(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、アウターリングピストンの外周面には、第1剤室を形成する内周面をスライド可能に押圧する環状外向き凸部が設けられている一方、アウターリングピストンの内周面には、インナーピストンをスライド可能に押圧する環状内向き凸部が前記環状外向き凸部よりも少なく設けられている、シリンジ型噴出容器。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明である、シリンジ型噴出容器およびそのカートリッジの様々な実施形態を詳細に説明する。
【0015】
図1(a)中、符号1Aは、本発明の第1実施形態である、シリンジ型噴出容器(以下、「噴出容器」)である。噴出容器1Aは、使用者によって操作される操作部50と、後述する噴出部10を備える。
【0016】
操作部50は、シリンジ51を有する。シリンジ51は、中空の胴部51aの一端に環状の肩部51bが形成されている。シリンジ51は、肩部51bを介して胴部51aよりも小径の先端筒51cが一体に設けられている。先端筒51cの内側には、胴部51aの内側に形成された空間に通じる内部通路が形成されている。また、シリンジ51には、先端筒51cを取り囲む装着筒51dが設けられている。さらに、シリンジ51には、指掛け部51eが設けられている。
【0017】
また操作部50は、押圧用シャフト52を有する。押圧用シャフト52は、シリンジ51の内側にスライド可能に収納される本体52aと、使用者からの押し込み力を受ける押圧部52bを有する。さらに、本体52aの先端には、ロッド53が設けられている。ロッド53は、先端筒51cの内側に配置される。これにより、使用者が指掛け部51eに指を掛けて押圧用シャフト52を押し込むことで、ロッド53は、先端筒51cから突出させることができる。本発明に従えば、ロッド53は、押圧用シャフト52に対して一体又は別体に設けることができる。
【0018】
操作部50は、上述のように操作器具として構成される。他方、噴出部10は、
図1(a)に示すように、噴出容器1Aの噴出ノズルとして機能するとともに、
図1(b)に示すように、操作部50から着脱可能なカートリッジCとしても機能する。
【0019】
噴出部10は、
図1(b)に示すように、外筒11を有する。外筒11は、小径部11aと大径部11bとからなる。小径部11aの前端には、噴出口1aが形成されている。噴出口1aは、オーバーキャップ31によって密封されている。オーバーキャップ31は、外筒11に設けられた突起11pによって取り外し可能に固定されている。大径部11bには、外筒11の後端部11eが設けられている。後端部11eは、噴出容器1Aの中心軸O(以下、「中心軸O」)の周りを周回する環状の突起部に形成されている。
【0020】
大径部11bは、
図1(a)に示すように、その内側に先端筒51cを収納する収納部として構成することができる。また、後端部11eは、ねじ部として機能する。後端部11eは、装着筒51dの内側に形成されたねじ部51sに取り外し可能に螺合する。これにより、噴出部10は、
図1(a)に示すように、シリンジ51に螺合させることで、操作部50に対して取り外し可能に装着させることができる。なお、外筒11とシリンジ51との接続は、凹凸によるアンダーカット嵌合などの既存の手段を選択することもできる。
【0021】
また噴出部10は、外筒11の内側に配置される内筒12を有する。内筒12の内側上端部には、スピンエレメント13が配置されている。スピンエレメント13は、円柱状の大径部13aと、この大径部13aよりも径の小さな小径部13bで形成されている。大径部13aの外周面は、外筒11の内周面を液密な状態のままスライドできる。また大径部13aの端面は、外筒11の前端内側に突き当てることができる。小径部13bは、大径部13aから内筒12の前端に向かって突出する。小径部13bの外周面は、内筒12の内周面を液密な状態のままスライドさせることができる。また大径部13aと小径部13bとの間に形成された環状の段差面は内筒12の前端に接触する。これにより、小径部13bの外周面とともに、内筒12の前端側を液密な状態に保持する。
【0022】
本実施形態では、スピンエレメント13の側面には、
図2に示すように、スピンエレメント13の中心軸(本実施形態では、中心軸Oと同軸)周りに間隔を置いて3箇所に、3つの溝が形成されている。この溝はそれぞれ、小径部13b側の端面から切り欠かれて中心軸Oに沿って伸びる第1条溝13c
1と、この第1条溝13c
1に繋がり、大径部13aと小径部13bとの間の段差面を径方向に伸びる第2条溝13c
2と、この第2条溝13c
2に繋がり、中心軸Oに沿って伸びるとともに小径部13b側の端面を切り欠く第3条溝13c
3で形成されている。また大径部13a側の端面には、各々の第3条溝13c
3に繋がる旋回溝13sが形成されている。3つの旋回溝13sはそれぞれ、第3条溝13c
3から中心軸O周りを旋回しながら中心軸Oに向かって伸びる。これにより、3つの旋回溝13sは、大径部13a側の端面で合流することにより円筒形の合流部13dを形成する。加えて、本実施形態では、大径部13a側の端面の外縁を切り欠いて、中心軸O周りを周回する環状の切り欠き13c
4が形成されている。
【0023】
すなわち、外筒11の内側に、内筒12とともにスピンエレメント13を組み込むと、外筒11と内筒12との間には、
図3(a)に示すように、3つの導入路r
1(13c
1〜13c
3)とともに、各々の導入路r
1に通じる3つの旋回流路r
2(13s)と、これらの旋回流路r
2を噴出口1aに通じさせる合流路r
3(13d)が形成される。とくに本実施形態では、導入路r
1と旋回流路r
2との接続部分はそれぞれ、環状流路r
4(13c
4)によって環状に接続されている。
【0024】
なお、導入路r
1と旋回流路r
2とは中心軸O周りにオフセットして配置させることで、環状流路r
4を導入路r
1と旋回流路r
2との間を接続する迂回流路とすることもできる。また、導入路r
1の個数は、旋回流路r
2に対応させることなく、少なくとも1つとすることができる。
【0025】
さらに、噴出部10は、
図1に示すように、内筒12の内側に配置される複合ピストンPを有する。複合ピストンPは、スピンエレメント13とともに内筒12内に第1剤(例えば液体)M
1を充填する第1剤室(例えば液室)S
1を形成する。本実施形態では、第1剤M
1は、第1剤室S
1内に空間S
oを形成するように充填されている。また複合ピストンPは、スピンエレメント13から中心軸Oに沿って内筒12の後端側に間隔を置いて配置されている。複合ピストンPは、中心軸Oの周りを周回してなる環状のアウターリングピストン14と、第2剤(例えば粉体)M
2を充填するインナーピストン15とからなる。アウターリングピストン14は、第1剤室S
1を形成する内筒12の内周面を液密な状態のままスライドさせることができる。インナーピストン15は、アウターリングピストン14を貫通する本体15aを有する。本体15aの内側には、第2剤M
2が充填される第2剤室(例えば粉室)S
2が形成されている。第2剤室S
2は、本体15aの外周面に形成された開口部Aに通じて、第2剤M
2の充填および排出を行うことができる。また、本体15aは、アウターリングピストン14の内周面を液密な状態のままスライドさせることができる。これにより、第2剤室S
2の開口部Aをアウターリングピストン14の内周面で密封することができる。
【0026】
さらに、本体15aは、
図3(b)に示すように、ロッド53の先端53eが接触する押圧面15fを有する。押圧面15fは、本体15aの後端を形成する。押圧面15fは、ロッド53の押し込み力をインナーピストン15に伝えることにより、アウターリングピストン14に対するインナーピストン15のスライドを生起させるとともに第2剤室S
2の開口部Aを第1剤室S
1内に開放させることができる。第2剤室S
2は、例えば本体15aを径方向(中心軸Oに直交する方向)に貫通する貫通孔で構成することができる。加えて、インナーピストン15は、本体15aの中心軸(本実施形態では、中心軸Oと同軸)の周りを周回してなる環状外向き突起15bを有する。環状外向き突起15bは、アウターリングピストン14の環状後端面14fに接触するストッパ面15sを有する。ストッパ面15sは、アウターリングピストン14に対するスライドを制限して、インナーピストン15が第1剤室S
1内に押し出されることを防止する。
【0027】
本発明では、アウターリングピストン14の内周面とインナーピストン15の外周面との間の摺動抵抗を、アウターリングピストン14の外周面と第1剤室S
1を形成する内筒12の内周面との間の摺動抵抗よりも小さくする。これにより、インナーピストン15を押し込んでも、インナーピストン15がアウターリングピストン14に先んじて内筒12に対してスライドする。
【0028】
摺動抵抗の差は、例えば、表面粗さを異ならせたり、内筒12、アウターリングピストン14およびインナーピストン15の材質を選択したりすることで達成できる。本実施形態では、
図3(b)に示すように、アウターリングピストン14の外周面には、アウターリングピストン14の軸(本実施形態では、中心軸Oと同軸)の周りを周回してなる3つの環状外向き凸部14aが設けられている。環状外向き凸部14aはそれぞれ、中心軸O方向に間隔を置いて配置される。環状外向き凸部14aはそれぞれ、内筒12の内周面をスライド可能に押圧する。また、アウターリングピストン14の内周面にも、中心軸Oの周りを周回してなる2つの環状内向き凸部14bが設けられている。環状内向き凸部14bはそれぞれ、中心軸O方向に間隔を置いて配置される。環状内向き凸部14bはそれぞれ、インナーピストン15をスライド可能に押圧する。このように、環状内向き凸部14bの個数を環状外向き凸部14aの個数よりも少なく設定すれば、比較的容易に摺動抵抗差を生じさせることができる。特に、
図3(b)に示すように、2つの環状内向き凸部14bで第2剤室S
1の開口部Aを密封すれば、第2剤室S
2をより確実に密封させることができる。なお、本実施形態では、環状外向き凸部14aおよび環状内向き凸部14bの個数をそれぞれ3つおよび2つとして説明したが、環状内向き凸部14bの個数が環状外向き凸部14aの個数よりも少なければ、その個数は本実施形態に限定されない。
【0029】
次に、図面を参照して、噴出容器1Aの使用方法を説明する。
【0030】
第1の使用方法としては、
図1(b)に示すカートリッジCをそのまま、第1剤M
1および第2剤M
2が個別に充填された噴出部10として、操作部50に装着して使用する方法がある。この方法では先ず、カートリッジCをそのまま大径部11bから操作部50にねじ込んで、
図1(a)に示すように装着する。これにより、噴出容器1Aを形成することができる。
【0031】
次に、押圧用シャフト52をシリンジ51に押し込めば、ロッド53がインナーピストン15を押圧することにより、インナーピストン15をアウターリングピストン14に対してスライドさせることができる。このとき、押圧用シャフト52の押し込みは、
図4(a)に示すように、アウターリングピストン14を内筒12に対してスライドさせることなく、インナーピストン14のみをスライドさせる。これにより、第2剤室S
2の開口部Aを第1剤室S
1に開放させることができる。また押圧用シャフト52の押し込みは、インナーピストン15がアウターリングピストン14に接触するまで行うことができる。これにより、噴出部10内に充填された2つの第1剤M
1および第2剤M
2を一気に噴出させることなく、噴出部10内で馴染むように混合させることができる。第1剤M
1および第2剤M
2の混合は、そのままの状態で噴出容器1Aを放置することで、又は、噴出容器1Aを振る等して動かすことで行うことができる。本実施形態では、第1剤室S
1に第1剤M
1との空間S
oが形成されていることで、噴出容器1Aを振って動かしたとき、2剤M
1,M
1を効果的に攪拌させることができる。
【0032】
噴出部10内で混合物Mが完成したのちは、オーバーキャップ31を取り外す。アウターリングピストン14とインナーピストン15は互いに接触することにより、第1剤室S
1の混合物Mを圧送する複合ピストンPとして機能する。これにより、押圧用シャフト52をさらに押し込めば、第1剤室S
1の混合物Mをスピンエレメント13に向かって押し出すことができる。スピンエレメント13に向かって押し出された混合物Mは、
図5の細線矢印で示すように、スピンエレメント13に形成された旋回流路r
2を通って回転力を得たのち、合流路r
3で攪拌される。すなわち、使用者が操作部50の押圧用シャフト52を押し込むことで、噴出部10の第1剤室S
1からは、
図5に示すように、回転力を与えられた内容液Mが噴出口1aに押し出される。これにより、噴出口1aからは、霧状(比較的大きな粒子で飛散させる状態を含む)の混合物Mが噴出される。
【0033】
このように、本発明に従う噴出容器1Aでは、1つの噴出部(シリンジ)10内の第1剤室S
1にて、第1剤M
1および第2剤M
2を混合させたのち、この混合物Mに回転力を与えつつ、噴出口1aに送り出すことにより、混合物Mを霧状に噴出させることができる。また、第1剤M
1と第2剤M
2の混合は噴出部10で行われるため、操作部50のレイアウトを変更する必要がない。
【0034】
また、本発明に従う噴出容器1Aでは、第1剤M
1および第2剤M
2を噴出部10に充填することで、混合物Mを噴出させるために操作する操作部50を別構成とすることができる。このため、操作部50を小型化させることなく、第1剤M
1および第2剤M
2が充填される噴出部10のみを小型化することができる。従って、本発明に従う噴出容器1Aは、操作性を損なうことなく、混合物Mを少量だけ噴霧させたい場合に有効である。
【0035】
また、本発明では、噴出部10のピストンを複合ピストンPで構成し、複合ピストンPのインナーピストン15に第2剤室S
2を設けたことで、操作部50とは無関係に、第1剤室S
1と第2剤室S
2を形成できる。このため、
図1(b)に示すように、噴出部10を操作部50から分離して、外筒11にオーバーキャップ31を装着することにより、噴出部10を独立したカートリッジCとして用いることができる。
【0036】
第2の使用方法としては、第1剤M
1および第2剤M
2をカートリッジC内で混合させたのち、カートリッジCを、混合物Mが充填された噴出部10として、操作部50に装着して使用する方法がある。
【0037】
この方法では、
図4(b)に示すように、2剤混合用冶具41に用いてカートリッジC内の第1剤M
1および第2剤M
2を混合させ、その後、このカートリッジCを噴出部10として操作部50に装着する。
【0038】
2剤混合用冶具41は、外筒11の後端部11eが載せ置かれるベース41aと、ベース41aから起立する押込み用シャフト41bを有する。2剤混合用冶具41を用いて混合する場合、例えば作業台(図示省略)に2剤混合用冶具41を置いておき、その上からカートリッジCを、カートリッジCがベース41aに接触するまで押し込む。すると、
図4(b)に示すように、押込み用シャフト41bが、インナーピストン15をアウターリングピストン14に対してスライドさせ、これにより、第2剤室S
2の開口部Aを第1剤室S
1に開放させることができる。第1剤M
1および第2剤M
2の混合は、そのままの状態でカートリッジCを放置することで、又は、2剤混合用冶具41とともにカートリッジCを振る等して動かすことで行うことができる。そしてその後、カートリッジCを操作部50にねじ込んで操作部50に装着すれば、
図5に示すように、そのまま混合物Mを噴出させることができる。
【0039】
ところで、複合ピストンPは、アウターリングピストン14とインナーピストン15で形成されている。加えて、本実施形態の複合ピストンPは、内筒12の内側に組み付ける必要がある。また第1剤室S
1の容量は、内筒12に対する複合ピストンPの中心軸O方向の位置で決まる。しかしながら、複合ピストンPは内筒12の内側に組付けられるため、内筒12に対して複合ピストンPを、中心軸O方向の適当な位置に組み付ける作業は煩雑である。
【0040】
図6には、内筒12に対する複合ピストンPの組み付けを考慮したインナーピストン25を示す。
図6(a)は、インナーピストン25の平面図、
図6(b)は、インナーピストン25の側面図、
図6(c)は、インナーピストン25の底面図である。さらに
図6(d)は、
図6(b)のX−X断面図である。なお、インナーピストン15と同一の部分は同一の符号をもって、その説明を省略する。
【0041】
インナーピストン25の第2剤室S
2は、例えば
図6(d)に示すように、インナーピストン15と同様、本体15aを径方向に貫通する貫通孔で構成することができる。或いは、第2剤室S
2は、
図6(e)に示すように、本体15aを貫通させることなく、一方が閉じられた凹部で構成することができる。また、本体15aの下端部には、環状外向き突起15bに代えて、2つの外向き突起15cが形成されている。外向き突起15cはそれぞれ、径方向外向きに突出するとともに、互いに中心軸Oを挟んで対向する位置に配置されている。外向き突起15cは、環状外向き突起15bと同様、インナーピストン25のアウターリングピストン14に対するスライドを制限するストッパとしての機能を有する。
【0042】
図7には、内筒12に対して
図6に示す複合ピストンPを組み付けるための組み付け工具42を示す。
図7(a)は、組み付け工具42の平面図、
図7(b)は、組み付け工具42を一部断面で示す側面図である。
【0043】
組み付け用工具42は、作業台などに載せ置くことができるベース42aと、ベース42aから起立する組み付け用シャフト42bを有する。組み付け用シャフト42bの外径寸法は、その外側に内筒12を嵌合させることができる寸法に設定されている。また組み付け用シャフト42bの内側には、インナーピストン25の本体15aを収容する内部空間42rが形成されている。さらに組み付け用シャフト42bには、内部空間42rを外界に通じさせる2つのスリット42sが形成されている。スリット42sは、インナーピストン25の本体15aを内部空間42rに収容させるとき、本体15aに設けた外向き突起15cを案内する。また組み付け用シャフト42bの先端42eは、アウターリングピストン14の環状後端面14fに接触して、アウターリングピストン14を支持する。
【0044】
複合ピストンPを組み付けるときは第一に、組み付け用工具42の組み付け用シャフト42bの先端42eにアウターリングピストン14を載せ置く。組み付け用シャフト42bの先端42eは、アウターリングピストン14の環状後端面14fとともに平坦面で形作られている。次いで、第2剤M
2を充填したインナーピストン25をアウターリングピストン14の環状前端面14e側からアウターリングピストン14の内側に挿入する。アウターリングピストン14に挿入されたインナーピストン25は、
図8(a)に示すように、押込み部材43を用いることにより、アウターリングピストン14に圧入される。この圧入は、押圧部材43の押込み面43fがインナーピストン25の上端面15eを中心軸O方向に押し込むことで行われる。本実施形態では、押圧部材43の押込み面43fは、インナーピストン25の上端面15eおよびアウターリングピストン14の環状前端面14eとともに平坦面で形作られている。インナーピストン25の圧入は、
図8(b)に示すように、押込み部材43の押込み面43fがアウターリングピストン14の環状前端面14eに接触するまで行われる。これにより、第2剤室S
2が密封された複合ピストンPを形成することができる。
【0045】
しかも、複合ピストンPを組み付けるとき、インナーピストン25の本体15aおよび外向き突起15cは、
図8(a)に示すように、組み付け用シャフト42b内に収容されるとともに、アウターリングピストン14が組み付け用シャフト42bで支持される。すなわち、組み付け工具42を用いれば、複合ピストンPの組み付けとともに、組み付けられた複合ピストンPが、インナーピストン25の突起15cを組み付け工具42に干渉させることなく、ベース42aから所定の高さで支持される。したがって、
図8(b)に示すように、内筒12を複合ピストンPとともに組み付け用シャフト42bに被せて、内筒12の端面をベース42aの上端面42fに接触させれば、複合ピストンPを内筒12に対して常に一定の位置に組み付けることができる。
【0046】
また、組み付け工具42を用いれば、
図8(b)に示す状態から内筒12の開放端(図面上側の開口端)を通して内筒12内に第1剤M
1を充填することができ、さらに、内筒12にスピンエレメント13を組み付けて、その後、外筒11を組み付けることもできる。このように、複合ピストンPのインナーピストンとしてインナーピストン25を採用し、組み付け工具42を用いれば、噴出部10(カートリッジC)を容易に組み立てることができる。
【0047】
さらに、
図9(a)は、本発明の第2実施形態である、噴出容器1Bである。噴出容器1Bでは、内筒12が省略されているとともに、外筒11は中心軸Oに沿ってストレートな形状に構成されている。さらに、噴出口1aは、外筒11の前端に対して別体に組み付けられたノズルチップ21に形成されている。ノズルチップ21の外周面は、組み付け時において、外筒11の内周面に対して液密状態のまま中心軸O方向にスライドさせることができる。またノズルチップ21は、固定部Fによって外筒11の先端部内側に固定されている。固定部Fとしては、例えば図示のような、凹凸による嵌合が挙げられる。ただし、固定部Fとしては、凹凸による嵌合に限定されることなく、ねじなど、様々な固定手段を用いることができる。
【0048】
加えて、ノズルチップ21の前端部内側には、スピンエレメント23が配置されている。スピンエレメント23は、円柱状に形成されている。スピンエレメント23の外周面は、組み付け時において、ノズルチップ21の内周面を液密な状態のまま中心軸O方向にスライドできる。特に本実施形態では、
図9(b)に示すように、スピンエレメント23の外周面に、中心軸Oの周りを周回する環状突起23pが設けられている。これにより、ノズルチップ21の内周面とスピンエレメント23の外周面との接触部分は、より液密な状態に保持される。
【0049】
またスピンエレメント23の一端面(前端面)は、ノズルチップ21の前端内側に突き当てることができる。これにより、スピンエレメント23の前端面とノズルチップ21の前端内側との接触部分は液密な状態に保持される。これに対して、スピンエレメント23の側面も、ノズルチップ21の内周面に液密な状態に保持される。これにより、スピンエレメント23の側面とノズルチップ21の内周面との接触部分は液密な状態に保持される。
【0050】
本実施形態では、スピンエレメント23の後端面には、凹部23a
1が開口している。凹部23a
1には、
図10に示すように、径方向に伸びる少なくとも1つ(本実施形態では3つ)の貫通孔23a
2が形成されている。スピンエレメント23の側面には、貫通孔23a
2の位置にそれぞれ、中心軸Oに沿って伸びるとともにスピンエレメント23の前端面までを切り欠く条溝23a
3が形成されている。スピンエレメント23の前端面には、各々の条溝23a
3に繋がる旋回溝23sが形成されている。3つの旋回溝23sはそれぞれ、条溝23a
3から中心軸O周りを旋回しながら中心軸Oに向かって伸びる。これにより、3つの旋回溝23sは、スピンエレメント23の前端面で合流することにより円筒形の合流部23bを形成する。加えて、本実施形態では、スピンエレメント23の前端面の外縁を切り欠いて、中心軸O周りを周回する環状の切り欠き23a
4が形成されている。なお、
図10中、環状突起23pは省略されている。
【0051】
すなわち、本実施形態ではノズルチップ21の内側に、スピンエレメント23を組み込むと、ノズルチップ21とスピンエレメント23との間には、
図9(b)に示すように、第1剤室S
1に通じる導入路r
1(23a
1)および導入路r
1を3つの液路に分岐させた分岐路r
2(23a
2〜23a
3)とともに、各々の分岐路r
2に通じる3つの旋回流路r
3(23s)と、これらの旋回流路r
3を噴出口1aに通じさせる合流路r
4(23b)が形成される。とくに本実施形態では、分岐路r
2と旋回流路r
3との接続部分はそれぞれ、環状流路r
5(23a
4)によって環状に接続されている。
【0052】
なお、分岐路r
2と旋回流路r
3とは軸線O周りにオフセットして配置させることで、環状流路r
5を分岐路r
2と旋回流路r
3との間を接続する迂回流路とすることもできる。また、分岐路r
2の個数は、上述のとおり、旋回流路r
3に対応させることなく、少なくとも1つとすることができる。
【0053】
本実施形態も、噴出部20をカートリッジとして取り扱うことができる。また、本実施形態も、第1の実施形態と同様の方法を用いることで、1つの噴出部20内で、第1剤M
1および第2剤M
2を噴出部20内で混合したのち、噴出口1aを通して噴霧させることができる。なお、
図9(a)では、中心軸Oを挟んで、図面右側が押圧用シャフト52を操作する前の状態を示し、図面左側が押圧用シャフト52を操作して、第2剤室S
2を第1剤室S
1に開放することで第1剤M
1および第2剤M
2を混合させている状態を示す。また、本発明では、アウターリングピストン14からのインナーピストン15の突き出しによって第1剤室S
1の内圧が上昇したときは、
図9(a)に示すように、アウターリングピストン14が内筒12に対して押圧用シャフト52側に若干スライドさせることもできる。
【0054】
さらに、本実施形態は、ノズルチップ21にスピンエレメント23を固定したのち、これらを外筒11に組み付けることができる。このため、本実施形態も第1の実施形態と同様、外筒11に複合ピストンPを組み付けたのち、外筒11のノズルチップ21の取り付け側から第1剤M
1を充填することができる。すなわち、本実施形態も、インナーピストンにインナーピストン25を採用し、組み付け工具42を外筒11に用いることができる。
【0055】
上述したところは、本発明の実施形態を例示的に示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、本発明によれば、噴出部(10,20)は、操作部(50)に対して取り外せないように構成することも可能である。また、本発明によれば、噴出部内にメッシュリングを内蔵させて、混合物Mを泡状に噴出させることもできる。各実施形態に採用された構成は適宜、互いに置き換えて利用することができる。