【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、電子機器の位置を推定する方法であって、
推定されるべき位置にて機器によって検出された少なくとも1台の無線送信機の識別情報を含む観測を受信するステップと、
観測を複数のレコードと比較するステップであって、前記複数のレコードのそれぞれが1台または複数の無線送信機の識別情報と対応位置とを含み、前記位置は1台または複数の送信機が検出された位置または位置の集合に基づくステップと、
観測と、対応する第1の位置を含む第1のレコードとの間の第1の適合(match)を検出するステップと、
第1の適合の品質特性を決定するステップと、
第1のレコードの供給源に関する第1の指標を設定するステップと、
観測と、対応する第2の位置を含む第2のレコードとの間の第2の適合を検出するステップと、
第2の適合の品質特性を決定するステップと、
第1の指標とは異なる、第2のレコードの供給源に関する第2の指標を設定するステップと、
第1の指標、第1の適合の品質特性、第2の指標および第2の適合の品質特性に応じて、第1および第2の位置の少なくとも1つに基づいて電子機器の位置を推定するステップと
を含む方法が提供される。
【0008】
本発明の発明者らは、国際公開第2010/015854号パンフレットによって提案されているものより洗練された方法で、異なる機器によって行われた観測を組み合わせることが有利であることを確認した。
【0009】
実施形態によれば、方法は、各適合の品質を、個々の適合されたレコードの起源の指標と共に考慮する。言い換えると、推定される位置は、各適合がどれほど良好であるかと、そのレコードに寄与した(1台または複数の)機器の特性の両方に依存するものになる。本発明の発明者らは、位置を推定する際に複数の(適合する)レコードが利用できるときには、機器の属性および機器がレコードを作成した内部コンテキストを、適合の品質と一緒に考慮すべきであることを確認した。レコードの供給源は、寄与する機器がレコードを作成したときの機器のプロパティ、構成、または状態によって示され得る。内部コンテキストおよびプロパティの重要な側面は、寄与者の固有の属性(例えば、責任を負う機器、ユーザ、またはソフトウェアの属性など)を調べることにより取り込むことができる。方法は、利用可能な情報を可能な最大限まで利用させることができる。適合の品質は、結果として得られる位置推定値のある一定の信頼度を示すことができる。同様に、レコード内のデータの供給源も、そのデータが、そこから電子機器の位置を推定するための適切な、または関連性を有する開始点であることのある一定の信用度を示すことができる。方法では両方の種類の情報を組み合わせ、それによって、特に2つの異なる種類の情報が矛盾する場合に、より正確な位置推定値を生成することを可能にし得る。
【0010】
このコンテキストでは、2つの異なる種類の情報間の「矛盾」は、一方の種類がある手順を示唆し、他方の種類が別の手順を示唆するときに生じる。例えば、2つのレコードの供給源だけが考慮される場合、普通は、別の機器によって生成されたレコードよりも同じ機器によって生成されたレコードを使用しようとするはずである。しかし、後者のレコードについての適合の品質の方がはるかに高く、同じ機器の適合ではなくこの適合を信頼すべきであることが示唆される場合もある。これが、品質特性と供給源の指標との矛盾の一例である。
【0011】
レコードの集合に含まれる位置情報は、多くの場合、不完全であったり、誤りを含んでいたりする。この原因には、観測数の不足、不完全な地理的範囲(すなわち、あるエリアにおいて観測が行われていない)、再現性の欠如(例えば、送信機が移動した、活性化された、または非活性化されたなどのため)が含まれ得る。同様に、レコードに記憶された位置の正確さに関しては常にある程度の不確実性も生じる(例えば、測定誤差のためなど)。
【0012】
本発明は、この限られた不完全な情報を最適に利用することにより位置推定の正確さを改善しようと試みる。
【0013】
レコードの供給源の指標は暗黙的とすることも、明示的とすることもできる。例えば、レコード自身がその供給源(レコードの生成に責任を負う機器の識別情報など)を明示的に識別してもよい。あるいは、レコードの供給源は、レコードの記憶のされ方またはレコードの獲得のされ方において暗示してもよい。例えば、電子機器は内蔵データ記憶手段を有してもよく、電子機器は自身による無線送信機の以前の観測を含むレコードを内蔵データ記憶手段に記憶する。これらのレコードの供給源を設定するのにラベルは不要である。というのは、内蔵データ記憶内のどんなレコードも機器自身によって生成されたことが暗黙的に知られているからである。要約すると、本方法は、レコードをその供給源に従って区別する。しかし、供給源は多種多様な方法で設定することができる。
【0014】
実施形態によっては、第1のレコードは第1のデータベースに記憶され、第2のレコードは第2のデータベースに記憶される。したがって、レコードの供給源の指標は、そのレコードが見つかるデータベースの指標を含み得る。第2のデータベースは、好ましくは、共有データベースであり、各機器の無線環境の観測を共有する機器グループによって使用される。第1のデータベースは個別データベースとすることができ、電子機器によって機器自身の無線環境の観測の履歴を記憶するのに使用される。よって各データベースにはレコードの様々な供給源に従ってデータが投入される。第1のデータベースは1つの供給源、または供給源の集合に関連するレコードを含み、第2のデータベースは別の供給源または供給源の集合に関連するレコードを含む。したがって、適合の検索元であるデータベースの識別情報を示すことは、レコードの供給源を示すことと等しい。
【0015】
本発明の方法は、その場合、第1のデータベース内の観測レコード(例えば、機器自身によって生成された観測など)を、他の機器によって共有される観測(第2のデータベース)とインテリジェントに統合することを可能にする。この方法は、利用可能なデータを一層最適に使用することを可能にする。というのは、位置推定値は、(国際公開第2010/015854号パンフレットで提案されているように)レコードがどのデータベースから検索されたかに基づいてブラインド選択を行うのではなく、各適合の特性を考慮に入れるからである。品質特性は適合の特異性(または独自性)を評価することができる。例えば、この特性は、適合の正当性または地理的正確さに関する確実性または不確実性の相対的度合いを捕えることができる。
【0016】
本明細書において、「データベース」という語は、複数のレコードを含む集合を意味するために使用される。データベースを構成するレコードの集合は、物理的にグループ化されていても、論理的にグループ化されていてもよい。よって例えば、2つの異なるデータベースが、(論理的に)別個のレコードの部分集合として同じ物理記憶装置に記憶されていてもよい。あるいは、2つのデータベースが別個の物理データベースとして異なる記憶装置に記憶されていてもよい。一般に、データベースは、ローカルで記憶およびアクセスが行われてもよいし、リモートで記憶およびアクセスが行われても(すなわち、同じ機器から行われても、異なる機器間で行われても)よい。
【0017】
第1のデータベースは、好ましくは、同じ機器の、個人用または専用のデータベースとすることができる。言い換えると、第1のデータベース内の各レコードは1台または複数の無線送信機の識別情報を含むことができ、対応する位置は、その1台または複数の送信機が、その位置を推定すべき電子機器によって検出された位置に基づくものとすることができる。その場合、第1のデータベースは、個別機器の使用パターンに合わせて固有にカスタマイズされる。というのは、第1のデータベースは、本質的に、1つの観測集合、すなわち、機器自身によって収集された観測だけしか含まないからである。そのようなデータベースは当該機器のみの地理的移動の履歴を表す。
【0018】
実施形態によっては、レコードと関連付けられる位置は、1台または複数の無線送信機が検出された位置と全く同じ位置であることに留意されたい。別の実施形態によっては、レコードに記憶される位置は、送信機が検出された正確な位置と異なっていてもよい。例えば、ユーザ機器が異なる位置において所定の送信機を繰り返し検出する場合、レコードはこれらの位置の平均値である位置を含み得る。別の例では、レコードは、送信機自身の位置の推定値である位置を含んでいてもよく、その場合、送信機位置の推定値は、機器が送信機の信号を検出した1つまたは複数の位置から推測されたものである。これらの例のどちらにおいても、レコードに記憶される位置は、送信機が検出された特定の位置のいずれとも同一ではないが、にもかかわらずこれらに基づくものである。
【0019】
レコードが複数の送信機の識別情報を含む場合には、これらの送信機すべてが単一の機器により、単一の場所と時間において観測されたものである必要はない。互いに関連性のない観測がより少数のレコードへと集約されてもよい。例えば、ある機器が送信機T1を位置P1において観測し、別の機器が送信機T2を近接した位置P2において観測する場合、これは、位置Pと関連付けられた識別情報{T1,T2}を含むレコードによって表されてもよい。ここで、PはP1および/またはP2に基づく。レコードに記憶された位置Pは、P1とP2の平均値とすることもよいし、P1および/またはP2の量子化バージョンでもよく、他の何らかの方法でP1および/またはP2に基づくものでもよい。
【0020】
共有される第2のデータベースに寄与する機器のグループは、好ましくは、個別機器を含むことができる。あるいは、第2のデータベースは、個別機器が属するグループ内の機器を使って構築されてもよいが、その場合には、グループ内の他の機器によって提供されたレコードだけが当該個別機器によって使用される(例えば、個別機器自身のレコードはすでに第1のデータベースにおいて考慮されているため、それらのレコードを第2のデータベースにおいて複製する必要がない)。
【0021】
ある実施形態では、第1と第2両方のデータベースが、複数の異なる機器によって生成されたレコードが投入される共有データベースである。任意選択で、第1のデータベースの内容は、より小さい、より限定的な、またはより特異なグループに対応し、第2のデータベースの内容は、より幅広い、より大きい、またはより特異性の低いグループに対応していてもよい。第1のデータベースと関連付けられるより特異なグループは、その位置を推定すべき電子機器の観測との関連性がより大きくなるように選択される。
【0022】
より一般的には、第1および第2のデータベースは、単に、異なるレコード集合を含むだけでもよく、その場合、異なる集合は、問題となる電子機器の観測に対して異なる関連性を有する(または有するものと期待される)ものである。
【0023】
問題となる電子機器の観測に対する関連性は、通常、類似のハードウェアで構築された機器、類似のソフトウェアを実行する機器、類似の方法で使用される機器といった、その電子機器と共通のある属性を有する寄与者機器(もしくは機器のユーザ)のグループ、または(すでに説明したような)類似の移動パターンを有するユーザによって設定される。したがって、適合したレコードの供給源の指標は、レコードが、これらのいずれか1つの点において問題となる電子機器と類似する機器に由来することを示し得る。
【0024】
グループは、それがより選択的であるほど(訪れる位置および/または機器のプロパティに関して)より特異であり、そのため、類似のそのような機器のレコードに基づく位置推定値が機器の実際の位置に密接に対応する可能性がより高い。
【0025】
グループは、それがより一般的であるほど、当該グループのレコード間での適合の可能性がより高い(すなわち、所定の無線送信機または送信機の集合が以前に確認されている可能性がより高い)。したがって、位置推定値につながり得る情報がある可能性がより高く、当該位置推定値がより多くの観測に基づくものであり、したがって潜在的により正確である可能性が高い。しかし、そのような共有の、または一般的なデータに基づく正確な推定値は、特定の個別機器については、そのプロパティまたは使用法が異なるために、不正確であり、誤解を招くものである可能性もある。
【0026】
観測と個々の第1および第2のレコードとの間の第1および第2の適合は、ユニークである(すなわち、完全に適合している)場合もあり、部分(ユニークでない)適合である場合もある。(観測において)複数の送信機が検出される際に部分適合が判定されるが、送信機識別情報の一部だけが所定のレコードと適合する場合に判定され得るはずである。逆に、1台または複数の送信機が検出されるが、それらの送信機だけを含む(他の送信機を含まない)レコードが見つからない場合もある。あるいは、検出された単一の送信機について部分適合を定義することもできるはずであり、その場合、送信機の識別情報は記憶されたレコード内の単一の送信機の識別情報に限られた範囲内で適合する。
【0027】
適合の品質特性を適合の供給源と併せて考慮すれば、レコードに記憶された情報をより巧妙に組み合わせることが可能になり、位置推定値を計算するときに、利用可能な知識をより十分に利用することができる。異なるレコードを慎重に考慮することにより、機器の位置を推論するための最善の手法についての推測を引き出すことができる。これにより位置推定の精度の改善を導き出すことができる。
【0028】
第1および第2の指標の少なくとも1つが個々の適合するレコードにラベルを含んでいてもよい。
【0029】
各適合が、対応する適合したレコードが属するデータベース(またはデータベースの種類)を示すラベル、すなわち、そのレコードに寄与した供給源を示すラベルと一緒に検索されてもよい。このことは、すべてのレコードが単一の統合されたデータベースに記憶され、各レコードに、そのレコードが関連付けられている機器、ソフトウェア、ユーザ名、または(その他の中の)グループの指標で注釈が付けられる実施態様を円滑に行わせることを補助する。好都合なラベルの別の例には、機器の通し番号、製造者コード、モデル型番、ソフトウェアのバージョン番号が含まれ得る。その場合、方法は、2つのデータベースに2つの別々の問い合わせを行うのではなく、単に、観測を単一の統合されたデータベースの内容と比較するだけでよい。このデータベースにおいて見つかるすべての適合が検索される。しかし、各適合と関連付けられたラベルは、電子機器の位置を推定するときに、それらに異なる処理を施すことを可能にする。この場合、各レコードと関連付けられたラベルは、たとえすべてのレコードが同じ物理データベースに記憶され得る場合でさえも、別々の論理データベースが定義されることを可能にする。実際、この実施態様は、レコードを独立のデータベースに記憶するよりも多くの柔軟性を有し得る。というのは、各データベースの定義(すなわち、データベースへのレコードの割当て)またはどのデータ供給源を使用すべきかの選択を、単に、各ラベルの解釈法を調整するたけで変更することができるからである。例えば、各レコードが、当該レコードに関与したユーザ機器の識別情報を示すラベルを含む場合には、当該電子機器と同じユーザ機器ラベルを有する(適合する)レコードだけを選択することにより第1のデータベースを定義することができるはずである。
【0030】
方法はさらに、観測を第2の共有データベースの内容と比較するステップの前に、第2の共有データベースを、複数の可能な共有データベースの中から選択するステップを含んでいてもよい。換言すれば、方法は、比較を実行する前に、観測が比較されるべきレコードの集合を選択するステップを含み得る。この選択は、レコードの供給源の指標に従って行われ得る。
【0031】
加えて選択は、外部情報(すなわち、供給源に関する情報以外の情報)に従って行われてもよく、それによれば、異なる状況に応じて異なるレコードの集合が選択され得る。この外部情報は、日付、曜日、時刻といった時間のコンテキストに関する情報を含んでいてもよい。これをさらに円滑化するために、レコードはさらに、レコードが生成された状況に関するそのような「外部」コンテキスト情報を提供するデータ、例えば、観測が行われた時刻を示すタイムスタンプアノテーションなどを含んでいてもよい。その場合には、レコードを選択するために、この情報を現在の観測の外部コンテキストに関する情報と比較することができる。
【0032】
この場合、一方の供給源の指標と、他方の時間のコンテキストとの間で区別をつけることができる。供給源の指標は、レコードが生成された「内部の」または「固有の」コンテキストを表し、寄与者に特有のもの、すなわち、機器、ユーザ、ソフトウェアアプリケーションなどを記述する特有の情報である。時間のコンテキストは、寄与の「外部の」または「外来の」コンテキストの一部、すなわち、すべての機器に共通の情報であり、時間および周囲温度のような環境属性などを含む。
【0033】
一例では、第2のデータベースは、電子機器のユーザの会社の同僚と関連付けられたレコードを選択することによって定義することができる。しかし、別の場合には、第2のデータベースは、電子機器のユーザの家族および友人と関連付けられたレコードを選択することによって定義することもできるはずである。この柔軟性は、異なるグループからの地理的データが異なる目的で所定のユーザに適していることを認識する。
【0034】
一般に、各適合の品質特性は、現在観測されている識別情報の集合と適合するレコードに見出される識別情報との間の類似性に依存する。
【0035】
第1の適合および第2の適合の品質特性は、適合がどれほど特異であるかの尺度を含むことができ、好ましくは、観測に含まれる少なくとも1つの識別情報の集合と適合するレコードに含まれる1つまたは複数の識別情報の集合との間の類似性の度合い、および適合によって示される地理的精度の度合いのうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
地理的精度の度合いは、少なくとも一部は、(観測とレコードの間の)適合する異なる送信機の数に基づくものとすることができる。一般に、検出される送信機の数が大きいほど、位置推定値は正確である。というのは、観測されるすべての送信機のカバレージパターン間の共通部分にその機器が位置することを意味するためである。これに加えて、または代替として、地理的精度の度合いは、個々の送信機の地理的カバレージの程度の知識に基づくものとすることもできる。例えば、セルラーネットワークにおけるマイクロセルまたはピコセルの検出は、マクロセルの検出よりも地理的精度が高いことを意味する。
【0037】
本発明の発明者らが確認しているように、適合の特異性の差を利用して、異なるデータベースからの適合がどのようにして組み合わされるかをより精密に制御することができる。たとえ対応するレコードの供給源と問題となる電子機器との関連性があまり大きくない場合でさえも、より特異的な適合が好ましい可能性がある。同様に、2つのデータベースを使用する一実施態様では、2つのデータベースのうちのより一般的なものに含まれるより特異的な適合が、より個別化されたデータベースを使用するという選択に優先される可能性もある。
【0038】
各送信機の識別情報は、階層の一連のレベルが連続的により限定される地理的エリアに対応するような階層構造を有していてもよく、適合の特異性の尺度を、観測における少なくとも1台の送信機の階層的識別情報と、適合するレコードの1台または複数の送信機の階層的識別情報との間の類似性の度合いに基づくものとすることもできる。
【0039】
階層的識別情報の一例が、GSMなどのセルラー電話システムのセルグローバル識別(CGI:Cell Global Identification)である。これは、国、ネットワーク、エリア、および最後に個別セル識別情報を示す1組のコード番号で構成される。完全な、またはユニークな適合であるためには、同じセルラー基地局が検出されなければならない。すなわちこの場合には、観測とデータベースレコードとの間で識別情報のあらゆる要素が適合する。しかし、特定の地理的領域内のすべての基地局は同じエリアについてのコード(LAC:Local Area Code)を共有する。したがって、同じLACを有する基地局の検出は部分適合を生じさせる。また、異なるセル識別情報(CI:Cell Identity)およびLACを有するが同じ国内(MCC:Mobile Country Code)にある基地局の検出も部分適合であるが、エリア適合ほど特異ではない。というのは、これは、観測された基地局が、データベースレコードにおいて参照される基地局と同じ国内に位置することを示すにすぎないからである。このようにして、適合する階層的識別情報の要素の数を使って適合の特異性を判定することができる。
【0040】
一般に、レコードの供給源の指標は、無線環境の観測を行うことにより当該レコードを生成した(または当該レコードをこのようにして生成させた)個人、ハードウェア、またはソフトウェアを示し得る。同様にこの指標は、そのような個人、ハードウェア機器、またはソフトウェアアプリケーションが属する関連エンティティのグループまたはクラスも示し得る。言い換えると、レコードの供給源または起源の指標は、誰または何が当該レコードを作成したかに関する情報である。観測を行わせるソフトウェアは、観測を行う機器上で走っているソフトウェアとすることもでき、(例えば「シンクライアント」型の機器の場合などには)機器が接続されているネットワークサービスとすることもできる。
【0041】
供給源の第1および第2の指標の少なくとも1つは、1台または複数の機器の識別情報、および、1つまたは複数のソフトウェアプログラムの少なくとも1つである。上記の1台または複数の機器の識別情報は、その位置もしくは位置の集合において1台もしくは複数の送信機を検出したことによりレコードに寄与したものである。上記の1つまたは複数のソフトウェアプログラムは、上記1台もしくは複数の機器をレコードに寄与させたもの、および、1または複数の機器もしくはソフトウェアプログラムが属するグループに寄与させたものである。ここでのグループとは、好ましくは、上記1または複数の機器もしくはソフトウェアプログラムの種類、および上記1または複数の機器もしくはソフトウェアプログラムが関連付けられているユーザの少なくとも1つを示し得る。
【0042】
これらはレコードの供給源の指標を設定するための異なる手法を提供する。前述のように、供給源の指標は、暗黙的に決定されても、明示的に決定されてもよい。指標が、レコードが由来する機器、ソフトウェアアプリケーション、またはユーザのグループを示すとき、当該グループは、好ましくは、問題となる電子機器と共通の属性を有する。これは、電子機器の位置を推定するときにより大きな関連性を有するグループのレコードをもたらすはずである。すなわち、グループの1つまたは複数のメンバが特定の位置にあるときに所定の無線送信機の集合を観測した場合には、電子機器が同じ送信機の集合を観測するときには、例えば、機器は当該グループの各機器と物理的もしくは電気的に類似したものであり、または類似した方法で使用されるため、同じ場所にある可能性が高い。
【0043】
したがって、機器のグループは、機器の種類によって、またはユーザの種類によって特徴付けられてもよい。したがって、寄与する機器の識別情報を知っていること、または機器が属するグループの指標を有していることは、機器の地理的使用パターンまたは機器が当該レコードにどのように提供したか(例えば、機器がどのようにして送信機を検出したかや、機器がどのようにしてその位置を観測したかなど)に影響を及ぼした可能性のある機器のプロパティに関する何かを知っていることの代用とすることができる。
【0044】
ソフトウェアアプリケーションのグループは、ソフトウェア提供者によって、またはその目的によって特徴付けられてもよいはずである。例えば、業務関連のソフトウェアアプリケーションの集合がまとめてグループ化されてもよく、ゲームおよびメディアのアプリケーションで別のグループを形成してもよい。
【0045】
本発明の発明者らは、異なる機器、ユーザおよびグループが異なる位置から同じ送信機を観測し得ることを確認している。しかし、同じ個人、または同じグループのメンバは同じ位置から同じ送信機を観測する可能性がより高い。これは、特定の供給源から提供されるレコードの関連性が意味するものの一例である。前述の例では、関連性が生じるのは、機器が類似の地理的パターンで使用されるからである。また関連性は別の点で、例えば、機器の物理的または電気的属性の類似性により生じることもある。この関連性の局面を以下でさらに詳細に説明する。
【0046】
第1の指標は、任意選択で、第1のレコードの供給源が電子機器自身であることを示し、好ましくは、第2の指標は、第2のレコードの供給源がある限定された機器グループの中の1台または複数の機器であることを示す。
【0047】
この場合、第1のレコードは同じ機器のレコードであり、第2のレコードは別の機器によって共有されるレコードである。他方の機器は、好ましくは、ある限定された機器グループのうちの1台であり、そのレコードは問題となる電子機器の位置を計算する際により大きな関連性を有すると期待される。
【0048】
第1および第2の指標は、任意選択で、第1のレコードが、第2のレコードの供給源より当該電子機器により密接に関連する供給源に由来することを示唆する。第2の適合が第1の適合より特異である場合には、電子機器の位置の推定は第2の位置に優先的に基づくものであり、そうでない場合には、推定は第1の位置に優先的に基づくものである。
【0049】
第1の適合が第2の適合より正確である場合、または2つの適合が同等に正確であると判断される場合には、最終的な位置推定値は第1の位置に優先的に基づくものになる。言い換えると、それ以外がすべて等しければ、(より密接に関連する供給源に対応する)第1の位置が最終的な位置推定値により大きな影響を及ぼすことになる。それとは逆に、(関連性がより小さい供給源に基づくものである)第2の適合が第1の適合より特異である場合には、第2の位置推定値が最終的な位置推定値を決定づけることが妥当と考えられる。これは、適合の特異性とその供給源とを併せて考察するための、単純ではあるが、有益かつ一般的な1つの解決法(heuristic)を提供する。
【0050】
電子機器の位置を推定するステップは、第1の位置と第2の位置の線形結合を含んでいても、非線形結合を含んでいてもよい。
【0051】
各適合に対応する位置には、適合の特異性の尺度と、適合するレコードの起源の指標(例えばレコードが由来するデータベースなど)の両方に基づく優先順位が割り当てられてもよい。その場合、電子機器の位置を推定するステップは、最高の優先順位を有する位置推定値を選択するステップを含むことができる。これは、非線形の結合方法の一例である。
【0052】
あるいは、各適合に対応する位置には、適合の特異性の尺度と供給源の指標の両方に基づく重みが割り当てられてもよい。その場合、電子機器の位置を推定するステップは、割り当てられた重みに従って位置推定値の加重平均値を計算するステップを含むことができる。これは、線形の結合方法の一例である。
【0053】
供給源機器と電子機器とが、ほぼ推定されるべき位置と同じ位置についてのデータベースレコードを提供しており、および/または、当該電子機器とほぼ同様の手法で観測を行うことによってデータベースレコードを提供していると期待される関連機器のグループの一部である場合には、第1および第2の指標は、第1のレコードが当該電子機器に相対的により密接に関連する供給源に由来することを、示唆し得る。
【0054】
第1の事例では、機器のグループは共通の目的を有し得る。例えば、ある一団の宅配便車両と関連付けられた追跡機器のグループは、その顧客の所在地ならびに託送貨物の発送元および送付先を繰り返し訪れる可能性が高くなる。
【0055】
第2の事例では、機器のグループは共通の構成要素を有していてもよく、類似の手法で使用されてもよい。機器のグループは、同じ物理的種類またはフォームファクタのものとしてもよいし、同じ物理的または電気的プロパティを有してもよいし、類似のボディに梱包されていてもよい。
【0056】
例えば、特定の製造者のすべての携帯式ナビゲーション機器は、信号測定を行うために、同じアンテナ、無線チップセット、またはソフトウェア計算を使用し得る。信号観測はすべて同様に行われるため、これらの機器のうちの1台によって行われる観測は、別の製造者の機器によって提供されるレコードと比べて、同じグループの別の機器によって提供されるレコードと適合する可能性がより高い。これはより正確な適合を、したがってより良い位置推定をもたらすはずである。
【0057】
これは、「ウォードライブ」を実行する異なるユーザによって生成されている先行技術の公知の無線ビーコンデータベースと対照的である。それらのデータベースにおいては、各寄与者は、較正も制御もなしで異なるハードウェアを使って必要な信号測定を行っており、そのために、データに未知の変動が生じ得る。本発明の実施形態は、可能な場合には、類似の機器のレコードを使用することにより、そのような変動の影響を軽減することができる。
【0058】
別の例では、すべてのラップトップ機器を1つのグループに割り当てることができ、すべての移動電話機器を別のグループの割り当てることができる。これらの機器は異なる特性方向(characteristic orientations)において使用され、異なるフォームファクタを有するため、これらの機器が行う信号観測は相互に異なるものとなり得る。同様に、これらの機器は異なる場所において使用され得る(例えば、移動電話は映画館や劇場において電源が入れられる場合もあり、ノート型コンピュータは使用される可能性が低いなど)。加えて、これら異なる種類の機器は、すでに説明したように、異なるハードウェアおよびソフトウェア構成要素を有し得る。
【0059】
第1のデータベース内のレコードが第2のデータベース内のレコードより大きい関連性を有すると期待されるように、第1のレコードが由来する機器のクラスは第2のレコードが由来するより広い機器のクラスよりも厳しく定義されていてもよい。あるいは、第1および第2のデータベースは、別の理由なしに、または異なる点で、同等の関連性を有することが期待されてもよい。
【0060】
あるいは、機器の特定のグループまたは下位グループと関連付けられているのではなく、第2のレコードは汎用的であってもよい。すなわち、第2のレコードは利用可能な任意の機器からの任意の観測データを含んでいてもよい。
【0061】
方法はさらに、第3のレコードとの第3の適合を検出するステップを含んでいてもよい。この場合には、第3の適合の供給源は問題となる電子機器に関連しない機器とすることができる。第1および第2のデータベースを使用する実施態様のコンテキストにおいて、第3の適合が第3のデータベースに含まれていてもよい。第3のデータベースは、任意の機器によって提供されるレコードを含むという点において、グローバル(すなわち普遍的または汎用的)でもよい。すなわち、第1および第2のデータベースが選択されたレコードだけを含み得るのに対し、第3のデータベースは特定の機器または特定の機器グループに限定されず、利用可能なすべてのレコードを含んでいてよい。したがって、第1から第3のデータベースは漸進的に大規模に、かつ/またはより広範囲になり得る。
【0062】
異なる製造者またはサービス提供者は独自のデータベースを実施し得ることに留意されたい。この場合、2つの異なる提供者は2つの異なる汎用的または「普遍的」データベースを提供し得る。これは言葉の矛盾とみなすべきではない。というのは、各データベースは一方の提供者だけに特有のレコードを含むため、どちらのデータベースも厳密には普遍的ではないが、これらのデータベースは、それぞれの提供者によって区別なく提供されるすべてのデータを組み込んでいるという点でやはり汎用的なデータベースだからである。
【0063】
方法はさらに、同じ供給源の指標を有するレコードとの複数の適合を検出するステップを含んでいてもよく、電子機器の位置を推定するステップは、複数の適合のそれぞれの品質特性に応じて、対応する複数の位置推定値のうちの少なくとも1つに基づくものとすることができる。
【0064】
これにより方法は、利用可能なときには、同じ供給源からの複数の適合を使用するように拡張される。
【0065】
方法はさらに、複数のレコードにデータを提出するステップを含んでいてもよく、データは、観測、電子機器の位置の推定値、および、好ましくは、電子機器、電子機器の種類、または機器が属する機器グループのうちの少なくとも1つを識別するラベルを含む。
【0066】
これによりレコードの集合を構築させ、または更新させることが可能になる。位置の推定値は、前述のように、無線信号の観測によって計算され得る。あるいは、推定値は、他の手段によって獲得されてもよい。好ましくは、GPS位置決定といった信頼できる位置の推定値が、レコードの正確さを保証するために使用される。
【0067】
観測される無線送信機の種類によっては、特定の位置における信号環境は時間の経過と共に変化し得る。例えば、セルラー基地局は、再構成され、追加され、または削除され得る。無線LAN(WLAN/WiFi)ホットスポットは、時刻に応じて電源がオン/オフされることもあり、ある場所から別の場所に移動されることもある。そのような場合には、フィールド内の機器によって提供される更新を、当該レコードの集合が正確さを保つように役立てることができる。
【0068】
提出データにラベルが含まれる場合、これは後で、データがどのように最善に使用され得るか特定するのに使用することができる。機器によって提出されたデータは、例えば、当該機器自身の観測だけからなるデータベースを構築するのに使用されてもよい。同様に、ラベルがあることにより、その観測を特定の共有データベースを構築するのに使用する必要がある機器グループの定義が容易かつ柔軟なものにできる。
【0069】
当業者には明らかなように、機器からデータを提出するたびにレベルを送信する必要があるとは限らない。例えば、リモートのデータベースと通信する場合には、冗長性を低減するために、機器は、最初のハンドシェークまたは構成段階においてデータベースにそのラベルを登録してもよい。その場合、同じ機器のからの後続の提出には同じラベルが割り当てられるはずである。これにより、ラベルの反復が回避され、機器とデータベースの間の通信リンクの帯域幅を低減することができる。
【0070】
ラベルは位置の観測および/または推定値と一緒に提出されても、別々に提出されてもよい。例えば、ラベルは、別個の構成フェーズにおいて、異なるインターフェースを介して提供されることもできるはずである。例えば、ユーザがサーバコンピュータに別個に接続し、観測データが提出された日付または時刻とは異なる日付または時刻にデータの各ユーザの部分にラベル付けしてもよい。
【0071】
1台の機器が複数のラベル、例えば、個別ラベルと、機器が属するグループに関連する1つまたは複数のラベルを有していてもよい。機器は、コンテキストに従って、レコードを提出するために異なるラベルを使用してもよい。例えば、機器が企業の仮想私設ネットワーク(VPN:Virtual Private Network)に接続されている間に行われる観測は、「仕事」ラベルと共に記憶することができ、機器が映画を見たり、音楽を聴いたりするのに使用されている間に記録される観測は「娯楽」ラベルと関連付けることができるはずである。
【0072】
また、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行される場合には、前述のような方法のすべてのステップを実行するように構成されたコンピュータ・プログラム・コード手段を含むコンピュータプログラムも提供され、そのようなコンピュータプログラムはコンピュータ可読媒体上で実施される。
【0073】
本発明の別の態様によれば、携帯機器であって、
推定されるべき位置にて携帯機器によって検出可能な少なくとも1台の無線送信機の識別情報を観測するように構成された無線受信機と、
観測される識別情報を、複数のレコードと比較されるべき問い合わせとして発行するように動作する問い合わせプロセッサを備え、
複数のレコードのそれぞれは、1台または複数の無線送信機の識別情報と、それら1台または複数の送信機が検出された位置または位置の集合に基づく対応する位置と、を含み、
この問い合せプロセッサは、問い合わせに応答して、観測とレコードのうちの第1のレコードとの間の第1の適合の結果を受け取るように動作し、
第1の適合の結果は、
第1のレコードの供給源の第1の指標、および
第1のレコードに対応する位置である第1の位置推定値
を含み、
また、この問い合わせプロセッサは、問い合わせに応答して、観測とレコードのうちの第2のレコードとの間の第2の適合の結果を受け取るように動作し、
第2の適合の結果は、
第1の指標とは異なる第2のレコードの供給源の第2の指標、および
第2のレコードに対応する位置である第2の位置推定値
を含み、
さらに、この問い合わせプロセッサは、第1の適合および第2の適合の品質特性を決定するように構成されており、
当該携帯機器は、さらに、第1の指標、第1の適合の品質特性、第2の指標および第2の適合の品質特性に応じて、第1の位置推定値および第2の位置推定値の少なくとも1つに基づいて携帯機器の位置を推定するように構成された位置推定器と、を備える携帯機器が提供される。
【0074】
携帯機器は個人用ナビゲーション機器とすることができる。しかしこの機器は、測位機能を実施することが求められる他の任意の種類の機器とすることもできるはずである。これには、例えば、移動電話、車両または荷物追跡機器、または、携帯式コンピュータなどが含まれ得る。
【0075】
携帯機器はさらに、複数のレコードの全部または一部を記憶するための内蔵メモリを備えていてもよい。
【0076】
内蔵メモリに記憶されるレコードは、例えば、機器自身によって生成されたレコードなどとすることができる。また機器は、第2の共有データベースからの共有レコード(あるいは、第3のデータベース)といった、より幅広いレコードの集合の全部または一部を記憶するように構成されていてもよい。任意選択で、マスタデータベースがリモートで記憶されていてもよく、機器は、間欠的に、または周期的に更新をデータベースにダウンロードするように構成されていてもよい。
【0077】
次に本発明を、例として添付の図面を参照して説明する。