(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976372
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】ポペットバルブ圧入構造
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20160809BHJP
F16K 1/48 20060101ALI20160809BHJP
F16K 1/32 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
F16K1/48 Z
F16K1/32 C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-96133(P2012-96133)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-224681(P2013-224681A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088100
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 千明
(72)【発明者】
【氏名】佐貫 宏典
(72)【発明者】
【氏名】藪下 聡
(72)【発明者】
【氏名】高井 貴志
【審査官】
柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−30586(JP,A)
【文献】
特開平11−280606(JP,A)
【文献】
特開平7−103614(JP,A)
【文献】
米国特許第4501407(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
F16K 1/32
F16K 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動軸に設けられた弁体に、一端側から他端側へ向けて外形寸法が縮径する略テーパ状のテーパ部が設けられ、前記弁体の周面を通流口の開口縁部に当接して前記通流口を閉鎖した閉鎖状態と、前記作動軸を軸方向へ移動して前記開口縁部及び前記弁体間の間隙を変化して通流量を制御する制御状態とを形成する比例電磁弁におけるポペットバルブ圧入構造であって、前記弁体の挿入穴への作動軸の圧入部分に外側に突出した突出部が形成されたポペットバルブ圧入構造において、
前記圧入部分に前記挿入穴内における前記圧入部分の状態として、前記開口縁部に当接する前記弁体周面のシール部と、前記突出部が位置する圧入部とを前記作動軸の軸方向にて異なる位置に設定し、前記弁体の周面から前記挿入穴までの肉厚が、前記シール部での肉厚より前記圧入部での肉厚が厚肉となるように設定したことを特徴とするポペットバルブ圧入構造。
【請求項2】
前記シール部での肉厚より肉厚の大きな方向に前記突出部を複数設けたことを特徴とする請求項1記載のポペットバルブ圧入構造。
【請求項3】
前記テーパ部の縮径側に位置する前記弁体の先端が当接し、当該弁体の軸方向の移動を規制する突き当て部を前記作動軸に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のポペットバルブ圧入構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比例制御弁用のポペットバルブ圧入構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の自動変速機の油圧回路において油圧を制御する際には、電磁弁が用いられており、該電磁弁には、通流量をオンオフ制御するオンオフタイプが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなオンオフタイプの電磁弁801としては、
図3に示すようなものが挙げられる。
【0004】
この電磁弁801のカバー811を内には、ソレノイド812が収容されており、該ソレノイド812内には、コア813が設けられている。該コア813には、作動軸814が上下動自在に挿通しており、前記コア813より上方へ延出した前記作動軸814の上端部には、前記コア813に吸引される円板状の被吸引部815が固定されている。
【0005】
前記コア813より下方へ延出した前記作動軸814の下端側は、シート部材821の上面に設けられた上部シート穴822を挿通しており、この部位には、該上部シート穴822を開閉する上部弁体823が設けられている。
【0006】
前記作動軸814の下端部は、前記シート部材821に設けられた下部シート穴831を挿通しており、該シート部材821より下側へ延出した前記作動軸814の部分には、前記下部シート穴831を開閉する下部弁体832が設けられている。
【0007】
すなわち、前記作動軸814の先端部には、小径円柱状の弁耐圧入部841が形成されており、該弁耐圧入部841に前記下部弁体832が固定されている。前記弁耐圧入部841の外周面には、先端側凸条842と基端側凸条843とが周面に沿って形成されており、前記下部弁体832は、合成樹脂で形成されている。
【0008】
これにより、前記下部弁体832の差込穴851へ前記弁耐圧入部841を圧入する際に、該弁耐圧入部841の前記各凸条842,843が前記差込穴851を広げながら当該差込穴851を進むとともに、圧入停止位置において前記差込穴851を外側に広げる力が作用することで、当該下部弁体832の不用意な抜けを防止できるように構成されている。
【0009】
このような電磁弁801において、前記下部シート穴831の通流量の制御を行う際には、前記下部弁体832を、テーパー形状のポペットバルブに変更する必要がある。
【0010】
これにより、このポペットバルブの前記下部シート穴831への挿入量を制御することで、当該ポペットバルブと前記下部シート穴831との間に形成される間隙面積を変動し、通流量を制御できるように構成する。
【0011】
【特許文献1】特開2005−513390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このようなポペットバルブ圧入構造にあっては、ポペットバルブで下部シート穴831を閉鎖した状態において、当該下部シート穴831の開口縁部に当接する前記ポペットバルブ周面のシール部における裏側に基端側凸条843が配置されてしまう。
【0013】
この場合、前記シール部での変形が大きくなるため、真円度の精度確保が困難となる。これにより、前記下部シート穴831でのリーク性能が低下する恐れがあった。
【0014】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、ポペットバルブのシール部での変形を抑えることでリーク性能を確保することができるポペットバルブ圧入構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために本発明の請求項1のポペットバルブ圧入構造にあっては、作動軸に設けられた弁体に、一端側から他端側へ向けて外形寸法が縮径する略テーパ状のテーパ部が設けられ、前記弁体の周面を通流口の開口縁部に当接して前記通流口を閉鎖した閉鎖状態と、前記作動軸を軸方向へ移動して前記開口縁部及び前記弁体間の間隙を変化して通流量を制御する制御状態とを形成する比例電磁弁におけるポペットバルブ圧入構造であって、前記弁体の挿入穴
への作動軸の圧入部分に外側に突出した突出部が形成されたポペットバルブ圧入構造において、前記圧入部分に
前記挿入穴内における前記圧入部分の状態として、前記開口縁部に当接する前記弁体周面のシール部と、前記突出部が位置する圧入部とを前記作動軸の軸方向にて異なる位置に設定
し、前記弁体の周面から前記挿入穴までの肉厚が、前記シール部での肉厚より前記圧入部での肉厚が厚肉となるように設定した。
【0016】
すなわち、弁体の挿入穴に作動軸の圧入部分を圧入した状態において、該圧入部分に突設された突出部が位置する弁体の圧入部は、通流口の開口縁部に当接する当該弁体周面のシール部と異なる位置に設定されている。
【0017】
このため、前記圧入部と前記シール部とが前記作動軸の軸方向で同位置に設定され、前記シール部の真下に前記突出部が配置される従来と比較して、前記弁体の前記挿入穴の壁面を外側に押圧する前記突出部に起因した前記シール部の変形が抑制される。
【0018】
また、前記弁体の周面から前記挿入穴までの肉厚は、前記シール部での肉厚より前記圧入部での肉厚が厚肉となるように設定されている。
【0019】
このため、前記弁体の前記挿入穴の壁面を外側に押圧する前記突出部が薄肉部分に形成された場合と比較して、前記押圧による変形の吸収代が大きくなり、当該弁体周面への影響が抑えられる。
【0020】
また、請求項2のポペットバルブ圧入構造においては、前記シール部での肉厚より肉厚の大きな方向に前記突出部を複数設けた。
【0021】
すなわち、前記突出部は、肉厚の大きな方向に複数設けられており、これら突出部による当該弁体の抜け防止効果が高められ、かつ弁体周面への影響が抑制される。
【0022】
さらに、請求項3のポペットバルブ圧入構造では、前記テーパ部の縮径側に位置する前記弁体の先端が当接し、当該弁体の軸方向の移動を規制する突き当て部を前記作動軸に設けた。
【0023】
すなわち、弁体を圧入部分に圧入した際には、テーパ部の縮径側に位置する前記弁体の先端が作動軸に設けられた突き当て部に当接することで、前記弁体の軸方向への移動が規制され、位置決めされる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明の請求項1のポペットバルブ圧入構造にあっては、圧入部分に突設された突出部が位置する弁体の圧入部を、通流口の開口縁部に当接する当該弁体周面のシール部と異なる位置に設定したので、前記圧入部と前記シール部とが前記作動軸の軸方向で同位置に設定され前記シール部の真下に前記突出部が配置される従来と比較して、前記弁体の挿入穴の壁面を外側に押圧する前記突出部に起因した前記シール部の変形を抑制することができる。
【0025】
また、前記弁体の周面から前記挿入穴までの肉厚を、前記シール部での肉厚より前記圧入部での肉厚が厚肉となるように設定したので、前記弁体の前記挿入穴の壁面を外側に押圧する前記突出部が薄肉部分に形成された場合と比較して、前記押圧による変形の吸収代を大きくすることができ、当該弁体周面への影響を抑えることができる。
【0026】
これらにより、前記弁体周面の前記シール部での変形を抑えることができ、当該シール部での真円度の精度の確保が容易となり、当該弁体で開閉する通流口でのリーク性能を向上することができる。
【0027】
また、請求項2のポペットバルブ圧入構造においては、突出部を肉厚の大きな方向に複数設けることによって、これら突出部による当該弁体の抜け防止効果を高めることができるとともに、前記弁体周面への影響も抑制することができる。
【0028】
さらに、請求項3のポペットバルブ圧入構造では、弁体を圧入部分に圧入した際には、テーパ部の縮径側に位置する前記弁体の先端が作動軸に設けられた突き当て部に当接することで、前記弁体の軸方向への移動を規制し、当該弁体を位置決めすることができる。
【0029】
これにより、突出部が位置する弁体の圧入部と、通流口の開口縁部に当接する弁体周面のシール部との位置関係を、所定の位置に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一の実施の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施の形態を図面に従って説明する。
【0032】
図1は、本実施の形態にかかるポペットバルブ圧入構造を備えた比例電磁弁1を示す図であり、該比例電磁弁1は、主に内燃機関の燃料供給系統で使用され、燃料の流量を制御するものである。
【0033】
この比例電磁弁1は、金属製円筒状のカバー11を備えており、該カバー11は、図中右方側の先端側へ向けて開口した容器状に形成されている。該カバー11の基端面12には、凸部13が膨出形成されており、当該カバー11は前記凸部13が構成する小径部14と大径部15とによって構成されている。該大径部15には、ボビン16にコイル17が巻回されてなるソレノイド18が内嵌されており、該ソレノイド18の先端側には、中間部材19及び抜け止め部材21が配設されている。該抜け止め部材21は、前記カバー11にカシメ構造等で固定されており、前記ソレノイド18等の内蔵部品の不用意な離脱を防止できるように構成されている。
【0034】
前記ソレノイド18の基端側には、当該ソレノイド18で励磁されるコア32が内嵌されており、該コア32は、その基端部が前記小径部14に内嵌した状態で前記カバー11に固定されている。また、前記ソレノイド18の先端側には、ヨーク31の一部が内嵌されており、当該ヨーク31の端部は、前記コア32から離間するとともに当該コア32に対向して配置されている。該ヨーク31の他端部は、前記抜け止め部材21に内嵌しており、該抜け止め部材21を介して前記カバー11に磁気的に接続されている。このヨーク31には、ノズル部材33の基端部34が内嵌された状態で固定されている。
【0035】
前記コア32と前記ヨーク31との間には、プランジャー41が軸方向へ移動自在に収容されており、該プランジャー41には、作動軸42が挿通した状態で固定されている。前記プランジャー41より基端側へ延出した前記作動軸42は、第一軸受け43を介して前記コア32に移動自在に支持されており、前記プランジャー41より先端側へ延出した前記作動軸42は、第二軸受け44を介して、前記ノズル部材33の前記基端部34に移動自在に支持されている。
【0036】
このノズル部材33は、前記基端部34より先端側に大径の鍔部51が形成されており、該鍔部51の先端側には、油圧回路等に挿入される小径のノズル部52が形成されている。当該ノズル部材33には、長さ方向に貫通する貫通穴53が設けられており、該貫通穴53の中途部には、内側へ突出したリング部54によって縮径部分が形成されている。これにより、前記貫通穴53は、前記リング部54より基端側の基端側弁室55と、先端側の先端側弁室56とが形成されており、前記基端側弁室55は、出力ポート57を介して外部へ連通している。
【0037】
前記リング部54で包囲された通流口61は、その内径寸法が先端側から基端側へ向かうに従って縮径するように構成されており、当該リング部54には、すり鉢状の傾斜面62が形成されている。該傾斜面62の基端側には、中心軸と平行な内面を有する平行穴63が設けられており、該平行穴63と前記傾斜面62との交差部分は、当該通流口61の開口縁部を構成するとともに、弁体が離着座する弁座部64を構成している。
【0038】
一方、前記作動軸42の先端部には、小径の圧入ピン71が一体形成されており、該圧入ピン71は、前記通流口61を挿通する長さに設定されている。前記圧入ピン71の基端側の部位には、側方へ突出した突き当て部72が一体形成されており、該突き当て部72より先端側には、側方へ突出した基端側突出部73が形成されている。該基端側突出部よりさらに先端側には、側方へ突出した先端側突出部74が前記基端側突出部73から離間して配設されている。
【0039】
この圧入ピン71には、金属製のポペットバルブ81が先端側から圧入された状態で固定されている。該ポペットバルブ81は、一端側から他端側へ向けて外形寸法が縮径する略テーパ状のテーパ部82と、該テーパ部82の基端に形成された円柱状の円柱部83と、該円柱部83の端面より先端側へ延出した小径円柱部84とによって構成されており、当該ポペットバルブ81には、前記圧入ピン71が圧入される長さ方向に貫通した挿入穴85が設けられている。この挿入穴85で形成された前記テーパ部82の端部には、円形リング状の一端面86が形成されており、当該ポペットバルブ81を前記圧入ピン71に圧入した状態で、前記テーパ部82の縮径側に位置する前記一端面86が前記突き当て部72に当接して当該ポペットバルブ81の前記圧入ピン71での軸方向への挿入位置が規制されるように構成されている。
【0040】
また、前記挿入穴85の内径寸法は、前記圧入ピン71の外形寸法とほぼ同寸法に設定されており、前記ポペットバルブ81を前記圧入ピン71に圧入した圧入状態では、前記各突出部73,74が前記挿入穴85の内側面に圧接されるように構成されている。
【0041】
前記圧入状態において、
図2にも示したように、前記弁座部64に当接する前記ポペットバルブ81周面のシール部91と、前記基端側突出部73が位置する前記基端側圧入部92とは、前記作動軸42の軸方向にて異なる位置に設定されており、前記ポペットバルブ81周面から前記挿入穴85までの肉厚が、前記シール部91での肉厚より前記基端側圧入部92での肉厚が厚肉となるように設定されている。また、前記圧入状態において、前記ポペットバルブ81周面から前記挿入穴85までの肉厚が、前記シール部91での肉厚より、前記先端側突出部74が位置する前記先端側圧入部93での肉厚が厚肉となるように設定されている。そして、前記シール部91での肉厚より肉厚の大きな方向、すなわち図中右側に前記基端側及び先端側突出部73,74が設けられている。
【0042】
前記圧入状態において、前記テーパ部82の縮径側に位置する前記一端面86から前記弁座部64に当接する前記シール部91までの軸方向での離間距離R1より、前記一端面86から前記基端側圧入部92までの軸方向での基端側圧入代R2が長くなるように設定されており、前記一端面86から前記先端側圧入部93までの軸方向での先端側圧入代R3がさらに長くなるように設定されている。
【0043】
そして、前記ポペットバルブ81の前記小径円柱部84の外周部には、コイルスプリング101が設けられており、該コイルスプリング101の一端は、前記テーパ部82の端面に当接している。このコイルスプリング101は、前記貫通穴53が構成する入力ポート102に固定された抜け止め103と前記ポペットバルブ81との間に弾持されており(
図1参照)、当該コイルスプリング101によって前記作動軸42は、基端側へ付勢されている。
【0044】
これにより、前記ソレノイド18への通電を遮断した非通電時には、前記コイルスプリング101の付勢力によって前記作動軸42に設けられた前記ポペットバルブ81が基端側に付勢され、前記シール部91が前記弁座部64に密着して前記通流口61を閉鎖した閉弁状態111を形成できるように構成されており、前記入力ポート102から前記出力ポート57へのオイルの通流を阻止できるように構成されている。
【0045】
また、前記ソレノイド18に加えられる電流が制御された制御時には、前記作動軸42に設けられた前記ポペットバルブ81の先端側への移動量を制御することで、前記弁座部64と前記シール部91間に形成される間隙面積を調整できるように構成されており、これにより前記入力ポート102から前記出力ポート57へのオイルの通流を制御する制御状態121を形成できるように構成されている。
【0046】
以上の構成にかかる本実施の形態において、ポペットバルブ81の挿入穴85に作動軸42の圧入部分である圧入ピン71を圧入する際には、該圧入ピン71に突設された各突出部73,74が前記ポペットバルブ81の前記挿入穴85を押し広げながら移動する。
【0047】
そして、前記ポペットバルブ81に前記圧入ピン71を圧入した圧入状態においては、該圧入ピン71に突設された各突出部73,74が位置する前記ポペットバルブ81の各圧入部92,93は、当該ポペットバルブ81が開閉する通流口61の開口縁部が構成する弁座部64に当接する当該ポペットバルブ81周面のシール部91と異なる位置に設定されている。
【0048】
このため、
図2中左方に示したように、前記各圧入部92,93と前記シール部91とが前記作動軸42の軸方向で同位置に設定され、前記シール部91の真下に前記基端側突出部73が配置される場合と比較して、前記ポペットバルブ81の前記挿入穴85の壁面を外側に押圧する前記基端側突出部73に起因した前記シール部91の変形を抑制することができる。
【0049】
また、前記ポペットバルブ81の周面から前記挿入穴85までの肉厚は、前記シール部91での肉厚より前記基端側圧入部92での肉厚が厚肉となるように設定されている。
【0050】
このため、前記ポペットバルブ81の前記挿入穴85の壁面を外側に押圧する前記基端側突出部73が薄肉部分に形成される場合と比較して、前記押圧による変形の吸収代が大きくなり、当該ポペットバルブ81周面への影響を抑えることができる。
【0051】
さらに、前記ポペットバルブ81のテーパ部82の縮径側に位置する一端面86から前記基端側圧入部92までの軸方向での基端側圧入代R2を、前記一端面86から前記シール部91までの軸方向での離間距離R1より、十分に長く設定したので、前記基端側突出部73通過時に生じ得る変形の復元を可能とするとともに、前記基端側圧入部92にて前記ポペットバルブ81周面で生じた変形の前記シール部91への影響を防止することができる。
【0052】
これらにより、前記ポペットバルブ81周面の前記シール部91での変形を抑えることができ、当該シール部91での真円度の精度の確保が容易となり、前記ポペットバルブ81で開閉する前記通流口61でのリーク性能を向上することができる。
【0053】
また、前記各突出部73,74は、ポペットバルブ81において肉厚の大きな先端側に複数設けられており、これら突出部73,74による当該ポペットバルブ81の不用意な抜け防止効果を高めることができるとともに、前記ポペットバルブ81周面への影響も抑制することができる。
【0054】
さらに、前記ポペットバルブ81を前記圧入ピン71に圧入した際には、前記ポペットバルブ81のテーパ部82の縮径側に位置する前記ポペットバルブ81の一端が作動軸42に設けられた突き当て部72に当接することで、前記ポペットバルブ81の軸方向への移動を規制し、当該ポペットバルブ81を位置決めすることができる。
【0055】
これにより、前記各突出部73,74が位置するポペットバルブ81の各圧入部92,93と、前記通流口61の弁座部64に当接するポペットバルブ81周面の前記シール部91との位置関係を一定位置に保つことができる。
【0056】
なお、本実施の形態では、内燃機関の燃料供給系統における燃料の流量制御用に前記比例電磁弁1を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば油圧回路の流量制御に用いる流量制御用の比例電磁弁1として用いても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 比例電磁弁
42 作動軸
61 通流口
64 弁座部
71 圧入ピン
72 突き当て部
73 基端側突出部
74 先端側突出部
81 ポペットバルブ
82 テーパ部
85 挿入穴
91 シール部
92 基端側圧入部
93 先端側圧入部
111 閉弁状体
121 制御状態