特許第5976576号(P5976576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976576
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20160809BHJP
   F25B 47/02 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   F25B1/00 101H
   F25B1/00 311C
   F25B1/00 396A
   F25B47/02 530C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-57512(P2013-57512)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-181866(P2014-181866A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】515294031
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズ ヒタチ エア コンディショニング テクノロジー(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】津田 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】五十川 貴則
(72)【発明者】
【氏名】塚田 福治
(72)【発明者】
【氏名】岡部 眞幸
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−174639(JP,A)
【文献】 特開昭62−138660(JP,A)
【文献】 特開2007−187407(JP,A)
【文献】 特開平07−280378(JP,A)
【文献】 特開2010−002074(JP,A)
【文献】 特開2006−183878(JP,A)
【文献】 特開2011−202875(JP,A)
【文献】 実開昭61−162763(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、四方弁、室内熱交換器、室外膨張弁、室外熱交換器を冷媒配管で接続して冷凍サイクルを構成している空気調和機において、
前記室内熱交換器からの液冷媒が前記室外膨張弁を通過した後、前記室外熱交換器に流れる構成とし、
前記圧縮機から吐出される高温冷媒の一部を分岐させて前記室外熱交換器の暖房運転時における入口側に流すためのバイパス回路を設け、
このバイパス回路にはバイパス電磁弁と、バイパス膨張弁又はバイパスキャピラリチューブが設けられ、
更に、前記圧縮機のインジェクション配管と前記室外熱交換器の暖房運転時入口側とを接続するインジェクション用バイパス回路を設け、
前記インジェクション用バイパス回路はインジェクション用バイパス電磁弁と、インジェクション用バイパス膨張弁又はインジェクション用バイパスキャピラリチューブを備え、
圧縮機吐出温度、室外熱交換器液管温度、外気温度を検知し、前記インジェクション用バイパス回路に設けている前記インジェクション用バイパス電磁弁を開閉し、前記圧縮機のインジェクション配管に流入する流量を前記インジェクション用バイパス回路の前記インジェクション用バイパス膨張弁もしくは前記インジェクション用バイパスキャピラリチューブで調整する制御装置を備えると共に、
前記制御装置は、前記圧縮機の吐出側冷媒温度が前記圧縮機の許容温度以上と判定、且つ、前記室外熱交換器に着霜のおそれがないと判定した場合、前記インジェクション用バイパス回路の前記インジェクション用バイパス電磁弁を開にする制御をし、前記室外熱交換器の前記暖房運転時入口側からの冷媒を、前記インジェクション用バイパス回路を介して前記圧縮機の前記インジェクション配管に供給することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1において、前記制御装置は、圧縮機吐出温度、室外熱交換器液管温度、外気温度を検知し、前記バイパス回路に設けている前記バイパス電磁弁を開閉し、前記室外熱交換器に流入する流量を前記バイパス回路の前記バイパス膨張弁もしくは前記バイパスキャピラリチューブで調整することを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項1〜2の何れか1項において、前記制御装置は、前記圧縮機の吐出冷媒温度が高い、且つ、前記室外熱交換器に着霜している、或いは着霜のおそれがあると判断された場合に、前記バイパス回路の前記バイパス電磁弁を開き、前記圧縮機の吐出側からの高温冷媒の一部が分岐されて前記バイパス回路を介して前記室外熱交換器に流入させることを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項において、前記圧縮機の吐出側の温度を検出するための温度検出手段と、室外の温度を検出するための温度検出手段と、前記室外熱交換器の温度を検出するための温度検出手段とを備え、さらに、
前記制御装置は、これらの温度検出手段で検出された温度に基づいて前記圧縮機の仕様温度範囲外であるか否かを判断する、及び前記室外熱交換器に着霜のおそれがあるか否かを判断する機能を備えていることを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項において、前記空気調和機は、R32冷媒を単一、又は70質量%以上の割合で使用することを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒を使用し、暖房運転可能な空気調和機に係り、特に除霜運転機能を備えた空気調和機の室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対する対策として地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒への移行が検討されている。現在空調機に使用されている冷媒はR410Aが主になっているが、R410Aの代替冷媒としてR32が挙げられる。R32冷媒の特徴として、圧縮機にて圧縮された吐出冷媒の温度が高くなりやすい傾向がある。吐出冷媒が高くなることにより、圧縮機の運転可能範囲を外れ、圧縮機の故障、冷凍機油の劣化が懸念される。本問題を解決するに当たり、例えば、本技術分野の背景技術として、特開2012−137207号公報(特許文献1)がある。この公報には、空気調和機の冷凍サイクルにインジェクション回路、バイパス回路を設け、運転中に圧縮機の吐出温度が高くなりすぎた場合にインジェクション運転を実施し、圧縮機の中間室に冷媒を注入させることで圧縮機の吐出温度を低下させることにより前記問題を解決している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−137207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の冷凍サイクル装置では、インジェクション運転により凝縮された液冷媒を圧縮途中の圧縮室に注入することにより圧縮機から吐出される高温の冷媒ガス温度を圧縮機許容温度内に抑制することに対しての記述はあるが、暖房運転中については記載されていない。
【0005】
また、特許文献1に記載の冷凍サイクル装置は、冷房運転のサイクル状態についての記載になっており、暖房運転時については記載されていない。
そこで本発明は、暖房運転可能な空気調和機において、吐出温度が高くなりやすいR32などの冷媒を使用した場合であっても圧縮機吐出温度の上昇を押さえ、室外熱交換器の温度を上昇させることで除霜運転に入りにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、「圧縮機、四方弁、室内熱交換器、室外膨張弁、室外熱交換器を冷媒配管で接続して冷凍サイクルを構成している空気調和機において、前記室内熱交換器からの液冷媒が前記室外膨張弁を通過した後、前記室外熱交換器に流れる構成とし、前記圧縮機から吐出される高温冷媒の一部を分岐させて前記室外熱交換器の暖房運転時における入口側に流すためのバイパス回路を設け、このバイパス回路にはバイパス電磁弁と、バイパス膨張弁又はバイパスキャピラリチューブが設けられ、更に、前記圧縮機のインジェクション配管と前記室外熱交換器の暖房運転時入口側とを接続するインジェクション用バイパス回路を設け、前記インジェクション用バイパス回路はインジェクション用バイパス電磁弁と、インジェクション用バイパス膨張弁又はインジェクション用バイパスキャピラリチューブを備え、圧縮機吐出温度、室外熱交換器液管温度、外気温度を検知し、前記インジェクション用バイパス回路に設けている前記インジェクション用バイパス電磁弁を開閉し、前記圧縮機のインジェクション配管に流入する流量を前記インジェクション用バイパス回路の前記インジェクション用バイパス膨張弁もしくは前記インジェクション用バイパスキャピラリチューブで調整する制御装置を備えると共に、前記制御装置は、前記圧縮機の吐出側冷媒温度が前記圧縮機の許容温度以上と判定、且つ、前記室外熱交換器に着霜のおそれがないと判定した場合、前記インジェクション用バイパス回路の前記インジェクション用バイパス電磁弁を開にする制御をし、前記室外熱交換器の前記暖房運転時入口側からの冷媒を、前記インジェクション用バイパス回路を介して前記圧縮機の前記インジェクション配管に供給することを特徴とする空気調和機」である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、暖房運転可能な空気調和機において、吐出温度が高くなりやすいR32などの冷媒を使用した場合であっても圧縮機吐出温度の上昇を押さえ、室外熱交換器の温度を上昇させることで除霜運転に入りにくくすることが可能となる。
【0008】
本発明のその他の構成、効果については以下の実施例で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の空気調和機の実施例1を示す冷凍サイクル構成図で、主に室外機側を示す図。
図2】本発明の実施例1における暖房運転制御を説明するフローチャート。
図3】本発明の空気調和機の実施例2を示す冷凍サイクル構成図で、主に室外機側を示す図。
図4】本発明の実施例2における暖房運転制御を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の空気調和機の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の空気調和機の実施例1を示す冷凍サイクル構成図で、空気調和機50の主に室外機51側を示している。図においては、1は圧縮機、2は四方弁、3は室外熱交換器、4は室外膨張弁、11はガス阻止弁、12は液阻止弁、53は室内機(図示せず)側と接続されるガス接続配管、54は同じく液接続配管である。暖房運転時には、圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒は、実線矢印で示すように、四方弁2、ガス阻止弁11、ガス接続配管53を通り、室内機に至り、凝縮されて液冷媒となる。この液冷媒は、通常全開状態の室内膨張弁(図示せず)を通過後、液接続配管54及び液阻止弁12を通って室外膨張弁4に至り、この室外膨張弁4により減圧されて低温低圧のガス液混合冷媒となる。この減圧された冷媒は、室外熱交換器3により蒸発され、ガス冷媒となり再び四方弁2を経由して圧縮機1に戻される。
【0012】
31は前記圧縮機1の吐出側配管と四方弁2との間の冷媒配管から分岐され、室外熱交換器3と室外膨張弁4との間の冷媒配管に接続されるバイパス回路で、このバイパス回路31にはバイパス電磁弁32とバイパス膨張弁33が設けられている。暖房運転時に、吐出冷媒温度が高くなり、圧縮機の許容温度以上になった場合や、室外熱交換器3の除霜が必要になった場合、着霜しやすい状態となった場合に前記バイパス電磁弁32およびバイパス膨張弁33が開かれる。これにより、圧縮機から吐出された高温高圧のガス冷媒(高温冷媒)の一部がバイパス回路31に流入し、バイパス電磁弁32およびバイパス膨張弁33を通過後、室外熱交換器3の入口に流入する。このように、吐出冷媒ガスを分岐させることにより圧縮機吐出温度を低下させることができ、且つ、室外熱交換器3の着霜を抑制することができる。
【0013】
バイパス膨張弁33は高温高圧のガス冷媒を減圧すると共に、室外熱交換器3へ流入するガス流量を適正な流量に調整するためのものであるが、膨張弁ではなくキャピラリチューブを用いてもよい。室外熱交換器3は、狭い間隔で並置された多数枚のプレート状フィンと、これらのフィンを貫通する蛇行状の冷媒パイプとで構成されているプレートフィン型熱交換器を用いており、冷媒パイプ内を流れる冷媒と室外ファン23により通風される外気(室外空気)とが熱交換される。
【0014】
室外膨張弁4は、冷凍サイクルの主回路を流れる冷媒の減圧を行うもので、電子式膨張弁で構成され、液阻止弁12と室外熱交換器3との間に設置されている。圧縮機1は、その運転周波数がインバータで可変して制御される容量可変式圧縮機で構成されている。四方弁2は、この圧縮機1から吐出された冷媒の流れ方向及び圧縮機1へ吸い込まれる冷媒の流れ方向を切換える弁で、この四方弁2は、制御装置16により、暖房運転時に実線に示す流路を形成し、冷房運転時に点線で示す流路を形成するように制御される。
【0015】
制御装置16は、室外操作スイッチ等と共に室外機の制御基板上に搭載され、空気調和機50を構成する各機器の制御を行うものである。24は圧縮機の吐出温度を検出するためのサーミスタ(温度検出手段)で、圧縮機1の上部もしくは吐出配管のいずれかに設置されている。25は室外熱交換器3の液配管の温度を検出するためのサーミスタであり、室外熱交換器3の分配管もしくは分配前の配管のいずれかに設置されている。つまりサーミスタ25は室外熱交換器3の温度を検出するための温度検出手段であり、室外熱交換器25の暖房時冷媒入口側となる部分の温度を検出するものである。
26は室外の温度を検出するためのサーミスタ(温度検出手段)で、室外熱交換器3を流れる空気の上流側に設置されている。
【0016】
次に、空気調和機50の冷凍サイクルの基本動作について説明する。
暖房運転には、前述したように、圧縮機1からの高温高圧ガス冷媒は、実線矢印に示すように、四方弁2、ガス阻止弁11、ガス接続配管53を経由して室内機に入り、凝縮されて液冷媒となる。この液冷媒は、開状態の室内膨張弁、液接続配管54及び液阻止弁12を経由し、室外膨張弁4で減圧されて低温低圧のガス液混合冷媒となり、この減圧された冷媒は、室外熱交換器3で蒸発してガス冷媒となり圧縮機1に戻る。
【0017】
この暖房運転中に、バイパス回路31のバイパス電磁弁32およびバイパス膨張弁33を開とすることにより、圧縮機1から吐出されたガス冷媒の一部は、四方弁2への流れと分岐し、バイパス電磁弁32およびバイパス膨張弁33を通過後、室外熱交換器3に流入する。これにより、吐出ガス冷媒の一部をバイパスさせない場合(バイパス電磁弁32およびバイパス電磁弁33を閉とした場合)と比較し、吐出冷媒が高温となっている場合には、吐出冷媒ガスを分岐させることにより圧縮機吐出温度を低下させることができる。またこれにより、室外熱交換器3の温度を上昇させることができるため、着霜するのを防止できるか、着霜している場合にはそれを除霜することができる。
【0018】
空気調和機の冷房運転時には、圧縮機1から吐出されたガス冷媒は、点線矢印に示すように、四方弁2を経由して室外熱交換器3に流れ、該室外熱交換器3により凝縮されて液冷媒となる。この液冷媒は、全開状態の室外膨張弁4、液阻止弁12及び液接続配管54を通って室内機に流れ、室内機の室内膨張弁で減圧されて低圧のガス液混合冷媒となる。この減圧された冷媒は、室内機の室内熱交換器で蒸発され、ガス冷媒となって圧縮機1に戻される。
なお、冷房運転中は、バイパス電磁弁32およびバイパス膨張弁33は常に閉じられ、バイパス回路31は使用されない。
【0019】
本実施例は、圧縮機1の吐出側から室外熱交換器3と室外膨張弁4との間に連結するバイパス回路31を備え、このバイパス回路31を介して室外熱交換器3に流すように構成しているので、高温高圧の冷媒を室外熱交換器3に供給することで圧縮機1の吐出温度を抑制することができ、且つ、室外熱交換器3の温度が低下し、室外熱交換器3に着霜のおそれがある場合には、バイパス回路31を開として圧縮機1からの高温高圧の冷媒を、室外熱交換器3に供給できる。
【0020】
バイパス回路31にバイパス膨張弁33もしくはキャピラリチューブを備えているので、このバイパス膨張弁33の開度またはキャピラリチューブのサイズ(キャピラリチューブの配管径、長さ)を調整することで、最適な圧縮機吐出温度にすることができ、且つ、室外熱交換器に最適なバイパス流量を供給することが可能である。具体的には吐出温度の上がりやすいR32などの冷媒を使用した場合は、吐出温度が高くなりすぎて圧縮機許容温度を超えてしまうため、吐出温度を低下させるために圧縮機回転数を低下せざるを得ないが、バイパス回路31を有することで、圧縮機回転数を低下することなく吐出温度の抑制と着霜の抑制の両方を可能にすることができる。より具体的にはR32単体を冷凍サイクルを構成する冷媒として使用する場合、あるいはR32を70%以上の割合で使用する場合に特に吐出温度が上昇し過ぎるものである。
【0021】
また、このとき、圧縮機1の吐出側から暖房時室外熱交換器入口に分岐されるバイパス量に対し、室内熱交換器に流入するバイパス量が多くなるようにバイパス膨張弁33もしくはキャピラリチューブを調整することが望ましい。
【0022】
次に、図1に示す実施例の制御装置16における暖房運転制御を図2に示すフローチャートで説明する。
まず、サーミスタ24で圧縮機1の吐出温度を検出し、サーミスタ25で室外熱交換器2の液配管温度を検出し、サーミスタ26で外気温度を検出する(ステップS1)。次に、ステップS2では、ステップS1で検出した温度に基づいて圧縮機吐出温度が許容温度以上であるか否かを判断する。例えば、圧縮機の許容温度が120℃であった場合、サーミスタ24で検出された温度が120℃以上であれば圧縮機の仕様温度範囲外であり故障するおそれがあると判断する。
【0023】
圧縮機の故障のおそれがあると判断された場合はステップS3に移り、室外熱交換器3に着霜のおそれがあるか否かを判断する。例えば、サーミスタ25で検出された室外熱交換器3の温度が0℃以下で、且つサーミスタ26で検出された外気温度が5℃以上の場合であれば着霜のおそれがあると判断する。着霜のおそれがあると判断された場合にはステップS4に移り、バイパス電磁弁32およびバイパス膨張弁33が開となっていなければ、バイパス電磁弁32およびバイパス膨張弁33を開き(ステップS5)、圧縮機吐出側の高温高圧冷媒の一部をバイパス回路31に導入して室外熱交換器3に流入させる。これにより、圧縮機吐出温度を低下させることができ、且つ、室外熱交換器3の温度を上昇させ、着霜していればそれを除霜し、着霜のおそれがある場合には着霜を回避することができる。ステップS5の処理後は、前記ステップS1に戻る。
【0024】
ステップS1では再び圧縮機吐出温度と室外熱交換器の温度と外気温度をサーミスタ24、25、26で検出し、ステップS2で依然として圧縮機故障のおそれありと判断された場合はステップS3で着霜状態を判断し、着霜のおそれありと判断された場合にはステップS4に移り、バイパス電磁弁32およびバイパス膨張弁33は開弁状態であるので、ステップS1に戻る。
【0025】
ステップ3で着霜のおそれがないと判断された場合、圧縮機吐出温度が高温の状態でバイパス電磁弁32およびバイパス膨張弁33は閉じているため、圧縮機回転数を減少させて圧縮機吐出温度を低下させる。ステップS2で圧縮機故障のおそれがないと判断した場合、ステップS7にて着霜のおそれがあるか否かを判断する。ステップS7にて着霜のおそれがないと判断された場合ステップS1に戻り、着霜のおそれがあると判断された場合はステップS8に移行する。
【0026】
ステップS8にてバイパス電磁弁32およびバイパス膨張弁33が閉じていれば圧縮機吐出温度が低下していると判断しステップS1に戻り、バイパス電磁弁32およびバイパス膨張弁33が開いている場合にはステップS9に移る。ステップS9では室外熱交換器3が着霜しておらず、また着霜のおそれもない温度になっているかどうかを判断する。この例では、室外熱交換器3の温度が2℃以上になっていれば着霜のおそれがないと判断してバイパス電磁弁32およびバイパス膨張弁33を閉じ(ステップS10)、バイパス回路31から高温高圧冷媒を室外熱交換器3に導入することを停止し、空気調和機50は通常運転に戻る。
以下、同様の動作を繰り返すように制御装置16は制御される。
【0027】
以上の通り本実施例の暖房運転可能な空気調和機においては、吐出温度が高くなりやすいR32などの冷媒を使用した場合に、暖房運転時、吐出冷媒温度が高くなることにより、暖房能力が確保しやすくなる。そして制御装置16の上記した制御により、室外熱交換器に高温の冷媒ガスを流入することにより圧縮機吐出温度を低下させることができる。また、室外熱交換器温度を上昇させるため、除霜運転に入りにくくするとともに、圧縮機の回転数を減少させるのを最後の手段とすることで暖房能力低下を抑制することが可能となる。
【実施例2】
【0028】
本実施例では、図2に示すフローチャートのステップS6における圧縮機回転数低下だけでなく圧縮機回転数を低下させず圧縮機吐出温度の抑制も行える空気調和機の例を説明する。
図3は、実施例2を示す冷凍サイクル構成図である。図1の空気調和機50のうち、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0029】
図3の冷凍サイクル構成図は図1に対し、インジェクション用バイパス回路41を追加している。インジェクション用バイパス回路41は室外熱交換器3と室外膨張弁4との間の冷媒配管から分岐され、圧縮機1のインジェクション配管に接続されるバイパス回路で、このインジェクション用バイパス回路41にはバイパス電磁弁42およびバイパス膨張弁43が設けられている。インジェクション用バイパス回路41は暖房運転中に室外膨張弁4にて減圧された低温低圧冷媒を、圧縮機1のインジェクション配管に流入することにより、圧縮機吐出温度が過昇した場合に冷却行う。こうすることにより、圧縮機回転数を減少することなく暖房運転が継続されるため、安定した暖房運転を行うことができ、且つ圧縮機吐出温度を低下させることが可能である。なお、冷房運転中は、バイパス電磁弁42およびバイパス膨張弁43は常に閉じられ、インジェクション用バイパス回路41は使用されない。
【0030】
次に、図3に示す実施例の制御装置16における除霜運転制御を図4に示すフローチャートで説明する。ステップS3にて室外熱交換器3に着霜のおそれがあるか否かを判断し、着霜のおそれがない場合はステップS6に移行する。この際、図2では圧縮機回転数を減少させるようにしていたが、図4ではインジェクション用バイパス回路41を追加しているため、バイパス電磁弁42を開とし、ステップS1に戻る。ステップS1に戻り、ステップS2にて圧縮機の故障のおそれがあるか判断する。圧縮機故障のおそれがない場合、ステップS11に移行し、バイパス電磁弁42およびバイパス膨張弁43が開であるか否かを判断する。バイパス電磁弁42およびバイパス膨張弁43が開である場合、ステップS12に移行し、バイパス電磁弁42およびバイパス膨張弁43を閉としステップS1に戻る。
【0031】
以上のように本実施例では、圧縮機吐出温度、室外熱交換器液管温度、外気温度を検知し、インジェクション用バイパス回路41に設けているバイパス電磁弁42およびバイパス膨張弁43を開閉し、圧縮機1のインジェクション配管に流入する流量をこのバイパス膨張弁43もしくはキャピラリチューブで調整する制御装置16を備えたものである。制御装置16は、圧縮機1の吐出側冷媒温度が圧縮機1の許容温度以上と判定、且つ、室外熱交換器3に着霜のおそれがないと判定した場合、インジェクション用バイパス回路41のバイパス電磁弁42を開にする制御をし、室外熱交換器入口前からの冷媒を、インジェクション用バイパス回路41を介して圧縮機1のインジェクション配管に供給する。
【0032】
以下同様の動作を繰り返すように制御装置16を制御した場合、実施例1に対し圧縮機故障のおそれがあり、且つ室外熱交換器に着霜のおそれがない場合でも圧縮機回転数を減少させることなく安定した運転が可能であり、圧縮機吐出温度の低下させることができ、室外熱交換器の着霜を抑制することを可能とする。
【符号の説明】
【0033】
1…圧縮機
2…四方弁
3…室外熱交換器
4…室外膨張弁
11…ガス阻止弁
12…液阻止弁
16…制御装置
23…室外ファン
24、25、26…サーミスタ(温度検出手段)
31…バイパス回路
32…バイパス電磁弁
33…バイパス膨張弁
41…インジェクション用バイパス回路
42…バイパス電磁弁
43…バイパス膨張弁
50…空気調和機
51…室外機
53…ガス接続配管
54…液接続配管
図1
図2
図3
図4