(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976516
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】無接点充電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20160809BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20160809BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20160809BHJP
H01M 10/46 20060101ALI20160809BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20160809BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 301D
H02J50/10
H02J50/80
H01M10/46
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
H01M10/44 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-271524(P2012-271524)
(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公開番号】特開2014-117124(P2014-117124A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 良二
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋由
【審査官】
大手 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−504116(JP,A)
【文献】
特開平09−215220(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/098867(WO,A1)
【文献】
特開2011−250608(JP,A)
【文献】
特開平11−191435(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0223591(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42−10/48、
H02J 7/00− 7/12、 7/34− 7/36、
50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電台(1)に電池内蔵機器(2)をセットし、充電台(1)の送電コイル(3)に電池内蔵機器(2)の受電コイル(4)を結合して、送電コイル(3)から受電コイル(4)に電磁誘導作用で電力搬送して、受電コイル(4)に誘導される電力を電池内蔵機器(2)の負荷(10)と電池(6)に供給すると共に、
電池内蔵機器(2)から充電台(1)に電圧を制御する信号を伝送して、充電台(1)がこの信号でもって送電コイル(3)の供給電力を調整して、充電している電池(6)の電圧を設定電圧に制御し、
かつ、電池内蔵機器(2)が電池(6)の電圧を検出し、検出電池電圧が過電圧閾値よりも高い過電圧であると判定すると、過電圧信号を充電台(1)に伝送して、充電台(1)が過電圧信号で送電コイル(3)の供給電力を停止し、又は減少させるようにしてなる無接点充電方法であって、
電池内蔵機器(2)が、充電される電池(6)の電圧と、電池内蔵機器(2)の充電電流と負荷電流の和を検出電流として検出し、電池(6)の検出電池電圧を、検出電流の変化量から補正して電池(6)の電圧が過電圧であるかどうかを判定することを特徴とする無接点充電方法。
【請求項2】
前記電池内蔵機器(2)が、負荷(10)の消費電流の減少による検出電流の減少値に対する電池電圧の上昇電圧を記憶しており、電池(6)の検出電池電圧から、検出電流の減少値による上昇電圧を減算した減算電圧を過電圧閾値と比較して、電池(6)の過電圧を判定する請求項1に記載される無接点充電方法。
【請求項3】
前記電池内蔵機器(2)が、検出電流の減少値に対する電池電圧の上昇電圧をルックアップテーブルに記憶しており、検出電流の減少値とルックアップテーブルの記憶データから上昇電圧を検出する請求項2に記載される無接点充電方法。
【請求項4】
前記電池内蔵機器(2)が、検出電流の減少値に対する電池電圧の上昇電圧を関数として記憶しており、検出電流の減少値と記憶する関数に基づいて上昇電圧を検出する請求項2に記載される無接点充電方法。
【請求項5】
前記充電台(1)が、電池内蔵機器(2)から伝送される過電圧信号を検出すると、送電コイル(3)への供給電力を停止し、又は減少させる請求項1に記載される無接点充電方法。
【請求項6】
電池内蔵機器(2)から充電台(1)に電圧制御信号を伝送して、充電台(1)がこの電圧制御信号でもって送電コイル(3)の供給電力を調整して、充電している電池(6)の電圧を一定の設定電圧に制御し電池(6)を定電圧充電する請求項1ないし5のいずれかに記載される無接点充電方法。
【請求項7】
前記電池内蔵機器(2)に内蔵される電池(6)が、非水系電解液二次電池である請求項1ないし6のいずれかに記載される無接点充電方法。
【請求項8】
前記電池内蔵機器(2)に内蔵される電池(6)が、リチウムイオン二次電池とリチウムポリマー電池のいずれかである請求項7に記載される無接点充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電コイルを送電コイルに近づけて、送電コイルから受電コイルに電力搬送して、受電コイルに誘導される電力で電池を充電する無接点充電方法に関し、とくに、電池内蔵機器から充電台に制御信号を伝送して充電台の送電コイルの搬送電力を制御して、電池を充電する電圧・電流を所定の値にコントロールする無接点充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電コイルを内蔵する充電台に、受電コイルを内蔵する電池内蔵機器をセットして、送電コイルから受電コイルに電力搬送して、電池内蔵機器の電池を充電する無接点充電方法は開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−191435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の特許文献の無接点充電方法は、電池内蔵機器側で電池の満充電を検出すると、充電を停止する制御信号を充電台に伝送して送電コイルへの
供給電力を停止する。この無接点充電方法は、充電台の送電コイルから送電される電力を、電池内蔵機器側から制御するので、電池内蔵機器から充電台に電力制御信号を伝送して充電台の送電コイルの搬送電力をコントロールして、電池を充電する電圧と電流を一定の値にコントロールできる。したがって、電池内蔵機器側から、電池を一定の電圧で充電するようにコントロールできる。また、電池内蔵機器側で、充電している電池の電圧が、あらかじめ設定している過電圧閾値を越えることを検出すると、送電コイルの搬送電力をコントロールして、電池を充電する電圧を低く制御して安全に充電している。
【0005】
ただ、この無接点充電方法は、電池内蔵機器側から電圧の制御信号を充電台に伝送し、充電台がこの制御信号を検出して、送電コイルの搬送電力を調整して、電池を充電する電圧を調整するので、充電台側の即応性の遅れなどで、電池を充電する電圧を調整するのに時間遅れが発生する。この電力制御の時間遅れは、実際に電池の電圧が過電圧に上昇、あるいは電池内蔵機器の負荷電流の急激な変動によって電池電圧が一時的に過電圧となりそうな場合に対しても発生する。負荷電流変動による電圧変化により過電圧と判定されることを回避するために、電池内蔵機器は、検出した検出電池電圧値をフィルター処理している。
図1の実線は、負荷電流が変化することにより、変化する検出電池電圧を示し、鎖線は検出電池電圧をフィルター処理した電圧波形を示している。電池の電圧が変化しない状態においても、電池を内蔵する機器側に流れる負荷電流が低下すると、
図1の実線で示すように、電池を充電する電圧は上昇する。負荷として機器側に流れていた電流が瞬間的に小さくなると、電池セル側に流れ込むため、電池セルの内部抵抗による電圧降下が大きくなるからである。実線で示す検出電池電圧は、フィルター処理して鎖線で示す電圧カーブに修正して、過電圧閾値を越えないようにソフトウェア的に処理できる。すなわち、一時的に電池電圧が大きくなった場合であれば、電池の電圧が過電圧閾値を越えないと判定できる。ただ、フィルター処理は、検出電池電圧の変化を小さくするように補正するので、電池の電圧が過電圧閾値を越えない状態においても、
図2に示すように、機器側に流れる負荷電流の低下が甚だしいときは、電池セルに負荷として流れていた電流が流れ込むため、フィルター処理したとしても電圧カーブが過電圧閾値を越えて、電池の電圧が過電圧閾値を越えたと誤判定することがある。この検出は、フィルター処理において、検出電池電圧を小さく補正する割合を大きくして、すなわちフィルターとしてのカットオフ周波数を低く、減衰特性を大きくすることで解消できる。ただ、フィルター処理で検出電池電圧を小さく補正する割合を大きくすると、現実に電池の電圧が過電圧閾値を越える状態を速やかに検出できない欠点がある。
【0006】
本発明は、さらに以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、電池を内蔵する機器側で消費される負荷電流の急激な変動により一時的に検出電池電圧が上昇する場合には過電圧と判定することを回避しながら、実際に電池の電圧が過電圧閾値を越えた場合には速やかに過電圧を検出して安全に充電できる無接点充電方法を提供することにある。
【0007】
本発明の無接点充電方法は、充電台1に電池内蔵機器2をセットし、充電台1の送電コイル3に電池内蔵機器2の受電コイル4を結合して、送電コイル3から受電コイル4に電磁誘導作用で電力搬送して、受電コイル4に誘導される電力を電池内蔵機器2の負荷10と電池6に供給すると共に、電池内蔵機器2から充電台1に電圧を制御する信号を伝送して、充電台1がこの信号でもって送電コイル3の供給電力を調整して、充電している電池6の電圧を設定電圧に制御し、かつ、電池内蔵機器2が電池6の電圧を検出し、検出電池電圧が過電圧閾値よりも高い過電圧であると判定すると、過電圧信号を充電台1に伝送して、充電台1が過電圧信号で送電コイル3の供給電力を停止する。さらに、無接点充電方法は、電池内蔵機器2が、充電される電池6の電圧と、電池内蔵機器2の充電電流と負荷電流の和を検出電流として検出し、電池6の検出電池電圧を、検出電流の変化量から補正して電池6の電圧が過電圧であるかどうかを判定する。
【0008】
以上の無接点充電方法は、電池を内蔵する機器側で消費される負荷の変動による一時的な検出電圧の上昇による過電圧の誤検出を解消して、実際に電池の電圧が過電圧閾値を越えた場合には速やかに検出することで安全に充電できる特徴がある。それは、以上の無接点充電方法が、電池の検出電池電圧を検出すると共に、電池内蔵機器の負荷電流と充電電流の和を検出電流として検出し、この検出電流の変化量で検出電池電圧を補正して電池が過電圧であるかどうかを判定するからである。電池を設定電圧に制御して充電する無接点充電方法は、電池を充電している状態で、負荷電流が急激に減少して電池を充電する電圧が上昇すると、電池内蔵機器側から充電台側に電圧を低下させる制御信号を伝送して、送電コイルの供給電力を減少させて、電池を充電する電圧を低下させるように制御する。しかしながら、この制御には時間遅れがある。充電台の送電電力量は電池からの通信コマンドを受け取った後に電力調整処理を開始するため。制御に対する時間遅れがある。たとえば、電池パックを内蔵する機器側の負荷が急激に減少した場合には、電池パックからの制御コマンドを受け取り、電力制御を開始するまでは負荷が大きな値であったときの電力を送電することになる。このため、負荷で消費されていた電力は電池ですべて消費される。この時、電池の持つ内部抵抗により電圧降下が発生し、電池を充電する電圧が上昇するため、検出電圧は一時的に高い値が検出される。ただ、この状態で電池の電圧が上昇しても、制御の遅れによって電池の内部抵抗により一時的に電池自体の電圧が高くみえているだけである。したがって、この状態で電池の電圧を過電圧閾値に比較して、電池が過電圧になったと判定すると、電池自体の電圧が過電圧でない状態であっても、負荷電流が急激に低下する状態で過電圧と誤判定する。以上の方法は、定電圧充電状態において、負荷電流の変化による検出電流の変化量と、検出電池電圧の変化量から負荷変動が発生したことを判別することで、検出電池電圧を補正して、電池自体の電圧が過電圧かどうかを判定するので、負荷電流の急激な変動による誤検出を解消して正確に過電圧を検出できる。
【0009】
本発明の無接点充電方法は、電池内蔵機器2が、負荷10の負荷電流の減少による検出電流の減少値に対する電池電圧の上昇電圧を記憶しており、電池6の検出電池電圧から、検出電流の減少値による上昇電圧を減算した減算電圧を過電圧閾値と比較して、電池6の過電圧を判定することができる。
以上の無接点充電方法は、負荷電流が減少した際の検出電流の減少値に対する電池電圧の上昇電圧を記憶しているので、検出電池電圧から負荷電流の変動による上昇電圧を減算することで、電池自体の電圧をより正確に検出できる特徴がある。
【0010】
本発明の無接点充電方法は、電池内蔵機器2が、検出電流の減少値に対する電池電圧の上昇電圧をルックアップテーブルに記憶して、検出電流の減少値とルックアップテーブルの記憶データから上昇電圧を検出することができる。
【0011】
本発明の無接点充電方法は、電池内蔵機器2が、検出電流の減少値に対する電池電圧の上昇電圧を関数として記憶して、検出電流の減少値と記憶する関数に基づいて上昇電圧を検出することができる。
【0012】
本発明の無接点充電方法は、充電台1が、電池内蔵機器2から伝送される過電圧信号を検出すると、送電コイル3への
供給電力を停止し、又は減少させることができる。
【0013】
本発明の無接点充電方法は、電池内蔵機器2から充電台1に電圧制御信号を伝送して、充電台1がこの電圧制御信号でもって送電コイル3の供給電力を調整して、充電している電池6の電圧を一定の設定電圧に制御して電池6を定電圧充電することができる。
以上の無接点充電方法は、電池を定電圧充電しながら、電池自体の電圧が過電圧になったことを正確に検出できる。
【0014】
本発明の無接点充電方法は、電池内蔵機器2に内蔵される電池6を、非水系電解液二次電池とすることができる。
【0015】
本発明の無接点充電方法は、電池内蔵機器2に内蔵される電池6を、リチウムイオン二次電池とリチウムポリマー電池のいずれかとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】負荷電流が変化して電池の検出電池電圧が変化する状態を示すグラフである。
【
図2】フィルター処理した電圧カーブが過電圧閾値を越える状態を示すグラフである。
【
図3】本発明の無接点充電方法に使用する充電台と電池内蔵機器の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための無接点充電方法を例示するものであって、本発明は無接点充電方法を以下の方法に特定するのではない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0018】
図3は、本発明の無接点充電方法で、充電台1の上に電池内蔵機器2を載せて、電池内蔵機器2の電池6を充電する状態を示している。
【0019】
充電台1は、ケースの上面に、電池内蔵機器2を載せる上面プレート7を設けて、この上面プレート7の内側に送電コイル3を配置している。送電コイル3は、交流電源8を接続して、交流電源8をコントロール回路9で制御している。コントロール回路9は、電池内蔵機器2の伝送回路15から伝送される制御信号を受信回路11で検出して、検出する制御信号で、送電コイル3に供給する電力をコントロールしながら、電池内蔵機器2に電力搬送する電力を制御する。
【0020】
充電台1は、送電コイル3を受電コイル4に結合して、送電コイル3から受電コイル4に電力搬送する。電池内蔵機器2を上面プレート7の自由な位置にセットして、電池6を充電する充電台1は、送電コイル3を受電コイル4に接近するように移動させる機構(図示せず)を内蔵している。この充電台1は、送電コイル3をケースの上面プレート7の下に配設して、上面プレート7に沿って移動させて受電コイル4に接近させる。ただし、充電台は、必ずしも送電コイルを受電コイルに接近させるように送電コイルを移動させる機構を内蔵する必要はなく、電池内蔵機器を充電台の定位置に配置して、送電コイルを受電コイルに接近する構造とすることもできる。
【0021】
送電コイル3は、上面プレート7と平行な面で渦巻き状に巻いてなる平面コイルで、上面プレート7の上方に交流磁束を放射する。この送電コイル3は、上面プレート7に直交する交流磁束を上面プレート7の上方に放射する。送電コイル3は、交流電源8から交流電力が供給されて、上面プレート7の上方に交流磁束を放射する。送電コイル3は、受電コイル4の外径にほぼ等しくして、受電コイル4に効率よく電力搬送する。
【0022】
交流電源8は、たとえば、20kHz〜1MHzの高周波電力を送電コイル3に供給する。送電コイル3を受電コイル4に接近するように移動させる充電台1は、交流電源8を、可撓性のリード線を介して送電コイル3に接続している。交流電源8は、発振回路と、この発振回路から出力される交流を電力増幅するパワーアンプとを備える。
【0023】
充電台1は、送電コイル3を受電コイル4に接近させる状態で電力搬送するが、電池6の電圧が過電圧閾値を越える状態では、送電コイル3に供給する電力を小さくし、あるいは送電コイル3への
供給電力を停止する。また、充電台1は、電池6が満充電されて、電池内蔵機器2からの満充電信号を検出すると、送電コイル3への
供給電力を停止して、電池6の充電を停止する。
【0024】
電池内蔵機器2は、充電台1の送電コイル3に電磁結合される受電コイル4を内蔵しており、この受電コイル4に誘導される電力で電池6を充電する。電池内蔵機器2は、充電できる電池6を備えている携帯機器であって、パック電池、携帯電話機、携帯式の音響機器、携帯機器を充電する電池を内蔵している充電器など、電池を備える携帯機器である。
【0025】
図3の電池内蔵機器2は、受電コイル4と、この受電コイル4に誘導される交流を直流に変換して電池6を充電する電源回路12と、電源回路12から出力される直流で充電される電池6と、この電池6と並列に接続している負荷10と、充電している電池6の電圧を検出する電圧検出回路13と、電圧検出回路13の検出電池電圧から電圧を制御する制御信号を検出し、かつ、検出電池電圧が過電圧閾値を越えたかどうかを判定する制御回路14と、この制御回路14から出力される制御信号と過電圧信号を充電台1に伝送する伝送回路15とを備える。電池内蔵機器2は、充電される電池を電池パックとして、脱着自在に内蔵することもできる。
【0026】
電池6は、リチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池等の非水系電解液二次電池である。ただし、電池は、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池などの充電できる全ての電池とすることができる。電池内蔵機器2は、1個ないし複数の電池6を内蔵している。複数の電池は、直列又は並列に接続され、あるいは直列と並列に接続される。
【0027】
制御回路14は、電圧検出回路13で電池6の電圧を検出して、リチウムイオン電池やリチウムポリマー電池等を定電圧・定電流充電する制御信号を検出して伝送回路15に出力し、また、充電される電池6の電圧が過電圧閾値を越えたかどうかを判定する。制御回路14は、電池6を定電圧充電する電圧、たとえば、リチウムイオン二次電池にあっては4.2Vを基準電圧として記憶しており、この基準電圧と検出電池電圧とを比較して、その差電圧を、あるいは基準電圧よりも低いか高いかを制御信号として出力する。制御信号は充電台1に伝送され、充電台1はこの制御信号で送電コイル3の供給電力を調整する。たとえば、電池6の電圧が基準電圧よりも低いと、制御回路14は電圧を上昇させる制御信号を充電台1に伝送し、充電台1はこの制御信号で送電コイル3の供給電力を増加させて、電池6の電圧を上昇させる。
【0028】
さらに、制御回路14は、電池自体の電圧が過電圧閾値を越えたかどうかを判定するために、過電圧閾値をメモリ(図示せず)に記憶している。制御回路14は、電池自体の電圧が過電圧閾値を越えたことを検出すると、過電圧信号を伝送回路15から充電台1に伝送する。充電台1は、この過電圧信号を検出して、送電コイル3に供給する電力を減少し、あるいは停止して、電池6の電圧を過電圧閾値よりも低くする。
【0029】
前述したように、電池6の検出電池電圧は、負荷電流によって変化するので、必ずしも電池自体の電圧とはならない。
図1と
図2に示すように、電池自体の電圧が変化しない状態にあっても、電池内蔵機器2から充電台1に電力制御コマンドを送って電圧を低下させるまでの時間遅れによって、検出電池電圧は上昇する。負荷電流が減少すると、充電台1からの送電電力量は時間遅れにより負荷10の電流が大きいままであるため、急激に負荷10の電流が減った場合には残りの電流は電池6に流れるため電池6の内部抵抗(r)による電圧降下が電池自体の電圧に加算されて電池6の端子に供給される電圧を上昇させるからである。フィルター処理して電圧上昇を緩やかに補正しても、
図2に示すように、負荷電流が急激に減少すると検出電流が過電圧閾値を越えることがある。
【0030】
この欠点を解消するために、制御回路14は、充電される電池6の電圧と、電池内蔵機器2の充電電流と負荷電流の和を検出電流として検出し、検出電流の変化量から負荷変動による電池電圧の一時的な上昇電圧を検出して、この上昇電圧で電池6の検出電池電圧を補正して電池自体の電圧が過電圧であるかどうかを正確に判定する。このことを実現するために、制御回路14は、負荷電流を含む電流を検出する電流検出回路16と、検出電流の減少値に対する電池電圧の上昇電圧を記憶するメモリ(図示せず)とを備えている。
図3の電流検出回路16は、負荷電流を含む電流として、電池6の充電電流と負荷電流の両方のトータル電流を検出するが、負荷電流のみを検出することもできる。
【0031】
制御回路14のメモリは、負荷電流が減少して検出電池電圧が上昇する電流−上昇電圧特性をあらかじめ測定して関数やルックアップテーブルとして記憶している。制御回路14は、検出電池電圧から、検出電流の減少値に対する上昇電圧を減算した減算電圧を電池自体の電圧として、メモリに記憶している過電圧閾値に比較して、電池自体の過電圧を判定する。制御回路14は、負荷電流が減少して検出電池電圧が上昇する上昇電圧を減算して、電池自体の電圧を検出するので、負荷電流の変動による検出誤差を正確に補正して、負荷電流が変動する状態にあっても、常に電池自体の電圧を正確に検出できる。
【0032】
以上の電池内蔵機器2と充電台1は、以下の方法で電池6を充電し、また充電される電池自体の過電圧を検出する。
電池内蔵機器2の電圧検出回路13で電池6の電圧を検出し、この検出電池電圧から充電台1の電圧を制御する信号を検出して、この信号を充電台1に伝送する。充電台1は、この信号でもって送電コイル3の供給電力を調整して、充電している電池6の電圧を設定電圧に制御する。この状態で電池6を満充電し、満充電されると、満充電信号を電池内蔵機器2から充電台1に伝送して、充電台1は送電コイル3への
供給電力を停止する。
【0033】
電池6を充電している状態で、制御回路14は、負荷電流を含む電流を検出して、検出電流が減少しない状態では、検出電池電圧を電池自体の電圧と判定し、検出電流が減少すると、この減少値に対する検出電池電圧の上昇電圧を、メモリに記憶する電流−電圧特性から特定して、特定される上昇電圧を検出電池電圧から減算して電池自体の電圧とする。電池自体の電圧を過電圧閾値に比較し、電池自体の電圧が過電圧閾値を越えると、過電圧信号を充電台1に伝送し、過電圧閾値を越えないと過電圧信号を伝送しない。充電台1が過電圧信号を検出すると、送電コイル3の供給電力を小さくし、あるいは停止して、電池自体の電圧を過電圧閾値よりも低くする。
【0034】
電池内蔵機器2は、制御回路14から出力される制御信号や過電圧信号に加えて、電池6の充電電流、電池6の満充電信号、ID信号などを充電台1に伝送する。伝送回路15は、受電コイル4の負荷インピーダンスを変化させて、送電コイル3に種々の信号を伝送する。
図3の伝送回路15は、受電コイル4と並列に接続している、コンデンサー17とスイッチング素子18との直列回路を備え、制御部19でスイッチング素子18のオンオフを制御して種々の信号を充電台1に伝送する。
【0035】
充電台1は受信回路11を備えている。受信回路11は、送電コイル3のインピーダンス変化、電圧変化、電流変化等を検出して、伝送回路15から伝送される信号を検出する。受電コイル4の負荷インピーダンスが変化すると、これに結合している送電コイル3のインピーダンスや電圧や電流が変化するので、受信回路11は、これ等の変化を検出して、電池内蔵機器2の伝送信号を検出する。充電台1は、検出する制御信号や過電圧信号、あるいは満充電信号で送電コイル3への供給電力をコントロールして、電池6を所定の電圧と電流で充電し、また満充電されると充電を停止する。
【0036】
ただし、伝送回路は、搬送波を変調して伝送する回路、すなわち送信機とすることもできる。この伝送回路から伝送される伝送信号の受信回路は、搬送波を受信して、伝送信号を検出する受信器である。伝送回路と受信回路とは、電池内蔵機器から充電台に伝送信号を伝送できる全ての回路構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の無接点充電方法は、電池内蔵機器に内蔵している電池自体の電圧が過電圧閾値を越えたかどうかを正確に判定して、電池を安全に充電する充電方法に最適である。
【符号の説明】
【0038】
1…充電台
2…電池内蔵機器
3…送電コイル
4…受電コイル
6…電池
7…上面プレート
8…交流電源
9…コントロール回路
10…負荷
11…受信回路
12…電源回路
13…電圧検出回路
14…制御回路
15…伝送回路
16…電流検出回路
17…コンデンサー
18…スイッチング素子
19…制御部