(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部にブラインド(20)を配設した複層ガラス(10)のガラス板(12)外面上に移動可能に設けられた操作部(42)と、操作部と少なくともガラス板を挟んで対向し複層ガラス内に移動可能に設けられた従動部(44)と、が備えられ、操作部と従動部の一方に磁石(56、66)が、他方に磁石(66、56)または磁性体が備えられ、ガラス板を介した磁力による吸着力を利用して、操作部の運動を従動部へと伝達してブラインドの回転軸(24)を回転させることができるブラインドの操作装置において、
操作部(42)には溝部(50d)が形成され、溝部(50d)は操作部(42)の移動方向に延びると共に、操作部(42)の移動方向と直交する方向において操作部(42)の中心線からオフセットされた位置に配置され、操作部(42)には溝部(50d)よりも中心線側の位置に磁石(56)または磁性体が配置されており、ガラス板上には操作部の移動方向に延びて溝部(50d)に嵌め込まれて操作部(42)を案内するガイドリブ(46)が設けられ、ガイドリブ(46)の両端部には操作部(42)の所定量以上の移動を規制するストッパ(46b、46c)が形成され、
操作部(42)の溝部(50d)は、操作部がガイドリブ(46)に対してガラス板の正面側から取付けられるために、弾性変形可能となっていることを特徴とするブラインドの操作装置。
ガイドリブ(46)には操作部(42)の移動方向と平行にガイド面(46e)が形成され、操作部(42)の溝部(50d)にはガイド面(46e)に係合する係止部(50e)が形成され、係止部(50e)とガイド面(46e)との係合によって操作部(42)がガイドリブ(46)から離間する方向への移動が規制されることを特徴とする請求項1記載のブラインドの操作装置。
【背景技術】
【0002】
このようなブラインドの操作装置としては、特許文献1のブラインド内蔵複層ガラスの操作装置が知られている。これに示されるブラインド内蔵複層ガラスは、方形枠状に上下左右のスペーサを連結し、このスペーサの両面を2枚のガラス板で挟んで構成される複層ガラス内に梯状の吊り紐を介して角度調整可能なブラインドを吊設して構成されており、その操作装置としては、複層ガラスの外面に上下移動可能に設けられた操作部と、複層ガラス内の側部のスペーサに沿って上下移動可能に設けられ、操作部に磁力で吸着されて操作される被操作部とから構成される。そして、側部および上部のスペーサに沿って直線運動を伝達する可撓性を有する伝達部材が、上記被操作部から上隅部の曲線状ガイド部にガイドされて、上部のスペーサ内に配置したプーリを回動操作して梯状の吊り紐を駆動し、ブラインドのスラットを回転操作するように構成されている。
【0003】
操作部は、上下にガイド片部を一体的に有しており、これらガイド片部を含む操作部がガラス板の外面に取付けフレームを介して上下方向に移動可能に取付けられている。即ち、取付けフレームは、ガラス板の外面に両面粘着テープ、接着剤等で固定されており、操作部は取付けフレーム内に配設されて、操作部の両側部に形成される突部が取付けフレームの内周の両側部に形成される溝に上下方向に移動可能に嵌り合っているとともに、操作部の上下方向の可動範囲は、操作部の上下のガイド片部が取付けフレームの上端及び下端に当接することで規制されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように特許文献1で提案される操作部は、取付けフレーム内に配設される構成であるため、取付けフレームの大きさは操作部よりも当然大きくなる。このため、ガラス板の外面に取り付けられる取付けフレームを含む操作装置が大型化し、見栄えが悪く、さらにコストも高くなるという問題がある。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、小型化及び意匠性の向上を図り、さらにコストの低減も図ることができるブラインドの操作装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、
本発明
の一態様は、内部にブラインドを配設した複層ガラスのガラス板外面上に移動可能に設けられた操作部と、操作部と少なくともガラス板を挟んで対向し複層ガラス内に移動可能に設けられた従動部と、が備えられ、操作部と従動部の一方に磁石が、他方に磁石または磁性体が備えられ、ガラス板を介した磁力による吸着力を利用して、操作部の運動を従動部へと伝達してブラインドの回転軸を回転させることができるブラインドの操作装置において、
操作部には溝部が形成され、溝部は操作部の移動方向に延びると共に、操作部の移動方向と直交する方向において操作部の中心線からオフセットされた位置に配置され、操作部には溝部よりも中心線側の位置に磁石または磁性体が配置されており、ガラス板上には操作部の移動方向に延びて溝部に嵌め込まれて操作部を案内するガイドリブが設けられ、ガイドリブの両端部には操作部の所定量以上の移動を規制するストッパが形成されることを特徴とする。
【0008】
また、ガイドリブには操作部の移動方向と平行にガイド面が形成され、操作部の溝部にはガイド面に係合する係止部が形成され、係止部とガイド面との係合によって操作部がガイドリブから離間する方向への移動が規制されることを特徴とする。
【0009】
また、操作部はガイドリブに対してガラス板の正面側から取付けられることを特徴とする。
【0010】
また、操作部の溝部は弾性変形可能となっており、弾性変形することでガイドリブの嵌め込みを可能とすることを特徴とする。
【0011】
また、操作部のガラス板面からの突出高さ寸法は5.5ミリ以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操作部の溝部の位置と磁石または磁性体の位置とが操作部の移動方向と直交する方向においてずれているため、操作部の突出高さ寸法を小さく設定でき、操作部を小型化することができ意匠性も向上させることができる。溝部を、操作部の移動方向と直交する方向において操作部の中心線からオフセットされた位置とし、磁石または磁性体を操作部の移動方向と直交する方向において操作部の中心線側の位置とすることで、磁石または磁性体の部品点数を抑えて低コストを図りつつ、従動部の磁石または磁性体と対向する面積を大きくとることができて、十分な吸着力を発生させることができる。
【0013】
また、溝部にガイドリブを嵌め込んで、操作部をガイドリブで案内するようにしたために、操作装置を小型化することができ意匠性も向上させることができる。さらにガイドリブの両端部にはストッパが設けられるため、操作部のガイドリブからの脱落を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、複層ガラス10は、方形枠状に上下左右のスペーサ14を連結し、このスペーサ14の前後面を2枚のガラス板12で挟んで構成され、ガラス板12で挟まれた内部空間16を画成しており、この内部空間16内にブラインド20が配設される。
【0016】
ブラインド20は、上枠22a、下枠22b及び一対の縦枠22cからなるフレーム22と、上枠22a内で水平方向に延び回転可能に支持された回転軸24と、回転軸24上に回転軸24と一体に回転可能に設けられた回転ドラム25と、回転ドラム25に上端が連結されて回転ドラム25の回転に従動して傾動するラダーテープ28と、ラダーテープ28に整列状態に支持される多数のスラット26と、スラット26列の下方に配設され、ラダーテープ28の下端が連結されるとともに下枠22b内に昇降が規制されて支持されるボトムレール30と、一方の縦枠22c内で鉛直方向に延び回転可能に且つ上下に移動不能に支持された伝達軸32と、伝達軸32と回転軸24との間に設けられた伝達機構34と、を備える。
【0017】
伝達機構34は、互いに直交する方向に延びる回転軸24と伝達軸32のそれぞれの端部において、その回転方向を変換して伝達するためのもので、かさ歯車やはすば歯車などによって構成され、伝達軸32からの回転を回転軸24に伝達するようになっている。伝達軸32の外周面には、雄ネジ32aが形成されており、この伝達軸32を回転操作するために、操作装置40が設けられる。
【0018】
操作装置40は、複層ガラス10のガラス板12外面上に移動可能に設けられた操作部42と、操作部42と少なくともガラス板12を挟んで対向し複層ガラス10内に移動可能に設けられた従動部44と、操作部42を摺動自在に案内するガイドリブ46と、から構成される。
【0019】
操作部42は、
図2〜
図4に示すように、ケース本体52とケース本体52に嵌合するカバー54とからなる直方体状のケース50と、ケース50の磁石収納部50b内に収容される磁石56とを備える。
【0020】
ケース50のガラス板12面に対向する面には、ガラス板12面方向に突出する複数の突起50aが形成されており、これら突起50aの先端がガラス板12面に当接している。
【0021】
また、ケース50には、ケース本体52の一側面から一体的に延設されて、ガイドリブ46方向に突出する嵌合部50cが設けられる。嵌合部50cは、ケース50の水平方向(即ち、操作部42の移動方向に直交する方向)において見て、その中心線からオフセットされた位置に配置される。これに対して、磁石収納部50bに収容された磁石56は、中心線を含む位置に配置される。
【0022】
嵌合部50cは、この例では上下に2カ所において、鉛直方向に延びる溝部50dを画成しており、溝部50dの入口側には、互いに接近する方向に突出する一対の係止部50eが形成される。溝部50dは、一対の係止部50eの距離が変化することで、弾性変形可能となっている。
【0023】
磁石56を収容する磁石収容部50bと溝部50dとの位置とが重複せずに水平方向にずれているため、操作部42のケース50のガラス板12面からの突出高さを低く抑えることができる。好ましくは、操作部42のガラス板12面からの突出高さは所定寸法以下に設定されているとよい。この所定寸法とは、複層ガラスを引き違い窓に使用したときに、複層ガラス10と窓サッシとの段差寸法に、引き違う窓サッシ同士の隙間寸法を加えた大きさであり、具体的には、5.5mm以下とされるとよい。
【0024】
また、磁石収納部50bが溝部50dによって分断・分割されないため、大きな磁石を磁石収納部50bに収納することができて、磁石56の数を抑えて低コストを図ることができると共に、従動部44の磁石66との対向面積を大きくして、十分な吸着力を発生させることができる。
【0025】
従動部44は、
図3及び
図4に示すように、一方の縦枠22c内で上下に摺動可能に配設されており、ケース本体62とケース本体62に嵌合するカバー64とからなる直方体状のケース60と、ケース60内に収容される磁石66と、同じくケース60内に収容されるスペーサ68と、を備える。操作部42のケース50と従動部44のケース60とは互いに対向する面がほぼ同じ大きさとされている。
【0026】
ケース60の縦枠22cに対向する面には、それぞれが対面する縦枠22c方向に突出する複数の突起60aが形成されており、これら突起60aの先端がそれぞれ縦枠22cに当接している。
【0027】
ケース60には、ケース本体62の一側面から一体的に延設されて、伝達軸32方向に突出する連結部60bが設けられる。連結部60bには、雌ネジ60dが形成され伝達軸32が貫通する貫通ネジ孔60cが形成されており、貫通ネジ孔60cの雌ネジ60dに伝達軸32の雄ネジ32aが螺合している。これにより、連結部60bが上下動することによって、上下に移動不能となった伝達軸32が回転することができるようになっている。
【0028】
ガイドリブ46は、一方の縦枠22c上のガラス板12面上に両面テープ等の固定手段で固定されており、従動部44に対して伝達軸32がある側とは反対側の位置に、且つ長手方向が従動部44の摺動方向と平行になるように、即ち、鉛直方向に配置されている。ガイドリブ46は、上下両端部以外の部分の横断面形状が略T字形状をしており、T字の底面46aがガラス板12面に固定される。また、ガイドリブ46の上下両端部は、ガラス板12面に固定されるストッパ46b、46cとなっている。
【0029】
T字の横方向に延びる頂部46dに操作部42の溝部50dが嵌合し、頂部46dの裏面のガイド面46eに、操作部42の係止部50eが係止するようにして、ガイドリブ46が操作部42の溝部50dに嵌め込まれる。ガイドリブ46の長さ寸法は、従動部44の摺動範囲に対応した大きさ、即ち、回転軸24に全回転角度範囲の回転を伝達するために必要な、伝達軸32が回転する角度範囲を回転させるための従動部44の摺動範囲とされている。
【0030】
ガイドリブ46への操作部42の組み付け方法は、まず、
図4(a)に示すように、ガラス板12面上にガイドリブ46のみを両面テープ等で固定する。このとき、操作部42と従動部44との間で発生し得る磁力が作用しない中で、ガイドリブ46のみをガラス板12面上に固定することができるため、ガイドリブ46の位置決めや固定作業が容易に行える。
【0031】
次に、操作部42のケース50と従動部44のケース60とが対向し、操作部42の溝部50dがガイドリブ46の頂部46dに対して平行に位置するように、操作部42の位置決めを行う。
【0032】
次に、
図4(b)に示すように、
図4(a)の姿勢を保ちつつ操作部42をガラス板12方向へ移動させ、操作部42の係止部50eをガイドリブ46の頂部46dに押し付ける。これにより、操作部42の溝部50dが弾性変形し、一対の係止部50eの間隔がガイドリブ46の頂部46dによって押し広げられる。
【0033】
操作部42の係止部50eをガイドリブ46の頂部46d方向にさらに押し付けると、
図4(c)に示すように、操作部42の一対の係止部50eがガイドリブ46の頂部46dを乗り越え、ガイド面46e側に移動する。これにより、ガイドリブ46が溝部50dに嵌め込まれ、操作部42がガイドリブ46に取付けられる。操作部42のガイドリブ46から離隔する方向への移動は、操作部42の係止部50eがガイドリブ46のガイド面46eに係合するため規制される。
【0034】
このように、あらかじめガラス板12面にガイドリブ46を固定した後、ガイドリブ46に操作部42を取付ける構成であるため、操作部42を正確な位置に取付けることができる。
【0035】
また、仮に、操作部42をガイドリブ46に対して端部からスライドさせて嵌め込むようにすると、操作部42の磁石56と従動部44の磁石66とが反発して従動部44が逃げてしまい、操作部42のケース50と従動部44のケース60とを対向して取付けることができない可能性がある。その上、ガイドリブ46のストッパ46b、46cが邪魔になる可能性もある。しかしながら、操作部42をガイドリブ46に対してガラス板12面の正面側から取付けることで、操作部42の磁石56と従動部44の磁石66の作用による反発を回避しながら組み付けることができ、ストッパ46b、46cが邪魔になることもない。
【0036】
このように組み付けられた操作部42は、
図3に示すように、磁石56が従動部44の磁石66と重なり合うように配設され、これら磁石56及び66との間で発生する磁力により操作部42と従動部44が互いに吸着した状態となっている。よって、操作部42は自重によって落下することなく、所定の高さ位置に保持されている。また、意図的に操作部42を上下方向に摺動させると、従動部44が操作部42と一体に上下方向に摺動し、伝達軸32が回転することになる。また、操作部42は、ガイド面46eに沿ってガイドリブ46を上下方向に摺動するが、ガイドリブ46の上下両端部のストッパ46b、46cによりそれ以上の移動が規制される。
【0037】
こうして、操作部42の係止部50eとガイドリブ46のガイド面46eとの係合と、ガイドリブの上下端部のストッパ46b、46cにより、操作部42のガイドリブ46からの脱落が防止されている。
【0038】
次に本実施の形態の作用について説明する。
図5に示すように、操作部42がガイドリブ46の上下方向中間位置にあるときは、
図7に示すように、スラット26は水平な状態にあり、スラット26越しに人のシルエット70や景色などが見える。
【0039】
この状態から、操作部42をガイドリブ46に沿って上昇させると、操作部42と一体に従動部44が上昇し、伝達軸32が回転する。この伝達軸32の回転が回転軸24に伝達し、ラダーテープ28が傾動して、スラット26が回転していく。そして、操作部42の係止部50eがガイドリブ46の上端のストッパ46bに当接する位置、即ち、
図6の実線で示す位置まで上昇すると、スラット26がほぼ垂直な全閉状態になるまで回転する。これにより、上下に隣り合うスラット26の上下端部同士が重なり合い、スラット26によってガラス板12面が閉鎖されることになる。これにより、
図8に示すように、スラット26越しに人のシルエット50などが見えなくなり、ガラス板12越しに室内に侵入する日光や、外部の人の視線なども遮断することができる。
【0040】
また、
図6の実線で示す位置から、操作部42をガイドリブ46に沿って下降させると、操作部42と一体に従動部44が下降し、伝達軸32が上昇時とは反対回りに回転する。これにより、回転軸24も上昇時とは反対回りに回転し、ラダーテープ28が上昇時とは反対方向に傾動する。そして、操作部42を
図6の仮想線で示す位置、即ち、操作部42の係止部50eがガイドリブ46の下端のストッパ46cに当接する位置まで下降すると、スラット26が180度反転した垂直な全閉状態になる。これにより、上昇時と同様に、上下に隣り合うスラット26の上下端部同士が重なり合い、スラット26によってガラス板12面が閉鎖され、
図8に示すように、スラット26越しに人のシルエット70などが見えなくなり、ガラス板12越しに室内に侵入する日光や、外部の人の視線なども遮断することができる。ただし、スラット26が断面円弧形の形状を有している場合、操作部42の上昇時と下降時とでは、垂直になったスラット26の凸面の向きが前後逆方向になる。
【0041】
以上のように、本発明においては、操作部42の溝部50dにガイドリブ46を嵌め込んで、操作部42の移動をガイドリブ46で案内するようにしたために、操作装置40を小型化することができ意匠性も向上させることができる。
【0042】
操作部42の溝部50dは、嵌合部50cの上下全長に亘り設けてもよいが、本例のように、分散して複数個所設けることにより、操作部42をガイドリブ46に対して摺動させるときの摺動抵抗を軽減することができる。また、操作部42をガイドリブ46に取付けるときに、係止部50eを含めた溝部50dの弾性変形を容易に行わせることができる。
【0043】
尚、以上の実施形態では、操作部42と従動部44のそれぞれに磁石を設けて、互いの磁石によって発生する吸着力を利用していたが、これに限るものではなく、操作部42と従動部44のいずれか一方は、磁石に替えて磁性体とするか、または、磁石と磁性体の組み合わせとすることもできる。
【0044】
また、以上の実施形態では、回転軸24の回転に従動してスラット26の回転が行われるようになっていたが、これに限るものではなく、回転軸24の回転によりブラインド20の任意の動作が行われるようにしてもよい。