【実施例1】
【0009】
図1は本発明の弁開閉装置100の全体図である。弁開閉装置100は、原子炉建屋内に設置されている弁本体1を開閉するアクチュエータ2、2本のフレキシブルシャフト4a、4b、アクチュエータ2にトルクを入力するモーター60、原子炉建屋壁14を貫通する貫通シャフト12、原子炉建屋外に設置される開度計11、直流インパクトドライバ15を備えている。
【0010】
アクチュエータ2は、通常は交流電源(主要操作源の一例)により駆動されるモーター60(主要トルク入力手段)からトルクを入力される。トルクはドライブスリーブ51を介して弁本体1に伝達され弁の開閉を行う。また、アクチュエータ2のもう一つの入力端にはカップリング3、フレキシブルシャフト4a、減速機5、フレキシブルシャフト4b、貫通シャフト12を介して直流インパクトドライバ15が接続されている。アクチュエータ2は、上記の二つのトルク入力手段を自動的に切り替えるオートデクラッチ機構を備えている。
【0011】
フレキシブルシャフト4a、4bの接続部にはフレキシブルシャフト4bの回転を回転数を減少させてフレキシブルシャフト4aに伝達する減速機5が設けられている。減速機5は、原子炉建屋の床等の強固な構造物に固定された減速機架台6にボルト止め等により固定されている。フレキシブルシャフト4a、4bは、サポート8により固定されている。サポート8は3m程度の間隔で配置され、例えば、原子炉建屋の床にボルト止めされたクランプにより構成される。
【0012】
図3に示すように、原子炉建屋壁14には貫通孔16が形成され、この貫通孔16を貫通して外管13が配置され、さらに外管13を貫通して貫通シャフト12が配置されている。貫通シャフト12の両端は、それぞれ原子炉建屋壁14にボルト等により固定された内側軸受部9のベアリング19と外側軸受部10のベアリング20により軸受け支持されている。貫通孔16の原子炉建屋外側の端部には塞止フタ18が設けられ、貫通孔16は原子炉建屋内の空気が原子炉建屋外に漏出しないグランド構造となっている。
【0013】
貫通シャフト12の原子炉建屋内の端部にはフレキシブルシャフト4bがコネクタ7を介して、原子炉建屋外の端部には開度計11と直流電源(予備操作源の一例)で作動する直流インパクトドライバ15(予備トルク入力手段の一例)がそれぞれ接続されている。
【0014】
開度計11は、フレキシブルシャフト4bの回転に基づいて弁本体1の開度を表示するもので、正確性は劣るが主要操作源が失われるような過酷事故の際には、弁本体1に併設された本来の開度計(図示せず)が作動しない、あるいは作動してもそれを見ることができる位置に人が立ち入れないことが想定されるため設けてある。そのため、開度計11は、予備トルク入力手段の近傍に設けるようにする。
【0015】
直流インパクトドライバ15は、蓄電池を備え直流電流により作動する工具で、通常はボルトを締めるために用いられる。
【0016】
予備操作源としては直流電源以外のものを用いることもできる。例えば、人力で回転させるハンドルやクランクを貫通シャフト12に接続することもできる。また、ボンベに蓄えられた圧縮空気や圧縮窒素などの気体圧で作動するエアモーターを貫通シャフト12に接続してもよい。圧縮窒素は、不活性ガスの使用が望まれる場合に好適である。
【0017】
アクチュエータ2と原子炉建屋壁14との中間に減速機架台6を設けることができない場合は、
図2に示すように減速機5をアクチュエータ2とフレキシブルシャフト4cとの接続部に設けるようにしてもよい。弁本体1の上部とアクチュエータ2の下部との間に挟み込むように板状の減速機ベース6aを設け、その上に高さ調整のためのスペーサプレート6bを介して減速機5を固定する。このようにすることによって、弁本体1、アクチュエータ2、カップリング3および減速機5は地震時に同調して振動するようになり、カップリング3に作用する地震力が減少する。
図2に示す構成は、減速機5の位置とその固定方法、およびフレキシブルシャフトが1本となること以外は、
図1に示したものと同様であるので
図1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0018】
また、
図1または
図2の構成でバルブ本体1と直流インパクトドライバ15との間に壁がない場合には、フレキシブルシャフト4bまたはフレキシブルシャフト4cと開度計11とを直接接続すればよい。
【0019】
図4と
図5は、アクチュエータ2内部のオートデクラッチ機構を説明する図である。ウォームシャフト43には、ウォームシャフトクラッチギア41、トリッパピン44、ウォームシャフトクラッチ45、フォークリターンスプリング46、クラッチピニオン42、ウォーム48が取り付けられている。フレキシブルシャフト4a、4b(
図2の構成では4c)を介して直流インパクトドライバ15からトルクを入力されるシャフト50には、ギア47が取り付けられている。
【0020】
ウォームシャフトクラッチギア41とクラッチピニオン42はウォームシャフト43に対して空転する構造となっている。一方、ウォームシャフトクラッチ45は、ウォームシャフト43とスプラインで嵌合しているため一体になって回転する。そのため、ウォームシャフトクラッチギア41、クラッチピニオン42はウォームシャフトクラッチ45とかみ合うことによりウォームシャフト43と一体となって回転する。また、クラッチフォーク31が2本のフリッパ32、33でウォームシャフト43をトリッパピン44が取り付けられている位置で保持・開放するように取り付けられている。
【0021】
オートデクラッチ機構は、弁本体1がモーター60により開閉される通常時は次のように動作する。ウォームシャフトクラッチ45とウォームシャフトクラッチギア41とがかみ合っている。モーター60からの回転は、モータピニオン61、ウォームシャフトクラッチギア41を介して、ウォームシャフトクラッチ45、ウォームシャフト43に伝達される。ウォームシャフト43の回転は、ウォーム48、これとかみ合うウォームギア(図示せず)を介してドライブスリーブ51に伝達される。
【0022】
オートデクラッチ機構は、主要操作源である交流電源が失われモーター60が作動しなくなった際には、次のように動作する。直流インパクトドライバ15の回転は、貫通シャフト12、フレキシブルシャフト4b、減速機5、フレキシブルシャフト4a(
図2の構成では貫通シャフト12、フレキシブルシャフト4c、減速機5)を介してシャフト50に伝達され、ギア47が回転する。ギア47に設けられたローラー49がデクラッチフォーク31のフリッパ34を押す。フリッパ34が押されることによりデクラッチフォーク31が動作し、ウォームシャフトクラッチ45を
図4の矢印B方向に移動させる。ウォームシャフトクラッチ45のウォームシャフトクラッチギア41とのかみ合いがはずれ、クラッチピニオン42とかみ合う。ウォームシャフトクラッチ45、デクラッチフォーク31は、トリッパ32、33によりこの状態を保持する(
図5(b))。シャフト50の回転は、ギア47、クラッチピニオン42を介してウォームシャフトクラッチ45、ウォームシャフト43に伝達される。ウォームシャフト43の回転は通常時と同様にドライブスリーブ51に伝達される。
【0023】
オートデクラッチ機構は、交流電源が回復し、モーター60による操作へ復帰する際は次のように動作する。モーター60が起動すると、モータピニオン61の回転はウォームシャフトクラッチギア41に伝達される。ウォームシャフトクラッチギア41が回転すると、トリッパピン44がトリッパ32、33の間隔を広げデクラッチフォーク31の保持を解除する(
図5(a))。デクラッチフォーク31の保持が解除されるとウォームシャフトクラッチ45はフォークリターンスプリング46の作用により
図4の矢印Aの方向に移動する。ウォームシャフトクラッチ45のクラッチピニオン42とのかみ合いが外れ、ウォームシャフトクラッチギア41とかみ合い、上述の通常時と同様にウォームシャフト43の回転はドライブスリーブ50に伝達される。
【0024】
このようなオートデクラッチ機構の動作により、交流電源が失われてモーター60が作動しなくなった際に、直流インパクトドライバ15を作動させるだけで、切替レバー等を操作することなくトルクの入力手段を切り替えることができる。そのため、操作員は、弁本体1から遠隔の原子炉建屋外から安全に弁本体1の開閉を行うことができる。
【0025】
図6は、フレキシブルシャフト4a、4b、4c(以下、これらの総称としてフレキシブルシャフト4という)の構造を説明する模式図である。フレキシブルシャフト4は、大別してシャフト本体70と保護管80とから成っている。シャフト本体70は、トルクを伝達する部材で、中心の芯材71のまわりに細径のピアノ線72a、72b、72c、72dが複数層に互いに反対方向に螺旋状に巻き付けてある。保護管80は、シャフト本体70に生じるねじれやうねりによる伝達トルクの低下や破断トルクの低下を防止するための管状の部材で、中心側から平板鋼材を螺旋状に巻き付けたライナー81、螺旋管82、鋼線を網状に織った鋼線ブレード83、ニトリルゴム等の合成ゴムまたは合成樹脂からなる外側管84の4層構造となっている。
【0026】
このような構成により、フレキシブルシャフト4は、所定の曲げ半径以上であれば自由に曲げて配置することができ、かつ、高効率でトルクを伝達することができる。