特許第5976316号(P5976316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976316
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】電極のシートアレイ付きのカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0492 20060101AFI20160809BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20160809BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20160809BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20160809BHJP
   A61B 5/044 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   A61B5/04 300J
   A61B18/12
   A61B5/04 314K
   A61B5/04 300E
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-288678(P2011-288678)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2012-139504(P2012-139504A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2014年12月19日
(31)【優先権主張番号】12/982,141
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ロイ・ウルマン
(72)【発明者】
【氏名】リロン・シュムエル・ミズラヒ
(72)【発明者】
【氏名】ロネン・クルプニック
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05846196(US,A)
【文献】 特開2003−235821(JP,A)
【文献】 特表2010−502313(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/028149(WO,A1)
【文献】 特表2005−508695(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0093072(US,A1)
【文献】 特表2007−504896(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0065506(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0125614(US,A1)
【文献】 特開2004−237077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0408
A61B 5/044
A61B 5/0478
A61B 5/0492
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の細長い本体と、
前記細長い本体に接続されたハンドルと、
前記細長い本体に接続された複数のスパインと、
前記複数のスパインに結合した可撓性シートであって、前記可撓性シートはその上に複数の電極を有し、前記可撓性シート及び前記複数の電極が、組織中の電気的情報をマッピングするためのマッピングアセンブリを画定する、可撓性シートであり、前記複数のスパイン及び前記可撓性シートは、潰れた構造から展開された構造まで可動である、可撓性シートと、
前記可撓性シートの中心近くの位置で前記可撓性シートに結合され、前記複数のスパインよりも長さが短い中心スパインと、を含む、医療デバイス。
【請求項2】
前記複数のスパイン上に場所センサーを更に含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記複数の電極が前記可撓性シート上の電極のアレイである、請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記場所センサーが6次元場所情報を提供する、請求項3に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記マッピングアセンブリがフォトレジストを含む、請求項4に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記フォトレジストがSU−8材料を含む、請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記複数のスパインが2つ又は3つ以上のスパインを含む、請求項4に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記複数のスパインが3つ又は4つ以上のスパインを含む、請求項に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記複数のスパインが4つ又は5つ以上のスパインを含む、請求項に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記複数のスパインが5つ又は6つ以上のスパインを含む、請求項に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記可撓性シートが複数の識別可能な分離した区分を含み、前記区分が前記展開された構造において一体型様の形体を有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記マッピングアセンブリが機械的情報を提供する、請求項4に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記可撓性シートが前記展開された構造において凸形体を有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記可撓性シートが前記展開された構造において凹形体を有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記複数の電極が前記組織を治療するために使用される、請求項1に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、患者の身体に適用されるカテーテルなど、患者の身体内で診断及び治療をすることができる侵襲的な医療デバイスに関し、より具体的には、例えば、心臓の電気的異常及び/又は患者の身体の他の器官若しくは血管の診断及び治療用に心臓の心室内又は心臓に関連する多数の血管の1つにおいて若しくはその内部で操作するための、患者の身体内の器官の様々な表面に順応可能な電極の可撓性シートアレイを有するカテーテルなどの医療デバイスに関する。本発明は、電気信号の処理を必要とする組織又は生物学的機能の診断及び/又は治療を必要とする、いかなるタイプの医療用途に特に有用な医療デバイスに関するということを特記することが重要である。
【背景技術】
【0002】
電気生理学カテーテルは、通常、心臓中の電気的活性のマッピングに使用される。電気生理学は、心臓の電気的異常を診断及び治療するための心臓病学の分野内の特殊領域である。心臓中の電気的活性をマッピングすることにより、心臓の機能不全の原因となる電気的活性化の異所又は他の電気的活性化経路が検出され得る。次いで、このタイプの情報によって、心臓病医が機能不全の心臓組織に介入し、それを破壊することが可能となり得る。心臓組織のこのような破壊は、電気生理学内の急速に発展している分野であり、最大級に侵襲的な開胸心臓手術の必要性を無くする、焼灼と呼ばれるものである。
【0003】
電極が、電気生理学的カテーテルに取り付けられ、心臓中の電気的活性についての電気的情報のマッピング又は収集に使用される。心臓中の電気的活性のマッピングに使用される電極の場所を決定するために、しかるべき電気生理学カテーテルの中に場所又は位置センサーを組み込むことも知られている。このようなカテーテルは、一般に、経皮的に挿入され、1つ又は2つ以上の大血管から心臓心室の中に送り込まれる。通常はカテーテルの遠位端の近くのカテーテル内の場所センサーが信号を発生し、その信号は、身体に対して外側の場所又は心臓自体内の場所など基準系に対するデバイスの場所を判定するために使用される。場所センサーは能動型であっても受動型であってもよく、電場、磁場、若しくは超音波エネルギー場、又は当該技術分野において既知の他の好適な形態のエネルギーの発生又は受信によって動作するものでもよい。
【0004】
参照によって開示内容が本明細書に組み込まれる米国特許第5,391,199号は、カテーテルの遠位端内に収容された小型センサーコイル(位置センサー)を備える位置応答型カテーテルを記載している。コイルは、患者の体外に置かれた磁場発生コイルによって生成する、外側から印加された磁場に応答して電気信号を発生する。電気信号を分析して、位置センサー及びカテーテルの遠位端の3次元軸座標及び3次元方位(ヨー、ピッチ及びロール)を決定する。
【0005】
参照により本明細書に組み込まれている、国際公開第96/05768号は、カテーテルの遠位端に固定されている、複数の小型の、好ましくは非同心センサーコイルを含む、位置応答型カテーテルを記述している。米国特許第5,391,199号におけるように、外部印加磁場に応答してこれらのコイルにより発生する電気信号を分析して、例えば、これらのコイルの6次元座標、すなわち、位置座標及び方位座標が決定される。
【0006】
上述のこのような技術的な特徴及び機能性を利用するカテーテル及びシステムには、NAVISTAR(商標)診断及び焼灼用カテーテル及びPENTARAY(商標)高密度マッピングカテーテルが、BiosenseWebster,Incにより製造され、販売されているCARTO(登録商標)マッピング及びナビゲーションシステムと一緒に使用される例示のデバイスとして挙げられる。
【0007】
多数の位置検出デバイスを、例えば、参照により本明細書に組み込まれている国際公開第97/24983号に記述されているように、既知の、相互に固定された空間的な関係でカテーテルの遠位端に又はそれに隣接して配置してもよい。この特許は、遠位端において実質的に剛直な構造を有し、1つ又は2つ以上の位置センサーをそれに固定した、カテーテルを記述している。センサーを使用して、剛直な構造の位置及び方位を決定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまで、例として1つの特定の医療用途において、心臓及び/又は患者の身体の血管の電気的異常の診断及び治療用に特に有用な、患者の身体内の器官の様々な表面に順応可能な電極の可撓性シートアレイを有する、先行技術のデバイス、システム及び方法は存在しなかった。本発明は、患者の身体内の器官の様々な表面に順応可能な電極の可撓性シートアレイを用いて、電気信号処理を必要とする組織又は生物学的機能の診断及び/又は治療を必要とするいずれかのタイプの医療用途に特に有用であり、先行技術の器具のいずれにも見出されない医療デバイスであるということを特記することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、可撓性の細長い本体と、細長い本体に接続されたハンドルと、細長い本体に接続された少なくとも1つのスパインと、少なくとも1つのスパインに結合した可撓性シートと、を含む、医療デバイスに関する。可撓性シートはその上に複数の電極を有し、可撓性シート及び複数の電極は、組織中の電気的情報をマッピングするためのマッピングアセンブリを画定し、少なくとも1つのスパイン及び可撓性シートは、潰れた構造から展開された構造まで可動である。
【0010】
本発明はまた、可撓性の細長い本体と、細長い本体に接続されたハンドルと、細長い本体に接続された少なくとも1つのスパインと、少なくとも1つのスパインに結合した可撓性シートと、を含むデバイスを提供する工程を含む、組織をマッピングする方法を対象とする。可撓性シートはその上に複数の電極を有し、可撓性シート及び複数の電極は、組織中の電気的情報をマッピングするためのマッピングアセンブリを画定し、少なくとも1つのスパイン及び可撓性シートは、潰れた構造から展開された構造まで可動である。マッピングアセンブリは、デバイスが展開された構造にあるときに、組織と形状を合致させ、複数の電極を用いて、組織からの電気的情報が提供され、電気的情報によりマップが形成される。
【0011】
本発明は、以下の実施形態の詳細な説明を、それら図面と総合すれば、より充分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の実施形態に従う、電極の可撓性シートアレイを備えるカテーテルの概略図。
図1B】本発明の実施形態に従う、予備展開された、潰れた構造の図1Aのカテーテルの図。
図2】本発明の実施形態に従う、図1A及び図1Bのカテーテルの詳細を示す、概略の断面図。
図3図2の線3−3に沿った、本発明に従う図1A及び図1Bのカテーテルの代替の実施形態の断面図。
図4】本発明の代替の実施形態に従う、電極の可撓性シートアレイを備えるカテーテルの遠位端の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、例えば、参照により本明細書に組み込まれ、本発明で使用される多数の類似の特徴及び機能を有する、米国特許第6,961,602号に開示されているように、複数のスパインを含むマッピングアセンブリを有するカテーテルを対象とする。同一又は類似の特徴又はパーツを指定するためには、同一の参照番号が使用される。図1に示すように、カテーテル10は、近位端及び遠位端を有する可撓性の細長いカテーテル本体12、カテーテル本体12の近位端における制御ハンドル16、及びカテーテル本体12の遠位端において搭載された少なくとも1つのスパイン14又は複数のスパイン14を含むマッピングアセンブリ18を含む。
【0014】
図1A、1B及び図2に示すように、カテーテル本体12は、単一の、軸方向の内腔又は中央内腔15を有するが、所望ならば長さの全部又は一部に沿って多数個の内腔を所望により有することができる、細長い管状の構造体を含む。カテーテル本体12は、可撓性、すなわち曲げることができるが、その長さに沿って実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は任意の好適な構造のものでよく、任意の好適な材料で形成することができる。カテーテル本体12の現時点で好ましい構造体は、ポリウレタン又はPEBAX(商標)(ポリエーテルブロックアミド)で作製された外壁13を含む。外壁13は、カテーテル本体12のねじり剛性を増大させるために、ステンレス鋼などの埋め込み式の編組みメッシュを含み、制御ハンドル16を回転すると、カテーテル本体12の遠位端は対応して回転する。
【0015】
カテーテル本体12の長さは重要ではないが、好ましくは約90cmから約120cmの範囲であり、より好ましくは約110cmである。カテーテル本体12の外径は重要ではないが、好ましくは約8フレンチ以下、より好ましくは約7フレンチである。同様に、外壁13の厚さもそれほど重要ではないが、好ましくは中央内腔15が引張りワイヤ、リード線、センサーケーブル及び他の任意の所望の線、ケーブル又はチューブを収容できるように充分に薄い。必要に応じて、外壁13の内面は、ねじり安定性を向上させるために補強管(図示せず)で裏打ちされる。本発明と関連した使用に好適なカテーテル本体構造体の例は、全体の開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,064,905号に記述され、図示されている。
【0016】
記述される実施形態では、マッピングアセンブリ18は、少なくとも1つのスパイン14又は複数のスパイン14、例えばいくつかの実施形態では4つのスパインを、又は他の実施形態では5つのスパインを含む。例えば、図1A及び1Bに示すように、カテーテル10は、図1Bに最もよく示されるように、潰れているマッピングアセンブリ18に使用される中心スパイン14を含む5つのスパインを含む。これらの実施形態では、中心スパイン14は、他のスパイン14、例えば、マッピングアセンブリ18のそれぞれの隅で接続されるスパイン14よりも長さが短いか、マッピングアセンブリ18を効率的に潰すために、他のスパイン14の前に引き取るように構成されている。カテーテル10はスパインのいかなる特定の数にも限定されず、少なくとも1つのスパイン、2つ又は3つ以上のスパイン、3つ又は4つ以上のスパイン、4つ又は5つ以上のスパイン、あるいは5つ又は6つ以上のスパインなどを含む。スパインの厳密な数は、1つ又は2つ以上のスパイン14がシートアレイ60を支持することができる限り重要でない。シートアレイ60は、一体型様の最終的な形又は形状として最終構造に展開される、複数の識別可能な分離した区分に分割可能であるということ、すなわち、図4に最もよく図示されるように、シートアレイ60は複数の識別可能な分離した区分からなっているが、最終構造が単一のシート設計体として見えるということを特記することも重要である。
【0017】
それぞれのスパイン14は所望により、少なくとも1つ場所センサー30を担持し、電極66のマトリックスを含むシートアレイ60に遠位端で接続される。そして、シートマトリックスを展開する場合(図1A及び図5)、スパイン14は、シートアレイ60及び電極66のマトリックスを心臓組織と接触させて配置し、そこでマトリックスの電極66が、組織のマップの形成に使用され、1つ又は2つ以上の電気的、機械的及び場所/位置データを示す、電気的、機械的及び場所/位置データを入手することが可能となる。
【0018】
それぞれのスパイン14は、カテーテル本体12の遠位端において取り付けられた近位端、及びシートアレイ60に取り付けられた遠位端を有し、それによりマッピングアセンブリ18を画定する。それぞれのスパイン14は、形状記憶性を有する金属又はプラスチック材料を含む支持アーム24(図2)を収め、支持アーム24は、外力を印加しない場合初期の形状を形成し、外力を印加した場合弯曲した形状を形成し、及び外力を除去した場合、初期の形状に戻る。好ましい実施形態では、支持アーム24は、例えば、ニチノールなどのニッケル−チタン合金などの超可塑性材料を含む。それぞれのスパイン14は、支持アーム24に対して包囲する関係で非電導性被覆26も含む。好ましい実施形態では、非電導性被覆26は、ポリウレタン又はポリイミド配管などの生物適合性プラスチック配管を含む。
【0019】
当業者ならば認識するように、スパイン14の数は、特定の用途によって所望のように変えることができ、カテーテル10は、好ましくは、少なくとも1つのスパイン又は複数のスパイン、好ましくは少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つのスパイン、及びある場合には好ましくは少なくとも5つ又は6つ以上のスパイン、又はある場合には8つ以上又は9つ以上のスパインを有する。
【0020】
下記に詳述するように、スパイン14は、伸張又は展開された配置の間で可動性であり、例えば、それぞれのスパインは、その最終構造(図1A及び図4)まで運動又は展開するとき、カテーテル本体12から径方向に外向きに伸張し、又はスパイン14は、図1Bに最もよく示されるように潰れた配置(予備展開された構造)に配置されてもよく、例えば、それぞれのスパイン14は、下記に更に述べるようにスパイン14が案内用シースの内腔内にはまることができるように、概ねカテーテル本体12の長手方向軸に沿って配設される。
【0021】
マッピングアセンブリ18は、カテーテル10の遠位端においてシートアレイ60及び電極66のマトリックスアレイを含む。図示するように、電極66は、可撓性シート60に印刷又は他の方法で固定され、それぞれの導体29(図2及び図3)は遠位端において電極66に、及び近位端においてコネクター17に電気的又は操作可能なように接続される(図1A)。コネクター17は、CARTO(登録商標)マッピング及びナビゲーションシステム(Biosense Webster,Inc.(Diamond Bar,California)により製造及び販売されている)などのコントローラ−(図示せず)に接続される。本発明による特定の実施形態では、シート60の隅は、挿入チューブ12の遠位端から延びるスパイン又はアーム14の遠位端により保持される。他の実施形態では、スパイン又はアーム14の遠位端は、隅の代わりにシート60の他の領域、例えば、シート60の縁に沿って、又はシート60の中心部分(中点など)又はシート60上の中点からはずれた他の場所の中で接続される。
【0022】
カテーテル10を患者の身体の中に挿入し、位置センサー30を用いて心臓中の所望の場所まで操縦する間、スパイン14は、潰れた構造又は予備展開された構造(図1B)として近接して保持され、それゆえ、図示するように、電極66のシート60が、スパイン14の間で潰される。
【0023】
カテーテルが所望の場所に到達したならば、アーム14を展開して、展開された構造又は最終構造(図1A及び図4)までバラバラに広げ、それによりこれらの図に示すように、電極66のシート60を伸ばして広げる。展開された構造では、シートアレイ60の電極66の全部(又は少なくとも大部分)が壁に同時に接触するように、カテーテル10を心臓の壁に向かって進める。次いで、それぞれの電極66は、心臓組織の局所の電気信号を検出することができ、システムコンソールが、信号の全アレイを処理して、電気的活性の長時間のリアルタイムの図を与える。
【0024】
電極66を支持するシートアレイ60は、弾性的な形状(下記に詳述される)であって、心臓壁に形を合致させることが可能である。シートアレイ60は、図1Aに図示するような単一のシート(一体形設計)であるか、又は最終の形において一体形様の設計として展開される、分離した、識別可能なシート区分でできている(図4)。加えて、シートアレイ60は、心臓心室又は身体の他の器官若しくは肺静脈のマッピング及び焼灼手術を行うために肺静脈の小孔を含む血管内の特定の構造に形状を合致させるように、いかなる所望の最終の形状又は構造にもカスタム化可能である。例えば、シートアレイ60の最終構造は、円、球、矩形、正方形、長方形、台形、三角形又は非対称形状、並びに実質的に凹形体又は凸形体などの3次元構造の最終構造を含む、他の所望の形状若しくは形である。シートアレイ60を、わずかに外向きにたわませて(凸形状)、心臓壁の凹領域との接触及びこれとの形状合致を改善することができる。
【0025】
シートアレイ60は、好ましくは、厚膜の、化学的及び熱的に安定な像が所望される微小加工及び他のマイクロエレクトロニクス用途に設計された、高コントラストの、エポキシをベースとするフォトレジストであるSU−8からできている。SU−8は、本来はIBM Corporationにより開発され、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,882,245号によって特許された、EPON SU−8エポキシ(Shell Chemical製)をベースとした、ネガ型のエポキシタイプの近紫外フォトレジストである。
【0026】
このフォトレジスト60は2mmもの厚さ及び>20のアスペクト比であることができ、標準的なコンタクトリソグラフィ装置により実証されてきた。これらの驚くべき結果は、UV領域における低い光学的吸収によるものであって、このことがフォトレジストが最も高感度である365nmの波長に対して厚さを2mmまで限定するのみである(すなわち、この厚さに対しては極めて僅かなUV光が構造体の底部に到達する)。シートアレイ60は、疑いもなく、熱安定性が比較的高いために(架橋した(すなわち、露光した)レジストに対するTg>200℃)、メッキ用の型としての作用に適合性の良いこのレジストからメリットを受ける。SU−8は、「SU−8...」(「SU−8 5」、「SU−8 10」、「SU−8 25」、「SU−8 50」、「SU−8 100」の異なる粘度を有するSU−8変形品/製品)の名称でMicroChem Inc.(以前は、Microlithography Chemical Corp.,Newton,MA)などの会社から、及び「SU−8 2000」、「SU−8 3000」(標準の溶剤がシクロペンタノンにより置換され、改善された性質を有する)などの名称でGersteltec SARL(Pully,Switzerland)から市販されている。
【0027】
SU−8 2000は、MEMS(マイクロエレクトロニクス材料)生産者により長年広く使用されてきたSU−8の改善された配合物であるために、シートアレイ60に特に有用な1つの特別な変形品である。急速乾燥性の極性溶剤系の使用は、改善されたコーティング品質を生じ、プロセススループットを増加させる。SU−8 2000は12種の標準の粘度で入手可能である。0.5から>200マイクロメートルの膜厚が単一のコーティング工程で達成可能である。露光され、続いて架橋された膜の架橋部分は液体現像液に対して不溶となされる。SU−8 2000は、優れた画像形成特性を有し、極めて高いアスペクト比の構造体を生成する能力がある。SU−8 2000は、360nm以上で極めて高い光学的透過率を有し、それによって極厚膜においてほぼ垂直な側壁を像形成するのに理想的に好適である。SU−8 2000は、像形成し、硬化し、かつ器具上に残される永久的な用途、すなわち、マッピング素子18のアレイ60に最適である。
【0028】
i−線(365nm)が推奨される波長であるが、SU−8 2000フォトレジストは、最も普通には、慣用のUV(350〜400nm)光により露光される。SU−8 2000は電子線又はX線によっても露光され得る。露光時、架橋は、(1)露光工程時の強酸の形成と、それに続く(2)ポスト露光ベーク(PEB)工程時の酸触媒され、熱で促進されるエポキシ架橋の2工程で進行する。通常の工程は、スピンコート、ソフトベーク、露光、PEBと、それに続く現像である。デバイスのパーツとして残っているとき、像形成されたSU−8 2000構造体を更に架橋するためには、制御されたハードベークが推奨される。特定の適用に対しては、全体のプロセスを最適化しなければならない。
【0029】
基板の作製として、最大のプロセス信頼性を得るためには、マトリックスアレイ60の基板は、SU−8 2000レジストの塗布前に清浄かつ乾燥でなければならない。最良の結果を得るためには、基板を、ピラニア(piranha)ウエットエッチ(H2SO4及びH2O2を用いて)、続いて脱イオン水のリンスにより清浄化しなければならない。基板を、反応性イオンエッチング(RIE)又は酸素を供給する任意のバレル灰化装置を用いて清浄化してもよい。接着促進剤は、通常、必要とされない。電気メッキを含む適用に対しては、MCCプライマー80/20(HMDS)基板の前処理が推奨される。
【0030】
コートSU−8 2000レジストは、上述のものなどの多くの標準的な粘度で入手可能である。加工/コーティング方法に対する推奨されるプログラムは、基板直径各1インチ(25mm)に対して1mLのレジストを分注し、500rpmで5〜10秒間100rpm/秒の加速でスピンし、2000rpmで30秒間300rpm/秒の加速でスピンすることを含む。
【0031】
エッジビード除去(EBR)スピンコートプロセス工程時、フォトレジストの蓄積が基板のエッジ上で起こる場合がある。ホットプレートの汚染を最少化するために、この厚いビードを除去しなければならない。ビードの除去は、溶剤(MicroChemのEBR PG)の小さな流れをウエハーのエッジで頂部又は底部のいずれかで使用することにより実施可能である。大部分の自動化スピンコーターは、この機構を有し、ビードの除去を自動的に行うようにプログラムされ得る。いかなるエッジビードも除去することにより、フォトマスクを、ウエハーと密着配置して、結果として改善された分解能及びアスペクト比を得ることができる。
【0032】
ソフトベーク良好な温度制御及び均一性を備える水平ホットプレートがこのプロセスのソフトベーク工程時の使用に推奨される。対流オーブンは推奨されない。対流オーブンベーク時には、スキンがレジスト上に形成される場合がある。このスキンは、溶剤の発生を阻害し、膜の不完全な乾燥及び/又はベーク時間の延長をもたらす。記:ベーク時間/条件を最適化するためには、所定の時間後ウエハーをホットプレートから取り除き、室温まで冷却する。次いで、ウエハーをホットプレートに戻す。膜が皺を生じる場合には、ウエハーをホットプレート上で更に数分間放置する。皺が膜中にもはや見られなくなるまで、冷却及び加熱サイクルを繰り返す。
【0033】
露光。SU−8 2000レジストにおいて垂直な側壁を得るためには、長波長のパスフィルターを使用して、350nm以下のUV光を除去することが推奨される。Omega Optical(www.omegafilters.com)からの推奨されるフィルター(PL−360−LP)又はAsahi TechnoglassのフィルターV−42+UV−D35(www.atgc.co.jp)では、最適露光量に達するには、約40%の露光時間の増加が必要とされる。記:最適露光によれば、PEBホットプレート上に載せて5〜15秒以内に目視できる潜像が膜中に見られ、その前には見られない。最適露光量を求めるためには、露光マトリックス実験を行わなければならない。
【0034】
現像露光直後にはPEBが起こらなければならない。95℃でのPEBの1分後には、マスク像がSU−8 2000フォトレジストコーティング中で可視とならなければならない。PEB時又はこの後に可視の潜像が可視とならない場合には、これは、不充分な露光、加熱又はこの両方があるということを意味する。SU−8 2000フォトレジストは、MicroChemのSU−8現像装置による浸漬、スプレー又はスプレー/パドル(spray-puddle)プロセスでの使用に設計されたものである。乳酸エチル及びジアセトンアルコールなどの他の溶剤ベースの現像装置も使用され得る。高アスペクト比及び/又は厚膜構造体を現像する場合には、強力な撹拌が推奨される。記:密なピッチのビア若しくはホールパターン、又は構造を現像する場合、超音波又はウルトラソニック浴の使用が有用であり得る。
【0035】
リンス及び乾燥。SU−8現像装置を用いる場合、現像された像を新鮮な溶液によりほぼ10秒間スプレー及び洗浄し、続いて、イソプロピルアルコール(IPA)により更に10秒間スプレー/洗浄する。濾過された加圧空気又は窒素により風乾する。記:IPAリンス時に生じる白色膜は、非露光フォトレジストの現像が不足であることのしるしである。基板を追加のSU−8現像液により単純に浸漬又はスプレーして、白色膜を除去し、現像工程を完結させる。リンス工程を繰り返す。超音波又はウルトラソニック浴の使用によって、溶剤が活性化され、非露光レジストの更に効果的な現像が可能となる。
【0036】
特性/ハードベーク(硬化)SU−8 2000は良好な機械的特性を有する。しかしながら、像形成されたレジストを最終デバイスのパーツとして残す適用に対しては、ハードベークをプロセスの中に組み入れることができる。これは、一般に、シートアレイ60が微小電極66のマトリックスを有する、マッピング及び治療器具18などの場合など、最終器具又はパーツが正規の操作時に熱処理を受ける場合に必要とされるのみである。ハードベーク又は最終硬化工程を追加して、SU−8 2000性質が実際の使用において変化しないことを確保する。SU−8 2000は熱的な樹脂であり、前に遭遇したよりも高い温度に暴露されると、その性質は変化し続ける。最高の予期される器具の使用温度よりも10℃高い最終ベーク温度を使用することが推奨される。必要とされる硬化の度合いによって、150℃から250℃の範囲のベーク温度、及び5分から30分の間の時間が通常使用される。記:ハードベーク工程は、現像後に明らかになり得る、いかなる表面亀裂のアニールにも有用である。推奨される工程は、150℃で2〜3分間ベークすることである。これはすべての膜厚に当てはまる。
【0037】
一般に、シートアレイ60のSU−8材料は、高機能性、高光学透過性の化学増幅されたエポキシをベースとするネガ型レジストからなり、近紫外光に感度を有する。硬化膜又はトポグラフィは、溶剤、酸、及び塩基に対して高耐久性であり、かつ優れた熱安定性を有し、患者の身体中の組織をマッピング及び治療するための、特に微小電極66のマトリックスとしての永久的な使用の用途に極めて適合する。例えば、SU−8 2000の特性は次の通りである:
−>10:1アスペクト比の垂直側壁の像形成、
−単一のスピンコートで<1μmから>200μm、
−高耐薬品性及び耐プラズマ性、及び
−急速乾燥性膜。
SU−8 3000の特性は次の通りである:
−5:1アスペクト比の垂直の側壁の像形成、
−単一のスピンコートで100μmまで、
−高耐薬品性及び耐プラズマ性、及び
−増強された接着性。
【0038】
マトリックス60のそれぞれの電極66は、好ましくは約0.5mmから約4mmの、より好ましくは約0.5mmから約2mmの範囲の、なおより好ましくは約1mmの露出された長さを有する。
【0039】
電極66を可撓性シート60に印刷するか、又は他の方法で固定し、それぞれのリード線/導線29をそれぞれの電極66に接続する。シート60の隅などのシート60の一部分を、挿入チューブ12の遠位端から延びる、PENTARAY(商標)カテーテル(図4)のアームなどの多数個のスパイン14の遠位端により保持する。
【0040】
カテーテル10を患者の身体の中に挿入し、心臓中の所望の場所まで操縦する間、スパイン14を予備展開された構造で一緒に近接して保持し(図1B)、それゆえ、図示するように、電極60のシートをこれらの間で潰す。カテーテルが所望の場所に到達したならば、スパイン14を展開して、バラバラに広げ、それによりこれらの図1Aに示すように、電極のシートを伸ばして広げるか、又はシートアレイ60の多数個の識別可能な/分離した区分を展開する(図4)。
【0041】
展開された構造では、電極66の全部(又は少なくとも大部分)が壁に同時に接触するように、カテーテル10を心臓壁に向かって進める。次いで、それぞれの電極66は、局所の電気信号を検出することができ、システムコンソールは、信号の全アレイを処理して、電気的活性の長時間の、リアルタイムの図を与える。この電気的情報は、下記に記述するように場所及び機械的情報と一緒にもたらされて、これらの場所における心臓組織の性質の正確なマップを提供する。
【0042】
シートアレイ60はSU−8材料からできているので、電極66はフォトレジスト内で適宜支持され、充分に弾性的であって、いかなる所望の最終の/展開した形状でも心臓壁又は心臓の他の特徴、血管又は構造に形を合致させることが可能である。特定の場合において、シートアレイ60のカスタム化能力の単なる一例として、シートアレイ60を、若干外向きにたわませて(凸形状)、心臓壁の凹領域との接触を改善してもよい。
【0043】
シートアレイ60のフォトレジスト材料にリード線29を取り付けるのに好ましい方法は、第1に非導電性の被覆26の外壁を通して小さな穴を作ることを含む。このような穴は、例えば非導電性の被覆26を貫いて針を刺し、永続的な穴が形成されるように充分に針を加熱することによって形成することができる。次に、リード線29をマイクロフックなどによって穴を通じて引き込む。次いで、リード線29の端から、任意のコーティングをはぎ取り、これをシートアレイ60のフォトレジスト材料の下面に溶接し、次いで穴上の場所に滑り込ませ、ポリウレタン糊等で所定の場所に固定する。
【0044】
それぞれのスパイン14は所望により、少なくとも1つの場所センサー30も含む(図1A及び図1B)。場所センサー30は、それぞれのスパイン14の遠位端の近くに搭載される。記述される実施形態では、場所センサー30は、場所センサー30の近位端が非電導性被覆26の遠位端の中に延びる一方で、場所センサー30の遠位端が対応するスパイン14内に固定されるように搭載される。電極66を使用して、測定される6次元場所座標(位置及び方位座標)において電気的マッピングデータを収集するので、それぞれの場所センサー30を使用して、対応するスパイン14、及びシートアレイ60の取り付けられた部分の6次元座標(すなわち、3つの位置のX、Y、及びZ軸方向、並びに3つの方位座標ヨー、ピッチ及びロール方位)を決定する。結果として、シートアレイ60によりマッピングされるそれぞれのデータ点に対して、電気的及び場所データの両方が得られる。
【0045】
それぞれの場所センサー30は対応するセンサーケーブル36に接続される。それぞれのセンサーケーブル36は、非電導性被覆26、カテーテル本体12及び制御ハンドル16を通り、アンビリカルコード(図示せず)内の制御ハンドル16の近位端を出て、回路基板(図示せず)を収めるセンサー制御モジュール(図示せず)まで延びる。あるいは、回路基板は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,024,739号に記述されているように、制御ハンドル16内に収容可能である。
【0046】
それぞれのセンサーケーブル36は、プラスチック被覆シース内に入れられた多数のワイヤを含む。センサー制御モジュールでは、センサーケーブル36のワイヤは回路基板に接続される。回路基板は、対応する場所センサー30から受信される信号を増幅し、それをコンピューターにより理解され得る形で、センサーコネクターによりセンサー制御モジュールの近位端でコンピューターに伝送する。
【0047】
好ましくは、それぞれの場所センサー30は電磁的な場所センサーである。例えば、それぞれの場所センサー30は、米国特許第5,391,199号に記述されているような1つ又は2つ以上の磁場応答型コイル、又は国際公開第96/05758号に記述されている複数のこのようなコイルを含む。複数のコイルによって、場所センサー30の6次元座標(すなわち、3つの位置のX、Y、及びZ軸方向、並びに3つの方位座標ヨー、ピッチ及びロール方位)を決定することが可能となる。あるいは、当該技術で既知の、電気、磁気又は音響センサーなどのいかなる好適な場所センサーも使用され得る。本発明による使用に好適な場所センサーは、参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第5,558,091号、同第5,443,489号、同第5,480,422号、同第5,546,951号、及び同第5,568,809号、並びに国際公開第95/02995号,同第97/24983号、及び同第98/29033号にも記述されている。特に好ましい場所センサー30は、参照により本明細書に組み込まれる、2001年6月15日出願の、「Position Sensor Having Core with High Permeability Material」と題する、米国特許出願第No.09/882,125号に記述されているものなどの約3mmから約7mmの、好ましくは約4mmの長さを有する、単一の軸センサーである。これらがすべて案内用シースの内腔内にはまるように、スパイン14の直径を充分に小さく保つことが必要であるために、より小さいセンサーが本発明での使用に特に望ましい。
【0048】
スパイン14を搭載したカテーテル本体12の遠位端の好適な構造を図2及び図3に示す。わかりやすくするために、2つのみのスパイン14を図2に示す。カテーテル本体12の内腔15の遠位端中に搭載されるのは、スパイン搭載アセンブリ31である。スパイン搭載アセンブリ31は、カテーテル本体12の外壁13内に配設される外部搭載用リング32を含む。外部搭載用リング32は、好ましくは、ステンレス鋼、特にステンレス鋼303などの金属材料を含み、溶接又はポリウレタン接着剤などの接着剤の使用によるなど、様々の方法によりカテーテル本体12の遠位端で取り付けられてもよい。あるいは、外部搭載用リング32はプラスチック材料を含んでもよい。搭載用構造体34は、外部搭載用リング32内に同軸で設けられる。記述する実施形態では、搭載用構造体34は多面であり、ステンレス鋼、より具体的にはステンレス鋼303などの金属材料を含む。あるいは、搭載用構造体34はプラスチック材料を含んでもよい。外部搭載用リング32及び搭載用構造体34は、それぞれの支持アーム24の近位端が搭載される、チャネル38を提供する。特に、それぞれのスパイン14は、非電導性被覆26の一部分を、それぞれのスパイン14の近位端で除去し、それぞれの支持アーム24の遠位端を外部搭載用リング32と多面の搭載用構造体34との間のチャネル38の中に挿入し、チャネル38内のそれぞれの支持アーム24を好適な手段、例えば、ポリウレタン接着剤等により固定することによって、カテーテル本体12に搭載される。
【0049】
1つの実施形態では、支持アーム24は概ね台形の、曲面を備える末端断面を有する。このような配置では、それぞれの支持アーム24がチャネル38の中に挿入される場合、それぞれの支持アーム24の実質的に平坦な表面、好ましくは台形の末端断面の底部は、多面の搭載用構造体34上の実質的に平坦な表面に対して搭載される。好ましくは、多面の搭載用構造体34上の実質的に平坦な外表面の数は、スパイン14の数に対応する。このような場合には、それぞれのスパイン14の支持アーム24を、チャネル38内及び多面の搭載用構造体34上の対応する面に隣接して搭載して、支持アーム24を有効とし、よって多面の搭載用構造体34の周りにスパイン14を等間隔に配置してもよい。多面の搭載用構造体34は、スパイン14がカテーテル本体12の周りにも同様に等間隔に配置されるように、カテーテル本体12の長手方向軸と近似的に同軸であってもよい。それぞれの支持アーム24がチャネル38内に適宜配置されたならば、それぞれの支持アーム24を、ポリウレタン接着剤などの接着剤を使用するなど、任意の好適な手段によりチャネル38内に固定してもよい。あるいは、このような実施形態によれば、支持アーム24を搭載用構造体の周りに等間隔に配置する場合には、より一層の注意を払う必要があるが、搭載用構造体34は丸い外表面を有することができる。
【0050】
記述される実施形態では、第1の非伝導性チューブ40が外部搭載用リング32と支持アーム24との間に配設され、第2の非伝導性チューブ42が支持アーム24と搭載用構造体34との間に配設される。非伝導性チューブ40及び42は、ポリイミドチューブであってもよく、それぞれの支持アーム24が電気的に孤立された状態に置かれることが確保される。加えて、搭載用リング内管44を搭載用構造体34内で固定する。搭載用リング内管44は、好ましくは、ポリイミドなどの非伝導性材料を含む。搭載用リング内管44は、搭載用リング内腔46を画定し、それを通って電極リード線29及びセンサーケーブル36のそれぞれが延びる。
【0051】
前述したように、支持アーム24をスパイン搭載アセンブリ31に搭載する場合、それぞれのスパイン14の近位端において非電導性被覆26の一部分を除去して、支持アーム24を露出させる。それぞれのスパイン14の近位端において非電導性被覆26の一部分を除去することによって、シートアレイ60に対応する電極リード線29及びセンサーケーブル36、電極66及び場所センサー30が、カテーテル12の内腔15から搭載用リング内腔46を通り、それぞれの非電導性被覆26の中に延びることが可能となる。
【0052】
非電導性被覆26の中に挿入したならば、電極リード線29及びセンサーケーブル36は非電導性被覆26内で延び、それぞれ遠位端でシートアレイ60、電極66及び場所センサー30上の対応する部分と電気的に接続される。
【0053】
本発明のカテーテル10を使用するためには、心臓病医又は電気生理学医は、当該技術分野では既知であるが、シース及び拡張器の遠位端がマッピング対象の心臓の領域中にあるように、案内用シース及び拡張器を患者の中に導入する。ある場合、例えば、カテーテル10を大動脈弁を通じて左心室の中に血流に対抗する方向で挿入することを所望する場合には、ピッグテイル型拡張器(図示せず)を使用することが好ましい。特に、拡張器のループの側は、弁のフラップに対して押し付けられ、フラップを内側に押して、拡張器及び案内用シースが弁通って前進する間、フラップが一時的に反転するように、本質的に鈍器としての役割をする。ループの表面を使用して、弁のフラップを押すことにより、弁のフラップの潜在的な破裂を避けることができる。対照的に、真っ直ぐな遠位端を有する拡張器によりフラップを押すことは、フラップを潜在的に破裂させるか又は他の方法で損傷を与える可能性がある。左心室内部にループを入れて、拡張器及び案内用シースが弁から前進した後、大動脈弁のフラップは元の、自然な位置に戻る。
【0054】
その後、拡張器を案内用シースから取り除き、カテーテル10を案内用シースを通して患者の中に導入する。カテーテル10を案内用シースの中に挿入するためには、マッピングアセンブリ18は、それぞれのスパイン14が概ねカテーテル本体12の長手方向軸に沿って配設されている、潰れた配置(図1B)になっていなければならない。カテーテル10との接続での使用に好適な案内用シースは、PREFACE(商標)編組案内用シース(Biosense Webster,Inc.(Diamond Bar,California)から市販されている)である。このような案内用シースは、それぞれの支持アーム24を潰れた配置に保持して、スパイン14及びカテーテル10の残りの全体も、案内用シース内で患者の挿入点から静脈又は動脈を通り心臓中の所望の場所まで移動するのに充分な強度を有する。カテーテルの遠位端が心臓の左心室内の位置などの所望の場所に到達したならば、カテーテル10と案内用シースとの間の相対的な長手方向の動きを与えて、それぞれのスパイン14の少なくとも一部分が案内用シースから突出できるようにする。好ましくは、案内用シースをカテーテルの遠位端に対して近くに動かして、スパイン14を露出させる。それぞれのスパイン14の一部分が案内用シースから突出し、圧縮力が案内用シースによりスパインに対してもはや加えられないとき、図1A及び図4に最もよく示されるように、支持アーム24の形状記憶によって、支持アームが第1の伸張した配置に戻ることが可能となる(シートアレイマトリックスが、分離した、識別可能な区分中にある代替の実施形態)。
【0055】
第1の伸張した配置で、シートアレイ60からの少なくとも多数の電極を心臓組織と接触して配置して、電気的、場所及び機械的情報を接触した心臓組織から取得する。次いで、組織のこれらの区分からも電気的、場所及び機械的情報を取得することができるように、制御ハンドル16を使用することによってスパイン14を操作して、シートアレイ60を更なる伸張した配置に再配置して心臓組織の他の部分と接触させる。この再配置は好ましくは、案内用シースをカテーテルに対して近くに更に動かすことによって、それぞれのスパインのより大きな部分を露出することによって達成される。記述する実施形態では、露出されるそれぞれのスパインのより多くは、更なるそれぞれのスパインを、カテーテルから離れるように屈曲又は伸張させることができて、それにより、心臓組織と接触するように、シートアレイ60が最終の展開された構造又は形状を形成することが可能となる。心臓が満足なようにマッピングされるまで、このプロセスを繰り返すことができる。
【0056】
スパイン14及びシートアレイ60の伸張した配置は、様々な形状をとることができる。例えば、上述の実施形態では、それぞれのスパイン14は、図1Aに示すように、カテーテル本体12から径方向に外向きに延び、外向きに湾曲した形状を形成する。他の実施形態では、それぞれのスパイン14は、カテーテル本体12から径方向に外向きに延び、最終の形において実質的に凹状又は実質的に凸状であるシートアレイ60を生じる。
【0057】
心臓病医又は電気生理学医などの医師は、電気的及び機械的マッピング及び場所検出(位置決定)能力のために、シートアレイ60に接続された複数のスパイン14を有する本発明のカテーテル10を使用して、局所的な活性化時間をマッピングし、電圧マップを取得することができる。心臓病医は、また、場所センサー30の位置が完全な心臓周期にわたって変化するかどうかをモニターする、すなわち機械的情報を決定することにより、機械的活性を持たない、心臓中のこれらの場所(6次元の精度を持って)を決定することもできる。この情報は、患者に治療を提供することにおいて医者を導くことができる。例えば、医者は、機械的活性を持たない心臓の領域を見出した場合には、遺伝子、細胞、タンパク質又は薬物治療などの既知の方法を用いて、例えばMYOSTAR(商標)注入カテーテル(Biosense Webster,Inc.(Diamond Bar,California)により製造及び販売されている)を用いて、これらの領域に血行を再建することができる。本発明のカテーテル10によって、医者は、複数のデータ点を一度に測定することにより、電極66のシートアレイ60及びそのマトリックスによって、在来のカテーテルよりも速く心臓をマッピングすることが可能となる。
【0058】
所望ならば、カテーテルは、カテーテル本体12の遠位端を偏向させるための操縦機構を含んでもよい。このような設計によって、カテーテル本体12の遠位端は、カテーテル本体12の残りの部分よりも可撓性である短い長さ、例えば2から4インチ長の配管を含むことが好ましい。好適な操縦機構は、制御ハンドル16中の近位端からカテーテル本体12中の中央内腔15を通り、短い長さの配管中の軸外内腔の中に延びる、引っ張りワイヤ(図示せず)を含む。カテーテル本体12内では、引っ張りワイヤは、屈曲可能であるが実質的に非圧縮性である、密に巻いたコイルを通って延びる。コイルは、カテーテル本体12の近位端及び遠位端の近くに固定され、カテーテル本体12の偏向を防止する。引っ張りワイヤの遠位端は、軸外内腔中の短い長さの配管の遠位端で係止される。引っ張りワイヤの近位端は、カテーテル本体12に対して運動することができるハンドル16中の可動部材に係止される。カテーテル本体12に対する可動部材の近位の運動は、短い長さの配管の偏向を生じる。このような操縦機構及び構造体の例は、開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,064,905号により詳細に記述されている。操縦機構を本発明のカテーテル10の中に組み込む場合には、カテーテル本体12の遠位端で場所センサー30を含むことが望ましいことがある。当業者ならば認識するように、医師による使用を容易にするためにハンドルを維持するように記述されているが、スラリー化機構を含まずに、ハンドル16を無くすことができる。
【0059】
上記に述べた実施形態は、一例として引用したものであって、本発明は上記に具体的に図示及び述べたものに限定されないことは認識されるであろう。むしろ本発明の範囲には、上記に述べた様々な特徴の組み合わせ及び下位の組み合わせ、並びに当業者であれば上記の説明文を読むことで想到されるであろう、先行技術に開示されていないそれらの変更及び改変が含まれるものである。
【0060】
〔実施の態様〕
(1) 可撓性の細長い本体と、
前記細長い本体に接続されたハンドルと、
前記細長い本体に接続された少なくとも1つのスパインと、
前記少なくとも1つのスパインに結合した可撓性シートであって、前記可撓性シートはその上に複数の電極を有し、前記可撓性シート及び前記複数の電極が、組織中の電気的情報をマッピングするためのマッピングアセンブリを画定する、可撓性シートと、を含み、前記少なくとも1つのスパイン及び前記可撓性シートは、潰れた構造から展開された構造まで可動である、医療デバイス。
(2) 前記少なくとも1つのスパイン上に場所センサーを更に含む、実施態様1に記載の医療デバイス。
(3) 前記複数の電極が前記可撓性シート上の電極のアレイである、実施態様2に記載の医療デバイス。
(4) 前記場所センサーが6次元場所情報を提供する、実施態様3に記載の医療デバイス。
(5) 前記マッピングアセンブリがフォトレジストを含む、実施態様4に記載の医療デバイス。
(6) 前記フォトレジストがSU−8材料を含む、実施態様5に記載の医療デバイス。
(7) 前記少なくとも1つのスパインが複数のスパインを含む、実施態様4に記載の医療デバイス。
(8) 前記複数のスパインが2つ又は3つ以上のスパインを含む、実施態様4に記載の医療デバイス。
(9) 前記複数のスパインが3つ又は4つ以上のスパインを含む、実施態様8に記載の医療デバイス。
(10) 前記複数のスパインが4つ又は5つ以上のスパインを含む、実施態様9に記載の医療デバイス。
【0061】
(11) 前記複数のスパインが5つ又は6つ以上のスパインを含む、実施態様10に記載の医療デバイス。
(12) 前記可撓性シートが複数の識別可能な分離した区分を含み、前記区分が前記展開された構造において一体型様の形体を有する、実施態様1に記載の医療デバイス。
(13) 前記マッピングアセンブリが機械的情報を提供する、実施態様4に記載の医療デバイス。
(14) 前記可撓性シートが前記展開された構造において凸形体を有する、実施態様1に記載の医療デバイス。
(15) 前記可撓性シートが前記展開された構造において凹形体を有する、実施態様1に記載の医療デバイス。
(16) 前記複数の電極が前記組織を治療するために使用される、実施態様1に記載の医療デバイス。
(17) 可撓性の細長い本体と、前記細長い本体に接続されたハンドルと、前記細長い本体に接続された少なくとも1つのスパインと、前記少なくとも1つのスパインに結合した可撓性シートであって、前記可撓性シートはその上に複数の電極を有し、前記可撓性シート及び前記複数の電極は組織中の電気的情報をマッピングするためのマッピングアセンブリを画定する、可撓性シートと、を含むデバイスを提供する工程であって、前記少なくとも1つのスパイン及び前記可撓性シートは、潰れた構造から展開された構造まで可動である、工程、
前記デバイスが前記展開された構造にあるときに、前記マッピングアセンブリと前記組織とを形状を合致させる工程、
前記複数の電極を用いて、前記組織から電気的情報を提供する工程、及び
前記電気的情報によりマップを形成する工程、を含む、組織をマッピングする方法。
(18) 前記組織を前記複数の電極により治療することを更に含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 少なくとも1つの場所センサーを用いて、前記少なくとも1つのスパイン及び前記マッピングアセンブリの場所情報を提供することを更に含む、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記場所情報を6次元座標情報の形で提供することを更に含む、実施態様19に記載の方法。
【0062】
(21) 前記組織の機械的情報を提供することを更に含む、実施態様19に記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4