特許第5976467号(P5976467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976467
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】シールド接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6591 20110101AFI20160809BHJP
   H01R 4/38 20060101ALI20160809BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   H01R13/6591
   H01R4/38
   H05K9/00 W
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-197416(P2012-197416)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-53186(P2014-53186A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】古川 翔一
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/089160(WO,A1)
【文献】 特開平11−087985(JP,A)
【文献】 特開平7−94246(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3094352(JP,U)
【文献】 特開昭63−111605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6591
H01R 4/38
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シールド層と第2シールド層との間に組み付けられ、前記第1シールド層と前記第2シールド層とに電気的に接続されるシールド接続構造であって、
前記第2シールド層側に形成され、前記第2シールド層と電気的に接続する弧状の接点部と、
前記接点部と前記第2シールド層との接圧を調整する可動構造と
を備えたことを特徴とするシールド接続構造。
【請求項2】
前記接点部を有するスライダーシェルと、
前記スライダーシェルに嵌合するインナーシェルを有する固定接続部と、
前記スライダーシェルと前記固定接続部との外表面を覆うように設けられたスライダーハウジングとを備え、
前記可動構造として、前記スライダーハウジングの内表面と前記固定接続部の外表面とには、互いに螺合するネジが切られ、
前記スライダーハウジングの回転に伴って、前記スライダーシェルが移動し、前記接点部と前記第2シールド層との接圧が調整される
ことを特徴とする請求項1に記載のシールド接続構造。
【請求項3】
前記接点部は、前記スライダーシェルの軸心を挟んで両側に1つずつ形成されていることを特徴とする請求項2に記載のシールド接続構造。
【請求項4】
前記スライダーシェルの内径は、前記インナーシェルの外径より大きく、前記スライダーハウジングの回転に伴って、前記スライダーシェルの側面が前記スライダーハウジングに押されて前記第2シールド層側に移動する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のシールド接続構造。
【請求項5】
前記スライダーシェルの内表面には、前記インナーシェルの外表面と接触する突起部が形成され、
前記インナーシェルの外表面には、軸方向に前記突起部と係合する溝が形成されている
ことを特徴とする請求項2から4までのいずれか一項に記載のシールド接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド層と接触して導通する接点部を有するシールド接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子を電気的に接続させる技術が知られている。例えば、雄端子金具の挿入により、雌端子金具内の弾性接触片が弾性変形しつつ、雄端子金具を狭持して、雄端子金具と雌端子金具とが電気的に接続される技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、図6に示す従来の技術では、第1シールド層1と第2シールド層2との間に、シールド接続構造9が組みつけられている。シールド接続構造9は、固定接続部91と、固定接続部91と電気的に接続されるスライダーシェル92と、固定接続部91及びスライダーシェル92の外表面を覆うスライダーハウジング93とで構成されたASSY(組み付け)部品である。
【0004】
また、スライダーシェル92の第2シールド層2側の端部には、表面をメッキ処理された第2シールド層側接点部922a、922bが設けられている。スライダーシェル92を第2シールド層2に形成された挿入孔21に挿入すると、第2シールド層側接点部922a、922bが挿入孔21の内壁と接触し、スライダーシェル92と第2シールド層2とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−082082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術及び従来の技術では、挿入側が被挿入側に対して斜めに挿入された場合等に、挿入側の表面のメッキ層等が傷ついて品質を損ねたり、接圧を調整できず、接触信頼性に影響が出たりする虞があった。
【0007】
本発明の目的は、このような状況に鑑みてなされたものであり、接点部を傷つけずに接圧を調整して接触信頼性を向上させることができるシールド接続構造の技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシールド接続構造は、第1シールド層と第2シールド層との間に組み付けられ、前記第1シールド層と前記第2シールド層とに電気的に接続されるシールド接続構造であって、前記第2シールド層側に形成され、前記第2シールド層と電気的に接続する弧状の接点部と、前記接点部と前記第2シールド層との接圧を調整する可動構造とを備えたことを特徴とする。
また、前記接点部を有するスライダーシェルと、前記スライダーシェルに嵌合するインナーシェルを有する固定接続部と、前記スライダーシェルと前記固定接続部との外表面を覆うように設けられたスライダーハウジングとを備え、前記可動構造として、前記スライダーハウジングの内表面と前記固定接続部の外表面とには、互いに螺合するネジが切られ、前記スライダーハウジングの回転に伴って、前記スライダーシェルが移動し、前記接点部と前記第2シールド層との接圧が調整されてもよい。
また、前記接点部は、前記スライダーシェルの軸心を挟んで両側に1つずつ形成されてもよい。
また、前記スライダーシェルの内径は、前記インナーシェルの外径より大きく、前記スライダーハウジングの回転に伴って、前記スライダーシェルの側面が前記スライダーハウジングに押されて前記第2シールド層側に移動してもよい。
また、前記スライダーシェルの内表面には、前記インナーシェルの外表面と接触する突起部が形成され、前記インナーシェルの外表面には、軸方向に前記突起部と係合する溝が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接点部を傷つけずに接圧を調整して接触信頼性を向上させることができるシールド接続構造の技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のシールド接続構造の外観を示す斜視図であり、第1バネ部及び第2バネ部が第2シールド層に接触していない状態を示す図である。
図2図1に示すA−A断面図である。
図3図2に示すスライダーハウジングを回転させて、第1バネ部及び第2バネ部と第2シールド層とを接触させた状態を示す図である。
図4図3に示すスライダーハウジングを更に回転させて、第1バネ部及び第2バネ部と第2シールド層との接圧を強めた状態を示す図である。
図5図1に示すシールド接続構造の上面図であり、スライダーハウジングを回転させて、第1バネ部及び第2バネ部を第2シールド層に接触させる様子を示した図である。
図6】従来のシールド接続構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態のシールド接続構造3の外観を示す斜視図であり、第1バネ部322a及び第2バネ部322bが第2シールド層2に接していない状態を示す図である。また、図2は、図1に示すA−A断面図である。
【0013】
シールド接続構造3は、第1シールド層1と第2シールド層2との間に組み付けられ、第1シールド層1及び第2シールド層2と電気的に接続(導通)される。この第1シールド層1と第2シールド層2との間の距離は、設計上の誤差を有することがある。そのため、シールド接続構造3の第1シールド層側接触部(不図示)を第1シールド層1と電気的に接続させたときに、シールド接続構造3の第2シールド層側接点部322が第2シールド層2に届かないことがある。つまり、第2シールド層側接点部322が第2シールド層2に接触できず、第2シールド層側接点部322と第2シールド層2との電気的な接続が十分でないことがある。
【0014】
本実施形態では、シールド接続構造3の第1シールド層側接触部と第1シールド層1とは、予め電気的な接続が確保されているものとし、シールド接続構造3の第2シールド層側接点部322と第2シールド層2とを電気的に接続させる技術について説明する。なお、以下では、シールド接続構造3の第1シールド層側接触部は、適宜第1シールド層1と電気的に接続されているものとし、第1シールド層側接触部と第1シールド層1との詳細な固定態様を省略して示す。
【0015】
シールド接続構造3は、スライダーシェル32と、固定接続部31と、固定接続部31及びスライダーシェル32の外表面を覆うスライダーハウジング33とで構成されている。
【0016】
スライダーシェル32は、電気的低効率が低く弾性を有する、例えばりん青銅等の金属である。スライダーシェル32は、内部に信号線等(不図示)を通すことができるように、空洞で管状に形成されている。スライダーシェル32の第2シールド層2側の端部は、第2シールド層2に形成された挿入孔21に挿通されている。
【0017】
また、スライダーシェル32の管状壁には、軸心を挟んで両側にメッキ処理されたそれぞれ第1バネ部322aと第2バネ部322bとが形成されている。第1バネ部322aと第2バネ部322bは、シールド接続構造3の第2シールド層側接点部322であり、スライダーシェル32の管状壁の一部を第2シールド層2側から外側に向かって湾曲させるように形成されている。つまり、第1バネ部322aと第2バネ部322bは、第2シールド層2側に弧状の接点部を有するように形成されている。
【0018】
固定接続部31は、第2シールド層2側から順に、スライダーシェル32に嵌合するインナーシェル314と、インナーシェル314をケーブル部4のシールド層(不図示)に連結する連結金具313と、ケーブル部4を覆うインシュレータ311とで構成されている。インナーシェル314と連結金具313とは、いずれも金属製であり、内部にケーブル部4等の信号線(不図示)を通すことができるように、空洞で管状に形成されている。固定接続部31は、不図示の第1シールド層側接触部を有し、第1シールド層1を介してプリント基板の接地層と導通する。
【0019】
インナーシェル314は、外径がスライダーシェル32の内径より僅かに小さく、スライダーシェル32の内側に嵌合しやすいように、スライダーシェル32側の端部が先細りした形状となっている。また、スライダーシェル32の内表面には、インナーシェル314の外表面と接する凸状の突起部321が設けられており、スライダーシェル32とインナーシェル314との接圧が確保されている。
【0020】
また、シールド接続構造3には、第1バネ部322a及び第2バネ部322bを軸方向に伸縮可能にする可動部構造として、ケーブル部4を覆うインシュレータ311の外表面とスライダーハウジング33の内表面とに、互いに螺合するネジ40が切られている。なお、インシュレータ311とスライダーハウジング33とは、電気的な絶縁性を有し、ネジ加工が可能な程度の剛性を有する例えば樹脂製であればよい。
【0021】
そのため、図3に示すように、スライダーハウジング33を固定接続部31に対して所定方向に回転させると、スライダーハウジング33が回転しながら第2シールド層2側に軸方向に移動する。これにより、連結金具313の第2シールド層2側の側面とスライダーハウジング33との間には隙間50が生じる。
【0022】
また、スライダーハウジング33とスライダーシェル32との間には、スライダーハウジング33がスライダーシェル32に対して回転可能となるように、僅かな隙間が形成されている。また、スライダーシェル32は、インナーシェル314よりも外径が大きく、第1シールド層1側の側面もスライダーハウジング33に覆われている。そのため、スライダーハウジング33が第2シールド層2側に移動するにつれて、スライダーシェル32の側面がスライダーハウジング33に押され、スライダーシェル32が第2シールド層2側に移動する。その結果、第1バネ部322a及び第2バネ部322bが第2シールド層2に接触する。
【0023】
このとき、スライダーシェル32は、インナーシェル314の外表面を摺動しながら第2シールド層2側に移動する。つまり、スライダーシェル32の内表面に設けられた突起部321とインナーシェル314の外表面とにおける接点位置が第2シールド層2側に移動することになる。ただし、スライダーハウジング33とインシュレータ311とによるネジ40の可動範囲は、スライダーシェル32とインナーシェル314との電気的な接続状態が確保される範囲に設計されている。そのため、スライダーハウジング33が最大限移動したとしても、スライダーシェル32の突起部321は、インナーシェル314の外表面に接触した状態を保つ。
【0024】
なお、インナーシェル314の外表面には、長手方向(軸方向)にスライダーシェル32の突起部321と係合する溝が設けられてもよい。これによれば、スライダーシェル32がスライダーハウジング33とともに回転することを防止でき、第1バネ部322a及び第2バネ部322bが第2シールド層2の表面上を旋回して、第1バネ部322a及び第2バネ部322bのメッキ層が傷つくことを防止できる。
【0025】
そして、図4に示すように、スライダーシェル32が第2シールド層2側に移動するにつれて、第1バネ部322aと第2バネ部322bとは、更に第2シールド層2に押し付けられる。
【0026】
このとき、第1バネ部322aと第2バネ部322bとは、弾性をもたせるように弧状に形成されているので、第2シールド層2との接圧が増すにつれて、第2シールド層2の表面を摺動しながら外側に押し広がるように変形する。そのため、第1バネ部322aと第2バネ部322bとを第2シールド層2に接触させる際に、第1バネ部322aと第2バネ部322bとの表面のメッキ層を傷つけることがなく、製品品質を向上させることができる。また、第1バネ部322a及び第2バネ部322bと第2シールド層2との接圧を十分に確保することができ、接触信頼性を高めることができる。
【0027】
図5は、図1に示す上面図であり、図5(a)〜(c)は、それぞれ図3〜4に対応している。図5(a)に示すように、第1バネ部322a及び第2バネ部322bが第2シールド層2に接触していない状態から、スライダーハウジング33を回転させて、第2シールド層2側にL1移動させると、図5(b)に示すように第1バネ部322a及び第2バネ部322bが第2シールド層2に接触した状態になる。このとき、スライダーシェル32の端部は、スライダーハウジング33の移動に伴って、第2シールド層2の後方にL1移動している。
【0028】
更に、スライダーハウジング33を回転させて、図5(a)に示す状態からスライダーハウジング33を第2シールド層2側にL2移動させると、図5(c)に示す状態となる。図5(c)では、第1バネ部322a及び第2バネ部322bと第2シールド層2との接圧が強くなり、第1バネ部322a及び第2バネ部322bが第2シールド層2に押し付けられて外側に変形している。また、スライダーシェル32の端部は、スライダーハウジング33の移動に伴って、第2シールド層2の後方にL2移動している。
【0029】
このように、本実施形態によれば、シールド接続構造3の第2シールド層側接点部322を第2シールド層2側に弧状となるように形成し、可動部構造によって、第2シールド層2との接圧を調整できるように構成したので、第2シールド層側接点部322のメッキ層を傷つけることなく、接圧を調整して接触信頼性を向上させることができる。
【0030】
なお、シールド接続構造3は、端部が第2シールド層2の挿入孔21に挿入されているので、ある程度位置決めされているが、若干斜めに第1シールド層1と第2シールド層2との間に組み付けられてしまうこともある。この場合、一方のバネ部は、他方のバネ部よりも第2シールド層2に対する接圧が強くなるが、接圧が増すにつれて第2シールド層2の表面を摺動して外側に押し広がるように変形するため、過大な接圧を逃がすことができる。そのため、シールド接続構造3が若干斜めに第1シールド層1と第2シールド層2との間に組み付けられていても、第2シールド層2に対する第1バネ部322aの接圧と、第2シールド層2に対する第2バネ部322bの接圧とを略等しくさせることができる。
【0031】
また、第2シールド層2に対する第1バネ部322a又は第2バネ部322bの接圧が強くなりすぎたときは、スライダーハウジング33を回転させて、スライダーハウジングを第2シールド層2から離れるように移動させることで、接圧を弱くするように調整することもできる。
【0032】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0033】
1:第1シールド層
2:第2シールド層
3、9:シールド接続構造
4:ケーブル部
21:挿入孔
31、91:固定接続部
32、92:スライダーシェル
33、93:スライダーハウジング
40:ネジ
50:隙間
311:インシュレータ
313:連結金具
314:インナーシェル
321:突起部
322、922(922a、922b):第2シールド層側接点部
322a:第1バネ部
322b:第2バネ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6