(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、金型装置のキャビティ空間に溶融した樹脂を充填し、固化させることによって成形品を製造する。金型装置は固定金型及び可動金型で構成され、型締め時に固定金型と可動金型との間にキャビティ空間が形成される。キャビティ空間で成形された成形品は、型開き後に可動金型から突き出される。成形品の突き出しにはエジェクタ装置が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
可動金型が取り付けられる可動金型取付部、および型締力発生機構によって発生させた型締力を可動金型取付部に伝達する複数の腕部などで可動プラテンが構成される。可動金型取付部の金型取付面と反対側の面に複数の腕部が設けられ、複数の腕部の間にエジェクタ装置が配設される。
【0004】
エジェクタ装置は、可動金型取付部の貫通孔に進退自在に挿入されるエジェクタロッドを有する。エジェクタロッドは、型閉じ工程および型締め工程では突き出し開始位置で待機し、型開き工程後に突き出し開始位置から突き出し完了位置まで前進する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。また、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方として説明する。また、可動プラテンの金型取付部の中心線に近い側を内側とし、可動プラテンの金型取付部の中心線から遠い側を外側として説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態による射出成形機の型閉じ完了時の状態を示す図である。
図2は、本発明の第1実施形態による可動プラテンの構成を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、射出成形機10は、例えば、フレーム11、固定プラテン12、可動プラテン13、ブロック14、サポートとしてのリヤプラテン15、タイバー16、ガイド17、トグル機構20、および型締めモータ26などを備える。
【0014】
固定プラテン12は、フレーム11に固定されてよい。固定プラテン12と間隔をおいてリヤプラテン15が配設される。リヤプラテン15と固定プラテン12とは、複数本(例えば4本)のタイバー16で連結されている。型締め時のタイバー16の伸びを許容するため、リヤプラテン15はフレーム11上に進退可能に載置される。
【0015】
可動プラテン13は、固定プラテン12とリヤプラテン15との間に配設される。可動プラテン13は複数(例えば2つ)のブロック14にボルトなどで固定され、複数のブロック14を前後方向に案内する複数本(例えば2本)のガイド17がフレーム11上に敷設される。ブロック14は、ガイド17との間に、転動体(例えばボール、ローラなど)を保持してよい。可動プラテン13は、複数のブロック14と共に前後方向(図において左右方向)に移動し、固定プラテン12に対して接離する。
【0016】
尚、本実施形態では、複数のブロック14を複数本のガイド17で前後方向に案内するが、可動プラテン13が固定される1つのブロックを複数本のガイドで前後方向に案内してもよい。
【0017】
可動プラテン13における固定プラテン12との対向面には、可動金型33が取り付けられる。一方、固定プラテン12における可動プラテン13との対向面には、固定金型32が取り付けられる。固定金型32と可動金型33とで金型装置30が構成される。可動プラテン13が前進すると、可動金型33と固定金型32とが接触し、型閉じが行われる。また、可動プラテン13が後退すると、可動金型33と固定金型32とが離れ、型開きが行われる。
【0018】
トグル機構20は、可動プラテン13とリヤプラテン15との間に配設される。トグル機構20は、例えば、型開閉方向と平行な方向に進退自在なクロスヘッド24、クロスヘッド24に揺動自在に取り付けられた第2トグルレバー23、リヤプラテン15に揺動自在に取り付けられた第1トグルレバー21、および可動プラテン13に揺動自在に取り付けられたトグルアーム22を有する。第1トグルレバー21と第2トグルレバー23とが、また、第1トグルレバー21とトグルアーム22とが、それぞれ、ピンで連結され、連結位置を中心に相対的に回動自在となっている。このトグル機構20は、いわゆる、内巻5節点ダブルトグル機構であって、上下対称な構成である。
【0019】
型締めモータ26は、トグル機構20を作動させるものであって、サーボモータであってよい。型締めモータ26は、回転運動を直線運動に変換する運動変換部としてのボールねじ機構27などを介して、トグル機構20を作動させる。
【0020】
尚、本実施形態のボールねじ機構27には、
図1に示すようにベルトやプーリなどを介して型締めモータ26の回転運動が伝達されるが、直接に型締めモータ26の回転運動が伝達されてもよい。
【0021】
型開き完了の状態で、型締めモータ26を駆動し、クロスヘッド24を前進させ、トグル機構20を作動させると、可動プラテン13が前進させられ、
図1に示すように可動金型33と固定金型32とが接触し、型閉じが完了する。
【0022】
続いて、型締めモータ26をさらに駆動すると、トグル機構20は、型締めモータ26による推進力にトグル倍率を乗じた型締力を発生させる。型締め状態の固定金型32と可動金型33との間にキャビティ空間が形成される。図示されない射出装置がキャビティ空間に液状の成形材料(例えば溶融樹脂)を充填し、充填された成形材料が固化されて成形品となる。
【0023】
続いて、型締めモータ26を駆動し、クロスヘッド24を後退させ、トグル機構20を作動させると、可動プラテン13が後退させられ、型開きが行われる。型開き後、エジェクタ装置が可動金型33から成形品を突き出す。
【0024】
トグル機構20、および型締めモータ26等によって、型締力を発生させる型締力発生機構29が構成される。
【0025】
次に、
図1および
図2を再度参照して、可動プラテン13の構成について説明する。
可動プラテン13は、金型取付部42、腕部43、補強部44、およびタイバー挿通部45などで構成される。金型取付部42、腕部43、補強部44、およびタイバー挿通部45は例えば鋳造などで一体に成形されてよく、ブロック14も合わせて一体に成形されてもよい。
【0026】
金型取付部42は、可動金型33が取り付けられるものであって、例えば板状であってよい。金型取付部42の前端面は、可動金型33を取り付ける金型取付面となる。金型取付部42には、エジェクタ装置のエジェクタロッドを進退自在に挿入させるロッド孔42aが複数形成される。エジェクタロッドは、型閉じ工程および型締め工程では突き出し開始位置で待機し、型開き工程後に突き出し開始位置から突き出し完了位置まで前進する。成形サイクルの短縮のため、エジェクタロッドは型開き工程中に前進してもよい。
【0027】
タイバー挿通部45は、タイバー16を挿通させる挿通孔を有する。タイバー挿通部45は、例えば金型取付部42の4隅にそれぞれ設けられる。タイバー挿通部45は、金型取付部42の金型取付面から窪む前側凹部46(
図1参照)を形成してよい。前側凹部46の底面がタイバー挿通部45の前端面で形成される。
【0028】
尚、本実施形態の可動プラテン13は、タイバー挿通部45を有するが、上側のタイバー16に対応する位置に切り欠きを有してもよい。タイバー16と可動プラテン13との干渉を避けることができればよい。
【0029】
腕部43は、型締力発生機構29から金型取付部42に型締力を伝達する。腕部43は、例えば金型取付部42の上下部にそれぞれ設けられ、トグル機構20の端部(例えばトグルアーム22の端部)を連結するピン28(
図1参照)を挿入させるピン孔43a(
図2参照)を有する。腕部43は、ピン28の中心線を中心にトグルアーム22を回転自在に支持する。
【0030】
複数の腕部43の間に、可動金型33からの成形品の突き出しに用いられるエジェクタ装置が配設される。
【0031】
複数の腕部43のそれぞれの内側側面に内側凹部48が形成される。具体的には、上側の腕部43の内側側面(下側側面)、および、下側の腕部43の内側側面(上側側面)にそれぞれ内側凹部48が形成される。内側凹部48の前側壁面は金型取付部42の後端面で形成されてよい。腕部43の内側側面に内側凹部48が形成された分、金型取付部42のロッド孔42aの設置範囲が上下に広がる。よって、大きな金型装置30が使用可能となる。
【0032】
尚、本実施形態では、複数の腕部43のそれぞれの内側側面に内側凹部48が形成されるが、少なくとも1つの腕部43の内側側面に内側凹部48が形成されていればよい。
【0033】
内側凹部48の底面48aは、型締め方向(図において左右方向)に対して斜めの部分を有する。斜めの部分は、本実施形態では平面であるが、型締め方向に対して傾いていればよく、曲面であってもよい。斜めの部分は、後方から前方に向かうほど深さが浅くなっていればよい。上側の腕部43に形成される内側凹部48の底面48aは前下がりの斜めの部分を有し、下側の腕部43に形成される内側凹部48の底面48aは前上がりの斜めの部分を有する。型締力が分散され、型締力の一部が内側凹部48の底面48aに沿って伝達される。型締力が金型取付部42の外周部に集中せず、金型取付部42の中央部に伝達しやすい。
【0034】
ところで、型閉じ完了の状態で、金型取付部42が型締力によって前方に押されたとき、金型取付部42の中央部は金型装置30で後方に押し返される。一方、金型取付部42の外周部の前方には、金型取付部42の外周部を後方に押し返す部材がない。
【0035】
本実施形態では、各内側凹部48の底面48aが型締め方向に対して斜めの部分を有するので、型締力が金型取付部42の外周部に集中せず、金型取付部42の中央部に伝達しやすい。金型取付部42の中央部は金型装置30で後方に押し返されほとんど変形しないため、金型取付部42の変形が抑制できる。
【0036】
腕部43に形成される内側凹部48は、腕部43に形成されるピン孔43aよりも内側に形成される。つまり、上側の腕部43に形成される内側凹部48の底面48aは、上側の腕部43に形成されるピン孔43aの下端を型締め方向に延長した線L1よりも下に配設される。また、下側の腕部43に形成される内側凹部48の底面48aは、下側の腕部43に形成されるピン孔43aの上端を型締め方向に延長した線L2よりも上に配設される。ピン孔43aを型締め方向に延長した領域に内側凹部48が存在しないので、内側凹部48を中心とする、腕部43の屈曲が抑制できる。
【0037】
複数の腕部43のそれぞれの外側側面には外側凹部49が形成される。具体的には、上側の腕部43の外側側面(上側側面)、および、下側の腕部43の外側側面(下側側面)にそれぞれ外側凹部49が形成される。外側凹部49は、後方から前方に向かうほど深さが深くなる部分を有してよい。型締力が外側凹部49を避けて伝達するので、型締力が金型取付部42の外周部に集中せず、金型取付部42の中央部に伝達しやすい。よって、金型取付部42の変形が抑制できる。
【0038】
尚、本実施形態では、複数の腕部43のそれぞれの外側側面に外側凹部49が形成されるが、少なくとも1つの腕部43の外側側面に外側凹部49が形成されていればよい。
【0039】
補強部44は、複数の腕部43を連結し、複数の腕部43の間隔の変動を制限する。例えば、金型取付部42が腕部43から伝達される型締力と金型装置30からの反力とによって撓み変形しようとする場合に、複数の腕部43の先端部の間隔が広がろうとするのを制限することができる。上下に間隔をおいて配設される2つの腕部43の先端部と、左右に間隔をおいて配設される2つの補強部44とで、4角形状の枠状部が構成される。
【0040】
以上、射出成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態の射出成形機10は、型開閉方向が水平方向の横型であるが、型開閉方向が垂直方向の竪型であってもよい。竪型の場合、サポートと可動プラテンとが複数本のタイバーで連結され、サポートと可動プラテンとの間に固定プラテンが配設される。固定プラテンに対して昇降自在なサポートと、固定プラテンとの間にトグル機構が配設される。固定プラテンは金型取付部および腕部などで構成され、腕部はトグル機構などで発生させた型締力を金型取付部に伝達する。
【0042】
また、上記実施形態の型締力発生機構29は、トグル機構20を使用して型締力を発生させるが、トグル機構20を使用することなく、型締めモータ26によって発生した推進力を直接型締力として可動プラテン13に伝達してもよい。また、流体圧シリンダによって発生した推進力を直接型締力として可動プラテン13に伝達してもよい。また、リニアモータによって型開閉を行い、電磁石によって型締めを行ってもよい。型締力発生機構の端部が可動プラテン13の腕部43に連結される。