特許第5976515号(P5976515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976515
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】トロリ線摩耗検出装置
(51)【国際特許分類】
   B60M 1/28 20060101AFI20160809BHJP
   B60M 1/14 20060101ALI20160809BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   B60M1/28 R
   B60M1/14
   G01B11/16 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-270251(P2012-270251)
(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-31158(P2014-31158A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年11月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-154192(P2012-154192)
(32)【優先日】2012年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島田 健夫三
(72)【発明者】
【氏名】森 茂久
(72)【発明者】
【氏名】山川 盛実
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−227296(JP,A)
【文献】 特開平3−136930(JP,A)
【文献】 特開2007−176426(JP,A)
【文献】 特開2005−1495(JP,A)
【文献】 特開2011−109743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/00−1/36
G01B 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車線のオーバーラップ箇所においてトロリ線に並行して固定され、トロリ線にかかる張力を分担する耐張力補助体を備え、トロリ線の摩耗に伴う前記補助体の伸び歪みを検知することによりトロリ線の摩耗状態を検出するトロリ線摩耗検出装置において、
前記補助体に並行するように固定される光ファイバを備え、光ファイバを通る反射光又は透過光を受けて補助体の歪みを検知することにより、トロリ線の摩耗状態を検出する光ファイバ型歪みセンサを具備することを特徴とするトロリ線摩耗検出装置。
【請求項2】
前記歪みセンサは、光ファイバが前記補助体に内蔵されることを特徴とする請求項1に記載のトロリ線摩耗検出装置。
【請求項3】
前記光ファイバ型歪みセンサによる歪みの測定値を温度補正するための温度センサを具備することを特徴とする請求項1又は2に記載のトロリ線摩耗検出装置。
【請求項4】
前記温度センサは、前記補助体に固定された前記光ファイバ型歪みセンサの光ファイバの一部を補助体の拘束から解放し、光ファイバを通る反射光又は透過光を受けて温度を検知することを特徴とする請求項3に記載のトロリ線摩耗検出装置。
【請求項5】
前記光ファイバ型歪みセンサの光ファイバは、前記電車線を引き留める支柱上に取り付けられる測定部に接続されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のトロリ線摩耗検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車線のオーバーラップ箇所において、トロリ線の端部の摩耗状態を監視するためのトロリ線摩耗検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバを備えた光ファイバ複合トロリ線が知られている(特許文献1)。このトロリ線においては、トロリ線本体内に、トロリ線本体の摩耗による伸び歪の変化を検知するための光ファイバを備えた歪みセンサを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−132277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電車線のオーバーラップの移行区間では、パンタグラフとの接触時の衝撃等により摩耗が激しい。これに対して、当該箇所のトロリ線の摩耗による断線を防止する必要があるが、当該箇所に上記従来の光ファイバ複合トロリ線を適用しても、張力に対して断線を防止する十分な強度を具備するものではないし、トロリ線への光ファイバの内蔵加工を必要とし、加工が容易でなく、既設トロリ線の張り替えを伴う。
そこで、本発明は、トロリ線の摩耗による断線を防止する強度を付与した上で、トロリ線の摩耗を高精度に検出でき、トロリ線自体の加工を要せず、既設のトロリ線に後付けできるトロリ線摩耗検知装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、電車線のオーバーラップ箇所において、トロリ線T1にかかる張力を分担する耐張力補助体2をトロリ線T1に並行させるように固定し、この補助体の伸び歪みを検知することにより当該トロリ線T1の摩耗状態を検知するようにトロリ線摩耗検出装置1を構成する。補助体2に沿って並行する光ファイバ型歪みセンサ4の光ファイバ4aを補助体2に固定し、この光ファイバ4a内の反射光又は透過光を受けて、補助体2の歪みを検出し、これによってトロリ線T1の摩耗状態を検出する。
歪みセンサ4の光ファイバ4aは補助体2に内蔵させる。
歪みセンサ4による歪みの測定値を温度補正するための温度センサを具備させる。
温度センサは、光ファイバ型歪みセンサ4の光ファイバ4aの一部を補助体2の拘束から解放し、光ファイバ内の反射光又は透過光から温度を検知する。
歪みセンサ4の光ファイバ4aは、電車線を引き留める支柱P1上に配置された測定部6に接続する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、トロリ線の摩耗程度に応じて耐張力補助体に張力が分担されるので、トロリ線の摩耗による断線を確実に防止する機械的強度を持つことができるし、耐張力補助体にかかる張力を検出することによりトロリ線の摩耗状態を高い精度で監視することができ、トロリ線そのものへの加工を必要とせず、後付けが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(A)は電車線のオーバーラップの概念図、(B)は概略的正面図である。
図2】トロリ線に取り付けた耐張力補助体の正面図である。
図3】(A)は耐張力補助体及びイヤーの正面図、(B)は同側面図である。
図4】耐張力補助体の断面図である。
図5】本発明に係るトロリ線摩耗検出装置の概略的構成図である。
図6】計測器のブロック図である。
図7】他の実施形態に係るトロリ線摩耗検出装置の概略的構成図、(B)は同正面図である。
図8】他の実施形態に係る計測器のブロック図である。
図9】他の実施形態に係る耐張力補助ロープ及びイヤーを示し、(A)は正面図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の一形態を図面を参照して説明する。
図1(A)(B)において、耐張力補助体2は、電車線のオーバーラップ箇所において並行するトロリ線T1,T2について、トロリ線T1あるいはT2又は両トロリ線T1,T2に沿って並行して固定される。
【0009】
この補助体2は、図2に示すように、例えば当該箇所のトロリ線T1に軽量な複数のイヤー3により長手方向に間隔を置いてトロリ線T1の上側に固定される。補助体2は、たとえばFRP、アラミド繊維、PBO繊維のような軽量で耐張力性能の高い材質の棒状体により構成される。補助体2は、複数の分割体2aがイヤー3において接合され一体に連続して構成される。イヤー3は、図3(A)(B)に示すように、トロリ線把持凹部3c及び補助体把持爪3dを上下にそれぞれ備えた左右一対のイヤー片3aを貫通ボルト3bで締め付ける構成である。
【0010】
補助体2の内部には、図3図4(A)に示すように、光ファイバ型歪みセンサ4の光ファイバ4aが長さ方向に貫通している。光ファイバ型歪みセンサ4は、トロリ線T1の摩耗によりその断面積が減少すると、補助体2が分担する張力が増加することにより、補助体2と共に伸び歪みが生じるので、この歪みを光ファイバ4aが検出して、トロリ線T1の摩耗状態を監視する。歪みセンサ4は、多重化したファイバグレーティングによるブラッグ散乱を利用するFBG方式、ブリルアン散乱を利用する方式(BOTDR、BOCDA、BOCDR等)あるいはレイリー散乱を利用しヘテロコア構造光ファイバセンサを用いるHC方式等がある。光ファイバ4aは図6に示すように、計測器6の測定部4bに接続される。
【0011】
光ファイバ型歪みセンサ4は、採用する測定方式によっては測定値が温度に依存して変化するものがあり、必要に応じて測定値を温度補正することが一般的に行われる。この場合には、図3(A),図5に示すように、補助体2の端部に光ファイバ型温度センサ5の光ファイバ5aが取り付けられる。これらのセンサ4,5は、図5に示すように、トロリ線T1を引き留める碍子I、引き留めワイヤW及びヨークYを介して張力調整装置Rが設置された支柱P1上の計測器6に接続される。この計測器6は、図6に示すように、動作用電力を供給する電源部7と、歪みセンサ4の光ファイバ4aが接続されてゆがみを測定する歪み測定部4bと、採用する歪みセンサ4に応じて必要となる温度センサ5の光ファイバ5aが接続される温度測定部5bと、測定結果を外部出力する通信部8とを具備する。
【0012】
このトロリ線摩耗検出装置1においては、オーバーラップのトロリ線T1には補助体2が並行して固定されるが、補助体2及びイヤー3が軽量でトロリ線T1に大きな荷重をかけることなく、トロリ線T1と共に補助体2が張力を分担する。トロリ線T1の摩耗に応じて補助体2にかかる張力が増すが、補助体2は耐張力性能が高いのでトロリ線T1に代わって張力を受け、トロリ線T1の摩耗による断線を防止する。トロリ線T1の摩耗状態は、補助体2に内蔵された光ファイバ4aを通じて歪みセンサ4が補助体2の伸び歪みを検出することにより監視される。歪みセンサ4により検出された歪みの測定値は、必要に応じて温度センサ5の検出温度によって補正された上で、通信部8から外部出力され、遠隔の電力指令所においてトロリ線T1の摩耗状態を保全データとして記録され、適切な対応措置の指令が発せられる。
【0013】
他の実施形態を図7に示す。この実施形態においては、先の実施形態における光ファイバ4aを補助体2に貫通させる構成に代えて、同図に示すように、光ファイバ4aを補助体2の外周面に設けた長さ方向の溝に挿入して固着し、補助体2に並行させる構成である。この光ファイバ型歪みセンサ4においても、先の実施形態におけるものと同様に、トロリ線T1の摩耗によりその断面積が減少すると、補助体2が分担する張力が増加することにより、補助体2と共に伸び歪みが生じ、この歪みを検出する。光ファイバ型歪みセンサ4は、光ファイバ4aの各イヤー3,3間にFBG4cを備える。補助体2から離れてその拘束から解放された端部の光ファイバ5aは、FBG5cを備えた光ファイバ型温度センサ5として機能させる。この場合には、図8に示すように、光ファイバ型温度センサ5の測定部5bは、計測器6において測定部4bと一体に構成される。
【0014】
他の実施形態を図9に示す。先の実施形態における耐張力補助体2に代えて上記材質の線条材で構成される補助ロープ9を用い、複数のイヤー10により長手方向に間隔を置いてトロリ線Tの上側に固定するものである。補助ロープ9に適用する歪みセンサ4の光ファイバ4aは、先の実施形態の内蔵する構成に代えて、補助ロープ9の外部に並行させ、イヤー10によりトロリ線Tに一体に固定する。この実施形態においても、光ファイバ4aを通じて歪みセンサ4が補助ロープ9の伸び歪みを検出することにより、トロリ線T1の摩耗状態を監視できる。
【符号の説明】
【0015】
1 トロリ線摩耗検出装置
2 耐張力補助体
3 イヤー
4 歪みセンサ
4a 光ファイバ
4b 歪み測定部
5 温度センサ
5a 光ファイバ
5b 温度測定部
6 計測器
9 補助ロープ
10 イヤー
T1 トロリ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9