【実施例1】
【0018】
図1ないし
図6は本発明の実施例1に係るサスペンションメンバの排水構造を説明するための図であり、図中、前,後,左,右とは、車両前方に見た状態での前,後,左,右を意味している。
【0019】
図において、12は車体骨格部材を構成する左,右のサイドメンバであり、該サイドメンバ12は車両前後方向に延びる本体部12aと、該本体部12aから車幅方向外側に拡開しつつ斜め上方に延び、そこから水平に前方に延びる前部12bとを有する。
【0020】
前記サイドメンバ12の本体部12aの前端部から前記前部12bの下面に渡るようにサスペンションメンバ1が配置されており、該サスペンションメンバ1は、前,後ボルト12c,12dによりサイドメンバ12に固定されている。このサスペンションメンバ1は、車両前後方向視で、車幅方向中央に位置する中央部1aと、車幅方向左,右側部に、かつ前記中央部1aより低所に段違い状を成すように配置された左,右のサイド部(側部)1b,1bと、該左,右のサイド部1b,1bと前記中央部1aとを接続するように配設された左,右の立ち上がり部1c,1cとを有する。
【0021】
また前記サスペンションメンバ1の前部には、エンジンユニット等の配置スペースを確保するための凹部1eが車両後方に凹むように形成されている。
【0022】
前記左,右のサイド部1b,1bは、車両前方ほど低くなる傾斜をなしており(
図4参照)、かつ後述するロアアーム4を差し込むための開口部1dを有する。また前記左,右の立ち上がり部1c,1cは車幅方向中央側ほど高くなる傾斜をなしている(
図3参照)。
【0023】
前記サスペンションメンバ1は、板金製で、横断面略ハット形状のアッパメンバ2と、同じく板金製で横断面略ハット形状のロアメンバ3とを中空状をなすように、かつ前記開口部1dが形成されるように結合したものである。
【0024】
前記アッパメンバ2は、前記中央部1a,左,右のサイド部1b及び左,右の立ち上がり部1cの上側部分を構成する中央上壁部2a,サイド上壁部2b及び立ち上がり上壁部2cと、前,後壁部2b′と、前,後フランジ部2dとを有し、前記横断面略ハット形状をなしている。
【0025】
また、前記ロアメンバ3は、前記中央部1a,左,右のサイド部1b及び左,右の立ち上がり部1cの下側部分を構成する中央下壁部3a,サイド下壁部3b及び立ち上がり下壁部3cと、前,後壁部3c′と、前,後フランジ部3dとを有し、前記横断面略ハット形状をなしている。前記ロアメンバ3の前,後のフランジ部3d,3dと前記アッパメンバ2の前,後のフランジ部2d,2dとがスポット溶接により結合されている。
【0026】
前記アッパメンバ2の左,右のサイド上壁部2b,2bには、凹状ビード2eが前記開口部1d内側に突出するように形成されている。この凹状ビード2eは、サイド上壁部2bの前後方向略全長に渡るように、かつ横断面で見たとき路面Gと平行になるように形成されている。上述のようにサイド上壁部2bは前下がりに傾斜しているので、前記凹状ビード2eは後部から前部に行くほど浅くなっている。そして前記凹状ビード2eには、ロアアーム4の前ブッシュ4a,後ブッシュ4bを取り付けるための前,後取付け孔2f,2gが上下に貫通するように形成れており、該取付け孔2f,2gの上面にはナット部材5aが固定されている。
【0027】
前記ロアメンバ3の左,右のサイド下壁部3b,3bには、凹状ビード3eが前記開口部1d内側に突出するように形成されている。この凹状ビード3eは、サイド下壁部3bの前後方向略全長に渡るように、かつ横断面で見たとき路面Gと平行になるように形成されている。上述のようにサイド下壁部3bは前下がりに傾斜しているので、前記凹状ビード3eは後部から前部にいくほど深くなっている。そして前記凹状ビード3eには、前記ロアアーム4の前ブッシュ4a,後ブッシュ4bを取り付けるための前,後取付け孔3f,3gが上下に貫通するように形成れている。
【0028】
前記凹状ビーム2e,3eの、前記前取付け孔2f,3fが形成された部分が前記前ブッシュ4aの取付け部4a′となっており、また前記後取付け孔2g,3gが形成された部分が前記後ブッシュ4bの取付け部4b′となっている。
そして前記ロアメンバ3の前記左,右のサイド下壁部3bの前記前下がり傾斜の下端部、即ち前端部で、かつ前記立ち上がり下壁部3cの下端近傍には、ドレン孔3hが下方に貫通するように形成されている。このドレン孔3hは、前記開口部1dから内部に進入した雨水等を排水するためのものである。
【0029】
前記ロアアーム4は、二股状をなすアーム本体4eと、該アーム本体4eの基端部にその軸線を上下方向に向けて固定された前記前ブッシュ4a,後ブッシュ4bとを有する。前記前ブッシュ4a,後ブッシュ4bは、内筒4cと外筒4dとの間にゴム部材4fを焼付け固定したものである。
【0030】
前記ロアアーム4は、前ブッシュ4aを、これの軸線を上下に向けて前記取付け孔2f,3fに一致させ、かつ後述するバルク部材6の上,下横辺部6a,6b間に配置し、また後ブッシュ4bをこれの軸線を上下に向けて前記取付け孔2g,3gに一致させ、この状態で前記内筒4cに下方からボルト5を挿入し、前記ナット部材5aに締め付けることでサスペンションメンバ1に支持されている。
【0031】
ここで前記前側のボルト5の頭部5bは、前記ロアメンバ3の凹状ビード3e内に位置しているため、路面側の障害物が当たり難く、傷害物からの衝撃によりボルト5の頭部5bが損傷したり、ボルト5が緩んだりするのを防止できる。
【0032】
前記サスペンションメンバ1の左,右側部内には板金製のバルク部材6が配設されている。このバルク部材6は、上横辺部6aと、下横辺部6bと、縦辺部6cとを有する横断面凹形状のものであり、サスペンションメンバ1の前後方向長さと略同じ長さを有し、該サスペンションメンバ1の前記サイド部1bから立ち上がり部1cに渡るように少し斜めに配置されている。
【0033】
前記バルク部材6の前端部に形成された前フランジ部6dは、前記サイド上壁部2bの前壁部2b′及びサイド下壁部3bの前壁部3b′に溶接固定され、後端部に形成された後フランジ6eは前記立ち上がり下壁部3cの後壁部3c′及び立ち上がり上壁部2cの後壁部2c′に溶接固定され、また、前記下横辺部6bの後部6b′は前記立ち上がり下壁部3cに、上横辺部6aの後部6a′は立ち上がり上壁部2cにそれぞれ溶接固定されている。さらに後述するように、バルク部材6の上横辺部6a,下横辺部6bの前部6hは、前記凹状ビード2e,3eの内面に溶接固定されている。
【0034】
このようにして前記バルク部材6は、サスペンションメンバ1の、前記サイド上壁部2b,サイド下壁部3b、立ち上がり上壁部2c,立ち上がり下壁部3c、前,後壁部2b′,3c′を橋渡ししており、かつ前記開口部1dを略塞いでいる。
【0035】
また前記バルク部材6の上横辺部6a,下横辺部6bの長手方向前部6hには、前記前ブッシュ4aを取り付けるための取付け孔6f,6gが上下に貫通するように形成されている。前記前部6hは、前記サイド上壁部2bの凹状ビーム2e,サイド下壁部3bの凹状ビーム3eの前記前ブッシュ4aの取付け部4a′内に、前記取付け孔6f,6gが取付け孔2f,3fと一致するように挿入配置され、前記上,下横辺部6a,6bが前記上,下の凹状ビード2e,3eの内面に固定されている。前記取付け孔2g,6g,6f,2f内を前記ボルト5が挿通している。
【0036】
また、前記サスペンションメンバ1の、前記左,右の前ブッシュ4aの取付け部4a′近傍には、左,右の取付け脚部9が上方に突出するように形成されている。該取付け脚部9は、車幅方向内側に位置する本体部10と、車幅方向外側に位置する補強部11とを溶接結合した筒状体である。該取付け脚部9の上端部にはカラー13aが介在され、前記サイドメンバ12の前部12bにボルト12cにより締め付け固定されている。
【0037】
また前記サイド上壁部2b,サイド下壁部3bの後端コーナ部間にはカラー13bが介在されており、該カラー13b内を、サスペンションメンバ1の後端部を前記サイドメンバ12の本体部12aに固定するボルト12dが挿通している。
【0038】
前記補強部11は車幅方向外側に突出する突出部11bを有し、該補強部11の下端部は、前記サイド上壁部2bの前記バルク部材6の上横辺部6aが固定された部分の上面に溶接固定されており、前記突出部11bは前記凹状ビード2eの上面に固定されている。
【0039】
また前記本体部10の下端部は、前記サイド上壁部2b,サイド下壁部3bを下方に貫通して該サイド上壁部2b及びサイド下壁部3bに溶接固定され、さらに前記バルク部材6の縦壁部6cに溶接固定されている。
【0040】
本実施例1によれば、前記ロアメンバ3の左,右のサイド下壁部3bを車両前方に傾斜させ、該傾斜の前端部にドレン孔3hを設けたので、前記開口部1dから進入した雨水等を前記傾斜によって前記ドレン孔3hに積極的に導くことができる。そのため、両側部に開口部1dを有する構造簡易,低コストのサスペンションメンバ1でありながら、雨水等を確実に排水でき、該サスペンションメンバ1の腐蝕を防止できる。
【0041】
また、ロアメンバ3を、中央下壁部3aと、これより低所に位置し、立ち上がり下壁部3cを挟んで段違い状に形成されたサイド下壁部3bとを備えたものとし、かつ前記ドレン孔3hを、前記傾斜の前端部で、かつ前記立ち上がり下壁部3cの下端近傍に位置させたので、該立ち上がり下壁部3cにより、前記開口部1dから進入した雨水等が前記中央部1a側に流れるのを抑制でき、かつ前記ドレン孔3hに積極的に導くことができ、その結果確実に排水して該サスペンションメンバ1の腐蝕を防止できる。
【0042】
また前記開口部1dの近傍に、バルク部材6を該開口部1dを塞ぐように配置したので、該バルク部材6によっても前記開口部1dから進入した雨水等が中央部1a側に流れるのを防止できる。なお、バルク部材6の下面は、内方に突出する前記凹状ビード3e上に載置されているので、該下面とサイド下壁部3bとの間には隙間が形成されており、前記開口部1d内に進入した雨水等は該隙間を通ってドレン孔3hに支障なく導かれる。
【0043】
さらにまたサスペンションメンバ1の開口部1dの近傍内にバルク部材6を配設し、前記バルク部材6の前フランジ部6dをサイド上壁部2bの前壁部2b′,サイド下壁部3bの前壁部3b′に溶接固定し、後フランジ6eを立ち上がり下壁部3cの後壁部3c′,立ち上がり上壁部2cの後壁部2c′に溶接固定し、また下横辺部6bの後部6b′を立ち上がり下壁部3cに、上横辺部6aの後部6a′を立ち上がり上壁部2cにそれぞれ溶接固定し、さらに上横辺部6a,下横辺部6bの前部6hを前記凹状ビード2e,3eの内面に溶接固定したので、サスペンションメンバ1の、サイド上壁部2b,サイド下壁部3b、立ち上がり上壁部2c,立ち上がり下壁部3c、前壁部2b′,3b′及び後壁部2c′,3c′を橋渡しでき、前記開口部1d周辺の剛性を高めることができる。
【0044】
また、前記バルク部材6の下横辺部6bの後部6b′を立ち上がり下壁部3cに、上横辺部6aの後部6a′を立ち上がり上壁部2cにそれぞれ溶接固定したので、剛性断点となり易い立ち上がり部を効果的に補強できる。
【0045】
その結果サスペンションメンバ1の変形を防止でき、操縦安定性の向上やロードノイズの低減に効果がある。
【0046】
なお、前記実施例では、ロアアーム4が、前,後ブッシュ4a,4bの両方とも軸線を上下方向に向けるタイプである場合を説明したが、本発明は、前ブッシュのみ軸線を上下方向に向け、後ブッシュについては軸線を車両前後方向に向けるタイプ、あるいはその逆のタイプのロアアームの場合にも適用可能である。
【0047】
また前記実施例では、サイド上壁部2b及びサイド下壁部3bを前下がりに形成した場合を説明したが、本発明では、後下がりに傾斜させても良く、またサイド下壁部3bのみを前下り又は後下がりに傾斜させても良い。
【0048】
また前記実施例では、アッパメンバ2,及びロアメンバ3の両方とも立ち上がり部を有する場合を説明したが、本発明では、ロアメンバ3のみが立ち上がり部を備えていても良い。