(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976295
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】扉取付け用建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/10 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
E06B7/10
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-227857(P2011-227857)
(22)【出願日】2011年10月17日
(65)【公開番号】特開2013-87471(P2013-87471A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】505064390
【氏名又は名称】株式会社美研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】山崎 久吉
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−226066(JP,A)
【文献】
特許第4145848(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に固定する扉取付け枠の縦かまちに、扉で仕切られる両側の空間を連通させる通気路を設けた扉取付け用建具において、
前記縦かまちが、扉取付け用の内側縦部材とその外側に位置する外側縦部材とからなり、前記内側縦部材と外側縦部材を、両者の対向面間で幅方向の両側に位置するよう上下長さ方向に沿って配置した間隔保持板を挟みこんだ状態で結合し、
この両側間隔保持板によって、前記内側縦部材と外側縦部材の対向面間で両側間隔保持板間に上下長さ方向に沿う通気路を形成し、
前記内側縦部材と外側縦部材の対向面で通気路に臨む部分の一方に、内部空間が通気路と連通する凹溝と、同じく他方に前記凹溝内に向けて突出する突条を上下長さ方向に沿って設け、
前記突条が通気路を二分すると共に、凹溝の内部空間における通気路との連通部分を両側に区切ることにより、凹溝の内部空間を屈曲通路に形成し、
前記両側間隔保持板は、上下長さ方向に沿って複数に分断された配置となり、上下の端部間が通気路と連通する開口部になっており、
前記内側縦部材は、幅方向に長い断面が扁平な角筒形に形成され、前記外側縦部材に対向する面の幅方向中央位置に前記凹溝が長さ方向の全長にわたって設けられ、
前記間隔保持板は、その厚みを突条の突出高さよりも薄く設定され、前記内側縦部材と前記外側縦部材の結合により、突条は凹溝内に突出することを特徴とする扉取付け用建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホテルやマンション等の浴室において、強化ガラスを用いた一枚物の扉を取付けるために用いる扉取付け用建具、更に詳しくは、脱衣室から浴室への常時通気を簡単な構造で確保することができるようにした扉取付け用建具に関する。
【背景技術】
【0002】
ホテルやマンション等の浴室において、脱衣室との出入り口に設ける扉に強化ガラスを用いた一枚物の扉を採用し、浴室のデザインや環境を見た目に豪華な感じにすると共に、広く見せるようにすることが行われている。
【0003】
このような浴室で発生した湯気や湿気は、浴室の天井や壁に設けた換気扇によって排出するため、浴室の出入り口を扉で密閉すると、脱衣室側から浴室内への空気の流れが遮断され、浴室に対する換気作用が低下するため、浴室の出入り口に固定する扉取付け枠の縦かまちに、扉で仕切られる脱衣室と浴室を連通させる通気路を設けた扉取付け用建具が提案されている。
【0004】
従来の扉取付け用建具は、枠状に形成した扉取付け枠における扉枢止側の縦かまちを、扉取付け用の内側縦部材とその外側に間隔を置いて位置する外側縦部材で形成し、前記扉取付け用内側縦部材と外側縦部材の対向面間で上下両端部の位置に、上部結合部材と下部結合部材を介在させることにより、前記内側縦部材と外側縦部材の対向面間に、脱衣室と浴室を同通させる通気路を形成し、この通気路の浴室に開口する面にガラリを設け、このガラリによって通気路を開閉するようにした構造になっている。
【0005】
上記ガラリは、重ね合わせた上下に長い固定板と可動板の両側を、内側縦部材と外側縦部材に設けた縦溝に嵌め込み、可動板の上下移動により固定板と可動板に設けた両者の通気孔の連通と遮断を行うことで通気路を開閉し、また、通気量を調整するものである (例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−226066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年健康維持や美容の関心が高まり、入浴時にミスト効果やサウナ効果で、美肌、老廃物の除去、疲労回復等が得られるミスト発生設備やサウナ設備の設置要望が増大し、これら設備の使用後は浴室の換気を24時間連続して行うことになるが、上記のようなガラリによって通気路を開閉する通気構造では、往々にしてガラリを閉じの状態にしたままで放置することがあり、このように、通気路が閉鎖されると、浴室の通気が得られないことで換気作用が低下し、湿度上昇による浴室躯体の劣化やカビの発生を招くことになる。
【0008】
また、ガラリによって通気路を開閉する通気構造は、ガラリのために部品点数が増加するだけでなく、扉取付け用建具の組み立てに手間と時間を要することになり、製品のコストアップにつながるという点で改良の余地がある。
【0009】
そこで、この発明の課題は、ガラリを省くことによって常時通気を確保することができ、ホテルやマンション等の一枚物のガラス扉を用いた浴室において、ミスト発生設備やサウナ設備を設置しても、湿度上昇による浴室躯体の劣化やカビの発生を抑えることができ、しかも、構造の簡素化による部品点数の削減と組み立て性の向上を図ることができる扉取付け用建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するため、この発明は、建物の開口部に固定する扉取付け枠の縦かまちに、扉で仕切られる両側の空間を連通させる通気路を設けた扉取付け用建具において、前記縦かまちが、扉取付け用の内側縦部材とその外側に位置する外側縦部材とからなり、前記内側縦部材と外側縦部材を、両者の対向面間で幅方向の両側に位置するよう上下長さ方向に沿って配置した間隔保持板を挟みこんだ状態で結合し、この両側間隔保持板によって、前記内側縦部材と外側縦部材の対向面間で両側間隔保持板間に上下長さ方向に沿う通気路を形成し、前記内側縦部材と外側縦部材の対向面で通気路に臨む部分の一方に、内部空間が通気路と連通する凹溝と、同じく他方に前記凹溝内に向けて突出する突条を上下長さ方向に沿って設け、前記突条が通気路を二分すると共に、凹溝の内部空間における通気路との連通部分を両側に区切ることにより、凹溝の内部空間を屈曲通路に形成し、前記両側間隔保持板は、上下長さ方向に沿って複数に分断された配置となり、上下の端部間が通気路と連通する開口部になっているようにしたものである。
【0011】
ここで、上記縦かまちにおける扉取付け用の内側縦部材は、幅方向に長い断面が扁平な角筒形となり、外側縦部材に対向する面の幅方向中央位置に凹溝が長さ方向の全長にわたって設けられ、脱衣室側に臨むコーナ縁に戸当たり用のシール材が設けられている。
【0012】
また、外側縦部材は、幅方向に長い断面が扁平な角筒形となり、内側縦部材に対向する面の幅方向中央位置に凹溝へ向けて突出する突条が設けられ、前記内側縦部材と外側縦部材を、所定の厚みを有する帯板状の間隔保持板を挟みこんだ状態でビスにより結合することで、縦かまちが組立てられる。
【0013】
上記間隔保持板は、外側縦部材に設けた突条を挟む両側の位置で上端部寄りと下端部寄りの二箇所の位置に配置され、この間隔保持板の厚みによって内側縦部材と外側縦部材の対向面間に突条で両側に二分された通気路が形成され、両側の通気路は凹溝によって連通することになる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、扉取付け枠の縦かまちに扉で仕切られる両側の空間を連通させる通気路を設け、この通気路を、縦かまちとなる内側縦部材と外側縦部材の対向面間に間隔保持板を挟みこんで形成したので、浴室の出入り口を扉で密閉するようにしても、扉で仕切られる浴室と脱衣室の通気性を常時確保することができ、浴室へのミスト発生設備やサウナ設備の設置した場合でも、湿度上昇による浴室躯体の劣化やカビの発生を抑えることができ、しかも、内側縦部材と外側縦部材の対向面間に間隔保持板を挟みこむだけでよいので、部品点数及び組立て工数の削減が図れることになり、構造の簡略化により経済的にも有利となる。
【0015】
また、上記通気路は、突条で両側に二分し、二分した両側通気路を凹溝で連通させることにより、通気路の流れ方向の途中を屈曲させた状態となり、浴室側の湯水が通気路を通って脱衣室側に飛散するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明に係る扉取付け用建具を示す浴室側から見た使用状態の正面図
【
図2】この発明に係る扉取付け用建具を示す浴室側から見た使用状態の要部を拡大した正面図
【
図3】この発明に係る扉取付け用建具を示す浴室側から見た使用状態の要部を拡大した斜視図
【
図4】扉取付け用建具の一方縦かまちを示す分解斜視図
【
図5】この発明に係る扉取付け用建具を示す使用状態の要部を拡大した横断平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図示例に基づいて説明する。
【0018】
図1のように、浴室用の扉取付け用建具1は、両側縦かまち2、3と上かまち4及び下かまち5で矩形の扉取付け枠1aに組み立てることで形成され、浴室Aと脱衣室B間の出入り口開口部に組み込んだ状態で、強化ガラスを使用した一枚物の扉6を一方縦かまち2に複数のヒンジ7を用いて取付け、扉取付け枠1aの内周に形成された枠状開口をこの扉6で開閉可能にしている。
【0019】
上記一方縦かまち2は、
図2乃至
図5のように、扉取付け用の内側縦部材8とその外側に間隔を置いて位置する固定用の外側縦部材9とからなり、この内側縦部材8と外側縦部材9を対向面間に間隔保持板10を挟みこんで結合することにより、前記対向面間に浴室Aと脱衣室Bを連通させる通気路12を形成している。
【0020】
上記一方縦かまち2における扉取付け用の内側縦部材8は、
図4のように、ステンレス等の金属板を折り曲げ加工することにより、幅方向に長い断面が扁平な角筒形に形成され、外側縦部材9に対向する面の幅方向中央位置に凹溝13が長さ方向の全長にわたって設けられ、脱衣室B側に臨むコーナ縁にシール材14の取付け溝15が長さ方向の全長にわたって折り曲げ加工され、
図5のように、扉6は閉位置にあるとき脱衣室B側に臨む面がシール材14に圧接するようになっている。
【0021】
上記外側縦部材9は、ステンレス等の金属板を折り曲げ加工することにより、幅方向に長い断面が扁平な角筒形に形成され、内側縦部材8に対向する面の幅方向中央位置に、凹溝13へ向けて突出する突条16が長さ方向の全長にわたって設けられている。
【0022】
上記間隔保持板10は、上下長さが比較的短く、所定の厚みを有する帯板状に形成され、
図3と
図4のように、外側縦部材9の上端部と下端部の位置において、内側縦部材8に対向する面で突条16を挟む両側の位置に重ねて配置し、この状態で間隔保持板10を挟むようにして内側縦部材8と外側縦部材9を重ね、間隔保持板10のある部分の複数箇所でビス17により内側縦部材8と外側縦部材9を結合し、一方縦かまち2の組み立てを行っている。
【0023】
上記間隔保持板10は、長さ方向を外側縦部材9の上下方向に沿わせ、その厚みを突条16の突出高さよりも薄く設定し、突条16から少し離れた位置に配置する。
【0024】
また、内側縦部材8と外側縦部材9の結合により、
図5のように、突条16は凹溝13内に突出するが、この突条16と凹溝13の間には通気に必要な隙間が確保されるようになっている。
【0025】
このような間隔保持板10により内側縦部材8と外側縦部材9間に形成された通気路12は、突条16によって両側に二分されるが、この二分された通気路12は突条16の進入により平面コ字状となった凹溝13によって連通することになり、実質的に通気路12は通気の流れ方向の途中が屈曲したような構造になる。
【0026】
また、両側に二分された通気路12には間隔保持板10が位置する部分が閉鎖されるが、この間隔保持板10は一方縦かまち2の上下長さ方向に沿って上端部と下端部に分断された配置となっているので、両側通気路12における間隔保持板10の無い部分、即ち、上下に位置する間隔保持板間が浴室A側に臨む開口部12a及び脱衣室B側に臨む開口部12bになっている。
【0027】
なお、図示の場合、上記両側縦かまち2、3と上かまち4及び下かまち5は、ステンレス等の金属板の曲げ物によって所定の断面形状に形成したが、これらにアルミ等の押し出し成形品を用いてもよく、また、他方縦かまち3や上かまち4及び下かまち5には、扉6が当接するパッキンを取り付け、扉取付け枠1aの内周出入り口を扉6が密閉するようになっている。
【0028】
この発明の扉取付け用建具である扉取付け枠1aは、上記のような構成であり、ホテルやマンション等の浴室Aと脱衣室Bの出入り口に強化ガラスを用いた一枚物の扉6を設けるために使用する。
【0029】
図5のように、間隔保持板10を挟んで内側縦部材8と外側縦部材9を結合し、一方縦かまち2を組み立て、外側縦部材9を建物側構造物にビス止め固定して、扉取付け枠1aを出入り口開口部に組み込んだ状態で、扉取付け枠1aの一方縦かまち2に強化ガラスを使用した一枚物の扉6をヒンジ7で取付け、扉取付け枠1aの内周に形成された出入り用開口をこの扉6で開閉可能にする。
【0030】
扉取付け枠1aの内側四周囲にはパッキンが設けてあり、閉鎖位置にある扉6はこのパッキンに当接するので、出入り口を密閉することができる。
【0031】
上記のような扉取付け枠1aの固定状態で、一方縦かまち2に設けた通気路12が浴室Aと脱衣室Bを常時連通させることになり、
図5の断面図で矢印によって示すように、浴室Aを強制換気することにより、通気路12を通って脱衣室Bから浴室Aに向けて空気が流れ、これにより、浴室Aの24時間換気が可能になり、浴室A側にミスト発生設備やサウナ設備を設けても、換気が十分に行えることで、湿度上昇による浴室躯体の劣化やカビの発生を抑えることができる。
【0032】
また、一方縦かまち2に設けた通気路12は、突条16で両側に二分して凹溝13で連通させることにより、通気路12の流れ方向の途中を屈曲させた構造となり、これにより、浴室A側の湯水が通気路12を通って脱衣室B側に飛散するのを防止することができる。
【0033】
更に、一方縦かまち2は、内側縦部材8と外側縦部材9の対向面間に間隔保持板10を挟みこむだけの組み立て構造となるので、扉取付け用建具1の部品点数及び組立て工数の削減が図れることになる。
【符号の説明】
【0034】
1 扉取付け用建具
1a 扉取付け枠
2 縦かまち
3 縦かまち
4 上かまち
5 下かまち
6 扉
7 ヒンジ
8 内側縦部材
9 外側縦部材
10 間隔保持板
12 通気路
12a 開口部
12b 開口部
13 凹溝
14 シール材
15 取付け溝
16 突条
17 ビス
A 浴室
B 脱衣室