(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、多方弁として用いられる場合であっても、シール性の高い弁部の実現を可能とするソレノイドバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0006】
すなわち、本発明のソレノイドバルブは、
ソレノイドによって、バルブスリーブ内を往復移動する筒状のスプールを有するソレノイドバルブであって、
前記バルブスリーブは、中空内部から側面側に貫通する3つの貫通孔を有しており、これら3つの貫通孔における側面側への開口部が、先端側から後端側の前記ソレノイドに向かって順に、それぞれ流体の出入り口となる第1ポート,第2ポート,第3ポートとして用いられ、かつ中空内部における先端側の端部に開口する開口部が流体の出入り口となる第4ポートとして用いられると共に、
前記バルブスリーブの内周面のうち第1ポートと第2ポートとの間の領域と、前記スプールの外周面とによってスプール弁部が構成されるソレノイドバルブにおいて、
前記バルブスリーブの中空内部のうち前記スプールよりも先端側に設けられ、前記バルブスリーブの内周面に対して密着した状態を維持可能に設けられた筒状の第1弁座部材を備え、第1弁座部材における第1座面と、第1座面に対して着座及び離間可能な前記スプールにおける先端側の端部とによって第1ポペット弁部が構成され、
前記バルブスリーブの内周面のうち第2ポートと第3ポートとの間の領域に設けられ、後端側に向く段差面で構成される第2座面と、第2座面に対して着座及び離間可能に設けられ、かつ前記スプールの外周面に設けられ先端側に向く段差面とによって第2ポペット弁部が構成され、
前記バルブスリーブの中空内部のうち前記スプールよりも後端側に設けられ、前記バルブスリーブの内周面に対して密着した状態を維持可能に設けられた筒状の第2弁座部材を備え、第2弁座部材における第3座面と、第3座面に対して着座及び離間可能な前記スプールにおける後端側の端部とによって第3ポペット弁部が構成されると共に、
第1弁座部材は、前記スプールの移動方向に伸縮可能に構成されることを特徴とする。
【0007】
本発明のソレノイドバルブによれば、4つのポートを備えているので、多方弁として用いることができる。そして、4か所の弁部のうち、3か所をポペット弁部としたので、これらの弁部のシール性を高めることができる。また、第1弁座部材は、スプールの移動方向に伸縮可能なため、第1ポペット弁部と第2ポペット弁部の両方を、同時かつ高いシール性を保った状態で閉じることが可能となる。
【0008】
第1弁座部材は、
前記スプールの移動方向に伸縮可能なベローズ部と、
該ベローズ部よりも後端側に設けられ、かつ、前記バルブスリーブの内周面に摺動自在に設けられた外周面部と、その後端側に第1座面とを有する弁座部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、第1弁座部材をスプールの移動方向に収縮可能にしつつ、バルブスリーブの内周面に対して密着した状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、多方弁として用いられる場合であっても、シール性の高い弁部が実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
(実施例)
図1〜
図3を参照して、本発明の実施例に係るソレノイドバルブについて説明する。
図1は本発明の実施例に係るソレノイドバルブの模式的断面図であり、ソレノイドに通電した状態を示している。
図2は本発明の実施例に係るソレノイドバルブの模式的断面図であり、ソレノイドに通電していない状態を示している。
図3は本発明の実施例に係るスプールについての説明図である。なお、
図3においては、中央にスプールの外観図の一部を示し、左側にXX断面図を示し、右側にYY断面図(
図1中のY1Y1断面図に相当)を示している。
【0014】
<ソレノイドバルブの全体構成>
図1を参照して、本発明の実施例に係るソレノイドバルブ100の全体構成を説明する。ソレノイドバルブ100は、往復動用のアクチュエータとして機能するソレノイド部200と、ソレノイド部200により制御される多方弁として機能するバルブ部300とから構成される。以下の説明においては、適宜、バルブ部300が設けられている側の端部側(
図1〜
図3中左側)を先端側、その反対側(ソレノイド部200が設けられている側)を後端側と称する。
【0015】
ソレノイド部200は、ボビン211と、ボビン211に巻かれ、通電により磁界を発生するコイル212と、コイル212によって発生した磁界により磁気回路が形成される
ことでセンターポスト230の磁気吸着面231に磁気的に吸引されるプランジャ220とを備えている。プランジャ220には、プランジャ220が往復移動する際に受ける流体の抵抗を抑制するために、外周面にスリット221が設けられている。また、プランジャ220の先端側には、プランジャ220と共に往復移動するロッド240が設けられている。このロッド240は、筒状のセンターポスト230の挿通孔232を通って、その先端側がバルブ部300の内部に至るように配置されている。
【0016】
また、ソレノイド部200は、上記の磁気回路を形成するべく、いずれも磁性部材からなる一対のプレート251,252及びケース253も備えている。また、ソレノイド部200は、センターポスト230及びプランジャ220の外周面側に、非磁性部材からなる軸受260も備えている。更に、ソレノイド部200の後端側には、プレート252を一体的に備えたコネクタ部270も備えている。このコネクタ部270には、コイル212に電気的に接続された端子271が設けられている。なお、コネクタ部270とケース253との間の環状隙間はOリングO1によって封止されている。更に、ソレノイド部200には、プランジャ220をセンターポスト230から引き離す方向に付勢するスプリング280が設けられている。
【0017】
<バルブ部>
バルブ部300について、詳細に説明する。バルブ部300は、バルブスリーブ310と、バルブスリーブ310内を往復移動するように構成される筒状のスプール320とを備えている。
【0018】
バルブスリーブ310は、中空内部から側面側に貫通する3つの貫通孔を有している。そして、これら3つの貫通孔における側面側への開口部が、先端側から後端側に向かって順に、それぞれ流体の出入り口となる第1ポートP1,第2ポートP2,第3ポートP3として用いられる。また、中空内部における先端側の端部に開口する開口部が流体の出入り口となる第4ポートP4として用いられる。
【0019】
スプール320は、ロッド240に固定されており、ロッド240と共に往復移動するように構成されている。なお、ロッド240は、スプール320の内側に固定されたアダプター322によって、固定されている。このアダプター322は、ロッド240の外周に嵌着される筒状部322aと、この筒状部322aから突出する3か所の爪部322bとを備えている(
図3参照)。これら3か所の爪部322bがスプール320の内周面に嵌るように構成されている。このような構成により、アダプター322を介してロッド240とスプール320とが固定されている。また、これら3か所の爪部322bは、周方向に間隔を空けて設けられているため、筒状のスプール320における内周面側には、先端側から後端側に至る流路が確保される。
【0020】
そして、スプール320の先端側は、中央部分に比べて外径が大きな第1大径部323により構成されている。また、スプール320の後端側は、第1大径部323よりも更に外径が大きな第2大径部324により構成されている。
【0021】
バルブスリーブ310の内周面のうち、第1ポートP1と第2ポートP2との間の領域には、内周面側に向かって突出した環状突出部311が設けられている。この環状突出部311の内径は、第1大径部323の外径と等しくなるように設計されている。そして、スプール320が往復移動する際には、第1大径部323の外周面が、環状突出部311の内周面に摺動するように構成されている。また、第1大径部323には、中央部分との段差付近における周方向の一部に切欠部323aが設けられている。以上の構成により、バルブスリーブ310の内周面における環状突出部311と、スプール320における第1大径部323の外周面とによって、スプール弁部SVが構成される。
【0022】
バルブスリーブ310の中空内部のうちスプール320よりも先端側には、筒状の金属製の第1弁座部材330が設けられている。この第1弁座部材330は、ベローズ部331と、ベローズ部331の先端側に一体的に設けられた環状の支持部332と、ベローズ部331の後端側に一体的に設けられた環状の弁座部333とから構成される。
【0023】
支持部332は、その外周面がバルブスリーブ310の内周面に密着した状態で固定されている。また、この支持部332の内周面332aの内側は流路を形成しており、その開口部が上述した第4ポートP4としての役割を担っている。そして、弁座部333は、その後端側の外周面部333aがバルブスリーブ310の内周面に摺動自在に設けられている。また、弁座部333は、その後端側に第1座面333bを有している。この第1座面333bは、後端に向かうにつれて拡径するテーパ面で構成されている。そして、スプール320における先端側の端部325は、この第1座面333bに対して着座及び離間可能に構成されている。これら第1座面333bと、スプール320における先端側の端部325とによって、第1ポペット弁部PV1が構成される。
【0024】
バルブスリーブ310の内周面のうち第2ポートP2と第3ポートP3との間の領域には、後端側に向く段差面で構成される第2座面312が設けられている。また、上記の通り、スプール320の後端側は、中央部分に比べて外径が大きな第2大径部324により構成されている。これにより、スプール320における外周面には、先端側に向く段差面326が形成されている。この段差面326は、第2座面312に対して着座及び離間可能に構成されている。これら第2座面312と、スプール320における段差面326とによって、第2ポペット弁部PV2が構成される。
【0025】
バルブスリーブ310の中空内部のうちスプール320よりも後端側には、上述した筒状のセンターポスト230が設けられている。このセンターポスト230は、バルブスリーブ310の内周面に対して密着した状態で固定されている。そして、このセンターポスト230の先端側には第3座面233が形成されている。つまり、このセンターポスト230は、第2弁座部材としての役割を担っている。なお、第3座面233は、先端側に向かうにつれて拡径するテーパ面で構成されている。そして、スプール320における後端側の端部327は、この第3座面233に対して着座及び離間可能に構成されている。これら第3座面233と、スプール320における後端側の端部327とによって、第3ポペット弁部PV3が構成される。
【0026】
なお、バルブスリーブ310の外周面には、ソレノイドバルブ100が所定の取り付け箇所に取付けられた場合に、各流路への流体漏れを抑制するためのOリングO2,O3,O4,O5が装着されている。
【0027】
<ソレノイドバルブの動作説明>
ソレノイドバルブの動作について説明する。上述した4つのポートについては、様々な利用態様が可能である。ここでは、第1ポートP1と第3ポートP3を入力ポートとして用い、第2ポートP2を出力ポートとして用い、第4ポートP4をドレインポートとして用いる場合を例にして説明する。
【0028】
ソレノイド部200におけるコイル212に通電した状態では、プランジャ220がセンターポスト230の磁気吸着面231に磁気的に吸引される。これにより、スプリング280の付勢力に抗して、プランジャ220と共にロッド240及びスプール320が先端側に移動する(
図1参照)。
【0029】
これにより、スプール320における段差面326はバルブスリーブ310の内周面に
設けられた第2座面312に着座した状態となる。つまり、第2ポペット弁部PV2は弁が閉じた状態となる。
【0030】
また、スプール320における先端側の端部325は、第1弁座部材330における弁座部333の第1座面333bに着座した状態となる。つまり、第1ポペット弁部PV1も弁が閉じた状態となる。このとき、第1弁座部材330は、スプール320における先端側の端部325によって先端側に押されるため、ベローズ部331は圧縮した状態となる。
【0031】
また、スプール320における後端側の端部327は、センターポスト230の第3座面233から離間した状態となる。つまり、第3ポペット弁部PV3は弁が開いた状態となる。
【0032】
更に、スプール320における第1大径部323のうち切欠部323aの先端側の端部が、バルブスリーブ310に設けられた環状突出部311よりも先端側に移動する。これにより、スプール弁部SVは弁が開いた状態となる。
【0033】
以上より、入力ポートである第1ポートP1から出力ポートである第2ポートP2に至る流路が開通し、かつ第1ポートP1からドレインポートである第4ポートP4に至る流路は遮断される。また、入力ポートである第3ポートP3から出力ポートである第2ポートP2に至る流路が遮断され、かつ第3ポートP3からドレインポートである第4ポートP4に至る流路は開通される。従って、第2ポートP2から排出される流体の圧力(制御圧)は、第1ポートP1から送られる流体の圧力となる。なお、第3ポートP3から送られる流体は、ドレインポートである第4ポートP4から排出される。
【0034】
ソレノイド部200におけるコイル212に通電しない状態では、スプリング280の付勢力によって、プランジャ220はセンターポスト230の磁気吸着面231から離れる方向に移動する。これにより、スプリング280の付勢力により、プランジャ220と共にロッド240及びスプール320が後端側に移動する(
図2参照)。
【0035】
これにより、スプール320における先端側の端部325は、第1弁座部材330における弁座部333の第1座面333bから離間した状態となる。つまり、第1ポペット弁部PV1は弁が開いた状態となる。このとき、第1弁座部材330は、スプール320における先端側の端部325からの押圧力がなくなるために、ベローズ部331は伸びて元の状態となる。
【0036】
また、スプール320における段差面326はバルブスリーブ310の内周面に設けられた第2座面312から離間した状態となる。つまり、第2ポペット弁部PV2は弁が開いた状態となる。
【0037】
また、スプール320における後端側の端部327は、センターポスト230の第3座面233に着座した状態となる。つまり、第3ポペット弁部PV3は弁が閉じた状態となる。
【0038】
更に、スプール320における第1大径部323が、全周に亘って環状突出部311の内周面に密着した状態となる。これにより、スプール弁部SVは弁が閉じた状態となる。
【0039】
以上より、入力ポートである第1ポートP1から出力ポートである第2ポートP2に至る流路が遮断し、かつ第1ポートP1からドレインポートである第4ポートP4に至る流路は開通される。また、入力ポートである第3ポートP3から出力ポートである第2ポー
トP2に至る流路が開通され、かつ第3ポートP3からドレインポートである第4ポートP4に至る流路は遮断される。従って、第2ポートP2から排出される流体の圧力(制御圧)は、第3ポートP3から送られる流体の圧力となる。なお、第1ポートP1から送られる流体は、ドレインポートである第4ポートP4から排出される。
【0040】
<本実施例に係るソレノイドバルブの優れた点>
本実施例に係るソレノイドバルブ100によれば、4つのポートを備えているので、多方弁として用いることができる。そして、4か所の弁部のうち、3か所をポペット弁部としたので、これらの弁部のシール性を高めることができる。つまり、一般的に、ポペット弁はスプール弁に比べてシール性が高く、第1ポペット弁部PV1,第2ポペット弁部PV2及び第3ポペット弁部PV3のシール性を高めることができる。
【0041】
ここで、本実施例においては、ソレノイド部200におけるコイル212に通電した状態では、第1ポートP1から第2ポートP2に至る流路が開通した状態となる。このとき、第1ポペット弁部PV1と第2ポペット弁部PV2は弁が閉じた状態となっている。従って、出力ポートである第2ポートP2から排出される制御圧を、入力ポートである第1ポートP1から送られる流体の圧力にする場合には、圧力制御の精度について、ポペット弁を用いた場合と同等にすることが可能となる。
【0042】
ここで、第1弁座部材330は、スプール320の移動方向に伸縮可能なため、第1ポペット弁部PV1と第2ポペット弁部PV2の両方を、同時かつ高いシール性を保った状態で閉じることが可能となる。この点について、簡単に説明する。仮に第1弁座部材330が伸縮可能に構成されない場合には、第1ポペット弁部PV1と第2ポペット弁部PV2の両方を同時に閉じた状態にするのは技術的に困難性を伴う。つまり、両方同時に弁を閉じた状態にするためには、スプール320における先端側の端部325からスプール320における段差面326までの距離と、第1座面333bから第2座面312までの距離を等しくしなければ高いシール性を得ることができない。従って、高い寸法精度が要求される。これに対し、本実施例においては、第1弁座部材330は伸縮可能なため高い寸法精度は要求されない。
【0043】
(その他)
上記実施例に示したソレノイドバルブ100において、第3座面233に関しても、スプール320の移動方向に伸縮可能に構成可能な場合には、スプール弁部をポペット弁部にすることが可能となる。