(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記過給機は、前記タービン部へ供給される前記排気ガスのタービンノズル通過面積を可変とするタービンノズル通過面積可変機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示したようなハイブリッド過給機は、主機とされるディーゼル機関の負荷が約50%負荷以上とされた場合に発電可能とされている。これは、ディーゼル機関負荷が約50%以下とされた低負荷では過給機の効率が上がらず発電する余裕がないためである。したがって、ハイブリッド過給機は、所定のディーゼル機関負荷(例えば50%負荷)で、負荷降下時には発電停止が行われ、負荷上昇時には発電開始が行われることになる。
そして、ハイブリッド過給機を備えたディーゼル機関に対して、ディーゼル機関の排気ガスから熱回収する排ガスエコノマイザを組合せ、排ガスボイラで得られた蒸気によって蒸気タービンを駆動して蒸気タービン発電機にて発電を行う場合には、以下の問題が生じるおそれがある。
【0005】
すなわち、ディーゼル機関の負荷降下時にハイブリッド過給機の発電停止動作が行われると、発電量が減少するだけでなく、ディーゼル機関から排出される排気ガスの温度が降下する。発電量が減少すると、それを補うために、蒸気タービン発電機の発電量を増加させるように蒸気タービンの蒸気入口制御弁が開方向に制御される。また、排気ガス温度が降下すると、排ガスボイラに設けられた汽水分離器内の圧力が低下するので、さらに蒸気を得ようとして蒸気入口制御弁が開方向に制御される。蒸気入口制御弁が開くと、汽水分離器内の蒸気が強制的に発生させられて汽水分離器内の水位が低下し、許容水位範囲内に維持するために給水制御弁が開方向に制御されて給水を増大させることとなる。しかし、温度の低い新たな給水が供給されるため汽水分離器内の温度が降下して汽水分離器内の圧力がさらに低下してしまう。
このように、ハイブリッド過給機の発電停止動作が行われると、発電量の減少だけでなく排気ガス温度の降下が生じるので、蒸気入口制御弁の開動作および給水制御弁の開動作が重なり、汽水分離器内の圧力が急降下し、排ガスボイラで発生する蒸気量が大きく減少して安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転が困難となるおそれがある。また、排ガスボイラで発生する蒸気量が大きく減少すると、必要な蒸気が賄えず、最悪の場合、高粘度の重油燃料及び潤滑油を暖めることができず、粘度コントロールができなくなることで主機の安定運転にも影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
また、ディーゼル機関の負荷上昇時にハイブリッド過給機の発電開始動作が行われると、発電量が増加するだけでなく、ディーゼル機関から排出される排気ガスの温度が上昇する。発電量が増加すると、それを補うために、蒸気タービン発電機の発電量を減少させるように蒸気入口制御弁が閉方向に制御される(絞られる)。また、排気ガスの温度が上昇すると、排ガスボイラに設けられた汽水分離器内の圧力が上昇するので、蒸気入口制御弁がさらに閉方向に制御される。蒸気入口制御弁が閉方向に制御されると、汽水分離器内の水位が上昇し、許容水位範囲内に維持するために給水制御弁が閉方向に制御されて(絞られて)、給水を減少させることとなる。しかし、温度の低い新たな給水が適正に供給されないため汽水分離器内の温度が上昇して汽水分離器内の圧力がさらに上昇してしまう。
このように、ハイブリッド過給機の発電開始動作が行われると、発電量の増大だけでなく排気ガス温度の上昇が生じるので、蒸気入口制御弁の閉動作および給水制御弁の閉動作が重なり、汽水分離器内の圧力が急上昇し、排ガスボイラで発生する蒸気量が大きく増加して安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転が困難となるおそれがある。
【0007】
以上の通り、ハイブリッド過給機を備えたディーゼル機関に対して、ディーゼル機関の排気ガスから熱回収する排ガスボイラを組合せ、排ガスボイラで得られた蒸気によって蒸気タービンを駆動して蒸気タービン発電機にて発電を行う場合には、ハイブリッド過給機の発電停止動作時ないし発電開始動作時に、排ガスボイラで発生する蒸気量が大きく変動し、安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転が困難となり、発電停止動作時には発生蒸気量の減少に伴い主機であるディーゼル機関の安定した運転までもが困難となるという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2に示したようなVTI過給機は、主機負荷約65%以下でのみタービンノズル通過面積を減少させた運転が可能である。これは、主機負荷約65%以上では、掃気圧力が高くなりすぎてディーゼル機関の筒内燃焼圧力の許容範囲を超えるためである。したがって、VTI過給機のみでも、全負荷域でディーゼル機関の燃料消費量削減に貢献できない。
そこで、ディーゼル機関の約50%負荷以上といった高負荷域で発電動作するハイブリッド過給機と、VTI過給機とを組み合わせることで、主機全負荷域で推進プラント全体での燃料消費量を抑えることが考えられる。
ここで、推進プラント全体での燃料消費量削減とは、ディーゼル機関からの排ガスエネルギを有効に活用して発電をすることで、発電用エンジンでの燃料消費量を減らし、主機および発電用エンジンを含む推進プラント全体での燃料消費量削減を意味する。
【0009】
しかし、タービンノズル通過面積を減少させるタービンノズル面積減少動作が行われると、排気温度が降下して、ハイブリッド過給機の発電停止動作と同様の事象、すなわち蒸気入口制御弁の開動作および給水制御弁の開動作が重なり、汽水分離器内の圧力が急下降し、排ガスボイラで発生する蒸気量が大きく減少するといった事象が発生する。また、タービンノズル通過面積を増大させるタービンノズル面積増大動作が行われると、排気温度が上昇して、ハイブリッド過給機の発電開始動作と同様の事象、すなわち蒸気入口制御弁の閉動作および給水制御弁の閉動作が重なり、汽水分離器内の圧力が急上昇し、排ガスボイラで発生する蒸気量が大きく増加するといった事象が発生する。このように、発電機構とともにタービンノズル通過面積可変機構をさらに備えている過給機の場合には、過給機の発電部の停止および開始に伴う不具合をさらに助長させることとなる。特に、過給機発電停止動作とタービンノズル面積減少動作を同時に行う場合や、過給機発電開始動作とタービンノズル面積増大動作を同時に行う場合に顕著である。
したがって、ハイブリッド過給機に対してVTI過給機を組み合わせた場合にも、排ガスボイラで発生する蒸気量が大きく変動し、安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転が困難となるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、発電を行う過給機の発電停止動作ないし発電開始動作を行う際に、排ガスボイラで発生する蒸気量の急変動を回避して安定して蒸気タービン及び蒸気タービン発電機を運転することができる内燃機関システムおよびこれを備えた船舶ならびに内燃機関システムの運転方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、発電を行うとともにタービンノズル通過面積が可変とされた過給機が発電停止動作ないし発電開始動作を行い、かつタービンノズル面積減少動作ないしタービンノズル面積増大動作を行う際に、排ガスボイラで発生する蒸気量の急変動を回避して安定して蒸気タービン及び蒸気タービン発電機を運転することができる内燃機関システムおよびこれを備えた船舶ならびに内燃機関システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の内燃機関システムおよびこれを備えた船舶ならびに内燃機関システムの運転方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の内燃機関システムは、内燃機関と、該内燃機関からの排気ガスによって駆動されるタービン部、該タービン部により駆動されて前記内燃機関に空気を圧送するコンプレッサ部、および前記タービン部の回転力を得て発電する発電部を有する過給機と、前記内燃機関からの排気ガスから熱回収するとともに汽水分離器を備えた排ガスボイラと、前記排ガスボイラへ給水される水量を制御する給水制御弁と、前記排ガスボイラで得られた蒸気によって駆動される蒸気タービンと、蒸気タービンへ導かれる蒸気量を制御する蒸気入口制御弁と、該蒸気タービンによって発電する蒸気タービン発電機とを備え、前記給水制御弁は、前記汽水分離器内の水位が許容水位範囲を下回ると開方向に制御され、かつ、該許容水位範囲を上回ると閉方向に制御され、前記蒸気入口制御弁は、前記過給機の前記発電部による発電量の増減に応じて、前記蒸気タービン発電機による発電量を補うように制御される内燃機関システムであって、前記過給機の前記発電部による発電を停止する過給機発電停止動作、および/または、前記過給機の前記発電部による発電を開始する過給機発電開始動作が行われる際に、前記汽水分離器の前記許容水位範囲を拡大することを特徴とする。
【0012】
過給機発電停止動作が行われる際に、汽水分離器の許容水位範囲を拡大することとし、汽水分離器内の水位が低下しても拡大した許容水位範囲内である場合には、給水制御弁を開いて給水量を増大させることを禁止した。これにより、水位が低下しても給水量を増大することがないので、汽水分離器内の圧力の急減少を抑制することができ、排ガスボイラで発生する蒸気量の急減を回避して、安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転を確保することができる。
また、過給機発電開始動作が行われる際に、汽水分離器の許容水位範囲を拡大することとし、汽水分離器内の水位が上昇しても拡大した許容水位範囲内である場合には、給水制御弁を絞って給水量を減少させることを禁止した。これにより、水位が上昇しても給水量を減少させることがないので、汽水分離器内の圧力の急上昇を抑制することができ、排ガスボイラで発生する蒸気量の急上昇を回避して、安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転を確保することができる。
なお、汽水分離器の許容水位範囲は、例えば、通常時の±50mmから、百数十mm(例えば±150mm)へと拡大される。
また、典型的には、過給機の発電部および蒸気タービンは、需要電力(例えば船内需要電力)を満足するように他の発電機(例えばディーゼルエンジン発電機)や二次電池の発電動作を管理する電力管理システム(PMS;Power Management System)によって発電動作が制御される。
【0013】
さらに、本発明の内燃機関システムでは、前記過給機は、前記タービン部へ供給される前記排気ガスのタービンノズル通過面積を可変とするタービンノズル通過面積可変機構を備えていることを特徴とする。
【0014】
タービンノズル通過面積を減少させるタービンノズル面積減少動作が行われると、排気温度が降下して、過給機発電停止動作と同様の事象が発生する。また、タービンノズル通過面積を増大させるタービンノズル面積増大動作が行われると、排気温度が上昇して、過給機発電開始動作と同様の事象が発生する。このように、タービンノズル通過面積可変機構を備えている過給機の場合には、過給機の発電部の停止および開始に伴う不具合をさらに助長させることとなる。特に、過給機発電停止動作とタービンノズル面積減少動作を同時に行う場合や、過給機発電開始動作とタービンノズル面積増大動作を同時に行う場合に顕著である。本発明では、上述した内燃機関システムを用いることとしたので、タービンノズル通過面積可変機構を備えている過給機であっても安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転を確保することができる。
【0015】
また、本発明の船舶は、上記のいずれかに記載された内燃機関システムを備えていることを特徴とする。
【0016】
上記のいずれかの内燃機関システムを備えることにより、蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の安定運転が可能な内燃機関システムを備えた船舶を提供することができる。
【0017】
また、本発明の内燃機関システムの運転方法は、内燃機関と、該内燃機関からの排気ガスによって駆動されるタービン部、該タービン部により駆動されて前記内燃機関に空気を圧送するコンプレッサ部、および前記タービン部の回転力を得て発電する発電部を有する過給機と、前記内燃機関からの排気ガスから熱回収するとともに汽水分離器を備えた排ガスボイラと、前記排ガスボイラへ給水される水量を制御する給水制御弁と、前記排ガスボイラで得られた蒸気によって駆動される蒸気タービンと、蒸気タービンへ導かれる蒸気量を制御する蒸気入口制御弁と、該蒸気タービンによって発電する蒸気タービン発電機と、を備えた内燃機関システムの運転方法であって、前記給水制御弁を、前記汽水分離器内の水位が許容水位範囲を下回ると開方向に制御し、かつ、該許容水位範囲を上回ると閉方向に制御する工程と、前記蒸気入口制御弁を、前記過給機の前記発電部による発電量の増減に応じて、前記蒸気タービン発電機による発電量を補うように制御する工程と、前記過給機の前記発電部による発電を停止する過給機発電停止動作、および/または、前記過給機の前記発電部による発電を開始する過給機発電開始動作が行われる際に、前記汽水分離器の前記許容水位範囲を拡大する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
過給機発電停止動作ないし過給機発電開始動作、および/または、タービンノズル通過面積増大動作ないしタービンノズル通過面積減少動作が行われる際に、汽水分離器の許容水位範囲を拡大することとしたので、汽水分離器内の圧力の急変動を抑制することにより排ガスボイラで発生する蒸気量の急変動を回避することができ、安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転を確保することができる。また、発電停止動作時には、排ガスボイラで発生する蒸気量の急減少を回避することができるので、安定した内燃機関の運転を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、
図1乃至
図3を用いて説明する。
図1には、船舶に用いられる舶用ディーゼル機関システム(内燃機関システム)1が示されている。同図に示すように、舶用ディーゼル機関システム1は、例えば低速2サイクルディーゼル機関とされた主機(内燃機関)2と、主機2に圧縮空気を供給する過給機3と、主機2からの排気ガスから熱回収する排ガスエコノマイザ(排ガスボイラ)4とを備えている。
【0021】
主機2を構成するクランク軸(図示せず)には、プロペラ軸(図示せず)を介してスクリュープロペラ(図示せず)が直接的または間接的に取り付けられている。また、主機2には、シリンダライナ(図示せず)、シリンダカバー(図示せず)等からなるシリンダ部6が設けられており、各シリンダ部6内には、クランク軸と連結されたピストン(図示せず)が配置されている。
【0022】
各シリンダ部6の排気ポート(図示せず)は、排気マニホールド7と接続されている。排気マニホールド7は、排気管L1を介して過給機3のタービン部3aの入口側と接続されている。
排気マニホールド7には、排気バイパス弁(排気バイパス手段)11が設けられており、この排気バイパス弁11を開とすることにより、排気マニホールド7からの排気ガスの一部を過給機3へと供給させずに排ガスエコノマイザ4側へとバイパスするようになっている。排気バイパス弁11は、図示しない制御部によって制御されるようになっている。
【0023】
各シリンダ部6の給気ポート(図示せず)は、給気マニホールド(空気溜め部)8と接続されており、給気マニホールド8は、給気管L2を介して過給機3のコンプレッサ部3bと接続されている。給気管L2には、主機給水ヒータ17と空気冷却器13が設けられており、コンプレッサ部3bにより圧縮された空気と熱交換されるようになっている。主機給水ヒータ17は、空気冷却器13の圧縮空気流れ上流側に設けられており、後述する給水ポンプ18から導かれた給水が圧縮空気によって加熱されるようになっている。主機給水ヒータ17によって加熱された給水は、補助ボイラ14の汽水分離器12と、低圧蒸気系統19に設けられた低圧汽水分離器21とへ送られる。空気冷却器13は、主機給水ヒータ17によって温度低下した圧縮空気を、図示しない冷却水によってさらに冷却するようになっている。
給気マニホールド8には、掃気バイパス弁(掃気抽気手段)9が設けられており、この掃気バイパス弁9を開とすることにより、給気マニホールド8内の空気を放出することができるようになっている。掃気バイパス弁9は、図示しない制御部によって制御されるようになっている。
【0024】
過給機3は、
図1及び
図2に示されているように、排気管L1を介して主機2から導かれた排気ガス(燃焼ガス)によって駆動されるタービン部3aと、このタービン部3aにより駆動されて主機2に外気(空気)を圧送するコンプレッサ部3bとを主たる要素として構成されたものである。
【0025】
過給機3は、タービン部3aの回転力を得て発電する発電機3cを備えている。発電機3cは、MSB(主機電盤)26に設けられたPMS(パワー・マネジメント・システム)28からの制御信号によって制御されるようになっている。すなわち、PMS28と発電機3cのインバータ30との間で制御信号がやりとりされている。インバータ30と発電機3cとの間にはコンバータ32が設けられており、インバータ30との間で制御信号がやりとりされるようになっている。発電機3cにて発電された交流電力は、コンバータ32で交直変換された後にインバータ30で所望の周波数に直交変換され、コンタクタ35を介して船内母船33へと送られる。
PMS28は、船内需要電力に応じて発電電力を制御するものであり、ディーゼルエンジン発電機DGを駆動する例えば4ストロークとされた発電用ディーゼルエンジン37の制御も行うようになっている。ディーゼルエンジン発電機DGの発生電力は、船内母船33へと出力される。なお、
図1では、3組の発電用ディーゼルエンジン37及びディーゼルエンジン発電機DGが示されているが、1組や2組でも、あるいは4組以上であっても良い。さらに、PMS28は、リチウム二次電池等の二次電池の制御を行うようにしても良い。
【0026】
過給機3は、排気管L1からタービン部3aへ供給される排気ガスのタービンノズル通過面積を可変とするタービンノズル通過面積可変機構3gが設けられている。具体的には、タービンノズル通過面積可変機構3gは、タービンノズルを内周側および外周側に分ける隔壁3f(
図2参照)と、排気管L1から導かれた排気ガスの一部を分岐する分岐配管3dと、この分岐配管3dの開閉を行う開閉弁3eとを備えている。分岐配管3dを流れた排気ガスは、
図2に示すように、タービンノズルの隔壁3fの内周側を流れるようになっている。なお、開閉弁3eは、図示しない制御部によって制御される。
開閉弁3eを閉じると排気ガスは分岐配管3dを流れずにタービンノズルの隔壁3fの外周側のみを流れるようになり、タービンノズル通過面積が狭められることでVTI機能がONとなる。一方、開閉弁3eを開けると排気ガスは分岐配管3dを流れてタービンノズルの隔壁3fの内周側にも流れるようになり、タービンノズル通過面積が拡大されてVTI機能がOFFとなる。
【0027】
図1に示されているように、排ガスエコノマイザ4は、その煙道内に、排気ガス流れの上流側から順に高圧熱交換器10a、中圧熱交換器10b及び低圧熱交換器10cを有している。各熱交換器10a,b,cは、複数の伝熱管を備え、排ガスエコノマイザ4の煙道内を流れる高温の排気ガスによって伝熱管内を流れる水が加熱されるようになっている。
【0028】
高圧熱交換器10aには、補助ボイラ14の汽水分離器12にて分離された蒸気が導かれる。高圧熱交換器10aにて加熱されて過熱度が上昇した過熱蒸気は、蒸気入口制御弁22を介して蒸気タービン23へと導かれる。なお、汽水分離器12にて分離された蒸気の一部は、船内補機20へと導かれる。船内補機20における蒸気の主な用途は、主機2の燃料として用いられる重油燃料および潤滑油の加熱に用いられる。
高圧熱交換器10aにて加熱された過熱蒸気の一部は、高圧蒸気バイパス弁29を介して各船内補機20へと導かれる。それぞれの船内補機20へ供給される蒸気の分配は、各流量調整弁31a,31bを制御することによって行われる。各船内補機20へ導かれず余剰となった蒸気は、コンデンサ34へと導かれる。
【0029】
中圧熱交換器10bには、補助ボイラ14の汽水分離器12にて分離された水が送水ポンプ25aを介して導かれる。中圧熱交換器10bにて加熱されて蒸発した蒸気は、汽水分離器12へと導かれる。
【0030】
汽水分離器12内には、水と蒸気が上下にそれぞれ分離して収容されている。汽水分離器12には、上述したように主機給水ヒータ17にて加熱された水が供給される。汽水分離器12へと供給される給水量は、給水制御弁27によって制御される。給水制御弁27は、図示しない制御部によって、汽水分離器12内の水位が許容水位範囲内に維持されるように、その開度が制御されるようになっている。汽水分離器12内の水位は、図示しない水位計によって計測されており、その計測値は図示しない制御部へと送信される。
汽水分離器12の上部には、安全弁24が設けられており、汽水分離器12内の圧力が所定値以上になると安全弁が開き内部の蒸気を外部へと放出するようになっている。
【0031】
低圧熱交換器10cは、低圧蒸気系統19に設けられ、送水ポンプ25bを介して低圧汽水分離器21から導かれた水を加熱して蒸発させる。低圧熱交換器10cにて蒸発した蒸気は、低圧汽水分離器21へと送られる。低圧汽水分離器21にて分離された蒸気は、蒸気タービン23の中間段へと導かれ、残部が船内補機20へと導かれる。
各船内補機20にて使用された後の蒸気は、ドレンクーラ15へと導かれ、ドレンクーラ15によって凝縮されたドレン水は、ドレン溜まり16に貯留される。ドレン溜まりには、後述するグランドコンデンサ36からの凝縮水も導かれる。ドレン溜まり16内に貯留されたドレン水は、給水ポンプ18によって上述した主機給水ヒータ17へと導かれる。
【0032】
蒸気タービン23には、減速機38を介して蒸気タービン発電機40が接続されている。蒸気タービン発電機40の発電出力は、図示しない電力線を介して船内母船33へと導かれる。
蒸気タービン23に供給される高圧蒸気流量は、蒸気入口制御弁22によって調整される。蒸気入口制御弁22の開度は、タービンコントロールパネル43の指令を受けたガバナ44からの信号によって制御される。タービンコントロールパネル43は、PMS28によって制御される。したがって、蒸気入口制御弁22は、PMS28によって定められた発電量を蒸気タービン発電機40が出力するように、その開度が制御されるようになっている。
蒸気タービン23にて仕事を終えた蒸気は、コンデンサ34へと導かれて凝縮し、その凝縮水(復水)は復水ポンプ42によってグランドコンデンサ36へと導かれる。
【0033】
上記構成の内燃機関システムは、以下のように動作する。以下では、「通常運転時」、「主機負荷上昇時の切換時」、「主機負荷減少時の切換時」に分けて説明する。ここで、通常運転時とは、過給機3にて発電をしている状態で発電機能やVTI機能を切り替えるタイミング以外の状態を意味し、汽水分離器12内の圧力が急変動せずに蒸気タービン23の継続運転が可能とされる状態を意味する。
【0034】
[通常運転時]
ドレン溜まり16に貯留されたドレン水は、給水ポンプ18によって主機給水ヒータ17へと導かれ加熱され、補助ボイラ14の汽水分離器12と低圧蒸気系統19の低圧汽水分離器21へと導かれる。
汽水分離器12へと導かれた水は、送水ポンプ25aによって中圧熱交換器10bへと導かれて蒸気とされ、汽水分離器12へと戻される。汽水分離器12にて分離された蒸気は、高圧熱交換器10aへと導かれ、高温の過熱蒸気とされる。高圧熱交換器10aにて生成された過熱蒸気は、蒸気入口制御弁22にて流量を調整された後に蒸気タービン23へと導かれる。
一方、低圧汽水分離器21へと導かれた水は、送水ポンプ25bによって低圧熱交換器10cへと導かれて蒸気とされ、低圧汽水分離器21へと戻される。低圧汽水分離器21にて分離された低圧蒸気は、蒸気タービン23の中間段へと導かれる。
導かれた蒸気によって駆動された蒸気タービン23の回転出力は、減速機38を介して蒸気タービン発電機40へと伝達され、発電が行われる。この蒸気タービン発電機40による発電量は、PMS28によって管理されている。PMS28は、過給機3の発電機3cの発電量、他の発電機(ディーゼルエンジン発電機DG)の発電量、二次電池BTの充放電状態をオンラインで得ており、これらから供給される電力の合計が船内需要電力を満たすように各機器に発電指令を送る。蒸気タービン発電機40の発電量については、タービンコントロールパネル43に指示を送り、ガバナ44を介して蒸気入口制御弁22の開度が制御される。具体的には、蒸気入口制御弁22は、過給機3の発電機3cによる発電量の増減に応じて、蒸気タービン発電機40による発電量を補うように制御される。すなわち、過給機3の発電機3cの発電量が減少したときには蒸気タービン発電機40による発電量が増大するように蒸気入口制御弁22の開度が開方向に制御され、過給機3の発電機3cの発電量が増加したときには蒸気タービン発電機40による発電量が減少するように蒸気入口制御弁22の開度が閉方向に制御される。
【0035】
過給機3の発電機3cの発電量は、主機2の負荷に応じて増減するようになっており、
図3の「ハイブリッド過給機発電電力」のグラフに示されているように、主機負荷65%以上では、主機負荷が上昇すれば発電量が増加し、主機負荷が減少すれば発電量が減少するようになっている。
【0036】
補助ボイラ14の汽水分離器12内の水位は、給水制御弁27によって調整される。通常運転時には、汽水分離器12内の水位が所望値から下回ると開方向に制御され、所望値を上回ると閉方向に制御される。すなわち、通常運転時には、許容水位範囲(トレランス)を±50mmとして水位制御が行われる。この許容水位範囲は、プラントに応じて設定されるものであるが、通常運転時には蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の安定的な運転を目指すために可及的に許容水位範囲を狭くすることが好ましい。
【0037】
[主機負荷上昇時の切換時]
次に、主機負荷上昇時に、過給機の発電機能およびVTI機能を切り換える場合について説明する。
図3に示すように、主機負荷上昇時(増速時)では、発電機能については所定の負荷(
図3では65%)にて非発電動作から発電動作へと切り換える。これは、
図3の「ハイブリッド過給機発電電力」のグラフの実線が負荷65%で立ち上がっていることから分かる。一方、VTI機能については、所定の負荷(
図3では65%)にてONからOFFへと切り換える。これは、
図3の「主機掃気圧力」のグラフの細実線が一点鎖線よりも高い圧力から負荷65%で降下していることから分かる。そして、同図の「主機排気ガス温度」のグラフから分かるように、排気ガス温度が急激に上昇する。
【0038】
このように、主機負荷上昇時に非発電動作から発電動作に切り換えるとともに、VTI機能をONからOFFへと切り替えると、過給機3の発電機3cの発電量が増加するだけでなく、主機2から排出される排気ガスの温度が上昇する。過給機3の発電機3cの発電量が増加すると、過給機3の発電機3cの発電量が増加した分、蒸気タービン発電機40の発電量を減少させるように蒸気入口制御弁22が閉方向に制御される(絞られる)。また、排気ガスの温度が上昇すると、汽水分離器12内の圧力が上昇することで蒸気タービンに供給される蒸気圧力がさらに上昇するので、蒸気入口制御弁22はさらに閉方向に制御される。蒸気入口制御弁22が閉方向に制御されると、汽水分離器12内の水位が上昇し、通常運転時に用いる許容水位範囲内に維持するために給水制御弁27が閉方向に制御されて(絞られて)、給水を減少させることとなる。しかし、温度の低い新たな給水が適正に供給されないため汽水分離器12内の温度が上昇して汽水分離器12内の圧力がさらに上昇してしまう。
このように、過給機3の発電開始動作が行われると、過給機3の発電機3cの発電量の増大だけでなく排気ガス温度の上昇が生じるので、蒸気入口制御弁22の閉動作および給水制御弁27の閉動作が重なり、汽水分離器12内の圧力が急上昇し、排ガスエコノマイザ4で発生する蒸気量が大きく増加して安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転が困難となるおそれがある。
【0039】
そこで、本実施形態では、過給機3の発電開始動作が行われる際に、汽水分離器12の許容水位範囲を通常運転時(本実施形態では±50mm)よりもトレランスを拡大することとし(本実施形態では+150mm以下)、汽水分離器12内の水位が上昇しても通常運転時よりも拡大した許容水位範囲内である場合には、給水制御弁27を絞って給水量を減少させることを禁止した。これにより、通常運転時の許容水位範囲より水位が上昇しても給水量を減少させることがないので、汽水分離器12内の圧力の急上昇を抑制することができ、排ガスエコノマイザ4で発生する蒸気量の急激な増加を回避して、安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転を確保することができる。
【0040】
[主機負荷減少時の切換時]
主機負荷減少時(減速時)は、上述した主機負荷上昇時とは逆に、発電機能については所定の負荷(
図3では65%)にて発電動作から非発電動作へと切り換える。一方、VTI機能については、所定の負荷(
図3では65%)にてOFFからONへと切り換える。この場合、
図3の「主機掃気圧力」のグラフから分かるように、掃気圧力が急上昇する。そして、
図3の「主機排気ガス温度」から分かるように、排気ガス温度が急激に降下する。
【0041】
このように、主機負荷減少時に発電動作から非発電動作に切り換えるとともに、VTI機能をOFFからONへと切り替えると、過給機3の発電機3cによる発電が停止するだけでなく、ディーゼル機関から排出される排気ガスの温度が降下する。過給機3の発電機3cによる発電が停止すると、それを補うために、蒸気タービン発電機40の発電量を増加させるように蒸気タービン23の蒸気入口制御弁22が開方向に制御される。また、排気ガス温度が降下すると、汽水分離器12内の圧力が低下することで蒸気タービンに供給される蒸気圧力がさらに低下するので、さらに蒸気を得ようとして蒸気入口制御弁22は開方向に制御される。蒸気入口制御弁22が開くと、汽水分離器12内の蒸気が強制的に発生させられて汽水分離器12内の水位が低下し、許容水位範囲内に維持するために給水制御弁27が開方向に制御されて給水を増大させることとなる。しかし、温度の低い新たな給水が供給されるため汽水分離器12内の温度が降下して汽水分離器12内の圧力がさらに低下してしまう。
このように、過給機3の発電停止動作が行われると、発電が停止するだけでなく排気ガス温度の降下が生じるので、蒸気入口制御弁22の開動作および給水制御弁27の開動作が重なり、汽水分離器12内の圧力が急降下し、排ガスエコノマイザ4で発生する蒸気量が大きく減少して安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転が困難となるおそれがある。また、排ガスエコノマイザ4で発生する蒸気量が減少すると、必要な蒸気が賄えず、最悪の場合、高粘度の重油燃料及び潤滑油を暖めることができず、粘度コントロールができなくなることで、主機2の安定運転までもが困難となるおそれがある。
【0042】
そこで、本実施形態では、過給機3の発電停止動作が行われる際に、汽水分離器12の許容水位範囲を通常運転時(本実施形態では±50mm)よりもトレランスを拡大することとし(本実施形態では−150mm以上)、汽水分離器12内の水位が低下しても通常運転時よりも拡大した許容水位範囲内である場合には、給水制御弁27を開いて給水量を増大させることを禁止した。これにより、通常運転時の許容水位範囲より水位が低下しても給水量を増大することがないので、汽水分離器12内の圧力の急減少を抑制することができ、排ガスエコノマイザ4で発生する蒸気量の急減を回避して、安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機さらには主機2の運転を確保することができる。
【0043】
図4には、上述した通常運転時および切換時の各機器の動作がまとめられている。
同図に示されているように、汽水分離器12の許容水位範囲が通常運転時には±50mmとされているものが、切換時には±150mmに変更されるようになっている。
【0044】
なお、汽水分離器12の許容水位範囲の切換のタイミングは、過給機3の発電機能およびVTI機能の切り換えの際に行われ、これは種々の方法によって得ることができる。例えば、汽水分離器12内の圧力の時間変化率、水位の時間変化率、及び、排ガスエコノマイザ4の入口温度または出口温度あるいは平均温度の時間変化率のうち、いずれか又はこれらの組合せを用いて蒸気発生量の増減を制御部で予測することにより判断することができる。また、過給機3の発電機能の切り換えは、インバータ30の制御出力を得て判断することができ、VTI機能の切り換えは、過給機3の開閉弁3e(
図2参照)の動作を検出することによって判断することができるので、これらの切り換えタイミングに基づいて判断しても良い。また、発電機能およびVTI機能の切り換えのタイミングは、所定の主機負荷で予め固定されている場合には、主機負荷増加レートを制御部で把握しておくことにより容易に予測することができる。
【0045】
許容水位範囲を拡大した後、通常運転時の許容水位範囲に復帰させるタイミングとしては、例えば、上述のように、汽水分離器12内の圧力の時間変化率、水位の時間変化率、及び、排ガスエコノマイザ4の入口温度または出口温度あるいは平均温度の時間変化率のうち、いずれか又はこれらの組合せを用いて蒸気発生量の増減を制御部で予測することにより判断することができる。
また、切換時の主機負荷(65%)から所定量だけ主機負荷が変化したことをもって復帰タイミングとすることができる。あるいは、切換時から所定時間経過後を復帰タイミングとしてもよく、水位計によって計測された水位の時間変化量が所定値以下となったことをもって復帰タイミングとしてもよい。
【0046】
また、上述した各実施形態では、過給機3として発電機能およびVTI機能を備えたものを前提として説明したが、VTI機能を備えずに発電機能のみを備えたいわゆるハイブリッド過給機の場合にも本発明を適用することができる。なぜなら、発電機能の切換時に排気ガス温度が急変動するとともに、蒸気タービン発電機40への発電指令値が急変動する事象は、VTI機能を備えていなくても発生するからである。
【0047】
[参考実施形態]
次に、参考実施形態について説明する。基本的構成は
図1乃至
図3を用いて説明した第1実施形態と同様であるのでその説明は省略する。第1実施形態では、過給機3の発電機能およびVTI機能の切換時に汽水分離器12の許容水位範囲を変更することによって、汽水分離器12内の急激な圧力変動を回避することとしたが、本実施形態では、許容水位範囲を変更せずに、二次電池BTを用いる点で相違する。
したがって、本実施形態は、PMS28が二次電池を管理する場合に適用できるものである。
【0048】
通常運転時は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
主機負荷上昇時に過給機3の発電開始動作が行われる際に、二次電池による充電要求指令を図示しない制御部からPMS28に発することとした。PMS28は、充電要求指令を受けると、二次電池に対して充電指令を送る。二次電池は、過給機3の発電機3cの発電量の増大分を吸収するように充電する。このようにしてPMS28は、各発電機からの合計電力を船内需要電力に合わせることができる。
これにより、過給機3の発電機3cの発電量の増大分を吸収するために蒸気入口制御弁22を絞ることが回避されるので、汽水分離器12内の圧力の急上昇を抑制することができ、排ガスエコノマイザ4で発生する蒸気量の急上昇を回避して、安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転を確保することができる。
【0049】
また、主機負荷減少時に過給機3の発電停止動作が行われる際に、二次電池による放電要求指令を図示しない制御部からPMS28に発することとした。PMS28は、放電要求指令を受けると、二次電池に対して放電指令を送る。二次電池は、過給機3の発電機3cによる発電量の低下分を補うように放電する。このようにしてPMS28は、各発電機からの合計電力を船内需要電力に合わせることができる。
これにより、過給機3の発電機3cの発電停止にともなう船内の発電量の低下分を補うために蒸気入口制御弁22が開くことが回避されるので、汽水分離器12内の圧力の急減少を抑制することができ、排ガスエコノマイザ4で発生する蒸気量の急減を回避して、安定した蒸気タービン及び蒸気タービン発電機の運転を確保することができる。
【0050】
図5には、上述した通常運転時および切換時の各機器の動作がまとめられている。
同図に示されているように、通常運転時には二次電池に対する動作要求をPMS28に行うことはせずに、切換時に充電要求または放電要求を行うようになっている。
【0051】
また、上述した各実施形態では、過給機3として発電機能およびVTI機能を備えたものを前提として説明したが、VTI機能を備えずに発電機能のみを備えたいわゆるハイブリッド過給機の場合にも本発明を適用することができる。なぜなら、発電機能の切換時に排気ガス温度が急変動するとともに、蒸気タービン発電機40への発電指令値が急変動する事象は、VTI機能を備えていなくても発生するからである。