特許第5976661号(P5976661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

特許5976661PD1を調節するための方法および組成物
<>
  • 特許5976661-PD1を調節するための方法および組成物 図000012
  • 特許5976661-PD1を調節するための方法および組成物 図000013
  • 特許5976661-PD1を調節するための方法および組成物 図000014
  • 特許5976661-PD1を調節するための方法および組成物 図000015
  • 特許5976661-PD1を調節するための方法および組成物 図000016
  • 特許5976661-PD1を調節するための方法および組成物 図000017
  • 特許5976661-PD1を調節するための方法および組成物 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976661
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】PD1を調節するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160817BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20160817BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20160817BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20160817BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20160817BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20160817BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160817BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K14/47
   C07K19/00
   A61K37/02
   A61P37/06
   A61P35/02
   A61K45/00
   C12N5/10
【請求項の数】15
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2013-540017(P2013-540017)
(86)(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公表番号】特表2014-501506(P2014-501506A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】US2011061201
(87)【国際公開番号】WO2012068380
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年10月20日
(31)【優先権主張番号】12/927,557
(32)【優先日】2010年11月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508241200
【氏名又は名称】サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ディー.グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シー.ホームズ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー シー.メンデル
(72)【発明者】
【氏名】メン シャンドン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド パッション
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ライク
(72)【発明者】
【氏名】フョードル ウルノフ
【審査官】 水野 浩之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/042163(WO,A1)
【文献】 特表2005−500068(JP,A)
【文献】 特表2003−507491(JP,A)
【文献】 Shinohara,T.et al.,"Accession:U64863.1[gi:2149002],Definition:Human hPD-1 (hPD-1) mRNA, complete cds.",NCBI Entrez Nucleotide[online];12-OCT-2005 uploaded,NCBI,[retrieved on 20 August 2015],Retrieved from the Internet,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/2149002
【文献】 Int Immunol.,2007 Jul,19(7),p.813-24,Epub 2007 Jul 2
【文献】 Methods Mol Biol.,2010 Jan 21;623,p.325-39
【文献】 Blood,2009 Aug 20,114(8),p.1457-8
【文献】 FEBS Lett.,2005 Feb 7,579(4),p.892-4
【文献】 Nucleic Acids Res.,2005 Oct 26,33(18),p.5978-90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
CAplus/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD1遺伝子の標的部位に結合する亜鉛フィンガータンパク質であって、N-末端からC-末端までF1〜F5又はF1〜F6〜F4の順で5つまたは6つの亜鉛ジンクフィンガー認識領域を含み、該認識領域が、以下のアミノ酸配列:
(i) F1:RSSALSR(配列番号23);
F2:RPLALKH(配列番号24);
F3:RNDHRKN(配列番号12);
F4:TRPVLKR(配列番号25);および
F5:DRSALAR(配列番号9)、ここで、該亜鉛フィンガータンパク質は配列番号60に示される標的部位に結合する;
(ii) F1:RPSTLHR(配列番号27);
F2:RSDELTR(配列番号28);
F3:RNNNLRT(配列番号29)、TNWHLRT(配列番号30)、RTPHLTL(配列番号31)、RSAQLAT(配列番号32)、RCTHLYL(配列番号33)、RPTQRYS(配列番号34)、RANHREC(配列番号35)、RMGRLST(配列番号39)、RANHRVC(配列番号42)、またはRSTHLLG(配列番号43);
F4:TRPVLKR(配列番号25);および
F5:DRSALAR(配列番号9)、ここで、該亜鉛フィンガータンパク質は配列番号60に示される標的部位に結合する
(iii)F1:RPSTLHR(配列番号27);
F2:RSDELTR(配列番号28);
F3:RHSRLTT(配列番号40);
F4:TRPVLMR(配列番号41);および
F5:DRSALAR(配列番号9)、ここで、該亜鉛フィンガータンパク質は配列番号60に示される標的部位に結合する;
(iv) F1:RNAALTR(配列番号45);
F2:RSDELTR(配列番号28);
F3:RSCGLWS(配列番号44)、RPMHLTN(配列番号49)、RSPHLYH(配列番号50)、またはRLPALLS(配列番号53) F4:TRPVLKR(配列番号25);および
F5:DRSALAR(配列番号9)、ここで、該亜鉛フィンガータンパク質は配列番号60に示される標的部位に結合する;
(v) F1:CNAALTR(配列番号46);
F2:RSDELTR(配列番号28);
F3:REEHRAT(配列番号47);
F4:TRPVLKR(配列番号25);および
F5:DRSALAR(配列番号9)、ここで、該亜鉛フィンガータンパク質は配列番号60に示される標的部位に結合する;
(vi) F1:RNAALTR(配列番号45);
F2:RSDELTR(配列番号28);
F3:RCEALHH(配列番号51);
F4:TRPVLKR(配列番号25);および
F5:DRSAQAR(配列番号52)またはDRSALAR(配列番号9)、ここで、該亜鉛フィンガータンパク質は配列番号60に示される標的部位に結合する;
(vii)F1:HNAALTR(配列番号54);
F2:RSDELTR(配列番号28);
F3:RTYNRTQ(配列番号55);
F4:TRPVLKR(配列番号25);および
F5:DRSALAR(配列番号9)、ここで、該亜鉛フィンガータンパク質は配列番号60に示される標的部位に結合する;
(viii)F1:DDWNLSQ(配列番号22);
F2:RSANLTR(配列番号17);
F3:TSGSLSR(配列番号61);
F4:QSGDLTR(配列番号62);および
F5:QSSDLRR(配列番号63)、ここで、該亜鉛フィンガータンパク質は配列番号75に示される標的部位に結合する;
(vix)F1:QSSHLTR(配列番号64);
F2:RSDNLRE(配列番号65);
F3:DRSNLSR(配列番号20);
F4:TSSNRKT(配列番号19);
F5:RSDSLSK(配列番号66);および
F6:QSANRTT(配列番号80)、ここで、該亜鉛フィンガータンパク質は配列番号76に示される標的部位に結合する;
(x) F1:QSGDLTR(配列番号62);
F2:RSDNLSE(配列番号67);
F3:ERANRNS(配列番号68);
F4:DRSDLSR(配列番号69);および
F5:QSSDLRR(配列番号63)、ここで、該亜鉛フィンガータンパク質は配列番号77に示される標的部位に結合する;あるいは、
(xi) F1:DRSHLAR(配列番号70);
F2:RSDDLSR(配列番号71);
F3:QSANRTK(配列番号72);
F4:RSDTLSE(配列番号73);および
F5:ANSNRIK(配列番号74)、ここで、該亜鉛フィンガータンパク質は配列番号78に示される標的部位に結合する、
を含む、亜鉛フィンガータンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載の亜鉛フィンガータンパク質と、機能ドメインとを含む、融合タンパク質。
【請求項3】
前記機能ドメインは、転写調節ドメインを含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記転写調節ドメインは、活性化ドメインまたは抑制ドメインである、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記機能ドメインは、開裂ドメインまたは開裂半ドメインを含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
請求項1に記載の亜鉛フィンガータンパク質または請求項2〜5のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、細胞におけるPD1遺伝子の発現を調節するための医薬組成物であって、前記PD1遺伝子の発現が調節されるような条件下で、前記細胞内に導入される、医薬組成物。
【請求項8】
前記調節は、前記PD1遺伝子の開裂による活性化、抑制、または不活性化を含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
不活性化は、前記PD1遺伝子の開裂後、非相同末端結合(NHEJ)を介して生じる、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記調節は、開裂による不活性化を含み、さらに、前記PD1遺伝子に対して相同性を有する配列に隣接する外因性配列が前記細胞に導入され、前記外因性配列は、相同組み換えによって前記PD1遺伝子内に組み込まれる、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記細胞は、PD1遺伝子の異常な発現または調節を特徴とする疾患または障害を有する患者から単離された細胞または幹細胞である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記一次細胞が末梢血単核球(PBMC)、CD4+T細胞、またはCD8+T細胞であるか、あるいは前記幹細胞が胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、血液幹細胞、神経幹細胞、または間葉系幹細胞である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項6に記載のポリヌクレオチドを含む、PD1遺伝子の異常な発現または調節を特徴とする疾患または障害を有する対象を治療するための医薬組成物であって、PD1遺伝子の発現が調節されるような条件下で、該対象に投与される、医薬組成物。
【請求項14】
前記疾患または障害は、癌である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
追加の抗癌療法を前記対象に施すことをさらに含む、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援による研究下でなされた発明に対する権利の記載
非適用。
【0002】
本開示は、ゲノム操作およびヌクレアーゼ同定の分野においてである。
【背景技術】
【0003】
標的部位に特異的に結合するように操作されるSceI等の亜鉛フィンガーヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼを含むヌクレアーゼは、ゲノム操作に有用であることが示されている。例えば、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ヌクレアーゼドメインに融合した操作された部位特異的亜鉛フィンガーを含むタンパク質である。そのようなZFNは、様々な異なる種におけるゲノム修飾にうまく使用されている。例えば、米国特許公開第20030232410号、第20050208489号、第20050026157号、第20050064474号、第20060188987号、第20060063231号、および国際公開WO第07/014275号を参照されたく、それらの開示は、全ての目的において参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。これらのZFNは、標的遺伝子座で相同組み換えの頻度を1000倍超増加させる、標的ヌクレオチド配列に二本鎖破断(DSB)を作製するために使用することができる。加えて、非相同末端結合(NHEJ)による部位特異的DSBの不正確な修復もまた、遺伝子破壊をもたらすことができる。2つのそのようなDSBの作製は、任意の大きな領域の欠失をもたらす。
【0004】
プログラムされた細胞死受容体(PD1、PDCD1としても知られる)は、慢性抗原に応答して、T細胞活性化とT細胞寛容との間の平衡の調節に関与していることが示されている。HIV1の感染中、PD1の発現は、CD4+T細胞において増加することが分かっている。PD1上方調節は、HIV感染の場合のように、T細胞機能不全が慢性抗原露出の存在下で観察されるとき、何らかの形でT細胞枯渇(主要エフェクター機能の進行性損失として定義される)に関係していると思われる。PD1上方調節は、慢性ウイルス感染中に、これらの同じ組の細胞でのアポトーシスの増加とも関連する可能性がある(Petrovas et al,(2009)J Immunol.183(2):1120−32を参照されたい)。PD1は、免疫監視からの腫瘍特異的回避にも関与する場合がある。慢性骨髄性白血病(CML)および急性骨髄性白血病(AML)の両方において、PD1が腫瘍特異的細胞毒性Tリンパ球(CTL)で高度に発現することが示されている。PD1は、Tリンパ球(TIL)を浸潤するメラノーマにおいても上方調節される(Dotti(2009)Blood114(8):1457−58を参照されたい)。腫瘍はPD1配位子(PDL)を発現することが分かっており、これは、CTLにおいてPD1の上方調節と組み合わされるとき、T細胞の機能性の損失およびCTLが有効な抗腫瘍応答を媒介することができない一因である可能性がある。
【0005】
研究者は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)に慢性的に感染したマウスにおいて、抗PD1抗体を投与することによりPD1−PDL相互作用が遮断され、いくつかのT細胞の機能性(増殖およびサイトカイン分泌)を回復することができ、ウイルス量の減少をもたらすことを示している(Barber et al(2006)Nature439(9):682−687)。PD1の異常調節は、自己免疫疾患にも関与する場合がある。PD1(特にPD1.3)のSNPは、全身性紅斑性狼瘡(SLE)のリスクの増加にも関連している。SLE患者は、高頻度のPD1.3 PD1対立遺伝子を有し、これらの患者は、その活性化されたCD4+T細胞上でPD1の発現が減少することを示すことが示されている(Bertsias et al,(2009)Arthritis Rheum.60(1):207−18を参照されたい)。
【0006】
よって、研究および治療用途に使用することができるさらなるPD1標的修飾因子、例えばPD1標的ヌクレアーゼまたは転写因子が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、PD1標的ヌクレアーゼ、例えば操作されたメガヌクレアーゼおよび亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の開発に関する。
【0008】
本開示は、ヒトおよびげっ歯類PD1に特異的な活性亜鉛フィンガータンパク質ならびに融合タンパク質を示し、これらのPD1特異的亜鉛フィンガータンパク質を含む亜鉛フィンガータンパク質転写因子(ZFP−TF)または亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む。本発明のPD1特異的亜鉛フィンガータンパク質を含むタンパク質は、PD1が異常に発現する、またはPD1経路がPD1配位子の過剰発現により異常に利用される任意の疾患もしくは障害の治療を含む、研究および治療目的のために使用され得る。例えば、T細胞内のPD1遺伝子座を標的とする亜鉛フィンガーヌクレアーゼは、慢性感染性疾患および悪性腫瘍の両方においてPD1依存免疫抑制を遮断するために使用され得る。あるいは、欠損PD1遺伝子座は、野生型配列のZFN依存標的挿入を使用して治療されるか、または亜鉛フィンバータンパク質転写因子(ZFP TF)は、欠損PD1発現を調節する(例えば、上方調節または下方調節する)ために使用され得る。さらに、PD1遺伝子座を標的とするZFP TFは、野生型PD1遺伝子を調節するために使用され得る。
【0009】
本発明の別の態様では、融合タンパク質は、ヒトPD1遺伝子に特異的である亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む。特定の実施形態では、ヌクレアーゼ融合タンパク質の亜鉛フィンガードメインは、表1に示される非天然に生じるおよび/または表2に示される標的部位に結合する認識らせん体を含む。
【0010】
また別の態様では、PD1遺伝子の発現を調節することができるZFP−TFを本明細書において提供する。特定の実施形態では、ZFP−TFの亜鉛フィンガードメインは、表1または5に示される非天然に生じるおよび/または表2または6に示される標的部位に結合する認識らせん体を含む。
【0011】
別の態様では、PD1遺伝子を調節するための方法および組成物を本明細書において提供する。特定の実施形態では、方法は、PD1遺伝子において標的部位に結合するように操作される亜鉛フィンガータンパク質を含む融合タンパク質(または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)を、疾患または障害がPD1配位子の過剰発現により生じるPD1の異常な発現および/またはPD1経路の望ましくない使用を特徴とする疾患または障害に罹患する患者からの細胞に導入することを含む。本方法は、HIVおよびHCV等の慢性感染の治療および/または防止に利用され得る。同様に、本方法および組成物は、癌および悪性疾患の治療および/または防止に利用され得る。治療および/または防止され得る癌の非限定的な例としては、肺癌、膵臓癌、肝臓癌、骨癌、乳癌、結腸直腸癌、白血病、卵巣癌、リンパ腫、脳癌等が挙げられる。
【0012】
本明細書に記載される方法および組成物は、単独治療として使用されるか、または他の抗ウイルスもしくは抗癌療法と併用して使用され得る。これらの方法および組成物は、連続様式で抗ウイルスもしくは抗癌療法と共に提供されるか、または同時に施すことができる。提供される方法および組成物は、自己免疫疾患に罹患する患者においてPD1発現を調節するためにも使用されるか、またはこの患者が欠損もしくは望ましくない対立遺伝子を保有する場合、野生型PD1対立遺伝子もしくは特徴を変更したPD1対立遺伝子に組み込むことによって、そのような患者を治療するために使用され得る。細胞系は、PD1遺伝子の調節または機能性を変更し得る治療用化合物のスクリーニングシステムを作製するために、そのPD1遺伝子配列を特異的に変更するように構築され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】示されるZFNがこれらの細胞に導入されるときに誘導される非相同末端結合(NHEJ)により挿入される突然変異のパーセンテージを測定するCel−1に基づくSURVEYOR(商標)ヌクレアーゼアッセイにより判定されるように、PD1特異的亜鉛フィンガーヌクレアーゼを使用した、ヒトPBMCにおけるPD1遺伝子の破壊を示すグラフである。細胞は、それぞれ、ZFN 12942をDNAの反対側の鎖上に結合した異なるZFN変異型と組み合わせ、12942を伴う標的遺伝子座に結合するときに機能ヌクレアーゼを形成するZFN対で処理された。この対の第2のZFNにおけるSBS数は、各グラフの下に示される。各対の最も左側の棒は、37℃でインキュベートした細胞のヌクレオフェクション(nucleofection)3日後のNHEJのパーセンテージを示す。それぞれの示される対の左から2番目の棒は、37℃でインキュベートした細胞のヌクレオフェクション10日後のNHEJのパーセンテージを示す。それぞれの示される対の右から2番目の棒は、30℃でインキュベートした細胞のヌクレオフェクション3日後のNHEJのパーセンテージを示し、それぞれの示される対の最も右側の棒は、30℃でインキュベートした細胞のヌクレオフェクション10日後のNHEJのパーセンテージを示す。
図2】エキソン1を標的とするPD1特異的ZFN対12942および12947で処理した後の、CD8+T細胞におけるPD1遺伝子座の配列を決定する分析の結果を示す。挿入は、太字の大文字で示される。欠失は(−)で表される。図からわかるように、いくつかの挿入および欠失は、NHEJを介したDSB修復の結果として、ZFN切断部位付近で観察された。
図3】Pmel TCR遺伝子導入/Rag1−/−マウスに由来する脾細胞にマウスPD1特異的ZFNを遺伝子導入した後の結果を示す。細胞を抗CD3抗体で刺激し、次いでPD1について染色した。プロットは、各群のパーセントPD1陽性CD3+CD8+細胞および各群の中央値のPD1蛍光を示し、データは下に表形式で表される。図からわかるように、PD1の発現は、CD3刺激の存在下でもPD1特異的ZFNを受けた細胞において減少する。
図4】PD1発現の減少が後の時間点で明白であったことを示す。細胞はCD3刺激の72時間後にも収集され、PD1について染色された。上のヒストグラムは、各群のパーセントPD1陽性CD3+CD8+細胞および各群の中央値のPD1蛍光を示す。下のプロットは、PD1/CFSE発現細胞の頻度を示す。この図は、PD1発現がCD3刺激の72時間後でもPD1特異的ZFNで処理された細胞においてなお減少することを示す。
図5】CD4+T細胞において試験され、Cel−Iアッセイを使用してゲノム編集活性について分析されたPD1特異的ZFN対の結果を示す。これらの細胞において、最大44%の編集がいくつかの対で観察された。
図6】PD1特異的ZFN対をCD4+T細胞内に処理した後のPD1(−)細胞の精製を示す。パーセント編集またはNHEJは、上述のようにCel−Iアッセイにより測定され、最大44%の編集がPD1特異的ZFN対のいくつかで観察された。処理後、細胞は、最初に、ZFN導入遺伝子を誘導するために抗CD3/CD8ビーズに露出され、次いで再刺激され、FACまたは親和性クロマトグラフィーのいずれかによる精製手順を受けた。細胞を収集し、(i)最初の刺激後、(ii)第2の刺激後だが、任意の精製前、(iii)CD25+(活性化のマーカー)、PD1(−)の細胞選別後、または(iv)親和性クロマトグラフィー後、Cel−Iアッセイ(上述の)によりPD1編集について分析した。示されるように、細胞選別法の使用により、最大56%の回収された細胞が修飾されたことが分かった。親和性クロマトグラフィーにより精製されたPD1(−)細胞は、Cel−I分析によりアッセイされるように、最大42%の全体的なPD1修飾を示した。
図7】CD8+T細胞において試験されたPD1特異的ZFNの結果を示すグラフである。この実験では、PD1特異的ZFNをコードするmRNAがCD8+Tの中に形質導入され、パーセントPD1修飾がCel Iアッセイにより分析された。観察された修飾の量は、使用されたmRNAの量に関連し、入力されたmRNAの量が少ないと、標的修飾のパーセンテージが低かった。これらの結果は、本明細書に記載されるPD1特異的ZFNが細胞系および一次T細胞内のPD1遺伝子座を修飾することができることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
機能ヌクレアーゼを同定するための、高処理インビボスクリーニングシステムのための組成物および方法を本明細書において説明する。特に、アッセイは、ヌクレアーゼがその標的部位で二本鎖の破断を誘導する能力を監視するためのリポーターシステムを使用する。加えて、アッセイは、細胞成長(毒性)に対するヌクレアーゼの作用を判定するために使用され得る。
【0015】
操作されたヌクレアーゼ技術は、天然に生じるDNA結合タンパク質の操作に基づく。例えば、調整されたDNA結合特異性を有するホーミングエンドヌクレアーゼの操作が説明されてきた。Chames et al.(2005)Nucleic Acids Res33(20):e178、Arnould et al.(2006)J.Mol.Biol.355:443−458。加えて、ZFPの操作も説明されてきた。例えば、米国特許第6,534,261号、第6,607,882号、第6,824,978号、第6,979,539号、第6,933,113号、第7,163,824号、および第7,013,219号を参照されたい。
【0016】
加えて、ZFPは、ZFN、即ちその操作された(ZFP)DNA結合ドメインを通してその意図される遺伝子標的を認識することができ、ヌクレアーゼが遺伝子をZFP結合部位付近で切断させる機能実体を作製するために、ヌクレアーゼドメインに結合されてきた。例えば、Kim et al.(1996)Proc Nat'l Acad Sci USA93(3):1156−1160を参照されたい。最近では、ZFNは、様々な生物におけるゲノム修飾において使用されてきた。例えば、米国特許公開第20030232410号、第20050208489号、第20050026157号、第20050064474号、第20060188987号、第20060063231号、および国際公開WO第07/014275号を参照されたい。
【0017】
特定のDNA配列に結合するためのZFPの操作を可能にする基準は、明確に特徴付けられ、特定のZFPを正確に同定するが、これらの同じZFPは、ZFNの中に組み込まれるとき、等しい親和性および/または特異性で結合しない場合がある。例えば、染色体基質は、生体細胞におけるヌクレアーゼドメインの正確な二量体化に影響を及ぼし、したがって、開裂の可能性を減少させることができ、所与のゲノム遺伝子座上の正確なクロマチン構造は、ZFNがその意図される標的配列に結合し、開裂する能力に差次的に影響を及ぼす可能性がある。加えて、インビトロアッセイにおいて不可能ではない場合、クロマチン化(chromatinized)形態で細胞ゲノムを提示するとき、設計されたDNA結合ドメインが受ける検索パラメータを模倣することは困難である。結果として、遺伝子修飾において最適な特徴を表示するZFNを同定するために、関連する生物または細胞系譜において多数の変異型を試験することが必須である。
【0018】
さらに、全てのインビボアッセイは、その独自の特殊性を有するため、ZFNの活動を判断するための特定の検出アッセイを開発することが必要である。よって、天然に生じるホーミングエンドヌクレアーゼと異なる結合特異性を有するホーミングエンドヌクレアーゼについてスクリーニングする前述のインビボスクリーニング法と異なり、本明細書に記載される方法は、そのインビボ機能性ならびに宿主細胞に対するヌクレアーゼの毒性を予測することにより、特定の標的部位に結合することが既に知られているヌクレアーゼをランク付けする迅速かつ効率的な方法を提供する。
【0019】
よって、本明細書に記載される方法および組成物は、インビボにおいて生物学的に活性であるヌクレアーゼを同定するための高度に効率的かつ迅速な方法を提供する。インビボでのヌクレアーゼの機能性を正確に予測することに加え、本明細書に記載されるアッセイは、ヌクレアーゼの毒性を判定するためにも使用され得、それによって、最も安全かつ機能的に活性なタンパク質の同定を可能にする。
【0020】
一般
本明細書で開示される方法の実践、ならびに組成物の調製と使用は、特に指示がない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、DNA、および関連分野における従来の技術において、当技術分野の技術範囲内である。これらの技術は、文献で完全に説明される。例えば、Sambrook et al.MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989 and Third edition,2001、Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1987 and periodic updates、the series METHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press,San Diego、Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,Third edition,Academic Press,San Diego,1998、METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,“Chromatin”(P.M.Wassarman and A.P.Wolffe,eds.),Academic Press,San Diego,1999、およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,“Chromatin Protocols”(P.B.Becker,ed.)Humana Press,Totowa,1999を参照されたい。
【0021】
定義
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、交換可能に使用され、線状または環状コンフォメーションで、一本鎖または二本鎖形態の、デオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示については、これらの用語をポリマーの長さに関する限定と解釈すべきではない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの公知の類似体、ならびに塩基、糖、および/またはリン酸(ホスホロチオエート主鎖)部分内で修飾されるヌクレオチドを包含することができる。一般に、特定のヌクレオチドの類似体は、同一の塩基対形成特異性を有し、すなわち、Aの類似体は、Tと塩基対を形成する。
【0022】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために交換可能に使用される。この用語は、1つ以上のアミノ酸が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体または修飾誘導体である、アミノ酸ポリマーにも適用される。
【0023】
「結合」は、高分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的で非共有結合的な相互作用を指す。結合相互作用の全ての構成要素は、相互作用が全体として配列特異的である限り(例えば、DNA主鎖中のリン酸残基との接触する)、配列特異的である必要はない。そのような相互作用は、一般に、10-6-1以下の解離定数(Kd)によって特徴付けられる。「親和性」は、結合の強さを指す。高い結合親和性は、低いKdと関連している。
【0024】
「結合タンパク質」は、別の分子に非共有結合的に結合することが可能なタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)、および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合タンパク質の場合においては、それは、それ自体に結合する(その結果、ホモ二量体、ホモ三量体等を形成する)ことができる、および/または異なるタンパク質または複数のタンパク質の1つ以上の分子に結合することができる。結合タンパク質は、2種類以上の結合活性を有することができる。例えば、亜鉛フィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合、およびタンパク質結合活性を有する。
【0025】
「亜鉛フィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、タンパク質、または構造が亜鉛イオンの配位によって安定化される結合ドメイン内のアミノ配列の領域である、1つ以上の亜鉛フィンガーによって配列特異的な様式でDNAを結合するより大きなタンパク質内のドメインである。亜鉛フィンガーDNA結合タンパク質という用語は、しばしば、亜鉛フィンガータンパク質またはZFPとして略記される。
【0026】
亜鉛フィンガー結合ドメインは、所定のヌクレオチド配列に結合されるように「改変」することができる。亜鉛フィンガータンパク質を改変するための方法の非制限的な例は、設計および選択である。設計された亜鉛フィンガータンパク質は、天然に存在しないタンパク質であり、その設計/組成物は、主として合理的基準によってもたらされる。設計のための合理的基準には、置換規則の適用、ならびに既存のZFP設計および結合データの情報を格納したデータベース中の情報を処理するためのコンピュータアルゴリズムの適用が含まれる。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、および同第6,534,261号明細書を参照されたく、国際公開第98/53058号、国際公開第98/53059号、国際公開第98/53060号、国際公開第02/016536号、および国際公開第03/016496も参照されたい。
【0027】
「選択された」亜鉛フィンガータンパク質は、天然には見出されないタンパク質であり、その産生は、ファージディスプレイ、相互作用トラップ、またはハイブリッド選択等の実験的プロセスによって主にもたらされる。例えば、米国特許第5,789,538号、米国特許第5,925,523号、米国特許第6,007,988号、米国特許第6,013,453号、米国特許第6,200,759号明細書、国際公開第95/19431号、国際公開第96/06166号、国際公開第98/53057号、国際公開第98/54311号、国際公開第00/27878号、国際公開第01/60970号、国際公開第01/88197号、および国際公開第02/099084を参照されたい。
【0028】
「開裂」とは、DNA分子の共有結合性主鎖の破断を指す。開裂は、これらに限定されないが、リン酸ジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を含む様々な方法により誘導され得る。一本鎖開裂および二本鎖の開裂の両方が可能であり、二本鎖の開裂は、2つの異なる一本鎖の開裂事象の結果として生じ得る。DNA開裂は、平滑末端または付着末端のいずれかの産生をもたらすことができる。特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、標的となる二本鎖DNA開裂に使用される。
【0029】
「開裂半ドメイン」とは、第2のポリペプチド(同一または異なるのいずれか)と共に、開裂活性を有する錯体(好ましくは二本鎖開裂活性)を形成するポリペプチド配列である。「第1および第2の開裂半ドメイン」、「+−半ドメイン」、および「右左開裂半ドメイン」という用語は、二量体化する開裂半ドメインの対を指すために互換的に使用される。
【0030】
「操作された開裂半ドメイン」とは、別の開裂半ドメイン(例えば別の操作された開裂半ドメイン)と偏性ヘテロ二量体を形成するように修飾された開裂半ドメインである。米国特許出願第10/912,932号および第11/304,981号ならびに米国仮出願第60/808,486号(2006年5月25日に出願)も参照されたく、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0031】
「配列」という用語は、任意の長さのヌクレオチド配列を指し、それは、DNAもしくはRNAであってもよく、線状、環状、または分岐状であってもよく、一本鎖もしくは二本鎖のいずれか一方であってもよい。「ドナー配列」という用語は、ゲノム内に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば、2〜10,000(またはそれらの間もしくはそれらを超える任意の整数)長のヌクレオチド、好ましくは、約100〜1,000(またはそれらの間の任意の整数)長のヌクレオチド、より好ましくは、約200〜500長のヌクレオチドであってもよい。「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびに、ヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大半は、ヌクレオソームの形態で存在し、そこでは、ヌクレオソームコアが、それぞれ2つのヒストンH2A、H2B、H3、およびH4を含む八量体と会合した約150塩基対のDNAを含み、リンカーDNA(生物に応じて変化する長さ)がヌクレオソームコアの間に延在する。1分子のヒストンH1は、一般にリンカーDNAと会合する。本開示に関して、「クロマチン」という用語は、原核性および真核性の両方の全ての種類の細胞核タンパク質を包含するように意図されている。細胞クロマチンは、染色体およびエピソームクロマチンの両方を含む。
【0032】
「染色体」は、細胞のゲノムの全てまたは一部を含むクロマチン錯体である。細胞のゲノムは、しばしば、その細胞のゲノムを含む全染色体の集合である、その核型によって特徴付けられる。細胞のゲノムは、1つ以上の染色体を含むことができる。
【0033】
「エピソーム」は、細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む、複製する核酸、核タンパク質錯体、または他の構造である。エピソームの例には、プラスミドおよびある特定のウイルスゲノムが挙げられる。
【0034】
「標的部位」または「標的配列」は、結合にとって十分な条件が存在すれば、結合分子が結合する核酸の一部を規定する核酸配列である。例えば、配列5’−GAATTC−3’は、Eco RI制限エンドヌクレアーゼの標的部位である。
【0035】
「慢性感染性疾患」とは、感染が持続した感染病原体により生じる疾患である。そのような疾患は、肝炎(A、B、またはC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV−1、HSV−6、HSV−II、CMV、およびEBV)、およびHIV/AIDSを含んでもよい。非ウイルス性の例としては、アスペルギルス症、カンジダ症、コクシジオイデス症等の慢性真菌症、ならびにクリプトコッカスおよびヒストプラズマ症に関連する疾患が挙げられてもよい。慢性細菌感染病原体の非限定的な例としては、肺炎クラミジア、リステリア・モノサイトゲネス、および結核菌であってもよい。「癌」という用語は、器官または体内組織内のいずれかで無制限に細胞が増殖する任意の疾患を指す。よって、本用語は、これらに限定されないが、卵巣癌、白血病、肺癌、結腸直腸/結腸癌、CNS癌、メラノーマ、腎細胞癌、形質細胞腫/骨髄腫、前立腺癌、乳癌等を含む、任意の種類の癌または悪性腫瘍を含む。本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、特に具体的に記載されない限り、悪性型の細胞または組織の異常成長を指し、良性型組織を含まない。本明細書で使用される「阻害する、または阻害」という用語は、成長/複製を減少させることを意味する。
【0036】
「自己免疫疾患」という用語は、対象がその自身の組織に対して破壊的免疫応答を開始する任意の疾患を指す。自己免疫障害は、これらに限定されないが、神経、胃腸、および内分泌系、ならびに皮膚および他の結合組織、眼、血液、ならびに血管の疾患を含む、対象(例えばヒト)のほぼ全ての器官系に影響を及ぼすことができる。自己免疫疾患の例としては、これらに限定されないが、橋本甲状腺炎、全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、グレーブス病、強皮症、関節リウマチ、多発性硬化症、重症筋無力症、および糖尿病が挙げられる。
【0037】
「外来」分子は、通常は細胞内に存在しないが、1つ以上の遺伝学的、生化学的、または他の方法によって細胞内に導入することができる分子である。「通常は細胞内に存在」は、細胞の特定の発生段階および環境条件に対して決定される。したがって、例えば、筋の胚発生中のみ存在する分子は、成体筋細胞に関しては外来分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞に対して外来分子である。外来分子は、例えば、機能不全型内在性分子の機能型または正常機能型内在性分子の機能不全型を含むことができる。
【0038】
外来分子は、とりわけ、コンビナトリアルケミストリープロセスによって生成されるもの等の小分子、または、タンパク質、核酸、糖質、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記の分子の任意の修飾誘導体、または上記の分子の1つ以上を含む任意の錯体等の高分子であってもよい。核酸にはDNAおよびRNAが含まれ、それは一本または二本鎖であってもよく、線状、分岐状、または環状であってもよく、任意の長さであってもよい。核酸には、二重鎖を形成する能力のあるもの、ならびに三重鎖形成核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号明細書を参照されたい。タンパク質には、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレース、およびヘリカーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
外来分子は、内在性分子と同一の種類の分子、例えば、外来タンパク質または核酸であってもよい。例えば、外来核酸は、感染ウイルスゲノム、細胞中に導入されたプラスミドもしくはエピソーム、または細胞内に通常存在しない染色体を含むことができる。細胞中に外来分子を導入するための方法が当業者に知られており、脂質媒介導入(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介導入、およびウイルスベクター媒介導入を含むが、これらに限定されない。
【0040】
対照的に、「内在性」分子は、特定の環境条件下で特定の発生段階にある特定の細胞内に通常存在するものである。例えば、内在性核酸は、染色体、ミトコンドリア、クロロプラストもしくは他の細胞小器官のゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸を含むことができる。さらなる内在性分子には、タンパク質、例えば、転写因子および酵素が含まれてもよい。
【0041】
「融合」分子は、2つ以上のサブユニット分子が、好ましくは共有結合的に連結された分子である。サブユニット分子は、同一の化学種類の分子であってもよいか、または異なる化学種類の分子であってもよい。第1の種類の融合分子の例には、融合タンパク質(例えば、ZFP DNA結合ドメインと開裂ドメインとの間の融合物)、および融合核酸(例えば、上記に記載される融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられるが、これらに限定されない。第2の種類の融合分子の例には、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの間の融合物、および副溝結合剤と核酸との間の融合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
細胞中の融合タンパク質の発現は、細胞に融合タンパク質を送達すること、または細胞に融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを送達することによってもたらされてもよく、ポリヌクレオチドが転写され、転写物が翻訳されて、融合タンパク質を生成する。トランススプライシング、ポリペプチド開裂、およびポリペプチド連結はまた、細胞中のタンパク質の発現に関与することができる。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの送達の方法が本開示の他所で提示される。
【0043】
本開示に関して、「遺伝子」は、そのような調節配列がコードおよび/または転写配列に隣接しているかに関わらず、遺伝子産物(以下を参照されたい)をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域を含む。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネータ、リポソーム結合部位および内部リポソーム侵入部位等の翻訳調節配列、エンハンサー、サイレンサ、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位、ならびに遺伝子座制御領域が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
「遺伝子発現」は、遺伝子産物への遺伝子に含まれる情報の変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、もしくは任意の他の種類のRNA)、またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であってもよい。遺伝子産物には、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集等のプロセスによって修飾されたRNA、および、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチリル化、およびグリコシル化によって修飾されたタンパク質も含まれる。
【0045】
遺伝子発現の「調節」は、遺伝子の発現レベルの変化を指す。発現の調節には、遺伝子活性化および遺伝子抑制が含まれてもよいが、これらに限定されない。調節は、完全であってもよい、即ち、遺伝子発現が完全に不活性化されるか、または野生型レベルもしくはそれを超えるレベルに活性化されるか、あるいは部分的であってもよく、遺伝子発現は、ある程度の野生型レベルの画分に部分的に減少するか、または部分的に活性化される。「真核」細胞には、真菌細胞(酵母等)、植物細胞、動物細胞、哺乳類細胞、およびヒト細胞(例えば、T−細胞)が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
「作動的連結」および「作動的に連結」(または「作動可能に連結」という用語は、2つ以上の構成要素(配列要素等)の並列に関連して交換可能に使用され、その中で両方の構成要素が正常に機能し、かつ構成要素の少なくとも1つが、他の構成要素の少なくとも1つに対して発揮される機能を媒介することができる可能性を許すように各構成要素が配置される。図示として、プロモーター等の転写調節配列は、転写調節配列が1つ以上の転写調節因子の存在または非存在に応じてコード配列の転写レベルを制御する場合に、コード配列に作動的に連結される。転写調節配列は、一般的に、コード配列とシスで作動的に連結されるが、それに直接隣接している必要はない。例えば、エンハンサーは、それらが隣接していなくても、コード配列に作動的に連結される転写調節配列である。
【0047】
融合ポリペプチドに関して、「作動的に連結」という用語は、構成要素の各々が、そのように連結されていない場合に、それが果たすであろう他の構成要素に連動して同一の機能を実行するという事実を指すことができる。例えば、ZFP DNA結合ドメインが開裂ドメインに融合される融合ポリペプチドに関して、ZFP DNA結合ドメインおよび開裂ドメインは、融合ポリペプチドにおいて、ZFP DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合できる一方で、開裂ドメインが標的部位近辺のDNAを開裂することができる場合に、作動的連結状態にある。同様に、ZFP DNA結合ドメインが活性化または抑制ドメインに融合される融合ポリペプチドに関して、ZFP DNA結合ドメインおよび活性化または抑制ドメインは、融合ポリペプチドにおいて、ZFP DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合できる一方で、活性化ドメインが遺伝子発現を上方調節することができるか、または抑制ドメインが遺伝子発現を下方調節することができる場合に、作動的連結状態にある。
【0048】
タンパク質、ポリペプチド、または核酸の「機能的断片」は、その配列が、完全長タンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一でないが、完全長タンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一の機能を保持するタンパク質、ポリペプチド、または核酸である。機能的断片は、対応する天然分子より多い、少ない、または同一の残基数を有することができる、および/または1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチド置換を含有することができる。核酸(例えば、コード機能、別の核酸をハイブリッド形成する能力)の機能を決定するための方法が、当技術分野でよく知られている。同様に、タンパク質機能を決定するための方法がよく知られている。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能を、例えば、フィルター結合、電気泳動移動度シフト、または免疫沈降アッセイによって決定することができる。DNA開裂を、ゲル電気泳動によってアッセイすることができる。上記のAusubelらを参照されたい。別のタンパク質と相互作用するタンパク質の能力を、例えば、共免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイ、または遺伝的相補性および生化学的相補性の両方の相補性によって決定することができる。例えば、Fields et al.(1989)Nature 340:245−246、米国特許第5,585,245号、およびPCT国際公開第98/44350号を参照されたい。
【0049】
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞に導入することができる。典型的に、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、および「遺伝子導入ベクター」とは、関心の遺伝子の発現を指向することができ、遺伝子配列を標的細胞に導入することができる任意の核酸構築物を意味する。よって、本用語は、クローン化、および発現ビヒクル、ならびに組み込みベクターを含む。
【0050】
「リポーター遺伝子」または「リポーター配列」とは、必ずしも日常的なアッセイでなくてもよいが、好ましくは容易に測定され得るタンパク質産生物を産生する任意の配列を指す。好適なリポーター遺伝子は、これらに限定されないが、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、色付きまたは蛍光もしくは発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、増強型緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、ならびに増強型細胞成長および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えばジヒドロ葉酸還元酵素)が挙げられる。エピトープタグは、例えば、FLAG、His、myc、Tap、HA、または任意の検出可能なアミノ酸配列の1つ以上の複写を含む。「発現タグ」は、関心の遺伝子の発現を監視するために、所望の遺伝子配列に操作可能に連結され得るリポーターをコードする配列を含む。
【0051】
概説
PD1遺伝子を標的とする亜鉛フィンガータンパク質転写因子(ZFP−TF)および/またはヌクレアーゼ(例えばZFN)、ならびにPD1が異常に、もしくは望ましくなく発現する、またはPD1経路がPD1配位子の過剰により異常に、もしくは望ましくなく利用される疾患もしくは障害(例えば、慢性感染性疾患、癌、および/または自己免疫疾患を含む)の治療ために、これらのZFP−TFおよび/またはヌクレアーゼを含む組成物およびその使用方法を本明細書で説明する。PD1発現の調節により寛解される疾患または障害に罹患する対象を治療するために、本明細書に記載されるZFP−TFおよび/またはヌクレアーゼが、インビボまたはエクスビボで細胞内(例えばそのような疾患に罹患する患者から単離された一次細胞)に導入され得る。ZFP−TFおよび/またはZFN治療後、細胞は、慢性感染性疾患または癌の治療において薬剤として使用するために、患者の中に再導入することができる。同様に、PD1特異的ZFNおよび/またはZFP−TFで処理された幹細胞を使用することができる。そのような医療状態の治療のために、これらの細胞は罹患した患者に注入することができる。
【0052】
よって、本明細書に記載される組成物および方法は、PD1遺伝子の調節を可能にする。PD1発現は、必要に応じてPD1特異的ZFP TFまたはZFNを使用して、ノックアウト、ノックダウン、上方調節、または下方調節することができる。PD1発現は、例えば慢性感染性疾患もしくは癌に罹患する患者において、ZFP−TFまたは1つ以上のPD1特異的ZFNにより下方調節することができ、患者(例えば自己免疫疾患に罹患する患者)において上方調節することができる。本発明の方法および組成物は、PD1特異的ZFP TFおよび/またはヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む治療薬も提供し、ポリヌクレオチドは、患者に直接投与される。さらに、本発明は、ZFP TFおよび/またはヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドが、罹患した患者に治療薬として全身投与するために、ウイルス性送達ビヒクル等のベクター内に組み込むことができる方法および組成物を提供する。
【0053】
DNA結合ドメイン
PD1遺伝子の標的部位に特異的に結合するDNA結合ドメインを含む組成物が本明細書に記載される。本明細書で開示される組成物および方法では、亜鉛フィンガーDNA結合ドメインまたはメガヌクレアーゼからのDNA結合ドメインを含むが、これらに限定されない、任意のDNA結合ドメインを使用することができる。
【0054】
ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、亜鉛フィンガータンパク質を含む。好ましくは、亜鉛フィンガータンパク質は天然に存在せず、それは選択する標的部位に結合するように改変される。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135−141、Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313−340、Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656−660、Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632−637、Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411−416、米国特許第6,453,242号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,503,717号、同第6,689,558号、同第7,030,215号、同第6,794,136号、同第7,067,317号、同第7,262,054号、同第7,070,934号、同第7,361,635号、同第7,253,273号明細書、ならびに米国特許出願公開第2005/0064474号、同第2007/0218528号、同第2005/0267061号明細書を参照されたく、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
改変された亜鉛フィンガー結合ドメインは、天然に存在する亜鉛フィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有することができる。改変方法には、合理的設計および多様な種類の選択が含まれるが、これらに限定されない。合理的設計には、例えば、三重(または四重)ヌクレオチド配列および個々の亜鉛フィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、各三重または四重ヌクレオチド配列は、特定の三重または四重配列と結合する亜鉛フィンガーの1つ以上のアミノ酸配列に関連する。例えば、譲受人共通の米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号明細書を参照されたく、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0056】
ファージディスプレイおよび2ハイブリッド法を含む例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,410,248号、同第6,140,466号、同第6,200,759号、および同第6,242,568号明細書、ならびに国際公開第98/37186号、国際公開第98/53057号、国際公開第00/27878号、国際公開第01/88197号、および英国第2,338,237号に開示される。加えて、亜鉛フィンガー結合ドメインに対する結合特異性の強化は、例えば、譲受人共通の国際公開第02/077227号に記載されている。
【0057】
加えて、これらおよび他の参考文献に開示される、亜鉛フィンガードメインおよび/または多フィンガーの亜鉛フィンガータンパク質は、例えば、5個以上のアミノ酸長のリンカーを含む、任意の好適なリンカー配列を使用して共に連結され得る。また、6個以上のアミノ酸長の例示的なリンカー配列に関して、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、および同第7,153,949号明細書も参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々の亜鉛フィンガー間の好適なリンカーの任意の組み合わせを含み得る。加えて、亜鉛フィンガー結合ドメインに対する結合特異性の強化は、例えば、譲受人共通の国際公開第02/077227号に記載されている。
【0058】
標的部位の選択、融合タンパク質(および同一物をコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのZFPおよび方法が当業者に知られており、米国特許第6,140,0815号、同第789,538号、同第6,453,242号、同第6,534,261号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,200,759号明細書、国際公開第95/19431号、国際公開第96/06166号、国際公開第98/53057号、国際公開第98/54311号、国際公開第00/27878号、国際公開第01/60970号、国際公開第01/88197号、国際公開第02/099084号、国際公開第98/53058号、国際公開第98/53059号、国際公開第98/53060号、国際公開第02/016536号、および国際公開第03/016496号に詳しく記載される。
【0059】
加えて、これらおよび他の参考文献に開示される、亜鉛フィンガードメインおよび/または多フィンガーの亜鉛フィンガータンパク質は、例えば、5個以上のアミノ酸長のリンカーを含む、任意の好適なリンカー配列を使用して共に連結し得る。また、6個以上のアミノ酸長の例示的なリンカー配列に関して、第6,479,626号、米国特許同第6,903,185号、および同第7,153,949号明細書も参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々の亜鉛フィンガー間の好適なリンカーの任意の組み合わせを含み得る。
【0060】
あるいは、DNA結合ドメインは、ヌクレアーゼに由来し得る。例えば、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI,PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevII、およびI−TevIII等のホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの認識配列が知られている。また、米国特許第5,420,032号、米国特許第6,833,252号明細書、Belfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379−3388、Dujon et al.(1989)Gene 82:115−118、Perler et al.(1994)Nucleic Acids Res.22,1125−1127、Jasin(1996)Trends Genet.12:224−228、Gimble et al.(1996)J.Mol.Biol.263:163−180、Argast et al.(1998)J.Mol.Biol.280:345−353、およびNew England Biolabs社のカタログも参照されたい。加えて、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性を、非天然の標的部位に結合するよう改変することができる。例えば、Chevalier et al.(2002)Molec.Cell 10:895−905、Epinat et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:2952−2962、Ashworth et al.(2006)Nature 441:656−659、Paques et al.(2007)Current Gene Therapy 7:49−66、米国特許出願公開第20070117128号明細書を参照されたい。
【0061】
特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、PD1遺伝子内の標的部位に結合し(配列特異的様式で)、PD1の発現を調節する操作された亜鉛フィンガータンパク質である。ZFPは、突然変異PD1対立遺伝子または野生型PD1配列のいずれかに選択的に結合することができる。PD1標的部位は、典型的に少なくとも1個の亜鉛フィンガーを含むが、複数の亜鉛フィンガー(例えば、2個、3個、4個、5個、6個以上のフィンガー)が含まれてもよい。通常ZFPは、少なくとも3個のフィンガーを含む。ある特定のZFPは、4個、5個、または6個のフィンガーを含む。3個のフィンガーを含むZFPは、典型的に9個または10個のヌクレオチドを含む標的部位を認識し、4個のフィンガーを含むZFPは、典型的に12〜14個のヌクレオチドを含む標的部位を認識し、一方で、6個のフィンガーを有するZFPは、18〜21個のヌクレオチドを含む標的部位を認識する。ZFPはまた、1つ以上の調節ドメインを含む融合タンパク質であってもよく、これらの調節ドメインは転写活性化または抑制ドメインであり得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、DNA結合ドメインは、植物病原菌であるキサントモナスに由来するTALエフェクターからの操作されたドメインである(Boch et al,(2009)Science 29 Oct 2009(10.1126/science.117881)およびMoscou and Bogdanove,(2009)Science 29 Oct 2009(10.1126/science.1178817を参照されたい)。米国特許出願第13/068,735号も参照されたい。
【0063】
融合タンパク質
本明細書に記載されるDNA結合タンパク質(例えば、ZFP)を含む融合タンパク質および異種調節(機能的)ドメイン(またはその機能的フラグメント)も提供される。一般的なドメインには、例えば、転写因子ドメイン(活性化剤、リプレッサー、共活性化剤、コリプレッサー)、サイレンサ、癌遺伝子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバー等)、DNA修復酵素ならびにそれらの関連する因子および修飾因子、DNA再構築酵素ならびにそれらの関連する因子および修飾因子、クロマチン結合性タンパク質およびそれらの修飾因子(例えば、キナーゼ、アセチラーゼ、およびデアセチラーゼ)、ならびにDNA修飾酵素(例えば、メチルトランスフェラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)、ならびにそれらの関連する因子および修飾因子が含まれる。DNA結合ドメインならびにヌクレアーゼ開裂ドメインの融合に関する詳細ついて、米国特許出願公開第20050064474号、同第20060188987号、および同第2007/0218528号明細書を参照されたく、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0064】
活性化を達成するための好適なドメインには、HSV VP16活性化ドメイン(例えば、Hagmann et al.,J.Virol.71,5952−5962(1997)を参照されたい)、核ホルモン受容体(例えば、Torchia et al.,Curr.Opin.Cell.Biol.10:373−383(1998)を参照されたい)、核因子カッパBのp65サブユニット(Bitko & Barik,J.Virol.72:5610−5618(1998)およびDoyle & Hunt,Neuroreport 8:2937−2942(1997))、Liu et al.,Cancer Gene Ther.5:3−28(1998))、またはVP64等の人工キメラ機能ドメイン(Beerli et al.,(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:14623−33)、ならびにデグロン(Molinari et al.,(1999)EMBO J.18,6439−6447)が含まれる。さらなる例示的な活性化ドメインには、Oct 1、Oct−2A、Sp1、AP−2、およびCTF1(Seipel et al.,EMBO J.11,4961−4968(1992)、ならびにp300、CBP、PCAF、SRC1 PvALF、AtHD2A、およびERF−2が含まれる。例えば、Robyr et al.(2000)Mol.Endocrinol.14:329−347、Collingwood et al.(1999)J.Mol.Endocrinol.23:255−275、Leo et al.(2000)Gene 245:1−11、Manteuffel−Cymborowska(1999)Acta Biochim.Pol.46:77−89、McKenna et al.(1999)J.Steroid Biochem.Mol.Biol.69:3−12、Malik et al.(2000)Trends Biochem.Sci.25:277−283、およびLemon et al.(1999)Curr.Opin.Genet.Dev.9:499−504を参照されたい。さらなる例示的な活性化ドメインには、OsGAI、HALF−1、C1、AP1、ARF−5、−6、−7、および−8、CPRF1、CPRF4、MYC−RP/GP、ならびにTRAB1が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Ogawa et al.(2000)Gene 245:21−29、Okanami et al.(1996) Genes Cells 1:87−99、Goff et al.(1991)Genes Dev.5:298−309、Cho et al.(1999)Plant Mol.Biol.40:419−429、Ulmason et al.(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:5844−5849、Sprenger−Haussels et al.(2000)Plant J.22:1−8、Gong et al.(1999)Plant Mol.Biol.41:33−44、およびHobo et al.(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:15,348−15,353を参照されたい。
【0065】
DNA結合ドメインと機能ドメインとの間の融合タンパク質(または同一物をコードする核酸)の形成において、活性化ドメインと相互作用する活性化ドメインまたは分子のいずれか一方が、機能ドメインとして好適であることが、当業者には明らかである。基本的に、標的遺伝子に活性化錯体および/または活性化活性(例えば、ヒストンアセチル化等)を補充する能力のある任意の分子が、融合タンパク質の活性化ドメインとして有用である。融合分子において機能ドメインとしての使用に好適なISWI含有ドメインおよび/またはメチル結合ドメインタンパク質等の絶縁体ドメイン、局在化ドメイン、ならびにクロマチンリモデリングタンパク質が、例えば、譲受人共通の米国特許出願第2002/0115215号および同第2003/0082552号明細書、ならびに譲受人共通の国際公開第02/44376号に記載される。
【0066】
例示的な抑制ドメインには、KRAB A/B、KOX、TGF−β誘導性初期遺伝子(TIEG)、v−erbA、SID、MBD2、MBD3、DNMTファミリーのメンバー(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B)、Rb、およびMeCP2が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Bird et al.(1999)Cell 99:451−454、Tyler et al.(1999)Cell 99:443−446、Knoepfler et al.(1999)Cell 99:447−450、およびRobertson et al.(2000)Nature Genet.25:338−342を参照されたい。さらなる例示的な抑制ドメインには、ROM2およびAtHD2Aが含まれるが、これらに限定されない。例えば、Chem et al.(1996)Plant Cell 8:305−321、およびWu et al.(2000)Plant J.22:19−27を参照されたい。
【0067】
融合分子は、当業者によく知られているクローニング法および生化学的接合によって構築される。融合分子には、DNA結合ドメインおよび機能ドメイン(例えば、転写活性化または抑制ドメイン)が含まれる。融合分子には、核局在化シグナル(例えば、SV40媒体T抗原由来等)およびエピトープタグ(例えば、FLAGおよび血球凝集素等)も任意的に含まれる。融合タンパク質(およびそれらをコードする核酸)は、翻訳リーディングフレームが融合の成分間で維持されるように設計される。
【0068】
一方において機能ドメイン(またはその機能的フラグメント)のポリペプチド成分と、他方において非タンパク質DNA結合ドメイン(例えば、抗生物質、挿入剤、副溝結合剤、核酸)との間の融合は、当業者に知られている生化学的接合の方法によって構築される。例えば、Pierce Chemical Company(Rockford,IL)Catalogueを参照されたい。副溝結合剤とポリペプチドとの間に融合を起こすための方法および組成物が記載されている。Mapp et al.(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:3930−3935。
【0069】
ある特定の実施形態では、亜鉛フィンガータンパク質によって結合される標的部位は、細胞クロマチンの到達可能領域に存在する。例えば、同所有の国際公開01/83732に記載されるように、到達可能領域を決定することができる。標的部位が細胞クロマチンの到達可能領域に存在しない場合、譲受人共通の国際公開第01/83793号に記載されるように、1つ以上の到達可能領域を生成することができる。さらなる実施形態では、融合分子のDNA結合ドメインは、その標的部位が到達可能領域にあるかに関わらず、細胞クロマチンに結合する能力がある。例えば、そのようなDNA結合ドメインは、リンカーDNAおよび/またはヌクレオソームDNAに結合する能力がある。「パイオニア」DNA結合ドメインのこの型の例は、ある特定のステロイド受容体および肝細胞核因子3(HNF3)で見出される。Cordingley et al.(1987)Cell 48:261−270、Pina et al.(1990)Cell 60:719−731、およびCirillo et al.(1998)EMBO J.17:244−254。
【0070】
融合分子は、当業者に知られているように、医薬的に許容可能な担体で製剤化され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,1985、および譲受人共通の国際公開第00/42219を参照されたい。
【0071】
融合分子の機能的成分/ドメインは、いったん融合分子がそのDNA結合ドメインを介して標的配列に結合すると、遺伝子の転写に影響を及ぼす能力のある多種多様の異なる成分のいずれかから選択されてもよい。したがって、機能的成分には、活性化剤、リプレッサー、共活性化剤、コリプレッサー、およびサイレンサ等の多様な転写因子ドメインが含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0072】
さらなる例示的な機能ドメインは、例えば、譲受人共通の米国特許第6,534,261号明細書および米国特許出願公開第2002/0160940号明細書に開示される。
【0073】
外因性の小分子または配位子により調節される機能ドメインも選択され得る。例えば、機能ドメインのみが外部RheoChem(商標)配位子の存在下でその活性コンフォメーションをとるRheoSwitch(登録商標)技術が利用され得る(例えばUS第20090136465号を参照されたい)。よって、ZFPは、得られるZFP−TFの活性が外部配位子によって制御される調節可能な機能ドメインに操作可能に連結され得る。特定の実施形態では、融合タンパク質は、DNA結合の結合ドメインおよび開裂(ヌクレアーゼ)ドメインを含む。そのように、遺伝子修飾は、ヌクレアーゼ(例えば操作されたヌクレアーゼ)を使用して達成され得る。操作されたヌクレアーゼ技術は、天然に生じるDNA結合タンパク質の操作に基づく。本明細書に記載される方法および組成物は、広範に適用可能であり、関心の任意のヌクレアーゼを伴ってもよい。ヌクレアーゼの非限定的な例としては、メガヌクレアーゼおよび亜鉛フィンガーヌクレアーゼが挙げられる。ヌクレアーゼは、異種DNA結合および開裂ドメイン(例えば、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、異種開裂ドメインを有するメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)を含むか、あるいは、天然に生じるヌクレアーゼのDNA結合ドメインが、選択された標的部位(例えば、同種の結合部位と異なる部位に結合するように操作されたメガヌクレアーゼ)に結合するように変更され得る。例えば、調整されたDNA結合特異性を有するホーミングエンドヌクレアーゼの操作が説明されており、Chames et al.(2005)Nucleic Acids Res33(20):e178、Arnould et al.(2006)J.Mol.Biol.355:443−458、およびGrizot et al(2009)Nucleic Acids Res July 7e publicationを参照されたい。加えて、ZFPの操作も説明されている。例えば、米国特許第6,534,261号、第6,607,882号、第6,824,978号、第6,979,539号、第6,933,113号、第7,163,824号、および第7,013,219を参照されたい。
【0074】
特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)である。天然に生じるメガヌクレアーゼは、15〜40の塩基対開裂部位を認識し、通常LAGLIDADGファミリー、GIY−YIGファミリー、His−Cyst boxファミリー、およびHNHファミリーの4つのファミリーに分類される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼには、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevII、およびI−TevIIIが含まれる。それらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号、米国特許第6,833,252号、Belfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388、Dujon et al.(1989)Gene82:115−118、Perler et al.(1994)Nucleic Acids Res.22,1125-1127、Jasin(1996)Trends Genet.12:224−228、Gimble et al.(1996)J.Mol.Biol.263:163−180、Argast et al.(1998)J.Mol.Biol.280:345−353およびNew England Biolabs catalogueも参照。
【0075】
主としてLAGLIDADGファミリーからである天然に生じるメガヌクレアーゼからのDNA結合ドメインは、植物、酵母、ドロソフィラ、哺乳類細胞、およびマウスにおいて部位特異的ゲノム修飾を促進するために使用されてきたが、このアプローチは、メガヌクレアーゼ認識配列を保存する相同遺伝子(Monet et al.(1999),Biochem.Biophysics.Res.Common.255:88−93)または認識配列が導入される前操作されたゲノム(Route et al.(1994),Mol.Cell.Biol.14:8096−106、Chilton et al.(2003),Plant Physiology.133:956−65、Puchta et al.(1996),Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:5055−60、Rong et al.(2002),Genes Dev.16:1568−81、Gouble et al.(2006),J.Gene Med.8(5):616−622)のいずれかの修飾に制限されてきた。したがって、医学的または生物工学的に適切な部位で新規結合特異性を呈するようにメガヌクレアーゼを操作する試みがなされてきた(Porteus et al.(2005),Nat.Biotechnol.23:967−73、Sussman et al.(2004),J.Mol.Biol.342:31−41、Epinat et al.(2003),Nucleic Acids Res.31:2952−62、Chevalier et al.(2002)Molec.Cell10:895−905、Epinat et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:2952−2962、Ashworth et al.(2006)Nature441:656−659、Paques et al.(2007)Current Gene Therapy7:49−66、米国特許公開第20070117128号、第20060206949号、第20060153826号、第20060078552号、および第20040002092号)。加えて、メガヌクレアーゼからの天然に生じるまたは操作されたDNA結合ドメインはまた、異種のヌクレアーゼ(例えばFokI)からの開裂ドメインとも操作可能に連結されてきた。
【0076】
他の実施形態では、ヌクレアーゼは、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。ZFNは、選択した遺伝子および開裂ドメインまたは開裂半ドメイン内の標的部位に結合するように操作された亜鉛フィンガータンパク質を含む。
【0077】
上述にように、亜鉛フィンガー結合ドメインは、選択した配列に結合するように操作され得る。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135−141、Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313−340、Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656−660、Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632−637、Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411−416を参照されたい。操作された亜鉛フィンガー結合ドメインは、天然に生じる亜鉛フィンガータンパク質と比較して、新規結合特異性を有することができる。操作方法は、これらに限定されないが、合理的設計および様々な種類の選択を含む。合理的設計は、例えば、各3つ組または4つ組ヌクレオチド配列が特定の3つ組または4つ組配列に結合する亜鉛フィンガーの1つ以上のアミノ酸配列と関連する3つ組(または4つ組)ヌクレオチド配列および個々の亜鉛フィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用を含む。例えば、譲受人共通の米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたく、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0078】
ファージ提示およびツーハイブリッドシステムを含む例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,410,248号、同第6,140,466号、同第6,200,759号、および同第6,242,568号、ならびに国際公開第98/37186号、国際公開第98/53057号、国際公開第00/27878号、国際公開第01/88197号、および英国第2,338,237号に開示されている。加えて、亜鉛フィンガー結合ドメインの結合特異性の強化は、例えば譲受人共通の国際公開第02/077227号に記載されている。
【0079】
標的部位ZFNの選択および融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築方法は、当業者に公知であり、米国特許出願公開第20050064474号および同第20060188987号に詳細に説明されており、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0080】
加えて、これらおよび他の参考文献に開示されるように、亜鉛フィンガードメインおよび/または多指亜鉛フィンガータンパク質は、例えば長さが5つ以上のアミノ酸のリンカーを含む、任意の好適なリンカー配列を使用して一緒に連結され得る。長さが6つ以上のアミノ酸の例示的なリンカー配列については、例えば、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、および同第7,153,949号を参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々の亜鉛フィンガー間に任意の組み合わせの好適なリンカーを含む。
【0081】
ZFNおよび/またはメガヌクレアーゼ等のヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ(開裂ドメイン、開裂半ドメイン)も含む。上述のように、開裂ドメインは、DNA結合ドメイン、例えばヌクレアーゼからの亜鉛フィンガーDNA結合ドメインおよび開裂ドメイン、または異なるヌクレアーゼからのメガヌクレアーゼDNA結合ドメインおよび開裂ドメインと異種であってもよい。異種開裂ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。開裂ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼは、これらに限定されないが、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼを含む。例えば、2002−2003 Catalogue,New England Biolabs,Beverly,MAおよびBelfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379−3388を参照されたい。DNAを開裂するさらなる酵素が公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ、緑豆ヌクレアーゼ、膵臓DNase I、小球菌ヌクレアーゼ、酵母HOエンドヌクレアーゼ、Linn et al.(eds.)Nucleases,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1993も参照されたい)。これらの酵素(またはその機能断片)の1つ以上は、開裂ドメインおよび開裂半ドメインの供給源として使用され得る。
【0082】
同様に、開裂半ドメインは、上述されるように、開裂活性のために二量体化を必要とする任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。一般に、融合タンパク質が開裂半ドメインを含む場合、2つの融合タンパク質が開裂に必要である。あるいは、2つの開裂半ドメインを含む単一タンパク質が使用され得る。2つの開裂半ドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能断片)に由来するか、またはそれぞれの開裂半ドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能断片)に由来することができる。加えて、2つの融合タンパク質の標的部位は、好ましくは、2つの融合タンパク質をそれらのそれぞれの標的部位に結合することにより、開裂半ドメインを、相互に対して、例えば二量体化により、開裂半ドメインに機能開裂ドメインを形成させる空間的配向に置くように相互に対して配置される。よって、特定に実施形態では、標的部位の端部付近は、5〜8ヌクレオチドまたは15〜18ヌクレオチドで分離される。しかしながら、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対は、2つの標的部位(例えば、2〜50以上のヌクレオチド対)間に介在することができる。一般に、開裂部位は、標的部位間に介在する。
【0083】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在し、DNAに(認識部位で)配列特異的に結合し、結合部位でまたはその付近でDNAを開裂することができる。特定の制限酵素(例えばIIS型)は、認識部位から除去された部位でDNAを開裂し、分離可能な結合および開裂ドメインを有する。例えば、IIS型酵素であるFokIは、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチドで、およびもう一方のその認識部位から13ヌクレオチドでDNAの二本鎖開裂を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号、同第5,436,150号、および同第5,487,994号、ならびにLi et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:4275−4279、Li et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:2764−2768、Kim et al.(1994a)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:883−887、Kim et al.(1994b)J.Biol.Chem.269:31,978−31,982を参照されたい。よって、一実施形態では、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素からの開裂ドメイン(または開裂半ドメイン)と、1つ以上の亜鉛フィンガー結合ドメインとを含み、これらは操作されても、操作されなくてもよい。
【0084】
開裂ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的なIIS型制限酵素は、FokIである。この特殊な酵素は、二量体として活性である。Bitinaite et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:10,570−10,575。したがって、本開示の目的において、開示される融合タンパク質に使用されるFokI酵素の一部は、開裂半ドメインと見なされる。よって、亜鉛フィンガー−FokI融合を使用する標的二本鎖開裂および/または細胞配列の標的置換において、それぞれFokI開裂半ドメインを含む2つの融合タンパク質は、触媒的に活性の開裂ドメインを再構成するために使用され得る。あるいは、亜鉛フィンガー結合ドメインおよび2つのFokI開裂半ドメインを含む単一ポリペプチドも使用され得る。亜鉛フィンガーFokI融合を使用する標的開裂および標的配列改変のパラメータは、本開示の別の箇所で提供される。
【0085】
開裂ドメインまたは開裂半ドメインは、機能開裂ドメインを形成するために、開裂活性を維持する、または多量体化(例えば二量体化)する能力を維持するタンパク質の任意の一部であり得る。
【0086】
例示的なIIS型制限酵素は、国際公開第WO07/014275号に記載されており、その全体が本明細書に組み込まれる。さらなる制限酵素は、分離可能な結合および開裂ドメインも含み、これらは、本開示で想定される。例えば、Roberts et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:418−420を参照されたい。
【0087】
特定の実施形態では、開裂ドメインは、例えば、その全ての開示が参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる米国特許公開第20050064474号および同第20060188987号ならびに米国出願第11/805,850(2007年5月23日)に記載されるように、ホモ二量体化を最小限に抑えるまたは防止する1つ以上の操作された開裂半ドメイン(二量体化ドメイン突然変異体とも称される)を含む。FokIの位置446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538のアミノ酸残基は全て、FokI開裂半ドメインの二量体化に影響を与えるための標的である。
【0088】
偏性ヘテロ二量体を形成するFokIの例示的な操作された開裂半ドメインは、第1の開裂半ドメインがFokIの位置490および538でアミノ酸残基に突然変異体を含み、第2の開裂半ドメインがアミノ酸残基486および499で突然変異体を含む対を含む。
【0089】
よって、一実施形態では、490での突然変異はGlu(E)をLys(K)で置換し、538での突然変異はIso(I)をLys(K)で置換し、486での突然変異はGln(Q)をGlu(E)で置換し、位置499での突然変異はIso(I)をLys(K)で置換する。具体的には、本明細書に記載される操作された開裂半ドメインは、「E490K:I538K」と称される操作された開裂半ドメインを産生するために、1つの開裂半ドメインの位置490(E→K)および538(I→K)を突然変異させることにより、そして「Q486E:I499L」と称される操作された開裂半ドメインを産生するために、別の開裂半ドメインの位置486(Q→E)および499(I→L)を突然変異させることにより調製された。本明細書に記載される操作された開裂半ドメインは、異常な開裂が最小限に抑えられるまたは消失する偏性ヘテロ二量体突然変異体である。例えば、米国仮出願第60/808,486号(2006年5月25日に出願された)の実施例1を参照されたく、その開示は、全ての目的において参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0090】
本明細書に記載される操作された開裂半ドメインは、米国特許公開第20050064474号の実施例5ならびに米国特許公開第2007/0305346号および同第2008/0131962号の実施例38ならびに米国特許仮出願第61/337,769号(2010年2月8日に出願された)および同第61/403,916号(2010年9月23日に出願された)に記載されるように、例えば、野生型開裂半ドメイン(FokI)の部位特異的突然変異により任意の好適な方法を使用して調製され得る。
【0091】
ヌクレアーゼ発現構築物は、当該技術分野に公知の方法を使用して容易に設計することができる。例えば、米国特許公開第20030232410号、同第20050208489号、同第20050026157号、同第20050064474号、同第20060188987号、同第20060063231号、および国際公開第WO07/014275号を参照されたい。特定の実施形態では、ヌクレアーゼの発現は、誘導性プロモーター、例えばラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下で活性化され(抑制解除される)、グルコースの存在下で抑制されるガラクトキナーゼプロモーターの制御下にある。特に、ガラクトキナーゼプロモーターが誘導され、ヌクレアーゼ(複数可)が炭素源の遂次変化時(例えばグルコースからラフィノース、そしてガラクトース)に発現する。誘導性プロモーターの他の非限定的な例としては、CUP1、MET15、PHO5、およびtet−応答性プロモーターが挙げられる。
【0092】
送達
本明細書に記載されるタンパク質(例えばZFP)、それをコードするポリヌクレオチド、ならびにタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含む組成物は、任意の好適な手段により標的細胞に送達され得る。好適な細胞には、これらに限定されないが、真核生物および原核生物細胞ならびに/または細胞系が含まれる。そのような細胞またはそのような細胞から生成された細胞系の非限定的な例としては、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、およびperC6細胞、ならびにヨトウガ(Sf)等の昆虫細胞、またはサッカロミセス、ピチア、およびシゾサッカロミセス等の真菌細胞が挙げられる。特定の実施形態では、細胞系は、CHO−K1、MDCK、またはHEK293細胞系である。好適な一次細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)、これらに限定されないが、CD4+T細胞またはCD8+T細胞等の他の血液細胞サブセットが含まれる。好適な細胞には、例として、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、および間葉幹細胞等の幹細胞も含まれる。
【0093】
本発明に記載される亜鉛フィンガータンパク質を含むタンパク質を送達する方法は、例えば、米国特許第6,453,242号、同第6,503,717号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,607,882号、同第6,689,558号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号、および同第7,163,824号に記載されており、その全ての開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0094】
本明細書に記載されるように、亜鉛フィンガータンパク質は、亜鉛フィンガータンパク質(複数可)の1つ以上をコードする配列を含有するベクターを使用しても送達され得る。任意のベクター系が使用され得、これらに限定されないが、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、およびアデノ関連ウイルスベクター等が含まれる。米国特許第6,534,261号、同第6,607,882号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号、および同第7,163,824号も参照されたく、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。さらに、これらのベクターのいずれも1つ以上の亜鉛フィンガータンパク質コード配列を含んでもよいことは明らかである。よって、1つ以上のZFPが細胞の中に導入されるとき、ZFPは、同じベクターまたは異なるベクター上に保有され得る。複数のベクターが使用されるとき、それぞれのベクターは、1つまたは複数のZFPをコードする配列を含んでもよい。
【0095】
従来のウイルスおよび非ウイルスに基づく遺伝子導入法は、細胞(例えば哺乳類細胞)および標的組織内に操作されたZFPをコードする核酸を導入するために使用され得る。そのような方法は、ZFPをコードする核酸をインビトロで細胞に投与するためにも使用され得る。特定の実施形態では、ZFPをコードする核酸は、インビボまたはエクスビボ遺伝子療法の使用のために投与される。非ウイルスベクター送達系には、DNAプラスミド、裸核酸、およびリポソームまたはポロキサマー等の送達ビヒクルと複合される核酸が含まれる。ウイルスベクター送達系には、エピソームまたは細胞に送達された後の統合ゲノムのいずれかを有するDNAおよびRNAウイルスが含まれる。遺伝子療法手順の概説については、Anderson,Science256:808−813(1992)、Nabel&Felgner,TIBTECH11:211−217(1993)、Mitani&Caskey,TIBTECH11:162−166(1993)、Dillon,TIBTECH11:167−175(1993)、Miller,Nature357:455−460(1992)、Van Brunt,Biotechnology6(10):1149−1154(1988)、Vigne,Restorative Neurology and Neuroscience8:35−36(1995)、Kremer&Perricaudet,British Medical Bulletin51(1):31−44(1995)、Haddada et al., in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm(eds.)(1995)、およびYu et al.,Gene Therapy1:13−26(1994)を参照されたい。
【0096】
核酸の非ウイルス送達の方法には、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、または脂質:核酸複合体、ネイキッドDNA、人工ビリオン、および薬剤により強化されたDNAの取り込みが含まれる。例えば、Sonitron 2000 system(Rich−Mar)を使用するソノポレーションも、核酸の送達に使用することができる。
【0097】
さらなる例示的な核酸送達システムには、Amaxa(登録商標) Biosystems(Cologne,Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville,Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston,MA)、およびCopernicus Therapeutics Inc,(例えば、米国特許第6008336号明細書を参照されたい)により提供されるものが含まれる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号明細書、米国特許第4,946,787号明細書、および米国特許第4,897,355号明細書に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(登録商標)およびLipofectin(登録商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適な陽イオン性および中性脂肪には、Felgnerのそれら、国際公開第91/17424号、国際公開第91/16024号が含まれる。細胞(エクスビボ投与)または標的組織(インビボ投与)に送達することができる。
【0098】
免疫脂質錯体等の標的リポソームを含む脂質:核酸錯体の調製は、当業者によく知られている(例えば、Crystal,Science 270:404−410(1995)、Blaese et al.,Cancer Gene Ther.2:291−297(1995)、Behr et al.,Bioconjugate Chem.5:382−389(1994)、Remy et al.,Bioconjugate Chem.5:647−654(1994)、Gao et al.,Gene Therapy 2:710−722(1995)、Ahmad et al.,Cancer Res.52:4817−4820(1992)、米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、および同第4,946,787号明細書を参照されたい)。
【0099】
さらなる送達の方法には、送達される核酸のEnGeneIC送達ビヒクル(EDV)の中へのパッケージングの使用が含まれる。これらのEDVは、抗体の1つのアームが標的組織に対して特異性を有し、もう一方がEDVに対して特異性を有する二重特異性抗体を使用して、標的組織に特異的に送達される。抗体は、EDVを標的細胞の表面に運び、次いでEDVは、エンドサイトーシスにより細胞内に運ばれる。細胞内に取り込まれたら、内容物が放出される(MacDiarmid et al(2009)Nature Biotechnology vol27(7)p.643を参照されたい)。
【0100】
改変されたZFPをコードする核酸の送達のためのRNAまたはDNAウイルスに基づくシステムの使用は、ウイルスに体内の特定の細胞を標的とさせ、ウイルスペイロードを核に輸送するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与(インビボ)することができるか、またはインビトロで細胞を治療するために使用することができ、修飾された細胞が患者に投与される(エクスビボ)。ZFPの送達のための従来のウイルスに基づくシステムには、遺伝子送達のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクチン、および単純ヘルペスウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。宿主ゲノム内の組込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ関連ウイルス遺伝子送達方法を使用して可能であり、しばしば、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。さらに、高い導入効率が、多くの異なる細胞型および標的組織で観察されている。
【0101】
レトロウイルスの向性は、外来のエンベロープタンパク質を組み込むことによって変更することができ、標的細胞の潜在的な標的群を拡張する。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入または感染させることができるレトロウイルスベクターであり、典型的には高ウイルス価を産生する。レトロウイルス遺伝子送達システムの選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6〜10kbの外来配列のパッケージング能力を有する、シス作用の長い末端反復から成る。最小限のシス作用LTRは、ベクターの複製およびパッケージングに十分であり、それらは、次いで、恒久的な導入遺伝子発現を提供するように治療遺伝子を標的細胞内に組み込むために使用される。広範囲にわたって使用されるレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびその組み合わせに基づくものが含まれる。(例えば、Buchscher et al.,J.Virol.66:2731−2739(1992)、Johann et al.,J.Virol.66:1635−1640(1992)、Sommerfelt et al.,Virol.176:58−59(1990)、Wilson et al.,J.Virol.63:2374−2378(1989)、Miller et al.,J.Virol.65:2220−2224(1991)、PCT/US94/05700を参照されたい)。
【0102】
一過性発現が好ましい用途では、アデノウイルスに基づくシステムを使用することができる。アデノウイルスに基づくベクターは、多くの細胞型において非常に高い導入効率があり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを使用して、高力価および高レベルの発現が得られている。比較的単純なシステムにおいて、このベクターを多量に産生することができる。アデノ関連ウイルス(「AAV」)ベクターを使用して、例えば、核酸およびペプチドのインビトロ産生において、およびインビボおよびエクスビボ遺伝子治療手順(例えば、West et al.,Virology 160:38〜47(1987)、米国特許第4,797,368号、国際公開第93/24641号、Kotin,Human Gene Therapy 5:793〜801(1994)、Muzyczka,J.Clin.Invest.94:1351(1994)を参照されたい)のために、細胞に標的核酸を形質導入することもできる。AAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号、Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.5:3251〜3260(1985)、Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072〜2081(1984)、Hermonat & Muzyczka,PNAS 81:6466〜6470(1984)、およびSamulski et al.,J.Virol.63:03822−3828(1989)を含む、多数の刊行物に記載される。
【0103】
現在、少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが臨床試験における遺伝子導入に使用可能であり、それらは形質導入剤を生成するためにヘルパー細胞株に挿入された遺伝子による欠損ベクターの相補性を含むアプローチを利用する。
【0104】
pLASNおよびMFG−Sは、臨床試験で使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunber et al.,Blood 85:3048−305(1995)、Kohn et al.,Nat.Med.1:1017−102(1995)、Malech et al.,PNAS 94:22 12133−12138(1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験で使用された最初の治療ベクターであった。(Blaese et al.,Science 270:475−480(1995))。MFG−Sパッケージされたベクターに対して、50%またはそれより大きい導入効率が観察されている。(Ellem et al.,Immunol Immunother.44(1):10−20(1997)、Dranoff et al.,Hum.Gene Ther.1:111−2(1997)。
【0105】
アデノ関連ウイルスベクター(rAAV)は、欠損および非病原性パルボウイルスアデノ関連2型ウイルスに基づく有望な代替遺伝子送達システムである。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAV145bp逆方向末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入細胞のゲノム内への組込みによる効率的な遺伝子導入および安定した導入遺伝子送達は、このベクター系の重要な特長である。(Wagner et al.,Lancet 351:9117 1702−3(1998),Kearns et al.,Gene Ther.9:748−55(1996))。AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、およびAAV8を含む他のAAV血清型も本発明に従って使用することができる。
【0106】
複製欠損性アデノウイルスベクター(Ad)を高力価で産生することができ、多数の異なる細胞型を容易に感染させる。アデノウイルスベクターの大半は、導入遺伝子がAdE1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置換し、その後、複製欠損性ベクターが、トランス内の消失遺伝子機能を供給するヒト293細胞で増殖するように改変される。Adベクターは、肝臓、腎臓、および筋肉で見出されるもの等の非分裂の分化した細胞を含む、複数の種類の組織をインビボで形質転換することができる。従来のAdベクターは、大きな担持能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の例には、筋肉内注入を用いる抗腫瘍免疫のポリヌクレオチド治療が挙げられた(Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083−9(1998))。臨床試験における遺伝子導入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例には、Rosenecker et al.,Infecton 24:1 5−10(1996)、Sterman et al.,Hum.Gene Ther.9:7 1083−1089(1998)、Welsh et al.,Hum.Gene Ther.2:205−18(1995)、Alvarez et al.,Hum.Gene Ther.5:597−613(1997)、Topf et al.,Gene Ther.5:507−513(1998)、Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083−1089(1998)が挙げられる。
【0107】
パッケージング細胞を使用して、宿主細胞を感染させることが可能なウイルス粒子を形成する。そのような細胞には、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317が含まれる。遺伝子治療で使用されるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージングする産出細胞株によって生成される。これらのベクターには、典型的には、パッケージングおよびその後の宿主への組込みに必要とされる最小限のウイルス配列(適用可能な場合)、発現されるようにタンパク質をコードする発現カセットによって置換されている他のウイルス配列が含まれる。欠損しているウイルス機能は、パッケージングする細胞株によってトランスで提供される。例えば、遺伝子治療に使用するAAVベクターは、典型的には、宿主ゲノム内へのパッケージングおよび組込みに必要とされるAAVゲノムからの逆方向末端反復(ITR)配列のみを所有する。ウイルスDNAは、細胞株内にパッケージングされ、他のAAV遺伝子すなわち、repおよびcapをコードするが、ITR配列を欠失するヘルパープラスミドを含有する。この細胞株はまた、ヘルパーとしてアデノウイルスに感染する。このヘルパーウイルスは、ヘルパープラスミドから、AAVベクターの複製、およびAAV遺伝子の発現を促進する。このヘルパープラスミドは、ITR配列の欠失の結果、相当な量でパッケージングされない。アデノウイルスの汚染は、例えば、AAVよりも敏感であるアデノウイルスに対する熱処理によって減少することができる。
【0108】
多くの遺伝子治療用途において、遺伝子治療ベクターが高度の特異性で特定の細胞型に送達されることが望ましい。したがって、ウイルスの外表面上でウイルス外被タンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することによって、ウイルスベクターを所定の細胞型に対する特異性を有するように修飾することができる。リガンドは、関心の細胞型上に存在することで知られている受容体に対する親和性を有するように選択される。例えば、Han et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:9747−9751(1995)は、gp70に融合されたヒトヘレグリンを発現するように、モロニーマウス白血病ウイルスを修飾することができ、そのウイルスが、ヒト上皮成長因子受容体を発現するある特定のヒト乳癌細胞を感染させることを報告した。この原理は、細胞表面受容体に対して、標的細胞が受容体を発現し、ウイルスがリガンドを含む融合タンパク質を発現する、他のウイルス標的細胞対にまで及ぶことができる。例えば、実質的に任意の選択された細胞受容体に特異的結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を表示するように、線状ファージを改変することができる。上記の説明は、主にウイルスベクターに適用されるが、同一の原理を非ウイルスベクターに適用することができる。特異的標的細胞による取り込みを好む特異的な取り込み配列を含有するように、そのようなベクターを改変することができる。
【0109】
遺伝子治療ベクターは、下で説明するように、個々の患者への投与、典型的には、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、もしくは頭蓋内注入)または局所投与によって、インビボで送達することができる。あるいは、個々の患者から移植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)または万能ドナーの造血幹細胞等の細胞に、ベクターをエクスビボで送達することができ、その後、ベクターを組み込んだ細胞の選択後に、患者への細胞の再移植が続く。
【0110】
診断、研究のため、または遺伝子治療のためのエクスビボ細胞トランスフェクション(例えば、宿主生物にトランスフェクトした細胞の再注入を介して)が当業者によく知られている。好ましい実施形態では、細胞は、対象生物から単離され、ZFP核酸(遺伝子またはcDNA)をトランスフェクトし、対象生物(例えば、患者)内に戻って再注入される。エクスビボのトランスフェクションに好適な多様な細胞型は、当業者によく知られている(患者からの細胞の単離および培養方法についての説明は、例えば、Freshney et al.,Culture of Animal Cells,A Manual of Basic Technique(3rd ed.1994)、およびそこで引用される参考文献を参照されたい)。
【0111】
好適な細胞には、これらに限定されないが、真核生物および原核生物細胞ならびに/または細胞系が含まれる。そのような細胞またはそのような細胞から生成された細胞系の非限定的な例としては、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、およびperC6細胞、ならびにヨトウガ(Sf)等の昆虫細胞またはサッカロミセス、ピチアおよびシゾサッカロミセス等の真菌細胞が挙げられる。特定の実施形態では、細胞系は、CHO−K1、MDCK、またはHEK293細胞系である。加えて、一次細胞は、ZFNで処理した後、治療される対象に再導入するために単離され、エクスビボで使用され得る。好適な一次細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)、およびこれらに限定されないが、CD4+T細胞またはCD8+T細胞等の他の血液細胞サブセットが含まれる。好適な細胞には、例として、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、および間葉幹細胞が含まれる。
【0112】
一実施形態では、幹細胞は、細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療のためのエクスビボ処置で使用される。幹細胞を使用する利点は、それらがインビトロで他の細胞型に分化することができるか、または、それらが骨髄に生着する哺乳動物(幹細胞のドナー等)に導入し得ることである。GM−CSF、IFN−γ、およびTNF−α等のサイトカインを使用して、CD34+細胞を臨床的に重要な免疫細胞型にインビトロで分化するための方法が知られている(Inaba et al.,J.Exp.Med.176:1693−1702(1992)を参照されたい)。
【0113】
幹細胞は、周知の方法を使用して、形質導入および分化のために単離される。例えば、幹細胞は、CD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR−1(顆粒球)、およびIad(分化された抗原提示細胞)等の不要な細胞を結合する抗体を有する骨髄細胞をパンニングすることによって骨髄から単離される(Inaba et al.,J.Exp.Med.176:1693−1702(1992)を参照されたい)。
【0114】
修飾された幹細胞もいくつかの実施形態において使用され得る。例えば、アポトーシスに耐性をつけた幹細胞は、幹細胞が本発明のZFP TFも含有する治療用組成物として使用され得る。アポトーシスに対する耐性は、例えばBAX−またはBAK特異的ZFN(米国特許出願第12/456,043号)を使用して幹細胞内のBAXおよび/もしくはBAKを、または例えば同様にカスパーゼ−6特異的ZFNを使用して、カスパーゼ内で破壊されたものをノックアウトすることにより生じてもよいこれらの細胞は、突然変異体または野生型PD1を調節することが知られているZFP TFを用いてトランスフェクトされ得る。
【0115】
治療的ZFP核酸を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソーム等)を、細胞の形質導入のために、生物にインビボで直接投与することもできる。あるいは、ネイキッドDNAを投与することができる。投与は、注射、注入、局所適用、およびエレクトロポレーションを含むが、これらに限定されない、血液細胞または組織細胞との最終的な接触内に分子を導入するために通常使用される経路のいずれかによる。そのような核酸を投与する好適な方法は、使用可能であり、かつ当業者にも知られており、1つ以上の経路を使用して特定の組成物を投与することができるが、特定の経路は、しばしば、別の経路よりも即時かつ有効な反応を提供することができる。
【0116】
造血幹細胞にDNAを導入するための方法が、例えば、米国特許第5,928,638号明細書に開示される。導入遺伝子の造血幹細胞、例えば、CD34+細胞への導入に有用なベクターには、アデノウイルス35型が含まれる。
【0117】
導入遺伝子の免疫細胞(例えば、T細胞)への導入に好適なベクターには、非組込みレンチウイルスベクターが含まれる。例えば、Ory et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11382−11388、Dull et al.(1998)J.Virol.72:8463−8471、Zuffery et al.(1998)J.Virol.72:9873−9880、Follenzi et al.(2000)Nature Genetics 25:217−222を参照されたい。
【0118】
医薬的に許容可能な担体は、投与されている特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によってある程度決定される。したがって、下で説明するように、使用可能な医薬組成物の多種多様の好適な製剤が存在する(例えば、Remington‘s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,1989を参照されたい)。
【0119】
用途
開示される組成物および方法は、1つ以上のPD1遺伝子の発現を調節することが望ましい任意の用途に使用され得る。特に、これらの方法および組成物は、PD1対立遺伝子の調節が望ましい場合に使用され得、これには治療用途および研究用途が含まれるが、これらに限定されない。本方法および組成物は、HIV/AIDSおよびHCV等の慢性感染性疾患を治療するために使用され得る。加えて、本方法および組成物は、メラノーマ、卵巣癌、結腸直腸/結腸癌、腎細胞癌、形質細胞腫/骨髄腫、乳癌、および肺癌等の癌を治療するために使用され得る。
【0120】
PD1抑制ZFP TFまたはZFNが治療剤として使用され得る疾患および状態には、これらに限定されないが、慢性感染性疾患および癌が含まれる。PD1遺伝子の活性化が治療上の処置として有用である疾患および状態には、全身性紅斑性狼瘡(SLE)等の自己免疫疾患が含まれる。ZFP TFまたはZFNをコードするポリヌクレオチドは、それ自体が治療薬として使用されるか、または送達のためにベクター内に組み込まれる。
【0121】
PD1対立遺伝子を抑制するZFP−TFおよび/またはPD1特異的ZFNを含む方法および組成物はまた、慢性感染性疾患または癌を治療するように設計された他の治療薬と共に使用され得る。これらのZFPまたはZFN(またはこれらのZFPもしくはZFNをコードするポリヌクレオチド)は、同時に(例えば同じ薬学的組成物で)投与されるか、または任意の順序で順次投与され得る。任意の種類の癌が治療され得、これらに限定されないが、これには、肺癌、膵臓癌、肝臓癌、骨癌、乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、白血病、リンパ腫、脳癌等が含まれる。同様に、PD1対立遺伝子を活性化するように設計されたZFP TFは、自己免疫疾患を治療するように設計された他の治療薬と共に使用され得る。
【0122】
治療のための方法および組成物は、患者から単離された細胞内のPD1対立遺伝子の突然変異体複写物がPD1特異的ZFNを使用して、野生型PD1対立遺伝子に修飾された細胞組成物も含む。これらのエクスビボ修飾された細胞は、次いで患者に再導入される。加えて、修飾された幹細胞を含む方法および組成物も想定される。例えば、幹細胞内のPD1対立遺伝子の突然変異複写物は、PD1特異的ZFNを使用して、野生型PD1対立遺伝子に修飾された。他の実施形態では、幹細胞内の野生型PD1対立遺伝子がPD1特異的ZFNを使用して修飾された幹細胞組成物が提供される。これらの組成物は、他の治療薬と共に使用され得る。これらの組成物は、同時に(例えば同じ薬学的組成物で)投与されるか、または任意の順序で順次投与され得る。
【0123】
本発明の方法および組成物は、例えば、慢性感染、癌、または自己免疫の動物モデルなどの、これらの障害の研究および有用な治療薬のさらなる発見を可能にするインビトロおよびインビボモデルの設計および実装にも有用である。
【0124】
以下の実施例は、ヌクレアーゼがZFNを含む本開示の例示的な実施形態に関する。これは、単に例示の目的のためであり、他のヌクレアーゼ、例えば操作されたDNA結合ドメインならびに/または操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)DNA結合ドメインおよび異種開裂ドメインの天然に生じる融合物を伴うホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)が使用されることを理解されたい。
【実施例】
【0125】
実施例1:持続的に生物学的に活性なPD1特異的ZFNの同定
ZFNはヒトPD1遺伝子に対して組み立てられ、Miller et al.(2007)Nat.Biotechnol.25:778−785および米国特許公開第20050064474号ならびに国際公開第WO2005/014791号に記載されるように、ELISAおよびCEL1アッセイにより試験された。
【0126】
ZFPの具体的な例を表1に開示する。本表の最初のコラムは、ZFPの内部参照名(数字)である。表2は、PD1上の標的結合部位を列挙する。「F」は、フィンガーを指し、「F」に続く数字は、どの亜鉛フィンガーであるかを指す(例えば、「F1」はフィンガー1を指す)。
【0127】
表1:ヒトPD1標的亜鉛フィンガータンパク質
【0128】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0129】
表2:ヒトPD1遺伝子におけるZFN標的部位
【0130】
【表2】
【0131】
最初のインビトロ活性アッセイは、上述のようにヌクレオフェクト(nucleofected)された細胞サンプル上で行われた。簡潔に、製造者により指定されたようにAmaxa(商標)Nucleofectionキットを使用して、トランスフェクションにより、ZFP−FokI融合物をコードするプラスミドをK562細胞に導入した。トランスフェクションにおいて、それぞれの亜鉛フィンガーヌクレアーゼ発現プラスミドおよび100μLのAmaxa(商標)溶液Vの量を変更しながら、200万のK562細胞を混合した。T−16プログラムを使用して、Amaxa Nucleofector II(商標)に細胞をトランスフェクトした。トランスフェクション直後、細胞を2つの異なるフラスコに分け、30℃または37℃のいずれかで4日間、5%CO2中で10%のFBSで補充されたRPMI培地(Invitrogen)で成長させた。
【0132】
この初期のインビトロスクリーニングから、2つの主要なZFN対を同定し、それらの効率の改善を図るために精錬に供された。これらの対は、それぞれ、PD1遺伝子のエキソン1および5を標的とする。精錬された(改善された)タンパク質は、基本的に上述のように、時間経過実験で再度試験された。結果を下の表3に要約する。
【0133】
表3:PD1 NHEJ
【0134】
【表3】
【0135】
表3に示されるように、エキソン5に対して細胞をZFNで処理することにより、集団から大半のゲノム編集細胞を損失させることができ、一方、エキソン1に対して設計されたZFNで処理された細胞におけるゲノム編集シグナルは、より安定している。
【0136】
PD1遺伝子座でのZFN活性を判定するために、基本的に製造者の指示通りに(Trangenomic SURVEYOR(商標))、Cel−1に基づくSURVEYOR(商標)ヌクレアーゼアッセイを行った。細胞を収集し、製造者の指示(Epicentre(登録商標))に従い、Quickextract(商標)Kitを使用して、染色体DNAを調製した。Accuprime(商標)高忠実度DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を使用して、PD1遺伝子座の適切な領域をPCR増幅した。PCR反応物を94℃に加熱し、徐々に室温に冷却した。約200ngのアニールされたDNAを0.33μLのCel−I酵素と混合し、42℃で20分間、インキュベートした。1Xのトリス−ホウ酸塩−EDTA緩衝液中で、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、反応産物を分析した。
【0137】
3または10日間のいずれかで、30℃または37℃のいずれかに保たれた一次PBMCサンプルにおいても、構築物を試験した(表4を参照されたい)。簡潔に、AllCellsからPBMCを購入し、製造者のプロトコル(Dynal)に従い、RPMI+10%のFBS+1%のL−グルタミン(30mg/mL)+IL−2(1ng/mL、Sigma)中で培養し、抗CD3/CD28ビーズで活性化した。細胞を24ウェルプレートの1mL容量に3E5細胞/mLで播種した。
【0138】
記載されるように(米国特許公開第20080159996号を参照されたい)関心のZFN対を含有するアデノウイルスベクターを構築し、2日後に10、30、または100のMOI(MOIは感染力価に基づき計算された)で添加された。
【0139】
ウイルスに露出させた3または10日後に細胞を収集し、国際特許公開第WO07/014275号に記載されるように行われたCel−Iに基づくSURVEYOR(商標)ヌクレアーゼアッセイを使用して、遺伝子修飾効率を判定した。Oleykowski et al.(1998)Nucleic Acids Res.26:4597−4602、Qui et al.(2004)BioTechniques36:702−707、Yeung et al.(2005)BioTechniques38:749−758も参照されたい。
【0140】
表4に示されるZFN対において、それぞれのZFNは、ZFN12942と共に試験された。上述のCel−1に基づくSURVEYOR(商標)ヌクレアーゼアッセイにより測定されるように、活性はパーセントNHEJ活性により測定される。
【0141】
PD1特異的ZFNのさらなる対は、上述のように、一次PBMCにおける活性についても試験され、結果を表4に示す。表4に示されるデータにおいて、PD1特異的単量体12942は、表4に列挙される第2のZFNと常に対合され、活性対(即ちZFN12942はZFN12947〜25041のそれぞれと対合される)を形成する。図1も参照されたい(サンプルは表4に示される通りである)。
【0142】
表4:PD1 ZFNの活性
【0143】
【表4】
【0144】
分子レベルでのZFN誘導NHEJ活性の局所作用をアッセイするために、CD8+細胞をエキソン1特異的ZFN対12942および12947で処理した。簡潔に、CD8+細胞をAllCellsから購入し、RPMI+10%のFBS+1%のL−グルタミン(30mg/mL)+IL−2(30μg/mL、Sigma)中で培養し、4〜24時間静置した。
【0145】
上述のように関心のZFN対を含有するプラスミドを構築し、製造者により指定されるように、Amaxa(商標)Nucleofectionキットを用いて、1e6細胞/ヌクレオフェクションが使用された。製造者のプロトコル(Dynal)に従い、抗CD3/CD28ビーズでヌクレオフェクション後、細胞を12〜24時間活性化した。
【0146】
ヌクレオフェクションの3または10日後に細胞を収集し、国際特許公開第WO07/014275号に記載されるように行われたCel−1に基づくSURVEYOR(商標)ヌクレアーゼアッセイを使用して、遺伝子修飾効率を判定した。Oleykowski et al.(1998)Nucleic Acids res.26:4597−4602、Qui et al.(2004)BioTechniques36:702−707、Yeung et al.(2005)BioTechniques38:749−758も参照されたい。
【0147】
PCR産物をクローン化し、大腸菌にトランスフェクトした。抗生物質耐性のサブクローンを成長させ、プラスミドを単離し、次いでNHEJの結果として生じた任意の配列変化を観察するために、配列分析を受けた(図2を参照されたい)。図からわかるように、様々な挿入および欠失がZFN開裂部位付近で観察された。
【0148】
これらのZFNは、米国特許公開第20090111119号に記載されるように、酵母系においても試験された。
【0149】
実施例2:マウスにおけるPD1特異的ZFNのエクスビボ活性
インビボでPD1の欠失の概念を試験するために、マウスPD1特異的ZFNを上述のように作製し、次いでエクスビボで試験した。亜鉛フィンガードメインの配列特徴ならびにそれらの結合特異性を下の表5および6に示す。
【0150】
表5:マウスPD1特異的亜鉛フィンガー設計
【0151】
【表5】
【0152】
表6:マウスPD1特異的亜鉛フィンガー設計における結合特異性
【0153】
【表6】
【0154】
1日目に、Pmel TCR遺伝子導入/Rag1−/−マウスから収集した脾細胞を単一細胞懸濁液の中で処理し、25μlのInvitrogen Mouse T−Activator CD3/CD28 Dynabeads/106細胞と共に完全培地(RPMI−1640、10%のウシ胎児血清、0.1mMの非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、2mMのL−グルタミン、50μg/mlの硫酸ゲンタマイシン、50μMの2−メルカプトエタノール)に再懸濁した。細胞を2×106細胞/ml(2ml/ウェル)で、24ウェルプレートで平板培養した。3日目に、細胞を収集し、磁石を用いてビーズから分離し、数えた。Amaxa(商標)Nucleofectionキットと共に提供されたプロトコルに従い、脾細胞のトランスフェクションを行った。簡潔に、1×10e7生細胞を100μlのAmaxa Nucleofector溶液に再懸濁し、Amaxa Nucleofector(プログラムX−01)を使用して、4μgのZFN対14546および14545含有プラスミド、または4μgのZFN対14546−FokI ELおよび14545−Fok I KK含有、2.5μgのAmaxa pmax GFPベクター含有、もしくはDNA対照を含まないmut PD1 Fok1プラスミドのいずれかをトランスフェクトした。トランスフェクション後、30℃で、2mlの完全補充されたAmaxa Mouse T細胞Nucleofector培地で細胞を培養した。翌日、1mlのAmaxa Mouse T細胞Nucleofector培地を取り除き、10U/mlのIL−2で補充された1mlの完全培地と交換した。2日後、細胞を収集し、数えた。それぞれの群からの200万の細胞を24ウェルプレート上の抗CD3コーティングされたウェルで平板培養した。翌日、細胞を収集し、抗PD1 PE、抗CD3 PE−Cy7、および抗CD8 APCで染色した。細胞をBD FACSCalibur上で分析した。プロットは、それぞれの群におけるPD1陽性CD3+CD8+細胞%およびそれぞれの群の中央値のPD1蛍光を示す(図3を参照されたい)。データは、抗CD3刺激の存在下でも、PD1特異的ZFNを受けた細胞においてPD1発現が減少することを示す。
【0155】
PD1発現の減少が後の時間点で明白であることを検証するために、上述に記載される24時間ではなく、抗CD3刺激の72時間後にも細胞を収集した。細胞を収集し、抗PD1 PE、抗CD3 PE−Cy7、および抗CD8 APCで染色した。細胞をBD FACSCalibur上で分析した。データを図4に表す。上のヒストグラムは、それぞれの群におけるPD1陽性CD3+CD8+細胞%およびそれぞれの群の中央値のPD1蛍光を示す。下のプロットは、PD1/CFSE発現細胞の頻度を示す。重要なことは、mut PD1 Fok1およびwt PD1 Fok1が対照群より高頻度のPD1neg CFSEdim(分裂細胞)を示し、抗CD3刺激の72時間後でも、PD1発現がPD1特異的ZFNで処理された細胞においてなお減少することを示した。
【0156】
実施例3:TILにおけるヒトPD1特異的ZFNの活性
腫瘍の存在下で、ヒトPD1特異的ZFNをヒト腫瘍浸潤リンパ球(TILs)において試験し、基本的に上述および当該技術分野において公知の方法を使用してアッセイした(例えば、Yoshino et al,(1992)Cancer Research52:775−781を参照されたい)。上述のように、抗CD3抗体を用いてPD1特異的ZFNを活性化し、次いで細胞をAd5/F35アデノウイルス発現PD1特異的ZFNで形質導入した。IL2で細胞を拡張し、次いで抗CD3抗体または腫瘍で再刺激し、刺激の24時間後にアッセイした。結果を下の表7に示す。
【0157】
表7:TILにおけるPD1発現および生存率
【0158】
【表7】
【0159】
表7のデータは、細胞が抗CD3抗体によって刺激されるとき、PD1特異的ZFNの活動を通してPD1発現を減少させ、細胞の生存率の増加をもたらすことを示す。形質導入された細胞が腫瘍で処理されるとき、同じ減少が観察される、即ち、PD1においてZFN媒介される減少は、TIL生存率の増加をもたらす。また、データは、形質導入されたTILにおけるPD1発現の減少が腫瘍細胞の生存率の減少をもたらすことを示す。
【0160】
実施例4:PD1編集された一次ヒトT細胞の精製
実施例1で上述されるように、さらに精錬されたPD1特異的ZFN対がCD4+T細胞において試験された。図5に見られるように、最大44%の編集がいくつかの対で観察された。この実験において、「陽性対照」は、異なる実験条件下で前に行われたCD8+T細胞において25025/12942ZFN対を使用する切断を示す。
【0161】
単離PD1修飾細胞にさらに使用するために、主要対の1つである25029/12942が選択された。簡潔に、これらの実験において、CD4+T細胞を、PD1特異的ZFNをコードするmRNAで処理し、「30℃」条件下で培養し、次いで実施例1に上述されるように、ZFN導入遺伝子の強い発現を刺激し、PD1遺伝子座での開裂を促進する抗CD3/CD8ビーズ(Dynal)に最初に露出することにより刺激した(米国特許公開第20080311095号を参照されたい)。この最初の刺激後、細胞は、再刺激され、FACまたは親和性クロマトグラフィーのいずれかによる精製手順を受けた。
【0162】
簡潔に、CD4+T細胞をCCR5−特異的ZFN(米国特許公開第20080159996号)またはPD1特異的ZFNのいずれかで処理した。細胞を回収し、(i)最初の刺激後、(ii)第2の刺激後だが、任意の精製前、(iii)標準的な方法論を使用して、CD25+(活性化のマーカー)、PD1(−)の細胞選別後、または(iv)抗PD1抗体または抗CD25抗体のいずれかで作製されたマトリクスを使用した、親和性クロマトグラフィー後、Cel−Iアッセイ(上述)によりPD1編集について分析した。
【0163】
図6に示されるように、細胞選別法を使用して(CD25に対して陽性であるが、PD1に対して陰性である細胞を単離した)、最大56%の回復した細胞がCel−Iアッセイによってアッセイされるように修飾されることが分かった。親和性クロマトグラフィー法(細胞は、抗PD1抗体、抗CD25抗体、またはその両方のいずれかを使用して作製された親和性マトリクスを受けた)により精製されたPD1(−)細胞は、Cel−I分析によりアッセイされるように、最大42%の全体的なPC1修飾を示した。
【0164】
細胞選別により精製された細胞も、配列決定によりそのPD1遺伝子座で分析され、結果を下の表8に表す。表からわかるように、Cel−I分析により予測されるパーセント標的修飾(「NHEJ%」)は、配列決定分析によって見出されたものと類似する。この表において、「サンプル」のラベルは、図6に示されるものに相当する。
【0165】
表8:CD25+細胞におけるパーセントPD1修飾
【0166】
【表8】
【0167】
*「修飾された数」は、修飾されたことが観察された配列決定基における配列の数を示す。例えば、サンプル4では、分析された87のうち54の配列が修飾された。
【0168】
PD1特異的ZFNもCD8+T細胞において試験された。この実験において、PD1特異的ZFNをコードするmRNAは、Ribomax Large Scale RNA ProductionT7キット(Promega)、続いてRNeasy mini kit(Qiagen)を使用して産生され、両方とも製造者のプロトコルに従った。上述のように、Amaxa Nucleofection送達系を使用して細胞を形質導入するために、様々な量のmRNAを使用し、パーセントPD1修飾は、Cel Iアッセイにより分析された。
【0169】
図7に示されるように、「NHEJ%」として記載される、観察された修飾の量は、使用されたmRNAの量に関連し、mRNAの入力量が少ないと、標的修飾のパーセンテージが小さくなる。
【0170】
これらの結果は、本明細書に記載されるPD1特異的ZFNが細胞系および一次T細胞においてPD1遺伝子座を修飾することができることを示す。
【0171】
本明細書に記述される全ての特許、特許出願、および刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0172】
開示は、理解を明確にする目的のために図示および例としてある程度詳細に提供されてきたが、様々な変更および修正が本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく実践され得ることは当業者に明らかであろう。したがって、前述の説明および実施例は、制限されるものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]