特許第5976338号(P5976338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976338
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】合成皮革
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/14 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   D06N3/14
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-43139(P2012-43139)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-177714(P2013-177714A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(74)【代理人】
【識別番号】100094488
【弁理士】
【氏名又は名称】平石 利子
(72)【発明者】
【氏名】村上 光嘉
(72)【発明者】
【氏名】新井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】池田 祥太郎
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−144184(JP,A)
【文献】 特開2008−087167(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/145083(WO,A1)
【文献】 特開2004−211258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00− 7/04
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生布に、ポリウレタン樹脂からなる表皮層が積層されてなり、部分的に、380〜780nmの波長領域における可視光線透過率が0.10〜11.90%であることを特徴とする合成皮革。
【請求項2】
生布が、単糸繊度5.0デニール以下、目付10〜350g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣装、鞄、靴、家具・ドア・壁・床の被覆材、家電・照明機器・OA機器の被覆材、車の内装材などに好適な合成皮革に関し、特に、優れた質感や高級な風合いを有するとともに、デザインの多様化や意外性を表現することができる合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に、一般的な合成皮革の断面模式図を示す。図1に示すように、合成皮革10としては、織布、編布、又はこれらの起毛布などを生布3とし、この生布3上に接着層2を介してポリウレタン樹脂からなる表皮層1を設けた構成のものが広く知られている。
このような合成皮革では、表皮層に顔料を添加・混合させ、その発色のみで見た目(外観)を表現していたので、デザイン上の多様性や意外性に欠けるものであった。
【0003】
特許文献1には、透光性を有する基材(3)と、透光性を有する表面材(4)との間に、蛍光塗料(10)を塗布した極めて薄いシート(10a)を介在させたライニング本体(2)が提案されている。
これは、紫外線照射手段(5)を点灯した際に、該照射手段(5)からの照射光にて蛍光塗料(10)を発光させるものであるが、顧客のニーズ(顧客が要求する文字、記号、図形などの表示情報)にあわせて、極薄のシート(10a)を切り抜いて並べたり、あるいは、このシート(10a)上に表示情報を描くことが煩雑で熟練を要するうえ、このような極薄のシート(10a)を介在させること自体、非常に手間がかかるので、量産には不向きであった。
【0004】
特許文献2には、厚さ40〜80μm程度のマーキングフィルムを、文字など適宜の模様に切り抜き、これを内照明光源式などの標識板に貼り付けて道路標識として使用することが提案されている。
この透光性合成樹脂からなるマーキングフィルムについては、上記特許文献1同様に極薄のフィルムを切り抜いて貼り付ける煩雑さがあるのみならず、そもそもデザイン上の多様性や意外性の追求ではなく夜間の標識効果の向上を最大の目的としているものなので光透過率を40〜50%に設定する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−114031号公報
【特許文献2】特開平9−311633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、表皮層をポリウレタン樹脂で構成する合成皮革において、光の透過率を単純に上げていくと、表皮層のシボ模様が視認しづらくなり、合成皮革の最大の特徴である天然皮革調のシボによる質感が得られなくなる不都合が生じる。
本発明は、デザイン上の多様性や意外性のある合成皮革を得るために、上記のような不都合を解消し、優れた質感や風合いを有するとともに、熟練を要さず量産可能な合成皮革を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を行った結果、380〜780nmの波長領域における可視光線透過率を特定の範囲内に制御した合成皮革とすることで、
合成皮革としての優れた質感や風合いを有するとともに、合成皮革の生布側から表皮層側に向かって光を照射すると、その光が表皮層まで透過し表皮層側で視認することができることを見出した。言い換えれば、このような合成皮革では、生布側から表皮層側に向かって光を照射する(透過させる)前と照射した(透過させた)後の表皮層の見た目(外観)を変化させることができるので、デザイン的な多様性や意外性を表現することができる。
【0008】
本発明は、このような知見の下でなし得たものであり、以下を要旨とする。
(1)生布に、ポリウレタン樹脂からなる表皮層が積層されてなり、380〜780nmの波長領域における可視光線透過率が0.10〜11.90%とした合成皮革。
(2)上記可視光線透過率を示す部分が全面もしくは部分的であることを特徴とする前記(1)に記載の合成皮革。
なお、本発明の合成皮革において、380〜780nmの波長領域における可視光線の透過率は、JIS−A−5759(2008)の建築ガラス用フィルムの試験方法において、ガラス板を使用せずに、自記分光光度計(日本分光社製 商品名“V−570”)を用い、スリット(スペクトルバンド幅)5.0nm、波長スキャン速度1000nm/minにて測定したときの各波長における透過率を相加平均した値である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の合成皮革は、優れた質感や高級な風合いを有するとともに、合成皮革の生布側から表皮層側に向かって光を照射すると、その光を表皮層側で表示できるものである。すなわち、生布側から表皮層側に向かって光を照射する前と照射した後の表皮層の見た目(外観)を変化させることができるので、デザインの多様化や意外性を表現できるものである。
また、合成皮革の生布側にセットされた光源の強さや色などを適宜コントロールすることで、装飾性をより高めることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一般的な合成皮革の断面模式図である。
図2】本発明の合成皮革の一実施態様例の断面模式図である。
図3】本発明の合成皮革の他の実施態様例をデジタル時計(光源)に被せた状態を示す写真であり、(A)は光源5の消灯時の合成皮革30を示し、(B)は光源5の点灯時の合成皮革30を示す。
図4図2に示す実施態様例の裏側にマスキングを設けた状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の合成皮革は、生布に、ポリウレタン樹脂からなる表皮層が積層されてなり、380〜780nmの波長領域における可視光線透過率を0.10〜11.90%としたことを特徴とする。
上記可視光線透過率が低すぎると、生布側から表皮層側に向けて光を照射しても、その光を表皮層で表示し難くなるので、光を照射する前と照射した後の表皮層における見た目が変化し難く、装飾性の向上が期待できない。一方で、上記可視光線透過率が高すぎると、生布側から表皮層側に向けて光を照射する前において、表皮層のシボ模様が視認しづらく天然皮革調のシボの質感が劣るうえ、生布が透けて見えてしまうので、0.10〜11.90%とすることが重要である。この可視光線透過率を示す部分は、合成皮革の全面でもよいし、部分的であってもよい。
また、上記可視光線透過率は、例えば、表皮層に添加・混合する顔料の色や量でも調整することができる。
【0012】
生布は、綿、スフ等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維などの繊維素材からなる織布(起毛布を含む)、編布(起毛布を含む)、不織布などが使用できる。
生布の単糸繊度(太さ)や目付については、得られる合成皮革の可視光線透過率が0.10〜11.90%を示すならば、特に制限されないが、具体的には、単糸繊度5.0デニール以下、目付10〜350g/m2程度(織布では厚さ0.05〜1.2mm程度、編布では厚さ0.1〜1.2mm程度、不織布では厚さ0.05〜1.2mm程度)のものを使用することが適している。
単糸繊度や目付が大きすぎると、光の透過が阻害され、生布側から表皮層側に向けて照射する光を表皮層で表示しづらくなる。一方で、単糸繊度や目付が小さすぎると、生布自体の機械的強度が不足して、生布に表皮層を積層する際の接着作業性が低下し、得られた合成皮革に破れ等の破損が発生しやすくなり好ましくない。
【0013】
ポリウレタン樹脂からなる表皮層としては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエステル/ポリエーテル系ポリウレタン、ラクトン系ポリウレタン等の公知の合成皮革用表皮のいずれもが使用可能である。中でも、ポリカーボネート系ポリウレタンは、耐久性や耐熱性において優れており、車輛用あるいは家具用の合成皮革の表皮として好適に使用される。
さらに、表皮層としての物性を損ねない範囲であれば、このようなポリウレタン樹脂に、天然ゴム、クロロプレン、SBR、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル等の高分子重合体を添加・併用してもよい。
【0014】
上記ポリウレタン樹脂には、シボ模様を視認するのに不可欠な顔料が添加される。顔料の色は、特に制限されないが、その添加量については、色によるので、得られる合成皮革の可視光線透過率が0.10〜11.90%の範囲内になるよう適宜選択する必要がある。例えば、ポリウレタン樹脂100重量部に対して、白色顔料の場合には、12〜30重量部程度、黒色顔料の場合には、0.5〜5重量部程度が好適である。
なお、表皮層中に添加される顔料は、多すぎると、合成皮革としての風合いを損ね易いので、ポリウレタン樹脂100重量部に対して、50重量部以下(より好ましくは30重量部以下)とすることが望ましい。
【0015】
上記ポリウレタン樹脂には、顔料の他に、必要に応じて、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤など、合成皮革のポリウレタン樹脂層に一般的に使用されている添加剤を使用することができる。
【0016】
上記ポリウレタン樹脂の塗布量(すなわち、表皮層の厚さ)は、用途に応じて、適宜選択することができるが、多すぎると(厚すぎると)、得られる合成皮革の可視光線透過率が0.10%未満となり易く、少なすぎれば(薄すぎれば)、シボ模様が入り難く、質感や風合いが劣るものとなるばかりか、合成皮革としての物性面でも問題が生じやすいので、本発明では、ウェット厚みが100〜300g/m2程度で、乾燥後の厚みが20〜60μm程度とすることが好ましい。
【0017】
本発明の合成皮革の製造方法としては、特に限定されないが、一般には、離型紙などのシボ紋面に、上記した表皮層用のポリウレタン樹脂をドクターナイフコーター、コンマドクターコーター、その他通常の塗布手段で塗布し、加熱乾燥した後、接着層を介して、前述の生布上に固定(積層)し、次いで、離型紙などを剥離する方法が採用される。
【0018】
接着層としては、例えば、2液型のウレタン樹脂系接着剤、湿気硬化ホットメルト型ウレタン樹脂系接着剤などを用いればよい。塗布量は、乾燥後の厚みが40〜120μm程度(乾燥後の重量でおよそ5〜100g/m2程度)となる量が好ましい。
本発明では、可視光線透過率が前記した範囲内であれば、この接着層と表皮層との間に、発泡ポリウレタン層などを設けてもよいし、接着層自体を発泡させることもできる。
【0019】
続いて、合成皮革の生布側から表皮層側に向けて照射する光(以下、「光源」とも言う)について説明する。図2は、本発明の合成皮革の一実施態様例の断面模式図である。
例えば、図2に示すように、光源5は、合成皮革20の生布23の裏側にセットし、オン(点灯)、オフ(消灯)あるいは点滅させて使用する。光源5としては、LED、蛍光灯、白熱灯、HID(高輝度放電灯)などが挙げられ、形状やサイズに制限はない。光源5を点灯あるいは点滅させる際の輝度や光色を適宜コントロールすることで、装飾性をより高めることもできる。
【0020】
図2に示すように、特定の可視光線透過率を有する本発明の合成皮革20では、生布23側から表皮層21側に向かって照射された光源5からの光が、表皮層21まで透過し、表皮層21側で当該光を視認することができる。すなわち、生布23側から表皮層21側に向かって光を照射する(透過させる)前と照射した(透過させた)後の表皮層21の見た目(外観)を変化させることができる結果、表皮層21の発色のみの見た目(外観)でしか表現出来なかった従来の合成皮革とは異なり、見た目の表現が変えられるので、デザインの多様化や意外性を表現することができるものである。
【0021】
図3(A),(B)に、本発明の合成皮革30を、デジタル時計(光源)5に、生布側を光源5に向けて被せた例を示す。
本例の合成皮革30は、厚さ0.75mm(目付293g/m2)のポリエステルニット上に、接着剤層を介して、ポリウレタン樹脂100重量部に対し白色顔料14重量部を添加した表皮層を積層させてなり、380〜780nmの波長領域における可視光線透過率を11.90%としたものである。なお、図中のデジタル時計(光源)5は、点灯時に(時刻を表す)数字を青色に発光表示するものである。
図3(A)に示すように、合成皮革30は、デジタル時計(光源)5の消灯時、顔料が発色する白色とシボ模様が視認でき、通常の合成皮革としての質感や風合いを呈している。これに対し、図3(B)は、光源5を点灯させ、光源5に接触している生布側から表皮層側に向かって光が照射された状態であり、光が表皮層まで透過することで、デジタル時計の発光表示(青色の数字)が表皮層で表示され、見た目(外観)の表現が変化している。
【0022】
図4は、生布23の裏側にマスキング6を設けた本発明の合成皮革20’を示す例である。
図4に示すように、特定の可視光線透過率を有する本発明の合成皮革20’は、マスキングで遮られない部分の光のみを表皮層21で表示することができる。すなわち、本例においても、光を照射する前と照射した後の表皮層21の見た目(外観)を変化させることができるので、表皮層21の発色のみの見た目(外観)でしか表現出来なかった従来の合成皮革とは異なり、見た目の表現が変えられる結果、デザインの多様化や意外性を表現することができるものである。
マスキング6としては、厚紙などを所望の形状(水玉模様、文字、記号、図形など)に切り抜いて、生布23の裏側に貼着、縫着、鈎着、溶着など適宜設ければよい。
【実施例】
【0023】
実施例1〜6、比較例1〜2
1液タイプのポリエステル系ポリウレタン樹脂(大日精化工業社製 商品名“レザミンME−44LP”)100重量部に対し、溶剤としてジメチルホルムアミドとメチルエチルケトンを20重量部ずつと、表1に示す量の黒または白の顔料とを、添加した後、混合撹拌し、離型紙(大日本印刷社製 商品名“DE−73”)の凹凸紋面に、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布した。その後、100℃のオーブンで2分間乾燥し、表皮層を得た。
なお、表1に示す黒顔料と白顔料としては、以下のものを使用した。
・黒顔料(DIC(株)製 商品名“ダイラックL−1770”)
・白顔料(DIC(株)製 商品名“ダイラックL−1781”)
【0024】
次いで、得られた表皮層上に、下記の接着剤を乾燥後の厚みが60μmとなるように塗布した。これを、100℃のオーブンで2分間乾燥した後、表1に示す色の糸を使用した生布(丸編みのポリエステルニット:厚さ0.75mm(目付293g/m2)、単糸繊度4.2デニール)と貼り合わせた。その後、50℃で48時間、合成樹脂の反応を進めた後、離型紙を剥離して合成皮革を得た。
なお、接着剤としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂(DIC(株)製 商品名“クリスボンC4070”)100重量部に対し、溶剤としてジメチルホルムアミド20重量部、架橋剤としてTDIのトリメチロールプロパン付加生成物(日本ポリウレタン工業社製 商品名“コロネートL”)12重量部、触媒としてアミン系(DIC社製 商品名“アクセルS”)3重量部、それぞれ添加したものを混合撹拌して使用した。
【0025】
得られた各合成皮革について、380〜780nmの波長領域における可視光線の透過率(%)を測定し、表1に示した。また、この可視光線の透過率の測定方法は、JIS−A−5759(2008)の建築ガラス用フィルムの試験方法において、ガラス板を使用せずに、自記分光光度計(日本分光社製 商品名“V−570”)を用い、スリット(スペクトルバンド幅)5.0nm、波長スキャン速度1000nm/minにて測定したときの各波長における透過率を相加平均した値である。
なお、参考例1,2として、生布として使用したポリエステルニットの各色の可視光線透過率を表1に併せて示しておく。
【0026】
また、得られた実施例1〜6、及び比較例1〜2の合成皮革について、表皮層のシボ模様視認性と、発光表示性を評価し、その結果を総合評価と併せて表1に示す。
なお、「総合評価」については、上記2つの評価が双方とも「○」の場合を「◎」とし、どちらか片方に「×」がある場合を「×」とした。
【0027】
・表皮層のシボ模様視認性は、シボ模様が視認でき、合成皮革としての質感に問題が無いものを「○」、シボ模様が視認し難く、生布が透けて見えてしまい、合成皮革としての質感に劣るものを「×」とした。
・発光表示性は、各合成皮革の生布側から表皮層側に向かって光を照射した際に、その光を表皮層で表示でき表皮層における見た目(外観)の表現の変化によりデザインの多様化や意外性を演出できるものを「○」、光が透けて見えず見た目の表現が変化しないものを「×」とした。
【0028】
【表1】

※なお、表1中の数値は、可視光線透過率以外、重量部を表す。
【0029】
実施例7,8
マスキングとして、水玉模様の水玉以外の部分を残し、水玉部分をくりぬいた1.0mm厚の厚紙を、実施例1,4の合成皮革のそれぞれの生布の裏側に接着剤にて貼着し、実施例7,8とした。
得られた実施例7,8の合成皮革について、上記と同様な方法で評価したところ、いずれも表皮層のシボ模様視認性は、シボ模様が視認でき、合成皮革としての質感に問題が無く、その上、発光表示性は、光が部分的に透過し、合成皮革上に水玉模様のデザインを表現することができた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の合成皮革は、優れた質感や高級な風合いを有しながら、デザインの多様化や意外性を表現することができるものである。
したがって、コートやジャケット、パンツ、手袋、帽子、靴、鞄などに用いると、舞台衣装や接客コンパニオンの制服等に斬新なデザインを付与できる。
また、レストラン、ホテル、映画館、劇場、パビリオンの家具、寝具、ドア、壁、床の被覆材として用いれば、合成皮革が醸し出す高級感に加えて、デザイン性の向上はもとよりメッセージの発信(例えば、“演奏中につき入退室禁止”、“非常口”)なども実現可能である。ノートパソコンや携帯電話のカバーケースとしても好適である。
【0031】
さらに、自動車のドアの内側の下の方には、乗り降りする人の足下を照らし、後続車にドアが開いていることを知らせ(特に夜間の)安全性を向上させるために、ドアの開閉と連動して点灯/消灯するカーテシーランプと呼ばれる室内灯が装備されていることが一般的である。本発明の合成皮革を、自動車のドアの内張に採用すれば、室内灯が消えているときは、通常の天然皮革調のシボをした合成皮革であるが、ドアが開き点灯した際には光が透けて見えるので、カーテシーランプとしての役割が果たせることに加え、イルミネーションの面白さをも演出できる。
【符号の説明】
【0032】
1,21 表皮層
2,22 接着層
3,23 生布
5 光源
6 マスキング
10,20,20’,30 合成皮革
図1
図2
図3
図4