(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メッシュ状の前記面電極の裏面側からメッシュ状の前記面電極の目を介して前記面電極の前記表面に前記溶液が供給されることによって、前記溶液が薄膜状となって前記面電極の前記表面を覆うようになっている、
請求項1記載の静電霧化装置。
織布又は不織布である前記面電極の裏面側から織布又は不織布の繊維の隙間を介して前記面電極の前記表面に前記溶液が供給されることによって、前記溶液が薄膜状となって前記面電極の前記表面を覆うようになっている、
請求項2記載の静電霧化装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の静電霧化装置は一定の機能を有しており、加湿器や、溶液中の溶質と溶媒を分離する分離装置などに実用されている。
しかしながら従来の静電霧化装置にも改良すべき点がないとはいえない。その課題は、例えば、霧化装置を分離装置に応用する場合など、溶液の微粒子をより多く発生させたい場合により強く顕在化する。
従来の静電霧化装置は上述のように、中空の針状電極を用いてミストを発生させるので、単位時間あたりに発生させる溶液の微粒子の量をある程度以上に増やそうとするのであれば針状電極の数を増やすことが必要となる。実際そのような技術は既に実用されているが、そうすることによって生じる静電霧化装置の製造についてのコストの上昇や、メンテナンスについてのコストの上昇が過大となりがちである。
【0005】
本願発明は、静電霧化技術を、上述の如きコストの上昇を抑えつつも、単位時間あたりに発生させる溶液の微粒子の量を増やせるように改良することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本願発明者は以下の発明を提案する。
本発明は以下の2つの発明に大別される。
【0007】
第1発明は、2次元状に広がる表面を持つ面電極と、前記面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えている静電霧化装置である。この静電霧化装置は、前記面電極の前記表面を、薄膜状とした霧化の対象となる溶液で覆わせた状態で前記面電極と前記対向電極の間に電場を形成することにより、前記面電極を覆う前記溶液の表面の複数の部分から前記溶液の微粒子を生じさせるようになっている。
上述のように従来の静電霧化装置は、中空の針状電極を備えており、またそれが常識であるとされていた。しかしながら本願発明者の研究により、中空の針状電極に代えて2次元状に広がる表面を持つ面電極を用いた場合であっても、面電極の表面を薄膜状とした溶液で覆わせ、面電極と対向電極との間に適当な電場を形成させた場合には、薄膜状の溶液から溶液の微粒子が生じることが確認できた。
しかもこのような静電霧化装置は中空の針状電極を多数設けることを要する従来の静電霧化装置と比較して工作が容易であるから、溶液の微粒子を多く生成する場合においても、製造についてのコストの上昇を抑えるのが容易であり、また細かな部品を少なくできるのでメンテナンスについてのコストの上昇も抑え易い。
また、この静電霧化装置は、その設計により、単位電力あたり、或いは単位面積あたりの溶液の微粒子の発生量も多くできる。
【0008】
本願の第1発明における面電極は、上述のように、2次元状に広がる表面を持つ。これに対して対向電極は、線状、棒状、板状を含む面状など、適当な形状を取りうる。第2発明でも同様である。
例えば対向電極は、2次元状に広がる表面を持つものであってもよい。対向電極を2次元状に広がる表面を持つものとすることにより、面電極の表面の広い範囲から安定して溶液の微粒子を生じさせ易くなる。この場合の前記対向電極は、前記面電極の表面のうち少なくとも前記溶液の微粒子を発生させることが予定された範囲と対向する2次元状に広がる表面を持っていてもよい。このようにすれば、面電極の表面のうちの溶液の微粒子を発生させることが予定された範囲において、対向電極との間で同じような条件の電位勾配を作ることが容易になるので、溶液の微粒子の発生を意図した通りに行い易くなる。なお、対向電極は、2次元状に広がる表面を持つ場合には、前記対向電極の前記表面は、前記面電極の前記表面と平行であっても良い(面電極の表面が曲面であれば、対向電極の表面も曲面となる。)。これも、対向電極と面電極の間の電位勾配を面電極の表面のうちの広い範囲(例えばすべての範囲、或いは面電極の表面のうちの溶液の微粒子を発生させることが予定された範囲)で一定にするに資する。
【0009】
第1発明の面電極は、上述したように、2次元状に広がる表面を持つ。ここで2次元状に広がる表面は、平滑な面であってもよいし、凹凸があってもよいし、また孔が開いていたり、溝が切られていたり、メッシュ状のものとされていてもよい。全体として2次元状に広がっていれば足りる。また、2次元状に広がる表面は、平面であっても曲面であっても、また複数の平面、複数の曲面、或いは平面と曲面の組合せであってもよい。以上は第2発明でも同様である。
また面電極の材質は、第2発明の場合も含め、金属(例えば導電性を有する金属)を採用することができる。また、第1発明の場合であれば、面電極は織布又は不織布であってもよい。なお、織布には編布(編み物)も含まれる。
面電極がメッシュ状である場合、或いはその材質が織布又は不織布である場合を除き、上述のように、面電極の表面を平滑面とすることができるが、その場合、面電極の表面には、高さ1mm以下の突起が多数設けられていてもよい。そうすることで、溶液は面電極の表面のうちの電位勾配がその周囲よりも特異的に大きくなる点である多数の突起の部分で効率的に溶液の微粒子となる。突起は例えば、直径1mm以下の粒子(例えば金属の粒子)を面電極の表面に固定することにより形成することができる。
【0010】
前記面電極の表面には、疎水性又は親水性の材料による層が設けられていてもよい。こうすることにより、溶液が溶質と溶媒を含むものである場合に、生成される溶液の微粒子における溶液と溶媒の比をより変化させ易くなる。第2発明の場合も同様である。
疎水性又は親水性の材料としては、例えば、フッ素樹脂を含む樹脂、アルミナ、セラミック、などを用いることができる。
また、疎水性又は親水性の材料による層は、面電極と対向電極とを絶縁しない程度の薄さである必要がある。
溶液の微粒子における溶液と溶媒の比の変化がどのような場合に有用かについて補足する。
霧化技術を分離技術、即ち溶液中の溶質と溶媒を分ける技術に用いることができる。それは発明者の研究により得られた以下の知見による。溶質を含んだ溶媒である溶液を、スプレイ、超音波霧化、静電霧化等の適当な技術を用いて霧化する。すると、霧化されたことによって溶液の微粒子が多数生じる。ところで、この溶液の微粒子には、大きさにバラつきがある。そして、各微粒子の大きさと、各微粒子における溶液の濃度(溶質と溶媒の比)には、相関関係がある。したがって、霧化によって生じた溶液の微粒子を、その大きさにより分級することにより、溶液中の溶質と溶媒を分離できる。
このような霧化による分離技術に本発明の霧化装置を応用する場合には、溶液の微粒子の大きさと溶液の濃度の相関関係がより強くなった方がよい。面電極の表面に、疎水性又は親水性の材料による層を設けることでそれが実現できる可能性がある。
溶液の微粒子における溶質と溶媒の比をより変化させられるのは、以下のような理由によると考えられる。例えば、疎水性の液体が疎水性の物質の表面に乗せられた場合その接触角は、一般に、親水性の物質の表面に乗せられた場合よりも小さくなる。ここで、ある表面(例えば、面電極の表面)上に薄膜状に広がった溶液の一部における溶質と溶媒の比率が、当該表面に対して濡れ性が小さくなるよう(より丸い液滴となり易い状態)になっていれば、その部分の溶液は他の部分よりもより溶液の微粒子になり易い。つまり、溶液に含まれる溶質と溶媒の一方と他方に濡れ性についての相違があり且つ溶液中の溶質と溶媒の比に僅かな偏りがある場合には、面電極の表面が疎水性又は親水性であると、面電極の表面を薄膜状に覆った溶液中の溶質と溶媒の比の偏りを強調したような状態で溶液の微粒子を生成することができる。
【0011】
第1発明では、上述したように、霧化の対象となる溶液は、薄膜状に面電極の表面を覆う。溶液に面電極の表面をどのようにして覆わせるかは適宜選択すれば良い。
面電極の表面を薄膜状に覆う溶液は、霧化されて徐々に減っていきその厚さを徐々に減じていく。したがって面電極の表面には、最初に溶液を供給する他に、新たに溶液を供給してやる必要が生じる。新たな溶液の供給は連続的に行なってもバッチ的に行なっても良いが、大量の溶液の微粒子を低コストで得ようとするのであれば、装置の設計との兼ね合いとなるが、連続的に溶液を供給するのが望ましいと考えられる。
以下、溶液の面電極表面への新たな供給方法も含めて、溶液に面電極の表面を薄膜状に覆わせる方策について幾つか述べる。
【0012】
面電極がメッシュ状である場合には、メッシュ状の前記面電極の裏面側からメッシュ状の前記面電極の目を介して前記面電極の前記表面に前記溶液が供給されるようにすることができる。この場合、面電極の表面に供給された前記溶液が薄膜状となって前記面電極の前記表面を覆うようにする。例えばメッシュ状の面電極を溶液のプールの水面付近に水平に配置し、溶液のプールの水面高さを、面電極の表面を僅かに超える薄膜状の溶液の厚さが一定の範囲を保つように維持するが如きである。
この場合、対向電極は、面電極の表面の例えば全面に対向する、例えば面電極の表面と平行な表面を持つものであってもよい。
【0013】
面電極が織布又は不織布である場合には、織布又は不織布である前記面電極の裏面側から織布又は不織布の繊維の隙間を介して前記面電極の前記表面に前記溶液が供給されるようにすることができる。この場合、面電極の表面に供給された前記溶液が薄膜状となって前記面電極の前記表面を覆うようにする。例えば織布又は不織布の面電極を溶液のプールの水面付近に水平に配置し、溶液のプールの水面高さを面電極の裏面に触れる程度に維持するが如きである。こうすると織布又は不織布の表面は濡れるが、その程度でも面電極の表面に溶液が薄膜状に存在することに変わりはない。
この場合、対向電極は、面電極の表面の例えば全面に対向する、例えば面電極の表面と平行な表面を持つものであってもよい。
【0014】
前記面電極の前記表面は水平であり、前記面電極の表面には前記面電極の前記表面に前記溶液を供給する多数の孔が設けられているとともに、前記孔から前記溶液が供給されることによって前記溶液が薄膜状となって前記面電極の前記表面を覆うようになっていてもよい。
例えば多数の孔の開いた面電極を、メッシュ状の面電極の場合と同様に、溶液のプールの水面付近に水平に配置し、溶液のプールの水面高さを面電極の表面を僅かに超える程度に維持するが如きである。或いは、上記孔のそれぞれに溶液供給用の管を接続し、面電極の表面を覆う薄膜状の溶液の厚さが一定の範囲を保つようにしてもよい。
この場合、対向電極は、面電極の表面の例えば全面に対向する、例えば面電極の表面と平行な表面を持つものであってもよい。
【0015】
前記面電極は、円筒形状であり、前記面電極の前記表面は円筒形状の前記面電極の外周面であるとすることができ、また、前記面電極は、水平な円筒形状の軸周りに回転するようにされ、且つその下方の外周面を前記溶液に浸からせるようにすることができる。この場合、前記面電極が回転することによって前記面電極の前記表面に付着した前記溶液が薄膜状となって前記面電極の前記表面を覆う。
この場合、対向電極は、面電極の表面の溶液に浸かっていない部分の例えば少なくとも一部に対向する、例えば面電極の表面と平行な曲面である表面を持つものであってもよい。
【0016】
前記面電極は、円筒形状であり、前記面電極の前記表面は円筒形状の前記面電極の内周面であるとすることができ、また、前記面電極は、水平な円筒形状の軸周りに回転するようにされ、且つその下方の内周面を前記溶液に浸からせるようにすることができる。この場合、前記面電極が回転することによって前記面電極の前記表面に付着した前記溶液が薄膜状となって前記面電極の前記表面を覆う。
この場合、対向電極は、軸の部分に配された線状、或いは棒状の電極とすることができる。或いは対向電極は、軸と同軸の筒状の部材の一部であって、面電極の表面の溶液に浸かっていない部分の例えば少なくとも一部に対向する、例えば面電極の表面と平行な曲面である表面を持つものであってもよい。
【0017】
前記面電極の前記表面に前記溶液を供給する手段と、前記面電極の前記表面に気体を送風する送風手段と、を備えており、前記面電極の前記表面に供給された前記溶液が前記気体の送風方向に薄膜状となって進行することで前記面電極の前記表面を覆うようになっていてもよい。
このようにすることで、簡単に面電極の表面を薄膜状の溶液で覆うことができるようになる。この場合、面電極の表面は水平であってもよい。
この場合の対向電極は、例えば、面電極の表面の例えば全面に対向し、例えば面電極の表面に平行な表面を持つものとすることができる。
また、前記面電極の前記表面に前記溶液を供給する手段、を備えているとともに、前記面電極の前記表面には傾斜が与えられており、前記面電極の前記表面に供給された前記溶液が重力により垂れることにより薄膜状となって進行することで前記面電極の前記表面を覆うようになっていてもよい。
簡単に面電極の表面を薄膜状の溶液で覆うことができるようになる上、溶液を進行させるためのエネルギーの投入も不要である。
この場合の対向電極は、例えば、面電極の表面の例えば全面に対向し、例えば面電極の表面に平行な表面を持つものとすることができる。
前記面電極は、水平に配された円板形状であり、前記面電極の前記表面は円板形状の前記面電極の上面であり、前記面電極は、円板形状の垂直な軸周りに回転するようにされているとともに、前記面電極の前記表面の回転の軸付近に前記溶液を供給する手段を備えており、前記面電極が回転することによって前記面電極の前記表面の回転の軸付近に供給された前記溶液が遠心力により薄膜状となって進行することで前記面電極の前記表面を覆うようになっていてもよい。
このようにすることで、簡単に面電極の表面を薄膜状の溶液で覆うことができるようになる。この場合、面電極の表面は水平であってもよい。
この場合の対向電極は、例えば、面電極の表面の例えば外側の一定の範囲(この範囲はリング状である)に対向し、例えば面電極の表面に平行な表面を持つものとすることができる。面電極の表面の外縁に近い部分の方が、薄膜状の溶液の厚さが一定に保たれやすいため、その部分から主に溶液の微粒子を生じさせるにはこのような対向電極を用いるのが好ましい。
前記面電極は、すべての部分で傾きが0以下で、その両端がそれぞれX軸とY軸に接している、直線、曲線又はその組合せである第1象限にある線分をY軸周りに回転させることによって生成される、その回転の軸を垂直とする上に凸の回転体形状であり、前記面電極の前記表面は回転体形状の前記面電極の外周面であり、前記面電極は、回転体形状の軸周りに回転するようにされているものとすることができる。この場合の静電霧化装置は、前記面電極の前記表面の回転の軸付近に前記溶液を供給する手段を備えており、前記面電極が回転することによって前記面電極の前記表面の回転の軸付近に供給された前記溶液が遠心力により薄膜状となって進行することで前記面電極の前記表面を覆うようになっていてもよい。
このようにすることで、簡単に面電極の表面を薄膜状の溶液で覆うことができるようになる。この場合、面電極の表面は水平な部分を含む場合もあるが、外側に向かう下り傾斜がある部分かを問わず、上に凸の面電極の外周面である面電極の表面を溶液は、とにかく外側に向かって進んで行くことになる。
この場合の対向電極は、例えば、面電極の表面の例えば全範囲に対向し、例えば面電極の表面に平行な表面を持つものとすることができる。
これら4つの例はいずれも、薄膜状の溶液の進行方向が決まっている。これらの場合、前記面電極の前記表面を平滑面とした上で、面電極の表面に、薄膜状となって進行する前記溶液の進行方向に沿う方向に深さ1mm以内の溝が設けられていてもよい。このような溝の存在により、薄膜状となって進行する溶液の進行を促進することができるようになる。
【0018】
第1発明では、薄膜状の溶液の厚さは、例えば、0.1mm〜2.0mmとすることができる。この範囲に薄膜状の溶液の厚さを保つと、溶液の微粒子を効率よく得られる。
【0019】
第1発明の静電霧化装置と同様の効果を、以下の霧の生成方法によっても得られる。
例えば、2次元状に広がる表面を持つ面電極と、前記面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えている静電霧化装置を用いて実行される方法であって、前記面電極の前記表面を、薄膜状とした霧化の対象となる溶液で覆わせた状態で前記面電極と前記対向電極の間に電場を形成することにより、前記面電極を覆う前記溶液の表面の複数の部分から前記溶液の微粒子を生じさせる、霧の生成方法として把握することができる。
【0020】
第1発明、では、前記溶液の粘度は、0.01cP〜100cP程度とすることができる。このような粘度範囲であれば、溶液の微粒子を得やすい。第2発明の場合も同様である。
【0021】
第2発明は以下のようなものである。
第2発明は、2次元状に広がる表面を持ち、且つ多数の孔を有する板状の面電極と、前記面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えている静電霧化装置である。そしてこの静電霧化装置は、前記面電極の裏面側から前記孔を介して霧化の対象となる溶液の直径0.001mm〜1mmの液滴を前記面電極の前記表面付近に供給した状態で前記面電極と前記対向電極の間に電場を形成することにより、前記液滴からそれよりも小さな前記溶液の微粒子を生じさせるようになっている。
本願発明者の研究により、中空の針状電極に代えて、2次元状に広がる表面を持つ面電極の表面付近に溶液の液滴を供給し、面電極と対向電極との間に適当な電場を形成させた場合には、液滴が細かく分割され、溶液の微粒子が生じることが確認できた。
しかもこのような静電霧化装置は中空の針状電極を多数設けることを要する従来の静電霧化装置と比較して工作が容易であるから、溶液の微粒子を多く生成する場合においても、製造についてのコストの上昇を抑えるのが容易であり、また細かな部品を少なくできるのでメンテナンスについてのコストの上昇も抑え易い。
【0022】
なお、第2発明における液滴は、中実であっても、中空(泡)であっても構わない。例えばスプレイを用いれば中実の液滴を得られるし、溶液の中に散気装置を配することによれば中空の液滴を得られる。もちろんこれ以外の適宜の手段で液滴を生成することも可能である。
第2発明における前記面電極は、メッシュ状のものとされていてもよい。第2発明における前記面電極は金属製であってもよい。
第2発明における対向電極は第1発明についての説明で述べた通りである。
【0023】
第1発明、第2発明の場合ともに、面電極と対向電極の間の電位差は、例えば3kV〜50kV程度とすることができる。
上述したように、第2発明の場合でも、前記面電極の表面には、疎水性又は親水性の材料による層が設けられていてもよい。電極の表面に疎水性又は親水性の材料による層があると、上記孔の少なくとも当該層に対応する部分の内側は疎水性又は親水性の材料にて形成されることになる。第2発明の場合には、面電極の裏面側から面電極に設けられた孔を介して霧化の対象となる溶液の直径0.001mm〜1mmの液滴を面電極の表面付近に供給し、面電極と対向電極の間に形成した電場により、その液滴を更に細かく分割して液滴から溶液の微粒子を生じさせる。ここで、上記孔の内側の少なくとも一部が疎水性又は親水性であると、そこを通過する液滴の濡れ性に応じて、液滴をある程度選択的に通過させられるようになる。これにより、発生させる溶液の微粒子が、溶媒或いは溶質のうちの所望のものをより多く含むようにできる。これを可能とするためには、孔の径がある程度小さい方がよく、例えば、その径を液滴の径の10倍から100倍程度とするのがよい。
【0024】
第2発明の静電霧化装置と同様の効果を、以下の霧の生成方法によっても得られる。
例えば、2次元状に広がる表面を持ち、且つ多数の孔を有する板状の面電極と、前記面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えている静電霧化装置を用いて実行される方法であって、前記面電極の裏面側から前記孔を介して霧化の対象となる溶液の直径1mm〜0.01mmの液滴を前記面電極の前記表面付近に供給した状態で前記面電極と前記対向電極の間に電場を形成することにより、前記液滴からそれよりも小さな前記溶液の微粒子を生じさせる、霧の生成方法として把握することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
各実施形態の説明において重複する対象には同じ符号を付すこととし、重複する説明は場合により省略するものとする。
なお、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態ではともに、静電霧化装置は分離装置中に用いられているが、静電霧化装置を他の用途に用いることができるのは当然である。
【0027】
≪第1実施形態≫
第1実施形態の分離装置は、溶質を含む溶媒である溶液を、溶質と溶媒に分離するために用いられる。溶液の詳細については追って説明する。
【0028】
図1に、本願の分離装置の全体構成を概略的に示す。
本願発明の分離装置は、
図1に示すように、霧化室10、貯留槽11、分級器20、第1回収槽21、第2回収槽30を備えている。
霧化室10と貯留槽11、霧化室10と分級器20、分級器20と第1回収槽21、分級器20と第2回収槽30はそれぞれ、一般的な例えば金属製で例えば断面円形の管である接続管1A、1B、1C、及び1Dにて接続されている。
【0029】
霧化室10は、溶液を微粒子にするための部屋であり、溶液を微細な微粒子にする静電霧化装置を収納している。静電霧化装置の構成については後述するが、霧化室10に収納されている静電霧化装置は1つである場合もあるし、複数である場合もある。霧化室10は、これには限られないがこの実施形態では金属製であり、気密に構成されている。
霧化室10では、また、溶液の微粒子の他、溶液が蒸発することによって気体が生成される。その結果、霧化室10に当初空気がなかったとしても、霧化室10では微粒子を含む気体が生成される。
貯留槽11は溶液を貯留するタンクであり、接続管1Aを介して適宜霧化室10に溶液を供給するようになっている。図示を省略するがそれに必要なポンプ等が適宜設けられている。
微粒子を含む気体は、霧化室10から、接続管1Bを経て分級器20に送られるようになっている。
【0030】
分級器20は、霧化室10から送られてきた微粒子を含む気体に含まれる微粒子を分級するものである。この実施形態の分級器20は、霧化室10から送られてきた微粒子を含む気体に含まれた微粒子を、その大きさにより分級し、所定の基準よりも大きな微粒子を回収するものとなっている。
分級器20は、微粒子の分級を行えるものであればどのようなものでも構わず、サイクロンを利用した分級器、メッシュデミスタ、波板等公知のものを用いることができるため、その詳細な説明は省略するが、この実施形態の分級器20はサイクロンを利用した分級器である。
分級器20は、また、液体を貯蔵できる第1回収槽21を備えている。この分級器20では、微粒子はその大きさにより分級され、ある基準よりも大きな微粒子は接続管1Cを介して第1回収槽21に送られ、公知の技術により液化されて第1回収槽21に貯められるようになっている。第1回収槽21で回収されたものが第1溶液である。
分級器20で捉えられず、第1回収槽21に向かわなかった微粒子及びそれを含む気体(つまり、即ち分級器20を通過した微粒子及びそれを含む気体)は、接続管1Dを介して、第2回収槽30に向かうようになっている。微粒子は第2回収槽30で公知の方法で液化され、第2回収槽30に貯まる。第2回収槽30で回収されたものが第2溶液である。
上述したように霧化室10では溶液が蒸発するので、相対的に霧化室10内の気圧は第2回収槽30よりも高くなる。したがって、分離装置全体で、霧化室10から第2回収槽30へ向かう気体の流れが生じる。微粒子はその気体の流れに乗って移動する。もっとも、気体の流れが不十分なのであれば、霧化室10の気圧を例えば空気を供給することで高めたり、第2回収槽30内の気圧を下げたり、霧化室10から第2回収槽30までの間に気体の流れを促進するブロアを設けたり適宜工夫することができるのは当業者には自明であろう。
【0031】
霧化室10内に設けられている静電霧化装置の構成について説明する。
以下に説明するように、この実施形態では以下幾つかの静電霧化装置を例示するが、この実施形態で説明するすべての静電霧化装置は、2次元状に広がる表面を持つ面電極と、面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えている。
各静電霧化装置は、面電極の表面を、薄膜状とした霧化の対象となる溶液で覆わせた状態で面電極と対向電極の間に電場を形成することにより、面電極を覆う溶液の表面の複数の部分から溶液の微粒子を生じさせるようになっている。
各静電霧化装置で異なるのは主に、面電極を薄膜状とした溶液で覆わせるための仕組である。
以下、具体的な静電霧化装置の例について説明する。
なお、霧化室10内に設ける静電霧化装置は、以下のいずれであっても構わず、また以下に説明する静電霧化装置が同種類であっても、異なる種類であっても複数設置されていても構わない。
【0032】
<静電霧化装置の例1>
例1の静電霧化装置M1は、
図2に示したようなものであり、いわば霧化室10の全体により構成されている。
図2中10Aは、霧化室10を囲む壁である。霧化室10の壁10Aは、この実施形態では、その内部に直方体の空間を作っている。
霧化室10の内部と連通するようにして、その床の部分に対応する壁10Aには管1Aが、その垂直な壁10Aには管1Bが、それぞれ接続されている。
【0033】
霧化室10の内部には、板状で矩形の面電極101がある。面電極101は水平に配されている。この実施形態では、面電極101の4辺がそれぞれ、壁10Aのうちの垂直な4つの面に図示を省略の適当な金具により固定されているが、面電極101の剛性が水平を保つには不足しているのであれば、適宜の位置で面電極101を支えることができる。
この実施形態の面電極101は、メッシュ状である。より詳細には、この実施形態の面電極101は、縦横に走る金属製のある程度の太さの針金を溶接して作られたファインメッシュである。ファインメッシュを作る針金の太さ、目の大きさ等は適当に決定することができる。メッシュ状の面電極101は他には、グレーチングであってもよい。
この実施形態の面電極101は、導電性の金属でできている。例えば、鉄、銅などにより面電極101を構成することができるが、後述するように溶液が海水の場合などは面電極101に腐食が生じやすい。それを避けるためには、腐食に強い金属、例えばステンレスで面電極101を構成すればよい。面電極101が金属である場合の素材については、他の例による静電霧化装置でも同様である。
また、面電極101は、少なくともその表面(面電極101の表面とは、後述する対向電極と対向する面を意味する。この実施形態では、面電極101の上側の面である。)が、疎水性又は親水性の層で覆われていてもよい。例1の静電霧化装置M1では、面電極101はその全面を疎水性又は親水性の層で覆われている。疎水性又は親水性の材料としては、例えば、フッ素樹脂を含む樹脂、アルミナ、セラミック、などを用いることができる。例えば、ファインメッシュの面電極101の全体を、フッ素樹脂や、アルミナでコーティングすることは容易である。なお、面電極101の少なくとも表面を疎水性又は親水性の層で覆っても良いことは、面電極101が織布又は不織布でできている場合を除き、他の例による静電霧化装置でも同様である。
【0034】
霧化室10には、対向電極102が設けられている。対向電極102は、面電極101との間に所定の電場を形成するための電極である。それを可能とするために面電極101と対向電極102は、その途中で電源104に接続された導線103を介して結ばれている。電源104により、面電極101と対向電極102の間の電位差は、両者の間に形成される電界が、後述するように溶液を微粒子にすることが可能となる程度であればよい。そのときの面電極101と対向電極102の間の電位差は、例えば3kV〜50kV程度である。このとき、面電極101と対向電極102の距離は、1〜30cmとすることができる。これにより面電極101と対向電極102の間には静電場が形成されることになる。面電極101と対向電極102の間の静電場の向きは、いずれでも構わない。つまり、面電極101と対向電極102の電位はいずれが高くてもよい。以上説明した面電極101と対向電極102における電位差、電界の関係は、以下に説明する静電霧化装置でも同じである。つまり、面電極101と対向電極102には、面電極101の表面付近の電界がそこにある薄膜状の溶液から溶液の微粒子を生じさせられるようにする。
対向電極102は、線状、棒状など適当な形状を取ることができるが、この実施形態では板状となっており、且つまた必ずしもそうする必要はないが水平であり、その表面(対向電極102の表面とは、面電極101と対向する面を意味する。この実施形態では、対向電極102の下側の面である。)は、面電極101と平行になっている。必ずしもこの限りではないが、この実施形態による対向電極102は、矩形であり、且つ面電極101よりも一回り小さくなっている。
【0035】
霧化室10の内部には、貯留槽11から管1Aを介して溶液Lが供給される。貯留槽11から供給された溶液Lは、蒸発して気体を生じる。その一方で、溶液Lは、その液面が面電極101の表面を僅かに超える程度を保つように調整される(
図2では、理解の容易のため液面は面電極101の上面のかなり上に来ている。)。この調整は例えば、液面の位置を検出する適当なセンサにより液面の位置を監視するとともに、液面が下がって面電極101が露出した場合に貯留槽11から溶液Lを供給することにより達成することができる。溶液Lの面電極101の表面から液面までの距離、即ち薄膜状の溶液の厚さは、上述したように、
図2では強調して描かれているが、実際には例えば、0.1mm〜2.0mm程度だけ面電極101の上側の面を超えるようになっている。つまり、この実施形態の面電極101は、厚さが0.1mm〜2.0mm程の薄膜状の溶液Lでその表面を覆われることになる。なお、面電極101を覆う薄膜状の溶液の厚さは、以下に説明する静電霧化装置でも 0.1mm〜2.0mmの範囲に保たれるようになっている。
上述したように、面電極101と対向電極102との間には電界が生じている。面電極101の上(ただし、目の部分を除く)で薄膜状となっている溶液Lには、基本的にはその電界に応じて観念される電気力線の方向の力が働き、溶液の粘度が例えば100cP以下の場合には、細かな微粒子となる。このようにして溶液Lの微粒子が生成される。なお、溶液の粘度についてのこの条件は、以下に説明する他の静電霧化装置においても同様である。この実施形態では、面電極101のうち、目の部分を除くその表面の全面から溶液Lの微粒子が生じる。
溶液Lの微粒子、及び気体は管1Bを通って分級器20に向かうことになる。
【0036】
<静電霧化装置の例2>
例2の静電霧化装置は、概ね例1の静電霧化装置M1と同様の構成である。
異なるのは、面電極101である。
例2の静電霧化装置の面電極101は、例1の静電霧化装置M1の面電極101と同じ大きさの矩形であり、例1の静電霧化装置M1の面電極101と同じように壁10Aにその4辺を固定されている。また、少なくとも面電極101の上面である表面は平滑面となっており、水平である。面電極101の表面は、疎水性又は親水性の層で覆われていてもよい。平滑面を覆うのであれば、加工したセラミックによりその層を形成することも容易であろう。なお、疎水性又は親水性の層は面電極101の表面の全面を覆う必要はないが、例えば、薄膜状の溶液から溶液の微粒子を生じさせることを意図する部分(例えば、対向電極102の表面と対抗している面電極101の表面)に設けることができる。
例2の静電霧化装置の面電極101は、金属板であり、
図3の平面図(A)、及びそのA−A断面図(B)に示した通り構成されている。この面電極101は、矩形であり、その一方の長辺近辺に、必ずしもこの限りではないが、複数の孔105が穿たれている。この実施形態の孔105は円形であるがこれには限られない。
溶液は、この孔105から僅かに面電極101の上側の面である表面に溢れるようになっている。孔105は面電極101の全面に穿たれており、あふれた溶液が面電極101の全面を薄膜状に覆うようになっていてもよいが、この実施形態では、図示せぬブロアによりa方向に面電極101の表面上を吹く風によって、孔105から溢れた溶液は、薄膜状になってa方向に移動し、面電極101の略全面を覆うようになっている。
また、その間隔がもっと細かくても広くても構わないが、この実施形態では、面電極101の表面に、各孔105の近辺から、面電極101の短辺と平行な方向、即ちブロアによって薄膜状の溶液が移動する方向に沿って、溝106が切られている。溝106の深さは例えば、1mm以下とされる。薄膜状となった溶液は、この溝106に助けられ、容易に面電極101上を移動できるようになるし薄膜状になり易くなる。
面電極101上に薄膜状に広がった溶液は、例1の静電霧化装置M1の場合と同様に、電界中で溶液の微粒子になる。
なお、図示を省略するが、面電極101の表面には例えば、直径1mm以下の例えば金属製の粒子を融着させるなどして、多数の突起が設けられていても構わない。そうすることにより、溶液が溶液の粒子になることを促進できる。
溶液の微粒子、及び気体は管1Bを通って分級器20に向かうことになる。
面電極101の表面を平滑面にできること、面電極101の表面を平滑面とした場合にはそこに突起を設けることができること、面電極101の表面を移動する溶液の方向が定まっているのであればその方向に沿って溝106を設けることができることは、面電極101が織布又は不織布でできている場合を除き、以下の静電霧化装置でも共通である。
【0037】
<静電霧化装置の例3>
例3の静電霧化装置M3を
図4の側面図に示す。
例3の静電霧化装置M3は霧化室10内に配置されるが、静電霧化装置M3は複数配置される場合もある。
例3の静電霧化装置M3も、面電極101と、対向電極102を備えている。
この実施形態の面電極101は、布製であり、織布(編み物含む。)又は不織布でできている。織布又は不織布を構成する繊維は、天然繊維、合成繊維のどちらでも構わない。また、金属繊維、カーボン繊維などの導通性を有するものであってもよい。
これには限られないが、この実施形態の面電極101は矩形である。面電極101は、その一辺を天井に接続して天井から吊り下げるなどの方法により、霧化室10の内部で適当な方法により吊り下げられている。
対向電極102は導電性の金属でできた金属板である。対向電極102は、適当な方法で霧化室10の床に立てられている。対向電極102は、面電極101と図外の導線で結ばれ、これも図外の電源により面電極101との間で所定の電場を形成するようになっている。この実施形態における対向電極102は、必ずしもその限りではないが、面電極101と同じ大きさの矩形であり、必ずしもその限りではないが、正面から見たら面電極101と対応するような状態で面電極101と平行に配されている。
面電極101の裏面側には、管1Aと接続された管107と、管107に取付けられた散布機108が配されている。散布機108は管1A、管107を介して貯留槽11から供給された溶液を裏面側から面電極101に散布するようになっている。散布された溶液は、面電極101に染み込み、織布又は不織布を構成する繊維の隙間を介して面電極101の表面の全面から染み出すようになっている。
【0038】
面電極101の表面に滲み出た溶液は、織布又は不織布である面電極101を構成する繊維にまとわりついて薄膜状となる。面電極101上に薄膜状に広がった溶液は、例1の静電霧化装置M1の場合と同様に、溶液の微粒子になる。
溶液の微粒子、及び気体は管1Bを通って分級器20に向かうことになる。
なお、例3の静電霧化装置M3を稼働させると霧化室10の内部空間の床に溶液が滴り落ちる。例3の静電霧化装置M3を用いるのであれば霧化室10内に滴り落ちた溶液を回収するための適当な仕組みを設けるべきである。
【0039】
面電極101である織布又は不織布を構成する繊維が導電性の繊維でない場合、面電極101の裏面側に面電極101と沿わせるように導電性のある金属の板や箔を貼り付け、これを導線と接続することも可能である。これにより面電極101と対向電極102との間に電場を形成しやすくなる。
この場合、織布又は不織布である面電極101にその裏面側から溶液を供給することが難しくなることが考えられる。その場合、例えば、金属の板や箔の適当な部分に孔、或いはスリットを空けておいたり、織布又は不織布の最上部に溶液を供給し、織布又は不織布である面電極101の中を垂れ落ちながら溶液が表面に滲み出るようにすることにより、面電極101の表面を薄膜状の溶液で覆わせることができるようになる。
【0040】
<静電霧化装置の例4>
例4の静電霧化装置M4は、
図5、6に示したようなものであり、例1の静電霧化装置M1と同様、いわば霧化室10の全体により構成されている。
霧化室10の壁10Aには管1Aと管1Bが接続されている。
例4の静電霧化装置M4は、いずれも板状の面電極101と、対向電極102を備えている。
例4の静電霧化装置M4における面電極101と対向電極102はいずれも、導電性を有する金属製であり、且つ矩形である。対向電極102の方が面電極101よりも一回り小さい。面電極101と対向電極102の対向する面は互いに平行であり、且つともに傾斜が与えられている。面電極101の表面には、溝106が切られている。溝106の方向は、面電極101の傾斜方向に沿う。溝106の深さは、例2の静電霧化装置の場合と同様1mm以下である。また、面電極101の表面には、例2の静電霧化装置の面電極101が備えていたのと同様の突起があってもよい。
また、この実施形態では、面電極101の短辺の一方の他方の短辺よりも相対的に高い位置にあるものの近辺には、管1Aから受取った溶液を散布する散布機108が当該短辺に沿って複数設けられている。散布機108は、この実施形態では、面電極101の短辺方向いっぱいに溶液を散布するようになっている。
例4の静電霧化装置M4の面電極101の表面には、図示せぬブロアにより、面電極101の傾斜の方向に沿う図中aの矢印で示した方向で空気が吹きつけられるようになっている。
【0041】
例4の静電霧化装置M4では散布機108が散布した溶液が、面電極101の表面を面電極101の傾斜にしたがって垂れ落ちながら薄膜状に広がり薄くなっていく。溶液が薄膜状になることと、薄膜状となった溶液の移動とを溝106とブロアにより吹きつけられる空気が助ける。
面電極101と対向電極102との間には電界が生じている。面電極101の表面で薄膜状となっている溶液は、例1の静電霧化装置M1の場合と同様に、溶液の微粒子になる。
溶液の微粒子、及び気体は管1Bを通って分級器20に向かうことになる。
【0042】
<静電霧化装置の例5>
例5の静電霧化装置M5は、
図7、8に示したようなものであり、例1の静電霧化装置M1と同様、いわば霧化室10の全体により構成されている。
霧化室10の壁10Aには管1Aと管1Bが接続されている。管1Aは壁10Aのうち床に接続されており、床には所定の深さの溶液Lが貯まるようになっている。
例5の静電霧化装置M5は、円筒形の面電極101と、面電極101の一部と対向する面電極101と平行な内側面を有する対向電極102を2組備えている。面電極101の円筒形の外側面が本願発明でいう表面となる。これには限られないが、面電極101と対向電極102の長さ(
図7、8の奥行き方向の長さ)は一致している。面電極101と対向電極102は共に導電性を有する金属製である。
面電極101は軸109に、この実施形態では金属製の支持棒110を介して固定されている。軸109は図示を省略の所定の軸受にその両端を軸支されており、所定の動力により回転可能となっている。面電極101は、軸109の回転に従って、
図7のbで示した矢印の方向に回転する。
面電極101の表面は平滑面である。面電極101の表面には多数の突起が設けられていても良い。また、面電極101の表面には疎水性又は親水性の層が設けられていてもよい。
面電極101と対向電極102は導線103を介して電源104に接続されており、両者の間には電場が形成されるようになっている。対向電極102と導線103の接続は一般的な方法でこれを行うことができるが、導線103と面電極101との接続は面電極101が回転していることを考慮してブラシ電極111によりこれを行なっている。なお、導線103の溶液Lに没している部分が絶縁されているのは言うまでもない。
【0043】
上述のような面電極101が、
図7中bの矢印の方向に回転すると、面電極101の内周面と外周面に溶液Lが薄膜状に付着する。面電極101の外周面に付着した薄膜状の溶液Lは、面電極101が回転して面電極101と対向電極102の間の電場が生じている部分に差し掛かると、例1の静電霧化装置M1の場合と同様に、溶液Lの微粒子になる。
溶液Lの微粒子、及び気体は管1Bを通って分級器20に向かうことになる。
なお、溶液Lの液面は、常に面電極101の下端が溶液Lに浸かるように、且つブラシ電極111を覆わないように、制御される。
【0044】
<静電霧化装置の例6>
例6の静電霧化装置M6は、
図9、10に示したようなものであり、例1の静電霧化装置M1と同様、いわば霧化室10の全体により構成されている。
霧化室10の壁10Aには管1Aと管1Bが接続されている。管1Aの構成、溶液Lの深さの制御については、例5の静電霧化装置M5の説明で述べたのと同様である。
例6の静電霧化装置M6は、例5の静電霧化装置M5と同様に、導電性を有する金属にて形成の円筒形の面電極101を2組備えている。面電極101の内側面が本願発明でいう表面となる。
面電極101は、軸を兼ねる、導電性を有する金属により形成の対向電極102に、支持棒110を介して固定されている。なお、支持棒110と、軸を兼ねる対向電極102の接続は、絶縁体で構成され且つリング状の部材である絶縁リング112を介して行なわれているので、支持棒110が導電性を有していても面電極101と対向電極102とが導通することはない。したがって、面電極101と対向電極102との間には後述のように電界が形成される。
対向電極102が軸受にその両端を軸支されて回転可能であり、その結果、面電極101が、
図9のbで示した矢印の方向に回転するのは、例5の静電霧化装置M5と同様である。
面電極101の表面は平滑面である。面電極101の表面には多数の突起が設けられていても良い。また、面電極101の表面には疎水性又は親水性の層が設けられていてもよい。
面電極101と対向電極102は導線103を介して電源104に接続されており、両者の間には電場が形成されるようになっている。導線103と面電極101との接続は面電極101が回転していることを考慮してブラシ電極111によりこれを行なうことは例5の静電霧化装置M5と同様であるが、例6の静電霧化装置M6では軸を兼ねる対向電極102も回転していることを考慮して、対向電極102と導線103の接続もブラシ電極111にてこれを行っている。
【0045】
上述のような面電極101が、
図9中bの矢印の方向に回転すると、面電極101の内周面と外周面に溶液Lが薄膜状に付着する。面電極101の内周面に付着した薄膜状の溶液Lは、面電極101と対向電極102の間の電場により、例1の静電霧化装置M1の場合と同様に、溶液Lの微粒子になる。なお、面電極101の下方の部分ではそこに乗っている溶液の厚さが厚いので、この部分からは溶液Lの微粒子は事実上生じない。
溶液Lの微粒子、及び気体は管1Bを通って分級器20に向かうことになる。
なお、上述の例では対向電極102が軸を兼ねるようになっていたが、軸に対向電極102の機能を持たせず、軸とは別の電極を円筒形の面電極101の内部に配することも可能である。
【0046】
<静電霧化装置の例7>
例7の静電霧化装置M7は、
図11に示したようなものである。霧化室10内に複数の静電霧化装置M7が配されていてもよい。
静電霧化装置M7は、床から垂直に立てられた供給管113を備えている。供給管113は金属製の管であり、その下端に接続された管1Aを介して貯留槽11から溶液が矢印cで示したようにして供給される。供給管113の上端は開放されており、供給管113の上端からは溶液が溢れるようになっている。
供給管113には、その外側を囲むようにされた筒状の部材である回転管114が取付けられている。回転管114はこの実施形態では金属製であり、その内周面と供給管113の外周面の間は略隙間が生じないようになっている。回転管114は、その外周面で、所定の駆動装置と接続された回転体115と接続されており、回転体115の矢印dの方向の回転により矢印eの方向に回転するようになっている。
【0047】
そして、この静電霧化装置M7も面電極101と対向電極102を備えている。
面電極101は円板状であり、その上側の面である表面が水平であり、且つその中心に穿たれた孔の内周面を回転管114の外周面と固定されている。面電極101は、供給管113、回転管114と同軸であり、したがって、面電極101は、回転管114の回転に伴い、その中心を貫く垂直な線を軸として回転する。上述のように、供給管113の上端からは溶液が溢れる。溢れた溶液は供給管113の上面、回転管114の上面、回転管114の側面を伝い面電極101の表面に至り、遠心力により、面電極101の表面を半径方向に外側に向かって移動していく。このようにして、面電極101の表面に溶液が薄膜状に広がる。
面電極101の上側の表面は平滑面である。面電極101の表面には多数の突起が設けられていても良い。また、面電極101の表面には疎水性又は親水性の層が設けられていてもよい。また、図示を省略するが面電極101の表面には、その半径方向に沿う溝が複数本刻まれていてもよい。
他方、対向電極102は、面電極101から一定の距離を空けて、面電極101上に設けられている。対向電極102はこれには限られないが、導電性を持つ金属により形成されている。対向電極102はドーナツ状の円板である。対向電極102の外径は面電極101の外径と等しく、対向電極102の中心は平面視した場合、面電極101の中心と一致する。対向電極102の下側の面である表面は、面電極101の表面と平行である。
面電極101と対向電極102は、図示を省略の導線を介して電源に接続されており、両者の間には電場が形成されるようになっている。導線と面電極101との接続は面電極101が回転していることを考慮して、例えばブラシ電極を面電極101の側面や、或いは回転管114の外周面に当接させることでこれを行なう。
【0048】
上述のような面電極101が、
図11中のeの矢印の方向に回転すると、面電極101の表面を薄膜状となった溶液が覆う。薄膜状となった溶液が面電極101の表面を外側に向かって進行し、対向電極102の下に近づいて来ると、例1の静電霧化装置M1の場合と同様に、溶液Lの微粒子になる。なお、平面視した場合、対向電極102が、面電極101の外周よりの部分に対応して存在するものとされているのは、面電極101表面の薄膜状の溶液は、面電極101の外周部分に近い部分の方がその厚さが小さく、またその厚さが安定しており、溶液から溶液の微粒子を生じさせやすいことを考慮したものである。
溶液の微粒子、及び気体は管1Bを通って分級器20に向かうことになる。
なお、供給管113と、回転管114の上面は、面電極101の表面と面一であってもよい。また、溶液は必ずしも面電極101を回転させるための軸を兼ねる供給管113から供給する必要はなく、面電極101の上方から面電極101の表面の中心近くに供給することも可能である。
また、面電極101の外周からは溶液が下方に垂れ落ちる。霧化室10の例えば床には、この垂れ落ちた溶液を回収するための適当な仕組みを設けることが必要であろう。
【0049】
<静電霧化装置の例8>
例8の静電霧化装置M8は、
図12に示したようなものである。霧化室10内に複数の静電霧化装置M8が配されていてもよい。
例8の静電霧化装置M8は、例7の静電霧化装置M7と概ね同様の構造をしている。異なるのは面電極101の形状であり、また面電極101の形状の変更に伴ってその形状が変形された対向電極112の形状である。
例8の静電霧化装置M8は、例7の静電霧化装置M7と同様の供給管113、回転管114、回転体115を備えている。これらの動作は、静電霧化装置M7の場合と同様である。
面電極101は、円板状であった例7の静電霧化装置M7とは異なり円錐形である。もっとも、その上端が回転管114の縁に一致しているので、面電極101は、より正確に言えば、円錐形に近い円錐台形状である。面電極101はその中心に孔が穿たれ、その孔の内周面を回転管114の外周面に固定されている。面電極101の周囲はすべての部分で、外側に向かって傾斜する傾斜面となっている。
面電極101の傾斜面が、例8の静電霧化装置M8の面電極101の表面である。この面電極101の表面は平滑面である。面電極101の表面には多数の突起が設けられていても良い。また、面電極101の表面には疎水性又は親水性の層が設けられていてもよい。また、図示を省略するが面電極101の表面には、その半径方向に沿う溝が複数本刻まれていてもよい。
他方、対向電極102は、面電極101から一定の距離を空けて、面電極101上に設けられている。対向電極102はこれには限られないが、導電性を持つ金属により形成されている。対向電極102は円錐台の側面に沿う形状の板である。対向電極102の外径は面電極101の外径と等しく、対向電極102の中心は平面視した場合、面電極101の中心と一致する。対向電極102の下側の傾斜する面である表面は、面電極101の表面と平行である。
面電極101と対向電極102は、図示を省略の導線を介して電源に接続されており、両者の間には電場が形成されるようになっている。導線103と面電極101との接続は面電極101が回転していることを考慮して、例えばブラシ電極を面電極101の傾斜面の適当な部分や、或いは回転管114の外周面に当接させることでこれを行なう。
【0050】
上述のような面電極101が、
図12中のeの矢印の方向に回転すると、面電極101の表面を薄膜状となった溶液が覆う。薄膜状となった溶液が面電極101の表面を外側に向かって進行し、対向電極102の下に近づいて来ると、例1の静電霧化装置M1の場合と同様に、溶液Lの微粒子になる。
溶液の微粒子、及び気体は管1Bを通って分級器20に向かうことになる。
なお、溶液は必ずしも面電極101を回転させるための軸を兼ねる供給管113から供給する必要はなく、面電極101の上方から面電極101の表面の中心近くに供給してもよい。
また、面電極101の外周からは溶液が下方に垂れ落ちる。霧化室10の例えば床には、この垂れ落ちた溶液を回収するための適当な仕組みを設けることが必要であろう。
【0051】
なお、面電極101は、回転体、より詳細には、すべての部分で傾きが0以下で、その両端がそれぞれX軸とY軸に接している、直線、曲線又はその組合せである第1象限にある線分をY軸周りに回転させることによって生成される回転体の形状をしていればよい。
例えば、上述の例による回転体は、
図13の(a)に示した直線である線分を、Y軸周りに回転させて得られる回転体である。線分は直線である必要は必ずしもなく、
図13の(b)に示したような曲線であってもよいし、
図13の(c)、(d)に示したような曲線と直線の組合せでも良い。
図13の(d)の線分には一部傾きが0の部分が含まれているが傾きが正の部分が含まれていないのであれば構わない。
【0052】
<静電霧化装置の例9>
例9の静電霧化装置M9は、以下のようなものである。
例9の静電霧化装置M9は、
図14に示したようなものであり、いわば霧化室10の全体により構成されている。
静電霧化装置M9では、例1の静電霧化装置M1と同様に、霧化室10に管1Aと、管1Bがそれぞれ接続されている。
霧化室10の内部には、板状で矩形の面電極101がある。面電極101は水平に配されており、例1の静電霧化装置M1の場合と同様にその4辺を壁10Aに固定されている。
例9の静電霧化装置M9の面電極101は、例1の静電霧化装置M1の場合と同様にメッシュ状であっても構わないが、多数の孔116が穿たれた板となっている。面電極101の上側の面が表面であり、面電極101の表面は必ずしもこの限りではないが水平になっている。この実施形態の面電極101は、導電性の金属でできている。
面電極101の表面は、疎水性又は親水性の層で覆われていてもよい。孔116の径は、例えば、その径を液滴の径の10倍から100倍程度とするのがよい。この程度に小さな孔であれば、孔116を通過する液滴を、溶媒と溶質の比によりある程度選択することが可能となる。
【0053】
霧化室10には、対向電極102が設けられている。対向電極102は、例1の静電霧化装置M1の場合と同様に板状に構成されている。面電極101と対向電極102は、導線103を介して電源104に接続されており、両者の間に所定の電位差が形成されるようになっている。これにより面電極101と対向電極102の間には静電場が形成されることになる。
【0054】
霧化室10の内部には、貯留槽11から管1Aを介して溶液Lが供給される。溶液Lの液面は、例1の静電霧化装置M1とは異なり、面電極101の僅か下に保たれるようになっている。霧化室10の壁10Aのうち床を構成する部分には、複数の散気装置117が設けられており、気バブルを吹き出すようになっている。これにより、溶液Lの一部はバブル状になって液面Lから飛び出すようになっている。バブル状になって溶液Lの液面から飛び出した溶液は、孔116を介して面電極101の表面近くに位置することになる。そしてそこには、面電極101と対向電極102との間に存する電位差によって生じた電場がある。
バブルとなった溶液Lの厚さは非常に小さい。したがって、電場中にバブルとなって存在する溶液Lは、面電極101の表面に薄膜状になって乗っている場合と同様、電界により溶液Lの微粒子となる。
発生させられた溶液Lの微粒子、及び気体は管1Bを通って分級器20に向かうことになる。
【0055】
静電霧化装置M9では、面電極101の下側に溶液Lがあり、溶液Lを散気装置117にてバブルにして面電極101の孔116を介して面電極101の表面側に至らせることとしていた。
しかしながら、例えば、
図15に示したように、溶液は溶液を細かな液滴とするスプレイ118によって液滴にされ、その状態で面電極101の孔116を介して面電極101の表面側に至らせることもできる。もっとも、溶液を液滴にする手段はスプレイ118には限定されない。
液滴は、その直径が例えば0.001mm〜1mm程度の大きさである。この程度の大きさの液滴は、電極の上に薄膜状に広がった溶液と同様に、電界により更に細かく分割される。それにより、この場合にも、溶液の微粒子が生成されることになる。
【0056】
以上のようにして、霧化室10では溶液の微粒子が形成され、それを含む気体は、分級器20に送られることになる。
【0057】
次にこの分離装置の動作、使い方について説明する。
この分離装置では、上述のようにして、霧化室10で溶液の微粒子を形成し、また霧化室10内で生じた気体とともに、それを分級器20に送る。
霧化室10で生じた溶液の微粒子は、必ずしもこの限りではないが、大きさが1nm〜10μmの間で分布するようになっており、ばらつきが生じる。このばらつきは、正規分布状に生じるわけでなく、ある大きさの微粒子がその周囲の大きさの微粒子よりも明らかに多くなる。微粒子の大きさを横軸に、その大きさの微粒子の数を縦軸に取ったグラフを描いた場合、微粒子が特定の複数の大きさの場合に微粒子の数のピークが来て、そのピークを中心とした正規分布状のグラフを重ねあわせたようなグラフとなる。ピークの数は、一般に、2つから3つ程度となる。
【0058】
分級器20は、霧化室10から送られてきた微粒子を含む気体に含まれる微粒子のうち、所定の基準よりも大きな微粒子を回収する。この場合の所定の基準は、一般に、ピークの数が2つの場合には上述のピークの間に設けられる。これにより、両ピークに属する大きさの異なる一群の微粒子同士を概ね分けられることになる。
また、ピークが3つである場合には、一番微粒子の大きさが小さいピークと2番目に微粒子の大きさの小さいピークの間か、2番目に微粒子の大きさの小さいピークと一番微粒子の大きさが大きいピークの間に上述の基準を設けるのが通常である。ピークが4つ以上存在する場合にもこれに準ずる。
いずれにせよ、分級器20は、ある基準よりも大きな微粒子を捉え、それを接続管1Cを介して第1回収槽21に送る。第1回収槽21でその微粒子は液化され、第1溶液として第1回収槽21に貯められる。
【0059】
分級器20で捉えられず、第1回収槽21に向かわなかった微粒子及びそれを含む気体は、第2回収槽30に向かう。微粒子は第2回収槽30で公知の方法で液化され、第2回収槽30に第2溶液として貯まる。
【0060】
上述した通り、溶液の微粒子の大きさと各微粒子における溶液の濃度(溶質の割合)には相関関係がある。したがって、第1溶液と第2溶液は、どちらが溶質の濃度が高くなるかは溶質と溶媒の種類によることになるが、溶質の濃度が異なるものになる。
上述の第1溶液と第2溶液はともに、それを再び上述の溶液として更に上述の方法で分離を行うことができる。再度の分離は、1度ではなく、2度以上繰り返してもよい。
第1溶液を溶液とした場合には、分離を繰り返し行う度に第1溶液に生じる溶質の濃度の変化が更に促進され、第2溶液を溶液とした場合には、分離を繰り返し行う度に第2溶液に生じる溶質の濃度の変化が更に促進される。
【0061】
以下、具体的に、様々な溶液を用いて上述の分離装置で分離を行った場合について言及する。
【0062】
[溶液が海水の場合]
第1実施形態の分離装置では、溶液を海水とすることができる。
溶液が海水の場合、霧化によって生じた溶液の微粒子は、それが大きければ大きい程塩化ナトリウムを多く含んでいる傾向がある。したがって、海水を溶液とした場合、分級器で捉えられる大きな微粒子により多く塩分が移行する。結果として、第1溶液は元の溶液よりも塩分濃度が上がり、第2溶液は塩分濃度が下がる。これは第1溶液に着目すれば塩分の濃縮が生じていることに相当し、第2溶液に着目すれば海水の淡水化が生じていることに相当する。
淡水が不足している国や、離島などでは海水の淡水化技術が望まれるので、第2溶液に着目した海水の淡水化は大きな意味を持つ。
分離を一回行ったのみでは海水を飲用に用いられる程度に淡水化するに不足する場合には、第2溶液を溶液として上述の如き分離を繰り返せば良い。
他方、第1溶液を溶液として分離を行うと、特に分離を繰り返した場合には非常に濃い食塩水が得られる。この食塩水は、例えば食塩を作るための原料として用いることが可能である。不要なら第1溶液は廃棄してしまっても構わない。
【0063】
第2溶液を溶液として分離を2回以上繰り返せば第2溶液から塩化ナトリウムを除去できるのは上述した通りであるが、第2溶液には塩化ナトリウム以外の微量ミネラル分も凝縮する。淡水化の目的でなく、微量ミネラル分の凝縮の目的で、溶液を海水とする分離を行なってもよい。
塩化ナトリウム以外の微量ミネラルは、第1溶液を溶液として分離を2回以上繰り返すことによっても得られる。
微量ミネラル分の例としては、リチウム(イオン)を挙げることができる。リチウムイオンは第2溶液を溶液として繰り返し分離を行うことにより第2溶液に凝縮することが可能である。
他の微量ミネラル分も同様に第1溶液又は第2溶液に濃縮されるが、一般に、低原子量のミネラルは第2溶液側に、高分子量のミネラルは第1溶液側に移行することになる。
【0064】
[溶液が不揮発性物質を含む場合]
溶液が、それに含まれる溶質が、水よりも低い蒸気圧を持つ不揮発性物質で、且つ溶媒が水である場合について説明する。このような溶液は、典型的には廃水である。水よりも低い蒸気圧を持つ不揮発性物質の例としては、塩(えん)、アミノ酸、有機酸、界面活性剤、タンパク質の少なくとも一つを挙げることができる。
溶質、溶媒が上記のような場合、霧化によって生じた溶液の微粒子は、それが小さければ小さい程溶質を多く含んでいる傾向がある。つまり、溶質は第2溶液に濃縮する。結果として、第1溶液は元の溶液よりも不揮発性物質である溶質の濃度が下がり、第2溶液では不揮発性物質である溶質の濃度が上がる。これは第1溶液に着目すれば不揮発性物質である溶質の除去が生じていることに相当し、第2溶液に着目すれば不揮発性物質である溶質の凝縮が生じていることに相当する。
第1溶液に着目すれば、分離を行なって得られた第1溶液は、少なくとも元の溶液に比べれば環境中への放出が向いたものとなる。第1溶液を環境中へ放出することに着目すれば、上記技術は汚水処理技術であると捉えることができる。
分離を一回行ったのみでは環境中に放出できる程度に第1溶液の汚染の程度が小さくなっていないのであれば、第1溶液を溶液として上述の如き分離を繰り返せば良い。
他方、第2溶液を溶液として分離を行うと、不揮発性物質が凝縮する。不揮発性物質の中に再度利用する価値のある物質が存在するのであれば、第2溶液をその物質を得るための材料として用いればよい。必要とあれば、第2溶液を溶液とした分離を更に1度以上繰り返すことができる。不要なら第2溶液は廃棄してしまっても構わない。
【0065】
[溶液が揮発性物質を含む場合]
溶液が、それに含まれる溶質が、水よりも高い蒸気圧を持つ揮発性物質で、且つ溶媒が水である場合について説明する。このような溶液は、典型的には廃水である。水よりも高い蒸気圧を持つ揮発性物質の例としては、炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、アンモニア、これらを除くVOCの少なくとも一つを挙げることができる。
溶質、溶媒が上記のような場合、霧化によって生じた溶液の微粒子は、それが大きければ大きい程溶質を多く含んでいる傾向がある。つまり、溶質は第1溶液に濃縮する。結果として、第2溶液では元の溶液よりも不揮発性物質である溶質の濃度が下がり、第1溶液では揮発性物質である溶質の濃度が上がる。これは第2溶液に着目すれば揮発性物質である溶質の除去が生じていることに相当し、第1溶液に着目すれば揮発性物質である溶質の凝縮が生じていることに相当する。
第2溶液に着目すれば、分離を行なって得られた第2溶液は、少なくとも元の溶液に比べれば環境中への放出が向いたものとなる。第2溶液を環境中へ放出することに着目すれば、上記技術は汚水処理技術であると捉えることができる。
分離を一回行ったのみでは環境中に放出できる程度に第2溶液の汚染の程度が小さくなっていないのであれば、第2溶液を溶液として上述の如き分離を繰り返せば良い。
他方、第1溶液を溶液として分離を行うと、揮発性物質が凝縮する。揮発性物質の中に再度利用する価値のある物質が存在するのであれば、第1溶液をその物質を得るための材料として用いればよい。必要とあれば、第1溶液を溶液とした分離を更に1度以上繰り返すことができる。不要なら第1溶液は廃棄してしまっても構わない。
【0066】
≪第2実施形態≫
第2実施形態の分離装置は、
図16に示されたようなものである。
第2実施形態の分離装置は、第1実施形態の分離装置と概ね同じような構造である。第2実施形態の分離装置が第1実施形態の分離装置と異なるのは、管1Dの途中に触媒塔40が設けられている、という点にある。その他の部分は、すべて第1実施形態の分離装置と同じである。
【0067】
触媒塔40は、分級器20を通過して第2回収槽30へ向かう溶液の微粒子を含む気体を通過させるようになっており、そこを通過する溶液の微粒子に含まれる溶質を分解する。それが可能なように触媒塔40には、例えば粒状の触媒が充填されている。触媒塔40は、そこを通過した化学物質のうちの目的となる化学物質を分解する公知の触媒塔を用いればよい。
【0068】
第2実施形態の分離装置は、第1実施形態で説明した様々な溶液を分離の対象とすることができる。
ただし、第2実施形態の分離装置は、第2回収槽30へ向かう溶液の微粒子に含まれる溶質が、第2溶液から除去すべきものである場合に特に有用である。更にいえば、第2溶液の分離装置は、溶液の微粒子に含まれる溶質が第2溶液に移行しにくい(第1溶液により多く移行する)ものである場合に有用である。溶液に含まれる溶質が第2溶液に移行しにくいものである場合に、第2回収槽30へ向かう溶液の微粒子に触媒塔40を通過させれば、第2回収槽30で得られる第2溶液に含まれる溶質は益々小さくなり、これは第2溶液から溶質を除去するという目的に沿うからである。
特に、溶液が汚水である場合には、溶媒である水に含まれる溶質は除去すべきであるが、一般に、最終的に必要なのは溶質が除去された水である。上述のように溶質が不揮発性物質であり溶媒が水である溶液では第2溶液では溶質の量が減る。触媒塔を用いて溶質を更に減らせばその目的は促進されることになるから好ましい。つまり、第2実施形態の分離装置は、汚水処理、特に溶質が不揮発性物質であり溶媒が水である溶液を処理するのに向いている。
【0069】
≪第3実施形態≫
第3実施形態の分離装置は、
図17に示されたようなものである。
第3実施形態の分離装置は、第1実施形態の分離装置と概ね同じような構造である。第3実施形態の分離装置が第1実施形態の分離装置と異なるのは、管1Dの末端に第2回収槽30がない、という点にある。その他の部分は、すべて第1実施形態の分離装置と同じである。
【0070】
第3実施形態の分離装置では、分級器20を通過して、第1実施形態であれば第2回収槽30へ向かった溶液の微粒子を含む気体が、管1Dの末端からそのまま環境中へ放出される。第2溶液を回収する必要がない場合であれば、分離装置はこのような構造でよい。
例えば、溶液が海水であり、海水からの塩の取出しが目的なのであれば、より塩分の高くなった第1溶液を回収する必要はあるが、塩分濃度の低くなった、第1実施形態であれば第2溶液として回収された分級器20を通過した溶液の微粒子は回収の必要はない。このような場合に第3実施形態の分離装置を用いることができる。
なお、管1Dの途中或いは末端に、第2実施形態で説明した触媒塔を設けてもよい。