(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発泡樹脂成形体からなるパッド本体と、線状体により形成された三次元網目構造体からなり前記パッド本体のパッド表面側に設けられた通気性クッション体と、を備えてなり、
前記パッド本体は、表皮材を吊り込むためにパッド表面に設けられた吊込み溝と、前記吊込み溝に沿って埋設されたワイヤーと、前記吊込み溝に設けられて前記ワイヤーの一部を露出させる係止用穴部と、を有し、
前記係止用穴部が前記吊込み溝において前記パッド本体をパッド裏面側に貫通した貫通孔として設けられるとともに、前記通気性クッション体の側面が前記吊込み溝に対して連通可能に接し設けられた
ことを特徴とするシートパッド。
前記通気性クッション体は、前記吊込み溝によって区画された領域内に配され、該通気性クッション体の周縁部のうちの少なくとも一辺が、前記吊込み溝に対して連通可能に接した状態で当該吊込み溝に沿って設けられたことを特徴とする請求項1記載のシートパッド。
前記通気性クッション体の裏面側であって前記パッド本体との境界面に、前記発泡成形時における前記通気性クッション体への発泡原料の浸み込みを抑制するための浸み込み抑制シートが設けられたことを特徴とする請求項3記載のシートパッド。
前記パッド本体は、パッド表面側に収容部を設けて発泡成形されてなり、前記通気性クッション体が前記収容部に配設されたことを特徴とする請求項1又は2記載のシートパッド。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1〜7に基づいて第1実施形態に係るシートパッド10について説明する。このシートパッド10は、例として、自動車の座席の背もたれ部を構成するバックパッドであり、軟質ポリウレタンフォームの発泡成形体からなるパッド本体12と、三次元網目構造体からなる通気性クッション体14とを備えてなる。
【0012】
シートパッド10は、乗員の背中を受け止める幅方向中央部のメイン部16と、その幅方向両側において隆起状に形成された左右一対のサイド部18,18とからなる。メイン部16は、この例では上下方向に三段に区切られており、上段部16Aと中段部16Bと下段部16Cとからなる。シートパッド10の裏面側には、不図示のフレームを装着するために内向きに張り出したフランジ部19が一体に設けられている。
【0013】
パッド本体12には、そのパッド表面(即ち、シートパッド10の正面)に、表皮材(即ち、シートカバー)20を係止するための吊込み溝22,24が設けられている。この例では、上下方向に延びる左右一対の縦吊込み溝22,22と、その間を横断する上下2本の幅方向に延びる横吊込み溝24,24が設けられている。そして、一対の縦吊込み溝22,22よりも幅方向外側が上記サイド部18,18となり、その間がメイン部16となっている。また、横吊込み溝24によりメイン部16が上段部16Aと中段部16Bと下段部16Cとに区画されている。
【0014】
パッド本体12には、これらの吊込み溝22,24の長手方向に沿って、表皮材20を固定するためのワイヤー(吊込みワイヤーとも称される)26が埋設されている。ワイヤー26は、各吊込み溝22,24に対し、その底部側(即ち、溝の下方)に埋設されており、吊込み溝22,24の略全長にわたって設けられている。
【0015】
パッド本体12には、表皮材20を吊り込み係止するためにワイヤー26の長手方向における一部を露出させるための係止用穴部28が設けられている。係止用穴部28は、各吊込み溝22,24の長手方向における1箇所又は複数箇所に設けられており、この部分でワイヤー26が吊込み溝22,24内に露出している。すなわち、ワイヤー26は、係止用穴部28において断続的に露出している。そのため、表皮材20を吊込み溝22,24に引き込み、不図示の係止金具を用いて、露出したワイヤー26に係止することにより、表皮材20を固定することができる(
図5参照)。
【0016】
係止用穴部28は、
図3及び
図4に示すように、パッド裏面側に貫通させて設けられている。すなわち、係止用穴部28は、吊込み溝22,24において、パッド本体12を貫通した貫通孔として設けられており、この貫通孔内にワイヤー26が露出している。
【0017】
通気性クッション体14は、線状体により形成された三次元網目構造体からなり、クッション性を有するとともに、パッド本体12を構成する軟質ポリウレタンフォームに比べて優れた通気性を有する。かかる通気性クッション体14としては、例えば、硬綿(固綿)、三次元ランダムループ接合構造体などが挙げられる。硬綿は、例えば、ポリエステル繊維などの合成繊維を素材とし、比較的高融点の繊維と低融点の繊維を混ぜ合わせ、低融点繊維をバインダーとして成形一体化して固めたものである。また、三次元ランダムループ接合構造体は、熱可塑性弾性樹脂からなる連続線状体を曲がりくねらせてランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接着せしめて、接触部の大部分を融着させてなるものであり、例えば、東洋紡績株式会社製の「ブレスエアー」(登録商標)が挙げられる。これらは、繊維材(線状体)により形成された三次元網目構造体であり、例として密度が20〜200kg/m
3と低密度であるため、優れた通気性を有する。
【0018】
通気性クッション体14は、
図1〜4に示すように、パッド本体12におけるパッド表面側の一部に積層一体化されている。そして、通気性クッション体14は、その側面が、吊込み溝22,24に対して連通可能に接し設けられている。詳細には、通気性クッション体14は、吊込み溝22,24によって区画された領域内に配されて、周縁部のうちの少なくとも一辺における側面が、吊込み溝22,24に対して連通可能に接した状態で当該吊込み溝22,24に沿って設けられている。
【0019】
この例では、通気性クッション体14は、上記メイン部16の中段部16Bにおいて、パッド表面側に積層一体化されており、中段部16Bの表層部全体が通気性クッション体14で形成されている。そのため、略矩形状をなす通気性クッション体14は、その全周縁(即ち、4辺)が、上記左右一対の縦吊込み溝22,22と上下一対の横吊込み溝24,24に接し、これらに取り囲まれるように形成されている。
【0020】
図4に示すように、通気性クッション体14の裏面側であってパッド本体12との境界面には、パッド本体12の発泡成形時における通気性クッション体14への発泡原料の浸み込みを抑制するための浸み込み抑制シート30が設けられている。浸み込み抑制シート30としては、例えば、合成樹脂製のフィルムや、不織布などを用いることができる。
【0021】
なお、図示していないが、パッド裏面、即ちシートパッド10の背面には、不織布などからなる補強布を積層一体化することができ、その場合、上記係止用穴部28がパッド裏面側に貫通するように、該補強布にも対応する位置に貫通孔が設けられる。
【0022】
本実施形態に係るシートパッド10は、パッド本体12の発泡成形により、パッド表面側に通気性クッション体14を積層一体化してなる。
【0023】
パッド本体12の発泡成形には、
図7に示すように、パッド表面(正面)側を成形する上方に開口する下型52と、パッド裏面(背面)側を成形する上型54と、を備えた発泡成形型50を用いる。上型54は、不図示のヒンジを介して下型52に対し回動可能に設けられており、下型52の上面開口を開閉することで、下型52との間にパッド形状に対応する発泡空間であるキャビティを形成するように構成されている。
【0024】
この例では、上型54は、上記フランジ部19を成形するため、中子型55を備える。そのため、パッド裏面側の大部分は中子型55により成形され、その周縁部が上型54の本体部分により成形される。中子型55は、上型54に設けられた駆動装置57により上型54の本体部分から着脱可能に構成されており、上型54を開いた状態で駆動装置57を駆動させることで、上型54から離脱して型開きされるようになっている。
【0025】
図6に示すように、下型52には、上記吊込み溝22,24を成形するための凸条56が突出形成されており、そのため、該凸条56により、左右のサイド部18,18と、その間のメイン部16における上段部16A、中段部16B及び下段部16Cを成形する各領域が区画形成されている。
【0026】
発泡成形型50を用いてシートパッド10を製造する際には、
図6に示すように、下型52に対し、通気性クッション体14を取り付ける。その際、この例では、中段部16Bを区画する凸条56によって周囲が取り込まれた状態となるように、通気性クッション体14を凸条56の枠の中に嵌め込んでセットする。厚肉板状をなす通気性クッション体14には、その一方面に浸み込み抑制シート30が貼り付けられており、該浸み込み抑制シート30を上方に向けて、通気性クッション体14を下型52に取り付ける。なお、図示しないが、上型54、詳細には中子型55に上記補強布を取り付け、更にワイヤー26をセットしておく。
【0027】
次いで、
図6に示すように、注入装置58を用いて、下型52に発泡原料(ウレタンフォーム原液)60を注入する。その際、通気性クッション体14の上面には浸み込み抑制シート30が覆設されているため、発泡原料60を該上面に直接注入しても、通気性クッション体14の三次元網目構造体には発泡原料60は浸み込まない。
【0028】
発泡原料60の注入後に、上型54を閉めて型閉めすると、発泡原料60が、発泡しながら発泡成形型50のキャビティ内を充填していく。これにより、
図7に示すように、通気性クッション体14がパッド本体12に対して積層一体化される。このようにして発泡成形した後、上型54、更には中子型55を開いて脱型することにより、シートパッド10が得られる。
【0029】
以上よりなる本実施形態であると、通気性クッション体14が吊込み溝22,24に対して連通可能に接した状態に設けられており、かつ、その吊込み溝22,24が係止用穴部28においてパッド本体12を貫通して設けられている。そのため、係止用穴部28を通気口として利用し、かつ、吊込み溝22,24を該通気口と通気性クッション体14とを結ぶ空気の導管として利用することができる。すなわち、通気性クッション体14から、吊込み溝22,24を導管として、係止用穴部28から空気の出入りが可能となるので(
図5参照)、シートパッド10の通気性を向上することができ、着座時の蒸れを効果的に低減することができる。
【0030】
また、本実施形態であると、パッド表面側に設けられた通気性クッション体14の通気性を向上するために、表皮材20を係止するための吊込み溝22,24と係止用穴部28を利用しており、通気性クッション体14の裏面側を支持するパッド本体部分には通気口を設けていない。すなわち、通気性クッション体14の裏面ではなく、側面を吊込み溝22,24に連通可能に接した状態に設けて空気流路を形成している。そのため、当該支持部分に通気口を設けることに起因するパッド本体12の耐久性悪化を防ぐことができる。また、該支持部分に通気口を設けることに起因する座り心地への影響も抑えることができる。よって、シートに要求される耐久性を損なうことなく、また、乗り心地への影響も抑えながら、通気性を向上することができる。また、もともと存在する係止用穴部28を貫通させれば通気口が形成できるので、パッド本体12の発泡成形も容易である。
【0031】
また、本実施形態であると、通気性クッション体14を吊込み溝22,24によって区画された領域内に配した上で、通気性クッション体14の周縁部を、吊込み溝22,24に対して連通可能に接した状態で当該吊込み溝22,24に沿って設けたので、通気性クッション体14の周縁部から、導管である吊込み溝22,24への空気の流れがスムーズとなり、通気性を向上することができる。
【0032】
また、本実施形態であると、三次元網目構造体からなる通気性クッション体14に浸み込み抑制シート30を設けたので、パッド本体12の発泡成形時に、通気性クッション体14に発泡原料60が浸み込むのを防止することができる。すなわち、反応初期の段階における液状の発泡原料60が、通気性クッション体14に入り込むのを回避することができるので、入り込んだ発泡体に起因して、境界部分が硬くなったり、通気性が損なわれたりするという問題を解消することができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、浸み込み抑制シート30を通気性クッション体14に予め貼り付けておき、これを下型52にセットするようにしたが、例えば、通気性クッション体14を下型52にセットしてから、該通気性クッション体14の上面に浸み込み抑制シート30を被せるように配置してもよい。
【0034】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係るシートパッド10Aを示したものである。この実施形態では、通気性クッション体14をメイン部16の中段部16Bに設ける代わりに、メイン部16の下段部16Cに設けた点が、第1実施形態とは異なる。
【0035】
すなわち、通気性クッション体14は、メイン部16の下端部16C内に配されており、詳細には、下段部16Cにおける下端部を除く表層部に設けられている。通気性クッション体14は、略矩形状をなし、その周縁部のうちの上辺と左右両側辺の3辺が、全長にわたって、左右一対の縦吊込み溝22,22と下側の一本の横吊込み溝24に対して連通可能に接した状態で当該吊込み溝22,24に沿って設けられている。すなわち、下辺を除く3辺において、吊込み溝22,24に接し囲まれるように形成されている。
【0036】
第2実施形態は、第1実施形態とは通気性クッション体14の配設位置が異なるだけであり、上述した第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0037】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態に係るシートパッド10Bを示したものである。この実施形態では、通気性クッション体14をメイン部16の中段部16Bに設ける代わりに、メイン部16の上段部16Aに設けた点が、第1実施形態とは異なる。
【0038】
すなわち、通気性クッション体14は、メイン部16の上段部16A内に配されており、詳細には、上段部16Aにおける上端部を除く表層部に設けられている。通気性クッション体14は、略矩形状をなし、その周縁部のうちの下辺と左右両側辺の3辺が、全長にわたって、左右一対の縦吊込み溝22,22と上側の一本の横吊込み溝24に対して連通可能に接した状態で当該吊込み溝22,24に沿って設けられている。すなわち、上辺を除く3辺において、吊込み溝22,24に接し囲まれるように形成されている。
【0039】
第3実施形態は、第1実施形態とは通気性クッション体14の配設位置が異なるだけであり、上述した第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0040】
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態に係るシートパッド10Cを示したものである。この実施形態では、通気性クッション体14をメイン部16の中段部16Bに設ける代わりに、左右のサイド部18,18に設けた点が、第1実施形態とは異なる。
【0041】
すなわち、通気性クッション体14は、左右のサイド部18,18内にそれぞれ配されており、左右のサイド部18,18においてその高さ方向の全体にわたってパッド側縁部を除く表層部にそれぞれ設けられている。通気性クッション体14は、その周縁部のうちのシート幅方向内側の1辺が、それぞれ対応するサイド部18を区画する縦吊込み溝22に対して、その全長にわたって連通可能に接した状態で当該縦吊込み溝22に沿って設けられている。
【0042】
第4実施形態は、第1実施形態とは通気性クッション体14の配設位置が異なるだけであり、上述した第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0043】
[第5実施形態]
図11は、第5実施形態に係るシートパッド10Dを示したものである。この実施形態では、通気性クッション体14をメイン部16の中段部16Bだけでなく、下段部16C、上段部16A及び左右のサイド部18,18にも設けた点で、第1実施形態とは異なる。
【0044】
すなわち、通気性クッション体14は、第1実施形態の配置に加えて、第2実施形態と同様の下段部16Cと、第3実施形態と同様の上段部16Aにも設けられている。また、左右のサイド部18,18にもそれぞれ設けられており、この例では、第4実施形態とは異なり、サイド部18の高さ方向において上下両端部を除く中央部に設けられている。いずれの通気性クッション体14も、縦吊込み溝22と横吊込み溝24の少なくとも一方と連通可能に接した状態に設けられている。
【0045】
第5実施形態について、その他の構成は第1実施形態と同様であり、同様の作用効果が奏される。上記第2〜5実施形態に示すように、通気性クッション体14の配設位置は、パッド表面の少なくとも一部に設けられていれば、特に限定されるものではない。
【0046】
[第6実施形態]
図12及び
図13は、第6実施形態に係るシートパッド10Eを示したものである。この実施形態では、通気性クッション体14をパッド本体12の発泡成形により積層一体化する代わりに、パッド本体12の発泡成形後に通気性クッション体14を設置する点で、上述した第1実施形態とは異なる。
【0047】
すなわち、この例では、
図12に示すように、パッド本体12は、通気性クッション体14を収容するための凹状の収容部32を設けて予め発泡成形される。そして、この収容部32に通気性クッション体14を配設することにより、シートパッド10Eが形成されている。そのため、この例では、
図13に示すように、通気性クッション体14の裏面側には浸み込み抑制シート30は設けられていない。なお、通気性クッション体14は、接着剤を用いてパッド本体12に貼り付けて収容部32に設置してもよく、あるいはまた、接着剤なしで収容部32に設置してもよい。
【0048】
第6実施形態について、その他の構成は第1実施形態と同様であり、このように通気性クッション体14を後から設置した場合でも、第1実施形態と同様に、係止用穴部28を通気口として利用することにより、パッド表面側の通気性クッション体14から、吊込み溝22,24を導管として、係止用穴部28から空気の出入りが可能となる。そのため、シートパッド10の通気性を向上することができ、着座時の蒸れを効果的に低減することができる。
【0049】
[他の実施形態]
以上の実施形態では、背もたれ部としてのバックパッドの場合について説明したが、本発明は、着座者である乗員の臀部を支持するためのシートクッションパッドにも同様に適用することができる。
【0050】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。