(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記色ずれ補正部は、予め指定された特定のタイミングで、前記被転写体上に形成された、各光ビームに基づいて形成される全色のトナー像を含む色ずれ検出用のパターンに基づいて、各色のトナー像の画像形成位置を、前記基準色トナー像の画像形成位置を基準として移動させる、請求項1又は請求項2記載の画像形成装置。
【背景技術】
【0002】
近年、フルカラー対応の画像形成装置が広く普及している。このようなフルカラー対応の画像形成装置として、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色で個別に形成した画像(トナー像)を重ね合わせることでカラー画像を形成する方式を採用する装置が知られている。その画像形成方式の1つとして、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色のトナー像を別個の画像形成ユニットにより形成するタンデム方式がある。タンデム方式では、CMYKの各色の画像形成ユニットは、転写ベルトの進行方向に沿って配列されており、各画像形成ユニットにて形成されたトナー像が転写ベルトの同じ位置に転写されるように、各画像形成ユニットのトナー像の形成のタイミングが制御される。
【0003】
このように、色ごとに個別に形成された画像を重ね合わせることで1つの画像を形成する画像形成装置では、各色の画像の重ね合わせにずれ(いわゆる、色ずれ)が発生すると形成される画像の品質が著しく低下する。このような色ずれは、各画像形成ユニットにおいて、感光体ドラムに静電潜像を形成する光ビームを案内する光学部品等の位置関係が温度等の周囲環境に応じて変化することで発生する。そのため、この種の画像形成装置では、適宜、転写ベルト上に色ずれ検出用のパターンを形成し、その検知結果に基づいて色ずれ補正を実施している。
【0004】
しかしながら、色ずれ補正は、各色について色ずれ検出用パターンを形成する必要があるため、実行に時間を要する。そのため、色ずれ補正回数が多くなると、色ずれに起因する画像品質の低下を抑制することはできるが、画像形成装置の生産性が大きく低下してしまう。一方、色ずれ補正の実施間隔を長くすると、色ずれに起因する画像品質の低下を抑制することが困難になる。そのため、色ずれ補正に関し、種々の技術が提案されている(特許文献1〜5等)。
【0005】
例えば、特許文献1は、各色に対応する光源から出射された光ビームを単一のポリゴンミラーにより偏向するLSU(Laser Scanning Unit)を備える画像形成装置において、光学素子を共用する色グループについて、各色グループの代表色のみを使用して色ずれ補正を実施する構成を開示している。
【0006】
特許文献2は、複数の作像ユニットのうち、一部の作像ユニットを使用して形成された基準パターンの位置ずれ量と、位置ずれ量記憶部に格納されている全ての色の基準パターンの位置ずれ量とに基づいて、基準パターンが形成されなかった色の基準パターンの位置ずれ量を推定して、色ずれ補正を実施する構成を開示している。
【0007】
特許文献3は、黒色用転写部材と、3色一体のカラー用転写部材とにより黒色印刷とカラー印刷とを切り替える画像形成装置において、黒色とカラー用転写部材中の1色により形成したマークにより色ずれ補正を実施する構成を開示している。
【0008】
特許文献4、5は、黒色とカラー画像形成に使用される色のうちの1色により形成したマークにより粗調整を実施し、粗調整で使用した色を基準色として全色で微調整を実施する構成を開示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。以下では、デジタル複合機として本発明を具体化する。
【0022】
図1は本実施形態におけるデジタル複合機の全体構成の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、複合機100は、画像読取部120及び画像形成部140を含む本体101と、本体101の上方に取り付けられたプラテンカバー102とを備える。本体101の上面にはコンタクトガラス等の透明板からなる原稿台103が設けられており、原稿台103はプラテンカバー102によって開閉されるようになっている。また、プラテンカバー102は、原稿搬送装置110を備えている。なお、複合機100の前面には、ユーザが複合機100に複写開始やその他の指示を与えたり、複合機100の状態や設定を確認したりすることができる操作パネル161が設けられている。
【0023】
原稿台103の下方には、画像読取部120が設けられている。画像読取部120は、走査光学系121により原稿の画像を読み取りその画像のデジタルデータ(画像データ)を生成する。原稿は、原稿台103や原稿搬送装置110に載置することができる。走査光学系121は、第1キャリッジ122や第2キャリッジ123、集光レンズ124を備える。第1キャリッジ122には線状の光源131及びミラー132が設けられ、第2キャリッジ123にはミラー133及び134が設けられている。光源131は原稿を照明する。ミラー132、133、134は、原稿からの反射光を集光レンズ124に導き、集光レンズ124はその光像をラインイメージセンサ125の受光面に結像する。
【0024】
この走査光学系121において、第1キャリッジ122及び第2キャリッジ123は、副走査方向135に往復動可能に設けられている。第1キャリッジ122及び第2キャリッジ123を副走査方向135に移動することによって、原稿台103に載置された原稿の画像をイメージセンサ125で読み取ることができる。原稿搬送装置110にセットされた原稿の画像を読み取る場合、画像読取部120は、第1キャリッジ122及び第2キャリッジ123を画像読取位置に合わせて一時的に静止させ、画像読取位置を通過する原稿の画像をイメージセンサ125で読み取る。イメージセンサ125は、受光面に入射した光像から、例えば、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色に対応する画像データを生成する。
【0025】
生成された画像データは、画像形成部140において用紙に印刷することができる。また、図示しないネットワークインタフェイスによりネットワークを通じて他の機器(図示せず)へ送信することもできる。
【0026】
画像形成部140は、画像読取部120で得た画像データや、ネットワーク等に接続された他の機器(図示せず)からネットワークインタフェイスを介して受信した画像データを用紙に印刷する。
【0027】
図2は画像形成部140の構成の一例を示す概略構成図である。画像形成部140は、いわゆるタンデム方式である。
【0028】
図2に示すように、画像形成部140は、無端状の転写ベルト210(被転写体)と転写ベルト210に沿って並列に配置されたCMYK各色のトナー像を別個に形成する画像形成ユニット201C、201M、201Y、201Kを備える。転写ベルト210は駆動ローラ211と従動ローラ212、213に巻回されている。従動ローラ213は、転写ベルト210の内側から外側へ付勢されており、転写ベルト210に張力を付与している。転写ベルト210は、駆動ローラ211の駆動により矢印214方向に回転する。
【0029】
各画像形成ユニット201C、201M、201Y、201Kは、像担持体である感光体ドラム202を備える。感光体ドラム202は一定速度で一方向に回転する。感光体ドラム202の周囲には、回転方向の上流側から順に、帯電器203、現像器205、転写ローラ206、クリーニング器207等が配置されている。また、各画像形成ユニット201C、201M、201Y、201Kの下方には、露光器204が配置されている。
【0030】
帯電器203は、感光体ドラム202表面(像担持面)を一様に帯電させる。露光器204は、各画像形成ユニット201C、201M、201Y、201Kにおける帯電器203と現像器205との間で、一様に帯電した感光体ドラム202の表面に画像データに応じた光ビームをそれぞれ照射し、感光体ドラム202上に静電潜像を形成する。現像器205は、その静電潜像にトナーを付着させ、感光体ドラム202上にトナー像を形成する。当該トナー像は、転写ローラ206と感光体ドラム202との間の一次転写部208おいて搬送ベルト210に転写される。クリーニング器207は転写ローラ206による転写後に感光体ドラム202の表面に残っているトナーを剥ぎとる。
【0031】
特に限定されないが、本実施形態では、各色の画像形成ユニットは、転写ベルト210の回転方向の上流側から、画像形成ユニット201K、201Y、201C、201Mの順で配置されている。各画像形成ユニットは、この順で転写ベルト210上に各色のトナー像を転写する。各色のトナー像を転写するタイミングを制御することにより、各色のトナー像が転写ベルト210上で順次重ね合わされる。その結果、転写ベルト210上にはカラーのトナー像が形成される。なお、RGB形式のカラー画像は、CMYK形式の画像データに変換され、各色の画像データが露光器204にそれぞれ入力される。
【0032】
露光器204は、画像形成ユニット201K、201Yに対応する光ビームを出射する露光ユニット204aと、画像形成ユニット201C、201Mに対応する光ビームを出射する露光ユニット204bとにより構成される。露光ユニット204a及び露光ユニット204bは同一構造である。露光ユニット204a、204bの構造については後述する。
【0033】
また、画像形成ユニット201Mの下流側かつ二次転写部(転写ベルト210と二次転写ローラ222との間)の上流側には転写ベルト210上に形成されたトナー像の濃度を検知する濃度センサ209が配置されている。濃度センサ209は、例えば、発光部及び受光部を一方面に備える反射型フォトセンサからなり、発光部から出射して受光部へ到達する光の強度に対応してトナー像の濃度を検知する構成を採用することができる。
【0034】
本実施形態では、当該濃度センサ209は、転写ベルト210の幅方向の両端部に設置されており、各画像形成ユニット201C、201M、201Y、201Kの濃度キャリブレーションにも使用される。当該濃度キャリブレーションでは、転写ベルト210上の濃度センサ209と対向する位置に、各画像形成ユニット201C、201M、201Y、201Kによって、例えば矩形状のパッチがそれぞれ形成される。そして、濃度センサ209に検知される濃度が予め指定された濃度となる、画像形成条件(感光体ドラム202の帯電量(帯電器の印加電圧)、露光光の強度、転写ローラ206の印加電圧等)が決定される。当該濃度キャリブレーションは、例えば、所定時間が経過する、あるいは画像形成が所定回数実施されるごとに実行される。なお、このようなキャリブレーションは公知であるためここでの詳細な説明は省略する。
【0035】
画像形成部140は、手差しトレイ151、給紙カセット152、153、154等(
図1参照)から、搬送路220を通じて、転写ベルト210と二次転写ローラ222との間の二次転写部に用紙を給送する。手差しトレイ151や各給紙カセット152、153、154には、様々なサイズの用紙を載置又は収容することができる。画像形成部140は、ユーザの指定した用紙や、自動検知した原稿のサイズに応じた用紙を選択し、選択した用紙を給送ローラにより手差しトレイ151やカセット152、153、154から給紙する。給紙された用紙は搬送ローラやレジストローラ221で二次転写部に搬送される。トナー像が転写された用紙は、定着器225に搬送される。定着器225は、ヒータを内蔵した定着ローラ223及び加圧ローラ224を有しており、熱と押圧力によってトナー像を用紙に定着する。画像形成部140は、定着器225を通過した用紙を排紙トレイ141(
図1参照)へ排紙する。二次転写後、転写ベルト210に残留したトナーは、二次転写部の下流側かつ画像形成ユニット201Kの上流側に配置されたクリーニング器215によって除去される。
【0036】
図3は複合機100が備える露光器204(露光ユニット204a、204b)の構成を示す概略構成図である。各露光ユニット204a、204bは、2つの光源、各光源に対応する入射光学系、1つの回転多面体(ポリゴンミラー)、2つの出射光学系を筐体内に備える。なお、各露光ユニット204a、204bの光学系において、同一の光学部品は同一の素材を使用して構成されている。
【0037】
光源301は、回路基板上に実装されたレーザダイオード(レーザ発振器)により構成されている。回路基板は、外部から入力される画像信号にしたがってレーザダイオードが出射する光ビーム(レーザ光)の強度変調を行う。
【0038】
入射光学系は、コリメータレンズ及びアパーチャを備える光学ユニット302及びシリンダーレンズ303を備える。光源301から出射された光ビームは光学ユニット302のコリメータレンズに入射する。コリメータレンズは、円筒形状のガラスレンズからなり、レーザダイオードから出力された光ビームをコリメータレンズの光軸と一致した平行光に変換して出力する。光学ユニット302を通過した光ビームは、シリンダーレンズ303を通じて回転多面体304の反射面に入射する。なお、レーザダイオードの発光点は、コリメータレンズの焦点に配置されている。
【0039】
回転多面体304は、光源301から出射された光ビームを反射する反射面を備え、当該反射面を移動させることで光源301から出射された光ビームを被走査面である感光体ドラム202の表面において主走査方向に走査させる偏向器として機能する。この例では、回転多面体304は、感光体ドラム202表面における光ビームの鉛直方向に配置された回転軸を有し、当該回転軸が駆動モータにより一方向に回転駆動される。ここでは、回転多面体304は回転軸周りに配置された、6つの同一サイズの矩形状反射面を有する6角柱形状を有している。この露光ユニット204a(204b)では、各光源301から出射された光ビームは、回転多面体304において互いに異なる面に入射する。なお、シリンダーレンズ303は、回転多面体304の反射面上に、光ビームの副走査方向のみを収束させた状態で光ビームを結像する。
【0040】
回転多面体304の回転により偏向された光ビームは出射光学系に入射する。ここでは、出射光学系は、2枚のアクリルレンズ305、306により構成されたfθレンズ及び3枚のミラー307、308、309(
図2参照)を備え、回転多面体304により偏向された光ビームを、感光体ドラム202上の走査速度が略同一となる状態で感光体ドラム202の表面にスポット状に結像させる。各光ビームに対応するfθレンズは、回転多面体304を挟んで相反する状態で配置されている。
【0041】
なお、回転多面体304を駆動する駆動回路は回路基板上に構成され、当該回路基板上に温度検知部310であるサーミスタが配置されている。
【0042】
以上の構成を有する露光ユニット204aでは、画像形成ユニット201Kに対応する光ビームと画像形成ユニット201Yに対応する光ビームとの走査方向は互いに逆方向になる。例えば、
図3において、回転多面体304が時計回りに回転する場合、画像形成ユニット201Kに対応する光ビームの走査方向は、光源301が配置された側面側から光源301が配置されていない側面側に向かう方向になり、画像形成ユニット201Yに対応する光ビームの走査方向は、光源301が配置されていない側面側から光源301が配置された側面側に向かう方向になる。同様に、露光ユニット204bでは、回転多面体304が時計回りに回転する場合、画像形成ユニット201Cに対応する光ビームの走査方向は、光源301が配置された側面側から光源301が配置されていない側面側に向かう方向になり、画像形成ユニット201Mに対応する光ビームの走査方向は、光源301が配置されていない側面側から光源301が配置された側面側に向かう方向になる。
【0043】
以上のような露光器204では、複合機100内で発生する熱等により温度変化が発生すると、入射光学系や出射光学系を構成するレンズやミラー等の光学部品の光学特性が変動する。このような光学部品の光学特性変動に起因して、光ビームの光路にずれが発生する。このような光路のずれは、主として、主走査方向の色ずれとして顕在化する。また、温度変化により、露光器204の筐体に変形が発生することもある。露光器204の筐体に変形が発生すると、入射光学系や出射光学系を構成するレンズやミラー等の光学部品の位置が変動する。このような光学部品の位置変動に起因して、光ビームの光路にずれが発生する。このような光路のずれは、主として、副走査方向の色ずれとして顕在化する。
【0044】
図4は、複合機における制御系のハードウェア構成図である。本実施形態の複合機100は、CPU(Central Processing Unit)401、RAM(Random Access Memory)402、ROM(Read Only Memory)403、HDD(Hard Disk Drive)404及び原稿搬送装置110、画像読取部120、画像形成部140における各駆動部に対応するドライバ405が内部バス406を介して接続されている。ROM403やHDD404等はプログラムを格納しており、CPU401はその制御プログラムの指令にしたがって複合機100を制御する。例えば、CPU401はRAM402を作業領域として利用し、ドライバ405とデータや命令を授受することにより上記各駆動部の動作を制御する。また、HDD404は、画像読取部120により得られた画像データや、他の機器からネットワーク等を通じて受信した画像データの蓄積にも用いられる。
【0045】
内部バス406には、操作パネル161や各種のセンサ407も接続されている。操作パネル161は、ユーザの操作を受け付け、その操作に基づく信号をCPU401に供給する。また、操作パネル161は、CPU401からの制御信号にしたがって自身が備えるディスプレイにユーザが指示を入力するための操作画面を表示する。また、センサ407は、プラテンカバー102の開閉検知センサや原稿台103上の原稿検知センサ、定着器225の温度センサ、搬送される用紙又は原稿の検知センサなど各種のセンサを含む。CPU401は、例えばROM403に格納されたプログラムを実行することで、以下の各手段(機能ブロック)を実現するとともに、これらセンサからの信号に応じて各手段の動作を制御する。
【0046】
図5は、本実施形態の複合機の機能ブロック図である。
図5に示すように、本実施形態の複合機100は、パターン作成部501、調整量検知部502及び色ずれ補正部503を備える。
【0047】
パターン作成部501は、1の露光ユニット(例えば、露光ユニット204a)が出射する1の光ビームに基づいて形成される基準色のトナー像と、当該露光ユニットとは異なる他の露光ユニット(例えば、露光ユニット204b)が出射する光ビームに基づいて形成される調整色のトナー像とにより、転写ベルト210上に色ずれ検出用のパターンを形成する。ここで、両露光ユニットがそれぞれ出射する光ビームの走査方向は互いに異なっている。例えば、基準色がブラックである場合、調整色はマゼンタになる。
【0048】
ここで色ずれ検出用パターンについて説明する。
図6は、従来の色ずれ検出用パターンの一例を示す図であり、
図7は、パターン作成部501が作成する色ずれ検出用パターンの一例を示す図である。
【0049】
図6に示すように、従来の色ずれ検出用パターン601は、転写ベルト210の幅方向(以下、主走査方向という。)の両端部に、上述の濃度センサ209と対向する状態で形成される。色ずれ検出用パターン601は、主走査方向及び転写ベルト210の進行方向(以下、副走査方向という。)に対して45度の角度で傾斜して配置された帯状パターン群611と、主走査方向に沿って配置された帯状パターン群612とにより構成されている。帯状パターン群611及び帯状パターン群612の主走査方向の幅は、同一に設計されている。帯状パターン群611及び帯状パターン群612は、それぞれ各画像形成ユニット201C、201M、201Y、201Kにより形成される同一形状の4つの帯状パターンを含む。この例では、転写ベルト210の下流側から、K(ブラック)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)の順で、帯状パターンが配置されている。帯状パターン群611及び帯状パターン群612において、各色の帯状パターンの間隔は同一に設計されている。
【0050】
以上のような色ずれ検出用パターン601を濃度センサ209で計測すると、色ずれ検出用パターン601の主走査方向の特定の位置(濃度センサ209と対向する位置)の濃度変化が取得される。この濃度変化により、各帯状パターンの位置を検出することができる。
【0051】
色ずれ検出用パターン601では、各色が形成するパターンに相対的な色ずれが発生していない場合、帯状パターン群611及び帯状パターン群612に属する同一色の帯状パターン間の距離(例えば、帯状パターンの中央間の距離)はすべての色において同一になる。また、帯状パターン群612に属する各色の帯状パターン間の距離(例えば、帯状パターンの中央間の距離)は同一になる。すなわち、最も下流側の帯状パターンとの距離が整数倍になる。
【0052】
例えば、帯状パターン群612に属する各色の帯状パターン間の距離が同一であるが、帯状パターン群611及び帯状パターン群612に属する同一色の帯状パターン間の距離が異なる色が存在する場合、当該色のパターンは、主走査方向に色ずれを生じていることになる。この場合、色ずれの方向及び大きさは、基準となる他の色(例えば、ブラック)の帯状パターン間の距離との大小関係及び差により検出することができる。また、帯状パターン群611及び帯状パターン群612に属する同一色の帯状パターン間の距離がすべての色において同一であるが、帯状パターン群612に属する各色の帯状パターン間の距離が異なる場合、当該色のパターンは、副走査方向に色ずれを生じていることになる。この場合、色ずれの方向及び大きさは、基準となる他の色(例えば、ブラック)の帯状パターンとの距離により検出することができる。
【0053】
なお、この例では、帯状パターン間距離の測定確度を向上させる繰り返し測定のために、色ずれ検出用パターン601が副走査方向に繰り返し形成されている。
【0054】
これに対し、パターン作成部501が作成する色ずれ検出用パターン701は、
図7に示すように、基準色と調整色の2色の帯状パターンで構成されている。色ずれ検出用パターン701は、従来の色ずれ検出用パターン601と同様、転写ベルト210の主走査方向の両端部に、上述の濃度センサ209と対向する状態で形成される。
【0055】
色ずれ検出用パターン701は、主走査方向及び副走査方向に対して45度の角度で傾斜して配置された帯状パターン群711と、主走査方向に沿って配置された帯状パターン群712とにより構成されている。帯状パターン群711及び帯状パターン群712の主走査方向の幅は、同一に設計されている。帯状パターン群711及び帯状パターン群712は、基準色であるブラックの画像形成ユニット201K及び比較色であるマゼンタの画像形成ユニット201Mにより形成される同一形状の4つの帯状パターンを含む。この例では、帯状パターン群711、帯状パターン群712の最も下流側の帯状パターンが基準色であるブラックで形成され、他の3つの帯状パターンが比較色であるマゼンタで形成される。帯状パターン群711及び帯状パターン群712において、帯状パターンの間隔は同一に設計されている。なお、この例では、帯状パターン間距離の測定確度を向上させる繰り返し測定のために、比較色の帯状パターンが複数設けられている。
【0056】
以上のような色ずれ検出用パターン701では、上述の従来の4色の色ずれ検出用パターン601において説明した手法と同様の手法により、基準色と比較色との相対的な色ずれの方向及び大きさを検知することができる。
【0057】
上述の構成を有する露光器204では、各露光ユニット204a、204bの温度が同一である場合、各露光ユニット204a、204bにおける光学部品の光学特性変動の大きさや位置変動の大きさは、主走査方向及び副走査方向のいずれにおいても同程度になる。そのため、走査方向が同一方向の光ビーム(例えば、画像形成ユニット201Kに対応する光ビームと画像形成ユニット201Cに対応する光ビーム)の各光路は、温度変化前の状態に対して同一の方向に同程度の大きさでずれることになる。したがって、走査方向が同一方向の光ビームに対応するトナー像間では色ずれは極めて小さくなる。
【0058】
一方、走査方向が逆方向の光ビーム(例えば、画像形成ユニット201Kに対応する光ビームと画像形成ユニット201Mに対応する光ビーム)の各光路は、温度変化前の状態に対して互いに逆方向に同程度の大きさでずれることになる。したがって、走査方向が逆方向の光ビームに対応するトナー像間では色ずれは大きくなる。
【0059】
以上のことから、各露光ユニット204a、204bの温度が同一である場合、走査方向が逆方向の光ビームの間のずれ量(色ずれ量)を検出し、当該色ずれが解消するように光ビームの出射タイミング等を補正することで、全色の色ずれを解消することが可能になる。すなわち、上述の色ずれ検出用パターン701により、基準色(ブラック)に対する比較色(マゼンタ)の色ずれ量を検出し、当該色ずれ量に基づいてマゼンタに対応する光ビームとイエローに対応する光ビームの出射タイミング等を補正することで全色の色ずれを解消することが可能になる。なお、各露光ユニット204a、204bの温度が同一でない場合は、基準色と調整色以外の色に対応する光ビームに温度補正を適用することが好ましい。当該温度補正については後述する。
【0060】
調整量検知部502は、転写ベルト210上に形成された色ずれ検出用パターンに基づいて色ずれ調整量を検知する。本実施形態では、調整量検知部502は、上述した主走査方向の色ずれ量(方向及び大きさ)、副走査方向の色ずれ量(方向及び大きさ)を色ずれ調整量として取得する。
【0061】
色ずれ補正部503は、調整量検知部502に検知された色ずれ調整量に応じて、基準色に対応する光ビームと走査方向が逆方向の光ビームに基づいて形成される各色のトナー像の画像形成位置を、基準色トナー像の画像形成位置を基準として移動させる。当該画像形成位置は、例えば、光源301の光ビーム出射タイミングを調整することで移動させることができる。上述のように、基準色がブラックである場合、基準色に対応する光ビームと走査方向が逆方向の光ビームは、マゼンタに対応する光ビームとイエローに対応する光ビームになる。
【0062】
特に限定されないが、複合機100では、露光器204に入力される画像データは、露光用画像データ入力部511により生成される構成になっている。露光用画像データ入力部511は、例えば、RGB形式の画像データをCMYK形式のデータに変換し、各色の画像データを保持する。本実施形態では、RAM402が露光用画像データ入力部511の画像データ保持領域として機能する。そして、露光用画像データ入力部511は、各色の画像データを露光器204にそれぞれ入力する。
【0063】
図8は、上述した複合機100が実施する色ずれ補正手順の一例を示す図である。当該手順は、例えば、予め指定された時間周期や先の色ずれ補正から所定時間経過したとき等の予め指定された色ずれ補正実施タイミングが到来したことをトリガとして開始する。
【0064】
当該手順が開始すると、パターン作成部501は、露光用画像データ入力部511及び露光器204を通じて、転写ベルト210上に
図7に示す色ずれ検出用パターン701を形成する(ステップS801)。このとき、調整量検知部502は、濃度センサ209が取得した濃度情報に基づいて、上述の手法により、基準色であるブラックと比較色であるマゼンタとの主走査方向の色ずれ量(方向及び大きさ)、副走査方向の色ずれ量(方向及び大きさ)を色ずれ調整量として取得する(ステップS802)。色ずれ調整量を取得した調整量検知部502は、取得した色ずれ調整量を色ずれ補正部503に入力する。
【0065】
当該入力を受けた色ずれ補正部503は、各露光ユニット204a、204bに配置された温度検知部310から、各露光ユニット204a、204bの温度を取得する(ステップS803)。色ずれ補正部503は、取得した各露光ユニット204a、204bの温度に基づいて温度補正が必要か否かを判断する(ステップS804)。
【0066】
当該判定において、各露光ユニット204a、204bの温度が同一である場合、色ずれ補正部503は温度補正不要と判断する(ステップS804No)。ここで、温度同一は、温度が完全に同一である場合だけでなく、実質的に同一とみなせる場合を含む。温度補正不要と判断した場合、色ずれ補正部503は調整量検知部502から入力された色ずれ調整量により、マゼンタに対応する光ビームに基づいて形成されるトナー像の画像形成位置とイエローに対応する光ビームに基づいて形成されるトナー像の画像形成位置をブラックに対応する光ビームに基づいて形成されるトナー像の画像形成位置を基準として移動させる色ずれ補正を実施する(ステップS806)。特に限定されないが、本実施形態では、当該色ずれ補正は、露光器204に露光用画像データを入力する露光用画像データ入力部511に補正値である色ずれ調整量を設定することで実現される。この場合、露光用画像データ入力部511は、設定された色ずれ調整量に応じて光ビームの出射タイミングを調整する等により画像の描画開始タイミングを変更する。なお、各トナー像の画像形成位置は、特段の制限がない限り、相対的に移動させることが可能である。すなわち、基準色のトナー像及び基準色に対応する光ビームと同一の走査方向の光ビームに対応するトナー像の画像形成位置を移動させてもよい。
【0067】
また、各露光ユニット204a、204bの温度が同一でない場合、色ずれ補正部503は温度補正要と判断する(ステップS804Yes)。この場合、色ずれ補正部503は、色ずれ検出用パターン701の作成に使用されていない光ビーム(イエロー及びシアン)に基づいて形成される各色のトナー像の画像形成位置を、前記基準色トナー像の画像形成位置を基準として移動させるための温度補正を実行する(ステップS805)。
【0068】
図9は、調整量検知部502が検知した副走査方向の色ずれ調整量に対して実施する温度補正量(以下、色ずれ温度補正量という。)の温度依存性を示す図である。
図9(a)は、周囲温度が比較的低い特定温度である場合の副走査方向の色ずれ温度補正量の温度依存性を示す図である。
図9(b)は、周囲温度が常温である場合の副走査方向の色ずれ温度補正量の温度依存性を示す図である。
図9(c)は、周囲温度が比較的高い特定温度である場合の副走査方向の色ずれ温度補正量の温度依存性を示す図である。
図9(a)〜
図9(c)において、横軸は、露光ユニット204a(204b)の温度変動量に対応し、縦軸は、副走査方向の色ずれ温度補正量に対応する。なお、
図9(a)〜
図9(c)では、便宜上、温度が上昇する場合のみを示している。また、ここでは、副走査方向の色ずれ温度補正について説明するが、主走査方向の色ずれ温度補正も同様に実施することができる。
【0069】
図9(a)〜
図9(c)から理解できるように、同一の温度変動量であっても、周囲温度が異なると副走査方向の色ずれ温度補正量が異なる。
図9(a)に示す対応関係は、例えば、温度変動量が15℃である場合、当該温度変動により6画素の補正が必要になることを示している。これに対し、
図9(b)に示す対応関係では、温度変動量が15℃である場合、当該温度変動により必要になる補正量は4画素である。また、
図9(c)に示す対応関係では、温度変動量が15℃である場合、当該温度変動により必要になる補正量は3画素である。本実施形態では、色ずれ補正部503に、
図9(a)〜
図9(c)に例示するような、温度変動量と色ずれ温度補正量の対応関係が周囲温度ごとに予め格納されている。色ずれ補正部503は、取得した周囲温度に対応する対応関係を使用して上述の温度補正を実施する。なお、特に限定されないが、本実施形態では、周囲温度は、複合機100の画像形成部140の動作による温度上昇の影響がない任意の位置に配置された温度センサから取得する構成になっている。
【0070】
例えば、周囲温度が常温であり、露光ユニット204bの温度変動量が+10℃であるとする。この場合、色ずれ温度補正量は4画素である。また、このとき、露光ユニット204aの温度変動量が+5℃であるとすると、当該温度変動量に対応する色ずれ温度補正量は3画素である。すなわち、当該状況では、マゼンタは温度変動の影響により、温度変動がない場合に比べて4画素分オフセットしており、イエローは温度変動の影響により、温度変動がない場合に比べて3画素分オフセットしている。調整量検知部502から入力された色ずれ調整量にはマゼンタの4画素分のオフセットが含まれている。そのため、イエローの色ずれ調整量は、マゼンタと同一にするのではなく、4画素−3画素=1画素分のオフセットとすることで、露光ユニット204aと204bとの温度差に起因する色ずれを解消することができる。このような温度補正は、シアンに対応する光ビームに対してもブラックを基準として実施される。
【0071】
以上のような温度補正を完了した色ずれ補正部503は、温度補正後の各色の色ずれ調整量により、マゼンタに対応する光ビームに基づいて形成されるトナー像の画像形成位置、イエローに対応する光ビームに基づいて形成されるトナー像の画像形成位置、シアンに対応する光ビームに基づいて形成されるトナー像の画像形成位置をブラックに対応する光ビームに基づいて形成されるトナー像の画像形成位置を基準として移動させる色ずれ補正を実施する(ステップS806)。
【0072】
図10及び
図11は、以上で説明した色ずれ補正を適用した場合の効果を示す図である。
図10(a)及び
図11(a)が上述の色ずれ補正を適用しない場合の色ずれ量に対応し、
図10(b)及び
図11(b)が上述の色ずれ補正を適用した場合の色ずれ量に対応する。
図10(a)及び
図10(b)が副走査方向の色ずれ量に対応し、
図11(a)及び
図11(b)は主走査方向の色ずれ量に対応する。また、各図において、横軸は、4色を使用した色ずれ検知用パターン601を使用した色ずれ補正からの経過時間に対応し、縦軸は色ずれ量に対応する。なお、各図において、マゼンタ、イエロー、シアンは、それぞれ四角、三角、菱形の記号で示している。
【0073】
図10(a)及び
図11(a)から理解できるように、4色を使用した色ずれ検知用パターン601を使用した色ずれ補正実施時には色ずれがない状態であるが、その後、大きな色ずれが発生している。特に、光ビームの走査方向がブラックとは逆方向であるマゼンタ、イエローで色ずれが大きくなっている。これに対し、
図10(b)及び
図11(b)では、上述の2色を使用した色ずれ検知用パターン701を使用した色ずれ補正により色ずれが適切に抑制できていることが理解できる。
【0074】
以上説明したように、この複合機100では、基準色と調整色との2色を使用した色ずれ検出量パターン701により色ずれ補正を実施するため、色ずれ補正を短時間で実施することができる。また、
図6及び
図7から理解できるように、色ずれ補正において消費されるトナー量も従来に比べて微量となるため、被転写体の表面をクリーニングするクリーニング部の負担も軽減することができる。なお、色ずれ検出量パターン701を使用した色ずれ補正は簡易な色ずれ補正であるため、4色を使用した色ずれ検知用パターン601に比べると、補正精度は低くなる。そのため、色ずれ検出量パターン701のみを使用した色ずれ補正を長期間実施すると、色ずれ抑制効果が低下する可能性がある。そのため、4色を使用した色ずれ検知用パターン601による色ずれ補正を予め指定された特定のタイミングで実施する等、全色についての色ずれ補正を適宜併用することが好ましい。この場合であっても、上述の効果を得ることは可能である。
【0075】
また、複合機100は、温度補正を実施する構成であるため、色ずれの発生をより抑制することができ、画像品質をより向上させることができる。
【0076】
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、特に好ましい形態として温度補正を実施する構成について説明したが、各露光ユニット間で温度差が発生し難い場合には、温度補正を実施しない構成であっても色ずれを抑制することが可能である。
【0077】
また、
図8に示したフローチャートは、等価な作用を奏する範囲において各ステップの順序を適宜変更可能である。例えば、
図8では、各露光ユニットの温度を比較することにより温度補正の要否を判定する構成としたが、このような判定をすることなく常に温度補正を実施する構成であってもよい。この場合、温度補正が不要な場合、色づれ温度補正量がゼロとなるため、同様の効果を得ることができる。
【0078】
加えて、上述の実施形態では、デジタル複合機として本発明を具体化したが、デジタル複合機に限らず、プリンタ、複写機等の任意の画像形成装置に本発明を適用することも可能である。