特許第5976492号(P5976492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976492
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】増毛法および増毛具
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   A41G3/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-227004(P2012-227004)
(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-77222(P2014-77222A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126218
【氏名又は名称】株式会社アートネイチャー
(74)【代理人】
【識別番号】100180264
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 貴大
(74)【代理人】
【識別番号】100099863
【弁理士】
【氏名又は名称】中倉 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松田 秀夫
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−94227(JP,U)
【文献】 特開2003−328223(JP,A)
【文献】 特表2013−531144(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/046336(WO,A1)
【文献】 特開2006−225828(JP,A)
【文献】 特開2002−363814(JP,A)
【文献】 特開昭51−52052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の溶剤に溶ける基材に接着辺を備えた擬毛を前記接着辺が前記基材に係止された状態で植毛する工程と、前記擬毛の接着辺に、前記溶剤では溶けない接着剤で接着剤層を形成する工程と、擬毛が植毛された前記基材を前記接着剤層によって頭皮に貼付する工程と、頭皮に貼付された基材を溶剤で溶かす工程と、を有することを特徴とする増毛法。
【請求項2】
前記接着剤層を形成する工程が、前記擬毛を基材に係止する工程の前に前記基材に形成することを特徴とする請求項1に記載の増毛法。
【請求項3】
前記基材が、柔軟なシート状の基材であり、前記基材に擬毛を係止して植毛する工程が、前記基材の離間した2箇所に、前記擬毛の両端を貫通する工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載の増毛法。
【請求項4】
前記基材が、糸状であり、前記基材に擬毛を係止して植毛する工程が、擬毛の端部又は中間部を前記基材に押しつけて折り曲げて接着辺を形成して前記基材に係止することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の増毛法。
【請求項5】
特定の溶剤に溶ける基材に接着辺を備えた擬毛を前記接着辺が前記基材に係止するようにして植毛したことを特徴とする増毛具。
【請求項6】
前記接着辺と前記基材とを前記特定の溶剤には溶けない接着剤で固定したことを特徴とする請求項5に記載の増毛具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増毛法と、この増毛法に使用する増毛具に関し、特に、擬毛を直接頭皮に接着するものに関する。
【背景技術】
【0002】
頭髪の薄毛や脱毛をカバーする方法として、かつらが知られている。かつらは、かつらベースに擬毛を植毛したもので、一度に多くの毛髪を頭部に設置することが可能であるが、かつらベースの種類によっては、頭部に物を載せているような感触を受けることで、人によっては違和感を感じる人も存在する。
【0003】
装着感や違和感を起こさないものとしては、増毛法がある。例えば、特許文献1(特許第2549565号)では、残存する自毛に擬毛をホットメルトで接着し、1本の自毛に対し、複数本の擬毛を枝別れさせたように増毛させる方法を提案している。また、特許文献2(特許第3877533号)や特許文献3(特開2006−225828号)では、小さな基板に複数本の擬毛を植設しておき、この基板を粘着剤で頭皮に接着する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2549565号
【特許文献2】特許第3877533号
【特許文献3】特開2006−225828号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のものは、擬毛を接着した自毛に負担がかかるため、自毛ごと抜け易くなるという問題がある。また、全く自毛の無い場所には、適用できない。
【0006】
特許文献2、3に記載の小さな基板を使用する方法は、基板が小さいほど使い勝手がよくなるのであるが、基板が小さいと貼付する回数が多くなり、作業性が悪くなるといった問題がある。また、基板の全面に植毛することはできず、基板の周辺部に植毛の無い部分ができるが、この基板が増毛後の頭皮に残るので、基板が小さいほどこの無毛部分の比率が高くなり、植毛の密度を上げることができないという問題もある。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたもので、装着感がなく、自毛に負担を与えることもなく、所望の密度で増毛でき、しかも、作業性に優れた増毛法と、この増毛法に使用する増毛具とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明の増毛法は、特定の溶剤に溶ける基材に接着辺を備えた擬毛を前記接着辺が前記基材に係止された状態で植毛する工程と、前記擬毛の接着辺に、前記溶剤では溶けない接着剤で接着剤層を形成する工程と、擬毛が植毛された前記基材を前記接着剤層によって頭皮に貼付する工程と、頭皮に貼付された基材を溶剤で溶かす工程と、を有することを特徴としている。
【0009】
前記接着剤層を形成する工程が、前記擬毛を基材に係止する工程の前に前記基材に形成するようにしたり、前記基材が、柔軟なシート状の基材であり、前記基材に擬毛を係止して植毛する工程が、前記基材の離間した2箇所に、前記擬毛の両端を貫通する工程である構成としたり、前記基材が、糸状であり、前記基材に擬毛を係止して植毛する工程が、擬毛の端部又は中間部を前記基材に押しつけて折り曲げて接着辺を形成して前記基材に係止したりすることができる。
【0010】
上記の目的を達成するために本発明の増毛具は、特定の溶剤に溶ける基材に接着辺を備えた擬毛を前記接着辺が前記基材に係止するようにして植毛したことを特徴としている。前記接着辺と前記基材とを前記特定の溶剤には溶けない接着剤で固定した構成とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の増毛法によれば、基材が溶剤により溶けてなくなるので、装着感がなく、自毛には負担を掛けずに増毛できる、という優れた効果を奏する。また、予め基材に多数の擬毛を植設しておいて、それらを纏めて頭皮に固定することができるので、所望の密度にでき、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】頭部の頭皮に頭皮保護剤を塗布している図である。
図2】基材に擬毛を植毛した状態を示す図で、(a)は基材の斜視図で、(b)は植毛した状態を示す斜視図、(c)は(b)のB−B線断面図である。
図3】(a)は擬毛をL字状に植毛した増毛具の断面図、(b)から(f)は接着辺の別の態様を示す斜視図である。
図4】増毛具を頭皮に貼付する直前の状態を示す図である。
図5】増毛具を頭皮に貼付する状態を示す図である。
図6】増毛具を頭皮に貼付した状態を示す図である。
図7】増毛具を付けた頭部を水で洗う状態を示す図である。
図8】擬毛だけが頭皮に接着した状態を示す図である。
図9】(a)〜(d)は、擬毛の接着辺の部分を拡大した図である。
図10】糸状の基材を使用した実施例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1から図8は、本発明の増毛法の実施例を説明する図である。図1は、頭部Aの頭皮に頭皮保護剤10を塗布している図である。この後、擬毛を接着剤で頭皮に固定するのであるが、増毛される人によっては、接着剤によって頭皮が荒れる体質の場合など、接着剤が直接頭皮に接触しないようにするためである。この工程は、人によっては、不要なので、必須の工程ではない。頭皮保護剤としては、アクリル系ポリマーで、医療用の創傷被覆材や皮膚皮膜剤等をシート状にして貼り付けたり、ゲル状のものを塗布したりすることができる。
【0014】
図2は、基材11に擬毛12を植毛する状態を示す図で、(a)は基材11の斜視図で、(b)は植毛した状態を示す斜視図、(c)は(b)のB−B線断面図である。基材11は、特別な溶剤によって溶ける素材からできていて、軟質でシート状のものである。実施例では、水溶性の基材11としているが、水以外の溶剤としては、エチルアルコール、クエン酸、酢酸等の頭皮に与える影響が小さいものであれば特に限定されない。
【0015】
なお、ここで、「溶剤によって溶ける」とは、文字通り水などの溶剤に溶ける場合だけでなく、たとえば、和紙が水により繊維に分解されてシート状を保持できなくなるような状態も含めるものとする。
【0016】
基材11は(a)に示すように、透明ないし半透明で、裏面に接着剤層13をドット状に形成している。この水溶性でシート状の基材11に、(b)に示すように擬毛12を植毛する。植毛の仕方としては、たとえば、まず、擬毛の一端12aを基材11の上面の点11aから刺通し、下面に貫通させる。そして、下面に長く引き出し、他端12bまでの長さを擬毛のおおよそ1/2程度残す。下面に突き出た擬毛の一端12aを、折り返し、基材11の下面の点11bで下面から上面に貫通させ、上面に引き出すと、図示したように擬毛12はU字状になる。U字状の擬毛12の底辺12cが基材11の下面の接着剤層13上に残るが、この底辺12cが接着剤層13によって頭皮に接着する接着辺である。この接着辺12cの長さは、擬毛12と頭皮の接着面積に関係するので、長い方が接着力を大きくできるのでよいのであるが、長すぎると、頭皮の所望の位置に植毛できなくなる可能性が高まるので、短くすべきである。本発明では、1−3mmとしている。
【0017】
同様にして多数の擬毛12を基材11に植毛する。このとき、基材11を透明ないし半透明な素材にすれば、裏面の接着剤層13の位置を確認しながら植毛することができる。植毛が完了したら増毛具15の完成となる。
【0018】
上記実施例の植毛の方法は1例であり、要するに、擬毛の両端を基材の離間した2箇所に挿通させU字状にできればどのような方法でもよい。また、上記実施例では、接着剤層13を形成するタイミングは、基材11の形成後で、かつ、植毛前であるが、植毛後で、頭皮に貼付する直前であってもよい。
【0019】
上記の接着剤層13に使用する接着剤は、擬毛12の接着辺12cを頭皮に接着することで、擬毛12を頭皮に十分な強度で固定できる必要がある。また、基材11を溶かす溶剤には溶けないものでなければならない。この実施例では、基材11が水溶性なので、水には溶けない接着剤を使用している。また、頭皮に接着する前に硬化しないことが必要で、粘着剤が望ましい。このような粘着剤としては、たとえば、N−アルキル置換アクリルアミドや(メタ)アクリレート等を使用することができるが、皮膚に対する刺激性などの面から、シリコーン系粘着剤が望ましい。また、粘着剤なので、接着剤層13を形成後は、剥離紙で覆っておくとよい。
【0020】
図2に示す実施例では、接着辺12cは擬毛の中間にあるので、接着辺12cは接着剤層13の有無に拘わらず、基材11に係止された状態となる。したがって、接着剤層13の形成時期を擬毛12の植毛後、たとえば、頭皮に接着する直前に行うこととしてもよい。この場合は、接着剤層13の無い基材11に擬毛12を植毛したものが、増毛具15となる。この場合の接着剤としては、たとえば、上記の粘着剤や、ダーマボンド(登録商標)を使用することができる。
【0021】
植毛の密度を上げるためには、基材11の下面の全体に接着剤を塗布したり、図の実施例とは逆に、接着剤を塗布しない部分をドット状に設けたりすることもできる。この場合も、接着剤の塗布時期は、植毛の前後を問わない。
【0022】
図3は、接着辺の他の実施例を示す図である。図2の実施例では、擬毛12をU字状に植毛しているが、図3(a)に示すように、U字を底辺で半分に割った状態のL字状に植毛してもよい。この場合、L字状の擬毛12の底辺が接着辺12c1となる。さらには、図3(b)のように接着辺12c2を環状にしたり、図3(c)のように接着辺12c3を三角形にしたり、図3(d)のようにV字型の接着辺12c4にしたり、図3(e)のように、環状部とその直径の棒状部とからなる接着辺12c4としたり、図3(f)のようにN型の接着辺12c6にするなど、多様な形状にすることができる。このようにすることで、接着面積を大きくすることができる。
【0023】
図3(a)、(b)、(c)、(d)の場合は、接着辺12c1、12c2、12c3、12c4は一方でしか擬毛12に接続していないので、接着辺を接着剤等で基材11に係止する必要がある。この場合の接着剤等としては、接着剤層13を利用してもよいが、接着剤層13とは別の接着剤を使用してもよい。図3(e)、(f)の場合は、接着辺12c5、12c6は、両端が擬毛12に接続しているので、接着固定する必要はない。これらの実施例において、接着辺は、擬毛12を延長したものであるが、接着辺を擬毛12とは別のものから形成し、擬毛12に接着固定する構成としてもよい。
【0024】
図4から図8は、増毛具を頭皮に装着する状態を示す。ここに使用する増毛具は、図2図3に示す接着辺のいずれのものを使用してもよい。
図4は、増毛具15を頭皮に貼付する直前の状態を示す図である。増毛具15は、予め決められた形状とサイズの基材11に多数の擬毛12を植設したものなので、貼付すべき頭皮の無毛部分の形状とは一致していない場合もある。その場合は、予め形成されている増毛具15を、頭皮の植毛する部分の形状に合わせてカットして使用することができる。このような使い方をするので、増毛具は、矩形など、一定の形状のものを使用し、予め形成しておくことができる。
【0025】
図5は、増毛具15を頭皮に貼付する状態を示す図である。増毛具15を貼付した後、基材11の裏面の底辺12cにある接着剤層13を、基材11の表面からヘラ16で押して、頭皮と擬毛12との接着を確実なものにする。
【0026】
図6は、増毛具15を頭皮に貼付した状態を示す図である。この後、図7に示すように、頭部を水(温水)で洗うと、水溶性の基材11が溶けて無くなり、接着剤層13は水に溶けないので残り、図8に示すように擬毛12だけが頭皮に接着した状態となる。本発明の増毛作業はこれで完了となるが、この後、さらに、自毛と擬毛12を合わせてカットし、適切なヘアースタイルとする。
【0027】
なお、基材11は、水で洗い流す以外に、頭部に装着したら、そのまま放置しても汗や周囲の環境などによって自然に消滅するものでもよい。さらに、接着剤層13を構成する接着剤に、養毛効果のある成分を加えておき、増毛と同時に養毛もできるようにすることもできる。
【0028】
図9は、擬毛12の底辺12cを拡大した図である。(a)は、図2に示す擬毛で、底辺12cは、他の部分と同じで断面が円形である。(b)は、底辺としての接着辺12c'を頭皮と垂直な方向にジグザグに変形して接着面積を大きくした例である。(c)は、接着辺12c"を平らに変形し、(d)に示すように楕円状にして接着面積を大きくした例である。
【0029】
図10は、糸状の基材21を使用した実施例の図である。基材21は、水溶性など特別の溶剤に溶ける素材から作られたものである。図示の実施例では基材21の断面形状は円形であるが、三角形、四角形、楕円形等任意の断面形状でよい。
【0030】
この基材21に擬毛12のほぼ中央を(a)に示すように折り返し、U字状にして係止する。係止方法は、たとえば、接着力の弱い接着剤で仮止めしてもよい。U字状の底辺12cが接着辺である。この接着辺12cは、図3のいずれかの接着辺12c1〜12c6に変更することが可能である。図では擬毛を1本しか描いていないが、多数の擬毛を同様に係止する。そして、予め形成されているシート状の接着剤層23に(b)に示すように押しつけ、圧接する。その後、(c)に示すように基材21の両側部分に沿って接着剤層23を切断して増毛具25の完成となる。
【0031】
この増毛具を使用する場合でも、頭皮に接着剤層23で接着してから基材21を水(温水)などの溶剤で溶かして洗い流すことになる。
【符号の説明】
【0032】
11、21 基材
12 擬毛
12c、12c'、12c" 接着辺
12c1、12c2、12c3、12c4 、12c5、12c6 接着辺
13、23 接着剤層
15、25 増毛具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10