【実施例1】
【0013】
本実施例は、太陽光熱が余剰に得られる場合にはこれを有効に利用することのできる太陽光熱利用冷熱発生システムを得ることができるようにしたものである。ここで、まず、太陽光熱利用熱源発生装置(太陽光熱集熱器など)の定格熱源発生量の決め方を
図11により説明する。
【0014】
図11において、横軸は月(1月〜12月)で、縦軸はDNI、即ち太陽エネルギー直達日射強度(Direct Normal Irradiation)(W/m
2)であり、1月〜12月の1年間に亘る各月の平均DNIを棒グラフで表している。そして、1年間の月間平均DNI値に基づいて、直線Eで示すような定格設計点としてのDNI値を決め、この定格設計点のデータを用いて、定格熱源発生量を得られる太陽光熱利用熱源発生装置(太陽光熱集熱器など)の仕様や台数は決められている。
【0015】
このように設計された各種の太陽光熱集熱器は、この
図11からわかるように、特に月間平均DNI値の高い夏期においては、定格設計点E(定格熱源発生量)よりも遥かに大きな熱量が得られることがわかる。
【0016】
また、ある場所のある季節での日々の運転を考えた場合の、典型的な1日のDNIの時間変化例を、
図12に示す。この
図12において、横軸は時刻、縦軸はDNIの変化例を示している。この図に示すように、一般に、日々のDNI値の変化は、ゼロを起点とした上に凸となるような傾向になる。
【0017】
そして、太陽光熱を主熱源とする太陽光熱利用熱源発生装置の設計ポイントとして、DNIの設計点をいくらに持ってくるかで、太陽光熱集熱器(太陽光熱利用熱源発生装置)の仕様が異なってくる。通常は
図12に示す設計DNIaや設計DNIbのように、設計点を定めて太陽光熱集熱器等の仕様を決めている。従って、日々の運転においても、
図12に示すように、設計点よりも高いDNIの部分では、プロセス計画値よりも多くの蒸気を発生することができる。しかし、従来の太陽光熱利用冷熱発生システムにおいては、太陽光熱集熱器において定格熱源発生量よりも大きな熱量が得られた場合には、これを余剰熱として廃棄していた。
【0018】
そこで、本実施例では、太陽光熱が余剰に得られる場合、この余剰熱量を有効に利用できる太陽光熱利用冷熱発生システムとしたものである。以下、本実施例の具体的構成を
図1〜
図10により詳細に説明する。
【0019】
図1により、本発明の太陽光熱利用冷熱発生システムの一例を説明する。
図1において、11は太陽光熱を集熱する太陽光熱集熱器(太陽光熱利用熱源発生装置)である。前記太陽光熱集熱器11は、例えば集光機構としての断面が放物線形状をなすトラフ型またはフレネル型の反射鏡によって太陽光を集熱管に向けて集光する太陽光集光部と、前記集熱管の内部を流通する熱媒体にエネルギーを伝達するようにした太陽光受熱部と、前記集熱管の外周を、断熱空間を形成して覆う透明の断熱管(断熱部)とから構成されている。前記太陽光熱集熱器11に温水タンク12からの温水或いは水などの熱媒体を循環ポンプ13により導入し、この太陽光熱集熱器11では太陽光熱により、例えば圧力が2MPa(G)以上で220〜250℃程度(吸収式冷凍機が3重効用の場合、2重効用の場合には圧力が0.82MPa(G)以上で175℃程度、単効用の場合には0.05MPa(G)以上で110℃程度の蒸気もしくは90℃程度の低温水)の高温水、または高温水と高温蒸気の混合流体が生成され、この高温水、または高温水と高温蒸気の混合流体(熱媒体)は蒸気発生手段(セパレータ)14に送られる。
【0020】
蒸気発生手段14に流入した高温水、または高温水と高温蒸気の混合流体は若干、例えば1.9MPa(G)程度(3重効用の場合、2重効用の場合には0.78MPa(G)程度、単効用の場合には0.03MPa(G)程度)に減圧されることで、例えば212℃程度(3重効用の場合、2重効用の場合には174℃程度、単効用の場合には107℃程度)の蒸気と温水に分離され、この蒸気は吸収式冷凍機15に供給されて、その作動熱源となる。一方、前記蒸気発生手段14の下部に溜まった温水は循環ポンプ16によって前記太陽光熱集熱器11に送られ、太陽光熱により再び加熱される。
【0021】
前記吸収式冷凍機15で、稀溶液の濃縮に使用された蒸気は、例えば195℃程度(3重効用の場合、2重効用の場合には160℃程度、単効用の場合には100℃程度)の蒸気ドレンとなり、前記温水タンク12に、また場合によっては直接太陽光熱集熱器11に送られる。
前記吸収式冷凍機15には空調機18が冷水配管で接続されており、空調機18から例えば15℃で流入する水を吸収式冷凍機15の蒸発器5で約7℃まで冷却し、その後この冷水は再び前記空調機18に供給されて、室内などの冷房または他への冷熱利用に供される。
【0022】
また、前記吸収式冷凍機15にはクーリングタワーなどから例えば34℃の冷却水が供給され、吸収式冷凍機15を構成する吸収器6や凝縮器4と熱交換して例えば39℃まで加熱されて再び前記クーリングタワーなどに戻される。なお、1は再生器である。
【0023】
19は高温水又は高温蒸気を生成するためのボイラ(太陽光熱以外の他の熱源を利用した他熱源発生装置)であり、夜間や雨天などの天候不順のために、前記太陽光熱集熱器11において、太陽光熱により高温水等を生成できない場合や、曇天のため太陽光熱だけでは十分な熱源発生量が得られない場合のバックアップとして設けられている。このボイラ19は、バーナ等の燃焼による加熱源を使用して高温の蒸気を生成し、前記蒸気発生手段14に供給するように構成されている。
【0024】
なお、前記ボイラ19は
図1に示す太陽光熱利用冷熱発生システムに専用のものでも良いし、或いは他の設備にも共有されている工場スチーム等を使用するものであっても良い。また、前記吸収式冷凍機15に供給される熱源としては蒸気には限られず、温水であっても良い。
【0025】
20a〜20c,21,22a,22bはそれぞれの配管に設けられた開閉弁である。また、35は前記太陽光熱集熱器11と前記蒸気発生手段14を接続している配管に設けられ、前記太陽光熱集熱器11から前記吸収式冷凍機への蒸気供給量を制御する太陽光熱源制御弁、36は前記太陽光熱集熱器11と前記太陽光熱源制御弁35の間に設けられ、前記太陽光熱集熱器11で得られた蒸気或いは温水の圧力を検出するための圧力検出器である。37は前記蒸気発生手段14と前記吸収式冷凍機15を接続している配管に設けられ、前記吸収式冷凍機15の冷凍能力を制御する冷凍機制御弁で、この冷凍機制御弁37の開度を制御することで前記吸収式冷凍機15への蒸気供給量(熱源供給量)を制御し、冷凍能力を調整する。38は前記蒸気発生手段14と前記冷凍機制御弁37の間に設けられ、前記吸収式冷凍機15へ供給される蒸気の圧力を検出するための圧力検出器である。
【0026】
なお、前記バックアップ用の蒸気のラインについては、前記冷凍機制御弁37の一次側に直接接続して前記バックアップ用の蒸気を直接導入するように構成しても良い。
【0027】
更に、39は前記ボイラ(他熱源発生装置)19と前記蒸気発生手段14を接続している配管に設けられ、ボイラ19等から冷凍機への蒸気供給量を制御するボイラ弁(他熱源制御弁)である。40は蒸気放出弁で、前記圧力検出器38で検出された圧力が予め定めた所定圧力(例えば、吸収式冷凍機が3重効用の場合は2.1MPa(G)程度、2重効用の場合は0.84MPa(G)程度、単効用の場合は0.1MPa(G)程度)以上となった場合に開かれて、余剰の蒸気を大気等に放出するものである。
【0028】
50は太陽光熱利用冷熱発生システムの制御装置(システム制御装置)で、この制御装置50は、前記圧力検出器36及び38で検出された圧力情報に基づいて前記各制御弁35,37,39及び前記蒸気放出弁40を制御する。前記各制御弁35,37,39は開度制御可能な弁で構成され、前記蒸気放出弁40については本実施例では開閉弁で構成されている。なお、前記循環ポンプ13,16や前記開閉弁20a〜20c,21,22a,22bの制御も前記制御装置50で行なうようにしても良い。
【0029】
また、本実施例の太陽光熱利用冷熱発生システムにおいてはその定格容量(例えば50RT(冷凍トン))に対して、前記太陽光熱集熱器(太陽光熱利用熱源発生装置)11と前記ボイラ(他熱源発生装置)19は、前記冷熱発生システムの定格容量に対応した定格熱源発生量(即ち50RT)のものを使用しているが、前記吸収式冷凍機15については前記冷熱発生システムの定格容量(50RT)を超える冷凍能力、好ましくは前記冷熱発生システムの定格容量の1.5〜2倍程度の冷凍能力(本実施例では100RT)のものを使用している。
【0030】
次に、
図1と
図2により前記制御装置50による前記冷凍機制御弁37の制御について説明する。
図2は冷凍機制御弁37の開度制御を説明する線図で、横軸は吸収式冷凍機15の冷凍能力(RT)、縦軸は冷凍能力に対する蒸気消費量である。
図2の細い斜めの実線で示すように、吸収式冷凍機15の冷凍能力を増加させるためには、それに応じて蒸気消費量も増加させていく必要がある。蒸気消費量を増加させるためには、前記冷凍機制御弁37の開度を増大する。
図2の実線Aは前記冷凍機制御弁37の下限開度(冷凍機下限開度)で、吸収式冷凍機15を連続運転できる最小冷凍能力開度である。それよりも小さな冷凍能力での運転が要求される場合には、前記冷凍機制御弁37をON−OFF制御するのが一般的である。また、実線Bは前記冷凍機制御弁37の上限開度(冷凍機上限開度)で、吸収式冷凍機15を最大冷凍能力で運転するための開度であり、吸収式冷凍機15の運転時に、冷凍機制御弁37は前記冷凍機上限開度Bよりも大きい開度には制御されない。
【0031】
図2の一点鎖線Cは前記冷凍機制御弁37の設定上限開度で、前記冷凍機制御弁37はこの設定上限開度よりも大きな開度には制御されず、前記冷凍機下限開度Aとこの設定上限開度Cとの間で、前記冷凍機制御弁37は冷凍負荷に応じて(冷凍機15から出る冷水の温度が例えば7℃になるように)その開度が制御される。
【0032】
図2の破線Dは冷熱発生システムの定格容量(例えば50RT)に対する蒸気消費量分の蒸気を供給するための前記冷凍機制御弁37の開度(システム定格開度)である。本実施例では、熱源として、前記ボイラ(他熱源発生装置)19の単独利用或いは前記ボイラ19と前記太陽光熱集熱器11との併用による熱源を投入して前記吸収式冷凍機15を運転する場合、前記冷凍機制御弁37の前記設定上限開度Cは、前記制御装置50により、前記システム定格開度Dとなるように設定されて制御される。即ち、前記ボイラ弁(他熱源制御弁)39が開状態にある場合、前記制御装置50は、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度Cを前記システム定格開度Dに、或いはDとなる方向に調整していく。従って、ボイラ(他熱源発生装置)19を利用して運転する場合、前記冷凍機制御弁37の開度は、前記冷凍機下限開度Aから前記システム定格開度Dとの間で、冷凍負荷に応じてその開度が制御され、冷凍能力はシステムの定格容量(例えば50RT)までの範囲に抑えられるように運転される。
【0033】
前記太陽光熱集熱器(太陽光熱利用熱源発生装置)11での熱源発生量が増加していくと、前記ボイラ弁(他熱源制御弁)39は閉じられる方向に制御され、更に前記太陽光熱集熱器11での熱源発生量が吸収式冷凍機15で要求される熱量よりも多くなると、太陽光熱集熱器11で得られる熱源のみで前記吸収式冷凍機15が運転されるように制御されていく。この場合、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度は、前記制御装置50により、前記太陽光熱集熱器11での熱源発生量に応じて、前記システム定格開度Dと前記冷凍機上限開度Bとの間の値になるように調整されていく。
【0034】
即ち、前記圧力検出器36で検出された圧力値が所定値(例えば、3重効用の場合2MPa(G)、2重効用の場合0.82MPa(G)、単効用の場合には0.05MPa(G))以上の場合、前記制御装置50は前記冷凍機制御弁37の設定上限開度を現在の設定上限開度よりも大きくなる方向にシフトしていく。これにより、吸収式冷凍機15はより大きな冷凍能力を発揮することができるようになり、より大きな負荷にも対応できるようになる。なお、前記冷凍機制御弁37の最大開度(冷凍機上限開度B)は吸収式冷凍機15の定格冷凍能力(この例では100RT)に対応した値に設定されている。
【0035】
一方、前記圧力検出器36で検出された圧力値が所定値(例えば、3重効用の場合2MPa、2重効用の場合0.82MPa(G)、単効用の場合には0.05MPa(G))未満の場合、前記制御装置50は前記冷凍機制御弁37の前記設定上限開度Cを現在の設定上限開度よりも小さくなる方向にシフトしていく。これにより、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度は太陽光熱集熱器11で得られる熱源発生量に応じた値になるので、前記ボイラ19からの蒸気を消費することなく太陽光熱のみで、或いは前記ボイラ19からの蒸気消費量を抑えて吸収式冷凍機15を運転することが可能となり、省エネ化を図れる。
【0036】
なお、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度Cが小さくなる側にシフトされていくことにより、冷熱発生システムの定格容量(この例では50RT)に対応した上限開度(システム定格開度D)になると、前記設定上限開度Cはこれ以下には小さな値にはシフトされず、前記システム定格開度Dに保持される。これにより、冷熱発生システムはその定格容量までの範囲で運転が可能となり、太陽光熱集熱器11で発生する熱源量が不足する場合には前記ボイラ19からの蒸気を供給することで、太陽光熱集熱器11とボイラ19を併用して、冷熱発生システムの定格容量までの範囲で負荷に応じた運転が可能となる。
【0037】
以上説明した冷凍機制御弁37における設定上限開度Cの調整制御の一例を、
図1及び
図2を参照しつつ
図3のフローチャートにより具体的に説明する。
太陽光熱利用冷熱発生システムの運転が開始(スタート)されると、ステップS1で、太陽光熱蒸気の圧力検出器36で検出された値(太陽圧力)が、予め定めた設定圧力(例えば0.82MPa(G))より大きいか否かを比較し、前記太陽圧力が設定圧力よりも大の場合(Yの場合)には太陽熱集熱器11から十分な熱容量の蒸気或いは温水が供給されていると判断し、太陽光熱源制御弁(太陽弁)35の開度を開く方向(増加方向)にシフト、即ち開度を上げる(UP)ように制御する(ステップS2)。
【0038】
次に、ステップS3に移り、吸収式冷凍機15への蒸気供給圧力を検出する圧力検出器38で検出された圧力値(冷凍機圧力)が予め定めた設定圧力(例えば0.78MPa(G))よりも大きいか否かを判定する。この判定の結果、設定圧力よりも大の場合(Yの場合)には、前記ボイラ弁(他熱源制御弁)39の開度を減少させる(DOWN)方向に制御し(ステップS4)、ステップS5では前記ボイラ弁39の開度が全閉か否かを判定する。このステップS5でボイラ弁39が全閉の場合(Yの場合)には、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度Cを現在の設定上限開度よりも大きくなる方向にシフト(UP)する(ステップS6)。一方、前記ステップS5でボイラ弁39が全閉にはなっていない場合(Nの場合)には、ステップS7に移り、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度Cを現在の設定上限開度よりも小さくなる方向にシフト(DOWN)する。
【0039】
次に、前記ステップS6で開度が大きくなる側にシフトされた前記冷凍機制御弁37の設定上限開度Cが、
図2で説明した冷凍機上限開度Bよりも大きくなるかどうかをステップS8で判定し、前記冷凍機上限開度B以下であれば(Nの場合)、新たに設定された前記冷凍機制御弁37の設定上限開度Cと前記冷凍機下限開度Aとの範囲H1(
図2参照)内で、前記吸収式冷凍機15の負荷に応じて前記冷凍機制御弁37の開度制御が為される。
【0040】
前記ステップS8での判定の結果、開度が大きくなる側にシフトされた前記設定上限開度Cが、前記冷凍機上限開度Bよりも大となっている場合(Yの場合)には、前記設定上限開度Cを前記冷凍機上限開度Bに設定(或いは維持)して(ステップS9)、前記冷凍機上限開度Bと前記冷凍機下限開度Aとの範囲H2(
図2参照)内で、前記吸収式冷凍機15の負荷に応じて前記冷凍機制御弁37の開度制御が為される。
その後、ステップS17に移って、運転継続の要否を判定し、運転継続要の場合(Yの場合)には、制御時間(制御周期)経過後、再び前記ステップS1から同様の動作を繰り返す。前記ステップS17で運転継続否の場合(Nの場合)には運転を終了する。
【0041】
前記ステップS7において、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度Cを現在の設定上限開度よりも小さくなる方向にシフト(DOWN)した場合、ステップS10に移り、この新たに設定された前記冷凍機制御弁37の設定上限開度Cが冷熱発生システムの前記システム定格開度D(
図2参照)よりも小さくなっているかどうかを判定する。この判定で前記設定上限開度Cが前記システム定格開度Dよりも小さくなっている場合(Yの場合)にはステップS11に移って、前記設定上限開度Cを前記システム定格開度Dに設定(或いは維持)し、この設定上限開度C(=システム定格開度D)と前記冷凍機下限開度Aとの範囲H3(
図2参照)内で、前記吸収式冷凍機15の負荷に応じて前記冷凍機制御弁37の開度制御が為される。一方、前記ステップS10の判定で新たに設定された前記設定上限開度Cが前記システム定格開度D以上の場合(Nの場合)には、前記ステップS7で新たに設定されたその設定上限開度Cと前記冷凍機下限開度Aとの範囲H1内で、前記吸収式冷凍機15の負荷に応じて前記冷凍機制御弁37の開度制御が為される。
その後は前記ステップS17に移って、同様の動作を行なう。
【0042】
前記ステップS3において、圧力検出器38で検出された圧力値が予め定めた設定圧力以下の場合(Nの場合)、吸収式冷凍機へ供給する蒸気圧力が十分ではないので、ステップS12に移り、ボイラ弁39の開度を上げ(UP)、更に前記設定上限開度Cを下げる(DOWN)。その後は上述したステップS10以降の動作を同様に実施する。
【0043】
前記ステップS1において、圧力検出器36で検出された圧力値が予め定めた設定圧力以下の場合(Nの場合)、太陽光熱集熱器11からの蒸気圧力が十分でないので、ステップS13に移り、太陽光熱源制御弁35の開度を下げる(DOWN)。次に、ステップS14に移り、圧力検出器38で検出された圧力値が予め定めた設定圧力より大きい場合(Yの場合)にはステップS15に移って、前記ボイラ弁39の開度を減少(DOWN)させ、更に前記設定上限開度Cを下げる(DOWN)。その後は上述したステップS10以降の動作を同様に実施する。
【0044】
一方、前記ステップS14において、圧力検出器38で検出された圧力値が予め定めた設定圧力以下の場合(Nの場合)、吸収式冷凍機へ供給する蒸気圧力が十分ではないので、ステップS16に移り、前記ボイラ弁39の開度を増加(UP)させ、更に前記設定上限開度Cを下げる(DOWN)。その後は上述したステップS10以降の動作を同様に実施する。
【0045】
本実施例においては、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度Cを上述した
図3のように制御することにより、前記吸収式冷凍機15は、前記太陽光熱集熱器(太陽光熱利用熱源発生装置)11からの熱源を利用して冷熱を生成する場合、前記太陽光熱集熱器11での蒸気発生量(熱源発生量)に応じて、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度Cを前記制御装置50により制御することができる。従って、夏期など、太陽光熱集熱器11での蒸気発生量がその定格蒸気発生量(定格熱源発生量)よりも多く得られる場合には、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度Cが前記システム定格開度Dよりも大きな値に設定されるので、冷熱発生システムの定格容量を超える冷凍能力で吸収式冷凍機15を運転することが可能となり、冷熱発生システムの定格以上の冷凍能力を得ることができる。
【0046】
また、前記太陽光熱集熱器11での蒸気発生量が不足する場合には、ボイラ(他熱源発生装置)19からの蒸気も併用して運転され、この場合には前記冷凍機制御弁37の設定上限開度が前記システム定格開度Dに維持されるので、ボイラ19からの蒸気供給量は冷熱発生システムの定格容量以下に抑えることができる。
【0047】
次に、上記
図3で設定された設定上限開度Cを用いた冷凍機制御弁37の制御例を
図4に示すフローチャートにより説明する。
吸収式冷凍機15が運転されると、まずステップS21で吸収式冷凍機15から出た冷水温度を、図示していない温度計で検出して、この冷水温度が予め設定された設定温度(例えば7℃)より高いか否かを判定する。その結果、冷水温度が設定温度よりも高い場合(Yの場合)、冷凍機の冷凍能力を増加させる必要があるので、ステップS22で冷凍機制御弁37の開度が上記設定上限開度Cよりも小さいか否かを判定し、小さい場合(Yの場合)にはステップS23に移って、前記冷凍機制御弁37の開度を増加させる方向に制御し、冷凍機の冷凍能力を増加させる。
【0048】
前記ステップS21で、冷水温度が予め設定された設定温度以下の場合(Nの場合)にはステップS24に移り、冷凍機制御弁37の開度を減少させる方向に制御する。また、前記ステップS22で、冷凍機制御弁37の開度が前記設定上限開度C以上の場合(Nの場合)にも、上記ステップS24に移り、冷凍機制御弁37の開度を減少させる方向に制御する。
【0049】
上記ステップS23及びS24において冷凍機制御弁37の制御をした後、ステップS27に移り、運転継続の要否を判定し、運転継続要の場合(Yの場合)には、制御時間(制御周期)経過したら、再び前記ステップS21から制御を同様に繰り返す。前記ステップS27で運転継続否の場合(Nの場合)には前記冷凍機制御弁37の制御を終了する。
【0050】
このように、冷凍機制御弁37を制御することにより、空調機18などの負荷から戻ってきた例えば15℃程度の冷水を、吸収式冷凍機15で例えば7℃に冷却して、再び前記空調機18に供給する動作を継続することができる。
【0051】
図5に示すフローチャートにより、前記冷凍機制御弁37の他の制御例を説明する。
図5において
図4と同一符号を付したステップは
図4と同様の動作をするので、それらの説明については省略する。この制御例では、ステップS22で冷凍機制御弁37の開度が前記設定上限開度C以上の場合(Nの場合)、ステップS25に移り、前記冷凍機制御弁37の開度が設定上限開度Cに等しいか否かを判定する。そして、前記ステップS25で前記冷凍機制御弁37の開度が設定上限開度Cに等しいと判定された場合(Yの場合)には、ステップS26に移り、前記冷凍機制御弁37の開度を前記設定上限開度Cに保持する。
【0052】
一方、前記ステップS25で前記冷凍機制御弁37の開度が設定上限開度よりも大と判定された場合(Nの場合)には、ステップS24に移って、冷凍機制御弁37の開度を減少させるように制御する。その後、ステップS27に移って、
図4で説明したものと同様の動作を行なう。
【0053】
このように構成しても上記
図4で説明した制御と同様の効果が得られると共に、冷凍機制御弁開度が設定上限開度Cとなっている場合には、冷凍機制御弁37をその開度に保持するように制御するので、より安定した制御を行なうことができる。
【0054】
図6は
図1に示す蒸気放出弁40の制御について説明するフローチャートである。この
図6により、前記蒸気放出弁40の制御を説明する。
図1に示す冷熱発生システムが運転開始されると、吸収式冷凍機15に供給される蒸気圧力が前記圧力検出器38で検出され、この検出された圧力値が予め定めた蒸気放出設定圧力(例えば、吸収式冷凍機が3重効用の場合は2.1MPa(G)、2重効用の場合は0.84MPa(G)、単効用の場合には0.07MPa(G))よりも高いか否かを判定する(ステップS30)。通常は、前記圧力検出器38で検出される圧力は吸収式冷凍機15に供給される圧力、例えば0.78MPa(G)程度に保持されているが、前記太陽光熱集熱器11で発生する蒸気量が多く、且つ前記吸収式冷凍機15で消費される蒸気量が少なくなると、前記圧力検出器38で検出される圧力は高くなっていく。
【0055】
このため、冷熱発生システム保護のため、予め定めた前記蒸気放出設定圧力よりも圧力が高くなった場合(Yの場合)には、前記蒸気放出弁40が開かれる(ステップS31)。その後、ステップS33に移って、運転継続の要否を判定し、運転継続要の場合(Yの場合)には、制御時間経過後、前記ステップS30からの制御が同様に繰り返される。蒸気放出弁40が開かれたことで、前記圧力検出器38で検出される圧力値が前記蒸気放出設定圧力以下となった場合には、前記蒸気放出弁40は閉じられる(ステップS32)。以下、前記ステップS33に移って、運転継続要の場合には、同様に、制御時間経過後、再び前記ステップS30からの制御が同様に繰り返される。前記ステップS33で運転継続否の場合(Nの場合)には、前記蒸気制御弁40の制御を終了する。
【0056】
このように、蒸気放出弁40を制御することで、太陽光熱集熱器11で発生する蒸気量が多く、吸収式冷凍機15で消費される蒸気量が少ない場合でも、冷熱発生システム内の蒸気圧力を蒸気放出設定圧力値以下に保つことができる。
【0057】
なお、本実施例では、前記蒸気放出弁40として開閉弁を使用しているが、開度制御が可能な制御弁を使用することも可能である。開度制御可能な制御弁を使用すれば、冷凍機15に供給する蒸気圧力をより安定した圧力に保持することが可能となる。
【0058】
上述した
図3〜
図6に示すフローチャートで説明した制御は、前記制御装置50により行われる。なお、図示はしていないが、吸収式冷凍機15自体にも冷凍機用の制御装置(冷凍機制御装置)は備えられており、吸収式冷凍機15で冷却される冷水温度は吸収式冷凍機で検出されて、この冷水温度が設定温度になるように、前記冷凍機制御装置により前記冷凍機制御弁37の開度が制御される。前記冷熱発生システムの制御装置(システム制御装置)50と前記冷凍機用の制御装置(冷凍機制御装置)を共用して制御するように構成しても良い。
【0059】
また、本実施例では、前記吸収式冷凍機15が前記ボイラ(他熱源発生装置)19からの熱源を利用して運転される場合には、前記制御装置50は、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度を前記冷熱発生システムの定格容量、例えば50RTに対応した値(システム定格開度)に設定するようにした例について説明した。しかし、本実施例においては、吸収式冷凍機15の冷凍能力を、冷熱発生システムの定格容量を超える冷凍能力、例えば100RTのものを使用している。従って、太陽光熱集熱器11からの熱源も得られる場合には、太陽光熱集熱器11とボイラ19の両方の熱源を利用して冷熱発生システムの定格容量を超える冷凍能力で前記吸収式冷凍機を運転できるように、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度を調整するように構成することも可能である。この場合、前記太陽光熱集熱器11での蒸気発生量がその定格蒸気発生量(定格熱源発生量)よりも多くは得られない場合であっても、ボイラ19を併用することで、前記冷凍機制御弁37の設定上限開度を前記システム定格開度Dよりも大きな値に設定して、冷熱発生システムの定格容量を超える冷凍能力で吸収式冷凍機15を運転することが可能となる。
【0060】
上述した
図1に示す太陽光熱利用冷熱発生システムにおいて、太陽光熱を利用可能な昼の運転モードの場合、前記太陽光熱源制御弁35と、前記開閉弁20a,20bは開状態に制御される。また、前記開閉弁20cは、前記太陽光熱集熱器11で十分な蒸気が得られる場合には閉状態とされて、ボイラ19へは温水が流れないようにし、ボイラ19は停止された状態となる。前記太陽光熱集熱器11で十分な蒸気が得られない場合には、前記開閉弁20cも開かれ、ボイラ19にも温水を流して該ボイラ19でも蒸気を生成し、この蒸気は、前記蒸気発生手段14を介して前記吸収式冷凍機15に送られる。
【0061】
また、前記吸収式冷凍機15からの蒸気ドレンの出口側に設けられている前記開閉弁21は、前記吸収式冷凍機15を作動させる場合には開とされ、吸収式冷凍機15を停止させる場合には閉とされる弁である。更に、前記吸収式冷凍機15と前記空調機18とを接続している冷水配管に設けられている前記開閉弁22a,22bは、空調機18を使用する場合には開とされ、停止させる場合には閉とされる。
【0062】
上記太陽光熱利用冷熱発生システムにおいて、夜間など太陽光熱により高温水等を生成できない場合の運転モード(以下、夜の運転モードという)では、前記太陽光熱源制御弁35と、前記開閉弁20a,20bは閉状態に制御され、ボイラ19に温水を送る配管に設けられている開閉弁20cを開状態に制御する。また、前記ボイラ19には燃料が投入されて該ボイラは駆動され、温水タンク12から循環ポンプ13によりボイラ19に供給された温水を加熱して高温の蒸気、例えば1.9MPa(G)程度(3重効用の場合;2重効用の場合には0.78MPa(G)程度、単効用の場合には0.03MPa(G)程度)の蒸気を生成する。この蒸気は蒸気発生手段14を通って前記吸収式冷凍機15に供給されて、その作動熱源となる。前記吸収式冷凍機15で、稀溶液の濃縮に使用された蒸気は、蒸気ドレンとなり、再び前記温水タンク12に戻される。
【0063】
なお、
図1に示す例では、太陽光熱集熱器11で高温水、または高温水と高温蒸気の混合流体、即ち高温の熱媒体を生成し、蒸気発生手段(セパレータ)14で蒸気と温水に分離して、この蒸気を吸収式冷凍機15に供給する構成としているが、本発明はこのような方式に限られるものではない。例えば、蒸気発生手段14内に伝熱管を配置し、この伝熱管に前記太陽光熱集熱器11で生成された高温の熱媒体(水や水以外の流体)を流し、一方前記蒸気発生手段14には前記吸収式冷凍機15で利用された蒸気ドレン(温水)を導き、この蒸気ドレンと前記伝熱管内を流れる高温の熱媒体とを熱交換させる。伝熱管内を流れる高温の熱媒体により蒸気発生手段14内の蒸気ドレンを加熱することで高温の蒸気を発生させ、この高温蒸気を前記吸収式冷凍機15に再び供給する、という構成にしても良い。
【0064】
また、上述した実施例では、前記冷凍機制御弁37により、前記吸収式冷凍機15から前記空調機18に供給する冷水を設定温度に維持するようにしている(
図4または
図5参照)が、前記制御装置50に前記吸収式冷凍機15から検出された冷水温度情報を取り込み、前記冷水温度を設定温度に維持するように、前記太陽光熱源制御弁35の開度を制御するように構成することも可能である。この場合、前記制御装置50は、前記太陽光熱利用熱源発生装置(太陽光熱集熱器)11での熱源発生量に応じて前記太陽光熱源制御弁35の設定上限開度を調整するように構成すると良い。このように構成することで、前記冷凍機制御弁37を廃止することも可能となる。
【0065】
なお、ボイラ(他熱源発生装置)19を併用したり、或いは夜の運転モードなどでボイラ19単独で吸収式冷凍機15に蒸気供給する場合には、前記ボイラ弁(他熱源制御弁)39を、前記冷水温度が設定温度に維持されるように、前記太陽光熱源制御弁35と共に、或いは前記ボイラ弁39単独で制御する。この場合、前記ボイラ弁39の設定上限開度は、前記冷熱発生システムの定格容量に対する蒸気消費量分の蒸気を供給するための開度(
図2のシステム定格開度Dを参照)となるように設定すると良い。
【0066】
更に、前記太陽光熱源制御弁35、前記ボイラ弁39及び前記冷凍機制御弁37を併用して、前記冷水温度が設定温度に維持されるように、前記制御装置50で制御するように構成することも可能である。
【0067】
次に、
図7〜
図10により、
図1に示した吸収式冷凍機15の構成を説明する。
図7は前記吸収式冷凍機15の1例(3重効用吸収式冷凍機)を示す系統図である。即ち、
図7に示す本実施例の吸収式冷凍機15は、高温再生器1、中温再生器2、低温再生器3を備え、前記高温再生器1には、前述したように、例えば1.9MPaの圧力で温度が212℃の蒸気が投入される蒸気三重効用吸収式冷凍機で構成されている。また、吸収器6からの稀溶液は稀溶液ポンプ(溶液循環ポンプ)70により、前記高温再生器1、中温再生器2及び低温再生器3のそれぞれに並列的に供給される、いわゆるパラレルフローサイクルに構成されている。更に、前記高温再生器1、中温再生器2及び低温再生器3で濃縮された溶液(濃溶液)は濃溶液ポンプ(溶液散布ポンプ)81により前記吸収器6に戻され散布される。
【0068】
前記高温再生器1で稀溶液から分離された冷媒蒸気は中温再生器2に送られて中温再生器2内の稀溶液を加熱した後、中温ドレン熱交換器95及び低温ドレン熱交換器85を通ることで、中温再生器2に供給される稀溶液の一部及び低温再生器3に供給される稀溶液の一部を加熱し、その後凝縮器4に送られて冷却水により凝縮される。
【0069】
前記中温再生器2で稀溶液から分離された冷媒蒸気は低温再生器3に送られて低温再生器3内の稀溶液を加熱した後、低温ドレン熱交換器85を通ることで、低温再生器3に供給される稀溶液の一部を加熱し、その後前記凝縮器4に送られて冷却水により凝縮される。
【0070】
また、8は前記吸収器6から出た稀溶液と前記吸収器6へ供給される濃溶液とを熱交換させる低温熱交換器、9は前記低温熱交換器8で加熱された稀溶液と前記中温再生器2からの濃溶液とを熱交換させる中温熱交換器、10は前記低温熱交換器8で加熱された稀溶液と前記高温再生器1からの濃溶液とを熱交換させる高温熱交換器である。
【0071】
前記凝縮器4で凝縮された液冷媒は蒸発器5に送られ、冷媒ポンプ55で散布されて蒸発器5内を流れる冷水から熱を奪って蒸発し、前記吸収器6に流れて溶液に吸収される。前記蒸発器5を流れる冷水は、例えば15℃で蒸発器5に流入して7℃まで冷却され、その後前記空調機18(
図1参照)などに供給される。
【0072】
前記吸収器6には、クーリングタワーなどから、この例では34℃の冷却水が供給されて吸収器を冷却し、その後前記冷却水は前記凝縮器4に流れて冷媒蒸気を冷却し、自らは39℃程度まで加熱されて再び前記クーリングタワーなどに戻されるように構成されている。
【0073】
前述したように、前記高温再生器1には、1.9MPa(G)で温度が212℃の蒸気が投入され、この熱により高温再生器1内の溶液を濃縮した後、前記蒸気は高温再生器1から蒸気ドレンとなって流出する。しかし、その蒸気ドレンの温度は200℃近い高温状態にあるため、本実施例では更に蒸気ドレン熱回収器105を設けており、前記高温熱交換器10の上流側からバイパス配管P13により稀溶液を導き、該稀溶液を前記蒸気ドレン熱回収器105で加熱して熱回収した後、この稀溶液を前記高温再生器1に導入するように構成している。その結果、前記蒸気ドレン熱回収器105から流出する蒸気ドレンの温度を90℃以下となるまで熱回収できる。
【0074】
図7では、前記吸収式冷凍機15を3重効用吸収式冷凍機とした場合について説明したが、吸収式冷凍機15は3重効用のものに限らず、2重効用或いは単効用の吸収式冷凍機でも同様に適用できるものである。
前記吸収式冷凍機15の他の例として、2重効用吸収式冷凍機とした場合の例を
図8により説明する。
図8は前記吸収式冷凍機15としての2重効用吸収式冷凍機を示す系統図である。
【0075】
図8において、
図7と同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示しているので、重複する説明は省略する。
図8において、
図7と異なるところは、再生器が高温再生器1と低温再生器3の二つだけであり、このため、
図7に示す三重効用の場合の中温再生器2はなく、更に、中温熱交換器9や中温ドレン熱交換器95なども備えられていない。
【0076】
前記高温再生器1には、
図7と同様に、前記太陽光熱集熱器11やボイラ19(
図1参照)からの蒸気が投入される。2重効用吸収式冷凍機に投入される蒸気は、例えば、圧力が0.78MPa(G)で、その温度は174℃程度のものが使用される。
【0077】
吸収器6からの稀溶液は稀溶液ポンプ(溶液循環ポンプ)70により、前記高温再生器1及び低温再生器3のそれぞれに並列的に供給される、いわゆるパラレルフローサイクルに構成されている。更に、前記高温再生器1及び低温再生器3で濃縮された溶液(濃溶液)は濃溶液ポンプ(溶液散布ポンプ)81により前記吸収器6に戻され散布される。
【0078】
前記高温再生器1で稀溶液から分離された冷媒蒸気は低温再生器3及び低温ドレン熱交換器85を通ることで、低温再生器3に供給される稀溶液の一部を加熱し、その後凝縮器4に送られて冷却水により凝縮される。前記低温再生器3で稀溶液から分離された冷媒蒸気も凝縮器4に送られて冷却水により凝縮される。
【0079】
8は前記吸収器6から出た稀溶液と前記吸収器6へ供給される濃溶液とを熱交換させる低温熱交換器、10は前記低温熱交換器8で加熱された稀溶液と前記高温再生器1からの濃溶液とを熱交換させる高温熱交換器である。
【0080】
前記凝縮器4で凝縮された液冷媒は蒸発器5に送られ、冷媒ポンプ55で散布されて蒸発器5内を流れる冷水から熱を奪って蒸発し、前記吸収器6に流れて溶液に吸収される。前記蒸発器5を流れる冷水は、
図7の例と同様に、例えば15℃で蒸発器5に流入して7℃まで冷却され、その後前記空調機18などに供給される。
前記吸収器6にも、
図7の例と同様に、クーリングタワーなどから、34℃の冷却水が供給され、その後前記凝縮器4に流れて、39℃程度まで加熱され、再び前記クーリングタワーなどに戻される。
【0081】
前述したように、前記高温再生器1には、0.78MPa(G)で温度が174℃程度の蒸気が投入され、この熱により再生器1内の溶液を濃縮した後、前記蒸気は高温再生器1から蒸気ドレンとなって流出する。しかし、その蒸気ドレンの温度は160℃前後の高温状態にあるため、この例でも
図7の例と同様に蒸気ドレン熱回収器105を設けており、前記熱交換器8の上流側からバイパス配管P13により稀溶液を導き、該稀溶液を前記蒸気ドレン熱回収器105で加熱して熱回収した後、この稀溶液を前記高温再生器1に導入するように構成している。その結果、前記蒸気ドレン熱回収器105から流出する蒸気ドレンの温度を90℃以下となるまで熱回収できる。
このように、本発明は二重効用の吸収式冷凍機にも同様に適用でき、更に説明は省略するが、単効用の吸収式冷凍機にも同様に適用でき、三重効用の場合と比較すると吸収式冷凍機の効率は低下するものの、ほぼ同様の効果を得ることができる。
【0082】
また、吸収式冷凍機の上記各例では、吸収式冷凍機のサイクル構成がパラレルフロー方式となっているもので説明したが、パラレルフロー方式に限定されるものではなく、シリーズフロー方式やリバースフロー方式を採用した多重効用サイクル(三重効用サイクルや二重効用サイクルなど)の吸収式冷凍機でも同様に適用可能である。更に、前記吸収式冷凍機は、冷水を製造する冷凍機に限定されるものでもなく、冷水のみならず温水も製造する吸収式冷温水機にも同様に適用できるものであり、吸収式冷凍機には吸収式冷温水機も含まれるものである。
【0083】
前記蒸気ドレン熱回収器105による熱回収の効果は、特に夜の運転モードの場合に大きい。夜の運転モードでは、供給される燃料を燃焼させてボイラ19により蒸気を生成するが、200℃(三重効用の場合、二重効用の場合は160℃、単効用の場合100℃)程度の高温の温水を加熱するよりも、前記蒸気ドレン熱回収器105で冷却されて90℃以下になった温水を加熱した方がボイラの熱効率は大幅に向上する。また、蒸気ドレン熱回収器105でも十分に熱回収ができるため、システム全体の効率を向上できる。
【0084】
しかし、昼の運転モードでは、太陽光熱のみで高温水を生成する場合、燃料の消費はない。このため前記蒸気ドレン熱回収器105で熱回収するメリットは小さい。しかも、吸収式冷凍機15単独で見た場合には、前記高温熱交換器10で、前記高温再生器1に供給される稀溶液の全てを、高温再生器1からの高温の濃溶液で加熱した方が、濃溶液の温度をより低下させることができるので、吸収式冷凍機15の効率を向上させることができる。
【0085】
図10は、夜の運転モードと昼の運転モードにおいて、前記蒸気ドレン熱回収器105から流出する蒸気ドレン温度に対するボイラ効率、吸収式冷凍機効率及び太陽光熱集熱器効率をそれぞれ指数で表し、またそのときの冷熱出力値を示す線図である。夜の運転モードでは、蒸気ドレン温度が120℃近辺のとき最高の冷熱出力が得られ、一方昼の運転モードでは、蒸気ドレン温度が200℃近辺となるときに最高の冷熱出力が得られることがわかる。
【0086】
そこで、本実施例では、
図9に示すように、前記蒸気ドレン熱回収器105周辺を構成している。この
図9は上記
図7または
図8に示した高温再生器付近の詳細構成を説明する要部の系統図である。
【0087】
即ち、前記高温熱交換器10をバイパスして前記蒸気ドレン熱回収器105に流れる稀溶液のバイパス配管P13の前記蒸気ドレン熱回収器入口側に、電磁弁または流量調整可能な電動弁26を設けている。また、前記蒸気ドレン熱回収器105が設けられている蒸気ドレンが流れる配管P12には、前記蒸気ドレン熱回収器105をバイパスするようにバイパス配管P14を設け、このバイパス配管P14にも電磁弁または流量調整可能な電動弁27を設けている。更に、前記配管P12のバイパス配管P14分岐部と蒸気ドレン熱回収器105との間にも電磁弁または流量調整可能な電動弁28を設けている。
【0088】
これらの弁(電磁弁または電動弁)26〜28は、吸収式冷凍機15に備えられている制御装置(冷凍機制御装置)29により開閉制御、或いは開度制御ができるように構成されている。また、前記バイパス配管P14が合流する前記蒸気ドレン熱回収器105下流側の配管P12には、そこを流れる蒸気ドレンの温度を検出するための温度検出器30が設けられている。
【0089】
前記制御装置29には、前記温度検出器30からの温度情報と、
図1に示す太陽光熱利用冷熱発生システム(ボイラ含む)の運転情報が、例えば前記システム制御装置50(
図1参照)を介して入力され、この制御装置29は、例えば次のように前記弁26〜28を制御する。
図1に示す太陽光熱を利用して蒸気を生成する昼の運転モードの場合には、制御装置29により、前記弁26と28は閉じられ、弁27は開となるように制御される。これにより、高温再生器1から出た蒸気ドレンは例えば195℃(3重効用の場合、2重効用の場合は160℃、単効用の場合100℃)程度で温水タンク12に戻され、該温水タンク12の温水は循環ポンプ13により太陽光熱集熱器11に供給されて、太陽光熱により例えば220〜250℃(3重効用の場合、2重効用の場合は175℃程度、単効用の場合110℃程度)の高温水となるように加熱される。これにより、吸収式冷凍機15の前記高温再生器1には例えば212℃(3重効用の場合、2重効用の場合は174℃、単効用の場合107℃)程度の蒸気が供給されるという循環を繰り返す。
【0090】
夜の運転モードの場合には、太陽光熱は利用されず、燃焼による加熱源により、ボイラで蒸気が生成されるので、この場合にはボイラ効率が向上するように制御装置29は制御を行う。即ち、前記弁26〜28が電磁弁(開閉弁)で構成されている場合には、前記弁26と28を開き、弁27を閉じるように制御する。これによって高温の蒸気ドレンから蒸気ドレン熱回収器105により熱回収して高温再生器1に供給される稀溶液の温度を上昇させることができる。また、蒸気ドレンの温度も例えば90℃以下になるまで熱回収でき、前記ボイラ19には低い温度の温水を供給できるからボイラ効率を向上できる。
【0091】
前記弁26〜28を流量調整可能な電動弁とした場合には、ボイラ効率と吸収式冷凍機の効率を合わせた効率がより向上するように制御することもできる。即ち、前記蒸気ドレン熱回収器105での熱回収量を多くするほどボイラ効率は向上するが、前記高温熱交換器10での熱交換量は減少するから、高温再生器1からの濃溶液を前記高温熱交換器10で十分に冷却することができなくなり、吸収式冷凍機15の効率は低下する。
【0092】
そこで、ボイラ効率と吸収式冷凍機の効率を合わせた全体の効率と前記温度検出器30で検出される温度との関係を予め実験や解析で求めておき、温度検出器30で検出される温度が、ボイラ効率(燃焼による加熱源の効率)と吸収式冷凍機の効率を合わせた全体の効率がより向上する所定の温度範囲となるように、制御装置29により前記弁26〜28を制御する。このように構成することにより、ボイラ効率と吸収式冷凍機の効率を合わせた効率がより向上するように制御することが可能となる。
【0093】
なお、本実施例では、前記システム制御装置50と前記冷凍機制御装置29を別々に設けて制御するように構成しているが、これらの制御装置29,50を共用して1つの制御装置で制御するように構成することもできる。
【0094】
以上説明したように、本実施例では、太陽光熱を利用するため200℃(3重効用の場合、2重効用の場合は174℃、単効用の場合は107℃)以上の高温蒸気を得ることができるので、三重効用の蒸気吸収式冷凍機と組み合わせることにより、効率の高い太陽光熱利用システムを得ることができる。また、従来のように、フラッシング再生器を設ける必要がなく、太陽光熱と燃焼による加熱源の何れによっても、吸収器で希釈された稀溶液を濃縮することができる。しかも、高温再生器で熱交換した後の蒸気ドレンからも蒸気ドレン熱回収器により熱回収できるようにしているので、特に燃焼による加熱源(ボイラや工場スチームなどの熱源)により蒸気を生成して吸収式冷凍機を運転する場合の効率を大幅に向上できる。
【0095】
更に、上述した弁26〜28を設けることにより、太陽光熱を利用して生成された蒸気を使用して吸収式冷凍機を運転する場合には、前記蒸気ドレン熱回収器105での熱回収を行わないようにし、前記高温熱交換器10で高温の濃溶液から熱回収することにより、太陽光熱利用時でも吸収式冷凍機の効率を向上できる。
【0096】
また、前記弁26〜28を開度調整可能な電動弁とし、蒸気ドレン熱回収器下流の蒸気ドレン温度を検出して前記弁を制御することで、ボイラ(燃焼による加熱源)の運転効率と吸収式冷凍機の運転効率とを合わせた総合効率がより高くなるように制御することも可能になる。
【0097】
なお、上述した実施例では、蒸気ドレン熱回収器105での熱回収を制御するのに3つの弁26〜28を設けているが、上記弁27は必ずしも必要ではない。また、上記弁28を設けることにより、蒸気ドレン熱回収器105に稀溶液を流さない場合に、高温の蒸気ドレンも前記熱回収器105に流さないようにすることができる。これにより、前記熱回収器105に残存している溶液が結晶化するのを防止できる効果がある。