特許第5976412号(P5976412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976412
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】トラバース装置およびトラバース方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/28 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   B65H54/28 L
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-139146(P2012-139146)
(22)【出願日】2012年6月20日
(65)【公開番号】特開2014-1067(P2014-1067A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】394010506
【氏名又は名称】金井 宏彰
(74)【代理人】
【識別番号】100093698
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕史
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−097933(JP,U)
【文献】 実開平05−044958(JP,U)
【文献】 特開平06−009151(JP,A)
【文献】 特開平04−133971(JP,A)
【文献】 米国特許第04202512(US,A)
【文献】 国際公開第95/018058(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周にガイド溝を有するガイドローラーを介して供給される線材のリールに対する巻取り位置を前記ガイドローラーおよび前記リールの少なくとも一方の移動に伴ってリール軸線方向に移動させつつリールに線材を整列巻きで巻き取らせるトラバース装置であって、
前記ガイドローラーを、ローラー端面とリールフランジ部との距離がリール軸線方向に第1の距離を越える位置では、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ちつつ、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部の内側に入り込んでリール胴部外周の巻き面との距離が小さくなる第1の位置に保持し、ガイドローラーがリールフランジ部に近づいて、ローラー端面とリールフランジ部との距離がリール軸線方向に前記第1の距離となる位置に達してから、ローラー端面とリールフランジ部との距離がリール軸線方向に前記第1の距離より小さい第2の距離となる位置に達するまで、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ったまま、リール軸線方向の移動に伴ってリール径方向の外側へ向けて漸次移動させ、ローラー端面とリールフランジ部との距離がリール軸線方向に前記第2の距離となる位置に達すると、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部より外側へ出てリールフランジ部と接触しない第2の位置に保持するよう構成したことを特徴とするトラバース装置。
【請求項2】
前記第1の距離が20〜40mmで、前記第2の距離が1〜10mmであることを特徴とする請求項1記載のトラバース装置。
【請求項3】
前記第1の位置は、ローラー外縁とリール胴部外周の巻き面との距離が0mmを超えて30mm以下の範囲の位置であることを特徴とする請求項1または2に記載のトラバース装置。
【請求項4】
前記ガイドローラーのガイド溝の巾寸法は、線材の巾寸法+0.1〜0.50mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のトラバース装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のトラバース装置を使用し、前記ガイドローラーを、リールフランジ部際から離れた位置では、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ちつつ、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部の内側に入り込んでリール胴部外周の巻き面との距離が小さくなる第1の位置に保持し、リールフランジ部際の位置では、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ったまま、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部よりも外側へ出てリールフランジ部と干渉しなくなる第2の位置まで移動させることを特徴とするトラバース方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールコード、ビードワイヤ、ピストンリング用線などの金属線、電線などの被覆線、その他ロープ等の線材(線状材料)を整列巻きでリールに巻き取るためのトラバース装置およびトラバース方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線材をリールに巻き取る方法として、リールフランジ部と干渉しないようにリール胴部から径方向に距離を置いて配置したガイドローラー(トラバースガイドローラー)を介して線材をリール胴部に導き、リールあるいはガイドローラーをリール軸方向に移動させて巻取り位置を移動(トラバース)させながら、リールを回転させて線材を巻き取る方法が従来から知られている。しかし、この方法では、リール胴部外周の巻き面とガイドローラーとの間にかなりの距離があるため、遊びができて、リール胴部上の線材の巻取り位置の移動とリールあるいはガイドローラーの移動とにずれが生じ、特にリール胴部両端での反転時のトラバース調整が容易でなく、巻き面をコントロールできない。そのため、この方法で整列巻きを行おうとしても、狙い通りの巻き面にならないで、線材が積み上がり、一定量積み上がると崩れて、それがモツレ(絡まり)の原因となる。また、この方法で綾巻きにした場合、巻きピッチが大きいため、巻き面とガイドローラーとの距離が大きいことによる遊びが巻き面の出来具合に及ぼす影響は比較的小さいが、この場合は、繰り出した線材が線と線の間に食い込むことから、線材にキズが発生しやすく、また、巻き厚が大きくなって、内部に空間ができることから、荷作業の際に荷崩れしやすく、それがまた、モツレ(絡まり)やキズの原因となる。
【0003】
また、このように巻き面とガイドローラーとの距離が大きいと、巻き面をコントロールできす、整列巻きにできないことから、大径の円盤状ガイドローラーを使用し、ローラー外縁を巻き面に極力近づけて線材を巻き取る方法も考えられている。この方法によれば、ローラー外縁を巻き面に極力近づけることで、リール胴部上の線材の巻取り位置の移動とリールあるいはガイドローラーの移動とを略一致させることができる。しかし、この方法では、線材をリールフランジ際まで巻き取ろうとした時に、リールフランジ部に加工精度のバラツキや変形があるためにガイドローラーがリールフランジ部とぶつかってしまうおそれがある。リールは何度も使用することによって変形し、また、焼鈍熱処理の際は線材と一緒に炉に入れるため変形が避けられない。そのため、ぶつからないようにするためにトラバースの設定を巻き取り作業の度に調整する必要があって、それに時間がかかり、また、ぶつからないように設定に余裕を持たせると、フランジ際への寄りがあまくなって、整列巻きとは程遠いタイコ巻き形状になってしまう。
【0004】
また、ローラー外縁を巻き面に近づけながら、リールフランジ際まで線材を巻き取れるようにする方法としては、ガイドローラーをリール胴部外周から遠い側のロール外縁側に位置する回転軸を回転中心としてリール軸線方向に傾斜可能に配置し、リール胴部上の両端フランジ際近傍でのトラバース反転時に、リールの軸線方向移動を止め、ガイドローラーを首振りさせてローラー外縁がリール側でリールフランジ際に近づくよう傾斜させつつ、リールの回転により線材をフランジ際に巻き取り、リール胴部の中間位置では、リールを軸方向へ一定速度で連続的に移動させながら、ガイドローラーを首振りさせて線材を1周ずつ巻き取るようにする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、リール胴部両端でガイドローラーを傾けて、フランジ際まで線材を巻き取ることができ、整列巻きが可能である。しかし、この方法では、トラバース反転時のみならず、リール胴部の中間位置でも、ガイドローラーを首振りさせる度に、ガイドローラーがリールから離反しないよう、傾きに合わせてガイドローラーの回転軸をリール胴部に対し近づけたり遠ざける方向へ移動させることが必要で、制御が複雑になる。また、ガイドローラーを傾けると、例えばリールが一定速度で移動していたのではトラバースのピッチが変わってくる。そのため、トラバースのピッチを一定にするためには、首振りの度にリール側あるいはガイドローラー側でピッチ調整をしなければならず、その制御が複雑で高価になる。
【0005】
また、ガイドローラーをリール胴部外周から遠い側のロール外縁側に位置する回転軸を回転中心としてリール軸線方向に傾斜可能に配置し、ローラー外縁をリール胴部に近接する側でトラバース方向前方のリールフランジ部に近づく方向に傾斜させる点では上記方法と同様であるが、ガイドローラーの傾斜方向をリール胴部の中間位置で反対側に切り換え、切換え時以外はガイドローラーを常に傾斜させた状態で、例えばリールの軸線方向移動によりトラバースさせつつ、リールを回転させて線状材料を巻き取らせる方法も考えられている。この方法によれば、ガイドローラーは常に傾斜させた状態でトラバースさせるので、ガイドローラーの傾きに合わせてガイドローラーを進退移動させる必要がなく、また、トラバース1往復の間はガイドローラーの傾斜方向が変わらないので、ピッチ調整の制御も比較的簡単になる。しかしながら、この場合も、ガイドローラーはトラバース1往復の毎に傾斜方向が切り換わり、その際、ガイドローラーは、リール胴部外周から遠い側のロール外縁側に位置する回転中心を中心に回転するので、巻取り物である線材のリール胴部への巻取り位置がリール軸線方向に若干ずれて、トラバースのピッチが変わる。そのため、ピッチを一定にするために、リールあるいはガイドローラーをリール軸方向に移動させる制御が必要で、その制御が簡単でない。
【0006】
そこで、本出願人は、やはりガイドローラーを、ローラー外縁がリール胴部に近接する側でトラバース方向前方のリールフランジ部に近づく方向に傾斜するようリール軸線方向に傾斜可能とするものであるが、そのガイドローラーの傾斜のための回転中心を、リール胴部外周から近い側の外縁側として、リール胴部の中間位置でガイドローラーの傾斜方向を切り換え、ガイドローラーを傾斜させた状態でトラバースさせる装置および方法に着目し、先に出願した(特願2011−210616)。これによれば、傾斜方向を切り換えるときに巻き取り位置がずれることがなく、トラバースのピッチも略一定に維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−180866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来の技術では、リール上の巻き面とガイドローラーとの距離が大きくて、巻き面をコントロールできなかったり、トラバース反転時にガイドローラーがリールフランジ部にぶつかるおそれがあって、線材を整列巻きすることができず、フランジ際で線材にモツレ(絡まり)やキズが生じやすかった。また、ガイドローラーを首振りさせつつフランジ際まで線材を巻き取る方法では、首振りの度にガイドローラーをリール胴部に対し近づけたり遠ざけたりする制御が必要で、その制御が複雑で高価であった。また、ガイドローラーを常に傾斜させ、傾斜方向をトラバースの中間位置で切り換える方法では、ガイドローラーの傾斜のための回転中心をリール胴部外周から近い側の外縁側に設定することで、巻き取り位置のずれによるトラバースピッチの変動を抑制できるため、簡単な制御で線材を整列巻きすることができるが、この場合でも、作業条件によっては、ガイドローラーが傾くことによって巻き取り位置がずれる可能性がある。また、この方法でも、リールが何度も使用されることにより変形し、あるいは熱処理の際に線材と一緒に炉に入れられることにより変形すると、フランジ際でガイドローラがフランジにぶつかる可能性がある。
【0009】
本発明は、線材の整列巻きを簡単、安価且つ確実に行うことのできるトラバース装置およびトラバース方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のトラバース装置は、外周にガイド溝を有するガイドローラーを介して供給される線材のリールに対する巻取り位置をガイドローラーおよびリールの少なくとも一方の移動に伴ってリール軸線方向に移動させつつリールに線材を整列巻きで巻き取らせるトラバース装置であって、ガイドローラーを、リールフランジ部際から離れた位置では、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ちつつ、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部の内側に入り込んでリール胴部外周の巻き面との距離が小さくなる第1の位置に保持し、リールフランジ部際の位置では、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ったまま、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部よりも外側へ出てリールフランジ部と接触しない第2の位置まで移動させるよう構成したものである。
【0011】
このトラバース装置は、線材のリールに対する巻取り位置をガイドローラーおよびリールの少なくとも一方をリール軸方向に移動させて巻取り位置を整列巻きのピッチで移動(トラバース)させながらリールに線材を巻き取らせる過程で、ガイドローラーを、リールフランジ部際から離れた位置では、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ちつつ、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部の内側に入り込んでリール胴部外周の巻き面との距離が小さくなる第1の位置に保持し、リールフランジ部際の位置では、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ったまま、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部よりも外側へ出てリールフランジ部と接触しない第2の位置まで移動させることにより、リールフランジ部際を除くリール軸線方向の広い領域でリール上の巻き面とガイドローラーとの距離を小さくすることができて、巻き面をコントロールすることができ、また、リールフランジ部に加工精度のばらつきや、繰り返し使用による変形、線材熱処理の際の変形等があっても、ガイドローラーがリールフランジ部に接触することがないようにすることができて、線材の重なりによるモツレ(絡まり)やキズの発生を防止でき、角線、I型線材その他の異形線であっても、簡単、安価且つ確実に整列巻きを行うようにすることができる。
【0012】
そして、このトラバース装置は、特に、ガイドローラーを、ローラー端面とリールフランジ部との距離がリール軸線方向に第1の距離を越える位置では、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ちつつ、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部の内側に入り込んでリール胴部外周の巻き面との距離が小さくなる第1の位置に保持し、ガイドローラーがリールフランジ部に近づいて、ローラー端面とリールフランジ部との距離がリール軸線方向に第1の距離となる位置に達してから、ローラー端面とリールフランジ部との距離がリール軸線方向に第1の距離より小さい第2の距離となる位置に達するまで、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ったまま、リール軸線方向の移動に伴ってリール径方向の外側へ向けて漸次移動させ、ローラー端面とリールフランジ部との距離がリール軸線方向に第2の距離となる位置に達すると、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部より外側へ出てリールフランジ部と接触しない第2の位置に保持するよう構成する。これにより、容易に整列巻きを行うことができる。
【0013】
このトラバース装置において。上記第1の距離は20〜40mmであるのがよく、特に20mm前後が好ましい。また、上記第2の距離は1〜10mmであるのがよい。第1の距離と第2の距離をこのように設定することで、円滑かつ確実に整列巻きを行うことができる。第1の距離が20mm未満であると、第1の位置と第2の位置との間でガイドローラーの移動が急激すぎることになって、線材がガイドローラーから外れるおそれがある。また、第1の距離が40mmを超えると、ローラー外縁が巻き面から遠ざかる部分が多くなって、巻取り位置がずれる可能性が高くなる。また、第2の距離が1mm未満であると、リールが変形していた場合にガイドローラーがリールフランジ部と接触する可能性が高くなる。但し、リールに変形がない場合は0mmに近い方が好ましい。また、第2の距離が10mmを超えると、ローラー外縁が巻き面から遠ざかった状態が長く続くことになり、トラバース反転時の巻き面のコントロールが甘くなる可能性がある。
【0014】
また、このトラバース装置において、上記第1の位置は、ローラー外縁とリール胴部外周の巻き面との距離が0mmを超えて30mm以下の範囲の位置とするのがよい。そうすることで、リール軸線方向の広い領域で巻取り位置を正確にコントロールして狙い通りの整列巻きを行うことができる。ローラー外縁とリール胴部外周の巻き面との距離が30mmを超えると、巻取り位置を正確にコントロールできなくなる可能性がある。この距離は、巻き面に当たらない程度に極力小さくする方がよい。
【0015】
そして、このトラバース装置において、ガイドローラーのガイド溝の巾寸法は、線材の巾寸法+0.1〜0.50mmであるのがよい。ガイド溝をこのような巾寸法のものとすることで、溝の巾方向に遊びを確保しつつ、線材のずれを防止することができ、巻取り位置を正確にコントロールして狙い通りの整列巻きを行うことができる。ガイド溝の巾寸法が線材の巾寸法+0.1mm未満であると、遊びが少なくなって、線材の繰り出しが円滑でなくなり、キズが生ずる可能性もある。また、ガイド溝の巾寸法が線材の巾寸法+0.50mmを超えると、ガイド溝の巾方向に線材がずれて、巻取り位置を正確にコントロールできなくなる可能性がある。
【0016】
また、本発明のトラバース方法は、上記構成のトラバース装置を使用し、ガイドローラーを、リールフランジ部際から離れた位置では、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ちつつ、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部の内側に入り込んでリール胴部外周の巻き面との距離が小さくなる第1の位置に保持し、リールフランジ部際の位置では、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ったまま、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部よりも外側へ出てリールフランジ部と干渉しなくなる第2の位置まで移動させるものである。この方法で、簡単、安価且つ確実に整列巻きを行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、リールフランジ部際を除くリール軸線方向の広い領域でリール上の巻き面とガイドローラーとの距離を小さくすることができて、巻き面をコントロールすることができ、また、リールフランジ部に加工精度のばらつきや、繰り返し使用による変形、線材熱処理の際の変形等があっても、ガイドローラーがリールフランジ部に接触することがないようにすることができて、線材の重なりによるモツレ(絡まり)やキズの発生を防止でき、角線、I型線材その他の異形線であっても、簡単、安価且つ確実に整列巻きすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態のトラバース装置の要部を示す平面図である。
図2】本発明の実施の形態のトラバース装置の要部を示す側面図である。
図3】本発明の実施の形態のトラバース装置におけるガイドローラーの動作を説明する模式図である。
図4】本発明の実施の形態のトラバース装置におけるガイドローラー外周のガイド溝の部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1および図2に本発明の実施の形態のトラバース装置の要部構成を示す。図中、1はリール(巻き取りリール)、1aはリール胴部、1bはリールフランジ部、2はガイドローラー(トラバースガイドローラー)、2aはガイドローラー外周のガイド溝、3はガイドローラーを支持する支持アーム、4は支持アーム3を支持する支持ブロックである。
【0020】
ガイドローラー2は、ローラー外縁がリール1の両側のリールフランジ部1bの間でリール胴部1aの外周に対峙して配置され、支持アーム3に支持されたローラー軸5に軸受6を介して回転自在に支持されている。
【0021】
支持アーム3は、支持ブロック4に支持され、その支持位置は、調節ハンドル12の操作により支持ブロック4に対しリール軸線Rに向けて進退移動可能となっている。
【0022】
支持ブロック4は、ベース(図示せず)上に設置された直線状のガイドレール(図示せず)上を水平移動用のエアーシリンダー(図示せず)を駆動源としてリール軸線方向に対し垂直な方向(リール胴部1aに対し進退する方向)に移動可能な移動台11上に載置されている。支持ブロック4はこのように移動可能であって、支持ブロック4が移動台11と共にリール胴部1aに対し進退する方向に移動することにより、ガイドローラー2はローラー外縁がリール1側でリール胴部1aに対しリール径方向に近接あるいは離反する方向に移動する。また、支持ブロック4は、移動台11上で、エアーシリンダー9を駆動源として、Rガイド(円弧状のガイドレール)8に沿って、Rガイド8の曲率中心を中心として回転可能である。
【0023】
このトラバース装置は、リール1をリール軸線方向(図1における上下方向)に移動させることにより、ガイドローラー2を介して供給される線材Tのリール1に対する巻取り位置を整列巻きのピッチでリール軸方向に移動(トラバース)させつつ、リール1を回転させて、リール胴部1aに線材Tを巻き取らせ、線状材料Tを1層巻き取る毎に、移動台11を移動させてガイドローラー2を線状材料Tの一層分の厚さだけリール胴部1aから離れる方向に移動させ、トラバース方向を反転して線材Tを巻き重ねていく。そして、そのトラバースの過程で、ガイドローラー2を、リールフランジ部1b際から離れた位置(リール軸線方向の位置)では、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部1bの内側に大きく入り込んでリール胴部1aの外周の巻き面との距離(図3に示すD)が0mmを超えて30mm以下の範囲の位置(リール径方向の位置)に保持し、リールフランジ部1b際の位置(リール軸線方向の位置)では、リール1のリール軸線方向の移動に伴って、ガイドローラー2を上記第1の位置からリール径方向の外側へ向けて、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部1bより外側へ出てリール径方向にリールフランジ部1b外縁との距離(図3に示すC)が0mmを超えて20mm以下の範囲の、ガイドローラー2がリールフランジ部1bと接触しなくなる位置(リール径方向の位置)まで所定速度で漸次移動させる。そして、トラバース反転位置に達すると、逆方向に漸次移動させる。その間、ガイドローラー2を終始、ローラー軸線Kがリール軸線Tに平行となる姿勢を保ったままとする。
【0024】
上記ガイドローラー2のより詳細な動作を、図3を参照して次に説明する。図3は、ガイドローラーの動作を模式的に示すものである。なお、この実施形態では、リール1が移動することによってガイドローラー2がリール1に対し相対的にリール軸線方向に移動するのであって、ガイドローラー2がリール軸方向に移動するのではないが、図3では説明の都合上、相対移動をガイドローラー2の移動で示している。
【0025】
ガイドローラー2は、リール1が移動することにより、図3に示すようにリール1に対し相対的にリール軸線方向に移動する。そして、リールフランジ部1b際から離れた、ローラー端面2bとリールフランジ部1bとの距離がリール軸線方向に20〜40mm(第1の距離)を越える位置(図3の距離Aとなる位置よりもリール軸線方向に内側の位置)では、ガイドローラー2を、ローラー軸線Kがリール軸線Rに平行となる姿勢を保ちつつ、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部1bの内側に大きく入り込んでリール胴部1aの外周の巻き面との距離(図3に示すD)が0mmを超えて30mm以下の範囲の位置(リール径方向の位置)に保持し、その状態で線材Tを巻き取っていく。
【0026】
そして、ガイドローラー2がリールフランジ部1bに近づいて、ローラー端面2bとリールフランジ部1bとの距離が20〜40mm(第1の距離)となる位置(図3の距離Aとなる位置)に達すると、ガイドローラー2をリール径方向の外側へ向けて所定速度で移動させ、ローラー端面2bとリールフランジ部1bとの距離が第1の距離(20〜40mm)より小さいリール軸線方向に1〜10mmの第2の距離となる位置(図3の距離Bとなる位置)に達するまで、ローラー軸線がリール軸線に平行となる姿勢を保ったままリール軸線方向の移動に伴って漸次移動させながら、線材Tを巻き取っていく。
【0027】
そして、ローラー端面とリールフランジ部1bとの距離が上記第2の距離(1〜10mm)となる位置(図3の距離Bとなる位置)に達すると、ローラー外縁がリール径方向にリールフランジ部1aより外側へ出て、図3にCで示すリールフランジ部1bとの間のリール径方向の距離が0mmを超えて20mm以下の範囲の距離となってガイドローラー2がリールフランジ部1bと接触しなくなる第2の位置(リール径方向の位置)に保持する。
【0028】
そして、ガイドローラー2が、ローラー端面2bとリールフランジ部1bとの距離が上記第2の距離(1〜10mm)となる位置(図3の距離Bとなる位置)を超えて、トラバース反転位置(ガイドローラーターン位置)である図3のEで示す位置に達すると、ガイドローラー2を一旦停止させ、その後、リール軸線方向の移動方向を反転させる。そして、反転後、第2の位置から第1の位置へ向けて漸次移動させ、線材Tを反対方向に巻いていく。
【0029】
このようなガイドローラー2の動作により、リールフランジ部1b際を除くリール軸線方向の広い領域でリール1上の巻き面とガイドローラー2との距離を小さくすることができて、巻き面を正確にコントロールすることができ、また、リールフランジ部1bに加工精度のばらつきや、繰り返し使用による変形、線材熱処理の際の変形等があっても、ガイドローラー2がリールフランジ部1bに接触することがなくて、線材Tの重なりによるモツレ(絡まり)やキズの発生を防止でき、簡単、安価且つ確実に整列巻きを行うことができる。
【0030】
この実施形態のトラバース装置は、スチールコード、ビードワイヤ、ピストンリング用線などの金属線、電線などの被覆線、その他ロープ等の線材を整列巻きするのに好適であり、丸線は勿論、角線、I型線材その他の異形線であっても、簡単、安価且つ確実に整列巻きすることができる。
【0031】
ガイドローラー2のガイド溝2aの巾寸法(図4に示すa)は、線材Tの巾寸法(図4に示すW)より0.1〜0.50mm大きいのがよい。ガイド溝2aをこのような巾寸法のものとすることで、溝の巾方向に遊び(図4に示すt)を確保しつつ、線材Tのずれを防止することができ、巻取り位置を正確にコントロールして狙い通りの整列巻きを行うことができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、リール1を移動させてトラバースする場合を説明したが、リール1は移動させずにガイドローラー2をリール軸線方向に移動させるようにしてもよく、リール1とガイドローラー2の双方を移動させてトラバースするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 リール
1a リール胴部
1b リールフランジ部
2 ガイドローラー
2a ガイド溝
2b ローラー端面
K ローラー軸線
R リール軸線
図1
図2
図3
図4