肺野、下肺野が位置するアキシャル面を示す点線を、例えば、コロナル断面画像やサジタル断面画像に重畳表示させても良い。かかる場合、制御部36は、検出部35により検出された頂点位置より所定の距離離れた位置のアキシャル面により3次元医用画像を切断したアキシャル断面画像、当該アキシャル断面画像の位置を3次元医用画像の他の画像に重畳した重畳画像の少なくとも一つを表示部32に表示するように制御する。例えば、制御部36は、頂点位置より頭部側に2cm離れた位置のアキシャル面により3次元医用画像を切断したアキシャル断面画像を表示させる。或いは、制御部36は、例えば、頂点位置より頭部側に2cm離れた位置のアキシャル面の位置を示す点線を、3次元医用画像のアキシャル断面画像以外の他の画像(例えば、コロナル断面画像や、サジタル断面画像、MPR画像、ボリュームレンダリング画像、MIP画像等)に重畳させた重畳画像を表示させる。なお、頂点位置からの距離は、「頂点位置から頭部側に2cm」と初期設定されている場合であっても、例えば、重畳画像の表示の際に、操作者により、例えば、「頂点位置から頭部側に1.5cm」と手動設定される場合であっても良い。また、制御部36は、頂点位置及び頂点位置から所定の距離離れた位置の双方を用いて、各種画像の表示を行なっても良い。
【0043】
次に、
図8を用いて、本実施形態に係る画像処理装置30の処理について説明する。
図8は、本実施形態に係る画像処理装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0044】
図8に示すように、本実施形態に係る画像処理装置30は、画像処理対象となる3次元医用画像の指定を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、画像処理対象となる3次元医用画像の指定を受け付けていない場合(ステップS101否定)、画像処理装置30は、待機状態となる。
【0045】
一方、画像処理対象となる3次元医用画像の指定を受け付けた場合(ステップS101肯定)、画像処理装置30は、指定された3次元医用画像を読込む(ステップS102)。例えば、画像処理装置30は、被検体の胸部が撮影された3次元X線CT画像を読込む。
【0046】
そして、肺野領域抽出部33は、3次元医用画像を構成する各画素の画素値に基づいて、当該3次元医用画像から肺野領域を抽出する(ステップS103、
図3を参照)。
【0047】
その後、肺野底部領域抽出部34は、肺野領域抽出部33により抽出された肺野領域から、肺野底部領域を抽出し(ステップS104、
図4を参照)、検出部35は、肺野底部領域抽出部34により抽出された肺野底部領域の被検体の頭部側の頂点位置を検出する(ステップS105、
図5及び
図6を参照)。
【0048】
そして、制御部36は、検出部35の検出結果を表示部32に表示するように制御し(ステップS106)、処理を終了する。すなわち、制御部36は、検出部35により検出された頂点位置を通るアキシャル面により3次元医用画像を切断したアキシャル断面画像、当該アキシャル断面画像の位置を3次元医用画像の他の画像に重畳した重畳画像の少なくとも一つを表示部32に表示するように制御する。或いは、制御部36は、頂点位置より所定の距離離れた位置のアキシャル面により3次元医用画像を切断したアキシャル断面画像、当該アキシャル断面画像の位置を3次元医用画像の他の画像に重畳した重畳画像の少なくとも一つを表示部32に表示するように制御する。
【0049】
上述してきたように、本実施形態では、肺野領域抽出部33は、被検体の胸部を撮影した3次元医用画像を構成する各画素の画素値に基づいて、当該3次元医用画像から肺野領域を抽出する。肺野底部領域抽出部34は、肺野領域抽出部33により抽出された肺野領域から、肺野底部領域を抽出する。検出部35は、肺野底部領域抽出部34により抽出された肺野底部領域の被検体の頭部側の頂点位置を検出する。制御部36は、検出部35により検出された頂点位置を通るアキシャル面、又は、当該頂点位置より所定の距離離れた位置のアキシャル面により3次元医用画像を切断したアキシャル断面画像、当該アキシャル断面画像の位置を3次元医用画像の他の画像に重畳した重畳画像の少なくとも一つを表示部32に表示するように制御する。
【0050】
すなわち、本実施形態では、横隔膜上部の位置を、肺野底部領域の頂点となる位置という客観的判断基準により自動的に決定することができる。従って、本実施形態では、再現性のある横隔膜上端の位置決定を簡易かつ迅速に行なうことが可能となる。また、本実施形態では、肺気腫の画像診断を行なう際のガイドラインに沿って、「横隔膜上部のアキシャル断面画像、又は、横隔膜上部から所定の距離離れた位置のアキシャル断面画像」を表示したり、「横隔膜上部の位置、又は、横隔膜上部から所定の距離離れた位置が、3次元医用画像の各種画像に重畳された画像」を表示したりすることができる。従って、本実施形態では、肺気腫に関する画像診断の支援を効率良く行なうことができる。
【0051】
また、本実施形態では、肺野領域抽出部33は、3次元医用画像を構成する画素の中で画素値が所定の閾値以下の画素を特定することで、空気領域を抽出し、当該抽出した空気領域内の一つの画素をシード点とした領域拡張法を行なうことで肺野領域を抽出する。そして、肺野底部領域抽出部34は、3次元医用画像の各画素が肺野領域として抽出された画素であるか否かを、被検体の下肢部から頭部に向かう体軸方向に沿った複数の走査方向にて判定し、各走査方向にて最初に肺野領域として判定した画素により形成される領域を肺野底部領域として抽出する。すなわち、本実施形態では、肺野領域の抽出処理及び肺野底部領域の抽出処理を、画像処理対象となる医用画像の特性に基づいて、簡易に実行することができる。
【0052】
そして、本実施形態では、検出部35は、肺野底部領域が存在する範囲内における3次元医用画像の複数のアキシャル面それぞれにて肺野底部領域が占める面積に基づいて、頂点位置を検出する。ここで、肺野領域として抽出される領域には、気管や気管支の空気領域など、肺野でない領域が含まれてしまう場合も想定される。かかる場合、肺野底部領域マスクには、肺野底部でない部分が含まれることとなり、その結果、単純に肺野底部領域マスクの頂点を決定しても、決定した頂点位置は、横隔膜上部の位置とならない場合がある。
【0053】
そこで、本実施形態では、肺野底部でない部分が横隔膜上部の位置と検出されることを回避するため、肺野底部領域マスク内にある複数のアキシャル面それぞれにて肺野底部領域が占める画素数をカウントし、カウント数(面積)が大きいと判定されたアキシャル面の中で最も高い位置にあるアキシャル面の位置を頂点位置(横隔膜上部の位置)として検出する。すなわち、本実施形態では、周囲が肺野底部領域により占められていることから、真に横隔膜と接していると判定される肺野底部領域マスクの範囲を特定したうえで、頂点位置を検出することができる。従って、本実施形態では、横隔膜上部の位置の検出精度を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、肺野領域抽出部33は、空気領域にて被検体の右側に位置する領域内の一つの画素をシード点とした領域拡張法を行なうことで右肺野領域を抽出する。そして、肺野底部領域抽出部34は、肺野領域抽出部33により抽出された右肺野領域から肺野底部領域を抽出する。
【0055】
すなわち、本実施形態では、右肺野にある横隔膜上端の位置が横隔膜全体における上端の位置である可能性が高いという解剖学的知見に基づいて、右肺野領域のみを処理対象とする。その結果、本実施形態では、画像処理に要する負荷を軽減することができ、横隔膜上端の位置決定をより迅速に行なうことが可能となる。
【0056】
なお、上記した実施形態は、右肺野領域のみから肺野底部領域を抽出して、肺野底部領域の頂点位置を検出する場合について説明した。しかし、本実施形態は、左肺野領域についても、肺野底部領域の抽出処理及び頂点位置の検出処理を行なっても良い。かかる場合、検出部35は、左右の肺野底部領域の頂点位置を比較して、より高い位置にある頂点の位置を横隔膜の上端として検出する。
【0057】
また、上記した実施形態で説明した画像処理方法は、画像処理対象となる3次元医用画像を撮影した医用画像診断装置内で実行される場合であってもよい。すなわち、上記した本実施形態は、X線CT装置、X線診断装置、又は、MRI装置などに画像処理装置30が組み込まれる場合であってもよい。
【0058】
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、再現性のある横隔膜上端の位置決定を簡易かつ迅速に行なうことが可能となる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。