特許第5976307号(P5976307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アキレス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5976307-ウェーハ保護クッション材の製造方法 図000003
  • 特許5976307-ウェーハ保護クッション材の製造方法 図000004
  • 特許5976307-ウェーハ保護クッション材の製造方法 図000005
  • 特許5976307-ウェーハ保護クッション材の製造方法 図000006
  • 特許5976307-ウェーハ保護クッション材の製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976307
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】ウェーハ保護クッション材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20160809BHJP
   B65D 85/86 20060101ALI20160809BHJP
   B65D 57/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   H01L21/68 V
   B65D85/38 R
   B65D57/00 B
   B65D85/38 S
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-267083(P2011-267083)
(22)【出願日】2011年12月6日
(65)【公開番号】特開2013-120796(P2013-120796A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川島 英一
(72)【発明者】
【氏名】西島 正敬
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−129719(JP,A)
【文献】 特開2001−294292(JP,A)
【文献】 特表2003−505875(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0144927(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 57/00
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質発泡シートの両面に合成樹脂フィルムが積層された後、円状プレス裁断機で裁断してなり、かつ、前記合成樹脂フィルムの表面抵抗が10〜1012Ωであることを特徴とするウェーハ保護クッション材の製造方法
【請求項2】
前記合成樹脂フィルムが、格子状又はドット状にエンボス加工されてなることを特徴とする請求項1記載のウェーハ保護クッション材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ保護クッション材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数枚の半導体ウェーハを横置きに積み重ねるコインスタック式搬送容器について記載されている。該容器内の最上段と最下段にはクッション材が設けられ、そのクッション材間にウェーハとスペーサーシートとが交互に介在され、輸送中の振動・衝撃等によるウェーハの損傷を抑制している。
【0003】
一方で近年、半導体製造技術の進歩により、製品の高集積化・精密化が進み、それに伴い製品に付帯する生産設備や包装資材等に、より清浄度(クリーン性)の高いものが求められている。特に、クリーンルーム内に浮遊する塵や埃などのパーティクル(粒子状汚染物質)や包装資材自体から発生するパーティクルは、半導体デバイスの特性や製造上の歩留りに大きな影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−129719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載のクッション材は、軟質ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリスチレンフォーム等の軟質発泡シートに、帯電防止剤または導電性フィラーを含有させることで帯電防止性や導電性を付与し、クッション材にパーティクルが付着するのを抑制している。
【0006】
ところが、クッション材にパーティクルが付着するのを完全に防ぐことは難しく、例えば図5に示すように軟質発泡シートのセル同士間に塵や埃などのパーティクルが入り込んでしまう。そして、その塵や埃を除去することは難しく、清浄度(クリーン性)の高いクッション材を提供することは困難であった。その結果、搬送容器内においてクッション材をはじめ、スペーサーシート、ウェーハの清浄度(クリーン性)が低くなり、すなわち、搬送容器内のような局所空間の清浄化、いわゆるミニエンバイロメントを実現することはできていなかった。
【0007】
そこで、本発明は、これまで実現されていなかった清浄度(クリーン性)の高いクッション材を提供することを目的とする。具体的には、クッション材に空気中に浮遊していた塵や埃などのパーティクルが付着しても、その塵や埃を除去することができ、しかもクッション材自体から発生する塵や埃などのパーティクルを抑制することができる、すなわち、清浄度(クリーン性)の高いクッション材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1記載のウェーハ保護クッション材の製造方法は、軟質発泡シートの両面に合成樹脂フィルムが積層された後、円状プレス裁断機で裁断してなり、かつ、前記合成樹脂フィルムの表面抵抗が103〜1012Ωであることを特徴とする。
また、請求項2記載のウェーハ保護クッション材の製造方法は、請求項1記載の構成に加えて、前記合成樹脂フィルムが、格子状又はドット状にエンボス加工されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウェーハ保護クッション材は、空気中に浮遊していた塵や埃などのパーティクルが付着しても、その塵や埃などのパーティクルを容易に除去することができ、しかもクッション材自体から発生する塵や埃などのパーティクルを抑制することができた清浄度(クリーン性)の高いクッション材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のウェーハ保護クッション材を示す図である。
図2図1の点線部を拡大した図である。
図3】本発明の合成樹脂フィルムをエンボス加工した図である。(a)が格子状のエンボス模様、(b)ドット状にエンボス加工した合成樹脂フィルムを示す図である。
図4】本発明のウェーハ保護クッション材を、搬送容器に収納する際の状態を示す図である。
図5】従来の軟質発泡シートのみをウェーハ保護クッション材とし、そのクッション材を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細を説明する。
【0012】
図1に示すように本発明のウェーハ保護クッション材1は、軟質発泡シートの両面に合成樹脂フィルムが積層されてなり、かつ、前記合成樹脂フィルムの表面抵抗が10〜1012Ωであることを特徴とする。
【0013】
本発明のウェーハ保護クッション材1は、従来のようにセル同士間に塵埃が入り込むことがなく、図2に示すように合成樹脂フィルム3上に塵埃が付着しても、洗浄水やエアー等で洗浄することにより容易に塵埃を除去することができる。更に、軟質発泡シート2の製造時に起因するガスやイオン性物質を外部環境へ放出するのを抑制することができる。
【0014】
また、本発明の軟質発泡シート2の素材としては、軟質ポリエチレンシート、軟質ポリウレタンシート、軟質ポリプロピレンシート、軟質ポリスチレンシート等を用いることができる。
【0015】
また、軟質発泡シート2の厚みは1〜20mmであり、好ましくは3〜10mmである。この厚みが1mm未満であると、緩衝性に劣る。また、厚みが20mmを超えると、容器中のウェーハを収納するスペースが少なくなり、搬送性に劣る。
【0016】
また、軟質発泡シート2は、緩衝性や腰の強さを考えると、独立気泡率の軟質発泡シートが好ましい。なお、ここでいう独立気泡率の軟質発泡シートとは、独立気泡の占める体積の割合がシート全体の25%以上の軟質発泡シートをいう。
【0017】
また、軟質発泡シート2にも導電性や帯電防止性を付与させ、その表面抵抗が1011Ω以下としてもよい。導電性や帯電防止性を付与するためには、軟質発泡シート中に導電性フィラーや帯電防止材を含有させることが挙げられる。
【0018】
本発明の合成樹脂フィルム3の表面抵抗は10〜1012Ωであり、好ましくは、10〜1010Ωである。なお、静電気放電と電界から静電気敏感性デバイス(ESDS)を保護するための一般要求事項を規定した(RCJS−5−1:2010(日本電子部品信頼性センター規格))において、静電気拡散性の表面抵抗は10〜1010Ωが望ましいとされている。
また、合成樹脂フィルムの表面抵抗を10〜1012Ωにするためには、合成樹脂フィルム中に導電性フィラーや帯電防止剤を含有させる、或いは合成樹脂フィルムの表面にポリピロールやポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性ポリマーの薄膜を設けることが挙げられる。
【0019】
本発明の合成樹脂フィルム3の素材としては、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム、およびポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム等を用いることができる。また、これらフィルムは、インフレーション法や押出し法により連続的に成形することができる。
【0020】
また、合成樹脂フィルム3の厚みは10〜200μmであり、好ましくは20〜50μmである。この厚みが10μm未満であると、容器やスペーサーシートとの接触時に破損し易く、ウェーハ保護クッション材を容器へ収納或いは取り出す際に用いる自動機との接触時にも破損し易い。また、厚みが200μmを超えると、軟質発泡シートの緩衝性を低下させる原因となり易い。
【0021】
また、合成樹脂フィルム3は、図3に示すように格子状(a)又はドット状(b)にエンボス加工してもよい。このようにエンボス加工された合成樹脂フィルムを、軟質発泡シートの両面に積層させることで復元性を向上させることができる。
ウェーハ保護クッション材は、例えば搬送容器に収納される際、或いは搬送容器から取り出される際、折れ曲がる場合がある。そうすると、クッション材にシワが発生し、そのシワ部分に塵や埃が溜まり、クリーン性が低くなり易い。そこで、合成樹脂フィルムにエンボス加工することで表面に微細な凹凸を設け、それによりウェーハ保護クッション材が折れ曲がっても元の形状に復元し易くなる。
【0022】
次に、本発明のウェーハ保護クッション材1の製造方法について説明する。
軟質発泡シート2の両面に、合成樹脂フィルム3を加熱しながら対ロールでラミネート加工し、軟質発泡シート2の両面に合成樹脂フィルム3が積層されたウェーハ保護クッション材1を得る。なお、対ロールには多数の突起を有するエンボスロールが使用されていてもよく、そうすることで格子状或いはドット状の凹凸が多数形成された合成樹脂フィルム3を、軟質発泡シート2の両面にラミネートすることができる。
そして、得られたクッション材を円状プレス裁断機で裁断し、ウェーハ保護クッション材1を得た。
【0023】
本発明のウェーハ保護クッション材1は、例えば図4に示すような容器本体と蓋体とからなる搬送容器に収納される。具体的には、ウェーハWとスペーサシートSとは交互に複数枚重ねられて容器内に収納されると共に、その上下端部には本発明のウェーハ保護クッション材1が設けられる。したがって、運搬時の振動等により容器に与えられる衝撃は、本発明のウェーハ保護クッション材1によって吸収され、ウェーハWは該衝撃から保護される。
【実施例】
【0024】
(合成樹脂フィルムAの作製)
低密度ポリエチレン樹脂(プライムポリマー社製:ミラソン 16P)100重量部に、高分子型帯電防止剤15重量部(三井・デュポンポリケミカル社製:Entira SD100)、及びピンク色顔料3重量部を添加し、押出し法にて厚み30μmの合成樹脂フィルムAを得た。
【0025】
なお、得られた合成樹脂フィルムAの表面抵抗をJIS K 6911に準じて、ハイレスタ−UP(三菱化学社製のMCP−HT450型)を用いて測定した結果、10〜1010Ωであった。
【0026】
(合成樹脂フィルムBの作製)
低密度ポリエチレン樹脂(プライムポリマー社製:ミラソン 16P) を、押出し法にて厚み30μmのフィルムを成形した。
続いて、得られたフィルムを、π電子共役系高分子モノマーとしてピロール 1wt%に酸化重合剤兼ドーパント剤としてパラトルエンスルホン酸第二鉄 5wt% を加えた水溶液中へ浸漬させ、ピロールモノマーを重合(化学酸化重合)させて、フィルム両面にポリピロールを析出させ、厚み30μmの合成樹脂フィルムBを得た。
【0027】
なお、得られた合成樹脂フィルムBの表面抵抗をJIS K 6911に準じて、ハイレスタ−UP(三菱化学社製のMCP−HT450型)を用いて測定した結果、10〜10Ωであった。
【0028】
(実施例1)
厚みが3mmの軟質発泡ポリエチレンシート(積水化成社製のライトロン S:独立気泡)の両面に、得られた合成樹脂フィルムAを加熱しながら対ロールでラミネート加工し、クッション材を得た。なお、対ロールには多数の突起を有するエンボスロールが使用されており、合成樹脂フィルムAに格子状の凹凸が多数形成された状態で軟質発泡ポリエチレンシートの両面にラミネートされている。
続いて、得られたクッション材を直径300mmの円状プレス裁断機で裁断し、ウェーハ保護クッション材を得た。
【0029】
(実施例2)
厚みが3mmの軟質発泡ポリエチレンシート(積水化成社製のライトロン S:独立気泡)の両面に、得られた合成樹脂フィルムAを加熱しながら対ロールでラミネート加工され、クッション材を得た。なお、対ロールにはエンボスロールは使用されていない、すなわち、軟質発泡ポリエチレンシートの両面には、表面が平滑である合成樹脂フィルムAがラミネートされている。
続いて、得られたクッション材を直径ウェーハ300mmの円状プレス裁断機で裁断し、ウェーハ保護クッション材を得た。
【0030】
(実施例3)
厚みが3mmの軟質発泡ポリエチレンシート(積水化成社製のライトロン S:独立気泡)の両面に、得られた合成樹脂フィルムBを加熱しながら対ロールでラミネート加工され、クッション材を得た。なお、対ロールには多数の突起を有するエンボスロールが使用されており、合成樹脂フィルムBに格子状の凹凸が多数形成された状態で軟質発泡ポリエチレンシートの両面にラミネートされている。
続いて、得られたクッション材を直径300mmの円状プレス裁断ウェーハ断し、ウェーハ保護クッション材を得た。
【0031】
(実施例4)
厚みが3mmの軟質発泡ポリエチレンシート(積水化成社製のライトロン S:独立気泡)の両面に、得られた合成樹脂フィルムBを加熱しながら対ロールでラミネート加工され、クッション材を得た。なお、対ロールにはエンボスロールは使用されていない、すなわち、軟質発泡ポリエチレンシートの両面には、表面が平滑である合成樹脂フィルムBがラミネートされている。
続いて、得られたクッション材を直径300mmの円状プレス裁断機で裁断し、ウェーハ保護クッシウェーハを得た。
【0032】
(比較例1)
厚みが3mmの軟質発泡ポリエチレンシート(アキレス社製のプロトスクッション(PE):独立気泡)を、直径300mmの円状プレス裁断機で裁断し、ウェーハ保護クッション材とした。
【0033】
なお、この軟質発泡ポリエチレンシートの表面抵抗をJIS K 6911に準じて、ハイレスタ−UP(三菱化学社製のMCP−HT450型)を用いて測定した結果、10〜10Ωであった。
【0034】
(比較例2)
厚みが3mmで円状(直径300mm)の軟質発泡ポリエチレンシート(Fixeon社製のCCF:独立気泡)を、ウェーハ保護クッション材として用いた。
【0035】
なお、この軟質発泡ポリエチレンシートの表面抵抗をJIS K 6911に準じて、ハイレスタ−UP(三菱化学社製のMCP−HT450型)を用いて測定した結果、10〜1011Ωであった。
【0036】
(比較例3)
厚みが3mmの軟質発泡ポリウレタンシート(アキレス社製のプロトスクッション(PU):連続気泡)を、直径300mmの円状プレス裁断機で裁断し、ウェーハ保護クッション材とした。
【0037】
なお、この軟質発泡ポリウレタンシートの表面抵抗をJIS K 6911に準じて、ハイレスタ-UP(三菱化学社製のMCP−HT450型)を用いて測定した結果、10〜1011Ωであった。
【0038】
(比較例4)
厚みが3mmの軟質発泡ポリエチレンシート(積水化成社製のライトロン S:独立気泡)を、直径300mmの円状プレス裁断機で裁断し、ウェーハ保護クッション材とした。
【0039】
なお、この軟質発泡ポリエチレンシートの表面抵抗をJIS K 6911に準じて、ハイレスタ-UP(三菱化学社製のMCP−HT450型)を用いて測定した結果、1013以上であった。
【0040】
実施例1〜4、および比較例1〜4にて得られたクッション材について、1)発塵性、2)洗浄性、3)復元性の評価を行った。その結果を表1に示す。なお、評価方法と評価基準について、以下に示す通りである。
【0041】
1)発塵性
得られたウェーハ保護クッション材を、側方散乱方式の気中パーティクルカウンタ(リオン社製:KM−27型)により、片面を1分間ずつ(両面で2分間)吸引し、粒子径が0.5μm以上の発塵量を計測した。
【0042】
2)洗浄性
得られたウェーハ保護クッション材を搬送容器に収納し、実使用を想定した輸送試験(JIS Z 0232準拠)後に搬送容器からクッション材を取り出し、続いて洗浄水で該クッション材を洗浄し、側方散乱方式の気中パーティクルカウンタ(リオン社製:KM−27型)により、片面を1分間ずつ(両面で2分間)吸引し、粒子径が0.5μm以上の発塵量を計測した。
【0043】
3)復元性
得られたウェーハ保護クッション材を、中央で半分に折り、1分後にシワの状態が回復するか否かを目視で観察した。
◎:シワの状態が回復した。
○:部分的にシワの状態が回復しない部分があった。
【0044】
【表1】
【符号の説明】
【0045】
1 ウェーハ保護クッション材
2 軟質発泡シート
3 合成樹脂フィルム
W ウェーハ
S スペーサーシート
図1
図2
図3
図5
図4