(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976475
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】打抜き装置
(51)【国際特許分類】
B26D 7/18 20060101AFI20160809BHJP
B26F 1/40 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
B26D7/18 G
B26F1/40 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-207104(P2012-207104)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-61562(P2014-61562A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206093
【氏名又は名称】大森機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】戸兵 和重
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正常
【審査官】
石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−078635(JP,A)
【文献】
特開2008−200766(JP,A)
【文献】
特開2008−062362(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102009056316(DE,A1)
【文献】
特開平09−085696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/18
B26F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装体の一部を上方から打ち抜くトムソン刃と、
前記包装体の一部を打ち抜く際に前記トムソン刃の刃先が突き当たる当接面と、
前記包装体の一部を打ち抜いたカスを上方から回収する経路と、を備え、
前記当接面には、気体を上方に噴射する噴射口が形成され、
前記経路は、負圧を発生させる負圧発生装置に接続されていることを特徴とする、
打抜き装置。
【請求項2】
前記包装体は、深絞り包装体であることを特徴とする、
請求項1に記載の打抜き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深絞り包装機などに用いられる打抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄切りハムなどの食品、その他の物品を包装するラインは、大別して、フィルム包装工程と、箱詰め工程と、を備えている。フィルム包装工程では、例えば、深絞り包装機が用いられる。深絞り包装機は、上流側から順に、下部フィルム供給部、ポケット成型部、充填部、上部フィルム供給部、真空シール部、横カット部、縦カット部などを備えている。
【0003】
下部フィルム供給部は、包装体数個(例えば3個)分程度の幅を有する下部フィルムを連続して供給する。ポケット成型部は、金型でプレスして下部フィルムにポケットを成型する。充填部は、ポケットに物品を充填する。上部フィルム供給部は、下部フィルムと略同じ幅の上部フィルムを連続して供給し、下部フィルムに蓋をする。真空シール部は、真空引きを行ってからフィルムをシールする。
【0004】
横カット部は、フィルムを横方向(幅方向)にカットして複数連(例えば3連)の包装体にすると同時に、包装体の四隅が丸くなるように、上方からのトムソン刃で四隅を打ち抜く(例えば、特許文献1参照)。縦カット部は、複数連の包装体を縦方向(搬送方向)にカットして、個々の包装体にする。個々の包装体は、箱詰め工程においてまとめて箱詰めされる。なお、フィルムの搬送は、循環するチェーンに設けられた爪に支持されることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−085696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
包装体を打ち抜いたカスは、通常であれば、トムソン刃との接触抵抗によって当該トムソン刃の内側に留まり、落下する事は無い。しかし、例えばフィルム(カス)がカールしている場合において、打ち抜いたカスは、トムソン刃の内寸法よりも小さくなる為、落下してうまく回収されず、下流に流されて包装体と共に箱詰めされてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、包装体を打ち抜いたカスを確実に回収する打抜き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、包装体の一部を上方から打ち抜くトムソン刃と、前記包装体の一部を打ち抜く際に前記トムソン刃の刃先が突き当たる当接面と、前記包装体の一部を打ち抜いたカスを上方から回収する経路と、を備え、前記当接面には、気体を上方に噴射する噴射口が形成され、前記経路は、負圧を発生させる負圧発生装置に接続されていることを特徴とする、打抜き装置である。
【0009】
本発明によれば、包装体を打ち抜いたカスは、噴射口から噴射する気体によってトムソン刃の内側に挟まって留まってしまうことが防止される。そして、包装体を打ち抜いたカスは、負圧発生装置によって発生する負圧にアシストされて、経路を伝って回収される。このように、包装体を打ち抜いたカスを簡単な構成で確実に回収することができる。
【0010】
(2)本発明はまた、包装体は、深絞り包装体であることを特徴とする、上記(1)に記載の打抜き装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記(1)及び(2)に記載の打抜き装置によれば、包装体を打ち抜いたカスを確実に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る打抜き装置を備える深絞り包装機の概略図である。
【
図2】打抜き装置を示す図であり、(A)は上面図を、(B)は正面図を、それぞれ示す。
【
図3】打抜き装置の中間に配置されるトムソン刃を示す四面図であり、(A)は底面図を、(B)は背面図を、(C)は側面図を、(D)は上面図を、それぞれ示す。
【
図4】打抜き装置の両端に配置されるトムソン刃を示す四面図であり、(A)は底面図を、(B)は背面図を、(C)は側面図を、(D)は上面図を、それぞれ示す。
【
図5】打抜き装置の動作を説明する側面図であり、(A)は打抜き前の状態を、(B)は打抜き後の状態を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る打抜き装置について詳細に説明する。
【0014】
まず、
図1を用いて、打抜き装置10を備える深絞り包装機1の構成について説明する。
図1は、深絞り包装機1の概略図である。なお、本図及び以降の各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、本図及び以降の各図において、部材の大きさを適宜誇張して表現する。
【0015】
図1に示される深絞り包装機1は、薄切りハムなどの物品(図示省略)を順次包装するラインにおけるフィルム包装工程で使用される。この深絞り包装機1は、上流側から順に、下部フィルム供給部2、ポケット成型部3、充填部4、上部フィルム供給部5、真空シール部6、横カット部7、縦カット部8などを備えている。
【0016】
下部フィルム供給部2は、包装体XA1数個(本実施形態では3個)分程度の幅を有する下部フィルムYA1を連続して供給する。ポケット成型部3は、金型(符号省略)でプレスして下部フィルムYA1にポケット(符号省略)を成型する。充填部4は、ポケットに薄切りハムを充填する。上部フィルム供給部5は、下部フィルムYA1と略同じ幅の上部フィルムYA2を連続して供給し、下部フィルムYA1に蓋をする。真空シール部6は、真空引きを行ってからフィルムYA1,YA2をシールする。
【0017】
横カット部7は、後述する打抜き装置10によって、フィルムYA1,YA2を横方向(幅方向)にカットして複数連(本実施形態では3連)の包装体XA1にすると同時に、包装体XA1の四隅が丸くなるように四隅を打ち抜く(
図2(A)参照)。縦カット部8は、複数連の包装体XA1を縦方向(搬送方向)にカットして、個々の包装体XA1にする。個々の包装体XA1は、続く箱詰め工程においてまとめて箱詰めされる。なお、フィルムYA1,YA2の搬送は、循環するチェーン(図示省略)に設けられた爪(図示省略)に支持されることで行われる。
【0018】
次に、
図2〜
図4を用いて、横カット部7が備える打抜き装置10の構成について説明する。
図2は、打抜き装置10を示す図である。同図(A)は上面図を示す。同図(B)は正面図を示す。
図3は、打抜き装置10の中間に配置されるトムソン刃11を示す四面図である。同図(A)は底面図を示す。同図(B)は背面図を示す。同図(C)は側面図を示す。同図(D)は上面図を示す。
図4は、打抜き装置10の両端に配置されるトムソン刃12を示す四面図である。同図(A)は底面図を示す。同図(B)は背面図を示す。同図(C)は側面図を示す。同図(D)は上面図を示す。
【0019】
図2(A)及び
図2(B)に示される打抜き装置10は、シールされたフィルムYA1,YA2を横方向にカットして複数連(本実施形態では3連)の包装体XA1にすると同時に、包装体XA1の四隅が丸くなるように四隅を打ち抜く。具体的に、打抜き装置10は、複数のトムソン刃11,12と、複数の平刃13と、ヘッド14と、ダクト15(
図5(A)及び
図5(B)参照)と、架台16と、基材17と、等を備えている。
【0020】
複数のトムソン刃11,12及び複数の平刃13は、交換式であり、刃先11a,12a,13aを下方に向けた状態で、ヘッド14に取り付けられる。複数のトムソン刃11,12は、包装体XA1の四隅となる箇所(包装体XA1の一部)を上方から打ち抜く刃である(詳細は後述)。トムソン刃11,12の刃先11a,12aは、包装体XA1を打ち抜く際に、基材17上部の当接面17aに突き当たる(
図5(B)参照)。複数の平刃13は、シールされたフィルムYA1,YA2を横方向にカットする刃である。平刃13の刃先13aは、カットする際に、基材17上部の当接面17aに突き当たる。
【0021】
ヘッド14は、シールされたフィルムYA1,YA2を横切るように、当該フィルムYA1,YA2の上方に配置されている。ヘッド(ホルダー)14がフィルムYA1,YA2の上方に配置されているのは、下部フィルムYA1のフィルム面の下側にポケットが成型されており、ヘッド14がフィルムYA1,YA2の下方に配置されているとそのポケットと干渉するからである。すなわち、ヘッド14がフィルムYA1,YA2の上方に配置されているのは、そのポケットとの干渉を防止するためである。さらに言い換えると、フィルムYA1,YA2の下側には、成型されたポケットがあり、トムソン刃11,12のホルダーのスペースが取れないためである。このヘッド14は、複数のトムソン刃11,12及び複数の平刃13を一列に保持する。具体的に、ヘッド14は、トムソン刃11、平刃13、トムソン刃12、平刃13、トムソン刃12、平刃13、トムソン刃11の順に一列に保持する。また、ヘッド14は、ダクト15に接続されている。これにより、ヘッド14は、ダクト15と共に、包装体XA1の一部を打ち抜いたカス(図示省略)を上方から回収する経路を構成する。なお、ヘッド14の高さ及び位置は固定されており、後述する基材17が昇降することで、各刃先11a,12a,13aが当接面17aに突き当たる。
【0022】
ダクト15(
図5(A)及び
図5(B)参照)は、送風機等の負圧発生装置(図示省略)に接続されている。負圧発生装置は、ダクト15内を負圧に保つように、常時駆動している。これにより、カスをひと欠片ずつ回収することをアシストする。ただし、打抜き前のフィルムYA1,YA2のバタツキを防止する必要があるので、負圧発生装置により生じる負圧は、弱めに設定されている。すなわち、負圧発生装置により生じる負圧だけでは、カスを確実に回収することはできない。
【0023】
架台16は、エアシリンダ(図示省略)等の駆動源により、昇降可能に設けられている。基材17は、シールされたフィルムYA1,YA2を横切るように、かつ、当該フィルムYA1,YA2の下方に、ヘッド14と対向するように配置されている。基材17の上部には、トムソン刃11,12及び平刃13の刃先11a,12a,13aが突き当たる当接面17aが形成されている。架台16が上昇することで、当接面17aが上昇し、結果として、トムソン刃11,12及び平刃13が当接面17aに当接する。これにより、フィルムYA1,YA2がカットされると共に打ち抜かれる。
【0024】
当接面17aには、トムソン刃11,12が対向する箇所に、圧縮空気等の気体を上方に噴射する噴射口17b(
図5(A)及び
図5(B)参照)が形成されている。噴射口17bは、基材17内に形成された通気孔17c(
図5(A)及び
図5(B)参照)等を介し、圧縮空気を生じさせる圧縮機(図示省略)に接続されている。圧縮機は、包装体XA1の一部を打ち抜いた後に駆動するように、間欠駆動している。これにより、打ち抜かれたカスは、ダクト15を介してひと欠片ずつ回収される。
【0025】
図3(A)〜
図3(D)に示されるように、トムソン刃11は、外形が略直方体であり、底面に刃先11aが形成されていると共に、底面(刃先11aで囲われる領域)から上面に貫通する孔11bが形成されている。刃先11aは、包装体XA1を打ち抜くための形状(本実施形態では、四つの突起の星形)を呈する。孔11bは、底面側(下側)と上面側(上側)の二段構造を有する。孔11bの底面側は、刃先11aで囲われる領域と同じ大きさ及び同じ形状を有する。孔11bの上面側は、底面側よりも大きな大きさを有し、カスの通過を容易にする。このような孔11bの二段構造によれば、孔11bの下側の狭いところを抜けて上側に通過したカスは、下側に戻ることがない。なお、孔11bを二段構造とせず、上側まで、刃先11aで囲われる領域と同じ大きさ及び同じ形状とすると、孔11bが抵抗となり、カスが積み上がらず(カスが上方に通過せず)、下側に押し戻されて、落下することがある。
【0026】
図4(A)〜
図4(D)に示されるように、トムソン刃12は、外形が略直方体であり、底面に刃先12aが形成されていると共に、底面(刃先12aで囲われる領域)から上面に貫通する孔12bが形成されている。刃先12aは、包装体XA1を打ち抜くための形状(本実施形態では、銀杏形)を呈する。孔12bは、底面側(下側)と上面側(上側)の二段構造を有する。孔12bの底面側は、刃先12aで囲われる領域と同じ大きさ及び同じ形状を有する。孔12bの上面側は、底面側よりも大きな大きさを有し、カスの通過を容易にする。このような孔12bの二段構造によれば、孔12bの下側の狭いところを抜けて上側に通過したカスは、下側に戻ることがない。なお、孔12bを二段構造とせず、上側まで、刃先12aで囲われる領域と同じ大きさ及び同じ形状とすると、孔12bが抵抗となり、カスが積み上がらず(カスが上方に通過せず)、下側に押し戻されて、落下することがある。
【0027】
次に、
図5を用いて、打抜き装置10の動作について説明する。
図5は、打抜き装置10の動作を説明する側面図である。同図(A)は、打抜き装置10による打抜き前の状態を示す。同図(B)は、打抜き装置10による打抜き後の状態を示す。
【0028】
打抜き前の打抜き装置10は、架台16が下降している(
図5(A)参照)。このため、当接面17aは、フィルムYA1,YA2から離隔して配置されている。一方、トムソン刃11,12及び平刃13は、フィルムYA1,YA2に沿って配置されている。ダクト15に接続されている負圧発生装置(図示省略)は、包装機運転中、常時駆動しているが、手動で停止することもできる。噴射口17bに接続されている圧縮機(図示省略)は、間欠駆動するものであるが、打抜き前は停止している。
【0029】
そして、打抜きの際に、トムソン刃11,12及び平刃13の刃先11a,12a,13aが当接面17aに当接した状態になるまで、架台16が上昇する(
図5(A)参照)。ダクトに接続されている負圧発生装置(図示省略)は、引き続き、常時駆動している。噴射口17bに接続されている圧縮機(図示省略)は、打抜き後の所定のタイミングに駆動する。これにより、噴射口17bから圧縮空気が噴射され、打ち抜かれたカスが噴き上げられる。そして、噴き上げられたカスは、ダクト15を介してひと欠片ずつ回収される。
【0030】
その後、打抜き装置10は、架台16を下降させて、次の打抜きに向けて待機する。
【0031】
このように、打抜き装置10によれば、包装体XA1を打ち抜いたカスは、噴射口17bから噴射する圧縮空気によってトムソン刃11,12に貼り付いて留まってしまうことが防止される。そして、包装体XA1を打ち抜いたカスは、負圧発生装置によって発生する負圧にアシストされて、ダクト15を伝って回収される。このように、包装体XA1を打ち抜いたカスを簡単な構成で確実に回収することができる。
【0032】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0033】
すなわち、上記実施形態において、各構成(例えば、トムソン刃11,12)の位置、大きさ、形状、材質、向き、数量などは適宜変更できる。
【符号の説明】
【0034】
1 深絞り包装機
10 打抜き装置
11,12 トムソン刃
11a,12a 刃先
14 ヘッド(経路)
15 ダクト(経路)
17a 当接面
17b 噴射口
XA1 包装体