【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本願発明者は以下の発明を提案する。
本発明は以下に説明する第1発明と第2発明の2つの発明に大別される。
【0010】
まず、第1発明と第2発明の大枠での共通点について説明する。
第1発明、第2発明の分離装置はともに、溶質を含む溶媒である溶液を微細な微粒子にする静電霧化装置と、前記静電霧化装置で生成された溶液の微粒子をその大きさにより分級し、所定の基準よりも大きな前記微粒子を回収して第1溶液とするとともに、回収されなかった前記微粒子を通過させる分級器と、前記分級器で回収されなかった前記微粒子を回収して第2溶液とする回収槽と、を備えている、前記溶液を、溶質と溶媒に分離するために用いられる分離装置である、という点で共通する。
大雑把に言えば、両発明で異なるのは静電霧化装置の構成である。
第1発明の静電霧化装置(以下、「第1静電霧化装置」と称する場合がある。)は、2次元状に広がる表面を持つ面電極と、前記面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えており、前記面電極の前記表面を、薄膜状とした霧化の対象となる溶液で覆わせた状態で前記面電極と前記対向電極の間に電場を形成することにより、前記面電極を覆う前記溶液の表面の複数の部分から前記溶液の微粒子を生じさせるようになっている。
他方、第2発明の静電霧化装置(以下、「第2静電霧化装置」と称する場合がある。)は、2次元状に広がる表面を持ち、且つ多数の孔を有する板状の面電極と、前記面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えており、前記面電極の裏面側から前記孔を介して霧化の対象となる溶液の直径1mm〜0.01mmの液滴を前記面電極の前記表面付近に供給した状態で前記面電極と前記対向電極の間に電場を形成することにより、前記液滴からそれよりも小さな前記溶液の微粒子を生じさせるようになっている。
第1発明、第2発明の場合ともに、面電極と対向電極の間の電位差は、例えば3kV〜50kV程度とすることができる。
なお、第1静電霧化装置、第2静電霧化装置は、本願の分離装置にのみにしか応用できるものではなく、それ単体で発明として成立し得るものでもある。
【0011】
上述のように従来の静電霧化装置は、中空の針状電極を備えており、またそれが常識であるとされていた。しかしながら本願発明者の研究により、中空の針状電極に代えて2次元状に広がる表面を持つ面電極を用いた場合であっても、面電極の表面を薄膜状とした溶液で覆わせ、面電極と対向電極との間に適当な電場を形成させた場合には、薄膜状の溶液から溶液の微粒子が生じることが確認できた。
しかもこのような構造を持つ第1静電霧化装置は中空の針状電極を多数設けることを要する従来の静電霧化装置と比較して工作が容易であるから、溶液の微粒子を多く生成する場合においても、製造についてのコストの上昇を抑えるのが容易であり、また細かな部品を少なくできるのでメンテナンスについてのコストの上昇も抑え易い。
したがって、第1静電霧化装置を静電霧化装置として有する第1発明の分離装置は、製造についてのコストの上昇と、メンテナンスについてのコストの上昇を抑え易い。
また、本願発明者の研究により、中空の針状電極に代えて2次元状に広がる表面を持つ面電極を用いた場合であっても、2次元状に広がる表面を持つ面電極の表面付近に溶液の液滴を供給し、面電極と対向電極との間に適当な電場を形成させた場合には、液滴が細かく分割され、溶液の微粒子が生じることが確認できた。
しかもこのような構造を持つ第2静電霧化装置は中空の針状電極を多数設けることを要する従来の静電霧化装置と比較して工作が容易であるから、溶液の微粒子を多く生成する場合においても、製造についてのコストの上昇を抑えるのが容易であり、また細かな部品を少なくできるのでメンテナンスについてのコストの上昇も抑え易い。
したがって、第2静電霧化装置を静電霧化装置として有する第1発明の分離装置は、製造についてのコストの上昇と、メンテナンスについてのコストの上昇を抑え易い。
なお、第2静電霧化装置における液滴は、中実であっても、中空(バブル)であっても構わない。例えばスプレイを用いれば中実の液滴を得られるし、溶液の中に散気装置を配することによれば中空の液滴を得られる。もちろんこれ以外の適宜の手段で液滴を生成することも可能である。
第1静電霧化装置、第2静電霧化装置はともに、その設計により、単位電力あたり、或いは単位面積あたりの溶液の微粒子の発生量も多くできる。
【0012】
本願の第1静電霧化装置における面電極は、上述のように、2次元状に広がる表面を持つ。これに対して対向電極は、線状、棒状、板状を含む面状など、適当な形状を取りうる。第2静電霧化装置でも同様である。
例えば対向電極は、2次元状に広がる表面を持つものであってもよい。対向電極を2次元状に広がる表面を持つものとすることにより、面電極の表面の広い範囲から安定して溶液の微粒子を生じさせ易くなる。この場合の前記対向電極は、前記面電極の表面のうち少なくとも前記溶液の微粒子を発生させることが予定された範囲と対向する2次元状に広がる表面を持っていてもよい。このようにすれば、面電極の表面のうちの溶液の微粒子を発生させることが予定された範囲において、対向電極との間で同じような条件の電位勾配を作ることが容易になるので、溶液の微粒子の発生を意図した通りに行い易くなる。なお、対向電極は、2次元状に広がる表面を持つ場合には、前記対向電極の前記表面は、前記面電極の前記表面と平行であっても良い(面電極の表面が曲面であれば、対向電極の表面も曲面となる。)。これも、対向電極と面電極の間の電位勾配を面電極の表面のうちの広い範囲(例えばすべての範囲、或いは面電極の表面のうちの溶液の微粒子を発生させることが予定された範囲)で一定にするに資する。
【0013】
第1静電霧化装置の面電極は、上述したように、2次元状に広がる表面を持つ。ここで2次元状に広がる表面は、平滑な面であってもよいし、凹凸があってもよいし、また孔が開いていたり、溝が切られていたり、メッシュ状のものとされていてもよい。全体として2次元状に広がっていれば足りる。また、2次元状に広がる表面は、平面であっても曲面であっても、また複数の平面、複数の曲面、或いは平面と曲面の組合せであってもよい。以上は第2静電霧化装置でも同様である。
また面電極の材質は、第2静電霧化装置の場合も含め、金属(例えば導電性を有する金属)を採用することができる。また、第1静電霧化装置の場合であれば、面電極は織布又は不織布であってもよい。なお、織布には編布(編み物)も含まれる。
面電極がメッシュ状である場合、或いはその材質が織布又は不織布である場合を除き、上述のように、面電極の表面を平滑面とすることができるが、その場合、面電極の表面には、高さ1mm以下の突起が多数設けられていてもよい。そうすることで、溶液は面電極の表面のうちの電位勾配がその周囲よりも特異的に大きくなる点である多数の突起の部分で効率的に溶液の微粒子となる。突起は例えば、直径1mm以下の粒子(例えば金属の粒子)を面電極の表面に固定することにより形成することができる。
【0014】
前記面電極の表面には、疎水性又は親水性の材料による層が設けられていてもよい。こうすることにより、溶液が溶質と溶媒を含むものである場合に、生成される溶液の微粒子における溶液と溶媒の比をより変化させ易くなる。第2静電霧化装置の場合も同様である。
疎水性又は親水性の材料としては、例えば、フッ素樹脂を含む樹脂、アルミナ、セラミック、などを用いることができる。
また、疎水性又は親水性の材料による層は、面電極と対向電極とを絶縁しない程度の薄さである必要がある。
第1静電霧化装置において、溶液の微粒子における溶質と溶媒の比をより変化させられるのは、以下のような理由によると考えられる。例えば、疎水性の液体が疎水性の物質の表面に乗せられた場合その接触角は、一般に、親水性の物質の表面に乗せられた場合よりも小さくなる。ここで、ある表面(例えば、面電極の表面)上に薄膜状に広がった溶液の一部における溶質と溶媒の比率が、当該表面に対して濡れ性が小さくなるよう(より丸い液滴となり易い状態)になっていれば、その部分の溶液は他の部分よりもより溶液の微粒子になり易い。つまり、溶液に含まれる溶質と溶媒の一方と他方に濡れ性についての相違があり且つ溶液中の溶質と溶媒の比に僅かな偏りがある場合には、面電極の表面が疎水性又は親水性であると、面電極の表面を薄膜状に覆った溶液中の溶質と溶媒の比の偏りを強調したような状態で溶液の微粒子を生成することができる。
第2静電霧化装置の場合でも溶液の微粒子における溶質と溶媒の比をより変化させられるのは、以下のような理由によると考えられる。電極の表面に疎水性又は親水性の材料による層があると、上記孔の少なくとも当該層に対応する部分の内側は疎水性又は親水性の材料にて形成されることになる。第2静電霧化装置の場合には、面電極の裏面側から面電極に設けられた孔を介して霧化の対象となる溶液の直径0.001mm〜1mmの液滴を面電極の表面付近に供給し、面電極と対向電極の間に形成した電場により、その液滴を更に細かく分割して液滴から溶液の微粒子を生じさせる。ここで、上記孔の内側の少なくとも一部が疎水性又は親水性であると、そこを通過する液滴の濡れ性に応じて、液滴をある程度選択的に通過させられるようになる。これにより、発生させる溶液の微粒子が、溶媒或いは溶質のうちの所望のものをより多く含むようにできる。これを可能とするためには、孔の径がある程度小さい方がよく、例えば、その径を液滴の径の10倍から100倍程度とするのがよい。
【0015】
第1静電霧化装置では、上述したように、霧化の対象となる溶液は、薄膜状に面電極の表面を覆う。溶液に面電極の表面をどのようにして覆わせるかは適宜選択すれば良い。
面電極の表面を薄膜状に覆う溶液は、霧化されて徐々に減っていきその厚さを徐々に減じていく。したがって面電極の表面には、最初に溶液を供給する他に、新たに溶液を供給してやる必要が生じる。新たな溶液の供給は連続的に行なってもバッチ的に行なっても良いが、大量の溶液の微粒子を低コストで得ようとするのであれば、装置の設計との兼ね合いとなるが、連続的に溶液を供給するのが望ましいと考えられる。
以下、溶液の面電極表面への新たな供給方法も含めて、溶液に面電極の表面を薄膜状に覆わせる方策について幾つか述べる。
【0016】
面電極がメッシュ状である場合には、メッシュ状の前記面電極の裏面側からメッシュ状の前記面電極の目を介して前記面電極の前記表面に前記溶液が供給されるようにすることができる。この場合、面電極の表面に供給された前記溶液が薄膜状となって前記面電極の前記表面を覆うようにする。例えばメッシュ状の面電極を溶液のプールの水面付近に水平に配置し、溶液のプールの水面高さを、面電極の表面を僅かに超える薄膜状の溶液の厚さが一定の範囲を保つように維持するが如きである。
この場合、対向電極は、面電極の表面の例えば全面に対向する、例えば面電極の表面と平行な表面を持つものであってもよい。
【0017】
面電極が織布又は不織布である場合には、織布又は不織布である前記面電極の裏面側から織布又は不織布の繊維の隙間を介して前記面電極の前記表面に前記溶液が供給されるようにすることができる。この場合、面電極の表面に供給された前記溶液が薄膜状となって前記面電極の前記表面を覆うようにする。例えば織布又は不織布の面電極を溶液のプールの水面付近に水平に配置し、溶液のプールの水面高さを面電極の裏面に触れる程度に維持するが如きである。こうすると織布又は不織布の表面は濡れるが、その程度でも面電極の表面に溶液が薄膜状に存在することに変わりはない。
この場合、対向電極は、面電極の表面の例えば全面に対向する、例えば面電極の表面と平行な表面を持つものであってもよい。
【0018】
前記面電極の前記表面は水平であり、前記面電極の表面には前記面電極の前記表面に前記溶液を供給する多数の孔が設けられているとともに、前記孔から前記溶液が供給されることによって前記溶液が薄膜状となって前記面電極の前記表面を覆うようになっていてもよい。
例えば多数の孔の開いた面電極を、メッシュ状の面電極の場合と同様に、溶液のプールの水面付近に水平に配置し、溶液のプールの水面高さを面電極の表面を僅かに超える程度に維持するが如きである。或いは、上記孔のそれぞれに溶液供給用の管を接続し、面電極の表面を覆う薄膜状の溶液の厚さが一定の範囲を保つようにしてもよい。
この場合、対向電極は、面電極の表面の例えば全面に対向する、例えば面電極の表面と平行な表面を持つものであってもよい。
【0019】
前記面電極は、円筒形状であり、前記面電極の前記表面は円筒形状の前記面電極の外周面であるとすることができ、また、前記面電極は、水平な円筒形状の軸周りに回転するようにされ、且つその下方の外周面を前記溶液に浸からせるようにすることができる。この場合、前記面電極が回転することによって前記面電極の前記表面に付着した前記溶液が薄膜状となって前記面電極の前記表面を覆う。
この場合、対向電極は、面電極の表面の溶液に浸かっていない部分の例えば少なくとも一部に対向する、例えば面電極の表面と平行な曲面である表面を持つものであってもよい。
【0020】
前記面電極は、円筒形状であり、前記面電極の前記表面は円筒形状の前記面電極の内周面であるとすることができ、また、前記面電極は、水平な円筒形状の軸周りに回転するようにされ、且つその下方の内周面を前記溶液に浸からせるようにすることができる。この場合、前記面電極が回転することによって前記面電極の前記表面に付着した前記溶液が薄膜状となって前記面電極の前記表面を覆う。
この場合、対向電極は、軸の部分に配された線状、或いは棒状の電極とすることができる。或いは対向電極は、軸と同軸の筒状の部材の一部であって、面電極の表面の溶液に浸かっていない部分の例えば少なくとも一部に対向する、例えば面電極の表面と平行な曲面である表面を持つものであってもよい。
【0021】
前記面電極の前記表面に前記溶液を供給する手段と、前記面電極の前記表面に気体を送風する送風手段と、を備えており、前記面電極の前記表面に供給された前記溶液が前記気体の送風方向に薄膜状となって進行することで前記面電極の前記表面を覆うようになっていてもよい。
このようにすることで、簡単に面電極の表面を薄膜状の溶液で覆うことができるようになる。この場合、面電極の表面は水平であってもよい。
この場合の対向電極は、例えば、面電極の表面の例えば全面に対向し、例えば面電極の表面に平行な表面を持つものとすることができる。
また、前記面電極の前記表面に前記溶液を供給する手段、を備えているとともに、前記面電極の前記表面には傾斜が与えられており、前記面電極の前記表面に供給された前記溶液が重力により垂れることにより薄膜状となって進行することで前記面電極の前記表面を覆うようになっていてもよい。
簡単に面電極の表面を薄膜状の溶液で覆うことができるようになる上、溶液を進行させるためのエネルギーの投入も不要である。
この場合の対向電極は、例えば、面電極の表面の例えば全面に対向し、例えば面電極の表面に平行な表面を持つものとすることができる。
前記面電極は、水平に配された円板形状であり、前記面電極の前記表面は円板形状の前記面電極の上面であり、前記面電極は、円板形状の垂直な軸周りに回転するようにされているとともに、前記面電極の前記表面の回転の軸付近に前記溶液を供給する手段を備えており、前記面電極が回転することによって前記面電極の前記表面の回転の軸付近に供給された前記溶液が遠心力により薄膜状となって進行することで前記面電極の前記表面を覆うようになっていてもよい。
このようにすることで、簡単に面電極の表面を薄膜状の溶液で覆うことができるようになる。この場合、面電極の表面は水平であってもよい。
この場合の対向電極は、例えば、面電極の表面の例えば外側の一定の範囲(この範囲はリング状である)に対向し、例えば面電極の表面に平行な表面を持つものとすることができる。面電極の表面の外縁に近い部分の方が、薄膜状の溶液の厚さが一定に保たれやすいため、その部分から主に溶液の微粒子を生じさせるにはこのような対向電極を用いるのが好ましい。
前記面電極は、すべての部分で傾きが0以下で、その両端がそれぞれX軸とY軸に接している、直線、曲線又はその組合せである第1象限にある線分をY軸周りに回転させることによって生成される、その回転の軸を垂直とする上に凸の回転体形状であり、前記面電極の前記表面は回転体形状の前記面電極の外周面であり、前記面電極は、回転体形状の軸周りに回転するようにされているものとすることができる。この場合の静電霧化装置は、前記面電極の前記表面の回転の軸付近に前記溶液を供給する手段を備えており、前記面電極が回転することによって前記面電極の前記表面の回転の軸付近に供給された前記溶液が遠心力により薄膜状となって進行することで前記面電極の前記表面を覆うようになっていてもよい。
このようにすることで、簡単に面電極の表面を薄膜状の溶液で覆うことができるようになる。この場合、面電極の表面は水平な部分を含む場合もあるが、外側に向かう下り傾斜がある部分かを問わず、上に凸の面電極の外周面である面電極の表面を溶液は、とにかく外側に向かって進んで行くことになる。
この場合の対向電極は、例えば、面電極の表面の例えば全範囲に対向し、例えば面電極の表面に平行な表面を持つものとすることができる。
これら4つの例はいずれも、薄膜状の溶液の進行方向が決まっている。これらの場合、前記面電極の前記表面を平滑面とした上で、面電極の表面に、薄膜状となって進行する前記溶液の進行方向に沿う方向に深さ1mm以内の溝が設けられていてもよい。このような溝の存在により、薄膜状となって進行する溶液の進行を促進することができるようになる。
【0022】
第1静電霧化装置では、薄膜状の溶液の厚さは、例えば、0.1mm〜2.0mmとすることができる。この範囲に薄膜状の溶液の厚さを保つと、溶液の微粒子を効率よく得られる。
【0023】
次に第2静電霧化装置について説明する。
第2静電霧化装置における前記面電極は、メッシュ状のものとされていてもよい。第2静電霧化装置における前記面電極は金属製であってもよい。
第2静電霧化装置における対向電極は第1静電霧化装置についての説明で述べた通りである。
【0024】
第1発明、第2発明ともに、回収槽はなくてもよい。第2溶液を回収する必要がない場合には以下のような構成を採用することができる。なお、他の部分については、以上で説明した第1発明、第2発明の場合と変わりはない。
第1発明の場合であれば、例えば、溶質を含む溶媒である溶液を微細な微粒子にする静電霧化装置と、前記静電霧化装置で生成された溶液の微粒子をその大きさにより分級し、所定の基準よりも大きな前記微粒子を回収して第1溶液とするとともに、回収されなかった前記微粒子を通過させる分級器と、を備えており、前記分級器で回収されなかった前記微粒子を環境中に放出するようになっており、前記溶液を、溶質と溶媒に分離するために用いられる分離装置であって、前記静電霧化装置は、2次元状に広がる表面を持つ面電極と、前記面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えており、前記面電極の前記表面を、薄膜状とした霧化の対象となる溶液で覆わせた状態で前記面電極と前記対向電極の間に電場を形成することにより、前記面電極を覆う前記溶液の表面の複数の部分から前記溶液の微粒子を生じさせるようになっている、分離装置となる。
第2発明の場合であれば、例えば、溶質を含む溶媒である溶液を微細な微粒子にする静電霧化装置と、前記静電霧化装置で生成された溶液の微粒子をその大きさにより分級し、所定の基準よりも大きな前記微粒子を回収して第1溶液とするとともに、回収されなかった前記微粒子を通過させる分級器と、を備えており、前記分級器で回収されなかった前記微粒子を環境中に放出するようになっており、前記溶液を、溶質と溶媒に分離するために用いられる分離装置であって、前記静電霧化装置は、2次元状に広がる表面を持ち、且つ多数の孔を有する板状の面電極と、前記面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えており、前記面電極の裏面側から前記孔を介して霧化の対象となる溶液の直径0.001mm〜1mmの液滴を前記面電極の前記表面付近に供給した状態で前記面電極と前記対向電極の間に電場を形成することにより、前記液滴からそれよりも小さな前記溶液の微粒子を生じさせるようになっている、分離装置となる。
【0025】
第1発明、第2発明の分離装置ともに、前記分級器と前記回収槽との間に、前記分級器で回収されなかった前記微粒子を通過させる、前記溶質を分解する触媒が充填された触媒塔を備えていてもよい。
回収槽がない場合には、触媒塔は分級器の後に設けられていればよい。
これは溶質が除去すべきものである場合に有用である。この効果については追って詳しく述べる。
【0026】
第1発明の分離装置と同様の効果を、例えば、2次元状に広がる表面を持つ面電極と、前記面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えている静電霧化装置で、前記面電極の前記表面を、薄膜状とした霧化の対象となる溶質を含む溶媒である溶液で覆わせた状態で前記面電極と前記対向電極の間に電場を形成することにより、前記面電極を覆う前記溶液の表面の複数の部分から前記溶液の微粒子を生じさせる微粒子生成過程と、前記微粒子生成過程で生成された溶液の微粒子をその大きさにより分級し、所定の基準よりも大きな前記微粒子を回収して第1溶液とする分級過程と、前記分級過程で回収されなかった前記微粒子を回収して第2溶液とする回収過程と、を含む分離方法(以下、「第1発明の分離方法」と称する場合がある。)でも得られる。
また、第2発明の分離装置と同様の効果を、例えば、2次元状に広がる表面を持ち、且つ多数の孔を有する板状の面電極と、前記面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えている静電霧化装置で、前記面電極の裏面側から前記孔を介して霧化の対象となる溶質を含む溶媒である溶液の直径1mm〜0.01mmの液滴を前記面電極の前記表面付近に供給した状態で前記面電極と前記対向電極の間に電場を形成することにより、前記液滴からそれよりも小さな前記溶液の微粒子を生じさせる微粒子生成過程と、前記微粒子生成過程で生成された溶液の微粒子をその大きさにより分級し、所定の基準よりも大きな前記微粒子を回収して第1溶液とする分級過程と、前記分級過程で回収されなかった前記微粒子を回収して第2溶液とする回収過程と、を含む分離方法(以下、「第2発明の分離方法」と称する場合がある。)でも得られる。
第1発明の分離方法、第2発明の分離方法の場合ともに、前記溶液の粘度は、0.01cP〜100cP程度とすることができる。このような粘度範囲であれば、溶液の微粒子を得やすい。
【0027】
第1発明の分離方法、第2発明の分離方法ともに、前記第1溶液を前記溶液として、前記微粒子生成過程、前記分級過程、前記回収過程を一回以上繰り返して行うことができ、また、前記第2溶液を前記溶液として、前記微粒子生成過程、前記分級過程、前記回収過程を1回以上繰り返して行うことができる。
前者は、最終的に得られた第1溶液と第2溶液のうち第1溶液に着目した場合に、第1溶液で濃度が高くなる溶質を更に濃縮していきたい場合、或いは第2溶液で濃度が高くなる溶質を溶液から更に除去していきたい場合に有用である。上述の過程を例えば2回以上繰り返せば、繰り返しを多くする程更に効果が高まることは勿論である。
後者は、最終的に得られた第1溶液と第2溶液のうち第2溶液に着目した場合に、第2溶液で濃度が高くなる溶質を更に濃縮していきたい場合、或いは第1溶液で濃度が高くなる溶質を溶液から更に除去していきたい場合に有用である。上述の過程を例えば2回以上繰り返せば、繰り返しを多くする程更に効果が高まることは勿論である。
【0028】
溶液は、溶質と溶媒を含むのであれば目的に応じて適宜選択できるが、例えば、前記溶液を海水とすることができる。溶液が海水の場合、霧化によって生じた微粒子は、既に述べた通り、それが大きければ大きい程塩化ナトリウムを多く含んでいる傾向がある。したがって、海水を溶液とした場合、分級器で捉えられる大きな微粒子により多く塩分が移行するから、第1溶液は元の溶液よりも塩分濃度が上がり、第2溶液は塩分濃度が下がる。これは第1溶液に着目すれば塩分の濃縮に相当し、第2溶液に着目すれば海水の淡水化に相当する。もちろん必要があれば、上述したように、第1溶液又は第2溶液に対して、微粒子生成過程、分級過程、回収過程を繰り返せば良い。
海水を溶液とした場合、塩化ナトリウム以外の微量ミネラル分(例えばリチウム)を濃縮することも可能である。ただし、塩化ナトリウム以外の微量ミネラル分はその量が少ないため、微粒子生成過程、分級過程、回収過程は少なくとも2回は繰り返して濃縮する必要がある。
例えば、リチウムは、第2溶液に濃縮される。また、他の微量ミネラルも同様に第1溶液又は第2溶液に濃縮されるが、一般に、低原子量のミネラルは第2溶液側に、高分子量のミネラルは第1溶液側に移行することになる。
【0029】
前記溶質は、水よりも低い蒸気圧を持つ不揮発性物質で、且つ前記溶媒は水である場合、前記溶質は前記第2溶液に濃縮する。微粒子生成過程、分級過程、回収過程を第2溶液について繰り返せば不揮発性物質の濃縮は進み、これら過程を第1溶液について繰り返せば水を主体とする第1溶液から不揮発性物質が除去されることになる。水よりも低い蒸気圧を持つ不揮発性物質の例としては、塩(えん)、アミノ酸、有機酸、界面活性剤、タンパク質の少なくとも一つを挙げることができる。
前記溶質は、水よりも高い蒸気圧を持つ揮発性物質で、且つ前記溶媒は水である場合、前記溶質は前記第1溶液に濃縮する。微粒子生成過程、分級過程、回収過程を第1溶液について繰り返せば揮発性物質の濃縮は進み、これら過程を第2溶液について繰り返せば水を主体とする第2溶液から揮発性物質が除去されることになる。水よりも高い蒸気圧を持つ不揮発性物質の例としては、炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、アンモニア、これらを除くVOC(volatile organic compounds:揮発性有機化合物)の少なくとも一つを挙げることができる。
上述した揮発性物質、不揮発性物質は、溶液が廃水(工場廃水、家庭廃水であるを問わない。)である場合に溶液に含まれていることが多い。
溶液が不揮発性物質を含む場合には、微粒子生成過程、分級過程、回収過程を第1溶液について繰り返せば水を主体とする第1溶液から不揮発性物質を除去でき、溶液が揮発性物質を含む場合には、微粒子生成過程、分級過程、回収過程を第2溶液について繰り返せば水を主体とする第2溶液から揮発性物質を除去できる。これは本願発明の分離方法が汚水処理に応用できることを意味する。
【0030】
溶液が不揮発性物質を含む場合、第1発明の分離方法、第2発明の分離方法はともに、前記分級過程と前記回収過程との間に、前記溶質を分解する触媒と前記分級過程で回収されなかった前記微粒子とを接触させて、前記分級過程で回収されなかった前記微粒子に含まれる溶質を分解する分解過程を含んでいてもよい。
特に汚水処理を目的とする場合には、第2溶液から溶質を除去するのが目的となる。特に溶質が不揮発性物質である溶液を霧化した場合、不揮発性物質はより大きな微粒子により多く移行するので、不揮発性物質を多く含む微粒子はその多くが分級器で捉えられるが、分級器を通過した小さな微粒子にも不揮発性物質は含まれている。したがって、この微粒子から触媒を用いて不揮発性物質を除去すれば、汚水処理の効果はより高まる。なお、触媒と接触する微粒子は分級器を通過する程度に小さく表面積が大きいので、触媒の効果が出やすい。
【0031】
第1発明の分離方法、第2発明の分離方法ともに、第2溶液は回収しなくてもよい。なお、他については、以上で説明した第1発明の分離方法、第2発明の分離方法の場合と変わりはない。
この場合、第1発明の分離方法は、例えば、2次元状に広がる表面を持つ面電極と、前記面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えている静電霧化装置で、前記面電極の前記表面を、薄膜状とした霧化の対象となる溶質を含む溶媒である溶液で覆わせた状態で前記面電極と前記対向電極の間に電場を形成することにより、前記面電極を覆う前記溶液の表面の複数の部分から前記溶液の微粒子を生じさせる微粒子生成過程と、前記微粒子生成過程で生成された溶液の微粒子をその大きさにより分級し、所定の基準よりも大きな前記微粒子を回収して第1溶液とする分級過程と、前記分級過程で回収されなかった前記微粒子を環境中に放出する放出過程と、を含む分離方法となる。
この場合、第2発明の分離方法は、例えば、2次元状に広がる表面を持ち、且つ多数の孔を有する板状の面電極と、前記面電極との間に所定の電場を形成する対向電極と、を備えている静電霧化装置で、前記面電極の裏面側から前記孔を介して霧化の対象となる溶質を含む溶媒である溶液の直径0.001mm〜1mmの液滴を前記面電極の前記表面付近に供給した状態で前記面電極と前記対向電極の間に電場を形成することにより、前記液滴からそれよりも小さな前記溶液の微粒子を生じさせる微粒子生成過程と、前記微粒子生成過程で生成された溶液の微粒子をその大きさにより分級し、所定の基準よりも大きな前記微粒子を回収して第1溶液とする分級過程と、前記分級過程で回収されなかった前記微粒子を環境中に放出する放出過程と、を含む分離方法となる。
第2溶液は回収しない場合、第1発明の分離方法、第2発明の分離方法はともに、分級過程で回収されなかった微粒子を放出する前に、前記溶質を分解する触媒と前記分級過程で回収されなかった前記微粒子とを接触させて、前記分級過程で回収されなかった前記微粒子に含まれる溶質を分解する分解過程を実行するものとされていてもよい。