(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のALCパネルを、各パネルの表裏面が鉛直方向に沿うように又は鉛直方向に対して傾斜するようにした状態で、隣り合うパネル同士を所定寸法離隔させて配置すること、及び、
配置された複数のALCパネル間に形成された間隙の上下端を開放することにより、前記間隙の下方から上方に向かって空気が流通し得るようにすること、を含む、
ALCパネルの乾燥方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたような乾燥方法を採用しても以下のような問題が依然として残り、ALCパネルを十分に乾燥させることができない可能性がある。
【0006】
まず、特許文献1に記載された方法においては、パネル同士を複数枚密着させて重ねているが、このようにパネル同士が密着していると水蒸気の放散が進まない(たとえ、隣り合うパネル間にリン木を介在させて間隙を設けたとしても、下面側から放散した水蒸気は上昇しにくいので周辺に溜まってしまう)という問題がある。また、上面側から放散した水蒸気は、下面側から放散した場合に比べて上昇(パネル表面から離散)し易いが、特許文献1に記載された方法を採用すると、上方に存在するALCパネルの影響で、間隙が高湿度状態にあると放散が進まないという問題がある。また、上面側から放散した水蒸気を、上方に存在するALCパネルが再度吸着してしまうことも考えられる。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、水分を含んだ空気の移動を促進してパネルを効果的に乾燥させることができるALCパネルの乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係るALCパネルの乾燥方法は、複数のALCパネルを、各パネルの表裏面が鉛直方向に沿うように又は鉛直方向に対して傾斜するようにした状態で、隣り合うパネル同士を所定寸法離隔させて配置すること、及び、配置された複数のALCパネル間に形成された間隙の上下端を開放することにより、間隙の下方から上方に向かって空気が流通し得るようにすること、を含むものである。
【0009】
かかる方法を採用すると、ALCパネル間に形成された間隙における空気の流通が促進されて、パネルから放散された水蒸気が速やかに排出されるので、ALCパネルを効率良く乾燥させることができる。
【0010】
本発明に係るALCパネルの乾燥方法において、間隙の下端側に暖気を供給することをさらに含むことが好ましい。
【0011】
かかる方法を採用すると、ALCパネル間に形成された間隙に暖気を供給することにより、飽和水蒸気量を増大させながら上昇気流を発生させることができる。この結果、ALCパネルの乾燥をより一層促進することができる。
【0012】
また、本発明に係るALCパネルの乾燥方法において、ALCパネルの製造工程で発生する熱・温水・蒸気を熱源とする暖気を採用することができる。
【0013】
かかる方法を採用すると、ALCパネルの製造工程で発生する熱・温水・蒸気等を有効利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水分を含んだ空気の移動を促進してパネルを効果的に乾燥させることができるALCパネルの乾燥方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態はあくまでも好適な適用例であって、本発明の適用範囲がこれに限定されるものではない。
【0017】
<第一実施形態>
まず、
図1及び
図2を用いて、本発明の第一実施形態に係る乾燥方法について説明する。
【0018】
まず、オートクレーブを用いて養生を行うことにより完全に硬化させた所定のパネル形状のALCパネル10の各々の側面11に、
図2に示すような平面視コ字状の側方スペーサ20を装着する。側方スペーサ20は、発泡ポリエチレン等の合成樹脂材料や金属材料で構成することができる。
【0019】
次いで、側方スペーサ20を側面11に装着した複数のALCパネル10を、
図1に示すように鉛直方向(上下方向)に立て、各パネル10の表裏面が鉛直方向に沿うようにした状態で配置する。各ALCパネル10の側面11には側方スペーサ20が装着されているため、隣り合うパネル10同士は、所定寸法(例えば10〜20mm程度)離隔した状態で配置されることとなる。このように配置された複数のALCパネル10間には間隙が形成され、この間隙の上下端は開放されている。このため、間隙の下方から上方に向かって空気が流通することができるようになっている。
【0020】
このように配置された複数のALCパネル10の各々は、ALCパネル10の養生工程で発生する熱・温水・蒸気を含んでいる。このため、ALCパネル10間の間隙からは、このような熱・温水・蒸気を熱源とした暖気が供給され、この暖気は、間隙の下端側から上端側へと流通することとなる。
【0021】
以上説明した実施形態に係る乾燥方法においては、ALCパネル10間に形成された間隙における空気の流通が促進されて、パネル10から放散された水蒸気が速やかに排出されるので、ALCパネル10を効率良く乾燥させることができる。
【0022】
また、以上説明した実施形態に係る乾燥方法においては、ALCパネル10間に形成された間隙に暖気を供給することにより、飽和水蒸気量を増大させながら上昇気流を発生させることができる。この結果、ALCパネル10の乾燥をより一層促進することができる。また、以上説明した実施形態に係る乾燥方法においては、ALCパネル10の製造工程で発生する熱・温水・蒸気等を有効利用することができる。
【0023】
<第二実施形態>
次に、
図3及び
図4を用いて、本発明の第二実施形態について説明する。本実施形態に係る乾燥方法は、第一実施形態に係る乾燥方法における側方スペーサの構造(形状)を変更したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。従って、第一実施形態と共通する構成については、同一の符合を付して詳細な説明を省略することとする。
【0024】
まず、オートクレーブを用いて養生を行うことにより完全に硬化させた所定のパネル形状のALCパネル10の各々の側面11に、
図3及び
図4に示すように平面視コ字状の側方スペーサを連接したような連続側方スペーサ30を装着する。連続側方スペーサ30は、発泡ポリエチレン等の合成樹脂材料や金属材料で構成することができる。
【0025】
次いで、連続側方スペーサ30を側面11に装着した複数のALCパネル10を、
図3に示すように鉛直方向(上下方向)に立て、各パネル10の表裏面が鉛直方向に沿うようにした状態で配置する。各ALCパネル10の側面11には連続側方スペーサ30が装着されているため、隣り合うパネル10同士は、所定寸法(例えば10〜20mm程度)離隔した状態で配置されることとなる。このように配置された複数のALCパネル10間には間隙Gが形成され、この間隙Gの上下端は開放されている。このため、間隙Gの下方から上方に向かって空気が流通することができるようになっている。
【0026】
このように配置された複数のALCパネル10の各々は、ALCパネル10の養生工程で発生する熱・温水・蒸気を含んでいる。このため、ALCパネル10間の間隙Gからは、このような熱・温水・蒸気を熱源とした暖気が供給され、この暖気は、間隙Gの下端側から上端側へと流通することとなる。
【0027】
以上説明した実施形態に係る乾燥方法を採用した場合においても、第一実施形態に係る乾燥方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0028】
<第三実施形態>
次に、
図5を用いて、本発明の第三実施形態について説明する。本実施形態に係る乾燥方法は、第一実施形態に係る乾燥方法におけるスペーサの位置等を変更したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。従って、第一実施形態と共通する構成については、同一の符合を付して詳細な説明を省略することとする。
【0029】
まず、オートクレーブを用いて養生を行うことにより完全に硬化させた所定のパネル形状のALCパネル10の各々の下面12に、
図5に示すような平面視コ字状の下方スペーサ40を装着する。下方スペーサ40は、発泡ポリエチレン等の合成樹脂材料や金属材料で構成することができる。
【0030】
次いで、下方スペーサ40を下面12に装着した複数のALCパネル10を、
図5に示すように鉛直方向(上下方向)に立て、各パネル10の表裏面が鉛直方向に沿うようにした状態で配置する。各ALCパネル10の下面12には下方スペーサ40が装着されているため、隣り合うパネル10同士は、所定寸法(例えば10〜20mm程度)離隔した状態で配置されることとなる。このように配置された複数のALCパネル10間には間隙が形成され、この間隙の上下端は開放されている。このため、間隙の下方から上方に向かって空気が流通することができるようになっている。
【0031】
このように配置された複数のALCパネル10の各々は、ALCパネル10の養生工程で発生する熱・温水・蒸気を含んでいる。このため、ALCパネル10間の間隙からは、このような熱・温水・蒸気を熱源とした暖気が供給され、この暖気は、間隙の下端側から上端側へと流通することとなる。
【0032】
以上説明した実施形態に係る乾燥方法を採用した場合においても、第一実施形態に係る乾燥方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
<第四実施形態>
次に、
図6を用いて、本発明の第四実施形態について説明する。本実施形態に係る乾燥方法は、第一実施形態に係る乾燥方法におけるスペーサの位置等を変更したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。従って、第一実施形態と共通する構成については、同一の符合を付して詳細な説明を省略することとする。
【0034】
まず、オートクレーブを用いて養生を行うことにより完全に硬化させた所定のパネル形状のALCパネル10の各々の上面13に、
図6に示すような平面視コ字状の上方スペーサ50を装着する。上方スペーサ50は、発泡ポリエチレン等の合成樹脂材料や金属材料で構成することができる。
【0035】
次いで、上方スペーサ50を上面13に装着した複数のALCパネル10を、
図6に示すように鉛直方向(上下方向)に立て、各パネル10の表裏面が鉛直方向に沿うようにした状態で配置する。この際、隣り合うALCパネル10の上方スペーサ50を、
図6に示すように互い違いに(千鳥状に)配置する。各ALCパネル10の上面13には上方スペーサ50が装着されているため、隣り合うパネル10同士は、所定寸法(例えば10〜20mm程度)離隔した状態で配置されることとなる。このように配置された複数のALCパネル10間には間隙Gが形成され、この間隙Gの上下端は開放されている。このため、間隙Gの下方から上方に向かって空気が流通することができるようになっている。
【0036】
このように配置された複数のALCパネル10の各々は、ALCパネル10の養生工程で発生する熱・温水・蒸気を含んでいる。このため、ALCパネル10間の間隙Gからは、このような熱・温水・蒸気を熱源とした暖気が供給され、この暖気は、間隙Gの下端側から上端側へと流通することとなる。
【0037】
以上説明した実施形態に係る乾燥方法を採用した場合においても、第一実施形態に係る乾燥方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0038】
<第五実施形態>
次に、
図7及び
図8を用いて、本発明の第五実施形態について説明する。本実施形態に係る乾燥方法は、第一実施形態に係る乾燥方法におけるスペーサの位置等を変更したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。従って、第一実施形態と共通する構成については、同一の符合を付して詳細な説明を省略することとする。
【0039】
まず、オートクレーブを用いて養生を行うことにより完全に硬化させた所定のパネル形状のALCパネル10の各々の上面13に、
図7及び
図8に示すような平面視コ字状の上方スペーサ60を装着する。上方スペーサ60は、発泡ポリエチレン等の合成樹脂材料や金属材料で構成することができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、ALCパネル10の内部に配されている複数の鉄筋14のうち最も上方に位置する鉄筋14の直下に、スペーサ固定用の雌ネジ15aを有する筒状部材15を埋め込んでいる。そして、上方スペーサ60に設けられたネジ孔61に雄ネジ70を通し、雄ネジ70を筒状部材15の雌ネジ15aに螺入することにより、上方スペーサ60をALCパネル10に装着固定している。また、本実施形態における上方スペーサ60には、懸吊用の紐62が取り付けられている。このため、紐62及び上方スペーサ60を介して、ALCパネル10を上方に懸吊することができるようになっている。
【0041】
次いで、上方スペーサ60を上面13に装着した複数のALCパネル10を、
図7に示すように鉛直方向(上下方向)に立て、各パネル10の表裏面が鉛直方向に沿うようにした状態で配置する。各ALCパネル10の上面13には上方スペーサ60が装着されているため、隣り合うパネル10同士は、所定寸法(例えば10〜20mm程度)離隔した状態で配置されることとなる。このように配置された複数のALCパネル10間には間隙が形成され、この間隙の上下端は開放されている。このため、間隙の下方から上方に向かって空気が流通することができるようになっている。
【0042】
このように配置された複数のALCパネル10の各々は、ALCパネル10の養生工程で発生する熱・温水・蒸気を含んでいる。このため、ALCパネル10間の間隙からは、このような熱・温水・蒸気を熱源とした暖気が供給され、この暖気は、間隙の下端側から上端側へと流通することとなる。
【0043】
以上説明した実施形態に係る乾燥方法を採用した場合においても、第一実施形態に係る乾燥方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0044】
なお、以上の各実施形態においては、スペーサを装着した複数のALCパネルを鉛直方向(上下方向)に立て、各パネルの表裏面が鉛直方向に沿うようにした状態で配置した例を示したが、各パネルの表裏面を鉛直方向に厳密に平行にする必要はなく、各パネルの表裏面を鉛直方向に対して若干傾斜させるようにしてもよい。
【0045】
本発明は、以上の各実施形態に限定されるものではなく、これら実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。