特許第5976654号(P5976654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976654
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】顕微鏡画像化用の較正目標
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/34 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   G02B21/34
【請求項の数】23
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-531823(P2013-531823)
(86)(22)【出願日】2011年9月29日
(65)【公表番号】特表2013-540286(P2013-540286A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】US2011053818
(87)【国際公開番号】WO2012050942
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年8月20日
(31)【優先権主張番号】61/387,737
(32)【優先日】2010年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598041463
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(72)【発明者】
【氏名】グッドウィン,ポール・シー
【審査官】 瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−117267(JP,A)
【文献】 特開2005−258153(JP,A)
【文献】 特表2003−522973(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0015668(US,A1)
【文献】 特表2007−527326(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0062918(US,A1)
【文献】 特開2008−083069(JP,A)
【文献】 特開平08−285502(JP,A)
【文献】 特開2006−275964(JP,A)
【文献】 特開2008−009184(JP,A)
【文献】 特開昭53−111748(JP,A)
【文献】 特開平09−203865(JP,A)
【文献】 特開平07−168102(JP,A)
【文献】 米国特許第04741043(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0115457(US,A1)
【文献】 特開昭62−145991(JP,A)
【文献】 特開2001−103358(JP,A)
【文献】 特開2003−255424(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0168614(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0150217(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0227937(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0190855(US,A1)
【文献】 特開2007−163461(JP,A)
【文献】 特開2008−216146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 − 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分および第2の部分を含む透明板と、
前記第1の部分上に配設される不透明層と、
前記不透明層に形成される少なくとも1つの較正目標とを備え、各々の較正目標が、前記少なくとも1つの較正目標ならびに前記第2の部分とスライドとの間に配設される試料を画像化するために使用される顕微鏡対物レンズの回折限界未満の寸法を有するいくつかの特徴部を含む、較正装置。
【請求項2】
前記不透明層を前記第1の部分に付着させるために、前記透明前記第1の部分と前記不透明層との間に配設される接着剤をさらに備える、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの較正目標の前記特徴部が、前記第1の部分の表面の一部分を露出する前記不透明層内の穴をさらに備える、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの較正目標の前記特徴部が、前記不透明層内の蛍光ビーズをさらに備える、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの較正目標の前記特徴部が、前記不透明層内の反射ビーズをさらに備える、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記回折限界未満の寸法を有する前記特徴部の各々が、前記顕微鏡対物レンズの前記回折限界未満である直径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記特徴部が、前記少なくとも1つの較正目標を照射するために使用される光の波長未満である直径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
第1の部分および第2の部分を含む透明板と、
前記第1の部分上に配設される不透明層と、
前記不透明層に形成される少なくとも1つの較正目標とを備え、各々の較正目標が、前記少なくとも1つの較正目標ならびに前記第2の部分とスライドとの間に配設される試料を画像化するために使用される顕微鏡対物レンズの回折限界未満の寸法を有するいくつかの特徴部を含む、
顕微鏡カバーガラス。
【請求項9】
前記不透明層を前記第1の部分の表面に付着させるために、前記第1の部分の前記表面と前記不透明層との間に配設される接着剤をさらに備える、請求項8に記載のカバーガラス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの較正目標の前記特徴部が、前記第1の部分の表面の一部分を露出する前記不透明層内の穴をさらに備える、請求項に記載のカバーガラス。
【請求項11】
前記少なくとも1つの較正目標の前記特徴部が、前記不透明層内の蛍光ビーズをさらに備える、請求項に記載のカバーガラス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの較正目標の前記特徴部が、前記不透明層内の反射ビーズをさらに備える、請求項に記載のカバーガラス。
【請求項13】
前記回折限界未満の寸法を有する前記特徴部の各々が、前記顕微鏡対物レンズの前記回折限界未満である直径を有する、請求項に記載のカバーガラス。
【請求項14】
前記特徴部が、前記少なくとも1つの較正目標を照射するために使用される光の波長未満である直径を有する、請求項に記載のカバーガラス。
【請求項15】
顕微鏡カバーガラスを用いて回折限界の顕微鏡画像を較正するための方法であって、
前記顕微鏡カバーガラスは、
第1の部分および第2の部分を含む透明板と、
前記第1の部分上に配設される不透明層と、
前記不透明層に形成される少なくとも1つの較正目標とを備え、各々の較正目標が、前記少なくとも1つの較正目標ならびに前記第2の部分とスライドとの間に配設される試料を画像化するために使用される顕微鏡対物レンズの回折限界未満の寸法を有するいくつかの特徴部を含み、
前記方法は、
前記較正目標を照射するステップと、
前記顕微鏡対物レンズを使用して前記較正目標の部分領域から出力される光を収集するステップであって、前記顕微鏡対物レンズが、各々の特徴部から出力される前記光を色成分に分離する、ステップと、
ある色成分に対する別々の色画像を生成するステップであって、各々の色画像が前記較正目標の異なる色画像を表す、ステップと、
前記部分領域の原像を形成するために前記別々の色画像を組み合わせるステップと、
前記原像に基づいて較正された画像を生成するステップであって、前記較正された画像が、前記部分領域の集束された無歪みの特徴部を示す、ステップと
を含む、方法。
【請求項16】
前記較正目標を照射するステップが、可視スペクトル内の異なる色に関連するいくつかの波長範囲にわたって光を放出する光源を用いて前記較正目標を照射するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記較正目標を照射するステップが、いくつかの光源を用いて前記較正目標を照射するステップであって、各々の光源が、可視スペクトル内の異なる色に関連する波長範囲にわたって光を放出する、ステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
特定の成分に対する別々の色画像を生成するステップが、他の色成分を通過させながら、各々の色成分を別々に検出器の画像平面に向けるステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
特定の成分に対する別々の色画像を生成するステップが、前記別々の色画像を計算機可読媒体に記憶するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記原像に基づいて前記較正された画像を生成するステップが、前記較正された画像を取得するために、前記別々の色画像に関して、画像並進、画像回転、拡大および非線形の幾何学的歪みを遂行するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記別々の色画像に関連する、画像並進、画像回転、拡大および非線形の幾何学的歪みに関連するパラメータデータを計算機可読媒体に記憶するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記回折限界未満の寸法を有する前記特徴部の各々が、前記顕微鏡対物レンズの前記回折限界未満である直径を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記特徴部が、前記較正目標を照射するために使用される光の波長未満である直径を有する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年9月29日に出願された米国仮特許出願第61/246,644号の優先権を主張するものであり、その仮特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、顕微鏡法の画像化技術に関し、詳細には、顕微鏡の倍率を向上させるためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの異なる型の画像化システムが、現代の科学研究において、小型または遠距離の対象の画像を獲得するために採用されており、それらの画像化システムには、超高分解能電子顕微鏡、超高分解能の走査型トンネル(「STM」)および原子間力(「AFM」)の画像化機器、ならびに、多くの異なる型の光学顕微鏡、望遠鏡、および画像生成検知器がある。大多数の型の画像化装置、機器、および技法と同様に、異なる型の顕微鏡法に関連する多くの異なる相反関係および平衡が存在する。例えば、透過型電子顕微鏡法は、固定の薄く切り分けられた試料に関して実施され、したがって、本質的に2次元の非生存の試料に関する使用に制約される。走査型トンネルおよび原子間力の顕微鏡法は、材料の表面の高分解能画像を取得するための非光学的技法であるが、表面より下の試料の体積のナノスケールまたはマイクロスケールの内容物に関する情報を取得するためには使用され得ない。すべての型の顕微鏡法は、分解能制限によりいろいろな点で制約されるが、光学顕微鏡法は、「回折限界」と呼ぶ、おそらくは最もよく知られた分解能制限に関連しており、その回折限界は、従来の可視光の光学顕微鏡法を約200nmの分解能限界に制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過去20年の間、多くは生物学的試料である、蛍光体で標識された試料を、光学蛍光顕微鏡法機器によって、従来の光学顕微鏡法に対する回折限界の分解能より著しく小さな分解能で画像化することを可能にする様々な超分解能技法が開発されてきた。これらの技法は、経時的に蛍光体で標識された試料から放出される蛍光を収集することに基づく。放出する蛍光体が約200nmより大きな距離だけ相互に離隔されているならば、または換言すれば、試料内の蛍光体の位置が従来の光学顕微鏡法により分解可能となるならば、試料内の蛍光体の位置は、ある場合では10nm未満の分解能に対して決定され得る。しかしながら、蛍光放出信号は、放出する蛍光体が試料内部で低密度に配置されるときにのみ解釈され得るので、一般的に多数の中間画像が、蛍光体で標識された対象の超分解能の最終的な画像を構築するために、低密度に配置された蛍光体の異なる組から発生される必要がある。したがって、超分解能画像は、多数の中間画像を発生させるために、比較的弱い信号を蓄積するために必要な時間を犠牲にして取得される。超分解能画像化のために必要な時間は、超分解能画像が構築される元になる比較的弱い信号を収集するために必要な時間の期間にわたって移動し形状を変化する傾向にある生きた細胞の画像化には好都合でない。比較的弱い信号を収集するために必要な時間期間が長いことによって、有害または致命的なレベルの紫外光を含む電磁放射に生存細胞がさらされる結果になる場合もある。超分解能画像化のための十分なデータを獲得するのに必要な時間が、画像化される試料の型に関係のない、重大な実験的制約を表す場合もある。これらすべての理由で、光学顕微鏡の設計および開発、製作を行う者は、回折限界未満で画像を捕捉するためのシステムおよび方法を探索し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、試料の画像が回折限界未満で取得され得るように、顕微鏡画像化パラメータを調整するために、光学顕微鏡とともに使用され得る光学顕微鏡較正装置を対象とする。顕微鏡較正装置は、少なくとも1つの較正目標を含む。各々の較正目標は、顕微鏡対物レンズの回折限界未満の寸法を有するいくつかの特徴部を含む。較正目標のうちの1つの別々の色成分の回折限界の画像が、特定の倍率に対して取得される。画像処理が、色成分画像を組み合わせ、較正目標の集束された歪みのない画像を取得するために使用され得る。較正目標の集束された歪みのない画像を取得するために使用されるパラメータは、同じパラメータを用いて同じ倍率に対して、試料の集束された歪みのない画像を取得するために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】光学顕微鏡較正装置の図である。
図1B】光学顕微鏡較正装置の別の図である。
図1C】光学顕微鏡較正装置のさらに別の図である。
図2】対象平面内の点源から出力される光を受け、対応する画像平面に斑点を発生させるように広げる光学システムを示す図である。
図3図3Aは、理論的な点広がり関数の例の表現を示す図である。図3Bは、理論的な点広がり関数の例の表現を示す図である。
図4】光学システムに関連する回折限界を示す図である。
図5】顕微鏡スライドの表面に固着されることになる較正装置を示す図である。
図6】スライドの表面に付着された較正装置の断面図である。
図7】付着された較正装置を伴うスライドの断面図である。
図8A】可視スペクトル内の広範囲の波長にわたって光を放出する光源を用いる顕微鏡の内部の光路を示す図である。
図8B】較正目標の部分領域内の穴から出力される光のビームの例を示す図である。
図8C】較正目標の部分領域内の穴から出力される光に関連する3つの別々の色成分画像の例を示す図である。
図8D】可視スペクトルの異なる波長範囲内の光を各々が放出する別々の光源を用いる顕微鏡の例を示す図である。
図9図9Aは、較正目標の部分領域に関連する一連の原像の例の表現を示す図である。図9Bは、較正目標の部分領域に関連する一連の原像の例の表現を示す図である。
図10】対物レンズの色収差および回折限界に関して補正するために使用される画像較正の仮想的な例を示す図である。
図11図11Aは、較正された画像を発生させるために原像を較正するときに決定されることになる較正パラメータの図式表現である。図11Bは、較正された画像を発生させるために原像を較正するときに決定されることになる較正パラメータの図式表現である。図11Cは、較正された画像を発生させるために原像を較正するときに決定されることになる較正パラメータの図式表現である。図11Dは、較正された画像を発生させるために原像を較正するときに決定されることになる較正パラメータの図式表現である。
図12】較正目標の部分領域に関連する3次元画像空間内の領域の仮想的な斜視図である。
図13】6つの別々の較正目標を用いる光学顕微鏡較正装置を示す図である。
図14図14Aは、較正装置を伴うカバーガラスの等角図である。図14Bは、較正装置を伴うカバーガラスの上平面図である。
図15図15Aは、顕微鏡スライドに固着される較正物を伴うカバーガラスを示す図である。図15Bは、顕微鏡スライドに固着される較正物を伴うカバーガラスを示す図である。
図16】回折限界未満で試料の画像を取得する方法の流れ図である。
図17】画像処理ステップを実行する典型的な電子計算機システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1A〜1Cは、光学顕微鏡較正装置100の異なる図を示す。図1Aでは、較正装置100は、透明板104上に配設される不透明層102を含む。不透明層102は、装置100のおおよその中心に位置する較正目標106を含む。装置100は、目標106が顕微鏡対物レンズの視野の範囲内に位置するように装置100を布置する助けとなるように、不透明層102の外側表面上に配設されるいくつかの方向矢印108をさらに含み得る。図1Bは、特徴部110の2次元正方格子で構成される較正目標106の拡大された図を示す。他の実施形態では、特徴部108は、特徴部の菱形の、六角形の、長方形の、平行四辺形の、さらには無作為の分布などの他の2次元格子配置を有し得る。特徴部110は、不透明層102に形成される穴であり得る。図1Cは、図1Bに示す線I−Iに沿った、較正装置100の較正目標106の一部分の断面図を示す。断面図により、透明板104の表面上に配設される不透明層102が明らかになり、特徴部110は、層102内部に位置する穴である。図1Cは、層102および透明板104の一部分の拡大された図112を含む。拡大された図112により、透明板104の表面に層102を接着するための薄い接着剤層114が明らかになり、拡大された図112は、穴110が、不透明層102および接着剤層114の高さにおよび、表面に対して実質的に垂直な側部壁を有することを示す。換言すれば、各々の穴110は、接着剤層114が上に配設される透明層104の表面の一部分を露出する。
【0008】
図1Cに示すように、透明板102の厚さTは、約0.1mmから約1.0mmにわたる場合があり、ガラスまたは透明高分子などの任意の適した透明材料で構成され得る。不透明層102の厚さtは、約20nmから約100nm以上にわたる場合があり、金(「Au」)および銀(「Ag」)などの任意の適した不透明材料で構成され得る。接着剤層114は、不透明層102を透明層104の表面に付着させる任意の適した材料で構成され得る。例えば、不透明層102がAuで構成され、透明板104がガラスで構成されるならば、クロム(「Cr」)が、不透明層102をガラス表面に付着させるために使用され得る。
【0009】
図1Bの例に示すように、穴110の格子は、実装密度のより高くない穴の正方格子118により包囲される内側の実装密度の高い穴の正方格子116を含む。図1Cに戻ると、近接する内側の格子穴110間の距離Dは、約2μmから約8μmにわたる場合があり、近接する外側の格子穴間の距離は、約5μmから約15μmにわたる場合がある。穴110の直径dは、約50nmから約190nmにわたる場合がある。穴の直径は、顕微鏡の回折限界未満であるように選択され得ることに留意されたい、ただし、回折限界は約〜λ/2であり、ここでλは光の波長である。例えば、較正装置100の一実施形態では、穴110は、直径が約100nmであり、内側の格子距離が5μmであり、外側の格子距離が約10μmである場合がある。約100nmの直径は、約200nmの分解能限界を有する可視光の光学顕微鏡法の回折限界より十分に小さい。
【0010】
較正装置100は、透明板の表面上に接着剤の層を最初に堆積することにより作製され得る。接着剤は、表面上に接着剤を噴霧または刷毛塗りすることにより堆積され得る。接着剤層が堆積された後、不透明層が堆積される。不透明層が金属または半導体であるならば、不透明層は、プラズマ蒸着もしくは化学蒸着またはウェハ接合を使用して堆積され得る。穴は、実質的に直立した円筒形の壁部を伴う穴を発生させるために、集束イオンビーム加工を使用して不透明層および接着剤層に形成され得る。
【0011】
代替実施形態では、特徴部108は、不透明層102上に配設されるビーズであり得る。ビーズは、直径がdであり、特定の波長の光にさらされるときに蛍光を発する反射ビーズまたは蛍光ビーズであり得る。
【0012】
以下で説明する画像処理と組み合わせた較正装置100は、回折限界未満の状態にある試料の微視的要素の画像を発生させることができる。例えば、画像平面で画像に再編成されることになる入射波面の一部分を収集可能なだけである、顕微鏡などの典型的な回折限界の光学システムを考えてみる。光学システムを通過する光は、直線伝搬から逸脱し、画像平面である程度に広がる。円形の開口部を伴う光学システムが、対象平面内の点源から出力される平面波を受けるとき、対応する画像点が画像平面に存在するのではなく、光は実際には、微弱な環により包囲されるエアリーディスクと呼ぶ、ごく小さな円形の斑点に広がる。エアリーディスクの半径が、近隣の画像の重複、したがって分解能を決定する。図2は、対象平面206内の点源(x,y)204から出力される光を受け、対応する画像平面210に斑点208を発生させるように光を広げる光学システム202を示す。点源204から出力される光は、放射照度I(x,y)を有し、光学システム202により点(x’,y’)212を中心とする斑点208に変換され、対応する放射照度は、斑点208に対する対称的な点広がり関数214により表される。例えば、斑点208などの斑点に対する放射照度分布を表すために使用される、適した点広がり関数は、エアリー関数であり得る。
【0013】
図3Aは、画像平面内部の1次元での理論的な点広がり関数の例の表現を示す。水平軸302は、図2に示す点212などの画像平面内の点(x’,y’)を通過する画像平面内の線である。理論的な点広がり関数は、高く比較的狭い中心ピーク304を有し、高さが減少する2次ピーク305〜314が、中心ピークから離れて両方向に延在する。曲線の高さは強度に対応し、水平軸302は、出力画像平面での原点からの直線距離に対応する。図3Bは、3次元空間での点広がり関数の表現を与え、2つの水平軸316および318が、画像平面の平面内にあり、点(x’,y’)で交わり、点広がり関数の表面上の任意の点での高さは、画像平面上の対応する位置で観測される強度に対応する。光学システムにより発生されるインパルス応答関数の画像は、点広がり関数の中心ピークに対応する中心の明るい平円形であり、中心ピークを包囲する環または隆起に対応する、半径が増大する同心環を伴うように見える。
【0014】
図4は、光学システムに関連する回折限界を示す。距離s 406だけ離隔された対象平面内の2つの点(x,y)402および(x,y)404を考えてみる。光学システムから出力されるこれらの2つの点の画像が、画像点(x’,y’)および(x’,y’)を中心とする、2つの点広がり関数408および410である。点源402および404からの、放射照度分布が画像平面での点広がり関数408および410により表される斑点への光の広がりは、回折に関係する現象である。sが十分に大きく、そのため、画像平面での点広がり関数408および410の中心間の対応する距離s’ 412が、曲線414により図4に表される2つの点広がり関数の和が明確に二峰性のままであるように点広がり関数を離隔する場合、画像平面内の点402および404の画像は相互に区別され得る。これに対して、対象平面内の2つの点416および418が、十分に小さな距離s 420により離隔され、そのため、画像平面内の2つの点422および424の対応する画像が重複し、曲線426により表される2つの点広がり関数の和が単一のピークに合体する場合、2つの点416および418は画像平面で相互に区別され得ない。従来の光学顕微鏡法に関する最小間隔または最大分解能は、一般に次式のように考えられる。
【0015】
【数1】
【0016】
ただし、
θは、光学システムに入射する、または光学システムから出射する光の最大の円錐体の半角であり、
λは、光の波長であり、
ηは、光学システムが動作している媒体の屈折率であり、
NAは、顕微鏡対物レンズの開口数である。
【0017】
入力画像での最小間隔または最大分解能は、右方の点広がり関数の最初の左方の零点が左方の点広がり関数の最初の右方の零点に一致する、点広がり関数間の間隔に対応する。画像化され得る特徴部の最小離隔距離または最大分解能は、光学顕微鏡法システムに関しては約200nmに対応する。最小間隔または最大分解能は「回折限界」と呼ばれるが、その理由は、画像平面内の点源の点広がり関数画像が回折の結果として生起するからである。
【0018】
図4を参照して考察される回折限界は、光学顕微鏡法を使用して取得される試料の画像に対する絶対的な分解能限界ではない。回折限界未満で取得される較正目標100の拡大された画像が、画像処理較正パラメータを取得するために様々な画像化技法を使用して処理され得るものであり、その画像処理較正パラメータは、やはり回折限界未満での倍率分解能を用いて試料の画像を調整するために使用され得る。回折限界未満での倍率分解能を用いて試料の画像を調整するために使用され得る1組の較正パラメータを決定するために、較正目標100がどのように使用され得るかの、図5〜11を参照する説明が次に与えられる。
【0019】
図5は、顕微鏡スライド502の表面に固着されることになる較正装置100を示す。図5では、較正装置100は、不透明表面102がスライド502の表面504に面するように布置される。スライド502および透明板104の屈折率と実質的に整合する屈折率を有する光学ゲル506が、不透明表面102とスライド502の表面504との間に配設される。例えば、透明板104およびスライド502は、屈折率が1.52のガラスで構成される場合があり、光学ゲル506は、やはり屈折率が1.52の材料で構成される場合がある。図6は、較正装置100の縁部に沿って位置する接着剤602を使用してスライド502の表面に付着された較正装置100の断面図を示す。接着剤602は、スライド502の研磨された表面などの研磨された表面に接着可能である、トシルアミド−ホルムアルデヒド樹脂などの高分子接着剤であり得る。
【0020】
次いでスライド502および較正装置100は、較正装置100が顕微鏡対物レンズに面し、スライド502が顕微鏡光源に面する状態で顕微鏡載物台上に置かれる。図7は、光学顕微鏡の顕微鏡対物レンズ702を用いる観察のために布置された、付着された較正装置100を伴うスライド502の断面図を示す。図7では、液浸油704が、透明板104と対物レンズ702との間に配設される。液浸油704は、透明板104およびスライド502の屈折率と実質的に整合する屈折率を有する。光706が、対物レンズ702に対向して位置する照射源から出力される。光706は、スライド502および較正目標106を通過する。図7に示すように、対物レンズ702は、較正目標106の少なくとも一部分を通過する光が、破線708および710により規定される対物レンズの視野の範囲内に入るように布置される。図7は、液浸油対物レンズとともに較正装置100を使用することを限定することは意図されない。較正装置100は、空気媒体中で作動する対物レンズおよび水媒体中で作動する対物レンズなどの、他の型の顕微鏡対物レンズとともに使用され得る。
【0021】
較正装置100は、多くの異なる種類の光源とともに使用され得る。例えば、適した光源には、白熱光、ハロゲン灯、または可視スペクトル内の広範囲の波長にわたって光を放出する任意の発生源がある。他の適した光源には、可視スペクトルの青色、緑色または赤色帯域などの可視スペクトル内の狭い波長帯域にわたって光を放出する、発光ダイオード(「LED」)およびレーザがある。
【0022】
図8Aは、ハロゲン灯などの、可視スペクトル内の広範囲の波長にわたって光を放出する光源を用いる顕微鏡の内部の光路を示す。多くの異なる型の顕微鏡および対応する光路が存在する。図8Aは、顕微鏡のすべての異なるよく知られた変形の範囲内で光路を表すことは意図されず、また図8Aは、顕微鏡のすべての様々な構成要素を表すものでもない。図8Aは、回折限界未満で得られる試料の画像を処理するために使用され得る画像処理パラメータを取得するために較正装置100を使用する顕微鏡画像化に適用されるような、顕微鏡法の一般的な原理を示すことが意図される。図8Aでは、スライド502および較正装置100は、透明板104が顕微鏡対物レンズ804に面し、光源806がスライド502に対向して布置される状態で載物台802上に配設される。点線の方向矢印808は、光源806から放出される光を表す。光源806は、白熱光、ハロゲン灯、または可視スペクトル内の広範囲の波長にわたって光を放出する任意の光源であり得る。光源802から放出される光は、スライド502および較正装置100を通過する。より低い倍率の対物レンズが、顕微鏡対物レンズの光軸の途中に較正目標106の少なくとも一部分を置くために、(図1に示す)板100の方向矢印108の位置を突き止めるために使用され得る。より高い倍率の対物レンズ804が選択され、対物レンズ804および/または載物台802が、較正目標106の部分領域の拡大された画像を取得するためにz方向810に布置される。
【0023】
図1を参照して上記で説明したように、較正目標106を構成する穴の直径(例えば、〜約100nm)は、光源806から放出される可視光の波長未満であり(すなわち、可視光は約380nmから約750nmにわたる)、回折限界(すなわち、〜約200nm)未満である。較正目標106内の各々の穴を通過する光は、ビームが対物レンズ804に入射する際に広がる光の狭いビームとして出力される。較正目標106内の穴から出力される光の各々のビームは、対物レンズ804により収集され、対物レンズ804の色収差および回折限界が原因で歪みを受ける。その結果、較正目標106内の穴から出力される光の各々のビームは、穴から出力されるビームのスペクトルを含む発散性の異なって色付いたビームに分離される。色収差は光学的歪みの典型であり、レンズが、レンズを通過するすべての波長の光を同じ収束点に集束させることができないというものである。色収差は、レンズが、光の異なる波長に対して異なる屈折率を有することに起因する。典型的な対物レンズは、色収差に対してある程度の補正をもたらす被膜またはレンズコーティングを含む。図8Bは、較正目標106の部分領域811内の穴から出力される白色光のビームの例を示す。部分領域811は、破線の囲み120により図1Bで特定され、対物レンズ804の視野の範囲内に入る較正目標106の例の一部分を表す。図8Bの例では、(図8Aに示す)対物レンズ804はブロックにより表され、方向矢印812は、部分領域811内の穴814から出力される光のビームの方向を表す。光のビーム812が対物レンズ804を通過する際、対物レンズ804を構成するレンズが、ビーム812を異なる色付いたビームに分離する色収差を生出し、各々のビームは、ビーム812の本来の経路から発散し、各々のビームは、ビーム812を構成する光の色スペクトル内の異なる色成分である。例えば、異なって模様付けされた方向矢印816〜818は、ビーム812の青色、緑色および赤色だけの色成分ビームを表す。異なる色付いたビーム816〜818は、対物レンズ804の色収差および回折限界が原因でビーム812の経路から発散する。
【0024】
図8Aに戻ると、顕微鏡は3つの二色鏡820〜822を含み、それらの二色鏡は、可視スペクトル内の青色、緑色および赤色の波長範囲を対応する検出器824〜826に反射するように構成され、それらの検出器は、画像処理のために、図17を参照して以下で説明する計算機システムなどの計算機システム827に接続される。方向矢印828〜830は、特定の倍率に対する部分領域811の画像の青色、緑色および赤色の色成分を表す。二色鏡820は、赤色および緑色の波長範囲内の光を通過させ、青色の波長範囲内の光を検出器824の画像平面に反射し、二色鏡821は、赤色の波長範囲内の光を通過させ、緑色の波長範囲内の光を検出器825の画像平面に反射し、二色鏡822は、赤色の波長範囲内の光を検出器826の画像平面に反射する。その結果、検出器824は部分領域811の画像の青色成分を捕捉し、検出器825は部分領域811の画像の緑色成分を捕捉し、検出器826は部分領域811の画像の赤色成分を捕捉する。これらの3つの別々の画像は、穴から出力される光の青色、緑色および赤色の色成分の、青色、緑色および赤色の画像であり、同じ倍率に対して捕捉され、画像処理のために計算機システム827に送出される。3つの別々の青色、緑色および赤色の画像は、同じ倍率に対して同時または異なる時間に捕捉され得る。例えば、画像が同じ倍率に対して異なる時間に捕捉されることになるならば、二色鏡および対応する検出器のうちのただ1つが、対応する色画像を捕捉する時間に使用される。
【0025】
図8Bを参照して上記で説明したように、対物レンズ804によって、較正目標106内の穴から出力される光のビームが、発散性の色成分に離隔するので、別々の青色、緑色および赤色の画像で表される穴は位置合わせされていない。図8Cは、図8Bに示す部分領域811の3つの別々の青色、緑色および赤色の画像の例の表現を示す。図8Bを参照して上記で説明したように、対物レンズ804によって、各々の穴から出力される光ビームが、色付いた光の別々の発散性のビームに分離する。図8Cの例の表現では、青色、緑色および赤色の画像831〜833は、較正目標106の特定の倍率に対する、図8Aを参照して上記で説明したような検出器824〜826により捕捉される画像を表す。別々の画像831〜833内の斑点は、対応する色付いたビームが発散するので位置合わせされていない。例えば、図8Cに示すように、方向矢印834は、穴814から出力される光ビーム812の経路を表し、破線円835〜837は、光ビーム812の画像が画像831〜832の各々で位置することになる場所を表す。しかしながら、対物レンズ804の色収差および回折限界が原因で、3つの別々の青色、緑色および赤色の成分画像内の斑点が発生される。穴814から出力される光の青色成分は、青色画像831内の青色斑点840により表され、穴814から出力される光の緑色成分は、緑色斑点841により表され、穴814から出力される光の赤色成分は、赤色画像833内の赤色斑点842により表される。3つの画像831〜833は、組み合わされた原像844を発生させるために処理器828により和がとられる。原像844は、特定の倍率に対する、部分領域811の穴から出力される光の各々のビームの青色、緑色および赤色だけの成分の単一の画像である。例えば、破線円846は、穴814から出力される光が画像844内に現れることになる斑点を表すが、対物レンズ804の色収差および回折限界が原因で、穴814から出力される光は、青色、緑色および赤色の斑点840〜842としての画像844での3つだけの成分色表現を伴う成分色に分離される。青色、緑色および赤色の斑点は、別々の画像831〜833では位置合わせされていないが、各々の斑点は、特定の倍率に対する、対応する穴から出力される光の色成分の集束された無歪みの画像である。例えば、画像831〜833内の青色、緑色および赤色の斑点840〜842は、各々、ビーム812の青色、緑色および赤色だけの色成分の集束された無歪みの別々の画像である。
【0026】
上記で説明したように、較正装置は顕微鏡とともに使用され得るものであり、顕微鏡は、LEDおよび/またはレーザの組み合わせで構成される光源を使用し、各々のLEDまたはレーザは、可視スペクトルの異なる狭い波長範囲内の光を放出する。図8Dは、別々の青色、緑色および赤色の光源で構成される光源850を用いる顕微鏡の例を示す。図8Dに示す顕微鏡は、図8Aを参照して上記で説明した顕微鏡と同様であり、ただし、3つの二色鏡820〜822は、部分鍍銀鏡851、半鍍銀鏡852、鏡853、ならびに対応する青色、緑色および赤色の色フィルタ855〜857により置換される。発生源850は、図8Aおよび8Bを参照して説明したように、可視スペクトルの狭い青色、緑色および赤色の波長帯域内の光を出力し、その光は、較正板100の較正目標内の各々の穴を通過し、対物レンズ804により収集かつ集束される。部分鍍銀鏡851は、対物レンズ804から出力される光のほぼ1/3を、狭い青色波長帯域内の光だけを通過させるフィルタ855に向けて反射し、一方で光のほぼ2/3は、半鍍銀鏡852の方に鏡851を通過する。鏡852は、鏡851を透過された光のほぼ半分を、狭い緑色帯域だけを通過させるフィルタ856に向けて反射する。鏡852を透過された光は、鏡853により、狭い赤色帯域内の光を通過させるだけであるフィルタ857に向けて反射される。検出器824〜826は、図8Aおよび8Cを参照して上記で説明したように、部分領域811の青色、緑色および赤色の画像を捕捉する。
【0027】
図8A〜8Dの例では、対物レンズ804から出力される光の青色、緑色および赤色の成分が使用されているが、その理由は、青色、緑色および赤色の成分が、種々の異なる色付いた画像を生成するように異なる放射照度と組み合わされ得る原色であるからである。あるいは、青色、緑色および赤色以外の色を生成し、反射し、透過させる、他の型の光源、二色鏡およびフィルタが、対物レンズから出力される光の異なる色成分画像を捕捉するために使用され得る。
【0028】
顕微鏡は、試料と顕微鏡対物レンズとの間の一連の対象平面を画像化するために使用されることが多い。この動作は、対物レンズにより形成される画像の3次元画像空間を一体で表す1組の画像平面を発生させるために使用され得る。図9Aは、較正目標106の部分領域811に関連する一連の原像901〜908の例の表現を示す。原像901〜908の各々は、部分領域811の異なる集束を使用して取得され、原像901〜908は、部分領域811内の穴の各々から出力される成分光ビームの3次元画像空間を形成する。x軸およびy軸として図示される方向矢印910および911は部分領域811の平面を表し、方向矢印914は部分領域811の上方の原像901〜908の上昇を表し、各々の原像は部分領域811の異なる対象平面と関連する。画像空間によって、部分領域811内の各々の穴から出力される光の青色、緑色および赤色の光成分を対物レンズ804が集束させる場所が明らかになる。図9Bは、対物レンズ804を使用して生出される画像空間内の、図9Aに示す領域916の仮想的な斜視図を示す。斑点918〜920は、部分領域811内の穴から出力される光の単一のビームの別々の青色、緑色および赤色の成分の、別々の青色、緑色および赤色の焦点を表す。斑点918〜920は、対物レンズ804に関連する3次元画像空間内の異なる点を中心とする別々の焦点に、対物レンズ804が青色、緑色および赤色の成分をどのように集束させるかを表す。
【0029】
次いで、較正目標106の原像が、較正された画像および関連する画像較正パラメータを取得するために様々な画像化技法を使用して処理され得るものであり、その画像較正パラメータは、回折限界未満での倍率分解能を用いて試料の画像を処理するために使用され得る。較正パラメータを取得するために使用され得る、適した顕微鏡画像化技法の例は、米国特許出願第12/751,816号で説明されている高密度確率的サンプリング画像化(dense stochastic−sampling imaging)(「DSSI」)であり、その米国特許出願は、2010年3月31日に出願され、Applied Precision,Inc.、GE Healthcare companyにより所有され、参照により本明細書に組み込まれている。DSSIの詳細は、第12/751,816号の特許出願で説明されているので、較正目標100の原像に適用されるようなDSSIを使用して取得される画像較正パラメータの概観を次に提供する。
【0030】
図10は、対物レンズの色収差および回折限界に関して補正するために、画像較正がどのように使用され得るかの仮想的な例を示す。図10では、画像1002は、図8を参照して上記で説明したように取得されている部分領域811の特定の倍率に対する原像を表す。異なって陰影付けされた斑点の各々の3つ組は、特定の倍率に対する対物レンズ804の青色、緑色および赤色の斑点を表す。例えば、図10は、青色、緑色および赤色の斑点1006〜1008の拡大図1004を含む。青色、緑色および赤色の斑点1006〜1008は、部分領域811内の穴から出力される光の単一のビームの青色、緑色および赤色の成分色の画像を表す。対物レンズ804の色収差および回折限界によって、較正目標内の穴から出力される光の各々のビームが色成分ビームに離隔するが、色成分に関連する各々の斑点は、穴から出力される光のその色成分の拡大された、集束された無歪みの画像である。例えば、青色、緑色および赤色の斑点1006〜1008は、各々、特定の倍率に対する、部分領域811内の対応する穴から出力される光の青色、緑色および赤色の成分の拡大された、集束された無歪みの画像である。これらの3つの別々の成分は、対物レンズ804の色収差および回折限界が原因で、画像1002により表される画像平面内の異なる空間的場所に置かれる。画像較正では、部分領域811の較正された画像1010を発生させるために、各々の穴から出力される光に関連する色成分斑点を組み合わせるために、画像1002の空間的パラメータを調整する。較正された画像1010は、部分領域811の拡大された画像を表し、斑点1012などの各々の斑点が、部分領域811内の各々の穴から出力される光の拡大された、集束された無歪みの画像を表す。画像1010内の各々の斑点は、原像1002内の対応する色成分斑点を組み合わせるためにDSSIを使用して生成され得る。例えば、図10は、斑点1012の拡大図1014を含み、斑点1012は、較正された画像1010内の無歪みの白色斑点として現れ、青色、緑色および赤色の斑点1006〜1008を組み合わせることにより発生される。換言すれば、原像1002内の色成分斑点の各々の組は、較正された画像1010内の単一の斑点を発生させるために組み合わされ、較正された画像1010内の斑点が、直径が対物レンズ804の回折限界未満である穴から出力される光の拡大された図であるとしても、較正された画像1010内の各々の斑点は、集束している(すなわち、対物レンズ804の色収差および回折限界が原因の歪みがない)ように見える。
【0031】
図11A〜11Dは、原像1002から較正された画像1010を発生させるために調整される較正パラメータの図式表現を示す。較正は、画像並進、画像回転、拡大、および非線形の幾何学的歪みの組み合わせを含み、それらは、部分領域811内の各々の穴に関連する色成分斑点を組み合わせるために使用される。図11Aは、較正装置100内の穴を透過される光の画像を表す単一の集束された無歪みの斑点1104を形成するために、3つの別々の青色、緑色および赤色の画像に関連する、青色、緑色および赤色の斑点1101〜1103を較正でどのように組み合わせるかの例の表現を示す。図11Aに示すように、斑点1101〜1103は、それぞれガウス分布1105〜1107により表される強度プロファイルを有する。較正は、強度ピークの座標および大きさを調整するために、並進、回転、拡大、および幾何学的歪みを使用する処理であり、その結果、強度ピークは、関連する強度プロファイル1108を伴う斑点1104を発生させるように位置合わせされる。図11B〜11Cは、X、Y、およびZ座標により特徴付けられる3次元デカルト座標基準枠に関する、画像並進および回転の例を示す。図11Bは、較正目標内の同じ穴に関連する色成分斑点を位置合わせするために、別々の原像の青色、緑色および赤色の色成分画像1110〜1112の各々を基準枠の範囲内で並進させる例を表す。方向矢印1114〜1116などの方向矢印は、色成分画像の各々が基準枠内で並進され得る3つの異なる方向を表す。図11Cは、同じ穴に関連する色成分斑点をさらに位置合わせするために、別々の原像の青色、緑色および赤色の色成分画像1110〜1112の各々を基準枠座標に関して回転する例を表す。方向矢印1118〜1120は、同じ穴に関連する色成分斑点をさらに位置合わせするために、基準枠に対して回転されている、画像平面1110に関連する直交のx、y、およびzの局所座標を表す。非線形の幾何学的歪みはデジタル画像処理技法であり、色成分画像の一部分が、同じ穴に関連する色成分斑点をさらに位置合わせするためにデジタル的に操作される。図11Dの例では、画像1110〜1112の3つの重複する部分領域1122〜1124の非線形の歪みは、それぞれ、同じ穴に関連する斑点を位置合わせするために歪まされ、焦点深度依存であり得る。例えば、部分領域1122〜1124の並進、回転、拡大での調整、および歪みが、同じ穴に関連する斑点1125〜1127を位置合わせする。
【0032】
3次元画像空間を形成する原像は、色成分の焦点を共通の焦点に偏移させるために、並進され、回転され、局所的に曲げられ得る。図12は、図9Bに示す領域916の仮想的な斜視図を示す。較正は、青色、緑色および赤色の焦点918〜920を単一の焦点1202に偏移させるために使用され得るものであり、単一の焦点1202は、対物レンズ804の色収差および回折限界が原因の歪みがない場合の、部分領域811内の穴から出力される光のビームの焦点に対応する。
【0033】
代替実施形態では、較正装置を1つだけの較正に限定するのではなく、較正装置は任意の数の較正目標を含むことができ、特徴部は、各々の較正目標に対して変動される、または同じである。図13は、6つの別々の較正目標1301〜1306を用いる光学顕微鏡較正装置1300を示す。各々の近接する対の較正目標は、装置1300の不透明層1310に塗布または食刻される間隔部1308などの間隔部により離隔される。較正目標1301〜1306は、特徴部の複数の大きさを有し得る、または較正目標1301〜1306は、特徴部の複数の大きさの任意の組み合わせを有し得る。例えば、較正目標1301〜1303が、直径が約90nmの不透明層1310内の穴で構成され得る一方で、較正目標1304〜1306は、直径が約110nmの穴で構成され得る。
【0034】
1つまたは複数の較正装置は、較正パラメータの決定に続いて、顕微鏡対物レンズの視野に試料を簡単に滑り込ませ、試料の画像を処理するために較正パラメータを使用することにより、回折限界未満で試料を画像化することを可能にするように、カバーガラスに形成される場合もある。図14A〜14Bは、カバーガラスの一部分に形成される較正装置1402を伴うカバーガラス1400の等角図および上平面図を示す。較正装置1402は、上記で説明した較正装置100と同じ様式で構成される較正目標1406および方向矢印1408を含むが、透明板104を含む較正装置100とは異なり、較正装置1402は比較的大きな透明板1404を含む。板1404の第1の領域は較正装置1402専用であり、板1404の第2の領域1410は試料を受けるために無被覆である。較正装置1402は較正装置100と同じ様式で使用されるが、カバーガラス1400の残りの無被覆領域1410は、顕微鏡を使用して観察されることになる試料を覆って置かれ得る。
【0035】
図15Aは、顕微鏡スライド1502の表面に固着されることになる較正装置1402およびカバーガラス1404を示す。図15Aでは、較正装置1402は、較正装置1402の不透明表面がスライド1502の表面1504に面するように布置される。スライド1502およびカバーガラス1404の屈折率と実質的に整合する屈折率を有する光学ゲル1506が、不透明表面と表面1504との間に配設され、試料1508が、カバーガラス1404の無被覆領域1410上に置かれる。図15Bは、図15Aに示す線II−IIに沿う、スライド1502の表面1504に付着されたカバーガラスの断面図を示す。カバーガラス1400の縁部に沿って位置する接着剤1510が、カバーガラス1400をスライド1502に固着させるために使用され得る。接着剤1510は、研磨された表面1504などの研磨された表面に接着可能である、トシルアミド−ホルムアルデヒド樹脂などの高分子接着剤であり得る。
【0036】
図16は、回折限界未満で試料の画像を取得する方法の流れ図を示す。ブロック1601では、図8Aおよび8Dを参照して上記で説明したように、較正目標が光源を使用して照射される。ブロック1602では、図8Aおよび8Dを参照して上記で説明したように、較正目標の部分領域から出力される光が、顕微鏡対物レンズを使用して収集される。ブロック1603では、図8Aおよび8Cを参照して上記で説明したように、対物レンズから出力される光のある色成分に対する目標の別々の色画像が生成される。ブロック1604では、図8Cを参照して上記で説明したように、別々の色画像が、原像を形成するために組み合わされる。ブロック1605では、DSSIなどの映像処理を使用して原像に基づいて較正された画像が生成される。較正された画像1010などの較正目標の較正された画像を発生させるために、原像1002などの較正目標の原像を調整するために使用される倍率および画像較正パラメータが記憶される。較正目標の画像倍率および関連する較正パラメータが保存され、それによって、実際の試料が特定の倍率を使用して画像化されるときに、関連する較正パラメータが試料の回折限界の画像を調整するために使用され得る。
【0037】
図17は、DSSIまたは別の適した画像処理方法の画像処理ステップを実行する典型的な電子計算機システムを示す。計算機システムは、1つまたは複数の中央処理装置(「CPU」)1702〜1705と、CPU/メモリ−部分システム母線1710または複数の母線によりCPUに相互接続される、1つまたは複数の電子メモリ1708と、CPU/メモリ−部分システム母線1710を、追加的な母線1714および1716、または複数の高速シリアル相互接続を含む他の型の高速相互接続媒体に相互接続する第1のブリッジ1712とを包含する。これらの母線またはシリアル相互接続は同様に、CPUおよびメモリを、グラフィック処理器1718などの専用処理器に、および1つまたは複数の追加的なブリッジ1720に接続し、ブリッジ1720は、高速シリアルリンクに、または制御器1727などの複数の制御器1722〜1727に相互接続され、それらの制御器は、計算機可読媒体1728などの様々な異なる型の計算機可読媒体、電子表示装置、入力装置、ならびに他のそのような構成要素、下位構成要素、および計算資源へのアクセスをもたらす。計算機可読媒体1728は、実行用のCPUに対する命令を提供することに関与する任意の適した媒体であり得る。例えば、計算機可読媒体1728は、ファームウェア、光ディスク、フラッシュメモリ、磁気ディスク、または磁気ディスク装置などの不揮発性媒体であり得る。画像処理は、分散型計算機システム上で実装される場合もあり、部分的にハードウェア論理回路網で実装される場合もある。
【0038】
前述の説明では、解説目的で、本開示の徹底した理解をもたらすために具体的な専門語を使用した。しかしながら、本明細書で説明したシステムおよび方法を実践するために具体的な詳細は必要とされないことは、当業者には明らかであろう。具体的な例の前述の説明は、例示および説明の目的で提示される。それらの説明は、本開示に関して網羅的であること、または説明した正確な形態に本開示を限定することは意図されない。明らかに、多くの修正および変形が上記の教示に鑑みて可能である。それらの例が示され、説明されるのは、本開示の原理および実践的な用途を最良に解説するためであり、そのことによって他の当業者が、企図される特定の使用に適するような様々な修正によって本開示および様々な例を最良に利用することを可能にするためである。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により定義されることが意図される。
図1C
図13
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図14
図15
図16
図17