(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976712
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】ファンモータ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
F04D 29/42 20060101AFI20160817BHJP
F04D 29/053 20060101ALI20160817BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20160817BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20160817BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
F04D29/42 K
F04D29/053 Z
G06F1/16 312E
G06F1/20 C
H05K7/20 H
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-78897(P2014-78897)
(22)【出願日】2014年4月7日
(65)【公開番号】特開2015-200217(P2015-200217A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100132595
【弁理士】
【氏名又は名称】袴田 眞志
(72)【発明者】
【氏名】山崎 央
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】長南 勉
(72)【発明者】
【氏名】田角 和也
【審査官】
冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−82508(JP,A)
【文献】
特開2013−117300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F04D 29/053
G06F 1/16
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受部によって回転可能に軸支されたシャフトを有し、該シャフトを回転軸として駆動源によって回転駆動される回転部と、該回転部の外周側に設けられたインペラ部とを備えたファンモータであって、
前記シャフトには、その軸線方向に沿って貫通孔が設けられており、該貫通孔には支柱が挿通され、
当該ファンモータは、電子機器の機器筐体の内部に配置されるものであり、
前記支柱は、前記貫通孔を挿通した状態で当該ファンモータの一面側及び他面側にある前記機器筐体の一壁面及び他壁面に対して同時に当接可能であり、
前記機器筐体に外力が付与されていない状態では、前記支柱は少なくとも前記機器筐体の一壁面又は他壁面から離間しており、
前記機器筐体に外力が付与されて前記機器筐体が撓んだ場合に、前記支柱が前記機器筐体の一壁面及び他壁面に対して同時に当接した状態となることを特徴とするファンモータ。
【請求項2】
軸受部によって回転可能に軸支されたシャフトを有し、該シャフトを回転軸として駆動源によって回転駆動される回転部と、該回転部の外周側に設けられたインペラ部とを備えたファンモータであって、
前記シャフトには、その軸線方向に沿って貫通孔が設けられており、該貫通孔には支柱が挿通され、
当該ファンモータは、電子機器の機器筐体の内部に配置されるものであり、
前記支柱は、前記貫通孔を挿通した状態で当該ファンモータの一面側及び他面側にある前記機器筐体の一壁面及び他壁面に対して同時に当接可能であり、
前記回転部及び前記インペラ部の一面側を覆う第1カバー板及び他面側を覆う第2カバー板を有するファン筐体を備え、
前記第1カバー板及び前記第2カバー板には、少なくとも前記シャフトと重なる位置に開口部が形成されており、
前記支柱は、前記第1カバー板及び前記第2カバー板の開口部を通って前記機器筐体の一壁面及び他壁面に当接するものであり、
前記支柱は、前記ファン筐体に支持されていることを特徴とするファンモータ。
【請求項3】
請求項2記載のファンモータにおいて、
前記機器筐体に外力が付与されていない状態では、前記支柱は少なくとも前記機器筐体の一壁面又は他壁面から離間しており、
前記機器筐体に外力が付与されて前記機器筐体が撓んだ場合に、前記支柱が前記機器筐体の一壁面及び他壁面に対して同時に当接した状態となることを特徴とするファンモータ。
【請求項4】
請求項2又は3記載のファンモータにおいて、
一端が前記ファン筐体の外縁部に支持される複数の脚部と、各脚部の他端同士を前記シャフトの軸線方向と重なる位置で連結することで前記シャフトの軸線方向に弾性的に変位可能に設けられた連結部とを有する支持体を備え、
前記支柱は、前記支持体の連結部から突出していることを特徴とするファンモータ。
【請求項5】
請求項2記載のファンモータにおいて、
前記支柱は、前記機器筐体の一壁面及び他壁面に対して常に当接した状態であることを特徴とするファンモータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のファンモータにおいて、
前記駆動源は、前記軸受部の外周側に設けられた固定子と、該固定子の外周側に設けられ、前記回転部に固着された回転子とを有するアウターロータ型のモータであることを特徴とするファンモータ。
【請求項7】
請求項6記載のファンモータにおいて、
前記軸受部は、円筒状部材の内周面で円筒状の前記シャフトを回転可能に軸支していることを特徴とするファンモータ。
【請求項8】
発熱体及び該発熱体の冷却に用いるファンモータを機器筐体の内部に収納した電子機器であって、
前記ファンモータは、軸受部によって回転可能に軸支されたシャフトを有し、該シャフトを回転軸として駆動源によって回転駆動される回転部と、該回転部の外周側に設けられたインペラ部とを備え、
前記シャフトには、その軸線方向に沿って貫通孔が設けられており、
前記貫通孔には支柱が挿通されると共に、該支柱は前記貫通孔を挿通した状態で前記ファンモータの一面側及び端面側にある前記機器筐体の一壁面及び他壁面に対して同時に当接可能であり、
前記機器筐体に外力が付与されていない状態では、前記支柱は少なくとも前記機器筐体の一壁面又は他壁面から離間しており、
前記機器筐体に外力が付与されて前記機器筐体が撓んだ場合に、前記支柱が前記機器筐体の一壁面及び他壁面に対して同時に当接した状態となることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
発熱体及び該発熱体の冷却に用いるファンモータを機器筐体の内部に収納した電子機器であって、
前記ファンモータは、軸受部によって回転可能に軸支されたシャフトを有し、該シャフトを回転軸として駆動源によって回転駆動される回転部と、該回転部の外周側に設けられたインペラ部とを備え、
前記シャフトには、その軸線方向に沿って貫通孔が設けられており、
前記貫通孔には支柱が挿通されると共に、該支柱は前記貫通孔を挿通した状態で前記ファンモータの一面側及び端面側にある前記機器筐体の一壁面及び他壁面に対して同時に当接可能であり、
前記ファンモータは、前記回転部及び前記インペラ部の一面側を覆う第1カバー板及び他面側を覆う第2カバー板を有するファン筐体を備え、
前記第1カバー板及び前記第2カバー板には、少なくとも前記シャフトと重なる位置に開口部が形成されており、
前記支柱は、前記第1カバー板及び前記第2カバー板の開口部を通って前記機器筐体の一壁面及び他壁面に当接するものであり、
前記支柱は、前記ファン筐体に支持されていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項8又は9記載の電子機器において、
当該電子機器は、前記機器筐体の一面側にキーボード装置を有し、
前記ファンモータは、少なくとも前記シャフトが前記キーボード装置の下方となる位置に配設されていることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の冷却に使用されるファンモータ及び該ファンモータを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピュータ(ノート型PC)等の電子機器には、その機器筐体の内部にCPUやグラフィックチップ等の発熱体が配設されている。そこで、電子機器の機器筐体の内部には、これらの発熱体を冷却するためのファンモータが搭載されることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、電子機器の冷却に用いるファンモータとして、外周側にインペラ部を設けた回転部の中心に設けたシャフトを軸受部の内周面で軸支し、軸受部の外周側に固定子を配設すると共に、その外周側に回転部に固定された固定子を配設したアウターロータ型のファンモータが開示されている。このファンモータは、回転部やインペラ部をファン筐体の内部に収容しており、ファン筐体の上プレート部の中央には、外部の空気を吸込むための吸気口が開口形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−117300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、ノートブック型PC等の電子機器では、薄型化の要望が大きくなっている。そのため、機器筐体やその内部に配設されるファンモータ等の機器も薄型化が進められており、機器筐体と機器との間の隙間も小さなものとなってきている。このため、例えば、使用者がキーボード装置を強く押下操作したり、機器筐体の上下面を掴むように把持したりした場合には、機器筐体が内側に撓み、機器筐体の壁面が内部の機器に干渉する可能性がある。
【0006】
従って、上記特許文献1のファンモータをこのような電子機器に搭載した場合には、撓んだ機器筐体によってファン筐体の上面が押圧され、或いはこの上面に開口した吸気口の内側へと機器筐体が入り込み、ファンモータの回転部と干渉する可能性がある。機器筐体とファンモータとが干渉すると、その円滑な回転が阻害され、或いは回転ができなくなり、干渉の度合いによってはファンモータが変形し、破損してしまう懸念もある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、外力を受けた場合であっても安定した回転を維持することができるファンモータ及び該ファンモータを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るファンモータは、軸受部によって回転可能に軸支されたシャフトを有し、該シャフトを回転軸として駆動源によって回転駆動される回転部と、該回転部の外周側に設けられたインペラ部とを備えたファンモータであって、前記シャフトには、その軸線方向に沿って貫通孔が設けられており、該貫通孔には支柱が挿通されることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、シャフトには、その軸線方向に沿って貫通孔が設けられると共に該貫通孔には支柱が挿通される。これにより、シャフトの貫通孔を挿通した支柱を当該ファンモータの一面側及び他面側へと突出させることで、ファンモータが搭載される機器の筐体が外力を受けて潰れ変形した場合にも支柱が機器筐体に対する突っ張り棒となる。このため、機器筐体のそれ以上の撓みが阻止され、機器筐体が回転部及びインペラ部に干渉することが防止される。従って、ファンモータの円滑な回転が阻害され、或いは回転ができなくなり、さらにはファンモータが変形して破損することを防止でき、安定した回転を維持することができる。
【0010】
当該ファンモータは、電子機器の機器筐体の内部に配置されるものであり、前記支柱は、前記貫通孔を挿通した状態で当該ファンモータの一面側及び他面側にある前記機器筐体の一壁面及び他壁面に対して同時に当接可能であると、支柱を機器筐体内で突っ張り棒としてより確実に機能させることができる。
【0011】
前記機器筐体に外力が付与されていない状態では、前記支柱は少なくとも前記機器筐体の一壁面又は他壁面から離間しており、前記機器筐体に外力が付与されて前記機器筐体が撓んだ場合に、前記支柱が前記機器筐体の一壁面及び他壁面に対して同時に当接した状態となることが好ましい。そうすると、機器筐体に外力が付与されていな通常時には、支柱が機器筐体の内部で突っ張らないため、ファンモータの機器筐体への組付作業時に支柱が機器筐体と干渉することを回避でき、部品精度がある程度ばらついた場合であってもファンモータの機器筐体への円滑な組付作業が可能となる。
【0012】
前記回転部及び前記インペラ部の一面側を覆う第1カバー板及び他面側を覆う第2カバー板を有するファン筐体を備え、前記第1カバー板及び前記第2カバー板には、少なくとも前記シャフトと重なる位置に開口部が形成されており、前記支柱は、前記第1カバー板及び前記第2カバー板の開口部を通って前記機器筐体の一壁面及び他壁面に当接する構成であるとよい。これにより、機器筐体が外力を受けて変形した場合にも、支柱によってファン筐体に機器筐体が干渉することを防止でき、ファンモータの回転をより安定して維持することができる。
【0013】
前記支柱は、前記ファン筐体に支持されていることが好ましい。そうすると、ファンモータと支柱とを一体的に組み立てることができる。これにより、シャフトの貫通孔と支柱の位置関係を予め固定することができ、ファンモータを電子機器に組み付けた際にもこの位置関係がずれを生じることがなく、ファンモータの組付作業が容易になる。
【0014】
一端が前記ファン筐体の外縁部に支持される複数の脚部と、各脚部の他端同士を前記シャフトの軸線方向と重なる位置で連結することで前記シャフトの軸線方向に弾性的に変位可能に設けられた連結部とを有する支持体を備え、前記支柱は、前記支持体の連結部から突出しているとよい。そうすると、支柱をシャフトの軸線方向に変位可能な状態で支持しておくことができ、ファンモータの機器筐体への組付作業がより円滑となり、しかも支柱による突っ張り棒としての作用を確実に発揮させることができる。
【0015】
前記支柱は、前記機器筐体の一壁面及び他壁面に対して常に当接した状態であってもよい。そうすると、より簡素な構造で支柱による突っ張り棒の作用を得ることができる。
【0016】
前記駆動源は、前記軸受部の外周側に設けられた固定子と、該固定子の外周側に設けられ、前記回転部に固着された回転子とを有するアウターロータ型のモータであってもよい。
【0017】
前記軸受部は、円筒状部材の内周面で円筒状の前記シャフトを回転可能に軸支していてもよい。
【0018】
本発明に係る電子機器は、発熱体及び該発熱体の冷却に用いるファンモータを機器筐体の内部に収納した電子機器であって、前記ファンモータは、軸受部によって回転可能に軸支されたシャフトを有し、該シャフトを回転軸として駆動源によって回転駆動される回転部と、該回転部の外周側に設けられたインペラ部とを備え、前記シャフトには、その軸線方向に沿って貫通孔が設けられており、前記貫通孔には支柱が挿通されると共に、該支柱は前記貫通孔を挿通した状態で前記ファンモータの一面側及び端面側にある前記機器筐体の一壁面及び他壁面に対して同時に当接可能であることを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、ファンモータによって機器筐体の内部の発熱体を冷却することができ、しかも機器筐体の内部での支柱の突っ張り棒としての作用によってファンモータの安定した回転を維持することができる。
【0020】
当該電子機器は、前記機器筐体の一面側にキーボード装置を有し、前記ファンモータは、少なくとも前記シャフトが前記キーボード装置の下方となる位置に配設されていてもよい。そうすると、キーボード装置の操作時の押圧力が大きく、該キーボード装置が下方に撓んだ場合であっても支柱の作用によって変形したキーボード装置がファンモータに干渉することを防止できるため、ファンモータによる冷却が不安定になることがなく、電子機器の安定した使用が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、支柱によって機器筐体の過度な撓みを阻止することができるため、機器筐体がファンモータに干渉することを防止して、ファンモータの安定した回転を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るファンモータを備えた電子機器の一部分解斜視図である。
【
図3】
図3は、ファンモータに支持体を取り付けた状態での斜視図である。
【
図4】
図4は、支持体を取り付けたファンモータを電子機器に搭載した状態での縦断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すファンモータの中央付近を拡大した縦断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すファンモータを搭載した機器筐体に外力が付与された状態を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、別の構成例のファンモータを電子機器に搭載した状態での縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るファンモータについて、このファンモータを備えた電子機器との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るファンモータ10を備えた電子機器12の一部分解斜視図であり、キーボード装置14を本体部16から取り外した状態を示している。
【0025】
図1に示すように、電子機器12は、上面側に入力装置であるキーボード装置14を搭載した本体部16と、本体部16のディスプレイとなる表示部18とを備えたノート型PCである。ファンモータ10を適用可能な電子機器としては、ノートブック型PC以外にもデスクトップ型PCやゲーム機器、さらには家電機器等、各種機器を例示できる。また、
図1では、ファンモータ10を横置きで搭載した構成を例示したが、ファンモータ10は縦置きや斜め置き等、各種姿勢で使用可能である。
【0026】
本体部16は、箱状の機器筐体20と、機器筐体20に収容されたマザーボード等の電子回路基板である本体基板22とを有する。ファンモータ10は、機器筐体20の内部の左奥側角部に配置されて本体基板22に取り付けられている。ファンモータ10は、その一側面に開口した送風口24が、機器筐体20の側面に複数のスリットで設けて形成した排気口26と対向するように設置される。本体基板22には、CPU(中央演算装置)22aの他、図示しないチップセットやメモリが搭載されている。CPU22aは、本体基板22に搭載された機器のうちでも発熱量の大きな発熱体である。そこで、ファンモータ10とCPU22aとの間にはヒートパイプ28が架け渡され、CPU22aで発生した熱をファンモータ10によって効率的に排気口26から外部へと排出可能となっている。ヒートパイプ28を設けず、ファンモータ10で発熱体を直接的に冷却する構成としても勿論よい。
【0027】
表示部18は、左右一対のヒンジ29,29によって本体部16に対して回動可能に連結された蓋体である。表示部18は、その内面に液晶表示パネル等のディスプレイを備える。表示部18は、ヒンジ29を通過した図示しないケーブルにより、本体基板22と電気的に接続されている。
【0028】
キーボード装置14は、その上面に複数のキーを所定パターンで配列したキートップ群14aを有する。キーボード装置14は、その一側面から引き出された図示しないケーブルにより本体基板22に対してコネクタ接続される。
【0029】
次に、ファンモータ10の構成について説明する。
【0030】
図2は、ファンモータ10の斜視図であり、支持体30をファンモータ10に取り付ける様子を示す図である。
図3は、ファンモータ10に支持体30を取り付けた状態での斜視図である。
図4は、支持体30を取り付けたファンモータ10を電子機器12に搭載した状態での縦断面図である。
【0031】
図2〜
図4に示すように、ファンモータ10は、駆動源となるモータ部32と、モータ部32によって回転駆動される回転部34と、回転部34の外周側に設けられたインペラ部36とを備えた遠心ファンである。これらモータ部32、回転部34及びインペラ部36は、ファン筐体38の内部に収容されている。
【0032】
回転部34は、有蓋略円筒状に形成されている。回転部34は、中心に突設されたシャフト40と、シャフト40の外周側に設けられた軸受収容部42と、軸受収容部42の外周側に設けられたモータ収容部44とを備える。
【0033】
シャフト40は、回転部34の回転軸となるものであり、ファン筐体38側に固定された軸受部46によって回転可能に軸支されている。シャフト40は、その軸心に軸線方向に沿った貫通孔40aが形成された円筒状のシャフトであり、下端側に設けられたワッシャによって軸受部46から抜け止めされている。貫通孔40aには、後述する支持体30によって支持された支柱50が挿通される。
【0034】
軸受収容部42の下方空間には、軸受部46が配置されている。軸受部46は、その内周面でシャフト40の外周面を回転可能に軸支する軸受け(円筒状部材)48を備える。軸受け48は、その外周面が円筒状のスリーブ49の内周面で保持されている。スリーブ49は、その外周面が円筒状のブッシュ52の内周面で保持されている。スリーブ49及びブッシュ52は、シャフト40の下方に配置された有蓋円板状の支持プレート54の外周側面54aと、ファン筐体38を構成する下カバー板56の内周側面56aとの間に挟持されることでファン筐体38に固定されている。支持プレート54の中心には、シャフト40の貫通孔40aと同径又は多少大径の孔部54bが貫通形成されている。
【0035】
モータ収容部44には磁石58が設けられ、モータ収容部44の下方空間にはコイル60が配置されている。磁石58は、回転部34の外周側面となる円筒部34aの内面に周方向に沿って固着されている。コイル60は、下カバー板56の内周側面56aの外面側で周方向に沿って設けられ、下カバー板56の上面に固着されている。磁石58とコイル60とは、互いに近接した状態で対向配置され、モータ部32を構成する。
【0036】
モータ部32では、磁石58がモータ部32の回転子(ロータ)となり、コイル60がモータ部32の固定子(ステータ)となる。従って、コイル60に図示しない電源装置からの電流が通電されると、磁石58が固着された回転部34が軸受部46によって軸支されたシャフト40を回転軸として、該シャフト40の軸心を回転中心として回転駆動される。このように、モータ部32は、アウターロータ型のモータとして構成されている。
【0037】
インペラ部36は、回転部34の円筒部34aから径外方向に延在し、モータ部32によって回転部34と共にシャフト40を回転軸とし、該シャフト40の軸心を回転中心として旋回する。インペラ部36は、円筒部34aから連続して延びた円環プレート状のカップ62と、カップ62の外周縁部から径外方向に延びた複数の羽根64とを備える。
【0038】
ファン筐体38は、モータ部32、回転部34及びインペラ部36を収納する。ファン筐体38は、回転部34及びインペラ部36の上面側を覆う上カバー板(第1カバー板)55と、下面側を覆う下カバー板(第2カバー板)56と、上カバー板55と下カバー板56との間に形成される収納空間の側面を覆う側壁板66とを有する。
【0039】
上カバー板55は、
図2に示すように矩形の一方側が円形状に形成された薄板である。上カバー板55の中央には、回転部34及びインペラ部36の一部を露出させるように、その中心がシャフト40の軸心と同軸上にある円形の開口部55aが形成されている。開口部55aは、インペラ部36の回転によって外部の空気をファン筐体38内へと取込むための空気取込口となる。
【0040】
下カバー板56は、平面視で上カバー板55と重なる外形形状である。下カバー板56の中央には、内周側面56aによって開口部56bが画成されている。上記したように、下カバー板56は開口部56bの内側に軸受部46を保持し、その外周側にコイル60を保持している。
【0041】
側壁板66は、平面視で上カバー板55及び下カバー板56の外縁部を縁取る略U字形状の薄板である。側壁板66は、インペラ部36の側方を覆うものであり、複数の羽根64を径外方向から囲むように立脚している。側壁板66が上カバー板55及び下カバー板56とねじ止めやインサート成形によって固定されることにより、薄い箱状のファン筐体38が形成される。ファン筐体38では、側壁板66が配設されていないU字の開口側となる位置が送風口24となる(
図4参照)。側壁板66の外面には、複数(
図2では5個)の装着ポケット68が設けられている。
【0042】
従って、ファンモータ10では、モータ部32によって回転部34が回転駆動されると、インペラ部36がシャフト40の軸心を回転中心として旋回し、空気の流れが発生する。これにより、上カバー板55の開口部55aからファン筐体38内に取込まれた空気は、送風口24からファン筐体38外へと排出され、機器筐体20の排気口26から外部に排気されることになる。この際、電子機器12では、ヒートパイプ28によって運ばれたCPU22aの熱が送風口24からの送風によって外部に排出される。
【0043】
次に、このようなファンモータ10に取り付けられる支持体30の構成及びこの支持体30によって支持された支柱50の作用について説明する。
【0044】
図5は、
図4に示すファンモータ10の中央付近を拡大した縦断面図であり、
図6は、
図5に示すファンモータ10を搭載した機器筐体20に外力が付与された状態を示す縦断面図である。
【0045】
図2〜
図4に示すように、支持体30は、上記したシャフト40の貫通孔40aに挿通される支柱50を支持するものである。支持体30は、先端が放射方向に延在するように周方向に複数(
図2では5本)配置された脚部70と、各脚部70の基端を連結した中央の連結部72とを有するタコ足状の部材である。
【0046】
各脚部70は、その屈曲された先端係合片70aが各装着ポケット68に嵌挿されることにより、ファン筐体38に取付固定される。連結部72は、各脚部70の基端同士を一体的に連結した円形状の部分であり、その中心がシャフト40の軸線方向と重なるように同軸上に配置される。連結部72の中心には孔部が形成され、この孔部に支柱50が下方に向かって突設するように嵌合固定されている。脚部70の本数は適宜変更可能であり、1本の片持ちで連結部72を支持してもよい。
【0047】
このように連結部72から下方に延在した支柱50は、シャフト40の貫通孔40aに挿通配置されている。支柱50は、貫通孔40aの軸心と重なることが好ましく、支柱50の軸心と貫通孔40aの軸心とが同軸上にあるとより好ましい。そうすると、回転する貫通孔40aの内周面と回転しない支柱50との接触を確実に避けることができる。支柱50は、連結部72と一体的に成形されてもよく、この場合には連結部72の上面が支柱50の基端面(上端面)となる。
【0048】
支柱50は、
図6に示すように、機器筐体20が外力を受けてある程度潰れ変形した場合に、該機器筐体20の上壁面(ベースプレート14b)及び下壁面(ボトムプレート20a)に対して同時に当接可能となる長さ寸法に設定されている。換言すれば、支柱50は、
図5に示すように、機器筐体20が潰れ変形していない状態では、その上端面及び下端面のうちの少なくとも一方(
図5では下端面)が機器筐体20の壁面(
図5では下壁面となるボトムプレート20a)から離間する長さ寸法に設定されている。本実施形態の場合、機器筐体20の上壁面は、キーボード装置14の下板となるベースプレート14bの下面であり、機器筐体20の下壁面は、機器筐体20の底板となるボトムプレート20aの上面となっている。
【0049】
このような支持体30は、
図5に示すように、外力を受けていない状態では、各脚部70が径内方向に向かって漸次上方に傾斜した姿勢にある。このため、連結部72は、各脚部70によってファン筐体38の上カバー板55から離間する方向に付勢・支持され、各脚部70をばねとしてシャフト40の軸線方向に弾性的に変位可能な状態にある。この際、連結部72から突出した支柱50は、上カバー板55の開口部55a、シャフト40の貫通孔40a、及び支持プレート54の孔部54bを挿通し、その下端面(先端面)が孔部54bの下方に位置すると共に、機器筐体20のボトムプレート20aから離間した位置にある。
【0050】
一方、
図6に示すように、例えばキーボード装置14が強く押圧操作され、或いは機器筐体20が手で把持されたことにより、機器筐体20が潰れ方向にある程度撓むと、撓んだ機器筐体20のベースプレート14bから連結部72が下方への押圧力を受ける。そうすると、各脚部70が弾性的に変形して連結部72が下方に変位し、支柱50がその軸線方向で下方に移動する。そして、支柱50の下端面が機器筐体20のボトムプレート20aに当接すると、支柱50が機器筐体20の上壁面及び下壁面に同時に当接した状態となる。これにより、支柱50が機器筐体20の上壁面と下壁面との間の突っ張り棒として機能するため、それ以上の機器筐体20の撓みが阻止される。このため、外力を受けて変形した機器筐体20が、ファン筐体38の上カバー板55に干渉してこれを押圧変形させることが防止される。さらに、変形した機器筐体20が上カバー板55の開口部55a内に入り込み、ファンモータ10の回転部34やインペラ部36に直接的に干渉することも防止される。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るファンモータ10によれば、シャフト40には、その軸線方向に沿って貫通孔40aが設けられており、該貫通孔40aには支柱50が挿通される。これにより、シャフト40の貫通孔40aを挿通した支柱50を当該ファンモータ10の上面側及び下面側へと突出させることで、機器筐体20が外力を受けて潰れ変形した場合にも支柱50が機器筐体20に対する突っ張り棒となる。このため、機器筐体20のそれ以上の撓みが阻止され、機器筐体20がファン筐体38、回転部34及びインペラ部に干渉することが防止される。従って、ファンモータ10の円滑な回転が阻害され、或いは回転ができなくなり、さらにはファンモータ10が変形して破損することを防止して、安定した回転を維持することができ、シャフト40や回転部34の信頼性を保持することができる。また、機器筐体20が回転部34等に干渉することによるノイズの発生も防止できる。
【0052】
ファンモータ10が電子機器12の機器筐体20の内部に配置された状態で、支柱50は、シャフト40の貫通孔40aを挿通した状態で当該ファンモータ10の上面側及び下面側にある機器筐体20の上下壁面となるベースプレート14b及びボトムプレート20aに対して同時に当接可能である(
図6参照)。これにより、支柱50を機器筐体20内での突っ張り棒としてより確実に機能させることができる。
【0053】
この場合、機器筐体20に外力が付与されていない状態では、支柱50は少なくとも機器筐体20の上壁面又は下壁面から離間しており、機器筐体20に外力が付与されて該機器筐体20が撓んだ場合に、支柱50が機器筐体20の一壁面及び他壁面に対して同時に当接した状態となる。これにより、機器筐体20に外力が付与されていな通常時には、支柱50が機器筐体20の内部で突っ張らないため、ファンモータ10の機器筐体20への組付作業時に支柱50が機器筐体20と干渉することを回避でき、部品精度がある程度ばらついた場合であっても円滑な組付作業が可能となる。しかも、機器筐体20が外力を受けて撓んだ際には、支柱50が機器筐体50の上壁面及び下壁面に同時に当接し、両壁面間の支柱として確実に機能する。
【0054】
図7に示すように、機器筐体20に対する外力の有無にかかわらず、支柱50は常に機器筐体20の一壁面及び他壁面に当接している構造としてもよい。この構造の場合には、支持体30の弾性変位構造を省略しても支柱50を機器筐体20内での突っ張り棒として機能させることができるため、ファンモータ10や支持体30の構造をより簡素化することができる。
【0055】
ファンモータ10は、回転部34及びインペラ部36の上面側を覆う上カバー板55及び下面側を覆う下カバー板56を有するファン筐体38を備え、上カバー板55及び下カバー板56には、少なくともシャフト40と重なる位置に開口部55a,56bが形成されており、支柱50は、これら開口部55a,56bを通って機器筐体20の壁面に当接する。これにより、機器筐体20が外力を受けて変形した場合にも、支柱50によってファン筐体38に機器筐体20が干渉することを防止でき、ファンモータ10の回転をより安定して維持することができる。
【0056】
支柱50は、支持体30を介してファン筐体38に支持されているため、ファンモータ10と支柱50とを一体的に組み立てることができる。これにより、シャフト40の貫通孔40aと支柱50の位置関係を予め固定することができ、ファンモータ10を電子機器12に組み付けた際にもこの位置関係がずれを生じることがなく、ファンモータ10の組付作業が容易になる。なお、部品の加工精度や組付精度を十分に確保できる場合には、支柱50を機器筐体20の上下壁面(ベースプレート14b又はボトムプレート20a)に直接的に設け、ファンモータ10を機器筐体20に組み付ける際に支柱50を貫通孔40aに挿通させるようにしてもよい。この場合には、支持体30を省略できるため、ファンモータ10をより低コストで構成できる。
【0057】
また、このようなファンモータ10を搭載した電子機器12では、機器筐体20の上面側にキーボード装置14を有し、ファンモータ10は、支柱50を含む前記キーボード装置14の下方となる位置に配設されている。このため、キーボード装置14の操作時の押圧力が大きく、該キーボード装置14が下方に撓んだ場合であっても支柱50の作用によって変形したキーボード装置14がファンモータ10に干渉することを防止できるため、ファンモータ10による冷却が不安定になることがなく、電子機器12の安定した使用が可能となる。
【0058】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
10 ファンモータ
12 電子機器
14 キーボード装置
14b ベースプレート
16 本体部
18 表示部
20 機器筐体
20a ボトムプレート
22 本体基板
22a CPU
24 送風口
26 排気口
28 ヒートパイプ
30 支持体
32 モータ部
34 回転部
36 インペラ部
38 ファン筐体
40 シャフト
40a 貫通孔
46 軸受部
55 上カバー板
55a,56b 開口部
56 下カバー板
58 磁石
60 コイル
66 側壁板
68 装着ポケット
70 脚部
72 連結部