(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のドアに設けられた断面略コ字状の枠体に沿って嵌装され、昇降するドアガラスを溝部に案内する、車内側側壁部と車外側側壁部とそれらを連結する連結壁部からなる断面略コ字状の本体部を有し、前記車内側側壁部の車外側面から前記連結壁部側に向かって延び前記ドアガラスに摺接するインナリップ部と、前記車外側側壁部の端部位置の車内側面から車内側に向かって延び、前記ドアガラスに摺接するアウタリップ部が形成され、前記アウタリップ部は、前記車外側側壁部の端部位置の車内側面から前記連結壁部側に向かって延び前記インナリップ部に相対向する内当てリップと、前記内当てリップの付け根部から内当てリップの延びる方向に対して略垂直で前記連結壁部側とは逆側に延びる外当てリップからなる二股状に構成されたグラスランであって、
前記インナリップ部を断面略S字状に、その付け根部から中間部までの部位を前記車内側側壁部側に向かって膨出湾曲させ、かつ前記インナリップ部の中間部から先端部までの部位を前記車外側側壁部側に向かって膨出湾曲させるとともに、
前記ドアガラスが前記溝部内に案内される前の状態で、前記インナリップ部の前記連結壁部側とは逆側の面において前記湾曲の方向が切り替わる変位点を、前記アウタリップ部の外当てリップの先端部よりも前記連結壁部側に位置するように設定してなり、
さらに、前記内当てリップの付け根部の前記連結壁部側の肉厚を薄くするか又は車内側からノッチを設けて前記内当てリップを前記連結壁部側に回動させる折れ点を形成し、
前記内当てリップの付け根部の肉厚を、前記折れ点の部位における肉厚よりも厚くするとともに、前記外当てリップの付け根部の肉厚を、その外当てリップの先端部の肉厚よりも薄くし、
前記ドアガラスが前記溝部内に案内されて前記内当てリップに摺接すると、前記内当てリップを前記折れ点を中心に前記連結壁部側に回動させるとともに、その動きに追従して前記外当てリップを前記ドアガラス側に近づけてドアガラスに摺接させ、さらに前記外当てリップの先端部を前記ドアガラスに沿って前記連結壁部側とは逆側に向けて撓み移動するようにしたことを特徴とするグラスラン。
車両のドアに設けられた断面略コ字状の枠体に沿って嵌装され、昇降するドアガラスを溝部に案内する、車内側側壁部と車外側側壁部とそれらを連結する連結壁部からなる断面略コ字状の本体部を有し、前記車内側側壁部の車外側面から前記連結壁部側に向かって延び前記ドアガラスに摺接するインナリップ部と、前記車外側側壁部の端部位置の車内側面から車内側に向かって延び、前記ドアガラスに摺接するアウタリップ部が形成され、前記アウタリップ部は、前記車外側側壁部の端部位置の車内側面から前記連結壁部側に向かって延び前記インナリップ部に相対向する内当てリップと、前記内当てリップの付け根部から内当てリップの延びる方向に対して略垂直で前記連結壁部側とは逆側に延びる外当てリップからなる二股状に構成されたグラスランであって、
前記インナリップ部を断面略S字状に、その付け根部から中間部までの部位を前記車内側側壁部側に向かって膨出湾曲させ、かつ前記インナリップ部の中間部から先端部までの部位を前記車外側側壁部側に向かって膨出湾曲させるとともに、
前記ドアガラスの組付け時に前記ドアガラスを前記溝部内へ挿入する際に、前記ドアガラスの端面を前記インナリップ部の付け根部から先端部側に向けて摺動させたときに前記ドアガラスが前記アウタリップ部の外当てリップに当接する正に直前の状態で、前記インナリップ部の前記連結壁部側とは逆側の面において前記湾曲の方向が切り替わる変位点を、前記アウタリップ部の外当てリップの先端部よりも前記連結壁部側に位置するように設定してなり、
さらに、前記内当てリップの付け根部の前記連結壁部側の肉厚を薄くするか又は車内側からノッチを設けて前記内当てリップを前記連結壁部側に回動させる折れ点を形成し、
前記内当てリップの付け根部の肉厚を、前記折れ点の部位における肉厚よりも厚くするとともに、前記外当てリップの付け根部の肉厚を、その外当てリップの先端部の肉厚よりも薄くし、
前記ドアガラスが前記溝部内に案内されて前記内当てリップに摺接すると、前記内当てリップを前記折れ点を中心に前記連結壁部側に回動させるとともに、その動きに追従して前記外当てリップを前記ドアガラス側に近づけてドアガラスに摺接させ、さらに前記外当てリップの先端部を前記ドアガラスに沿って前記連結壁部側とは逆側に向けて撓み移動するようにしたことを特徴とするグラスラン。
前記外当てリップの先端部に設ける、前記ドアガラスの表面に平行な仮想平行線を室内側へ平行移動させた際に前記変位点と交差する位置までの移動距離が前記ドアガラスの厚みの4分の1以上あることを特徴とする請求項1又は2に記載のグラスラン。
前記インナリップ部の付け根部における前記連結壁部側とは逆側の面に摺動材を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のグラスラン。に記載のグラスラン。
車両のドアに設けられた断面略コ字状の枠体に沿って嵌装され、昇降するドアガラスを溝部に案内する、車内側側壁部と車外側側壁部とそれらを連結する連結壁部からなる断面略コ字状の本体部を有し、前記車内側側壁部の車外側面から前記連結壁部側に向かって延び前記ドアガラスに摺接するインナリップ部と、前記車外側側壁部の端部位置の車内側面から車内側に向かって延び、前記ドアガラスに摺接するアウタリップ部が形成され、前記アウタリップ部は、前記車外側側壁部の端部位置の車内側面から前記連結壁部側に向かって延び前記インナリップ部に相対向する内当てリップと、前記内当てリップの付け根部から内当てリップの延びる方向に対して略垂直で前記連結壁部側とは逆側に延びる外当てリップからなる二股状に構成され、
前記インナリップ部を断面略S字状に、その付け根部から中間部までの部位を前記車内側側壁部側に向かって膨出湾曲させ、かつ前記インナリップ部の中間部から先端部までの部位を前記車外側側壁部側に向かって膨出湾曲させるとともに、
前記インナリップ部の前記連結壁部側とは逆側の面において前記湾曲の方向が切り替わる変位点を、前記アウタリップ部の外当てリップの先端部よりも前記連結壁部側に位置するように設定してなるグラスランに対して前記ドアガラスを組付ける方法であって、
前記ドアガラスをグラスランの溝部内へ挿入するには、前記ドアガラスの端面を前記インナリップ部の付け根部に当接させた後、前記ドアガラスを前記インナリップ部の付け根部から先端部側に向けて摺動させつつ、前記ドアガラスの車外側面を前記アウタリップ部の外当てリップの車内側面から前記アウタリップ部の内当てリップの車外側面に当接させるとともに、前記ドアガラスの車内側面を前記インナリップ部に当接させて前記ドアガラスを保持するようにしたことを特徴とするグラスランのドアガラス組付方法。
【背景技術】
【0002】
従来、
図8に示すように、車両のフロントドア200及びリヤドア300のドアサッシュ(枠体)400には、グラスラン100が嵌装されて、昇降するドアガラス9を案内するようになっている。
図9は、フロントドア200側に取付けられるグラスラン100を示している。グラスラン100は、フロントドア200のドアパネル200aの内部から上方に延びるフロント側縦辺部11及びリヤ側縦辺部12、そして2本の縦辺部11,12の上端を接続する横辺部13から構成されている。2本の縦辺部11,12及び横辺部13は、通常、押出成形により形成され、縦辺部11,12と横辺部13は、2箇所の型成形部14,15を介して接続されている。
【0003】
このうち、リヤ側縦辺部12側に対して、
図10及び
図11で示すように、特にアウタリップ部6を二股状に構成したグラスラン100が適用されたものが知られている。
このようなグラスラン100は、内側に溝部7を形成する断面略コ字状の本体部1を有し、その本体部1は2つの側壁部、すなわち車内側側壁部2と車外側側壁部3と、車内側側壁部2と車外側側壁部3とを結ぶ連結壁部4によって形成されている。そして、車内側側壁部2の内面、すなわち、車内側側壁部2の車外側面には連結壁部4側に向かって延びるインナリップ部5が形成され、また車外側側壁部3の内面、すなわち、車外側側壁部3の車内側面には車内側に向かって延びる二股状のアウタリップ部6が形成されている。
【0004】
アウタリップ部6は、車外側側壁部3の端部内面から連結壁部4側に向かって延び、インナリップ部5と相対向してそのインナリップ部5とドアガラス9を挟持するように設けられた内当てリップ6Xと、内当てリップ6Xに対して略垂直に延びる外当てリップ6Yから構成されている。
【0005】
そして、ドアサッシュ400にグラスラン100を組付けた後にドアガラス9をグラスラン100の溝部7へ組付けるに際しては次のように行われる。ドアガラス9がグラスラン100の溝部7内に案内され、ドアガラス9が内当てリップ6Xに当接しドアガラス9がさらに連結壁部4に近づくように溝部7内に案内されると、内当てリップ6Xは、その付け根部の連結壁部4側に薄肉になるように形成されたノッチ8を中心に車外側側壁部3に近づくように回動するとともに、それに追従して外当てリップ6Yもドアガラス9側に近づくように回動する。その後、ドアガラス9がグラスラン10の溝部7に完全に案内された状態になると、
図10に示すように、外当てリップ6Yも内当てリップ6Xと同様にドアガラス9の車外側面に摺接するようになっている。このように内当てリップ6X及び外当てリップ6Yをドアガラス9に摺接させ、2重シール構造にすることによって遮音機能及び防水機能を高めている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、断面形状において外当てリップ6Yの長さを内当てリップ6Xの長さよりも短くすると、ドアガラス9と外当てリップ6Yの位置関係にバラツキが生じた場合、ドアガラス9がグラスラン100に案内されることで内当てリップ6Xが回動し、その回動に追従して外当てリップ6Yが回動しても、外当てリップ6Yとドアガラス9との間に隙間が生じるといった問題があった。また、このとき外当てリップ6Yがドアガラス9に摺接したとしてもドアガラス9に対する荷重が不十分であると、優れた遮音機能及び防水機能を発揮することはできない。
【0008】
これに対して、断面形状において外当てリップ6Yの長さを内当てリップ6Xの長さよりも長くすると十分なシール性を確保することができるものの、
図11に示すように、ドアガラス9の位置がXの位置からグラスラン100の溝部7内に案内されると、
図12に示すように、ドアガラス9の案内時に外当てリップ6Yの先端部6aを連結壁部4側に巻き込むおそれがあるのに加え、ドアガラス9の組付け性が悪化するといった問題がある。特に、
図11に示すように、ドアガラス9がグラスラン100の溝部7内に案内される前からアウタリップ部6の外当てリップ6Yがインナリップ部5に完全に接触するものでは、ドアガラス9をグラスラン100の溝部7内に案内(挿入)することが困難である。
そのため、車両のドア200に対するベルトラインBL(
図9)の位置より下では、外当てリップ6Yの先端側を部分的(
図11で示す範囲Bの部分)を切り欠いてそこからドアガラス9をグラスラン100内に案内(挿入)する必要があるので、生産性が悪化してコスト高になるとともに、ドアガラス9の組付け作業性も悪化してしまう。また、外当てリップ6Yの先端側を部分的に切り欠かない場合には、組付けラインでドアガラス9を挿入するための専用の治具を使用する必要があるため製造時間が余分にかかるといった問題がある。
【0009】
また、インナリップ部5は車内側側壁部2から車外側側壁部3側に向かって膨出湾曲するように延びているので、
図11に示すように、ドアガラス9の位置がYの位置からグラスラン100の溝部7内に案内されるとドアガラス9がインナリップ部5の付け根部で引っ掛かりドアガラス9の円滑な動作を妨げるといった問題もあった。
【0010】
また、
図10乃至
図12に示したグラスラン100では、ドアガラス9がグラスラン100の溝部7内に案内されたとき、内当てリップ6Xの回動の中心となるノッチ8の部分がドアサッシュ400の車外側部の端部より車内側かつ連結壁部4側で、しかも車外側側壁部3の車内側に形成されているので、グラスラン100の溝部7内に案内されたドアガラス9とノッチ8との距離は短くなる。そのため、内当てリップ6Xの撓み量を大きくとることはできず、また内当てリップ6Xの回動に対する外当てリップ6Yの追従も不十分になるので、ドアガラス9にかかる外当てリップ6Yの荷重が小さいといった問題もある。
【0011】
そこで、本発明の目的とするところは、ドアガラスの案内時にアウタリップ部の巻き込みを防止するとともにドアガラスの組付け性を良好にして優れた遮音機能及び防水機能を発揮しうるグラスランを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明のグラスランは、車両のドア(200)に設けられた断面略コ字状の枠体(400)に沿って嵌装され、昇降するドアガラス(9)を溝部(27)に案内する、車内側側壁部(22)と車外側側壁部(23)とそれらを連結する連結壁部(24)からなる断面略コ字状の本体部(21)を有し、前記車内側側壁部(22)の車外側面から前記連結壁部(24)側に向かって延び前記ドアガラス(9)に摺接するインナリップ部(25)と、前記車外側側壁部(23)の端部(23a)位置の車内側面から車内側に向かって延び、前記ドアガラス(9)に摺接するアウタリップ部(26)が形成され、前記アウタリップ部(26)は、前記車外側側壁部(23)の端部(23a)位置の車内側面から前記連結壁部(24)側に向かって延び前記インナリップ部(25)に相対向する内当てリップ(26X)と、前記内当てリップ(26X)の付け根部(26d)から内当てリップ(26X)の延びる方向に対して略垂直で前記連結壁部(24)側とは逆側に延びる外当てリップ(26Y)からなる二股状に構成されたグラスラン(20)であって、
前記インナリップ部(25)を断面略S字状に、その付け根部(25b)から中間部(25c)までの部位を前記車内側側壁部(22)側に向かって膨出湾曲させ、かつ前記インナリップ部(25)の中間部(25c)から先端部(25a)までの部位を前記車外側側壁部(23)側に向かって膨出湾曲させるとともに、
前記ドアガラス(9)が前記溝部(27)内に案内される前の状態で、前記インナリップ部(25)の前記連結壁部(24)側とは逆側の面において前記湾曲の方向が切り替わる変位点(R)を、前記アウタリップ部(26)の外当てリップ(26Y)の先端部(26a)よりも前記連結壁部(24)側に位置するように設定して
なり、
さらに、前記内当てリップ(26X)の付け根部(26d)の前記連結壁部(24)側の肉厚(D2)を薄くするか又は車内側からノッチ(28)を設けて前記内当てリップ(26X)を前記連結壁部(24)側に回動させる折れ点(P)を形成し、
前記内当てリップ(26X)の付け根部(26d)の肉厚(D1)を、前記折れ点(P)の部位における肉厚(D2)よりも厚くするとともに、前記外当てリップ(26Y)の付け根部(26b)の肉厚(D4)を、その外当てリップ(26Y)の先端部(26a)の肉厚(D3)よりも薄くし、
前記ドアガラス(9)が前記溝部(27)内に案内されて前記内当てリップ(26X)に摺接すると、前記内当てリップ(26X)を前記折れ点(P)を中心に前記連結壁部(24)側に回動させるとともに、その動きに追従して前記外当てリップ(26Y)を前記ドアガラス(9)側に近づけてドアガラス(9)に摺接させ、さらに前記外当てリップ(26Y)の先端部(26a)を前記ドアガラス(9)に沿って前記連結壁部(24)側とは逆側に向けて撓み移動するようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、前記外当てリップ(26Y)の先端部(26a)に設ける、前記ドアガラス(9)の表面に平行な仮想平行線(HL)を室内側へ移動させた際に前記変位点(R)と交差する位置までの移動距離(CL)が前記ドアガラス(9)の厚み(GT)の4分の1以上あることを特徴としている。
【0014】
また、本発明のグラスランは、車両のドア(200)に設けられた断面略コ字状の枠体(400)に沿って嵌装され、昇降するドアガラス(9)を溝部(27)に案内する、車内側側壁部(22)と車外側側壁部(23)とそれらを連結する連結壁部(24)からなる断面略コ字状の本体部(21)を有し、前記車内側側壁部(22)の車外側面から前記連結壁部(24)側に向かって延び前記ドアガラス(9)に摺接するインナリップ部(25)と、前記車外側側壁部(23)の端部(23a)位置の車内側面から車内側に向かって延び、前記ドアガラス(9)に摺接するアウタリップ部(26)が形成され、前記アウタリップ部(26)は、前記車外側側壁部(23)の端部(23a)位置の車内側面から前記連結壁部(24)側に向かって延び前記インナリップ部(25)に相対向する内当てリップ(26X)と、前記内当てリップ(26X)の付け根部(26d)から内当てリップ(26X)の延びる方向に対して略垂直で前記連結壁部(24)側とは逆側に延びる外当てリップ(26Y)からなる二股状に構成されたグラスラン(20)であって、
前記インナリップ部(25)を断面略S字状に、その付け根部(25b)から中間部(25c)までの部位を前記車内側側壁部(22)側に向かって膨出湾曲させ、かつ前記インナリップ部(25)の中間部(25c)から先端部(25a)までの部位を前記車外側側壁部(23)側に向かって膨出湾曲させるとともに、
前記ドアガラス(9)の組付け時に前記ドアガラス(9)を前記溝部(27)内へ挿入する際に、前記ドアガラス(9)の端面(9a)を前記インナリップ部(25)の付け根部(25b)から先端部(25a)側に向けて摺動させたときに前記ドアガラス(9)が前記アウタリップ部(26)の外当てリップ(26Y)に当接する正に直前の状態で、前記インナリップ部(25)の前記連結壁部(24)側とは逆側の面において前記湾曲の方向が切り替わる変位点(R)を、前記アウタリップ部(26)の外当てリップ(26Y)の先端部(26a)よりも前記連結壁部(24)側に位置するように設定して
なり、
さらに、前記内当てリップ(26X)の付け根部(26d)の前記連結壁部(24)側の肉厚(D2)を薄くするか又は車内側からノッチ(28)を設けて前記内当てリップ(26X)を前記連結壁部(24)側に回動させる折れ点(P)を形成し、
前記内当てリップ(26X)の付け根部(26d)の肉厚(D1)を、前記折れ点(P)の部位における肉厚(D2)よりも厚くするとともに、前記外当てリップ(26Y)の付け根部(26b)の肉厚(D4)を、その外当てリップ(26Y)の先端部(26a)の肉厚(D3)よりも薄くし、
前記ドアガラス(9)が前記溝部(27)内に案内されて前記内当てリップ(26X)に摺接すると、前記内当てリップ(26X)を前記折れ点(P)を中心に前記連結壁部(24)側に回動させるとともに、その動きに追従して前記外当てリップ(26Y)を前記ドアガラス(9)側に近づけてドアガラス(9)に摺接させ、さらに前記外当てリップ(26Y)の先端部(26a)を前記ドアガラス(9)に沿って前記連結壁部(24)側とは逆側に向けて撓み移動するようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、この動作状態にあっても前記外当てリップ(26Y)の先端部(26a)に設ける、前記ドアガラス(9)の表面に平行な仮想平行線(HL)を室内側へ平行移動させた際に前記変位点(R)と交差する位置までの移動距離(CL)が前記ドアガラス(9)の厚み(GT)の4分の1以上あることを特徴としている。
【0016】
また、本発明のグラスランは、前記インナリップ部(25)の付け根部(25b)における前記連結壁部(24)側とは逆側の面に摺動材(30)を設けたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明のグラスランのドアガラス組付方法は、車両のドア(200)に設けられた断面略コ字状の枠体(400)に沿って嵌装され、昇降するドアガラス(9)を溝部(27)に案内する、車内側側壁部(22)と車外側側壁部(23)とそれらを連結する連結壁部(24)からなる断面略コ字状の本体部(21)を有し、前記車内側側壁部(22)の車外側面から前記連結壁部(24)側に向かって延び前記ドアガラス(9)に摺接するインナリップ部(25)と、前記車外側側壁部(23)の端部(23a)位置の車内側面から車内側に向かって延び、前記ドアガラス(9)に摺接するアウタリップ部(26)が形成され、前記アウタリップ部(26)は、前記車外側側壁部(23)の端部(23a)位置の車内側面から前記連結壁部(24)側に向かって延び前記インナリップ部(25)に相対向する内当てリップ(26X)と、前記内当てリップ(26X)の付け根部(26d)から内当てリップ(26X)の延びる方向に対して略垂直で前記連結壁部(24)側とは逆側に延びる外当てリップ(26Y)からなる二股状に構成され、
前記インナリップ部(25)を断面略S字状に、その付け根部(25b)から中間部(25c)までの部位を前記車内側側壁部(22)側に向かって膨出湾曲させ、かつ前記インナリップ部(25)の中間部(25c)から先端部(25a)までの部位を前記車外側側壁部(23)側に向かって膨出湾曲させるとともに、
前記インナリップ部(25)の前記連結壁部(24)側とは逆側の面において前記湾曲の方向が切り替わる変位点(R)を、前記アウタリップ部(26)の外当てリップ(26Y)の先端部(26a)よりも前記連結壁部(24)側に位置するように設定してなるグラスラン(20)に対して前記ドアガラス(9)を組付ける方法であって、
前記ドアガラス(9)をグラスラン(20)の溝部(27)内へ挿入するには、前記ドアガラス(9)の端面(9a)を前記インナリップ部(25)の付け根部(25b)に当接させた後、前記ドアガラス(9)を前記インナリップ部(25)の付け根部(25b)から先端部(25a)側に向けて摺動させつつ、前記ドアガラス(9)の車外側面を前記アウタリップ部(26)の外当てリップ(26Y)の車内側面から前記アウタリップ部(26)の内当てリップ(26X)の車外側面に当接させるとともに、前記ドアガラス(9)の車内側面を前記インナリップ部(25)に当接させて前記ドアガラス(9)を保持するようにしたことを特徴とする。
【0019】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0020】
本発明のグラスラン及びそのグラスランのドアガラス組付方法によれば、インナリップ部を断面略S字状にし、インナリップ部の連結壁部側とは逆側の面において断面略S字状の湾曲の方向が切り替わる変位点を、アウタリップ部の外当てリップの先端部よりも連結壁部側に位置するように設定したので、ドアガラスの端面をインナリップ部の付け根部に当接させた後にインナリップ部上を先端部側に向けて摺動させることで、ドアガラスの車外側面は外当てリップの先端部の車内側面に確実に当接し、アウタリップ部の外当てリップの先端部を従来例(
図12)で示したように、連結壁部側に巻き込むことはない。
これにより、優れた遮音機能及び防水機能を有するグラスランが提供される。また、断面形状において、特に外当てリップの長さを長くしても巻き込まれることはないので、例えば、外当てリップの長さを内当てリップの長さよりも長くすることで十分なシール性を確保することもできる。
【0021】
また、インナリップ部の断面形状を断面略S字状にすることにより、ドアガラスはインナリップ部上を円滑に摺動するのでグラスランに対するドアガラスの挿入性は良好となり、ドアガラスがインナリップ部の付け根部に引っ掛かることも防止される。
よって、従来例のように、ベルトラインの位置より下で外当てリップの先端側を部分的に切り欠く必要はないので生産性が向上する。なお、外当てリップの先端側を部分的に切り欠かない場合においても、組付けラインでドアガラスを挿入するための専用の治具を使用する必要性はないので、製造時間が余分にかかることもなく組付け作業性も向上する。
【0022】
また、ドアガラスをグラスランの溝部内へ挿入するとき、ドアガラスの端面は、車内側側壁部側に向かって膨出湾曲したインナリップ部の付け根部から中間部までの部位を摺動しつつアウタリップ部の外当てリップに徐々に近づいて当接するといったように、ドアガラスは、アウタリップ部の外当てリップの車内側面に対して略直角な方向から当接する。すなわち、ドアガラスは、アウタリップ部の外当てリップの車内側面に対して、従来例で示したような、全体の断面形状が車内側側壁部から車外側側壁部側に向かって膨出湾曲するように延びるインナリップ部の場合と比較して、鈍角な方向から当接するので、アウタリップ部の外当てリップの先端部が連結壁部側に巻き込まれることは一層防止される。
【0023】
さらに、インナリップ部の中間部から先端部までの部位は、車外側側壁部側に向かって膨出湾曲する断面形状であり、インナリップ部の付け根部から中間部までの部位とは湾曲方向が逆向きであるので、従来例で示したような、全体の断面形状が車内側側壁部から車外側側壁部側に向かって膨出湾曲するように延びるインナリップ部の場合と比較して、ドアガラスがグラスランの溝部内に挿入された後に、インナリップ部の中間部から先端部までの部位から受ける弾性変形による反力は大きい。
よって、従来例と比較してドアガラスはインナリップ部とアウタリップ部間で確実かつ安定した状態で保持される。
【0024】
また、本発明によれば、インナリップ部の付け根部における連結壁部側とは逆側の面に摺動材を設けるので、ドアガラスの摺動をさらに円滑にすることができる。
【0025】
また、本発明によれば、アウタリップ部の内当てリップの付け根部の連結壁部側の肉厚を薄くするか又は車内側からノッチを設けて内当てリップを連結壁部側に回動させる折れ点を形成し、内当てリップの付け根部の肉厚を、折れ点の部位における肉厚よりも厚くするとともに、外当てリップの付け根部の肉厚を、その外当てリップの先端部の肉厚よりも薄くし、ドアガラスが溝部内に案内されて内当てリップに摺接すると、内当てリップを折れ点を中心に連結壁部側に回動させるとともに、その動きに追従して外当てリップをドアガラス側に近づけてドアガラスに摺接させ、さらに外当てリップの先端部をドアガラスに沿って連結壁部側とは逆側に向けて撓み移動するようにしたので、グラスランの溝部に案内されるドアガラスに対して、アウタリップ部側では、内当てリップに加えて外当てリップを十分な荷重で摺接させることができるので、優れた遮音機能及び防水機能が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1乃至
図3を参照して、本発明の実施形態に係るグラスラン20について説明する。
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係るグラスラン20でドアガラス9が組付けの際に案内される様子を段階的に示す、
図9のA−A線拡大断面図であり、最終的にドアガラス9が案内された状態が
図3である。なお、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0028】
本発明の実施形態に係るグラスラン20は、プレスドアタイプのフロントドア200(リヤドア300の場合も同様)のドアパネル200aにスポット溶接で取付けられたドアサッシュ(枠体)400に嵌装され、昇降するドアガラス9を溝部27内に案内するものである。なお、グラスラン20は、従来例(
図9)で示したグラスラン100においてはフロントドア200のドアパネル200aの内部から上方に延び、ベルトラインBLの位置を跨いで上下に連続するように配置されたリヤ側縦辺部12に適用されるものであり、通常、押出成形により形成される。
【0029】
ドアサッシュ400は、
図1に示すように、断面略コ字状で、車外側部401と車内側部402とそれらを連結する連結部403からなる。なお、車内側部402には車外側に向けて突出する突出部402aが形成されている。
【0030】
グラスラン20は、昇降するドアガラス9を案内する溝部27を形成する断面略コ字状の本体部21を有し、その本体部21は、2つの側壁部である車内側側壁部22と車外側側壁部23と、そして車内側側壁部22と車外側側壁部23とを連結する連結壁部24によって形成されている。
車内側側壁部22の端部22aから連結壁部24側に寄った位置の車外側面には、車内側側壁部22から連結壁部24側に向かって先端25a側が延びるインナリップ部25が形成され、車外側側壁部23の端部23a位置の内面、すなわち、車外側側壁部23の端部23aの位置における車内側面には車内側に向かって延びる二股状のアウタリップ部26が形成されている。インナリップ部25とアウタリップ部26は、ドアガラス9を車内側及び車外側から挟持するように設けられ、ドアガラス9の表面に摺接する。
【0031】
アウタリップ部26は、車外側側壁部23の端部23a位置の車内側面から連結壁部24側に向かって延び、インナリップ部25に相対向する内当てリップ26Xと、内当てリップ26Xの付け根部26dから内当てリップ26Xの延びる方向に対して略垂直で連結壁部24側とは逆側に延びる外当てリップ26Yからなるもので、二股状に構成されている。内当てリップ26Xの付け根部26dと外当てリップ26Yの付け根部26bとは連設されている。
【0032】
インナリップ部25は、その断面形状を略S字形状にしてドアガラス9の端面9aをインナリップ部25の付け根部25bから先端部25a側に向けて円滑に摺動させるようにしている。すなわち、インナリップ部25の付け根部25bから中間部25cまでの部位を車内側側壁部22側に向かって近づくように膨出湾曲させ、かつインナリップ部25の中間部25cから先端部25aまでの部位を逆側となる車外側側壁部23側に向かって膨出湾曲させている。これにより、インナリップ部25の付け根部25bから中間部25cまでの部位で、ドアガラス9側の面(連結壁部24側とは逆側の面)は緩やかな凹状曲面部25dが形成される。
そして、ドアガラス9の案内時にアウタリップ部26の外当てリップ26Yの先端部26aを巻き込まないように、ドアガラス9が溝部27内に案内される前の状態(
図1)で、インナリップ部25のドアガラス9側の面(連結壁部24側とは逆側の面)において湾曲(S字のカーブ)の方向、すなわち車内側側壁部22側に向かって近づくように膨出湾曲する方向から車外側側壁部23側に向かって膨出湾曲する方向に湾曲の方向が切り替わる変位点Rを、ドアガラス9の面に垂直で、アウタリップ部26の外当てリップ26Yの先端部26aから車内側側壁部22に降ろした直線Sよりも連結壁部24側に位置するように設定している。
【0033】
また、インナリップ部25の付け根部25bの連結壁部24側の位置Q、すなわち、車内側側壁部22の車外側面と交わるインナリップ部25の付け根部25bにおける連結壁部24側の位置Qには凹状部が形成されインナリップ部25が撓みやすくしている。ここで位置Qはドアガラス9の面に垂直で、アウタリップ部26の外当てリップ26Yの先端部26aから車内側側壁部22に降ろした直線Sよりも連結壁部24側に位置するように設定してある。
【0034】
また、車内側側壁部22には車内側及び車外側に向けてそれぞれリップ部29a,29bが延設されている。車内側側壁部22から車内側に延びるリップ部29aは、ドアサッシュ400の車内側402に設けられた突出部402aによって係止され、車内側側壁部22から車外側に延びるリップ部29bは、ドアガラス9に摺接することで車内側側壁部22側に撓むインナリップ部25の車内側に当接してインナリップ部25を支持するようになっている。また車内側側壁部22の端部22aにおける車内側面には、保持リップ部29cが設けられ、その保持リップ部29cと車内側側壁部22の間に、ドアサッシュ400の車内側402とドアパネル200aを重ねたものを挿入して、ドアサッシュ400に嵌装されたグラスラン20は保持される。なお、車内側側壁部22の車内側及び車外側,車外側側壁部23の車内側及び車外側,リップ29bの車外側,保持リップ部29cの車外側にはそれぞれ滑り止め用の凹凸部29d,29e,29f,29g,29h,29iが形成されている。
【0035】
内当てリップ26X側について説明すると、内当てリップ26Xの付け根部26dの連結壁部24側には、車外側側壁部23の車内側からノッチ28を設けることによって折れ点Pが形成され、薄い肉厚D2にされている。なお、ノッチ28を設けるのではなく肉厚を薄くするだけで折れ点Pを形成してもよい。
しかも、折れ点Pの位置は、ドアサッシュ400を成す車外側部401の端部401aから連結壁部24側とは逆側(
図1では端部401aから離間する左側)に遠ざけた位置でしかも車外側部401の車内側面を延長した線Lの上の位置に設定されている。つまり、車外側側壁部23の端部23a側を、車外側部401の端部401aで係止させるように、車外側側壁部23が延びる方向(車両の前後方向)から車外側に一旦湾曲させた後、再度車内側に向かって湾曲させ、湾曲方向が切り替わる部位にノッチ28を設け、その端部23aの車内側面から内当てリップ26Xを突設させている。
これによって、折れ点Pを中心にして内当てリップ26Xを連結壁部24側に円滑に回動させることができるようにしてある。このとき、車外側側壁部23の端部23a側は車外側部401の端部401aで係止されているので、内当てリップ26Xを安定した状態で回動させることができる。
【0036】
また、内当てリップ26Xの付け根部26dの肉厚D1を、折れ点Pの部位における肉厚D2よりも厚くなるように設定している。
さらに、内当てリップ26Xは、ドアガラス9に摺接したときに車外側側壁部23に当接しないように車外側側壁部23と、それに相対向する内当てリップ26Xの車外側面の間隔Mを広く設定している。
【0037】
次に外当てリップ26Y側について説明すると、外当てリップ26Yの付け根部26bの肉厚D4を、その外当てリップ26Yの先端部26aの肉厚D3よりも薄くなるように設定している。この外当てリップ26Yの付け根部26bの肉厚D4については、その外当てリップ26Yの車内側を切り欠くようにして形成されるが、車内側からノッチを設けることにより形成してもよい。また車外側を切り欠く又は車外側からノッチを設けることにより形成してもよい。なお、外当てリップ26Yはその先端部26aの肉厚D3よりも中央部の肉厚の方を厚くしている。
また、外当てリップ26Yは、ドアガラス9が案内される前の状態では内当てリップ26Xとは異なり、その先端部26aはインナリップ部25に対して当接することなく、インナリップ部25との間にドアガラス9が入り込んでくる隙間を設けている。この隙間とは、前記外当てリップ26Yの先端部26aに設ける、ドアガラス9の表面に平行な仮想平行線HLを室内側へ平行移動させた際に前記変位点Rと交差する位置までの移動距離CLがドアガラス9の厚みGTの4分の1以上あればよく、本実施形態ではドアガラス9の厚みGTよりも大きく設定している。
【0038】
また、本実施形態では、内当てリップ26Xの断面形状における長さを、外当てリップ26Yの断面形状における長さと略同一にしている。また、内当てリップ26Xの中央部から先端部にかけての肉厚は外当てリップ26Yにおいて肉厚の最も薄い、外当てリップ26Yの付け根部26bの肉厚D4と略同一にしている。
【0039】
グラスラン20の本体部21,インナリップ部25及びアウタリップ部26の材質としては、EPDMゴム,オレフィン系熱可塑性エラストマー,スチレン系熱可塑性エラストマーなどがあげられるが、特に限定されるものではない。また製品としては、これら材質の内の一つによる単一構成であってもよいし、2種類以上を複合させた構成でもよい。また発泡させたものであってもよい。
【0040】
次に、グラスラン20に案内されるドアガラス9の組付方法について説明する。
ドアガラス9をグラスラン20の溝部27内へ挿入するには、
図1に示すように、ドアガラス9の端面9aがインナリップ部25の付け根部25bに当接するようにドアガラス9を車内側に位置させる。
そして、ドアガラス9の端面9aをインナリップ部25の付け根部25bに当接させた後、ドアガラス9の挿入にしたがってドアガラス9をインナリップ部25の付け根部25bから先端部25a側に向けて摺動させる。すなわち、ドアガラス9の端面9aをインナリップ部25に形成された凹状曲面部25dに当接させた状態で沿わせ、さらにインナリップ部25の中間部25cから先端部25aに向けてインナリップ部25の連結壁部24側とは逆側の面に当接させた状態で沿わせるようにグラスラン20の溝部27内に案内(挿入)させる。
【0041】
これにより、ドアガラス9の車外側面は、
図2に示すように、先ず外当てリップ26Yの先端部26aの車内側面に当接する。このとき、ドアガラス9の端面9aがインナリップ部25に摺動することでインナリップ部25は連結壁部24側から車内側側壁部22側に向かって近づくように大きく撓むようにしたことに加え、インナリップ部25のドアガラス9側の面(連結壁部24側とは逆側の面)において湾曲の方向が切り替わる変位点Rを、アウタリップ部26の外当てリップ26Yの先端部26aよりも連結壁部24側に位置するように設定することで、インナリップ部25上を摺動するドアガラス9の端面9aが外当てリップ26Yの先端部26aに近接すると、いかに外当てリップ26Yの先端部26aとインナリップ部の間に隙間が無くとも、ドアガラス9の車外側面は外当てリップ26Yの先端部26aの車内側面に確実に当接し、その先端部26aを従来例(
図11)で示したように、連結壁部24側に巻き込むことはない。
なお、ドアガラス9の端面9aがインナリップ部25に摺動することでインナリップ部25は連結壁部24側から車内側側壁部22側に向かって近づくように撓む。この撓みは特に湾曲の方向が切り替わる変位点Rに近づくにつれ大きくなる。本実施形態では変位点Rをインナリップ部25の長さの略中央部に設けているので、ドアガラス組付け時の挿入の際の撓みやすさと後述するドアガラス9の保持力の機能を両立している。また、インナリップ部25の付け根部25bの連結壁部24側の位置Q、すなわち、車内側側壁部22の車外側面と交わるインナリップ部25の付け根部25bにおける連結壁部24側の位置Qには凹状部が形成され、ここで位置Qはドアガラス9の面に垂直で、アウタリップ部26の外当てリップ26Yの先端部26aから車内側側壁部22に降ろした直線Sよりも連結壁部24側に位置するように設定してあることからインナリップ部25は撓みやすい。さらに、本実施形態では、外当てリップ26Yの先端部26aはインナリップ部25から離間して隙間を設けるようにされているので、ドアガラス9の車外側面は外当てリップ26Yの先端部26aの車内側面に接触しないか又は接触するとしてもドアガラス9によって外当てリップ26Yの先端部26aを連結壁部24側に巻き込む恐れはない。ここで、仮に従来例(
図10)で示したように、外当てリップ26Yの先端部26aがインナリップ部25に当接するようにしても、ドアガラス9の端面9aがインナリップ部25に摺動することでインナリップ部25は連結壁部24側から車内側側壁部22側に向かって近づくように大きく撓むようにしたことと、インナリップ部25のドアガラス9側の面において湾曲の方向が切り替わる変位点Rを、アウタリップ部26の外当てリップ26Yの先端部26aよりも連結壁部24側に位置するように設定したことにより外当てリップ26Yの先端部26aを巻き込む可能性は極めて低い。
【0042】
またドアガラス9の端面9aは、車内側側壁部22側に向かって膨出湾曲したインナリップ部25の付け根部25bから中間部25cの変位点Rまでの部位を摺動しつつアウタリップ部26の外当てリップ26Yに徐々に近づいて当接するといったように、ドアガラス9は、アウタリップ部26の外当てリップ26Yの車内側面に対して略直角な方向から当接する。すなわち、ドアガラス9は、アウタリップ部26の外当てリップ26Yの車内側面に対して、従来例(
図10)で示したような、全体の断面形状が車内側側壁部2から車外側側壁部3側に向かって膨出湾曲するように延びるインナリップ部5の場合と比較して、鈍角な方向から当接するので、アウタリップ部26の外当てリップ26Yの先端部26aが連結壁部24側に巻き込まれることは一層防止される。
また、インナリップ部25は断面形状が略S字形状に形成されるように特にその付け根部25bには凹状曲面部25dが形成されているので、ドアガラス9はインナリップ部25上を円滑に摺動しその際にドアガラス9がインナリップ部25の付け根部25bに引っ掛かるといった問題もない。
【0043】
特に、外当てリップ26Yの先端部26aとインナリップ25の変位点Rまでの間に隙間があり、この隙間が、ドアガラス9の表面に平行な仮想平行線HLを前記外当てリップ26Yの先端部26aに設けて、室内側へ平行移動させた際に、前記変位点Rと交差する位置までの移動距離CLがドアガラス9の厚みGTの4分の1以上あればよく、本実施形態ではドアガラス9の厚みGTよりも大きく設定している。
【0044】
さらにドアガラス9が溝部27内に案内されていくと、ドアガラス9は、内当てリップ26Xに当接する。このとき、ドアガラス9の車外側面には内当てリップ26X及び外当てリップ26Yが当接している。
そして、さらにドアガラス9が溝部27内に案内されていくに従って、ドアガラス9は内当てリップ26Xに摺接し、内当てリップ26Xの先端部26aから付け根部26d側に力が作用して内当てリップ26Xは折れ点Pを中心に連結壁部24側、
図1では反時計回りに回動し、ドアガラス9に対する内当てリップ26Xの接触面積が増加する。内当てリップ26Xが回動すると、内当てリップ26Xの付け根部26dと外当てリップ26Yの付け根部26bとは連設されているため、内当てリップ26Xの動きに追従して外当てリップ26Yもドアガラス9側に近づくように回動してドアガラス9に摺接する。このとき、外当てリップ26Yは、内当てリップ26Xの回動前からドアガラス9に当接しているので外当てリップ26Yには折れ点Pを中心に連結壁部24側、
図1では反時計回りに回動する力が作用し、その力がドアガラス9に伝えられる。これによって、ドアガラス9が内当てリップ26Xに最初に当接したときから、ドアガラス9にかかる内当てリップ26X及び外当てリップ26Yからの荷重は大きくなる。
【0045】
そして、さらにドアガラス9が溝部27内に案内されていくと、外当てリップ26Yはその付け根26b側の肉厚が薄くされているので外当てリップ26Yの先端部26aはドアガラス9に沿って連結壁部24側とは逆側(
図1の左側)に向けて撓み移動する。
また、ドアガラス9の車内側面にはインナリップ部25が当接して、これによりドアガラス9は、インナリップ部25とアウタリップ部26間で保持される。このとき、インナリップ部25の中間部25cから先端部25aまでの部位は、車外側側壁部23側に向かって膨出湾曲する断面形状であり、インナリップ部25の付け根部25bから中間部25cまでの部位とは湾曲方向が逆向きであるので、従来例(
図10)で示したような、全体の断面形状が車内側側壁部2から車外側側壁部3側に向かって膨出湾曲するように延びるインナリップ部5の場合と比較して、ドアガラス9がグラスラン20の溝部27内に挿入された後に、インナリップ部25の中間部25cから先端部25aまでの部位から受ける弾性変形による反力は大きい。よって、従来例と比較してドアガラス9はインナリップ部25とアウタリップ部26間で確実かつ安定した状態で保持される。
【0046】
以上のように構成された本実施形態に係るグラスラン20によれば、ドアガラス9の閉時にドアガラス9がグラスラン20の溝部27に案内(挿入)される際に、外当てリップ26Yの先端部26aを連結壁部24側に巻き込む恐れはないので、断面形状において外当てリップ6Yの長さを長くして十分なシール性を確保することができる。
なお、本実施形態では、断面形状において外当てリップ6Yの長さと内当てリップ6Xの長さを略同一としたが、内当てリップ6Xの長さに比較して外当てリップ6Yの長さを長くしてもドアガラス9によって巻き込まれることはないので、優れた遮音機能及び防水機能が得られる。
【0047】
また、ドアガラス9はインナリップ部25上を円滑に摺動し、グラスラン20に対するドアガラス9の挿入性は良好であるので、従来例のように、ベルトラインBLの位置より下で外当てリップ26Yの先端側を部分的に切り欠く必要はなく、生産性が向上し、また、外当てリップ6Yの先端側を部分的に切り欠かない場合においても、組付けラインでドアガラス9を挿入するための専用の治具を使用する必要は特にないため製造時間が余分にかかることもなく、組付け作業性も向上する。
【0048】
また、外当てリップ26Yの付け根部26bが連設される内当てリップ26Xの付け根部26dの肉厚D1は、折れ点Pの部位における肉厚D2よりも厚く設定しているので、内当てリップ26Xの回動に対する外当てリップ26Yの追従性はよく、内当てリップ26Xと外当てリップ26Yは一体的に回動する。
よって、ドアガラス9が閉じられる場合、ドアガラス9が内当てリップ26Xに当接した直後から内当てリップ26Xと外当てリップ26Yは一体的に回動しはじめ、ドアガラス9閉時の初期段階からドアガラス9に内当てリップ26X及び外当てリップ26Yからの荷重がかけられるので、ドアガラス9のバタツキを早期に解消することができる。
さらに、外当てリップ26Yの付け根部26bの肉厚D4を先端部26aの肉厚D3よりも薄く設定することで、ドアガラス9に対して内当てリップ26Xと外当てリップ26Yが一体的に回動した後に、外当てリップ26Yの先端部26aはドアガラス9に沿って連結壁部24側とは逆側に向けて撓み移動する。
【0049】
また、折れ点Pを、ドアサッシュ400の車外側部401の端部401aから連結壁部24側とは逆側に遠ざけた位置でしかも車外側部401の車内側面を延長した線Lの上の位置に形成したので、従来例のように、折れ点に相当する部位(ノッチ8)を、車外側部401の内側に設けたものと比較して、断面形状において内当てリップ26X及び外当てリップ26Yの長さを一層長くすることができるので、その分、撓み量を大きくすることができる。
つまり、特に内当てリップ26Xにとっては、断面形状において内当てリップ26Xの長さを長くすることで、内当てリップ26Xが撓んだ際に車外側側壁部23の端部23aの車内側に当接することを防止することができる。
【0050】
これらにより、ドアガラス9閉時にドアガラス9に対して内当てリップ26X及び外当てリップ26Yから略一定した荷重をかけることができ、ドアガラス9を安定した状態で保持することができる。
【0051】
なお、本発明の実施形態では、内当てリップ26Xを連結壁部24側に回動させる折れ点Pの位置を、ドアサッシュ400の車外側部401の車内側面を延長した線Lの上の位置に設定したが、車外側側壁部23の端部23aを車外側に大きく湾曲させて、ドアサッシュ400の車外側部401の車内側面を延長した線Lより車外側の位置に設定するようにしてもよい。これによれば、断面形状において内当てリップ26X及び外当てリップ26Yの長さを長くすることができるので、その分、撓み量を大きくすることができるし、内当てリップ26Xが撓んだ際に車外側側壁部23の端部23aの車内側に当接することを防止することもできる。
また、逆に折れ点Pの位置を従来例(
図11)で示したような位置にしても、ドアガラス9がグラスラン20の溝部27に案内(挿入)される際に、外当てリップ26Yの先端部26aを連結壁部24側に巻き込む恐れはなく、しかもドアガラス9の挿入性は良好である。
【0052】
また、本発明の実施形態では、インナリップ部25の断面形状を特定することによってドアガラス9がインナリップ部25上を引っ掛かることなく円滑に摺動するようにしたが、
図4乃至
図6に示すように、さらにインナリップ部25の付け根部25bにおける連結壁部24側とは逆側の面に摺動材30を貼着や塗装などによって設けることによってドアガラス9の摺動をさらに円滑になるようにすることもできる。摺動材30の貼着は、グラスラン20本体とともに押出成形時に形成しても、別体の摺動材30を後から貼り付けるものであってもよい。
図4は、インナリップ部25のドアガラス9側の面において湾曲の方向が切り替わる変位点Rからインナリップ部25の付け根部25bに形成した凹状曲面部25d上の範囲だけに摺動材30を設けたもので、また、
図5は、
図4に示した摺動材30を車内側側壁部22の端部22a側を外側から覆うように延長して、乗降の際に人が接触しても滑ってグラスラン20の外れを防止できるようにしたものであり、さらに、
図6は、
図5に示した摺動材30を保持リップ部29cの先端部まで覆うようにして、インナリップ部25の意匠性を向上させたものである。
【0053】
また、本発明の実施形態では、ドアガラス9の案内時にアウタリップ部26の外当てリップ26Yの先端部26aを巻き込まないように、ドアガラス9が溝部27内に案内される前の状態(
図1)で、インナリップ部25のドアガラス9側の面(連結壁部24側とは逆側の面)において湾曲の方向が切り替わる変位点Rを、ドアガラス9の面に垂直で、アウタリップ部26の外当てリップ26Yの先端部26aから車内側側壁部22に降ろした直線Sよりも連結壁部24側に位置するように設定したが、
図7に示すように、ドアガラス9が溝部27内に案内される前の状態(
図1)で、インナリップ部25のドアガラス9側の面(連結壁部24側とは逆側の面)において湾曲の方向が切り替わる変位点Rを、ドアガラス9の面に垂直で、アウタリップ部26の外当てリップ26Yの先端部26aから車内側側壁部22に降ろした直線Sと同じ位置、あるいは、連結壁部24側とは逆側(
図7では左側)に少し位置するように設定することができる。ただし、この場合、ドアガラス9の組付け時にドアガラス9をグラスラン20の溝部27内へ挿入する際、ドアガラス9の端面9aをインナリップ部25の付け根部25bから先端部25a側に向けて摺動させたときにドアガラス9がアウタリップ部26の外当てリップ26Yに当接する正に直前の状態で、インナリップ部25の撓み量を考慮してその変位点Rを、アウタリップ部26の外当てリップ26Yの先端部26aよりも連結壁部24側に位置させるようにする設定する必要がある。
【0054】
また、本発明の実施形態では、
図1に示すように、インナリップ部25を、車内側側壁部22の端部22aから連結壁部24側に寄った位置の車外側面から延びるようにしたが、
図7に示すように、車内側側壁部22の端部22aの車外側面から直接延びるようにしてもよい。
このときも、ドアガラス9をグラスラン20の溝部27内へ挿入するには、ドアガラス9の端面9aをインナリップ部25の付け根部25bに当接させた後、ドアガラス9をインナリップ部25の付け根部25bから先端部25a側に向けて摺動させる。
また、本発明の実施形態では、
図1に示すように、インナリップ部25を撓みやすくするため、インナリップ部25の付け根部25bの連結壁部24側の位置Qに凹状部を形成したが、
図7に示すように、連結壁部24側の位置Qに凹状部を形成しないようにすることもできる。