【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、所望の形質に連鎖している新しい多型領域を同定した。
【0007】
一態様において、本発明は、所望の形質をもつ動物を選択する方法を提供し、この方法は以下のステップを含む:
i) 動物のM-RIP、NT5Mおよび/またはTCAP遺伝子を、所望の形質に関連した1つ以上の多型について解析するステップ;ならびに
ii) 所望の形質に関連した1つ以上の多型をもつ動物を選択するステップ。
【0008】
好ましい実施形態では、1つ以上の多型、より好ましくは多型の組合せが、所望の形質に関連したハプロタイプの特徴を示している。
【0009】
さらなる実施形態において、ステップi)は、動物のSREBP1および/またはGH遺伝子、好ましくは少なくともSREBP1遺伝子を、所望の形質に関連した1つ以上の多型について解析することをさらに含む。
【0010】
好ましい実施形態では、M-RIP遺伝子が以下のステップにより解析される:
a) 該遺伝子の領域を、配列5'-AGG GGT GCT GAG TCT ACA GG-3' (配列番号1)を含むオリゴヌクレオチドプライマーおよび配列5'-CTC CAG GAG GCA GGA GAA G-3' (配列番号2)を含むオリゴヌクレオチドプライマー、または同じゲノム領域を増幅するために使用できる一方もしくは両方のプライマーの変異型を用いて、増幅するステップ;ならびに
b) その増幅産物を1つ以上の多型について解析するステップ。
【0011】
一実施形態では、M-RIP遺伝子が、本明細書中で定義する10、30、40または60と指定された対立遺伝子について解析される。
【0012】
別の好ましい実施形態では、NT5M遺伝子が以下のステップにより解析される:
a) 該遺伝子の領域を、配列5'-GGA AGG CCA GTT ACA TGG CA-3' (配列番号3)を含むオリゴヌクレオチドプライマーおよび配列5'-CAC AAC CAA GGC CAA AAT CGC A-3' (配列番号4)を含むオリゴヌクレオチドプライマー、または同じゲノム領域を増幅するために使用できる一方もしくは両方のプライマーの変異型を用いて、増幅するステップ;ならびに
b) その増幅産物を1つ以上の多型について解析するステップ。
【0013】
一実施形態では、NT5M遺伝子が、本明細書中で定義する10、20または22と指定された対立遺伝子について解析される。
【0014】
さらなる好ましい実施形態では、TCAP遺伝子が以下のステップにより解析される:
a) 該遺伝子の領域を、配列5'-AGT ACC AGC TGC CCT ACC A-3' (配列番号5)を含むオリゴヌクレオチドプライマーおよび配列5'-CTG AGA CAT GGA GCG AGC CA-3' (配列番号6)を含むオリゴヌクレオチドプライマー、または同じゲノム領域を増幅するために使用できる一方もしくは両方のプライマーの変異型を用いて、増幅するステップ;ならびに
b) その増幅産物を1つ以上の多型について解析するステップ。
【0015】
一実施形態では、TCAP遺伝子が、本明細書中で定義する10または20と指定された対立遺伝子について解析される。
【0016】
別の好ましい実施形態では、SREBP1遺伝子が以下のステップにより解析される:
a) 該遺伝子の領域を、配列5'-CCA CAA CGC CAT CGA GAA ACG CTA C-3' (配列番号7)を含むオリゴヌクレオチドプライマーおよび配列5'-GGC CTT CCC TGA CCA CCC AAC TTA G-3' (配列番号8)を含むオリゴヌクレオチドプライマー、または同じゲノム領域を増幅するために使用できる一方もしくは両方のプライマーの変異型を用いて、増幅するステップ;ならびに
b) その増幅産物を1つ以上の多型について解析するステップ。
【0017】
一実施形態では、SREBP1遺伝子が、本明細書およびUS 2008/0010696で定義するSまたはLと指定された対立遺伝子について解析される。
【0018】
さらなる好ましい実施形態では、GH遺伝子が以下のステップにより解析される:
a) 該遺伝子の領域を、
1) 配列5'-TCT ATG AGA AGC TGA AGG ACC TGG AGG AA-3' (配列番号9)を含むオリゴヌクレオチドプライマーまたは同じゲノム領域を増幅するために使用できるその変異型、および
2) 配列5'-CGG GGG GTG CCA TCT TCC AG-3' (配列番号10)を含むオリゴヌクレオチドプライマーもしくは配列5'-CGG GGG GTG CCA TCT TCC AC-3' (配列番号11)を含むオリゴヌクレオチドプライマーまたは同じゲノム領域を増幅するために使用できる一方もしくは両方のプライマーの変異型、および
3) 配列5'-ATG ACC CTC TGG TAC GTC TCC G-3' (配列番号12)を含むオリゴヌクレオチドプライマーもしくは配列5'-CAT GAC CCT CTG GTA CGT CTC CA-3' (配列番号13)を含むオリゴヌクレオチドプライマーまたは同じゲノム領域を増幅するために使用できる一方もしくは両方のプライマーの変異型
を用いて増幅するステップ;ならびに
b) その増幅産物を1つ以上の多型について解析するステップ。
【0019】
一実施形態では、GH遺伝子が、本明細書および米国特許第7,157,231号で定義するA、B、CまたはDと指定された対立遺伝子について解析される。
【0020】
一実施形態では、少なくともM-RIP遺伝子が解析され、さらに好ましくは少なくともM-RIPおよびNT5M遺伝子、少なくともM-RIPおよびTCAP遺伝子、少なくともM-RIP、NT5MおよびTCAP遺伝子、少なくともSREBP1、M-RIP、NT5MおよびTCAP遺伝子、少なくともM-RIP、NT5M、TCAPおよびGH遺伝子、または少なくともSREBP1、M-RIP、NT5M、TCAPおよびGH遺伝子が解析される。別の実施形態では、少なくともTCAPおよびGH遺伝子、または少なくともSREBP1およびNT5M遺伝子が解析される。
【0021】
一実施形態において、前記形質は筋組織中の一価不飽和脂肪のレベル、筋組織中の異なる一価不飽和脂肪のタイプおよび/または割合、脂肪交雑、枝肉重量、肉品質、仕上げ期の速度、フィードロット効率および/または消費者の好みである。一実施形態では、肉品質の形質がロース芯面積(eye muscle area)および/または柔らかさである。
【0022】
好ましくは、動物は家畜動物である。より好ましくは、家畜動物はヒツジ、ウシ、ブタ、ヤギまたはウマである。さらに好ましくは、家畜動物はウシである。
【0023】
一実施形態において、ウシは和牛(Wagyu)であり、肉品質の形質はロース芯面積(EMA)であり、そしてハプロタイプ(NT5M-MRIP-TCAP-GH) 22-40-20 B/C、10-30-20 Aおよび10-40-20-B/C、より好ましくは22-40-20 B/Cが、他のNT5M-MRIP-TCAP-GHハプロタイプに比べて、より高いEMAと正の関連を示す。さらに、ハプロタイプ20-30-20-A、20-40-20-Aおよび22 40-10-B/C、より好ましくは20-30-20-Aおよび20-40-20-Aは、他のNT5M-MRIP-TCAP-GHハプロタイプに比べて、より高いEMAと負の関連を示す。
【0024】
さらなる実施形態において、ウシは和牛であり、形質は枝肉重量であり、そしてハプロタイプ(TCAP-GH) 20-C、10-Cおよび10-B、より好ましくは20-Cが、他のTCAP-GHハプロタイプに比べて、より高い枝肉重量と正の関連を示す。
【0025】
さらに別の実施形態において、ウシは和牛であり、形質は脂肪交雑であり、そしてハプロタイプ(MRIP-TCAP-GH) 30-10-Bおよび40-20-Aが、他のMRIP-TCAP-GHハプロタイプに比べて、より高い脂肪交雑と正の関連を示す。さらに、ハプロタイプ40-10-B、40-10-Aおよび30-10-Cは、他のMRIP-TCAP-GHハプロタイプに比べて、より高い脂肪交雑と負の関連を示す。
【0026】
一実施形態において、表2の40.1および30.1ハプロタイプは、ウシ、好ましくは和牛、シンメンタール(Simmental)牛および/またはアンガス(Angus)牛における所望の形質と関連がある。
【0027】
一実施形態において、ステップi)は、動物から得られたDNAを含むサンプルに対して実施される。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、所望の形質をもつ動物の育種方法を提供し、この方法は、本発明の方法を用いて第1の動物を選択し、その第1の動物を、同じ種であるが異性の第2の動物と交配させることを含む。
【0029】
一実施形態では、第2の動物もまた、本発明の方法を用いて選択される。
【0030】
上記態様の一実施形態において、サンプルは卵、精液または胚である。この実施形態に関連して、胚の選択は、稀な遺伝子型の拡大を加速させる(accelerate the expansion or rare genotypes)ために用いることができる。回収された胚は保存可能であり、好適な胚はウシなどの第三者のレシピエント動物に導入される。胚はまた、所望の遺伝子型をもつ動物の生産をスピードアップするために分割することも可能である。
【0031】
さらなる実施形態において、前記方法は、交配種の子孫を、本発明の方法を用いて所望の形質について選択することを含む。
【0032】
別の態様において、本発明は、動物のジェノタイピング方法を提供し、この方法は、動物のM-RIP、NT5Mおよび/またはTCAP遺伝子を1つ以上の多型について解析することを含む。
【0033】
本発明のこの態様は、親子鑑定、排除試験および品種構成検査など、さまざまな目的に使用することができる。
【0034】
親子鑑定のための上記態様の使用に関して、好ましくは、この方法は以下のステップを含む:
i) 動物のM-RIP、NT5Mおよび/またはTCAP遺伝子を1つ以上の多型について解析することによって動物をジェノタイピングするステップ;
ii) M-RIP、NT5Mおよび/またはTCAP遺伝子を1つ以上の多型について解析することによって該動物の候補父および/または母の遺伝子型を判定するステップ;ならびに
iii) ステップi)およびii)からの遺伝子型を比較して、候補父および/または母が該動物の親である確率を求めるステップ。
【0035】
当業者には理解されるように、ステップi)およびii)は任意の順序で行うことができる。
【0036】
一実施形態において、前記方法は、動物のSREBP1および/またはGH遺伝子を1つ以上の多型について解析することをさらに含む。
【0037】
好ましくは、1つ以上の多型、より好ましくは多型の組合せ、があるハプロタイプの特徴を示している。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、動物のM-RIP、NT5Mおよび/またはTCAP遺伝子の多型領域を増幅するのに使用するためのオリゴヌクレオチドプライマーを提供する。
【0039】
一実施形態では、前記プライマーは以下のオリゴヌクレオチドから選択される:
a) 5'-AGG GGT GCT GAG TCT ACA GG-3' (配列番号1)、
5'-CTC CAG GAG GCA GGA GAA G-3' (配列番号2)、
5'-GGA AGG CCA GTT ACA TGG CA-3' (配列番号3)、
5'-CAC AAC CAA GGC CAA AAT CGC A-3' (配列番号4)、
5'-AGT ACC AGC TGC CCT ACC A-3' (配列番号5)、および
5'-CTG AGA CAT GGA GCG AGC CA-3' (配列番号6)
から選択される配列を含むオリゴヌクレオチド;
b) a)で示した任意のオリゴヌクレオチドの逆相補体である配列を含むオリゴヌクレオチド;および
c) a)またはb)のオリゴヌクレオチドのいずれか1つと同じ動物ゲノム領域を増幅するために使用できるa)またはb)の変異型。
【0040】
本発明のオリゴヌクレオチドおよび許容される担体を含む組成物も提供される。
【0041】
さらなる態様において、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。
【0042】
明らかなように、本発明の一態様の好ましい特性および特徴は、本発明の他の多くの態様に適用可能である。
【0043】
本明細書全体を通して、用語「含む」、または「含み」もしくは「含んでいる」などの変形は、記載した要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップのグループの包含を意味するが、その他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップのグループの除外を意味しない、ことが理解されるだろう。
【0044】
以後、本発明は、以下の非限定的実施例によって、添付の図面を参照しながら説明される。