(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976386
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】アンテナ取付用ワッシャー及び車両用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/12 20060101AFI20160809BHJP
F16B 39/24 20060101ALI20160809BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
H01Q1/12 Z
F16B39/24 E
H01Q1/22 B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-106258(P2012-106258)
(22)【出願日】2012年5月7日
(65)【公開番号】特開2013-236183(P2013-236183A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】林 健太郎
【審査官】
米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−009128(JP,A)
【文献】
特開2004−320519(JP,A)
【文献】
特開2000−035013(JP,A)
【文献】
特開平05−149319(JP,A)
【文献】
特開平10−037935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/12
F16B 39/24
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用アンテナの本体から延びるネジ軸に装着するワッシャーであって、
樹脂部品と、前記樹脂部品を保持する金属部品と、を備え、
前記金属部品は、対面する締付対象の導体に食い込み可能な爪と、前記ネジ軸に設けられたナット又は前記ネジ軸を有するボルトの頭部と当接すると共に切欠部が形成されたベース部と、を有し、
前記樹脂部品は、前記ベース部上において前記金属部品に保持され、前記切欠部を前記ネジ軸が貫通するように前記ネジ軸に側方から装着する過程で前記ネジ軸が通過する位置に延在する仮止め部を有し、
前記仮止め部を前記ネジ軸により押し広げながら前記ネジ軸に側方から装着でき、前記ネジ軸から側方に抜けることを防止する抵抗力を前記仮止め部が発生する、アンテナ取付用ワッシャー。
【請求項2】
前記仮止め部は、前記ネジ軸に側方から装着する際に必要な力よりも前記ネジ軸から側方に抜く際に必要な力のほうが大きい形状である、請求項1に記載のアンテナ取付用ワッシャー。
【請求項3】
前記金属部品は、前記ベース部の外周部に前記樹脂部品の側方を囲む側壁部を有し、前記側壁部の上縁部に前記爪が形成され、
前記樹脂部品は、前記金属部品の側壁部の外側に僅かに突出した突出部を有する、請求項1又は2に記載のアンテナ取付用ワッシャー。
【請求項4】
装着状態のネジ軸が貫通する貫通部に、ネジ山の谷の部分に嵌ってネジ軸の軸方向への抜けに対して抵抗力を発生する係止部を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ取付用ワッシャー。
【請求項5】
前記係止部が、前記樹脂部品に形成される、請求項4に記載のアンテナ取付用ワッシャー。
【請求項6】
前記係止部をネジ山の山の部分により押し広げながら前記ネジ軸に軸方向から装着可能である請求項4又は5に記載のアンテナ取付用ワッシャー。
【請求項7】
車体の取付け孔の上部に配置されたアンテナ本体と、
前記アンテナ本体から延びるネジ軸と、
前記取付け孔の下方において前記ネジ軸に設けられたナット又はボルト頭部と、
前記ナット又は前記ボルト頭部と前記取付け孔との間において前記ネジ軸に装着されたワッシャーと、を備え、
前記ワッシャーは、樹脂部品と、前記樹脂部品を保持する金属部品と、を備え、
前記金属部品は、対面する締付対象の導体に食い込む爪と、前記ネジ軸に設けられたナット又は前記ネジ軸を有するボルトの頭部と当接すると共に切欠部が形成されたベース部と、を有し、
前記樹脂部品は、前記ベース部上において前記金属部品に保持され、前記切欠部を前記ネジ軸が貫通するように前記ネジ軸に側方から装着する過程で前記ネジ軸が通過する位置に延在する仮止め部を有し、
前記仮止め部を前記ネジ軸により押し広げながら前記ネジ軸に側方から装着でき、前記ネジ軸から側方に抜けることを防止する抵抗力を前記仮止め部が発生する、車両用アンテナ装置。
【請求項8】
前記アンテナ本体底面に、前記ネジ軸に対する前記ワッシャーの取付角度を規制するガイド壁が設けられている、請求項7に記載の車両用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車体のルーフにネジ付きアンテナを固定するのに用いて好適なワッシャー
及びそれを用いた車両用アンテナ装
置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車載用アンテナを車体のルーフに取り付ける構造として、ルーフに穿設した孔にアンテナのベースから下方に突出するネジ軸を挿通し、ルーフから下方に突出したネジ軸に下方から爪付きワッシャーを嵌挿し、さらにナットを螺合して固定する構造が従来から知られている。こうした構造に関し、下記特許文献1及び2は、ワッシャーとナットをネジ軸回りに相対回転可能でネジ軸方向に分離しないように連結したワッシャー付きナットを開示する。このワッシャー付きナットは、ネジ軸に下方から嵌挿後、ネジ軸のスリットに設けられた係止用舌片により下方への移動が規制されてネジ軸に対して仮固定される構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−033425号公報
【特許文献2】特開2004−194000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2のワッシャー付きナットは、ワッシャーとナットとが連結されていてネジ軸に対して下方からしか装着できないため、アンテナのネジ軸に対するナットの取付け作業は、ルーフの孔にアンテナのネジ軸を挿通した後に行うことになる。そうすると、アンテナのネジ軸に対するナットの取付け作業は通常の手元作業と比較して身体から遠いルーフの取付孔の近傍で行わなければならず、作業性が悪いため、ナットを斜めに噛み合わせてしまう等の取付け不良が発生しやすく、また取付けが成功したか否かの確認も難しい。アンテナのネジ軸に対するナットの取付けが不良のまま工具により締結を進めると、部品の破損や不良品の発生等、様々な問題が発生する。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、予めネジ軸にナットを取り付けた状態でネジ軸に対して側方から装着でき、装着作業性の良好な
アンテナ取付用ワッシャー及びそれを用いた
車両用アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、ワッシャーである。このワッシャーは、
車両用アンテナの本体から延びるネジ軸に装着するワッシャーであって、
樹脂部品と、前記樹脂部品を保持する金属部品と、を備え、
前記金属部品は、対面する締付対象の導体に食い込み可能な爪と、
前記ネジ軸に設けられたナット又は前記ネジ軸を有するボルトの頭部と当接すると共に切欠部
が形成されたベース部と、
を有し、
前記樹脂部品は、前記ベース部上において前記金属部品に保持され、前記切欠部を
前記ネジ軸が貫通するように前記ネジ軸に側方から装着する過程で前記ネジ軸が通過する位置に延在する仮止め
部を有し、
前記仮止め部を
前記ネジ軸により押し広げながら前記ネジ軸に側方から装着でき、前記ネジ軸から側方に抜けることを防止する抵抗力を前記仮止め部が発生する。
【0007】
前記仮止め部は、前記ネジ軸に側方から装着する際に必要な力よりも前記ネジ軸から側方に抜く際に必要な力のほうが大きい形状であってもよい。
【0008】
前記金属部品は、前記樹脂部品が載置されるベース部と、前記ベース部から立ち上がる側壁部とを有し、
前記ベース部は、位置決め孔と、係止孔とを含み、
前記樹脂部品は、前記位置決め孔に挿入される位置決めピンと、前記係止孔を貫通して前記係止孔のナット取付け側の開口部近傍に引っ掛かる係止爪とを含んでもよい。
【0009】
前記ベース部は、前記係止爪の引っ掛かる部分がナットとの当接面に対して凹んでいてもよい。
【0010】
前記金属部品は、前記ベース部の外周部に前記樹脂部品の側方を囲む側壁部を有し、前記側壁部の上縁部に前記爪が形成され、前記樹脂部品は、前記金属部品の側壁部の外側に僅かに突出した突出部を有してもよい。
【0011】
装着状態のネジ軸が貫通する貫通部に、ネジ山の谷の部分に嵌ってネジ軸の軸方向への抜けに対して抵抗力を発生する係止部を有してもよい。
前記係止部が、前記樹脂部品に形成されてもよい。
【0012】
前記係止部をネジ山の山の部分により押し広げながら前記ネジ軸に軸方向から装着可能であってもよい。
【0014】
本発明のもう一つの態様は、車両用アンテナ装置である。この車両用アンテナ装置は、
車体の取付け孔の上部に配置されたアンテナ本体と、
前記アンテナ本体から延びるネジ軸と、
前記取付け孔の下方において前記ネジ軸に設けられたナット又はボルト頭部と、
前記ナット又は前記ボルト頭部と前記取付け孔との間において前記ネジ軸に装着されたワッシャーと
、を備え、
前記ワッシャーは、
樹脂部品と、前記樹脂部品を保持する金属部品と、を備え、
前記金属部品は、対面する締付対象の導体に食い込む爪と、
前記ネジ軸に設けられたナット又は前記ネジ軸を有するボルトの頭部と当接すると共に切欠部
が形成されたベース部と、
を有し、
前記樹脂部品は、前記ベース部上において前記金属部品に保持され、前記切欠部を前記ネジ軸が貫通するように前記ネジ軸に側方から装着する過程で前記ネジ軸が通過する位置に延在する仮止め
部を有し、
前記仮止め部を前記ネジ軸により押し広げながら前記ネジ軸に側方から装着でき、前記ネジ軸から側方に抜けることを防止する抵抗力を前記仮止め部が発生する。
【0015】
前記アンテナ本体底面に、前記ネジ軸に対する前記ワッシャーの取付角度を規制するガイド壁が設けられていてもよい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現をシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ワッシャーに切欠部を設けたことで、ネジ軸にナットを取り付けた後にネジ軸に対して側方から装着することが可能となる。また、ネジ軸から側方に抜けることを防止する抵抗力を仮止め部が発生するため、装着作業性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係るワッシャー1の上方斜視図。
【
図6】ワッシャー1の装着先となるネジ軸52を有するアンテナ5の下方斜視図。
【
図7】ネジ軸に対してワッシャー1を側方から装着するときの装着過程底面図。
【
図8】ネジ軸に対してワッシャー1を側方から装着するときの装着過程側面図。
【
図10】ネジ軸52に装着した状態のワッシャー1の平面図。
【
図11】ネジ軸52に対してワッシャー1を下方から装着するときの装着説明図。
【
図12】ネジ軸52に装着した状態のワッシャー1の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係るワッシャー1の上方斜視図である。
図2は、ワッシャー1の下方斜視図である。
図3は、
図1のA−A’断面図である。
図4は、ワッシャー1の分解上方斜視図である。
図5は、ワッシャー1の分解下方斜視図である。
【0022】
ワッシャー1は、ABS樹脂等の樹脂成形体からなる樹脂部品2と、樹脂部品2を保持するSPCC(冷間圧延鋼板)等の金属部品3とを備える。
【0023】
金属部品3は、ベース部30と、側壁部31とを有し、例えば金属板からプレス加工によって形成されたものである。ベース部30上に樹脂部品2が固定される。ベース部30には切欠部32が形成されている。側壁部31は、ベース部30の外周部(切欠部32の形成部分は除く)から立ち上がって樹脂部品2の側方を囲む。側壁部31の上縁部には、対面する締付対象の導体(例えば車体のルーフ)に食い込み可能な爪31aが例えば4つ形成される。
【0024】
樹脂部品2は、外周部20と、仮止め部21とを有する。外周部20は、略U字形状であって金属部品3の側壁部31の内側に沿う。仮止め部21は、切欠部32をネジ軸が貫通するように前記ネジ軸に側方から装着する過程で前記ネジ軸が通過する位置に延在する。具体的には、仮止め部21は、腕部215と、コの字部216と、爪部217とを有する。腕部215は、外周部20のU字形状の底辺部201の略中央部から中心側に向かって延びる。コの字部216は、腕部215の先端から二股に分岐して延び、ベース部30の切欠部32のうち装着状態のネジ軸が貫通する部分(貫通部32a)の側方を囲む。爪部217は、コの字部216の各先端部からそれぞれ他方の先端部に向かって突出するように設けられる。コの字部216の対向する2辺の間隔は、ネジ軸の径と略同様で、爪部217の間隔は、ネジ軸の径よりも小さい。
図3に示されるように、コの字部216の対向する2辺の内面には、それぞれ他方の辺に向かって突出するように係止部218が凸条に形成されている。対向する係止部218の間隔は、ネジ軸のネジ山の山の部分の径よりも小さく、ネジ山の谷の部分に嵌る。係止部218は凸部でもよい。
【0025】
金属部品3のベース部30は、位置決め孔301と、1対の係止孔302とを含む。樹脂部品2の外周部20の底辺部201からは、ベース部30の位置決め孔301に挿入される位置決めピン204が立ち上がる(下方に延びる)。外周部20の1対の側辺部202からは、ベース部30の前記一対の係止孔302に対応して一対の係止爪205が立ち上がる(下方に延びる)。一対の係止爪205は、それぞれ係止孔302を貫通してナット取付け側の開口部近傍に引っ掛かる。ベース部30は、位置決め孔301一帯及びそれぞれの係止孔302一帯(少なくとも係止爪205の引っ掛かる部分を含む)がナット当接面に対して凹んだ凹部303となっている。樹脂部品2において、金属部品3の側壁部31(爪31aの間)を乗り越えて外側に僅かに突出した突出部203が外周部20の底辺部201及び1対の側辺部202からそれぞれ延びる。
【0026】
図6は、ワッシャー1の装着先となるネジ軸52を有するアンテナ5の下方斜視図である。アンテナ5の本体51内部にはアンテナエレメントとして例えば容量エレメント及びコイルエレメント(不図示)が収納されている。アンテナ5の本体51下面にはシャーシ53がネジ止め等により固定される。シャーシ53には仮止め部材54が設けられる(取り付けられる)。シャーシ53から下方に延びるネジ軸52は、仮止め部材54を貫通して更に下方に延びる。仮止め部材54は、下方から見て略矩形となる外形であり、長手方向がアンテナ5の本体51の長手方向と同じになるように配置される。仮止め部材54の長側壁にはガイド壁55を備える。ガイド壁55は、ワッシャー1の装着時に樹脂部品2の一対の側辺部202の内側面202aをガイドし、ネジ軸52に対するワッシャー1の取付角度を規制する。
【0027】
ネジ軸52の後方には、アンテナ5の本体51内の回路基板(不図示)に接続するケーブル56を導出するケーブル挿通孔57が形成(例えば仮止め部材54に形成)されている。そして、上記のガイド機能によりワッシャー1の切欠部32が常に後方を向いて取り付けられるため、ワッシャー1の取付時において、ワッシャー1がケーブル56に接触することが防止される。
【0028】
なお、後述する車体6の取付け孔61に対して仮止め部材54は下方から見て相似形状であるため、仮止め部材54はアンテナ5の車体6への位置決めおよび回転止めとしての機能も有する。仮止め部材54に設けられた仮止め爪58は、車体6の取付け孔61の開口縁とその近傍に係合し、仮止め部材54が車体6の取付け孔61に挿入された後の仮止め部材54の抜けを防止する。
【0029】
図7は、ネジ軸に対してワッシャー1を側方から装着するときの装着過程を示す底面図である。
図8は、同過程を示す側面図である。
図9は、
図8の要部拡大図である。ここでは、ワッシャー1を用いてアンテナ5を車体6に固定する方法(スライド方式)を説明する。なお、車体6の取付け孔61に対するナット7およびワッシャー1の寸法関係は、ナット7の外径が取付け孔61の短手方向の径よりも小さく、ワッシャー1の外径が取り付け孔61の短手方向の径よりも大きい。
【0030】
まず、アンテナ5の本体51から延びるネジ軸52に予めナット7を取り付けておく。そして、ネジ軸52をナット7と共に車体6の取付け孔61(
図9)に通し、ネジ軸52のナット7と車体6との間の部分にワッシャー1を、仮止め部21の爪部217をネジ軸52により押し広げながら側方から装着し、その後、ナット7を締結する。ナット7の締結により、ナット7が金属部品3に当接して車体6へと押し付け、金属部品3の側壁部31の爪31aが車体6の塗装を突き破って車体6の導体部に食い込み、アースが確保される。
【0031】
図10は、ネジ軸52に装着した状態のワッシャー1の平面図(但しネジ軸52については断面図)である。ワッシャー1をネジ軸52に装着後、仮止め部21は、ネジ軸52から側方に抜けることを防止する抵抗力を発生する。すなわち、ワッシャー1がネジ軸52から側方に抜けようとすると、仮止め部21の爪部217がネジ軸52に引っ掛かり、ワッシャー1の側方への抜けが防止される。なお、爪部217は、ネジ軸52の側方からの入口側に向かって広がった形状である一方、コの字部216の内側に臨む面はネジ軸52の出入り方向に対して垂直である。換言すれば、仮止め部21は、ネジ軸52に側方から装着する際に必要な力よりもネジ軸52から側方に抜く際に必要な力のほうが大きい形状である。したがって、ワッシャー1は、小さな力で側方から装着できる一方、装着後は側方への抜けに対する防止力が大きい。
【0032】
なお、
図10に示すように、ワッシャー1は、切欠部32の中央を通る中心線を挟んで略対称形状である。爪31aは中心線を挟んでそれぞれ2箇所に配置されているが、爪31aも前記中心線を挟んで対称の位置に配置されている。また、爪31aのうち2つは、切欠部32の入口両端部近傍に配置されている。
【0033】
図11は、ネジ軸52に対してワッシャー1を軸方向(下方)から装着するときの装着説明図である。車体6の取付け孔61の近傍に補強ブラケットが存在する等の理由でワッシャー1をスライド方式(
図7〜
図9)で装着するスペースが確保できない場合には、
図11に示すようにワッシャー1をナット7が取り付けられていないネジ軸52に下方から装着する。この際、樹脂部品2のコの字部216の内面の係止部218をネジ山の山の部分により押し広げながらネジ軸52に軸方向(下方)から装着する。ワッシャー1の装着後にネジ軸52にナット7を取り付け、締結する。
【0034】
図12は、ネジ軸52に装着した状態のワッシャー1の側断面図である。本図は、
図3にネジ軸52を追加したものに相当する。ワッシャー1をネジ軸52に装着後、係止部218は、ネジ軸52の軸方向への抜けに対して抵抗力を発生する。すなわち、係止部218はネジ軸52のネジ山の谷の部分(山と山との間)に嵌っており、ワッシャー1の自重だけではネジ軸52の軸方向(下方)に抜けない。一方、係止部218の抵抗力は、ナット7の締結に伴うワッシャー1の軸方向移動や、人手での上下方向の抜き差しは許容する程度の大きさである。
【0035】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0036】
(1) 金属部品3に切欠部32を設けているため、ナット7を取り付けたネジ軸52にワッシャー1を側方から装着できる。このため、ネジ軸52を車体6(ルーフ)の取付け孔61(
図9)に通す前に身体近くの手元作業でネジ軸52にナット7を取り付けておくことができ、身体から遠いルーフの取付孔の近傍でネジ軸52にナット7を取り付ける場合と比較してナット7の取付け作業性が良好である。したがって、ナット7を斜めに噛み合わせてしまう等の取付け不良が発生しにくく、また取付けが成功したか否かの確認も容易である。よって、ナットの取付けが不良のまま工具により締結を進めることで発生する部品の破損や不良品の発生等の様々な問題を未然に防ぐことができる。
【0037】
(2) 従来のワッシャー付きナットではナットがカスタム(専用品)で締め付けにも専用の工具が必要でコスト高であったが、本実施の形態ではナット7は規格品でよく、またナット7を締め付ける工具も汎用工具でよいため、コスト安である。
【0038】
(3) 樹脂部品2に仮止め部21を設けており、仮止め部21の爪部217をネジ軸52により押し広げながらネジ軸52に側方から装着するため、ほどよい装着抵抗が得られ、ワッシャー1の装着作業性が良い。また、装着後は仮止め部21の爪部217が引っ掛かってワッシャー1はネジ軸52から側方に抜けることが防止されるため、装着後の例えばナット7の締結時にワッシャー1が側方に抜けないように作業者が手で押さえる必要はなく、作業性が良好となる。また、仮止め部21は、小さな力で側方からの装着を許容する一方、装着後は側方への抜けに対する防止力が大きいため、装着抵抗と抜け防止力のバランスが良い。
【0039】
(4) 金属部品3のベース部30は、位置決め孔301一帯及び2つの係止孔302一帯(少なくとも係止爪205の引っ掛かる部分を含む)が凹部303となっているため、樹脂部品2の位置決めピン204と係止爪205はベース部30の最下面(ナット7との当接面)より下方には突出しない。このため、ナット7の締結時に樹脂部品2の位置決めピン204と係止爪205がベース部30から下方に出っ張って邪魔になることが防止され、ナット7の締結作業性が良い。
【0040】
(5) ワッシャー1は、ネジ軸52に側方から取り付けるスライド方式だけでなく、ネジ軸52に軸方向(下方)から装着することも可能であり、締付対象の構造に合わせて柔軟に対応できる。ネジ軸52に下方から装着した後は、樹脂部品2のコの字部216の内面の係止部218が下方への抜止めになるため、ワッシャー1の装着後からナット7の取付け前までの間、ワッシャー1をネジ軸52から落下しないように手で押さえる必要はなく、作業性が良好である。
【0041】
(6) 金属部品3の外側に僅かに突出した突出部203を樹脂部品2が有するため、ワッシャー1を手で持って仮止めする際に突出部203が滑り止めとなり、持ちやすくて好ましい。
【0042】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。例えば、樹脂部品2に代えて、同様の機能を有する部材を樹脂以外の材料で構成してもよい。また、樹脂部品2及び金属部品3の2部品構成に限定されず、1部品構成としてもよい。
【0043】
アンテナ5の本体51の底面からネジ軸52を突出させ、ナット7を締結させる締付機構に替えて、アンテナ5の本体51の底面にはネジ軸を設けずにネジ孔を設け、このネジ孔にボルトを螺合するような締付機構としてもよい。この場合、ボルトの頭部と車体6でワッシャー1を挟む。
【符号の説明】
【0044】
1 ワッシャー
2 樹脂部品
20 外周部、201 底辺部、202 側辺部、203 突出部、204 位置決めピン、205 係止爪
21 仮止め部、215 腕部、216 コの字部、217 爪部
3 金属部品
30 ベース部、301 位置決め孔、302 係止孔、303 凹部
31 側壁部、31a 爪
32 切欠部
5 アンテナ、51 本体、52 ネジ軸
7 ナット