(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正極外部端子はアルミニウム系金属からなり、前記溶接スポットは、前記正極外部端子と前記正極端子板に跨がって形成されており、前記貫通孔の中心を通る垂直切断面において、前記凸部に対応する位置の最大断面積は前記凸部の断面積の80%以上とする請求項1又は2に記載の角形二次電池の製造方法。
前記溶接スポットは、前記正極外部端子と前記正極端子板に跨がって及び前記負極外部端子と負極端子板に跨がってそれぞれ形成されており、前記正極外部端子と前記正極端子板に跨がって形成されている溶接スポットの径は前記負極外部端子と前記負極端子板に跨がって形成されている溶接スポットの径よりも大きい請求項3に記載の角形二次電池の製造方法。
前記正極端子板及び前記負極端子板に形成された前記貫通孔の少なくとも一方の上端側には上方に向かって拡径されたテーパー部が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の角形二次電池の製造方法。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンを含む携帯電話機、携帯型コンピュータ、PDA、携帯型音楽プレイヤー等の携帯型電子機器の駆動電源として、ニッケル−水素電池に代表されるアルカリ二次電池やリチウムイオン電池に代表される非水電解質二次電池が多く使用されている。さらに、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)の駆動用電源、太陽光発電、風力発電等の出力変動を抑制するための用途や夜間に電力をためて昼間に利用するための系統電力のピークシフト用途等の定置用蓄電池システムにおいても、アルカリ二次電池や非水電解質二次電池が多く使用されている。特に、EV、HEV、PHEV用途ないし定置用蓄電池システムでは、高容量及び高出力特性が要求されるので、個々の電池が大型化されるとともに、多数の電池を直列ないし並列に接続して使用されるが、スペース効率の点から角形二次電池が汎用されている。
【0003】
これらの用途に使用される角形二次電池は、単に電池容量を大きくすることのみならず、高出力の電池が必要であるが、高出力の放電の際には電池に大電流が流れるため、電池の内部抵抗を低くすることが必要である。そのため、電池の内部抵抗を極力低減させ、さらに内部抵抗の変動がないようにする目的で、端子部や電池内部の接合部における高信頼性化と低抵抗化を実現することについても種々の改良が行われてきている。
【0004】
これらの電池の端子部や電池内部の接合部における低抵抗化を実現する方法としては、従来から機械的なカシメ法が多く使用されていた。しかしながら、単なる機械的なカシメのみでは、EV、HEV、PHEV等の振動が多い環境下で使用されると、電気抵抗の経時変化が発生するため、下記特許文献1〜3にも示されているように、カシメによる接合部分の境界部をレーザ等の高エネルギー線によって溶接することが行われている。このとき境界部全体を溶接するとカシメの力がかかっていた部分が溶けることによりカシメの力が弱くなってしまうため、境界部の一部のみをスポット的に高エネルギー線によって溶接している。そして、下記特許文献2及び3には、カシメによる接合部分の境界部に沿って、複数の領域毎に、それぞれ複数の溶接スポットが互いに重畳するように、高エネルギー線によって溶接した例が示されている。
【0005】
このうち、下記特許文献2に開示されている集電体と端子との接合部の形成方法を、高エネルギー線としてレーザー光を用いた場合について、
図9を用いて説明する。なお、
図9Aは下記特許文献2に開示されている端子のカシメ部の先端の加工工程を示す断面図であり、
図9Bは
図9Aの工程後にレーザー溶接する工程を示す図であり、
図9Cは
図9Bの平面図であり、
図9Dはレーザー溶接を複数の溶接スポットが互いに重畳するように複数回繰り返した後の平面図である。
【0006】
下記特許文献2に開示されている集電体と端子との接合部60は、電池外装体(図示せず)に固定される蓋板61と、内側絶縁封止材62及び外部絶縁封止材63と、発電要素に接続された集電体64と、リベット端子65とを備えている。内側絶縁封止材62及び外部絶縁封止材63は、貫通孔を有し、蓋板61に形成された開孔の内外両周縁部に配されている。集電体64は、内側絶縁封止材62に重ねて配されている。リベット端子65は、顎部65aから突接したカシメ部65bを有している。
【0007】
そして、この接合部60は、リベット端子65のカシメ部65bを蓋板61の外周側から外部絶縁封止材63、蓋板61の開口、内側絶縁封止材62、及び集電体64のリベット端子孔を貫通するように組み立てられ、次いで、リベット端子65のカシメ部65bを集電体64側に押圧するようにカシメることにより一体化されている。次いで、リベット端子65のカシメ部65bと相補的な凹部を有し、この凹部の周縁に所定角度の傾斜部A1を有する加工パンチAを用意する。そして、加工パンチAを、カシメ部65bの先端65cに傾斜部A1が当接するように押し込み、カシメ部65bの先端65cを部分的に変形加工させ、
図9Bに示したように、カシメ部65bの先端65cが円錐台部となるように成形する。これにより、カシメ部65bの先端65cの形状は鈍角に調整される。
【0008】
次いで、
図9B及び
図9Cに示したように、カシメ部65bの先端65cの円錐台部の上面の垂直方向またはその付近の方向からレーザー光LBを照射することにより、レーザースポット溶接を行う。このときのレーザー光LBの照射範囲は、少なくとも集電体64とカシメ部65bの先端65cの円錐台部を含む領域となるようにして、集電体64とカシメ部65bの先端65cの円錐台部との間を突合せ溶接する。このレーザースポット溶接により、集電体64とカシメ部65bの先端65cの円錐台部の双方に照射されたレーザー光のエネルギーが偏りなく伝達され、溶接部には良好な溶接スポット(ナゲット)66が形成される。
【0009】
さらに、
図9Dに示したように、集電体64とカシメ部65bの先端65cの円錐台部分に沿って、溶接スポット66が重畳するようにして複数個形成されるように、集電体64とカシメ部65bの先端65cの円錐台部との間が突合せ溶接される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献2及び3に記載されているような接合部の形成方法を電池の端子部や電池内部の接合部の形成方法として採用すると、内部抵抗が低下するとともに、EV、HEV、PHEV等の振動が多い環境下でも電気抵抗の経時変化が発生し難くなり、端子部や電池内部の接合部における高信頼性化と低内部抵抗化を実現することができるという優れた効果を奏する。
【0012】
しかしながら、このような接合部の形成方法では、正極側及び負極側の構成材料の相違を考慮せず、正極側及び負極側共に同様の構成が得られるようにしているため、正極側及び負極側でそれぞれ異なる問題点が生じるようになる。例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池では、正極極板の芯体としてアルミニウム系金属(アルミニウム、アルミニウム合金)が、負極極板の芯体として銅系金属(銅、銅合金)が汎用的に使用されている。そのため、異種金属接触による腐食を抑制するために、正極集電体及び正極外部端子としては共にアルミニウム系金属からなるものが、また、負極集電体及び負極外部端子としては共に銅系金属からなるものが、それぞれ汎用的に使用されている。
【0013】
このうち、アルミニウム系金属は、材料強度が弱く、カシメのみでは結合強度を確保することは困難である。そのため、正極側は、カシメ固定と高エネルギー線による溶接とを組み合わせることにより、結合強度と電気的導通性を確保することが好ましい。また、銅系金属は材料強度が強いため、カシメのみで強固な結合強度を確保できるが、正極側と同様に、さらに高エネルギー線による溶接を行うことがより好ましい。しかしながら、上記特許文献2及び3に記載されているようなカシメ固定と高エネルギー線による溶接とを組み合わせた場合、高エネルギー線による溶接部に形成された溶接スポットにクラックが生じることがあり、製造歩留まりが低下することが見受けられた。
【0014】
発明者等は、このような溶接スポットにクラックが発生する原因を追求すべく種々実験を重ねた結果、カシメ固定部には応力が掛かっているため、カシメ固定と高エネルギー線による溶接とを組み合わせた場合、溶接スポットが固化する際にこの溶接スポットに横方向の引張応力が加わることに起因することを知見した。そして、発明者等は、さらに実験を重ね、カシメ固定部の構成を工夫することにより、溶接スポットが固化する際に溶接スポットに横方向の引張応力を小さくすることができ、溶接スポットにクラックが生じ難くできることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0015】
すなわち、本発明は、カシメ部と高エネルギー線による溶接部とによって接続された外部端子と端子板とを備える角形二次電池において、溶接スポットにクラックが発生し難く、使用時に内部抵抗変動が抑制され、信頼性が向上した角形二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の角形二次電池は、
開口を有する有底筒状の角形外装体と、
前記角形外装体内に収容された、正極極板及び負極極板を有する電極体と、
前記正極極板に電気的に接続された正極集電体と、
前記負極極板に電気的に接続された負極集電体と、
前記外装体の開口を封止する封口体と、
前記封口体に設けられた貫通孔に絶縁部材を介してそれぞれ前記封口体と電気的に絶縁された状態で挿通された正極外部端子及び負極外部端子と、
前記正極外部端子及び前記負極外部端子上にそれぞれ配置された正極端子板及び負極端子板と、
を備え、前記正極集電体及び負極集電体がそれぞれ前記正極端子板及び前記負極端子板と電気的に接続されている角形二次電池において、
前記正極端子板及び前記負極端子板はそれぞれ貫通孔を有するとともに、前記正極外部端子及び前記負極外部端子の上端部は、それぞれ前記正極端子板ないし前記負極端子板の貫通孔に下端側から挿入されており、
前記貫通孔の少なくとも一方には上端側の縁に凸部が形成されており、
前記凸部が形成された側の前記貫通孔に挿入された前記正極外部端子ないし前記負極外部端子の上端部は、カシメられて前記正極端子板ないし前記負極端子板に接続されているとともに、高エネルギー線の照射によって前記正極端子板ないし前記負極端子板に跨がって前記凸部の少なくとも一部と溶融されて溶接スポットが形成されていることを特徴とする。
【0017】
角形二次電池では、複数の角形二次電池を直列ないし並列に接続するため、正極外部端子及び負極外部端子に例えばボルト締結や溶接によってバスバーや配線を固定するための正極端子板及び負極端子板が設けられている。この正極端子板ないし負極端子板にバスバーや配線を固定する際に、正極端子板ないし負極端子板を経由してカシメ部ないし溶接スポットに横方向の応力が掛かることがあるので、カシメ部ないし溶接スポットには高い機械的強度を備えていることが要求される。
【0018】
本発明の角形二次電池では、正極側及び負極側の少なくとも一方側においては、貫通孔の上端側の縁に凸部が形成され、外部端子は端子板にカシメ固定されているとともに、高エネルギー線による溶接によって外部端子と端子板とが接続されているので、外部端子と端子板との間の結合強度が強くなり、しかも、使用時に内部抵抗変動が抑制され、良好な電気的導通性を確保することができるようになる。なお、正極側及び負極側のいずれにおいて、貫通孔の上端側の縁に凸部を形成し、外部端子を端子板にカシメ固定するとともに、高エネルギー線による溶接によって外部端子と端子板とを接続するかは任意であり、正極側及び負極側の両方に適用してもよい。また、正極側及び負極側のいずれか一方側のみにおいて、外部端子と端子板の接続をカシメ固定のみによる接続、あるいは高エネルギー線による溶接のみの接続とすることができる。さらに、正極端子板ないし負極端子板の貫通孔の上端側の縁に形成される凸部は、環状であっても、環状の一部が途切れているような形状に形成されているものであってもよい。
【0019】
加えて、本発明の角形二次電池では、正極側及び負極側の端子板に凸部が形成されている側では、溶接スポットが外部端子と端子板に跨がって凸部の少なくとも一部を溶融するように形成されている。この凸部の外周側は開放されているため、高エネルギー線の照射によって形成された溶融部が固化する際に発生する横方向の引張応力は、凸部が形成されていない場合に比すると弱くなる。そのため、本発明の角形二次電池によれば、溶接スポットが固化する際に溶接スポットに加わる横方向の引張応力が小さくなるので、溶接スポットにクラックが生じ難くなり、信頼性が向上した角形二次電池が得られるようになる。
【0020】
なお、本発明の角形二次電池においては、高エネルギー線の照射によって形成される溶接スポットは、正極側及び負極側の少なくとも一方のみ形成されていればよいが、両方に形成されていてもよい。また、高エネルギー線としては、レーザー光や電子ビームを使用し得る。
【0021】
また、本発明の角形二次電池においては、正極外部端子はアルミニウム系金属からなり、負極外部端子は銅系金属からなることが好ましい。
【0022】
角形二次電池のうち特に非水電解質二次電池では、正極極板の芯体としてはアルミニウム系金属(アルミニウム又はアルミニウム合金)が汎用されており、負極極板の芯体としては銅系金属(銅又は銅合金)が汎用されている。そのため、正極外部端子としてアルミニウム系金属からなるものを使用し、負極外部端子としては銅系金属からなるものを使用すると、異種金属接触による腐食が生じ難くなるので、より信頼性が高い角形二次電池が得られる。
【0023】
なお、正極端子板としては正極外部端子と同じアルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを使用することが好ましい。また、負極外部端子としては、銅又は銅合金だけでなく、ニッケル、ステンレススチール、鉄、アルミニウム又はアルミニウム合金等を使用することができ、各部材の表面にニッケルメッキしたものも使用し得る。負極端子板としては、銅又は銅合金だけでなく、ニッケル、ステンレススチール、鉄、アルミニウム又はアルミニウム合金等を使用することができ、各部材の表面にニッケルメッキしたものも使用し得る。
【0024】
前記正極外部端子がアルミニウム系金属からなる角形二次電池において、溶接スポットは、正極外部端子と正極端子板に跨がって形成されており、貫通孔の中心を通る垂直切断面において、凸部に対応する位置の最大断面積は凸部の断面積の80%以上とされていることが好ましい。
【0025】
本発明における溶接スポットの「凸部に対応する位置の最大断面積」とは、貫通孔の中心を通る垂直面で切断した面において、凸部に対応する位置に形成されている溶接スポットの断面積の最大値を意味する。また、「凸部の断面積」とは、貫通孔の中心を通る垂直面で切断した面における凸部の断面積を意味する。なお、本発明の角形二次電池では、溶接部はスポット状に形成されているため、凸部には溶融していない箇所も存在する。
【0026】
高エネルギー線の照射により溶融した部分が固化する際、溶融した部分は周囲の溶融しなかった部分よりも大きく収縮するため、溶接スポットには引張応力が加わる。アルミニウム系金属は銅系金属よりも機械的強度が弱いが、アルミニウム系金属に形成される溶接スポットの大きさを大きくすると、溶接スポットの耐引張応力性を高くすることができ、溶接スポットにクラックが発生し難くなる。
【0027】
なお、正極側に形成される最適な溶接スポットの大きさは、凸部の高さや幅によって変化するが、貫通孔の径方向における凸部の断面の大部分を占めるようにすると溶接スポットの耐引張応力を高くすることができ、少なくとも貫通孔の径方向における凸部に対応する位置の溶接スポットの最大断面積が凸部の断面積の80%以上とすれば、上記効果が良好に奏されるようになる。また、本発明の角形二次電池においては、貫通孔の径方向における凸部の断面の全てが溶融していても、この凸部が平坦面となることはないので、本発明の範囲内に含まれる。
【0028】
また、係る態様の角形二次電池においては、溶接スポットは、正極外部端子と正極端子板に跨がって及び負極外部端子と負極端子板に跨がってそれぞれ形成されており、正極外部端子と正極端子板に跨がって形成されている溶接スポットの径は負極外部端子と負極端子板に跨がって形成されている溶接スポットの径よりも大きくなるようにすることが好ましい。
【0029】
アルミニウム系金属からなる正極外部端子は、銅系金属からなる負極外部端子よりもカシメ強度が弱い。係る態様の角形二次電池によれば、正極側の溶接スポットの径を負極側の溶接スポットの径よりも大きくしているので、正極側及び負極側共に、それぞれの使用材料に応じた最適な外部端子と端子板との間の機械的強度及び電気的導通性を確保することができるようになる。
【0030】
また、本発明の角形二次電池においては、正極端子板及び負極端子板に形成された貫通孔の少なくとも一方の上端側には上方に向かって拡径されたテーパー部が形成されていることが好ましい。
【0031】
貫通孔の上端側に上方に向かって拡径されたテーパー部が形成されていると、正極外部端子ないし負極外部端子の先端側をカシメ加工する際の折り曲げ角度が小さくてすむので、カシメ加工時に正極外部端子ないし負極外部端子の先端側が損傷し難くなり、より高信頼性の角形二次電池が得られるようになる。
【0032】
また、本発明の角形二次電池においては、凸部が形成されている側の正極外部端子ないし負極外部端子の上端部は、凸部よりも上側に突出していることが好ましい。
【0033】
凸部が形成されている側の正極外部端子ないし負極外部端子の上端部が凸部より上側に突出していれば、溶接スポットが丸みを帯びた形状となり、溶接スポットが固化する際の引張応力をより分散させることができるので、より溶接スポットにクラックが生じ難くなり、より信頼性が向上した角形二次電池が得られるようになる。
【0034】
また、本発明の角形二次電池においては、正極外部端子及び負極外部端子の外周部には、それぞれ正極端子板ないし負極端子板が載置される鍔部が形成されていることが好ましい。
【0035】
このような構成を備えていると、正極外部端子及び負極外部端子の鍔部上に正極端子板ないし負極外部端子板を安定した状態に載置できるので、正極外部端子及び負極外部端子の上端部をカシメた際に、ある程度カシメ部の形状がばらついても、カシメ部と正極端子板ないし負極端子板との間に隙間が形成され難くなる。加えて、正極外部端子及び負極外部端子と封口体との間の絶縁部材に熱が伝わり難くなって絶縁部材による封止性の低下を抑制することができるようになるので、より信頼性が向上した角形二次電池が得られるようになる。
【0036】
また、本発明の角形二次電池においては、正極外部端子及び負極外部端子のカシメ部の形状は、環状であることが好ましい。この場合において、正極外部端子及び負極外部端子のカシメ部は、それぞれカシメ前の形状が円筒状のものをスピニングカシメにより変形させて形成されたものであることが好ましい。
【0037】
カシメ部の形状を環状とすると、カシメ部に加えられた外力はカシメ部中心側から等方的に分散されるので、カシメ部の強度がより強くなる。しかも、カシメ部は、カシメ部周辺の変形を抑えるために大きな力を加えられない場合が多いが、円筒状の部材をスピニングカシメすると、大きな力を加えなくても、強固にカシメ固定することができるようになる。
【0038】
また、本発明の角形二次電池においては、溶接スポットは複数箇所に形成されていることが好ましい。
【0039】
溶接スポットが1箇所では、正極端子板と正極外部端子との間ないし負極端子板と負極外部端子との間の接合部の機械的な強度や電気的な電導度が不足する場合、溶接スポットを複数箇所となるようにすることによって改良し得る。ただ、高エネルギー線によって形成された溶接スポットが多すぎると、カシメの力がかかっていた部分が溶融してしまってカシメの力が弱くなってしまう。そのため、正極端子板と正極外部端子との間及び負極端子板と負極外部端子との間の接合部の複数の高エネルギー線による溶接スポットは重畳しないようにすることが好ましい。
【0040】
係る態様の角形二次電池においては、複数箇所の溶接スポットは等間隔になるように形成されていることが好ましい。
【0041】
このような構成を備えていると、正極端子板ないし負極端子板に力が加えられた際に溶接スポットに均等に力がかかるため、正極外部端子と正極端子板との間ないし負極外部端子と負極端子板との間の接合部の強度がより大きくなり、より信頼性が高い角形二次電池が得られる。
【0042】
また、本発明の角形二次電池においては、正極集電体と正極外部端子との間及び負極集電体と負極外部端子との間の少なくとも一方には、圧力感応型の電流遮断機構が設けられており、前記外装体の内部は密閉されていることが好ましい。
【0043】
このような構成を備えていると、外装体内部の圧力が所定値以上に増大すると電流遮断機構が作動して外部に電流が流れないようになるので、安全性に優れた角形二次電池が得られる。
【0044】
また、本発明の角形二次電池においては、電極体は、偏平形電極体であり、一方側の端部に複数枚積層された正極芯体露出部を有し、他方側の端部に複数枚積層された負極芯体露出部を有し、正極芯体露出部は角形外装体の一方側の側壁に対向し、負極芯体露出部は角形外装体の他方側の側壁に対向するように配置され、正極集電体は正極芯体露出部に接続され、負極集電体は負極芯体露出部に接続されているものとすることができる。
【0045】
角形外装体の両側端側にそれぞれ正極芯体露出部及び負極芯体露出部が配置されていると、正極集電体と負極集電体との間の距離を大きくすることができるので容量が大きい角形二次電池とすることができ、また角形二次電池の組立が容易となる。加えて、本発明の角形二次電池では、複数枚積層された芯体露出部に集電体を接続しているので、内部抵抗が小さくなり、出力特性に優れた電池となる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の角形二次電池を、実施例及び比較例によって図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す角形二次電池は、本発明の技術思想を理解するために角形二次電池としての角形非水電解質二次電池を例示するものであって、本発明をこの角形非水電解質二次電池に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0048】
なお、本発明に係る角形二次電池は、正極極板と負極極板とをセパレータを介して積層又は巻回することにより偏平状とした電極体を有するものに対して適用できるが、以下においては、偏平状の巻回電極体を用いたものに代表させて説明する。また、本発明においては、溶接に使用する高エネルギー線としては、レーザー光及び電子ビームの何れをも使用し得るが、以下ではレーザー光に代表させて説明する。
【0049】
さらに、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に適宜縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。また、本願明細書における「上」及び「下」とは、電極体と封口体とを基準とし、電極体側から封口体側に向かう方向を「上」と表現し、封口体側から電極体側に向かう方向を「下」と表現している。さらに、実施例の角形非水電解質二次電池と比較例の角形非水電解質二次電池とでは、正極端子板及び負極端子板の構成が異なるのみであるので、以下においては、角形非水電解質二次電池の基本構成を説明する場合には実施例の角形非水電解質二次電池を用いて説明し、比較例の角形二次電池について説明する場合にはその相違点を具体的に指摘することとする。
【0050】
まず、実施例の角形非水電解質二次電池を
図1〜
図6を用いて説明する。なお、
図1は実施例の角形非水電解質二次電池の斜視図である。
図2Aは
図1に示した角形非水電解質二次電池の正極側の平面図であり、
図2Bは
図2AのIIB−IIB線に沿った拡大断面図である。
図3は
図2AのIII−III線に沿った拡大断面図である。
図4Aは
図1に示した角形非水電解質二次電池の負極側の平面図であり、
図4Bは
図4AのIVB−IVB線に沿った拡大断面図である。
図5はスピニングカシメによって正極外部端子を正極端子板にカシメ固定する状態を示す断面図である。
図6Aは正極端子板の貫通孔に正極外部端子を差し込んだ状態の平面図であり、
図6Bは
図6AのVIB−VIB線に沿った断面図であり、
図6Cはスピニングカシメを行った状態の平面図であり、
図6Dは
図6CのVID−VID線に沿った断面図であり、
図6Eはレーザー溶接した後の平面図であり、
図6Fは
図6EのVIF−VIF線に沿った断面図である。なお、
図2B、
図3及び
図4Bにおいては、電池外装体の図示は省略されている。
【0051】
実施例の角形非水電解質二次電池10は、正極極板と負極極板とがセパレータを介して巻回された偏平状の巻回電極体(何れも図示省略)を有している。正極極板は、アルミニウム箔からなる正極芯体の両面に正極活物質合剤を塗布し、乾燥及び圧延した後、アルミニウム箔が一方の端部に長手方向に沿って帯状に露出するようにスリットすることにより作製されている。また、負極極板は、銅箔からなる負極芯体の両面に負極活物質合剤を塗布し、乾燥及び圧延した後、銅箔が一方の端部に長手方向に沿って帯状に露出するようにスリットすることによって作製されている。
【0052】
そして、上述のようにして得られた正極極板及び負極極板を、正極極板のアルミニウム箔露出部と負極極板の銅箔露出部とがそれぞれ対向する電極の活物質層と重ならないようにずらして、ポリエチレン製微多孔質セパレータを介して巻回することで、巻回軸方向の一方の端には複数枚重なった正極芯体露出部を備え、他方の端には複数枚重なった負極芯体露出部を備えた偏平状の巻回電極体が作製されている。
【0053】
複数枚の正極芯体露出部は積層されて正極集電体11(
図2B及び
図3参照)を介して正極外部端子12に電気的に接続され、同じく複数枚の負極芯体露出部は積層されて負極集電体13(
図4B参照)を介して負極外部端子14に電気的に接続されている。正極外部端子12は上部第1絶縁部材15a及び下部第1絶縁部材15bを介して封口体16に固定されている。正極外部端子12上には、外部接続用のボルト17が設けられた正極端子板18が固定されている。上部第1絶縁部材15a及び下部第1絶縁部材15bが本発明における正極側の絶縁部材に対応する。同じく、負極外部端子14は第1絶縁部材19a及び第2絶縁部材19bを介して封口体16に固定されている。負極外部端子14上には、外部接続用のボルト20が設けられた負極端子板21が固定されている。この第1絶縁部材19a及び第2絶縁部材19bが本発明における負極側の絶縁部材に対応する。
【0054】
実施例の角形非水電解質二次電池10は、上述のようにして作製された偏平状の巻回電極体の封口体16側を除く周囲に絶縁性の樹脂シート(図示省略)を介在させて角形の電池外装体22内に挿入した後、封口体16を電池外装体22の開口部にレーザー溶接し、その後、電解液注液孔23から非水電解液を注液し、この電解液注液孔23を密閉することにより作製されている。なお、封口体16には、電流遮断機構の作動圧よりも高いガス圧が加わったときに開放されるガス排出弁24も設けられており、電池外装体22の内部は密閉されている。
【0055】
ここで、正極集電体11と正極外部端子12の間、あるいは負極集電体13と負極外部端子14の間に介在される感圧式の電流遮断機構について説明する。この電流遮断機構は、正極側にのみ設けても、負極側にのみ設けても、さらには正極側及び負極側の両方に設けてもよいものであるので、以下では正極側にのみ設けるものとして、
図2B及び
図3を参照しながら説明する。
【0056】
偏平状の巻回電極体の一方の側端面側に配置された複数の正極芯体露出部には正極集電体11が接続されており、この正極集電体11は正極外部端子12に電気的に接続されている。正極外部端子12は、筒状部12aを備え、内部に貫通孔12bが形成されている。そして、正極外部端子12の筒状部12aは、ガスケット等の上部第1絶縁部材15a、封口体16及び下部第1絶縁部材15b及び筒状部25aを有する導電部材25にそれぞれ形成された孔内に挿入され、その先端部12cがカシメられて互いに一体に固定されている。なお、導電部材25は、下側すなわち偏平状の巻回電極体側に筒状部25aが形成されており、上側すなわち封口体16側は内径が狭められて正極外部端子12の筒状部12aが挿入される開孔25bを形成している。
【0057】
そして、正極外部端子12の筒状部12aの先端部12cは導電部材25の開孔25bの近傍でカシメられており、正極外部端子12の筒状部12aの先端部12cと導電部材25の接続部はレーザー溶接されている。これにより、正極外部端子12は、上部第1絶縁部材15a及び下部第1絶縁部材15bによって封口体16とは電気的に絶縁された状態で、導電部材25と電気的に接続された状態となっている。
【0058】
また、導電部材25の筒状部25aの下側の先端にはフランジ部25cが形成されており、このフランジ部25cの内面側には反転板26の周囲が気密に溶接されて封止されている。反転板26は、周囲から中心側に向かって下側に突出する形状、すなわち封口体16とは傾斜した配置関係となる形状とされている。この反転板26は、導電性材料で形成されており、電池外装体22内の圧力が高くなると電池の外部側すなわち上側に向かって変形する弁の機能を有するものである。そして、反転板26の中心部では、正極集電体11の薄肉領域11aの接続部形成用孔11bの内壁部分と反転板26の表面とが複数箇所においてレーザー溶接されている。
【0059】
なお、正極集電体11と反転板26との間には、貫通孔27aが形成された樹脂材料からなる第2絶縁部材27が配置されており、この貫通孔27aを介して正極集電体11と反転板26とが電気的に接続されている。この第2絶縁部材27の貫通孔27aの周囲には適宜の数の突起27bが形成され、この突起27bが正極集電体11に形成された固定用孔11cに嵌合され、突起27bの頂部が、たとえば加熱して拡径することにより、第2絶縁部材27と正極集電体11とが一体に固定されている。また、ここでは、第2絶縁部材27と下部第1絶縁部材15bとがラッチ固定部27cにより固定されている。
【0060】
したがって、正極芯体露出部は、正極集電体11の薄肉領域11a、反転板26及び導電部材25を介して正極外部端子12と電気的に接続されていることになる。また、これらの導電部材25の筒状部25a、反転板26、第2絶縁部材27及び正極集電体11の薄肉領域11aによって電流遮断機構28が形成されている。
【0061】
すなわち、反転板26は、電池外装体22内の圧力が増加すると正極外部端子12の貫通孔12b側に膨れるようになっており、反転板26の中央部には正極集電体11の薄肉領域11aが溶接されているため、電池外装体22内の圧力が所定値を超えると正極集電体11の薄肉領域11aの部分で破断するので、反転板26と正極集電体11との間の電気的接続が遮断されるようになっている。
【0062】
このように薄肉領域11aが存在していると、反転板26が変形した際に薄肉領域11a部分で破断しやすくなり、電池内部の圧力が上昇した際にはこの薄肉領域11a部分で確実に破断するようになるので、角形非水電解質二次電池10の安全性が向上する。また、この薄肉領域11a部分の厚さや形成領域を適宜設定することにより、この薄肉領域11a部分が破断する圧力を所定値に設定することができるので、信頼性も向上する。
【0063】
なお、ここでは、接続部形成用孔11bの周囲部分に環状に他の部分よりも厚さが薄くされた薄肉領域11aを形成した例を示したが、薄肉領域11aを接続部形成用孔11bを囲むように間欠的に環状に形成してもよく、接続部形成用孔11bの周囲部分の厚さを他の部分と同じ厚さとして、環状ないし間欠的に環状に溝を形成することによって薄肉領域11aを形成することもできる。また、薄肉領域11a及び溝を設けずに反転板26と正極集電体11の接続強度を調節し、反転板26が変形した場合に反転板26と正極集電体11の接続が切断されるようにすることもできる。
【0064】
また、正極外部端子12の貫通孔12bは、電流遮断機構28を構成する反転板26の周囲が気密に溶接されているか否かの試験に用いられるが、このままの状態でも使用可能である。しかしながら、貫通孔12bの内部に腐食性気体や液体が入って反転板26が腐食されてしまうと、電流遮断機構28が正常に動作しない虞が生じるので、正極外部端子12の貫通孔12bは密閉することが好ましい。そこで、実施例の角形非水電解質二次電池10では、正極外部端子12に形成された貫通孔12bは端子栓29を嵌合するとともに、この端子栓29の上部に設けられたアルミニウム系金属製の金属板30の周囲を溶接することによって、強固に密封されている。なお、この端子栓29としては、上部に金属板が設けられていない弾性材料製ないし樹脂材料製のものも使用することができる。
【0065】
なお、実施例の角形非水電解質二次電池10では、電流遮断機構28の外部に対応する側の空間は完全に密閉されているが、何等かの原因によって電池外装体22内の圧力が増加しても、異常時には電池内部で発生するガス圧が非常に大きくなり、電流遮断機構28の電池の外部側の密閉空間内の圧力が同時に同様に増加することはないため、電流遮断機構28の動作は、電池の外部側の空間が密閉されていても問題とならない。
【0066】
次に、実施例の角形非水電解質二次電池10の正極外部端子12と正極端子板18との結合部分の具体的構成について、
図1〜
図3、
図5及び
図6を用いて説明する。正極外部端子12の上部には、平坦な鍔部12dとカシメ部12eが形成されている。カシメ部12eは、カシメ前の形状は円筒状であり、内部が貫通孔12bとなって、筒状部12aと連通している。なお、以下ではカシメ前のカシメ部についても参照符号「12e」を付与して説明する。また、正極外部端子12の平坦な鍔部12d上には正極端子板18が載置されており、この正極端子板18の周囲下部には、封口体16との間に電気的絶縁性が確保されるように、第3絶縁部材15cが配置されている。
【0067】
この正極端子板18には上側に向かって拡径するテーパー部18aとこのテーパー部18aの周縁に凸部18bが形成された貫通孔18cが設けられており、また、ここでは正極端子板18の上面に貫通孔18cの周囲に環状に溝18dが形成されている。なお、凸部18b及び溝18dは完全な環状であっても環状の一部が途切れているような形状に形成されているものであってもよい。さらに、凸部18bの頂部は平坦面であっても、曲面であっても、さらには稜線状であってもよい。なお、テーパー部18aは、必ずしも必要な構成ではないが、このテーパー部18aを設けた方が正極外部端子12のカシメ部12eをカシメ加工する際に、折り曲げ角度が小さくなるので、正極外部端子12の先端側が損傷し難くなる。
【0068】
また、貫通孔18c及び溝18dが形成されていない位置にボルト17が立設されている。このボルト17は、複数の角形非水電解質二次電池10を直列ないし並列に接続するためのバスバーや外部接続用の配線等をボルト(図示省略)によって固定するために設けられているものである。そして、正極端子板18の貫通孔18cに下側から正極外部端子12の円筒状のカシメ部12eが挿通され、正極端子板18の下面が正極外部端子12の鍔部12d上に載置され、この状態で正極外部端子12の円筒状のカシメ部12eがカシメられ、正極端子板18と正極外部端子12とが強固に固定されている。
【0069】
正極端子板18のテーパー部18aへの正極外部端子12のカシメ部12eの固定は、スピニングカシメによって次のようにして行われる。まず、正極端子板18の貫通孔18cに下側から正極外部端子12の円筒状のカシメ部12eを挿入すると、
図6A及び
図68Bに示した状態となる。この状態で、
図5に示したようにスピニングカシメ治具31を用いて、円筒状のカシメ部12eを上側から拡径するように、スピニングカシメを行う。スピニングカシメ治具31は先端部31aが縮径するように加工され、円筒状のカシメ部12eの中心軸φ1とは偏心した軸φ2の回りを回転しながら、円筒状のカシメ部12eの中心軸φ1の回りを回転するように駆動される。これにより、円筒状のカシメ部12eの先端側が拡径されて正極端子板18のテーパー部18aの表面に隙間なくカシメ固定される。この状態を、
図6C及び
図6Dに示す。
【0070】
このスピニングカシメによれば、大きな力を加えなくても、正極外部端子12の円筒状のカシメ部12eの先端側を正極端子板18のテーパー部18aの表面に強固にカシメ固定することができるので、封口体16、上部第1絶縁部材15a、下部第1絶縁部材15bや電流遮断機構28に大きな力が掛からず、これらが変形ないし破損し難くなる。また、正極外部端子12の鍔部12d上に正極端子板18が載置されているので、正極外部端子12の鍔部12d上に正極端子板18を安定した状態に載置できるから、たとえ正極外部端子12の上端部をカシメた際にある程度カシメ部12eの形状がばらついても、カシメ部12eと正極端子板18との間に隙間が形成されないようになる。加えて、正極外部端子12と封口体16との間に配置された上部第1絶縁部材15a及び下部第1絶縁部材15bに熱が伝わり難くなるので、上部第1絶縁部材15a及び下部第1絶縁部材15bによる封止性の低下を抑制することができるようになる。
【0071】
さらに、実施形態の角形非水電解質二次電池10では、
図6E及び
図6Fに示したように、正極外部端子12のカシメ部12eの先端と正極端子板18の凸部18bとの間を複数箇所にわたってレーザー溶接し、複数箇所に等間隔に溶接スポット32を形成する。なお、この溶接スポット32の形成状態の詳細については後述する。
【0072】
次いで、負極集電体13と負極外部端子14との結合部分及び負極外部端子14と負極端子板21との結合部分の具体的な構成について、
図4を用いて説明する。ただし、負極集電体13の具体的構成は、形成材料が銅系金属からなる以外は正極集電体11と実質的に同一の構成を備えているので、その詳細な説明は省略する。そして、負極側には、圧力感応型の電流遮断機構が形成されておらず、負極外部端子14は、第1絶縁部材19aと第2絶縁部材19bとによって封口体16とは電気的に絶縁されている状態で封口体16に固定されていることになる。
【0073】
そして、負極集電体13には接続部形成用孔13cが形成されており、この接続部形成用孔13c内に負極外部端子14の下側の筒状部14aの先端部14cが挿通された後、カシメ固定されて、負極集電体13と負極外部端子14とが一体に結合されている。さらに、負極外部端子14の下側の筒状部14aの先端部14cと負極集電体13との接続部はレーザー溶接されている。
【0074】
また、負極外部端子14の上部には、正極外部端子12の場合と同様に、平坦な鍔部14dとカシメ部14eが形成されている。負極外部端子14の平坦な鍔部14d上には負極端子板21が載置されており、この負極端子板21の周囲下部には、封口体16との間に電気的絶縁性が確保されるように、第3絶縁部材19cが配置されている。カシメ部14eは、カシメ前の先端形状は円筒状であるが、正極外部端子12とは異なり、負極側には圧力感応式の電流遮断機構が設けられていないため、内部には貫通孔が形成されていない。
【0075】
また、負極端子板21には上側に向かって拡径するテーパー部21aとこのテーパー部21aの周縁に凸部21bが形成された貫通孔21cが設けられており、さらに、負極端子板21の上面には貫通孔21cの周囲に環状に溝21dが形成されている。なお、凸部21b及び溝21dは、正極側の場合と同様に、完全な環状であっても環状の一部が途切れているような形状に形成されているものであってもよい。同じく、凸部21bの頂部は平坦面であっても、曲面であっても、さらには稜線状であってもよい。同じく、テーパー部21aは、必ずしも必要な構成ではないが、このテーパー部21aを設けた方が負極外部端子14のカシメ部14eをカシメ加工する際に、折り曲げ角度が小さくなるので、負極外部端子14の先端側が損傷し難くなる。
【0076】
また、負極端子板21の上面には、貫通孔21c及び溝21dが形成されていない位置に、ボルト20が立設されている。そして、負極端子板21の貫通孔21cに下側から負極外部端子14の先端が円筒状のカシメ部14eが挿通され、負極端子板21の下面が負極外部端子14の鍔部14d上に載置され、この状態で負極外部端子14の円筒状のカシメ部14eがカシメられ、負極端子板21と負極外部端子14とが強固に固定されている。
【0077】
この負極端子板21のテーパー部21aへの負極外部端子14のカシメ部14eの固定は、正極側と同様に、スピニングカシメによって行われ、さらに負極外部端子14のカシメ部14eの先端と負極端子板21の凸部21bとの間を複数箇所にわたってレーザー溶接し、複数箇所に等間隔に溶接スポット33を形成することによって行われている。
【0078】
なお、負極側においても、負極外部端子14の鍔部14d上に負極端子板21が載置されているので、負極外部端子14の鍔部14d上に負極端子板21を安定した状態に載置できるから、たとえ負極外部端子14の上端部をカシメた際にある程度カシメ部14eの形状がばらついても、カシメ部14eと負極端子板21との間に隙間が形成されないようになる。そのため、正極側の場合と同様に、安定した状態でレーザ−溶接を行うことができるようになるので、負極側においても溶接部の品質のばらつきが少なくなるとともに、負極外部端子14と封口体16との間に配置された第1絶縁部材19a及び第2絶縁部材19bに熱が伝わり難くなるので、第1絶縁部材19a及び第2絶縁部材19bによる封止性の低下を抑制することができるようになる。
【0079】
なお、非水電解質二次電池では、一般的に正極極板の芯体としてアルミニウム系金属が用いられているため、異種金属接触による腐食を抑制するため、角形非水電解質二次電池10の正極集電体、圧力感応型の電流遮断機構28、正極外部端子12及び正極端子板18もアルミニウム系金属からなるものを用いることが好ましい。同様に、一般的に負極極板の芯体として銅系金属が用いられているため、角形非水電解質二次電池10の負極集電体13、負極外部端子14及び負極端子板21も銅系金属からなるものを用いることが好ましい。
【0080】
一方、アルミニウム系金属を用いている正極側では、カシメ固定のみでは強度が足らない虞があるが、カシメ固定に加えて大きい溶接スポット32を形成することによって、強度及び良好な電気的導通を確保することができるようになる。また、銅系金属はアルミニウム系金属よりも溶接時に大きなエネルギーが必要であるためにスパッタ、クラック等が発生し易いが、銅系金属を用いている負極側では、カシメ固定のみで強度は十分であるが、溶接スポット33の径を小さくすることにより、スパッタ、クラック等の発生が抑制され、振動等による内部抵抗の変動を抑制して十分な電気的導通を確保することができるようになる。
【0081】
ところで、正極外部端子12のカシメ部12e及び負極外部端子14のカシメ部14eには、カシメ加工による応力が残留している。この応力が大きければ大きいほど、カシメ部の強度が強くなって耐振性が良好となるため、カシメ加工による応力を完全に排除することはできない。そのため、正極外部端子12ないし負極外部端子14のカシメ部12e、14eの先端と正極端子板18ないし負極端子板21をレーザー溶接すると、溶接溶融部が形成されるが、この溶融溶接部が冷却されて溶接スポット32、33を形成する際に収縮するため、溶接スポット32、33に横方向の引張応力が掛かり、溶接スポット32、33に亀裂が生じることがある。溶接スポット32、33に亀裂が生じると、溶接部の信頼性が低下するので排除する必要があり、製造歩留まりの低下につながる。
【0082】
このような溶接スポットに亀裂が生じる現象を比較例に対応する
図7を用いて説明する。なお、
図7Aは比較例の
図6Dに対応する部分の部分拡大図であり、
図7Bは同じく
図6Fに対応する部分の部分拡大断面図である。また、負極外部端子14のカシメ部14eの先端と負極端子板21との間のレーザー溶接箇所の構成は、負極外部端子14が貫通孔を有していない以外は正極側のものと同様であるので、以下においては正極側のものに代表させて説明する。
【0083】
まず、比較例に対応する正極外部端子12のカシメ部12eの先端は、
図7Aに示したように、正極端子板18の平坦部18eよりも上部に位置するようになされている。なお、この正極外部端子12のカシメ部12eの先端の高さは、正極端子板18の平坦部18eの高さとほぼ同一となるようにしても、平坦部18eの高さよりもわずかに低くなるようにしてもよい。この状態で、
図7Bに示したように、正極外部端子のカシメ部12eの先端と正極端子板18の、平坦部18eとの境界を中心としてレーザー光を照射して溶接を行うと、溶接溶融部が形成されるが、平坦部18eに熱が均等に伝導されるため、溶接溶融部の上部はほぼ平坦になる。この溶接溶融部が冷却すると溶接スポット32になるが、その際に、
図7Bに矢印で示したように、横方向に引張応力が掛かり、この引張応力が大きくなると溶接スポット32にクラック34が形成されてしまう。このような溶接スポット32に加わる引張応力は、レーザー光の照射による溶融した部分が固化する際に周囲の溶融しなかった部分よりも大きく収縮するために生じるものである。
【0084】
そこで、実施例に対応する正極端子板18ないし負極端子板21では、
図8に示したように、凸部18bの外周側に正極端子板18の貫通孔18cと同心的に溝18dを形成することによって凸部18bがそれぞれ環状となるようにしている。なお、
図8Aは実施例の
図6Dに対応する部分の部分拡大図であり、
図8Bは同じく
図6Fに対応する部分の部分拡大断面図である。
【0085】
この状態で、正極外部端子12のカシメ部12eの先端と正極端子板18の凸部18bとの境界を中心としてレーザー光を照射して溶接を行うと、溶融溶接部が形成される点では比較例の場合と同様であるが、溝18dの存在のために溶融溶接部の上部が平坦にはならず、表面張力によって凸状態を維持したままとなる。そして、溶融溶接部が冷却して溶接スポット32が形成される際には、
図8Bに矢印で示したように、凸部18b側の引張応力は、凸部18bの外周側、すなわち溝18dが形成された側に斜め下方向に向かうので、横方向だけでなく垂直方向にも分散されるため、溶接スポット32にクラックが生じ難くなる。
【0086】
なお、実施例に対応する正極外部端子12ないし負極外部端子14のカシメ部12e、14eの先端は、正極端子板18ないし負極端子板21の凸部18b、21bの高さとほぼ同一となるようにしても、溶接スポット32、33が形成される際の引張応力は、斜め下方向となって、横方向だけでなく垂直方向にも分散されるため、溶接スポット32、33にクラックが生じ難くなる。しかしながら、
図8Aに示したように、正極外部端子12ないし負極外部端子14のカシメ部12e、14eの先端の位置が正極端子板18ないし負極端子板21の凸部18b、21bよりも上側となるようにすると、引張応力の横方向成分が少なくなって垂直方向成分が増加するため、よりクラックが生じ難くなる。
【0087】
アルミニウム系金属は銅系金属よりも機械的強度が弱いので、正極側に形成する溶接スポット32は、正極外部端子12と正極端子板18との間の結合強度を高くするため、正極端子板18の貫通孔18cの径方向において、凸部18bに対応する位置の全てが溶融している状態となすことが望ましい。ここで、溶接スポット32の凸部18bに対応する位置の最大断面積Smaxを以下のように定義する。すなわち、
図8Aは貫通孔18cの中心を通る垂直断面図に対応するが、凸部18bの断面積は、溝18dの底面よりも上方に突出領域(台形の領域)の断面積に相当する。そして、
図8Bに示したように、それぞれの溶接スポット32において、凸部18bが溶融して形成された部分の断面積Sの最大値を凸部18bに対応する位置の最大断面積Smaxとする。この最大断面積Smaxを、凸部18bの断面積の約80%以上となるようにすると、正極外部端子12と正極端子板18との間により十分な結合強度を与えることができるようになる。
【0088】
なお、正極端子板18の貫通孔18cの径方向において、凸部18bに対応する位置の全てが溶融している状態となしても、溶接溶融部の表面張力によって表面が平坦となることはなく、しかも、環状の凸部18bの全てが溶融することはないので、凸部18bが平坦面となることはない。また、負極側に形成する溶接スポット33(
図4A参照)は、負極外部端子14と負極端子板21との間のカシメによる機械的結合強度が高いので、正極側の溶接スポット32よりも小さくてもよい。
【0089】
[確認実験]
ここで、上述した実施例の溶接スポットと比較例の溶接スポットのクラックの発生割合について確認実験を行った。実験条件としては、実施例及び比較例の正極端子板ないし負極端子板の構成の相違が凸部(溝部)の有無だけとなるようにするため、各部の寸法を下記表1に示したとおりに設定した。なお、Aは凸部の平坦部分の幅を示し、Bは凸部の高さを示し、Cは凸部上のカシメ部の高さを示している。さらに、比較例の正極端子板ないし負極端子板は、凸部(溝部)を形成しないため、A及びBの数値はないものとした。
【0091】
表1に示した寸法に形成された正極端子板ないし負極端子板を用い、実施例の場合の正極側ないし負極側のそれぞれの最適溶接条件に統一して、実施例及び比較例共に、正極側及び負極側共に各100個ずつの測定試料を作成し、溶接スポットにクラックが生じているか否かを目視観察により測定した。結果をまとめて表2に示した。
【0093】
表2に示した結果によれば、正極側では、実施例では溶接スポットの発生はなかったが、比較例では溶接スポットの13%にクラックが生成していることが認められた。それに対し、負極側では、実施例では溶接スポットの発生はなかったが、比較例では全ての溶接スポットにクラックが生成していることが認められた。
【0094】
このような実施例と比較例との溶接スポットにおけるクラック発生割合の差異は次のような理由によって生じるものと推定される。すなわち、実施例では、正極端子板ないし負極端子板に形成された凸部の溝側、すなわち貫通孔の径方向における凸部の外縁が開放されているため、レーザー光の照射によって形成された溶接溶融部は凸型に盛り上がった状態となる。そのため、この溶接溶融部が固化する際に溶接スポットに印加される引張応力は、横方向と縦方向に分散され、相対的に横方向の引張応力が小さくなることによるものと推定される。それに対し、比較例では、正極端子板ないし負極端子板に溝が形成されておらず凸部が存在しないので、レーザー光の照射によって形成された溶接溶融部は表面が実質的に平らとなり、この溶接溶融部が固化する際に溶接スポットに横方向の引張応力がそのまま加わるために、溶接スポットにクラックの発生が多くなるものと推定される。
【0095】
また、比較例の負極側で全ての溶接スポットにクラックが形成された理由としては、比較例でも実施例の最適な溶接条件でレーザー溶接し、凸部の大部分を溶融させているので、溶接に用いられたエネルギーが大きなっている。そのため、溝が形成されておらず凸部が存在しない比較例では、溶接に用いられたエネルギーが大きすぎるため、全ての溶接スポットにクラックが生じたものと推測される。このことは、別途比較例の負極側において、溶接エネルギーを小さく、溶接スポットの径が小さくなるようにすると、溶接スポットにクラックが形成されないようにできることを確認している。
【0096】
なお、負極側は、銅系金属で形成されているため、アルミニウム系金属で形成されている正極側よりも機械的強度が強いため、溶接スポットの径を正極側よりも小さくしても、カシメによる結合強度と溶接による結合強度の両者を合わせた全結合強度として、正極側と同等の結合強度を確保することができるようになるし、場合によっては溶接スポットを形成しなくても正極側と同等の結合強度を確保することができるようになる。そのため、実施例の角形非水電解質二次電池10によれば、正極側及び負極側共に、外部端子と端子板との間の結合強度が強く、内部抵抗変動が抑制され、信頼性が向上した角形非水電解質二次電池10が得られる。
【0097】
さらに、上記実施例の角形非水電解質二次電池10において説明した正極側の構成は、負極側の構成としても採用し得る。ただし、負極側に上述の電流遮断機構28を備えている構成を採用した場合、正極側には、電流遮断機構を採用する必要はないので、
図4に示したような負極側と同様の構成を採用することができる。