(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976557
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】モールド金型、該モールド金型を用いた樹脂封止型半導体装置の製造方法、および樹脂封止型半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
H01L21/56 T
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-9364(P2013-9364)
(22)【出願日】2013年1月22日
(65)【公開番号】特開2014-143240(P2014-143240A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591132955
【氏名又は名称】株式会社秋田新電元
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】三浦 武
【審査官】
多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭59−052539(JP,B2)
【文献】
特開昭58−007322(JP,A)
【文献】
特開2004−193379(JP,A)
【文献】
特開2005−191367(JP,A)
【文献】
特開昭53−097370(JP,A)
【文献】
特開昭54−060565(JP,A)
【文献】
特開平10−151633(JP,A)
【文献】
特開昭58−122741(JP,A)
【文献】
特開2004−096094(JP,A)
【文献】
国際公開第01/020644(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/56、23/28−23/31
B29C33/00−33/76、39/00−39/44
41/38−41/44、43/00−43/58
45/00−45/84、49/48−49/56、49/70
51/30−51/40、51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッドと前記ダイパッドから延在するリードとを有し且つ前記ダイパッドの搭載面に半導体チップが搭載されたリードフレームを、クランプし、前記ダイパッドの放熱面が露出するように前記ダイパッド及び前記半導体チップを樹脂封止する一対のモールド金型であって、
前記リードフレームがクランプされたクランプ状態において、前記ダイパッドの放熱面に当接する当接面を有する一方のモールド金型と、
前記クランプ状態において、前記半導体チップを収容するキャビティ部が設けられた他方のモールド金型と、
を備え、
周辺部から中央部に行くにつれて深くなるように傾斜した底面を有する凹部が、前記クランプ状態において前記ダイパッドの端部から所定の距離を隔てるように、前記一方のモールド金型の前記当接面に設けられており、
前記凹部は、前記当接面の一部であり前記当接面と面一の押圧面を挟んで、複数設けられ、前記クランプ状態において前記押圧面が前記ダイパッドの前記放熱面の中央領域を押圧することを特徴とするモールド金型。
【請求項2】
前記凹部は、前記一方のモールド金型の前記当接面と接続し、かつ前記当接面と直交する内壁面を有することを特徴とする請求項1に記載のモールド金型。
【請求項3】
前記凹部の前記内壁面の高さは、前記ダイパッドおよび前記半導体チップを樹脂封止した後に行われる樹脂バリ除去工程において除去可能な樹脂バリの厚さの最大値より小さいことを特徴とする請求項2に記載のモールド金型。
【請求項4】
前記凹部の底面は、円錐の側面に一致する形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のモールド金型。
【請求項5】
前記凹部の底面は、角錐の側面に一致する形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のモールド金型。
【請求項6】
前記凹部の底面には、封止用樹脂の付着を抑制するための細かい凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のモールド金型。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のモールド金型により樹脂封止型半導体装置を製造する方法であって、
前記半導体チップが前記他方のモールド金型の前記キャビティ部に収納され且つ前記一方のモールド金型の前記凹部が前記放熱面の上方に位置するように、前記一方のモールド金型と前記他方のモールド金型とで前記リードフレームをクランプする工程と、
前記キャビティ部に樹脂を注入して、前記半導体チップおよび前記ダイパッドを前記放熱面が露出するように樹脂封止する工程と、
を備えることを特徴とする樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記リードフレームを前記モールド金型から取り外し、前記放熱面に付着した樹脂バリを除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記放熱面にめっき処理を施す工程をさらに備えることを特徴とする請求項7または8に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のモールド金型を用いて樹脂封止された樹脂封止型半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド金型、より詳しくは、ダイパッドの片方の面を放熱面として露出させた樹脂封止型半導体装置の樹脂封止に用いるモールド金型、および該モールド金型を用いた樹脂封止型半導体装置の製造方法、並びに樹脂封止型半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイパッドの一方の面に半導体チップを搭載し、半導体チップの電極とリードフレームのリードとをボンディングワイヤ等で電気的に接続した後、半導体チップを樹脂封止してなる半導体装置が知られている。
【0003】
上記半導体チップがパワーMOSFET等の発熱量の多い半導体デバイスの場合には、放熱性を向上させるため、ダイパッドの他方の面を樹脂で覆わず、放熱面(ヒートシンク部)として露出させている。この放熱面は、通常、防錆等のため、めっき処理される。以下、このような放熱面を有する半導体装置を「樹脂封止型半導体装置」と呼ぶ。
【0004】
従来、例えば特許文献1には、モールド金型とダイパッドとの接触面積を減らして面圧を高めるための凹状の面圧逃げ構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−94538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ダイパッドに搭載された半導体チップを封止する樹脂封止工程においては、リードフレームは上下一対のモールド金型でクランプ(型締め)される。
【0007】
図7および
図8は、上下一対のモールド金型100、およびモールド金型100によりクランプされたリードフレーム130の断面図を示している。より詳しくは、
図7は、リードフレーム130のリード134の延在する方向に沿う断面図であり、
図8は、リード134の延在する方向と直交する方向に沿う断面図である。
【0008】
図7および
図8に示すように、モールド金型100は、上側モールド金型110と下側モールド金型120からなる。リードフレーム130のダイパッド131には半導体チップ140が搭載されている。
【0009】
リードフレーム130は、板状のダイパッド131と、折り曲げ部135を介してダイパッド131に接続されたリード134とを有する。ダイパッド131は、半導体チップ140が搭載される搭載面132と、搭載面132とは反対側の放熱面133とを有する。
【0010】
半導体チップ140は、リードフレーム130がクランプされた状態(クランプ状態)において、下側モールド金型120に設けられたキャビティ部121に収容されている。なお、半導体チップ140は、はんだ等によりダイパッド131に電気的に接続されるとともに、ボンディングワイヤ(図示せず)により、リードフレーム130のパッド部(図示せず)に電気的に接続されている。
【0011】
従来、クランプ状態において、モールド金型100とダイパッド131との間の当接部分A(
図7、
図8)に隙間が生じる場合があった。この隙間は、例えば、繰り返し使用に伴ってモールド金型100に付着する樹脂バリ(フラッシュバリ)等の異物や、リードフレーム130の折り曲げ部135の変形、あるいはダイパッド131の反り等によって発生する。このような隙間が発生した場合、キャビティ部121に注入された封止用樹脂がダイパッド131の放熱面133に漏出し、樹脂バリとなってしまう。
【0012】
そこで、従来は、
図7および
図8に示すように、上側モールド金型110の当接面111に、フラットな底面113を有する凹部112を設けることで、上側モールド金型110とダイパッド131との接触面積を減らして面圧を高め、封止用樹脂の放熱面133への漏出量を減らそうとしていた。
【0013】
しかしながら、キャビティ部121に注入された封止用樹脂が、当接部分Aのわずかな隙間を介して毛細管現象により凹部112に吸引され、放熱面133に多く漏出することが避けられなかった。
【0014】
さらに、放熱面133に漏出した樹脂が固化した樹脂バリを、樹脂バリ除去工程で除去できない場合があるという課題もあった。これについて
図9を用いて詳しく説明する。
【0015】
図9は、樹脂封止工程後の樹脂封止型半導体装置の、
図8に対応する断面図である。
図9に示すように、封止用樹脂150が半導体チップ140を封止している。また、
図9に示すように、放熱面133に漏出した樹脂が固化した樹脂バリ151が、凹部112の縁部に対応する領域(放熱面133の周縁領域)に残存してしまう。この樹脂バリ151の厚みは、凹部112の内壁面114の高さ程度(約20〜30μm)である。樹脂バリ151が厚い場合は、樹脂封止工程の後に行う樹脂バリ除去工程において完全に除去できない場合がある。この場合、放熱面133のめっき工程においてめっきの付着不良が発生し、その結果、樹脂封止型半導体装置の歩留まりが低下するおそれがある。
【0016】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、樹脂バリ除去工程で樹脂バリを十分に除去することを可能とし、放熱面のめっき工程でのめっき付着不良を低減して樹脂封止型半導体装置の歩留まりを向上させることが可能なモールド金型、該モールド金型を用いた樹脂封止型半導体装置の製造方法、および樹脂封止型半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様に係るモールド金型は、
ダイパッドと前記ダイパッドから延在するリードとを有し且つ前記ダイパッドの搭載面に半導体チップが搭載されたリードフレームを、クランプし、前記ダイパッドの放熱面が露出するように前記ダイパッド及び前記半導体チップを樹脂封止する一対のモールド金型であって、
前記リードフレームがクランプされたクランプ状態において、前記ダイパッドの放熱面に当接する当接面を有する一方のモールド金型と、
前記クランプ状態において、前記半導体チップを収容するキャビティ部が設けられた他方のモールド金型と、
を備え、
周辺部から中央部に行くにつれて深くなるように傾斜した底面を有する凹部が、前記クランプ状態において前記ダイパッドの端部から所定の距離を隔てるように、前記一方のモールド金型の前記当接面に設けられていることを特徴とする。
【0018】
また、前記モールド金型において、
前記凹部は、前記一方のモールド金型の前記当接面と接続し、かつ前記当接面と直交する内壁面を有するようにしてもよい。
【0019】
また、前記モールド金型において、
前記凹部の前記内壁面の高さは、前記ダイパッドおよび前記半導体チップを樹脂封止した後に行われる樹脂バリ除去工程において除去可能な樹脂バリの厚さの最大値より小さいようにしてもよい。
【0020】
また、前記モールド金型において、
前記凹部は、前記当接面の一部であり前記当接面と面一の押圧面を挟んで、複数設けられ、前記クランプ状態において前記押圧面が前記ダイパッドの前記放熱面の中央領域を押圧するようにしてもよい。
【0021】
また、前記モールド金型において、
前記一方のモールド金型は、上面が前記当接面と面一であり前記凹部の底面から突設された柱状の押圧部を有し、前記クランプ状態において前記押圧部の前記上面が前記ダイパッドの前記放熱面の中央領域を押圧するようにしてもよい。
【0022】
また、前記モールド金型において、
前記凹部の底面は、円錐の側面に一致する形状であるようにしてもよい。
【0023】
また、前記モールド金型において、
前記凹部の底面は、角錐の側面に一致する形状であるようにしてもよい。
【0024】
また、前記モールド金型において、
前記凹部の底面には、封止用樹脂の付着を抑制するための細かい凹凸が形成されているようにしてもよい。
【0025】
本発明の一態様に係る樹脂封止型半導体装置の製造方法は、
本発明のモールド金型により樹脂封止型半導体装置を製造する方法であって、
前記半導体チップが前記他方のモールド金型の前記キャビティ部に収納され且つ前記一方のモールド金型の前記凹部が前記放熱面の上方に位置するように、前記一方のモールド金型と前記他方のモールド金型とで前記リードフレームをクランプする工程と、
前記キャビティ部に樹脂を注入して、前記半導体チップおよび前記ダイパッドを前記放熱面が露出するように樹脂封止する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0026】
また、前記樹脂封止型半導体装置の製造方法において、
前記リードフレームを前記モールド金型から取り外し、前記放熱面に付着した樹脂バリを除去する工程をさらに備えるようにしてもよい。
【0027】
また、前記樹脂封止型半導体装置の製造方法において、
前記放熱面にめっき処理を施す工程をさらに備えるようにしてもよい。
【0028】
本発明の一態様に係る樹脂封止型半導体装置は、
本発明のモールド金型を用いて樹脂封止されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様に係るモールド金型においては、周辺部から中央部に行くにつれて深くなるように傾斜した底面を有する凹部が、クランプ状態においてダイパッドの端部から所定の距離を隔てるように、一方のモールド金型の当接面に設けられている。これにより、毛細管現象が抑制され、ダイパッドの放熱面に吸引される封止用樹脂の量を減らすことができる。
【0030】
よって、本発明によれば、樹脂バリ除去工程で樹脂バリを十分に除去することを可能とし、放熱面のめっき工程でのめっき付着不良を低減して樹脂封止型半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1の実施形態に係るモールド金型、および該モールド金型によりクランプされたリードフレームの縦断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るモールド金型、および該モールド金型によりクランプされたリードフレームの横断面図である。
【
図3】リードフレームと、第1の実施形態に係る上側モールド金型に設けられた凹部との間の、クランプ状態における位置関係を示す平面図である。
【
図4】一実施形態に係るモールド金型により樹脂封止型半導体装置を製造する方法を示すフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態に係るモールド金型、および該モールド金型によりクランプされたリードフレームの横断面図である。
【
図6】リードフレームと、第2の実施形態に係る上側モールド金型に設けられた凹部との間の、クランプ状態における位置関係を示す平面図である。
【
図7】従来のモールド金型、および該モールド金型によりクランプされたリードフレームの縦断面図である。
【
図8】従来のモールド金型、および該モールド金型によりクランプされたリードフレームの横断面図である。
【
図9】樹脂封止工程後の樹脂封止型半導体装置の、
図8に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。
【0033】
(第1の実施形態)
図1〜
図3を参照して、第1の実施形態に係るモールド金型1について説明する。
図1および
図2は、モールド金型1、およびモールド金型1によりクランプされたリードフレーム30の断面図を示している。より詳しくは、
図1は、リードフレーム30のリード34の延在する方向に沿う断面図であり、
図2は、リード34の延在する方向と直交する方向に沿う断面図である。
図3は、リードフレーム30と、上側モールド金型10に設けられた凹部12との間の、クランプ状態における位置関係を示す平面図を示している。ここで、クランプ状態とは、リードフレーム30が一対のモールド金型1によりクランプされた状態をいう。
【0034】
本実施形態に係るモールド金型1は、上側モールド金型(一方のモールド金型)10と、下側モールド金型(他方のモールド金型)20とを備える上下一対のモールド金型である。
図1および
図2に示すように、モールド金型1は、半導体チップ40が搭載されたリードフレーム30をクランプし、ダイパッド31の放熱面33が露出するように、ダイパッド31及び半導体チップ4を樹脂封止する。
【0035】
ここで、リードフレーム30の構成について詳しく説明する。
【0036】
リードフレーム30は、
図3に示すように、板状のダイパッド31と、折り曲げ部35を介してダイパッド31に接続されたリード34と、タイバー37によりリード34に結合されたリード34Aとを有する。ダイパッド31は、
図1および
図2に示すように、一方の主面としての搭載面32と、他方の主面としての放熱面33とを有する。
【0037】
リード34Aの先端には、
図3に示すように、半導体チップ40の電極と電気的に接続されるパッド部38が設けられている。タイバー37は、変形防止のため、リード34およびリード34Aを結合している。このタイバー37は、最終的にカットされ、リード34,34Aは独立したリード端子となる。
【0038】
図1および
図2に示すように、ダイパッド31の搭載面32には、半導体チップ40が搭載されている。なお、半導体チップ40は、はんだ又は導電性ペースト等によりダイパッド31に電気的に接続されるとともに、ボンディングワイヤ(図示せず)により、パッド部38に電気的に接続されている。
【0039】
なお、上記のリードフレーム30の構成は一例に過ぎず、本発明は、上記の構成に限定されるものではない。
【0040】
下側モールド金型20には、
図1および
図2に示すように、クランプ状態において半導体チップ40を収容するキャビティ部21が設けられている。樹脂封止工程では、封止用樹脂が下側モールド金型20に設けられた注入口(図示せず)を通ってキャビティ部21内に注入される。
【0041】
上側モールド金型10は、
図1および
図2に示すように、クランプ状態においてダイパッド31の放熱面33に当接する当接面11を有する。ダイパッド31は、当接部分Bで上側モールド金型10に当接している。
【0042】
この当接面11には、凹部12が、クランプ状態においてダイパッド31の端部から所定の距離を隔てるように設けられている。
図3に示すように、凹部12はダイパッド31の下端部36aから距離D1を隔てるように設けられ、凹部12はダイパッド31の側端部36bから距離D2を隔てるように設けられている。
【0043】
図1および
図2に示すように、凹部12は、クランプ状態においてダイパッド31の放熱面33の上方に位置するように、上側モールド金型10の当接面11に設けられている。
【0044】
また、凹部12は、
図1および
図2に示すように、当接面11と接続し、かつ当接面11と直交する内壁面14を有する。
【0045】
この内壁面14の高さは、樹脂バリ除去工程で除去可能な樹脂バリの厚さの最大値より小さいことが好ましい。内壁面14の高さは、好ましくは10μm以下であり、例えば3〜7μmである。これにより、樹脂バリ除去工程において、樹脂バリを確実に除去し、めっき工程におけるめっき付着不良をより一層低減することができる。
【0046】
なお、内壁面14を有しないように凹部12を設けてもよい。
【0047】
凹部12は、
図1〜
図3に示すように、四角錐の側面に一致する形状の底面13を有する。また、
図3に示すように、凹部12の開口辺15は、ダイパッド31の下端部36aまたは側端部36bに対して平行になるように配置されている。
【0048】
なお、底面13の形状は四角錐状に限るものではなく、四角錐以外の角錐の側面に一致する形状であってもよいし、あるいは、円錐の側面に一致する形状であってもよい。より一般的には、底面13は、周辺部から中央部に行くにつれて深くなるように傾斜していればよい。
【0049】
また、凹部12の内面(底面13、内壁面14)には、封止用樹脂の付着を抑制するための細かい凹凸が形成されていることが好ましい。これにより、封止用樹脂が凹部12に付着することに伴って当接部分Bに隙間が生じることを防止できる。この細かい凹凸は、例えば、梨地加工により形成されたものである。
【0050】
上記のように、本実施形態では、面圧を高めるために上側モールド金型10の当接面11に設けられた凹部12が、周辺部から中央部に行くにつれて深くなるように傾斜した底面13を有する。即ち、凹部12はテーパー状の底面13を有する。これにより、毛細管現象が抑制され、当接部分Bを介して放熱面33に吸引される封止用樹脂の量を減らすことができる。底面13の傾斜が急であるほど、放熱面33に吸引される封止用樹脂の量は減少する。
【0051】
よって、本実施形態に係るモールド金型によれば、樹脂封止工程の後に行われる樹脂バリ除去工程において樹脂バリを十分に除去することが可能となり、その後のめっき工程におけるめっき付着不良を低減することができる。その結果、樹脂封止型半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【0052】
次に、本実施形態に係るモールド金型1により樹脂封止型半導体装置を製造する方法について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0053】
まず、半導体チップ40をリードフレーム30のダイパッド31に搭載し、半導体チップ40の電極とリードフレーム30とを電気的に接続する(ステップS1)。より詳しくは、はんだ又は導電性ペースト等により、半導体チップ40の一方の面に設けられた電極とダイパッド31とを電気的に接続するとともに、ボンディングワイヤにより、半導体チップ40の他方の面に設けられた電極とパッド部38とを電気的に接続する。
【0054】
次に、
図1および
図2に示すように、半導体チップ40が下側モールド金型20のキャビティ部21に収納され且つ上側モールド金型10の凹部12が放熱面33の上方に位置するように、上側モールド金型10と下側モールド金型20とでリードフレーム30をクランプする(ステップS2)。
【0055】
次に、注入口を介してキャビティ部21に樹脂を注入して、半導体チップ40およびダイパッド31を放熱面33が露出するように樹脂封止する(ステップS3)。なお、
図2から分かるように、ダイパッド31の側面も樹脂封止される。
【0056】
次に、リードフレーム30をモールド金型1から取り外し、ダイパッド30の放熱面33に付着した樹脂バリを除去する(ステップS4)。本樹脂バリ除去工程は、例えば、ガラスビーズ等の研磨材で放熱面33を研磨することにより行う。
【0057】
樹脂バリを除去した後、ダイパッド30の放熱面33にめっき処理を施す(ステップS5)。なお、本めっき処理工程により、リードフレーム30のうち樹脂封止されていない部分(リード34、ダイパッド31の先端部分等)にも、めっき層が形成される。
【0058】
上記のステップS3の工程において、毛細管現象が抑制されるため、当接部分B(
図1、
図2)を介してキャビティ部21からダイパッド31の放熱面33に吸引される封止用樹脂の量を減らすことができる。このため、ステップS4の樹脂バリ除去工程において、樹脂バリを十分に除去することができる。その結果、ステップS5のめっき処理工程において、めっき付着不良を低減することができる。よって、本実施形態に係る樹脂封止型半導体装置の製造方法によれば、樹脂封止型半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るモールド金型1Aについて、
図5および
図6を参照して説明する。
図5は、モールド金型1A、およびモールド金型1Aによりクランプされたリードフレーム30の断面図を示している。より詳しくは、
図5は、リードフレーム30のリード34の延在する方向と直交する方向に沿う断面図である。なお、リード34の延在する方向に沿う断面図は
図1と同様であるため省略する。
図6は、リードフレーム30と、上側モールド金型10Aに設けられた凹部12との間の、クランプ状態における位置関係を示す平面図を示している。
【0060】
第2の実施形態に係るモールド金型1Aは、上側モールド金型(一方のモールド金型)10Aと、下側モールド金型(他方のモールド金型)20とを備えている。下側モールド金型20については、第1の実施形態と同様の構成であるので詳しい説明を省略する。
【0061】
上側モールド金型10Aの当接面11には、
図5および
図6に示すように、2つの凹部12が設けられている。各凹部12は、周辺部から中央部に行くにつれて深くなるように傾斜する底面13と、当接面11と接続し、かつ当接面11と直交する内壁面14とを有する。
【0062】
図5に示すように、2つの凹部12は押圧面11aを挟んで設けられている。この押圧面11aは当接面11の一部であり、押圧面11aおよび当接面11は面一である。
【0063】
なお、当接面11に設けられる凹部12の数は2つに限らず、3つ以上でもよい。また、内壁面14を有しないように凹部12を設けてもよい。
【0064】
クランプ状態において押圧面11aがダイパッド31の放熱面33の中央領域を押圧することで、モールド金型1Aによる面圧がダイパッド31の端部だけでなく中央領域にも加わる。これにより、リードフレーム30の反りを矯正し、当接部分Bに大きな隙間が発生することを防止することができる。
【0065】
なお、
図5に示すように、複数の凹部12が、押圧面11aに対して対称となるように設けられていることが好ましい。例えば、
図6に示すように、2つの凹部12は、クランプ状態においてリードフレーム30の中心線Cに対して線対称となるように設けられている。
【0066】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、凹部12の底面13を周辺部から中央部に行くにつれて深くなるように傾斜するようにしたことで、毛細管現象が抑制され、当接部分Bを介して放熱面33に吸引される封止用樹脂の量を減らすことができる。
【0067】
よって、第2の実施形態に係るモールド金型によれば、樹脂バリ除去工程で樹脂バリを十分に除去することが可能となり、その後のめっき工程におけるめっき付着不良を低減することができる。その結果、樹脂封止型半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【0068】
さらに、第2の実施形態によれば、クランプ状態において放熱面33の中央領域を押圧する押圧面11aを設けることで、リードフレーム30の反りが矯正され、モールド金型1Aとダイパッド31間に大きな隙間が発生することを防止できる。その結果、大きな隙間を介して多量の封止用樹脂が放熱面33に吸引されることを防ぐことができる。
【0069】
なお、第2の実施形態に係るモールド金型を用いた樹脂封止型半導体装置の製造方法は、第1の実施形態(
図4)で説明した工程と同様にすることができる。
【0070】
また、本実施形態では、凹部12を複数設けて、凹部12間の当接面11を押圧面11aとしたが、押圧面11aを設ける方法はこれに限らない。例えば、上側モールド金型は、上面が当接面11と面一であり凹部12の底面から突設された柱状の押圧部を有してもよい。押圧部の上面がクランプ状態においてダイパッド31の放熱面33の中央領域を押圧する。即ち、押圧部の上面が押圧面11aとして機能する。この構成の場合、凹部12の数が1つであっても、ダイパッド31の放熱面33の中央領域を押圧可能である。
【0071】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1,1A モールド金型
10,10A 上側モールド金型
11 当接面
11a 押圧面
12 凹部
13 底面
14 内壁面
15 開口辺
20 下側モールド金型
21 キャビティ部
30 リードフレーム
31 ダイパッド
32 搭載面
33 放熱面
34,34A リード
35 折り曲げ部
36a 下端部
36b 側端部
37 タイバー
38 パッド部
40 半導体チップ
100 モールド金型
110 上側モールド金型
111 当接面
112 凹部
113 底面
114 内壁面
120 下側モールド金型
121 キャビティ部
130 リードフレーム
131 ダイパッド
132 載置面
133 放熱面
134 リード
135 折り曲げ部
140 半導体チップ
150 封止用樹脂
151 樹脂バリ
A,B 当接部分
C 中心線
D1,D2 距離