(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構のそれぞれに、前記基端側の端部リンク部材であるアームを回転させることにより、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータを設けたリンク作動装置において、
前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を、始点姿勢から指令された終点姿勢へ変更させるように、前記各アクチュエータを制御するリンク作動装置の制御装置であって、
前記各アクチュエータを、前記始点姿勢となるときの前記アームの回転角である始点から前記終点姿勢となるときの回転角である終点へポイントツーポイントで互いに同期して駆動する姿勢変更制御手段と、
前記始点姿勢から終点姿勢へ姿勢変更するときの前記先端側のリンクハブの姿勢変更量を所定量と比較し、所定量以上である場合に、前記始点姿勢から終点姿勢へ変更する姿勢変更経路の途中に、定められた規則によって1つ以上の中継姿勢を設定し、この中継姿勢になるときの前記各アームの回転経路の中継点となる回転角を求めて設定する中継姿勢設定手段とを設け、
前記姿勢変更制御手段は、前記中継姿勢設定手段で設定された前記中継点を前記各アームが同時に通過するように位置制御する、
ことを特徴とするリンク作動装置の制御装置。
請求項1に記載のリンク作動装置の制御装置において、前記中継姿勢設定手段は、前記リンクハブの前記始点姿勢から終点姿勢への姿勢変更量を所定量以下に分割した数をもとに前記各アームの回転量を分割するリンク作動装置の制御装置。
請求項1または請求項2に記載のリンク作動装置の制御装置において、前記リンク機構が3組であり、前記中継姿勢設定手段により前記中継点を設定する前記定められた規則は、前記リンクハブの前記始点姿勢から終点姿勢へ姿勢変更する過程で動作する3つのアームのうち、2つのアームを選び、この選んだ2つのアームの回転経路を等分し、残り1つのアームは、他の2つのアームとの相対位置関係から一意に決まる位置とするリンク作動装置の制御装置。
請求項3に記載のリンク作動装置の制御装置において、前記3つのアームのうち2つのアームを選ぶ基準として、回転量の大きいアームを選択するリンク作動装置の制御装置。
請求項3または請求項4に記載のリンク作動装置の制御装置において、残り一つのアームの回転角を定めるについては、選択された2つのアームの回転角から、前記先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)を準変換の変換式で求め、前記リンクハブの姿勢(θ,φ)から逆変換の変換式により前記残り一つのアームの回転角を定めるリンク作動装置の制御装置。
請求項5に記載のリンク作動装置の制御装置において、前記先端側のリンクハブの姿勢(θ,φ)は、前記3つのアームのうちの2つのアームの回転角と変換式とを用いて収束演算で求めるリンク作動装置の制御装置。
請求項1または請求項2に記載のリンク作動装置の制御装置において、前記中継姿勢設定手段は、前記各アームの中継点を求める定められた規則として、前記先端側のリンクハブが最短距離で移動する経路上に一つ以上の中継姿勢をとり、前記経路上の、前記始点姿勢、中継姿勢、および終点姿勢のいずれかである各姿勢のうち、隣合う姿勢間の成す量が所定量以下となるリンクハブの姿勢(θ,φ)に対応する各アームの回転角を前記中継点とするリンク作動装置の制御装置。
請求項1または請求項2または請求項7に記載のリンク作動装置の制御装置において、前記リンク機構が3組であり、前記先端側のリンクハブの前記始点姿勢(θa,φa)と終点姿勢(θb,φb)から、それぞれ折れ角θの移動量Δθと旋回角φの移動量Δφが所定の移動量以下となるように等分した各リンクハブ姿勢(θ1,θ2,…θn,φ1,φ2,…φn)(ただし、n:分割数−1)を逆変換の変換式により求め、この求めたリンクハブ姿勢(θ1,θ2,…θn,φ1,φ2,…φn)を前記中継姿勢とするリンク作動装置の制御装置。
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のリンク作動装置の制御装置において、前記姿勢変更制御手段は、前記先端側のリンクハブの前記始点姿勢から終点姿勢への位置決め制御を、前記始点姿勢から姿勢変更を開始するときの加速区間と、前記姿勢に達する手前で減速する減速区間とを除いて、姿勢変更経路の全区間で加減速無しで行うリンク作動装置の制御装置。
【背景技術】
【0002】
パラレルリンク機構を具備する作業装置の一例が、特許文献2に開示されている。この作業装置のパラレルリンク機構は、各リンクの作動角が小さいため、トラベリングプレートの作動範囲を大きく設定するためには、リンク長さを長くする必要がある。それにより、機構全体の寸法が大きくなって、装置が大型になってしまうという問題があった。また、リンク長さを長くすると、機構全体の剛性の低下を招く。そのため、トラベリングプレートに搭載されるツールの重量、つまりトラベリングプレートの可搬重量も小さいものに制限されるという問題もあった。
【0003】
上記問題点を解消するものとして、3節連鎖のリンク機構を3組以上設けたリンク作動装置が提案されている(例えば特許文献2,3)。この構成であると、コンパクトでありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能である。
【0004】
図8〜
図9は、3節連鎖のリンク機構を3組以上設けたリンク作動装置の一例を示す。このリンク作動装置1は、基端側のリンクハブ14と、先端側のリンクハブ15と、これらリンクハブ14,15を互いに連結する3組のリンク機構11,12,13とでなる。各リンク機構11,12,13は、基端側の端部リンク部材11a,12a,(13a)、先端側の端部リンク部材11b,12b,13b、および中央リンク11c,12c,13cで構成され、4つの回転対偶からなる3節連鎖のリンク機構をなす。なお、
図8,
図9では、基端側の端部リンク部材13aは図示されていないが、区別のために符号を用いて説明する。また、前記基端側の端部リンク部材11a,12a,13aを、以下、アーム11a,12a,13aと称する。
【0005】
このリンク作動装置1の構成によると、基端側のリンクハブ14と、先端側のリンクハブ15と、3組のリンク機構11,12,13とで、基端側のリンクハブ14に対し先端側のリンクハブ15が直交2軸方向に移動自在な2自由度機構が構成される。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、先端側のリンクハブ15の可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブ14の中心軸QAと先端側のリンクハブ15の中心軸QBの最大折れ角は約±90°であり、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の旋回角を0°〜360°の範囲に設定できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8,
図9の例のような3節連鎖の3組のリンク機構11,12,13を設けたリンク作動装置において、2自由度のリンク機構11,12,13を3個のモータ等のアクチュエータ(図示せず)で駆動する装置は、折れ角θと旋回角φにより姿勢が決定される。折れ角θは、基端側のリンクハブ14の中心軸QAに対する先端側のリンクハブ15の中心軸QBの傾斜角度であり、旋回角φは、基端側のリンクハブ14の中心軸QAに対する先端側のリンクハブ15の中心軸QBの旋回角度である。その折れ角θと旋回角φとから、前記基端側の端部リンク部材である各アーム11a,12a,13aの回転角(以下「アーム回転角」と称す)(β1n 、β2n 、β3n )を求め、アーム11a,12a,13aを駆動するアクチュエータに位置決めさせる。
【0008】
例えば、先端側のリンクハブ15のある姿勢A(θa 、φa )とB(θb 、φb )について、各々の姿勢に対応する各アーム回転角は、リンクハブ14,15とアーム回転角との関係式によりA(β1a 、β2a 、β3a )、B(β1b、β2b、β3b)として求められる。ここで、姿勢Aから姿勢Bへの移動は、各アーム11a,12a,13aの回転角がβ1aからβ1b、β2aからβ2b、β3aからβ3bへ移動することで実行される。
【0009】
このとき、
図10にアーム回転角βの指令値と折れ角θの関係を点線の曲線L1〜L3で示すように、例えば、旋回角を15°に固定した状態で折れ角θを−60°から60°に変化させ姿勢変更する場合、各アーム11a,12a,13aは始点Aから終点Bへ3つのアーム11a,12a,13aがポイントツーポイント(Point-to-Point)制御で同期して等速運動で制御される。
しかし、折れ角θを例えば-60 °、-45 °、-30 °と15°毎に分割し、各先端側リンクハブ15の姿勢から先端側リンクハブ15とアーム回転角との関係式を用いてそれぞれのアーム回転角を求めると、
図10の実線で示す曲線M1〜M3を通過する経路で各姿勢が決まる。同図から分かるように、特に曲線L1と曲線M1とでは折れ角0°付近で経路の乖離が大きい。
【0010】
このように、曲線L1〜L3の経路で駆動の指令をする場合、曲線M1〜M3の経路で駆動の指令をする場合に比べて各アーム回転角β1,β2,β3は、始点と終点を除く途中の経路では各アーム11a,12a,13aの位置が、リンクハブとアーム回転角との関係式に対して大きく異なる位置を通過して位置決め指令されることになる。
【0011】
このとき各アーム11a,12a,13aは互いに連結され、先端側リンクハブ15の姿勢により3つのアーム回転角の相対位置は一意に決まるため、アーム回転角の相対位置が崩れ、3つのアーム11a,12a,13aが過大に干渉する。すなわち、3つのアーム11a,12a,13aが、それぞれのアクチュエータへの指令値に対して偏差を生じたアーム回転角を採る。そのため、曲線L1〜L3の経路ではリンクの駆動に、より大きなトルクが必要になる。
【0012】
これは、1度の駆動における姿勢変更量が大きい程、経路途中で、リンクハブ14,15とアーム回転角βとの関係式から定まるアーム回転角と大きく異なる位置に位置決め指令されるため、各アーム11a,12a,13a間に干渉が生じ、リンク機構11,12,13の駆動に過大なトルクが必要になることを意味する。このときリンク機構11,12,13にも荷重がかかり、リンク機構11,12,13の組付け不具合や、異常な摩耗等を与え、位置決め精度悪化の原因になる。これを解消するためには
図10の曲線M1〜M3に近い経路を通過するように各アームを駆動する必要がある。
しかし、先端側リンクハブ15の姿勢Aから姿勢Bまでの全経路において干渉(すなわち、指令値に対して3つのリンク機構11,12,13の関係で定まる位置との偏差)を生じないように各アーム11a,12a,13aの回転角を制御すると、先端側リンクハブ15の姿勢から各アーム各アーム11a,12a,13aの回転角への変換演算時間を要するため移動時間が長くなる。また、予め全経路の座標を記憶して制御する場合は、より大きな記憶メモリが必要になるという問題がある。
【0013】
この発明の目的は、先端側リンクハブの姿勢を大きく変更するときに、複数のリンク機構の相互の関係で一義的に定まる各アーム回転角から大きく外れることなく各アームのアクチュエータの位置決め制御が行えて、リンク機構の各部に過大な負荷を掛けずに駆動でき、かつ演算時間による遅れが回避できて高速移動が図れ、制御のための記憶メモリの容量も小さくて済むリンク作動装置の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明のリンク作動装置の制御装置は、基端側のリンクハブ14に対し先端側のリンクハブ15を、3組以上のリンク機構11〜13を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構11〜13は、それぞれ前記基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15に一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11b〜13bと、これら基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11b〜13bの他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材11c〜13cとでなり、前記各リンク機構11〜13は、このリンク機構11〜13を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材11c〜13cの中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構11〜13のそれぞれに、前記基端側の端部リンク部材であるアーム11a〜13aを回転させることにより、前記基端側のリンクハブ14に対する前記先端側のリンクハブ15の姿勢を任意に変更させるアクチュエータ3を設けたリンク作動装置において、
前記基端側のリンクハブ14に対する前記先端側のリンクハブ15の姿勢を、始点姿勢Aから指令された終点姿勢Bへ変更させるように、前記各アクチュエータ3を制御するリンク作動装置の制御装置1であって、
前記各アクチュエータ3を、前記始点姿勢Aとなるときの前記アーム11a〜13aの回転角である始点から前記終点姿勢Bとなるときの回転角である終点へポイントツーポイントで互いに同期して駆動する姿勢変更制御手段41と、
前記始点姿勢から終点姿勢へ姿勢変更するときの前記先端側のリンクハブ15の姿勢変更量を所定量と比較し、所定量以上である場合に、前記始点姿勢から終点姿勢へ変更する姿勢変更経路の途中に、定められた規則によって1つ以上の中継姿勢を設定し、この中継姿勢になるときの前記各アーム11a〜13aの回転経路の中継点となる回転角を求めて設定する中継姿勢設定手段42とを設け、
前記姿勢変更制御手段41は、前記中継姿勢設定手段42で設定された前記中継点を前記各アーム11a〜13aが同時に通過するように位置制御する、
ことを特徴とする。
【0015】
この構成によると、中継姿勢設定手段42により、先端側のリンクハブ15の姿勢変更量が所定量以上である場合に、中継姿勢を設定し、この中継姿勢になるときの前記各アーム11a〜13aの回転経路の中継点を設定する。姿勢変更制御手段は、この設定された中継点を前記各アーム11a〜13aが同時に通過するように位置制御する。
このように先端側リンクハブ15の中継姿勢を設定して各アーム11a〜13aがその中継姿勢となる中継点を同時に通過するように制御する。そのため、先端側リンクハブ15の姿勢を大きく変更するときに、複数のリンク機構11〜13の相互の関係で一義的に定まる各アーム回転角から大きく外れることなく各アーム11a〜13aのアクチュエータ3の位置決め制御が行える。したがって、リンク機構11〜13の各部に過大な負荷を掛けずに駆動できる。また、中継点を求める演算は必要であるが、基本的にはポイントツーポイント制御であるため、先端側リンクハブ15の姿勢変更の全経路において干渉を生じないように回転角を制御するものと異なり、制御に必要な演算時間が短くて済んで、演算時間による遅れが生じず、高速移動が図れる。また、予め全経路の座標を記憶して制御するものと異なり、記憶メモリの容量が小さくて済む。
【0016】
なお、上記の「先端側のリンクハブ15の姿勢変更量を所定量と比較し、」とある姿勢変更量および所定量は、折れ角θや旋回角φによって直接に定めても良いが、ポイントツーポイント制御した場合に前記アクチュエータ3に生じる最大のトルクが所定値となる折れ角θまたは旋回角φまたはこれら折れ角θと旋回角φの両方の値であっても良い。
【0017】
この発明において、前記中継姿勢設定手段42は、前記リンクハブ15の前記始点姿勢から終点姿勢への姿勢変更量を所定量以下に分割した数をもとに前記各アーム11a〜13aの回転量を分割する構成であっても良い。
前記「所定量」は、例えば、リンクハブ15を駆動する前記各アクチュエータ3をポイントツーポイント制御で所定の値以下で駆動できる移動量としても良く、これは、リンク装置の幾何学的な寸法及びリンクに与える初期与圧によって決まる。また、駆動するアクチュエータ3についての所定の値とは、リンク装置の入力トルク許容値以下の値を示す。リンク装置が入力部に減速機を有する場合は、その減速機の入力トルク許容値以下の値を示す。
このように姿勢変更時の経路を分割することで、各軸のアーム11a〜13aの干渉を緩和し、リンクの組付け不具合や、異常な摩耗を与えないような適正なアクチュエータトルクで駆動することができる。始点姿勢から終点姿勢への先端側のリンクハブ15の移動経路は近似して求めれば良い。
【0018】
この発明において、前記リンク機構が3組であり、前記中継姿勢設定手段42により前記中継点を設定する前記定められた規則は、前記リンクハブ15の前記始点姿勢から終点姿勢へ姿勢変更する過程で動作する3つのアーム11a〜13aのうち、2つのアームを選び、この選んだ2つのアームの回転経路を等分し、残り1つのアームは、他の2つのアームとの相対位置関係から一意に決まる位置としても良い。
この場合に、前記3つのアーム11a〜13aのうち2つのアームを選ぶ基準として、回転量の大きいアームを選択しても良い。この制御では回転量の大きい2つのアームが各軸の最大速度で等速に移動できるため、最短の移動時間で駆動できる。また、回転時間を考慮しなければ3つのアーム11a〜13aのうちの2つのアームの選択は、任意に選んでもよい。ただし、このときリンク先端の軌跡は最短経路の通過を保証しない。
【0019】
上記のように3つのアーム11a〜13aのうち2つのアームを選ぶ場合に、残り一つのアームの回転角を定めるについては、選択された2つのアームの回転角から、前記先端側のリンクハブ15の姿勢(θ,φ)を準変換の変換式で求め、前記リンクハブ15の姿勢(θ,φ)から逆変換の変換式により前記残り一つのアームの回転角を定めるようにしても良い。
これにより、残り一つのアームの回転角を適切に求めることができる。
【0020】
この場合に、前記先端側のリンクハブ15の姿勢(θ,φ)は、前記3つのアーム11a〜13aのうちの2つのアームの回転角と、順変換等の変換式とを用いて収束演算で求めるようにしても良い。収束演算を行うことで、先端側のリンクハブ15の姿勢(θ,φ)が、2つのアームの回転角から容易にかつ適切に求まる。
【0021】
この発明において、前記中継姿勢設定手段42は、前記各アームの中継点を求める定められた規則として、前記先端側のリンクハブ15が最短距離で移動する経路上に一つ以上の中継姿勢をとり、前記経路上の、前記始点姿勢、中継姿勢、および終点姿勢のいずれかである各姿勢のうち、隣合う姿勢間の成す距離等の量が所定量以下となるリンクハブ15の姿勢(θ,φ)に対応する各アームの回転角を前記中継点とする構成としても良い。
この場合に、前記リンクハブ15の姿勢(θ,φ)から逆変換の変換式により各アームの回転角を求めるようにしても良い。
すなわち、先端側のリンクハブ15のある始点姿勢(折れ角、旋回角)A(θa 、φa )と終点姿勢B(θb 、φb )について、姿勢A、B間を移動する先端側のリンクハブ15の姿勢変更経路が、できるだけ最短になるように求める。このとき必要に応じて適切な近似を行うことで、経路を求める時間を短縮することができる。姿勢Aから姿勢Bへの経路を複数の姿勢に分割し、各リンクハブ15の姿勢N(θn 、φn)から、逆変換アルゴリズムにより各リンクハブ15の姿勢に対するアーム軸の回転角N(β1n 、β2n、β3n)を得る。リンク姿勢制御は各軸の位置を同期して移動するように行う。
【0022】
この発明において、前記リンク機構が3組であり、前記リンクハブ15の前記始点姿勢から終点姿勢への姿勢変更量を所定量以下に分割する場合に、前記先端側のリンクハブ15の前記始点姿勢A(θa,φa)と終点姿勢B(θb,φb)から、それぞれ折れ角θの移動量Δθと旋回角φの移動量Δφが所定の移動量以下となるように等分した先端側の各リンクハブ15の姿勢(θ1,θ2,…θn,φ1,φ2,…φn)(ただし、n:分割数−1)を逆変換の変換式により求め、この求めたリンクハブ15の姿勢(θ1,θ2,…θn,φ1,φ2,…φn)を前記中継姿勢としても良い。
このように、折れ角θの移動量Δθと旋回角φの移動量Δφが共に所定の移動量以下となるように等分することで、より一層干渉が少なくて過大な負荷が生じない駆動を行うことができる。
【0023】
この発明において、前記姿勢変更制御手段41は、前記先端側のリンクハブ15の前記始点姿勢Aから終点姿勢Bへの位置決め制御を、前記始点姿勢Aから姿勢変更を開始するときの加速区間と、前記姿勢Bに達する手前で減速する減速区間とを除いて、姿勢変更経路の全区間で加減速無しで行うようにしても良い。
このように途中の点を加減速なしで位置決め制御することで、始点姿勢から終点姿勢までを一定速度で滑らかに駆動することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明のリンク作動装置の制御装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構のそれぞれに、前記基端側の端部リンク部材であるアームを回転させることにより、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータを設けたリンク作動装置において、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を、指令された始点姿勢から終点姿勢へ変更させるように、前記各アクチュエータを制御するリンク作動装置の制御装置であって、前記各アクチュエータを、前記始点姿勢となるときの前記アームの回転角である始点から前記終点姿勢となるときの回転角である終点へポイントツーポイントで互いに同期して駆動する姿勢変更制御手段と、前記始点姿勢から終点姿勢へ姿勢変更するときの前記先端側のリンクハブの姿勢変更量を所定量と比較し、所定量以上である場合に、前記始点姿勢から終点姿勢へ変更する姿勢変更経路の途中に、定められた規則によって1つ以上の中継姿勢を設定し、この中継姿勢になるときの前記各アームの回転経路の中継点を求めて設定する中継姿勢設定手段とを設け、前記姿勢変更制御手段は、前記中継姿勢設定手段で設定された前記中継点を前記各アームが同時に通過するように位置制御するため、先端側リンクハブの姿勢を大きく変更するときに、複数のリンク機構の相互の関係で一義的に定まる各アーム回転角から大きく外れることなく各アームのアクチュエータの位置決め制御が行えて、リンク機構の各部に過大な負荷を掛けずに駆動でき、かつ演算時間による遅れが回避できて高速移動が図れ、制御のための記憶メモリの容量も小さくて済む。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。まず、制御対象となるリンク作動装置を、
図1ないし
図5と共に説明する。
図1および
図2に示すように、このリンク作動装置1は、リンク作動装置本体2と、このリンク作動装置本体2を作動させる複数の姿勢制御用のアクチュエータ3とを備え、これら姿勢制御用のアクチュエータ3が制御装置4により制御される。図の例では、リンク作動装置本体2が、その基端側で、支持部材5にスペーサ6を介して吊り下げ状態に設置されている。リンク作動装置本体2の先端側には、先端取付部材7を介してエンドエフェクタ8が搭載されている。
【0027】
リンク作動装置本体2は、背景技術の欄で説明した
図8のリンク作動装置1と基本的に同じ構成である。このため一部が繰り返しになるが、各部の構造をより詳しく説明する。
図3に示すように、リンク作動装置本体2は、3組のリンク機構11,12,13(以下、「11〜13」と表記する)を具備する。なお、
図1および
図2では、リンク機構11の形状につき1組のみを表示し、
図1では他の2組のリンク機構12,13について、制御の説明のためにブロックで示している。これら3組のリンク機構11〜13のそれぞれは幾何学的に互いに同一形状をなす。すなわち、各リンク機構11〜13は、後述の各リンク部材11a〜13a,11b〜13b,11c〜13cを直線で表現した幾何学モデルが、中央リンク部材11b〜13bの中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状である。
【0028】
各リンク機構11,12,13は、基端側の端部リンク部材11a,12a,13a(以下、「11a〜13a」と表記する)、中央リンク部材11b,12b,13b(以下、「11b〜13b」と表記する)、および先端側の端部リンク部材11c,12c,13c(以下、「11c〜13c」と表記する)で構成され、4つの回転対偶からなる3節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cはL字状をなし、基端がそれぞれ基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15に回転自在に連結されている。中央リンク部材11b〜13bは、両端に基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cの先端がそれぞれ回転自在に連結されている。なお、端部リンク部材11a〜13aは、請求項で言う「アーム」であり、以下の説明において、「アーム11a〜13a」と称する場合がある。
【0029】
基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15は六角柱状で、外周面を構成する6つの側面16のうちの1つ置きに離れた3つの側面16に、基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cがそれぞれ回転自在に連結されている。3組のリンク機構11〜13の各基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cは、球面リンク機構と呼ばれる構造であって、それぞれの球面リンク中心PA,PB(
図1、
図2)は一致しており、また、その球面リンク中心PA,PBからの距離も同じである。端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cと中央リンク部材11b〜13bとの連結部となる回転対偶軸は、ある交差角をもっていてもよいし、平行であってもよい。
【0030】
つまり、3組のリンク機構11〜13は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、各リンク部材11a〜13a,11b〜13b,11c〜13cを直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが、中央リンク部材11b〜13bの中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。
図4は、一つのリンク機構11を直線で表現した図である。
【0031】
この実施形態のリンク機構11〜13は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ14および基端側の端部リンク部材11a〜13aと、先端側のリンクハブ15および先端側の端部リンク部材11c〜13cとの位置関係が、中央リンク部材11b〜13bの中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。
図1は、基端側のリンクハブ14の中心軸QAと先端側のリンクハブ15の中心軸QBとが同一線上にある状態を示し、
図2は、基端側のリンクハブ14の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ15の中心軸QBが所定の作動角をとった状態を示す。各リンク機構11〜13の姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離Hは変化しない。
【0032】
図5は、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11a〜13aの連結部を示す断面図である。基端側のリンクハブ14の側面16から軸部18が突出し、この軸部18に複列の軸受17の内輪(図示せず)が外嵌し、基端側の端部リンク部材11a〜13aの基端側のリンクハブ側の端部に軸受17の外輪(図示せず)が内嵌している。つまり、内輪は基端側のリンクハブ14に固定され、外輪が基端側の端部リンク部材11a〜13aと共に回転する構造である。軸受17は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受であって、ナット19による締付けでもって所定の予圧量を付与して固定されている。軸受17としては、図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。先端側のリンクハブ15と先端側の端部リンク部材11c〜13cの連結部も、同様の構造である。
【0033】
また、基端側の端部リンク部材11a〜13aと中央リンク部材11b〜13bの連結部も複列の軸受20を介して互いに回転自在に連結されている。すなわち、基端側の端部リンク部材11a〜13aに軸受20の外輪(図示せず)が外嵌し、中央リンク部材11b〜13bに設けた軸部21に軸受20の内輪(図示せず)が外嵌している。軸受20は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受であって、ナット22による締付けでもって所定の予圧量を付与して固定されている。軸受20としては、図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。先端側の端部リンク部材11c〜13cと中央リンク部材11b〜13bの連結部も、同様の構造である。
【0034】
前記リンク機構11〜13において、端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cの軸部18の角度、長さ、および端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cの幾何学的形状が基端側と先端側で等しく、また、中央リンク部材11b〜13bについても基端側と先端側で形状が等しいとき、中央リンク部材11b〜13bの対称面に対して中央リンク部材11b〜13bと、入先端側のリンクハブ14,15と連結される端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cとの角度位置関係を基端側と先端側で同じにすれば、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ14および基端側の端部リンク部材11a〜13aと、先端側のリンクハブ15および先端側の端部リンク部材11c〜13cとは同じに動き、基端側と先端側は同じ回転角になって等速で回転することになる。この等速回転するときの中央リンク部材11b〜13bの対称面を等速二等分面という。
【0035】
このため、基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15を共有する同じ幾何学形状のリンク機構11〜13を円周上に複数配置させることにより、複数のリンク機構11〜13が矛盾なく動ける位置として中央リンク部材11b〜13bが等速二等分面上のみの動きに限定され、これにより基端側と先端側は任意の作動角をとっても等速回転が得られる。
【0036】
各リンク機構11〜13における4つの回転対偶の回転部、つまり、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11a〜13aとの連結部分、先端側のリンクハブ15と先端側の端部リンク部材11c〜13cとの連結部分、および基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cと中央リンク部材11b〜13bとの2つの連結部分を軸受構造とすることにより、その連結部分での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0037】
このリンク作動装置本体2の構成によれば、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の可動範囲を広くとれる。背景技術の欄で説明したように、例えば、基端側のリンクハブ14の中心軸QAと先端側のリンクハブ15の中心軸QBの折れ角θの最大値(最大折れ角)を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の旋回角φを0°〜360°の範囲で設定できる。
【0038】
図1および
図2において、前記複数のアクチュエータ3は、支持部材5の上に円周方向に等配で設置されている。アクチュエータ3の個数は、リンク機構11,12,13と同数の3個である。この実施形態では、アクチュエータ3はモータからなり、その出力軸3aにピニオン30が設けられている。一方、前記端部側の端部リンク部材11a〜13aにおける前記軸部18との回転対偶部に連結部材31(
図5)が固定して取付けられ、この連結部材31に、前記ピニオン30と噛み合う扇形ギア32が設けられている。扇形ギア32の中心軸は、軸部18(
図5)の中心軸と一致する。前記ピニオン30と扇形ギア32とで減速機33を構成する。
【0039】
各アクチュエータ3を回転駆動すると、その回転が減速機構33を介して軸部18(
図5)に伝達されて、基端側のリンクハブ14に対する基端側の端部リンク部材であるアーム11a〜13aの角度が変更される。それにより、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の姿勢が決まる。この姿勢は、折れ角θ(
図3)および旋回角φ(
図3)により規定される。アーム11a〜13aの回転角β1,β2,β3は、回転角検出手段35により検出された値と減速機構33の減速比との値から見積もられる。
【0040】
次に、
図1と共に制御装置4につき説明する。制御装置4は、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の姿勢を、現在の姿勢である始点姿勢から、この制御装置4に対する外部の指令手段40から与えられる終点姿勢へ変更するように、各アクチュエータ3を制御する装置である。制御装置4は、コンピュータによる数値制御式のものであり、主に基本的な制御を行う姿勢変更制御手段41と、特徴的な制御に係る中継姿勢設定手段42とを備える。
【0041】
姿勢変更制御手段41は、前記各アクチュエータ3を、前記始点姿勢となるときの前記アーム11a〜13aの回転角である始点から、前記終点姿勢となるときの回転角である終点へポイントツーポイントで駆動する手段である。姿勢変更制御手段41は、各アクチュエータ3が互いに同時に始点から移動を開始し、互いに同時に終点に到着を行うように同期制御を行い、かつ互いに同時に中継点を通過するように制御する機能を備える。
【0042】
姿勢変更制御手段41は、具体的には各リンク機構11〜13のアクチュエータ3をそれぞれ制御する複数の個別制御部43と、指令変換部44と、同期制御部45と、個別指令部48でなる。
【0043】
各個別制御部43は、対応するアクチュエータ3を、与えられた始点から終点へポイントツーポイントで位置制御する手段であり、例えば、加速、等速移動、減速の台形速度制御をする。この台形速度制御の等速移動の速度、加減速時の加速度は、同期制御部45によって与えられる。個別制御部43は、より具体的には、例えばアーム回転角をアクチュエータ移動量に変換する動作量変換部(図示せず)と動作指令生成部(図示せず)とサーボコントローラ部(図示せず)とからなり、動作指令生成部は前記台形速度制御の速度曲線に従ってパルス払い出し等によってサーボコントローラ部へ動作指令を与え、サーボコントローラ部は、その与えられた動作指令と前記回転角検出手段35の検出値を用いてフィードバック制御を行う。
【0044】
指令変換部44は、指令手段40から折れ角θと旋回角φとで与えられる終点姿勢の指令B(θb,φb)を、各リンク機構11〜13のアーム11a〜13aの回転角βに変換する手段であり、その変換された回転角βが各アーム回転角の終点となる。指令変換部44は、この変換した各アーム11a〜13aの回転角βを、対応する個別指令部48へ終点の位置として与える。折れ角θと旋回角φから各アーム11a〜13aの回転角βを求める演算は、後述の関係式(1)による逆変換で行われる。
【0045】
なお、始点姿勢は現在の姿勢であり、各個別指令部48に与えられる始点は、現在の各アーム11a〜13aの位置である。この始点は、前回移動時の終点とされ、または各回転角検出手段35により検出された値と減速機構33の減速比との値から見積られる現在位置、または定められた基準位置等とされる。
【0046】
同期制御部45は、各アーム11a〜13aが、同時に始点から回転を始め、同時に終点で止まるように、各個別制御部43における前記台形速度制御における等速移動時の速度、および加減速時の加速度(または加減速時定数)を設定することで同期制御を行う手段である。加速度の代わりに、加速の終了時刻および減速の開始時刻を定めるようにしても良い。同期制御部45は、この他に、前記中継点を各アーム11a〜13aが同時に通過するように位置・速度制御されるように前記速度曲線を定める。
【0047】
中継姿勢設定手段42は、先端側のリンクハブ15が前記始点姿勢から終点姿勢へ姿勢変更するときの先端側リンクハブ15の姿勢変更量を、設定部46に定められた所定量と比較部47によって比較し、所定量以上である場合に、姿勢変更経路の途中に、定められた規則によって1つ以上の中継姿勢を設定する手段である。中継姿勢設定手段42は、この中継姿勢になるときの前記各アーム11a〜13aの回転経路の中継点となる回転角を求めて設定する。なお、先端側のリンクハブ15の姿勢変更の経路は、例えば、このリンクハブ15の中心の経路とする。また、先端側のリンクハブ15は、任意の経路で姿勢変更可能であるが、中継姿勢は、例えば最短経路となる姿勢変更経路を通る場合の中継姿勢とする。
【0048】
中継姿勢設定手段42は、この例では、先端側のリンクハブ15の前記始点姿勢から終点姿勢への姿勢変更量を所定量以下に分割した数をもとに、前記各アーム11a〜13aの回転量を分割する。前記の「定められた規則」は、例えば、前記始点姿勢から終点姿勢へ姿勢変更する過程で動作する3つのアーム11a〜13aのうち、2つのアームを選び、この選んだ2つのアームの回転経路を等分し、残り1つのアームは、他の2つのアームとの相対位置関係から一意に決まる位置としても良い。この3つのアーム11a〜13aのうち2つのアームを選ぶ基準としては、回転量の大きいアームを選択することが好ましい。
【0049】
前記同期制御部45は、上記のように中継姿勢設定手段42で定めた各アーム11a〜13aの中継点を、各アーム11a〜13aが同時に通過するように、各個別制御部43に前記速度曲線を定めさせる。各個別制御部43は、この定められた速度曲線で各アーム11a〜13aのアクチュエータ3を制御する。これにより、姿勢変更制御手段41は、各アクチュエータ3が互いに同時に始点から移動を開始し、互いに同時に終点に到着を行い、かつ互いに同時に中継点を通過するように同期制御する。
【0050】
上記構成の動作を説明を説明する。制御対象となるリンク作動装置1は、前記折れ角θおよび旋回角φと、各基端側の端部リンク11a,12a,13aの回転角βn(β1,β2,β3)とが次式(1)で表わされる関係にある。
cos (θ/2)sin βn−sin (θ/2)sin (φ+δn)cos βn+sin (γ/2)=0 …式(1)
ここで、γは、アーム11a,12a,13aに回転自在に連結された中央リンク部材11c,12c,13cの連結端軸と、先端側の端部リンク部材11b,12b,13bに回転自在に連結された中央リンク部材11c,12c,13cの連結端軸とが成す角度である。δn(δ1,δ2,δ3)(図示せず)は、基準となるアーム11aに対する各基端側の端部リンク部材11a,12a,13aの円周方向の離間角である。リンク機構11,12,13の数が3組で、各リンク機構11,12,13が円周方向に等配である場合、各アーム11a,12a,13aの離間角δ1,δ2,δ3はそれぞれ0°,120°,240°となる。
【0051】
この関係より、先端側のリンクハブ15のある始点姿勢(折れ角、旋回角)A(θa 、φa )と終点姿勢B(θb 、φb )について、これらの姿勢A、Bに対応するアーム回転角は、リンクハブ14,15とアーム回転角との前記関係式(1)より、それぞれ回転角A(β1a 、β2a 、β3a )、回転角B(β1b、β2b、β3b)として関係が成り立つ。
【0052】
このとき、中継姿勢設定手段42は、先端側のリンクハブ15の始点姿勢Aから終点姿勢Bへの先端側のリンクハブ15の移動量を求め、求めた移動量が所定の移動量より大きい場合、所定の移動量以下になるように始点姿勢Aから終点姿勢Bの間を複数の姿勢に分割する。ここで所定の移動量とは、例えば、モータからなる各アクチュエータ3のモータトルクが所定の値以下で駆動できる移動量とする。この移動量は、リンク作動装置1の幾何学的な寸法及びリンクに与える初期与圧によって決まる。また、駆動するモータトルクについての所定の値とは、例えば、リンク作動装置1の入力部となる前記減速機33等の入力トルク許容値以下の値を示す。
【0053】
このように姿勢変更時の経路を分割し、その分割部である中継点を各軸のアーム11a〜11cが同時に通過するように制御することで、各軸のアーム11a〜11cの干渉を緩和し、リンクの組付け不具合や、異常な摩耗等を与えないような適正なモータトルクで駆動することができる。ここで言う「干渉」は、上記のようにアクチュエータ3への指令値に対して偏差を生じたアーム回転角となることを言う。始点姿勢Aから終点姿勢Bへの先端側リンクハブ15の移動経路は近似して求める。
また、中継点を求める演算は必要であるが、基本的にはポイントツーポイント制御であるため、先端側リンクハブ15の姿勢変更の全経路において干渉を生じないように回転角を制御するものと異なり、制御に必要な演算時間が短くて済んで、演算時間による遅れが生じず、高速移動が図れる。また、予め全経路の座標を記憶して制御するものと異なり、記憶メモリの容量が小さくて済む。
【0054】
中継姿勢設定手段42により中継点を求める分割方法としては、次の第1〜第3の例が採用できる。
まず、分割方法の第1の例を表1に示す。
【表1】
【0055】
始点姿勢Aから終点姿勢Bへの移動においてアーム軸β1、β2、β3 の回転角移動量を求め、移動量の大きい2つのアームを選ぶ。このとき移動量の大きいアーム軸をβ1、β2とすると、β1、β2の移動量を先に求めた分割数nで等分割し、各アーム11〜13の分割された回転角位置を決める。このとき分割数nは、先端側リンクハブ15の始点姿勢Aから終点姿勢Bへの移動量をL、所定の移動量をdとし、L÷d=m(商)…a(剰余)として、分割数nを、n=m+1とする。
【0056】
アーム軸β3の回転角は、2軸のアーム軸β1、β2の回転角と順変換アルゴリズムから求められる先端側リンクハブ15の姿勢(θn,φn)を用いて、逆変換によりβ3のアーム回転角を得る(
図6参照)。順変換について、リンクハブとアーム回転角との前記関係式(1)よりβ1a、β2a、θ、φの4つの角度は次式(2)、(3)を満足する。
f:cos θ sinβ
1a− sinθ sinφ cosβ
1a+ sinγ=0≡f(θ,φ) …式(2)
g:cos θ sinβ
2a− sinθ sin(φ+σ) cosβ
2a+sin γ=0≡g(θ,φ)
…式(3)
【0057】
この2式はθ,φの非線形方程式であるため、数値的に解を求める。この2軸のアーム軸β1、β2の回転角から順変換の変形式を用いて先端側リンクハブ15の姿勢(θn,φn)を求める演算は、例えば収束演算で行う。ここでγはリンクの設計構造によって決まる軸角度、σは3つアームの配列位置によって決まる位相角度とする。また、逆変換についてはリンクハブとアーム回転角との前述の関係式(1)より、あるリンクハブ姿勢(θ、φ)におけるβ1、β2 、β3 のアーム回転角は一意に求まる。表2に3軸のアームの回転角移動量を分割した位置を示す。
【0059】
リンク姿勢制御は、表1に示す各軸の回転角位置を、同期制御部45の制御により同期して移動するように行う。
【0060】
この制御では移動量の大きい2つのアーム11a,11bが各軸の最大速度で等速に移動できるため、最短の移動時間で駆動できる。また、移動時間を考慮しなければβ1、β2、β3のうち2つのアームの選択は任意に選んでもよい。ただし、このときリンク先端の軌跡は最短経路の通過を保証しない。
【0061】
第2の分割方法を示す。この方法では、先端側のリンクハブ15が最短距離で移動する経路上に一つ以上の中継姿勢をとり、前記経路上の、前記始点姿勢、中継姿勢、および終点姿勢のいずれかである各姿勢のうち、隣合う姿勢間の成す距離等の量が所定量以下となるリンクハブ15の姿勢(θ,φ)に対応する各アーム11a〜13aの回転角を前記中継点とする構成とする。この場合に、前記リンクハブ15の姿勢(θ,φ)から逆変換の変換式により各アーム11a〜13aの回転角を求めるようにしても良い。
【0062】
第2の分割方法は、より具体的には、先端側リンクハブ15のある始点姿勢(折れ角、旋回角)A(θa 、φa )と終点姿勢B(θb 、φb )について、姿勢A、B間を移動する先端側リンクハブ15の経路が、できるだけ最短になるように求める。このとき必要に応じて適切な近似を行うことで経路を求める時間を短縮することができる。始点姿勢Aから終点姿勢Bへの経路を複数の姿勢に分割し、各先端側のリンクハブ15の姿勢N(θn ,φn)から、逆変換アルゴリズムにより各リンクハブの姿勢に対するアーム軸の回転角N(β1n 、β2n、β3n)を得る。なお、前記逆変換アルゴリズムは、例えば、前述の関係式(1)に従って、折れ角θおよび旋回角φから回転角βnを算出する変換である。
リンク姿勢制御は、同期制御部45の制御により、各軸のアクチュエータ3の位置を同期して移動するように行う。
【0063】
第3の分割方法を示す。この方法では、先端側のリンクハブ15のある始点姿勢A(θa,φa)と終点姿勢B(θb,φb)から、それぞれ折れ角θの移動量Δθと旋回角φの移動量Δφが所定の移動量以下となるように等分した先端側の各リンクハブ15の姿勢(θ1,θ2,…θn,φ1,φ2,…φn)(ただし、n:分割数−1)を逆変換の変換式により求め、この求めたリンクハブ15の姿勢(θ1,θ2,…θn,φ1,φ2,…φn)を前記中継姿勢とする。
【0064】
第3の分割方法は、具体的には、先端側のリンクハブ15のある始点姿勢(折れ角、旋回角)A(θa 、φa )と終点姿勢B(θb 、φb )の間にて、折れ角移動量Δθと旋回角移動量Δφを各々等間隔に分割し、先端側のリンクハブ15の複数の姿勢を求める。このとき分割した移動量が所定の移動角度以下となるようにする。次に先端側のリンクハブ15の各姿勢N( θa + n ×Δθ / M、φa + n ×Δφ / M) から、逆変換アルゴリズムによりアーム軸の回転角N(β1n 、β2n、β3n)を得る。ここでN,nは分割した各姿勢のN(またはn)番目を示し、Mは分割数とする。
リンク姿勢制御は、同期制御部45の制御により、各軸の位置を同期して移動するように行う。このように、折れ角θの移動量Δθと旋回角φの移動量Δφが共に所定の移動量以下となるように等分することで、より一層干渉が少なくて過大な負荷が生じない駆動を行うことができる。
【0065】
上記第1,第2,第3のいずれの分割方法の場合においても、姿勢変更制御手段41の同期制御部45は、これらの方法で得た先端側のリンクハブ15のある始点姿勢A(θa 、φa )から終点姿勢B(θb 、φb )への移動経路について、
図7に示すように各アーム軸β1〜β3の回転角βA(β1a 、β2a 、β3a )、回転角βB(β1b、β2b、β3b)への制御は、途中の中継点を加減速なしで位置決め制御することが好ましい。この場合、表3に示す各軸の回転角位置を、同期制御部45の制御により同期して移動するように行う。すなわち、全てのアーム11a〜13aの軸β1〜β3につき、台形速度制御の加速を行う時間(時刻(1) 〜(2) )、および減速を行う時間(時刻(4) 〜(5) )を揃え、例えば時刻(3) 等のように、等速動作を行う間(時刻(2) 〜(4) )に、各中継点を通過するように制御する。
【0067】
このように中継点を加減速なしで位置決め制御することにより、始点姿勢A点から終点姿勢Bまでを一定速度で滑らかに駆動することができる。
【0068】
以上の各実施形態によると、リンク作動装置1を広角に姿勢変更させる場合、駆動途中の各アーム回転角の相対位置関係が、複数のリンク機構の相互の関係で一義的に定まる式(1)を満たす位置から大きく外れることなく位置決め制御させることができ、これにより、リンクに過大荷重をかけず、かつ高速移動が可能になる。