特許第5976783号(P5976783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5976783組織部位に供給される減圧を管理するシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976783
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】組織部位に供給される減圧を管理するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20160817BHJP
   A61M 27/00 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   A61M1/00 131
   A61M27/00
【請求項の数】30
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2014-506555(P2014-506555)
(86)(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公表番号】特表2014-515664(P2014-515664A)
(43)【公表日】2014年7月3日
(86)【国際出願番号】US2012034299
(87)【国際公開番号】WO2012145543
(87)【国際公開日】20121026
【審査請求日】2015年4月16日
(31)【優先権主張番号】61/477,406
(32)【優先日】2011年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ブランドフォード,デイヴィッド,ロブソン
(72)【発明者】
【氏名】クルサード,リチャード,ダニエル ジョン
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−506691(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0015593(US,A1)
【文献】 特表2010−517681(JP,A)
【文献】 特表2009−525120(JP,A)
【文献】 特開2010−255634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織部位に供給される減圧を管理する装置において、
前記組織部位に減圧を行うための供給圧力を与えるように適合されたポンプと;
前記ポンプに結合されたモータであって、前記モータの前記ポンプの圧力負荷に応答して、前記ポンプを可変速度で駆動させるモータと;
前記モータに電気的に結合された駆動システムであって、かつ(a)実質的に一定でかつ前記ポンプが目標圧力を供給するのに十分な大きさのモータ電流で、前記モータに直流電力を提供するように適合された電源であって、前記モータの前記ポンプの前記圧力負荷と共に変動するモータ電圧を有する電源、および(b)前記モータ電圧を測定し、かつ前記供給圧力を前記目標圧力付近に維持するのに必要な前記モータ電圧が、予め定められた電圧の範囲内に留まっているかどうか判断するように適合されたコントローラを含む駆動システムと
を含むことを特徴とする、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記モータが直流モータであることを特徴とする、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、前記直流モータがブラシ付き直流モータであることを特徴とする、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、前記ポンプがダイヤフラムポンプであることを特徴とする、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記駆動システムが、別の目標圧力の値に対応する別の大きさの値に前記モータ電流を調整する入力回路をさらに含むことを特徴とする、装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、前記予め定められた電圧の範囲の下方境界が、前記供給圧力が前記目標圧力付近にあるときに発生する前記モータの失速速度に対応する失速電圧であり、および前記コントローラは、前記モータ電圧が前記失速電圧以下であるとき、予め定められた期間前記モータを停止させるようにさらに適合されていることを特徴とする、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、前記コントローラは、前記モータ電圧が前記失速電圧以下であるときに停止信号を提供する比較器と、前記予め定められた期間を開始しかつ前記予め定められた期間後に前記モータを再始動させることによって前記停止信号に応答するタイマーとを含むことを特徴とする、装置。
【請求項8】
請求項6に記載の装置において、前記駆動システムがさらにキック始動モジュールを含み、前記キック始動モジュールは、前記コントローラに応答し、かつ前記モータ電圧が前記失速電圧を上回るときに前記モータを周期的に停止および再始動させるように適合されていることを特徴とする、装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置において、前記予め定められた電圧の範囲が、前記供給圧力が前記目標圧力から離れて降下するときに発生する前記モータの漏れ電圧に対応する上方境界を含み、および前記コントローラは、前記モータ電圧が前記漏れ電圧以上であるとき、予め定められた期間、追加的な電力を前記モータに印加するようにさらに適合されていることを特徴とする、装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、前記コントローラが、前記モータ電圧が前記漏れ電圧以上であるときに漏れ信号を提供する比較器と、前記予め定められた期間に前記追加的な電力の印加を開始しかつ前記予め定められた期間後に前記モータから前記追加的な電力を除去することによって、前記漏れ信号に応答するタイマーとを含むことを特徴とする、装置。
【請求項11】
請求項9に記載の装置において、前記駆動システムがさらにキック始動モジュールを含み、前記キック始動モジュールは、前記コントローラに応答し、かつ前記モータ電圧が前記漏れ電圧未満であるときに前記モータを周期的に停止および再始動させるように適合されていることを特徴とする、装置。
【請求項12】
請求項9に記載の装置において、前記追加的な電力が、前記モータ電流を増加することによって前記モータに提供されることを特徴とする、装置。
【請求項13】
請求項9に記載の装置において、前記追加的な電力が、前記モータ電圧を増加することによって前記モータに提供されることを特徴とする、装置。
【請求項14】
請求項1に記載の装置において、前記電源が、さらに、前記モータ電流がスタートアップ時に最初に前記モータに印加されるときに、追加的な電力を前記モータに一定期間印加する電源オンモジュールを含み、それにより、前記モータがスタートアップ時に一定期間加速するため、前記供給圧力がより迅速に前記目標圧力に達することを特徴とする、装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置において、前記駆動システムがさらにキック始動モジュールを含み、前記キック始動モジュールは、前記コントローラに応答し、かつスタートアップ時の前記一定期間後に前記モータを周期的に停止および再始動させるように適合されていることを特徴とする、装置。
【請求項16】
請求項14に記載の装置において、前記追加的な電力が、前記モータ電流を増加することによって前記モータに提供されることを特徴とする、装置。
【請求項17】
請求項14に記載の装置において、前記追加的な電力が、前記モータ電圧を増加することによって前記モータに提供されることを特徴とする、装置。
【請求項18】
請求項1に記載の装置において、前記駆動システムがさらにキック始動モジュールを含み、前記キック始動モジュールは、前記コントローラに応答し、かつ前記モータ電圧が前記予め定められた電圧の範囲内にあるときに前記モータを周期的に停止および再始動させるように適合されていることを特徴とする、装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置において、前記電源が、さらに、追加的な電力を前記モータに予め定められた期間印加して、前記モータ電圧が前記予め定められた電圧の範囲内にあるときに前記モータを再始動させるように適合されていることを特徴とする、装置。
【請求項20】
請求項1に記載の装置において、さらに:
前記ポンプによって前記組織部位付近に適用された前記減圧を測定する圧力センサーと;
前記供給圧力を前記組織部位付近の前記減圧と比較する比較器と
を含むことを特徴とする、装置。
【請求項21】
組織部位に供給される減圧を管理する装置において、
前記組織部位に減圧を行うための供給圧力を与えるように適合されたポンプと;
前記ポンプに結合されて、前記ポンプを可変速度で駆動させる直流モータと;
前記モータに電気的に結合されていて、前記ポンプが、目標圧力付近の前記供給圧力を提供するための実質的に一定の大きさでかつ十分な大きさのモータ電流で直流電流を前記モータにもたらす電源において、それにより、前記モータの両端子間の前記モータ電圧が前記モータの圧力負荷によって変化する、電源と;
前記電源に電気的に結合されたコントローラであって、前記モータ電圧を測定しかつ前記目標付近の前記供給圧力を維持するのに必要な前記モータ電圧が予め定められた電圧の範囲内にあるかどうか判断するように適合されるコントローラと
を含むことを特徴とする、装置。
【請求項22】
請求項21に記載の装置において、前記予め定められた電圧の範囲の前記下方境界が、前記モータの失速速度に対応する失速電圧であり、前記失速電圧は、前記供給圧力が前記目標圧力付近にあるときに発生し、および前記コントローラが、前記モータ電圧が前記失速電圧以下であるときに前記モータを予め定められた期間停止させるようにさらに適合されていることを特徴とする、装置。
【請求項23】
請求項21に記載の装置において、前記予め定められた電圧の範囲の前記上方境界が、前記モータの漏れ速度に対応する漏れ電圧であり、前記漏れ電圧は、前記供給圧力が前記目標圧力から離れて降下するときに発生し、および前記コントローラが、前記モータ電圧が前記漏れ電圧以上であるときに追加的な電力を前記モータに予め定められた期間印加するようにさらに適合されていることを特徴とする、装置。
【請求項24】
請求項21に記載の装置において、前記予め定められた電圧の範囲の前記下方境界が、前記モータの失速速度に対応する失速電圧であり、前記失速電圧は、前記供給圧力が前記目標圧力付近であるときに発生し、および前記予め定められた電圧の範囲の前記上方境界は、前記モータの漏れ速度に対応する漏れ電圧であり、前記漏れ電圧は、前記供給圧力が前記目標圧力から離れて降下するときに発生し、および前記コントローラが、前記モータ電圧が前記失速電圧以下であるときに前記モータを予め定められた停止期間停止させかつおよび前記モータ電圧が前記漏れ電圧以上であるときに追加的な電力を予め定められた漏れ期間前記モータに印加するようにさらに適合されていることを特徴とする、装置。
【請求項25】
請求項24に記載の装置において、前記追加的な電力が、前記モータ電流を増加することによって前記モータに提供されることを特徴とする、装置。
【請求項26】
請求項24に記載の装置において、前記追加的な電力が、前記モータ電圧を増加することによって前記モータに提供されることを特徴とする、装置。
【請求項27】
請求項24に記載の装置において、前記駆動システムがさらにキック始動モジュールを含み、前記キック始動モジュールは、前記コントローラに応答し、かつ前記モータ電圧が前記失速電圧を上回りかつ前記漏れ電圧を下回るときに前記モータを周期的に停止および再始動させるように適合されていることを特徴とする、装置。
【請求項28】
請求項24に記載の装置において、前記電源が、前記モータ電流がスタートアップ時に初めに前記モータに印加されるとき追加的な電力を前記モータに一定期間印加する電源オンモジュールをさらに含み、それにより、前記モータがスタートアップ時に前記一定期間加速するため、前記供給圧力がより迅速に前記目標圧力に達することを特徴とする、装置。
【請求項29】
請求項28に記載の装置において、前記駆動システムがさらにキック始動モジュールを含み、前記キック始動モジュールは、前記コントローラに応答し、かつ前記モータ電圧が前記失速電圧を上回りかつ前記漏れ電圧を下回るときに、スタートアップ時に前記一定期間後に前記モータを周期的に停止および再始動させるように適合されていることを特徴とする、装置。
【請求項30】
請求項24に記載の装置において、さらに:
前記ポンプによって前記組織部位付近に適用された前記減圧を測定する圧力センサーと;
前記供給圧力を前記組織部位付近の前記減圧と比較する比較器と
を含むことを特徴とする、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、35U.S.C.§119(e)下において、2011年4月20日出願の米国仮特許出願第61/477,406号の利益を主張し、あらゆる点において参照することにより本願明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、概して組織治療の分野に関し、より具体的には、組織部位に減圧を供給して適用するシステムおよび方法に関する。
【0003】
臨床試験および実践から、組織部位に近接して減圧をもたらすことによって、組織部位における新しい組織の成長を増強および加速することが示されている。この現象の適用は多数あるが、減圧を行うことは、創傷の治療においてかなり成功している。減圧を使用する創傷の治療は、医学界では「陰圧閉鎖療法」、「減圧療法」、または「真空療法」と呼ばれることがある。このタイプの治療はいくつもの利点を提供し、それら利点には、迅速な治癒や肉芽組織の形成加速化が含まれる。
【0004】
減圧治療システムによってもたらされる組織部位における減圧を、適切に管理して、減圧治療の有効性を高める必要があり得る。さらに、減圧治療システムの構成要素における漏れおよび閉塞を検出して直し、効果的な治療を維持する必要がある。例えば、真空ポンプなどの減圧源を組織部位に接続するチューブの漏れまたは閉塞は、組織部位に行われている減圧治療を中断し得る。減圧治療システムの管理または制御は、一般的に「ポンプ圧制御」または「差圧制御」と呼ばれ得る。
【0005】
現在使用されている1つのポンプ圧制御システムでは、圧力が、ポンプ出口で測定され、すなわち「供給圧力」、およびポンプの出口における目標圧力に達するようにポンプを駆動する制御システムに供給される。そのような制御システムは圧力センサーを使用して、ポンプの出口に供給されている供給圧力を測定する。現在使用されている別のポンプ圧制御システムも、組織部位に近い第2の圧力センサーを利用して、組織部位に近接した個所の圧力、すなわち、「被適用圧力」を測定する。制御システムはまた、供給圧力と被適用圧力を比較するようにプログラミングされ、圧力の差、すなわち、それらの間の「被適用差圧」を判断し得る。被適用差圧は、組織部位とポンプとの間に発生する漏れまたは閉塞に関する情報を提供する。
【0006】
現在使用されている差圧制御システムは、2つのセンサーを用いて、ポンプ出口および組織部位の双方における圧力を測定する。2つのセンサーによって測定された圧力は、減圧治療システムでの漏れまたは閉塞の発生を特定し得るように、比較される。しかしながら、現在の差圧制御システムにおいて、使用されるセンサーが2つあることは、そのようなシステムのサイズ、重量、コストを増大させ、および複雑さを増す。例えば、2つのセンサーの使用により、減圧治療システムが使用する電子回路および電力の量が増大する。さらに、2つの異なるセンサーからの測定値を比較することは、減圧治療システムが、比較を行うための回路およびソフトウェアを備えることを必要とする。現在の差圧制御システムによって必要とされる追加的な構成要素は、重症度の低い創傷および歩行可能な患者の創傷の治療に対する、使用されるそれらのシステムの能力を低下させる。さらに、そのようなシステムによって必要とされる追加的な構成要素は、減圧治療システムを目立たせかつその重量を増やし、それにより、不快感が増し、かつ患者の動きやすさを制限する。システムにフィードバックをもたらす個別の圧力センサーは、高価なだけでなく、陰圧創傷ケアシステムの空気圧回路に接続された別の入力手段として、創傷感染の可能性も高める。
【発明の概要】
【0007】
減圧治療システムの既存の問題を解決するために、本明細書で説明する例示的実施形態は、組織部位に供給される減圧を管理する装置および方法に関し、より具体的には、圧力センサーを使用せずに、供給圧力を制御する装置および方法に関する。装置は、減圧を生成するポンプを駆動するモータを備える減圧源を含む。減圧は供給チューブを介して組織部位に供給される。装置はコントローラを含み、コントローラは、ポンプモータに定電流を提供し、かつモータの両端子間の電圧を監視して、圧力センサーを使用せずに供給圧力を確認しかつ制御する。そのようなコントローラの製造者または介護者は、コントローラに目標圧力および他のパラメータを設定し、組織部位に行われる減圧療法として供給圧力を供給および制御する。圧力センサーを使用して、上述のような差圧をコンピュータ計算するために被適用圧力を測定し得るが、本明細書で説明する例示的実施形態の目的では必須ではない。
【0008】
例示的一実施形態は、組織部位に供給される減圧を管理する装置を提供する。装置は、組織部位に減圧を行うために、減圧を、時間が経つにつれて変化させて供給するポンプと、ポンプに結合されて、ポンプを、減圧によって変化する速度に駆動するモータとを含む。モータは、直流(DC)モータまたは交流電流(AC)モータとしてもよく、後者のモータは、直流をACモータのための交流電流に変換するインバータによって駆動され、双方ともDC駆動モータと呼ばれる。いずれの場合も、装置はさらに駆動システムを含み、駆動システムは、動作期間中は、実質的に定電流でかつ動作期間中は目標減圧を供給するのに十分な大きさの直流電源をモータに提供する電源を含むモータに、電気的に結合されている。駆動システムはまたコントローラを含み、コントローラは、圧力センサーを使用して減圧を直接測定することなく、モータの両端子間の電圧を測定して、ポンプによって供給された減圧を目標減圧付近に維持するために必要な予め定められた電圧の動作範囲内にモータ電圧が留まっているかどうか判断することによって、モータへのポンプの負荷を監視する。
【0009】
例示的実施形態はまた、測定された電圧が予め定められた電圧の動作範囲外であるときに機能を実行する駆動システムを含む。一実施形態では、測定されたモータ電圧は、電圧の動作範囲未満に降下することがあり、供給圧力は目標圧力付近にあるため、駆動システムは、定電流源からモータを切断することを推論によって示す。別の実施形態では、測定されたモータ電圧は、電圧の動作範囲超に急上昇することがあり、このことは、駆動システムが、可能であれば、モータへの電力を高めてより速く回転させかつ圧力損失を補償するために、供給圧力が、著しい漏れの結果目標圧力未満に降下したためであると推論できる。駆動システムは、これらの実施形態に加えて他の機能を実行する。
【0010】
例示的実施形態はまた、組織部位に供給された減圧を管理する方法を提供する。プロセスは、ポンプモータに定電流を提供し、かつモータの両端子間の電圧を測定して、供給圧力を確認および制御する。プロセスは、患者や介護者によって設定された目標圧力および他のパラメータに基づいて、供給圧力を確認および制御する。プロセスは、比較に基づいて減圧管理機能を実行する。
【0011】
本発明の方法および装置のより完全な理解は、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって得られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の例示的実施形態による、組織部位における減圧を管理する装置のブロック図である。図1Aは、本発明の例示的実施形態によるマルチルーメンチューブの斜視図である。
図2図2は、本発明の例示的実施形態による組織部位における減圧を管理するプロセスを示すフロー図である。
図3図3は、本発明の例示的実施形態による、ポンプを駆動するDCモータに定電流を提供する第1のモータ駆動システムの詳細なブロック図である。
図4図4は、本発明の例示的実施形態による、減圧を生成するポンプを駆動するDCモータを制御するプロセスを示す回路論理図である。
図5A図5Aは、本発明の例示的実施形態によるモータ駆動システムの圧力制御を示すグラフであり、x軸は時間(秒)(s)を表し、かつy軸は、時間とともに変化する、ポンプによって生成された圧力をトール(mmHg)で示す。
図5B図5Bは、図5Aに示す期間にわたって生成される圧力に対応するモータ電流および電圧の回路の波形を示すグラフである。
図6図6は、本発明の例示的実施形態による、ポンプを駆動するDCモータに定電流を提供する第2のモータ駆動システムの詳細なブロック図である。
図7A図7Aは、いくつかの部分が本発明の例示的実施形態による図6のモータ駆動システムと類似している、本発明の例示的実施形態によるポンプを駆動するDCモータに定電流を提供する第3のモータ駆動システムの詳細な回路の概略図である。
図7B図7Bは、いくつかの部分が本発明の例示的実施形態による図6のモータ駆動システムと類似している、本発明の例示的実施形態によるポンプを駆動するDCモータに定電流を提供する第3のモータ駆動システムの詳細な回路の概略図である。
図7C図7Cは、いくつかの部分が本発明の例示的実施形態による図6のモータ駆動システムと類似している、本発明の例示的実施形態によるポンプを駆動するDCモータに定電流を提供する第3のモータ駆動システムの詳細な回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明において、本明細書の一部をなす添付図面を参照し、および例として、本発明を実施し得る特定の好ましい実施形態に示す。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるようにするのに十分な程度、詳細に説明し、および、本発明の趣旨または範囲から逸脱せずに、他の実施形態を使用し得ること、および論理的な構造上の、機械的な、電気的な、および化学的な変更がなされ得ることが理解される。当業者が、本明細書で説明する実施形態を実施できるようにするのに必要ではない詳細を避けるために、以下の説明では、当業者に公知の特定の情報を省略し得る。それゆえ、以下の詳細な説明は、限定ととられるべきではなく、例示的実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0014】
本明細書で説明する、例示的実施形態は、組織部位に供給される減圧を管理する装置および方法を提供する。減圧は、一般的に、治療を施されている組織部位における周囲圧力に満たない圧力を指す。ほとんどの場合、この減圧は、患者がいる場所の気圧に満たない。用語「真空」および「負圧」を使用して、組織部位に加えられる圧力を説明してもよいが、組織部位に加えられる実際の圧力は、通常完全な真空と連想される圧力を著しく下回り得る。この用語法に一致して、減圧または真空圧の上昇は、一般に、絶対圧の相対的低下を指す一方、減圧または真空圧の低下は、絶対圧の相対的上昇を指す。
【0015】
装置は、減圧を生成する減圧源を含む。減圧源は、減圧を生成できる任意の装置である。一実施形態では、減圧源はモータおよびポンプを含み、モータは、減圧を生成するポンプを駆動する。減圧は、供給チューブを介して組織部位に供給される。装置はまた、圧力を測定または検出できる任意の装置である圧力センサーを含み得る。圧力センサーは、組織部位の実際の減圧、すなわち、被適用圧力を検出する。被適用圧力を測定する圧力センサーは、装置に含まれる唯一の圧力センサーであるが、圧力センサーは、システムの動作には必須ではない。
【0016】
装置はまたコントローラを含む。コントローラは、データ、例えば圧力センサーからのデータを処理できる任意の装置である。コントローラはまた、装置の1つ以上の構成要素の動作を制御し得る。コントローラはまた、減圧源のモータに定電流を提供し、かつモータの両端子間の電圧を監視して、ポンプによって生成された供給圧力を確認および制御する。一実施形態では、減圧源は、圧力センサーによって検出された組織部位における被適用圧力が目標圧力を上回るとき、生成する供給圧力を低下させる。別の実施形態では、減圧源は、圧力センサーによって検出された組織部位における被適用圧力を目標圧力が上回るとき、生成する供給圧力を上昇させる。
【0017】
装置はまた、供給チューブに結合された逃がし弁を含み得る。逃がし弁は、減圧を低下させることができる任意の弁である。この実施形態では、単一の圧力センサーによって検出された被適用圧力が、予め定められた閾値だけ目標圧力を上回るとき、逃がし弁は開いて、組織部位における被適用圧力を低下させ得る。
【0018】
本明細書では、用語「結合された」は、別個の物体を介して結合することを含む。例えば、逃がし弁は、逃がし弁および逃がし管の双方とも第3の物体に結合されている場合、供給チューブに結合され得る。用語「結合された」はまた、「直接結合された」も含み、この場合、2つの物体が何らかの方法で互いに接触している。用語「結合された」はまた、構成要素の各々が同じ材料片から形成されているために、互いにつながっている2つ以上の構成要素を包含する。
【0019】
装置はインジケータを含む。インジケータは、信号を発することができる任意の装置である。例えば、インジケータは、装置のユーザ、例えば、患者または介護者に信号を発し得る。単一の圧力センサーによって測定された被適用圧力が、減圧源によって生成された供給圧力の上昇に対して非応答であると、コントローラが判断するとき、インジケータは信号を発する。「非応答」は、圧力センサーによって測定されるとき、減圧源によって生成された供給圧力の上昇からの影響が被適用圧力に対してないことを意味し得る。単一の圧力センサーによって測定された被適用圧力の応答性に関するさらなる詳細は、以下説明する例示的実施形態において提供する。
【0020】
例示的実施形態はまた、組織部位に供給された減圧を管理する方法を提供する。プロセスは目標圧力を決定する。目標圧力は、ユーザまたは装置、例えばコントローラによって設定される任意の減圧とし得る。プロセスは、圧力センサーを使用して組織部位における被適用圧力を検出する。プロセスは、ポンプモータに定電流を提供し、かつモータの両端子間の電圧を監視して、供給圧力を確認および制御する。プロセスは、患者や介護者によって設定された目標圧力および他のパラメータに基づいて供給圧力を確認および制御する。プロセスは、比較に基づいて減圧管理機能を実行する。プロセスは、比較に基づいて減圧管理機能を実行する。減圧管理機能は、装置の構成要素のいずれかまたは全ての任意のオペレーション、機能、またはアクティビティである。減圧管理機能はまたユーザによって実行され得る。
【0021】
一実施形態では、比較に基づく減圧管理機能の実行は、目標減圧を上回る実際の減圧に応答して、減圧源によって生成された生成減圧を低下させることを含む。別の実施形態では、プロセスは、逃がし弁を開放し、それにより、予め定められた閾値だけ目標減圧を上回る実際の減圧に応答して、組織部位における実際の減圧を低下させる。別の実施形態では、プロセスは、予め定められた閾値だけ目標減圧を上回る実際の減圧に応答して、減圧源の電源を切ることによって、生成された減圧を取り除く。
【0022】
別の実施形態では、比較に基づく減圧管理機能の実行は、実際の減圧を上回る目標減圧に応答して、減圧源によって生成された生成減圧を増加させることを含む。この実施形態では、プロセスは、インジケータを使用して、生成減圧の増加に対して非応答である組織部位における実際の減圧に応答して信号を発し得る。
【0023】
一例では、組織部位の実際の減圧は、組織部位の実際の減圧が生成減圧の増加に応答して予め定められた期間内に増加できないとき、生成減圧の増加に対して非応答である。別の例では、組織部位の実際の減圧は、組織部位の実際の減圧が生成減圧の増加に応答して予め定められた期間内に目標減圧を達成しないとき、生成減圧の増加に対して非応答である。特定の非限定的な例では、予め定められた期間は、4〜6秒の範囲とし得る。
【0024】
1.減圧治療システムの説明
ここで図1を見ると、本発明の例示的実施形態による、組織部位に供給される減圧を管理する装置のブロック図が示されている。具体的には、図1は、組織部位105に対する減圧を管理する減圧治療システム100を示す。減圧治療システム100を使用して、組織部位105に減圧治療を行い得る。組織部位105は、骨組織、脂肪組織、筋組織、皮膚組織、脈管組織、結合組織、軟骨、腱、靭帯、または任意の他の組織を含む、任意のヒト、動物、または他の生物の体の組織とし得る。組織部位105は、創傷、病変組織、または欠損組織を含んでもよく、組織部位はさらに、創傷、病変、または欠損のない健全な組織も含み得る。組織部位105に減圧を行うことは、組織部位105からの滲出液および他の液体のドレナージを促すために、ならびに、追加的な組織の成長を促すために使用され得る。組織部位105が創傷部位である場合には、肉芽組織の成長ならびに滲出液および細菌の除去により、創傷の治癒を促す。健全な組織を含む非創傷組織または非欠損組織に減圧を行うことは、組織の成長を促すために使用され、その組織は、採取されて別の組織の個所に移植され得る。
【0025】
組織部位105に適用される減圧は、減圧源110によって生成される。減圧源110は、任意のタイプの手動操作型、機械操作型、または電気操作型ポンプとし得る。減圧源110の非限定的な例は、蓄積エネルギーによって駆動されて減圧を生成できる装置を含む。これらの蓄積エネルギー型減圧源の例として、なんら限定はされないが、圧電エネルギー、バネエネルギー、太陽エネルギー、運動エネルギー、コンデンサに蓄積されたエネルギー、燃焼、およびSterlingまたは同様のサイクルによって開発されたエネルギーによって駆動されるポンプを含む。減圧源110に使用され得るまたは含まれ得るさらに他の装置およびプロセスは、シリンジ、主ねじ、ラチェット、ゼンマイ仕掛けの装置、振り子仕掛けの装置、手動発生装置、浸透処理、熱的加熱処理、および圧縮によって真空圧が生じる処理を含む。別の実施形態では、減圧源110は、モータ114によって駆動されるポンプ112を含んでもよく、モータは、バッテリー(図示せず)によって給電される直流モータである。好ましくは、ポンプ112の電力使用量は少なく、ポンプは、1回のバッテリーの充電で長期間動作できる。
【0026】
減圧源110は、ドレッシング115を介して組織部位105に減圧をもたらす。ドレッシング115は、組織105に隣接または接触して配置され得るマニホールド120を含む。マニホールド120は、組織部位105と接触して配置できかつ組織部位105に減圧を分配できる生体適合性の多孔質材とし得る。マニホールド120は、発泡体、ガーゼ、フェルトのマット、または特定の生物学的応用に好適な任意の他の材料から作製し得る。マニホールド120は複数の流路または流れ経路を含んで、組織部位105に対する減圧または流体の分配を促し得る。
【0027】
一実施形態では、マニホールド120は多孔質発泡体であり、かつ流路の機能を果たす複数の連続気泡または細孔を含む。多孔質発泡体は、ポリウレタンの連続気泡の網状発泡体、例えばKinetic Concepts,Inc.(San Antonio、Texas)製のGranuFoamとし得る。連続気泡の発泡体を使用する場合、多孔性は変化し得るが、好ましくは約400〜600ミクロンとし得る。流路は、連続気泡を有するマニホールド120の部分全体の流体連通を可能にする。気泡および流路は、形状およびサイズを均一としてもよいし、または形状およびサイズがパターン化されたまたは不揃いな変形例を含んでもよい。マニホールドの気泡の形状およびサイズの変形例によって、様々な流路が生じ、およびそのような特徴を使用して、マニホールド120を通る流体の流動特性を変化させ得る。マニホールド120は、さらに、「独立気泡」を含む部分を含み得る。マニホールド120のこれらの独立気泡部分は複数の気泡を含み、それらの大部分は、隣接する気泡と流体的に接続されていない。独立気泡部分は、マニホールド120に選択的に配置されて、マニホールド120の外周面を通って流体が伝達されないようにし得る。
【0028】
マニホールド120はまた、減圧治療システム100の使用後に患者の体内から取り除く必要のない生体再吸収性材料から構成し得る。好適な生体再吸収性材料は、限定はされないが、ポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)とのポリマーブレンドを含み得る。ポリマーブレンドはまた、限定はされないが、ポリカーボネート、ポリフマレート、およびカプララクトンを含み得る。マニホールド120は、新しい細胞増殖のための足場としての機能をさらに果たしてもよいし、または細胞増殖を促進するためにマニホールド120と足場材料が一緒に使用されてもよい。足場は、細胞増殖または組織形成を増進させるまたは促進するのに使用される物体または構造体であり、例えば、細胞増殖のテンプレートを提供する三次元の多孔質構造体である。足場材料の例示的例は、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、コーラルヒドロキシアパタイト(coral hydroxy apatite)、カーボネート、または加工された同種移植片材料を含む。一例では、足場材料は高い空隙摩擦(void−friction)を有する(すなわち、空気含有量が高い)。
【0029】
ドレッシング115はまたシール部材125を含む。マニホールド120は、シール部材125を使用して組織部位105に固定され得る。シール部材125は、組織部位105においてマニホールド120を固定するために使用されるカバーとし得る。シール部材125は不透過性または半透過性とし得るが、一例では、マニホールド120を覆ってシール部材125を取り付けた後、シール部材125は、組織部位105において減圧を維持できる。シール部材125は、シリコーンベースの化合物、アクリル、ヒドロゲルもしくはヒドロゲル発泡材、または組織部位105に望まれる不透過性もしくは透過性を含む任意の他の生体適合性材料から作製された可撓性ドレープまたはフィルムとし得る。シール部材125は疎水性材料から形成されて、シール部材125による吸湿を防止し得る。一実施形態では、シール部材125は、マニホールド120を囲む組織および組織部位105との封止接続をもたらすように構成される。封止接続は、シール部材125の周囲に沿ってまたはシール部材125のいずれかの部分に位置決めされた接着剤によってもたらされ、シール部材125をマニホールド120にまたは組織部位105の周囲の組織に固定し得る。接着剤は、シール部材125に予め位置決めされてもよいし、またはシール部材125を取り付ける直前にシール部材125に噴霧されてもまたは他の方法で塗布されてもよい。
【0030】
減圧源110によって生成された減圧は、減圧源チューブ130および供給チューブ135を使用して組織部位105に適用され得る。減圧源チューブ130および供給チューブ135は、気体、液体、ゲル、または他の流体が流れ得る任意のチューブとし得る。例えば、組織部位105からの滲出液が、供給チューブ135を流れ得る。図1では、減圧源ライン130が減圧源110をキャニスター140に結合し、および供給チューブ135がキャニスター140をドレッシング115に結合する。しかしながら、別の実施形態では、減圧源135は、供給チューブ135を使用してドレッシング115に直接結合され得る。
【0031】
減圧源チューブ130および供給チューブ135は、任意の材料で作製し得る。減圧源チューブ130および供給チューブ135は、可撓性でもまたは可撓性でなくてもよい。また、減圧源チューブ130および供給チューブ135は、流体が流れ得る1つ以上の通路またはルーメンを含み得る。例えば、供給チューブ135は2つのルーメンを含み得る。この例では、一方のルーメンを使用して、滲出液を組織部位105からキャニスター140へ通過させ得る。他方のルーメンを使用して、空気、抗菌剤、抗ウイルス剤、細胞成長促進剤、灌流液、または他の化学活性剤などの流体を組織部位105に供給し得る。これらの流体の起源である流体源は、図1に示さない。減圧治療システム100にマルチルーメンチューブを含めることに関するさらなる詳細は、下記で提供する。
【0032】
一実施形態では、供給チューブ135は、接続部材145を介してマニホールド120に結合される。接続部材145は、マニホールド120から供給チューブ135への、およびその反対方向の流体の通過を可能にする。例えば、マニホールド120を使用して組織部位105から収集された滲出液は、接続部材145を経由して供給チューブ135に入り得る。別の実施形態では、減圧治療システム100は接続部材145を含まない。この実施形態では、供給チューブ135がシール部材125またはマニホールド120に直接差し込まれて、供給チューブ135の端部がマニホールド120に隣接または接触するようにし得る。
【0033】
減圧治療システム100はキャニスター140を含む。組織部位105からの滲出液などの液体は、供給チューブ135を通ってキャニスター140に流れ得る。キャニスター115は、気体および液体などの流体、ならびに固体を含有する流体を入れることができる任意の装置または空洞とし得る。例えば、キャニスター115は、組織部位105からの滲出液を含有し得る。減圧源チューブ130および供給チューブ135は、キャニスター140に直接接続されてもよいし、またはコネクタ150などのコネクタを介してキャニスター140に結合されてもよい。キャニスター140は、供給チューブ135によってマニホールド120に流体的に接続された可撓性または剛性のキャニスター、袋、またはパウチとし得る。キャニスター140は、別個のキャニスターとしても、または減圧源110と動作可能に組み合わせられてもよく、滲出液および流体を収集する。
【0034】
減圧治療システム100は圧力センサー155を含む。圧力センサー155は、組織部位105における実際の減圧、すなわち、被適用圧力を検出する。非限定的な一例では、圧力センサー155は、シリコンピエゾ抵抗ゲージ圧力センサーである。圧力センサー155は、減圧治療システム100に含まれる唯一の圧力センサーであり、圧力センサー155以外の他の圧力センサーは含まれていない。圧力センサー155は、制御チューブ160を介して、組織部位105における被適用圧力を検出する。制御チューブ160は、気体が流れ得る任意のチューブである。制御チューブ160は任意の材料から作製し得る。制御チューブ160は、可撓性でもまたは可撓性でなくてもよい。また、制御チューブ160は、流体が流れ得る1つ以上の通路またはルーメンを含み得る。
【0035】
図1では、制御チューブ160は、コネクタ150を通過するものとして示す。しかしながら、制御チューブ160の配置は、特定のニーズおよび適用に適合するように変化させ得る。例えば、制御チューブ160は、キャニスター140の外表面に沿ってキャニスター140を経由してもよいし、またはキャニスター140を迂回してもよい。圧力センサー155の反対側の制御チューブ160の端部は、コネクタ145を介してマニホールド120に結合され得る。別の例では、制御チューブ160の端部がマニホールド120に隣接または接触するように、制御チューブ160はシール部材125またはマニホールド120に直接差し込まれ得る。
【0036】
別の実施形態では、供給チューブ135および制御チューブ160は、単一のマルチルーメンチューブにある各ルーメンである。減圧源チューブ130および制御チューブ160も、それぞれ、単一のマルチルーメンチューブにあるルーメンとし得る。供給チューブ135のみを使用して減圧源110がマニホールド120に結合される例では、単一のマルチルーメンチューブを使用して、減圧源110および圧力センサー155の双方をマニホールド120に結合し得る。図2を見ると、本発明の例示的実施形態によるマルチルーメンチューブの斜視図が示されている。具体的には、図1Aはマルチルーメンチューブ190を示し、これは、図1の減圧治療システム100などの減圧治療システムに実装され得る。
【0037】
マルチルーメンチューブ190は2つのルーメンを含む。具体的には、マルチルーメンチューブ190はルーメン192および194を含む。マルチルーメンチューブ190は2つのルーメン192および194を含むが、マルチルーメンチューブは、任意の数のルーメン、例えば3個、4個、または10個のルーメンを有し得る。一実施形態では、ルーメン192および194の一方、例えばルーメン192が、供給チューブまたは減圧源チューブ、例えば図1の供給チューブ135および減圧源チューブ130である。別の実施形態では、ルーメン192および194の一方、例えばルーメン194が、制御チューブ、例えば図1の制御チューブ160である。供給チューブ、減圧源チューブ、および制御チューブの組み合わせを単一のマルチルーメンチューブのルーメンとして組み込むことによって、減圧治療システムに含まれる個別のチューブ数を削減し得る。チューブ数を削減することにより、ユーザによって使用される減圧治療システムを単純にし、および減圧治療システムを運搬するときの負担を減少させる。
【0038】
圧力センサー155は、減圧治療システム100のどこに配置してもよい。図1に戻ると、圧力センサー155は、組織部位105から離れた個所に示されている。この例では、組織部位105における減圧は、気体の流れを可能にする制御チューブ160を通して、離れた個所に配置された圧力センサー155から検出され得る。また、この例では、圧力センサーは、減圧治療システム100の他の離れた個所に配置された構成要素、例えば減圧源110、キャニスター140、または減圧治療システム100の任意の他の図示の構成要素に直接または間接的に結合され得る。別の例では、圧力センサー155は、組織部位105の圧力を検出するために制御チューブ160を使用することを必要としないことがある。非限定的な一例では、圧力センサー155は、マニホールド120に直接結合され得る、またはシール部材125とマニホールド120との間に配置され得る。
【0039】
2.減圧の制御
減圧治療システム100は制御チューブ弁165を含む。制御チューブ弁165は制御チューブ160に結合され得る。制御チューブ弁165は、制御チューブ160の減圧を軽減できる任意の弁とし得る。制御チューブ弁165の非限定的な例は、空気電磁弁、比例弁、または機械弁を含む。一例では、制御チューブ弁165は、人間によって手動で制御され得る。別の例では、制御チューブ弁165は、コントローラ170によって制御され得る。一実施形態では、制御チューブ160内に閉塞が検出されると、制御チューブ弁165は、制御チューブ160の減圧を軽減するために開放され得る。そのような閉塞は、例えば、組織部位105からの滲出液または他の流体が制御チューブ160を詰まらせると、発生し得る。制御チューブ弁165を介して制御チューブ160の減圧を軽減することによって、閉塞は制御チューブ160から除去され得る。
【0040】
減圧治療システム100はまた、逃がし弁175を含み得る。逃がし弁175は、減圧源チューブ130、キャニスター140、コネクタ150、供給チューブ135、コネクタ145、減圧源110、またはドレッシング115のいずれか1つまたはそれらの組み合わせに結合された弁とし得る。逃がし弁175は、組織部位105における減圧を軽減できる任意のタイプの弁とし得る。逃がし弁175の非限定的な例は、空気電磁弁、比例弁、または機械弁を含む。一例では、逃がし弁175を開放して、組織部位105における減圧を軽減し得る。逃がし弁175はまた、組織部位105における減圧を管理するために使用し得る。組織部位105における減圧を管理するために、逃がし弁175、および減圧治療システム100の他の構成要素を使用することに関するさらなる詳細を、以下提供する。
【0041】
減圧治療システムはコントローラ170を含む。コントローラ170は、データ、例えば圧力センサー155からのデータを処理できる任意の装置である。コントローラ170はまた、減圧治療システム100の1つ以上の構成要素、例えば減圧源110、逃がし弁175、制御チューブ弁165、圧力センサー155、またはインジケータ180の動作を制御し得る。一実施形態では、コントローラ170は、データ、例えば圧力センサー155からのデータを受信して処理し、かつ減圧治療システム100の1つ以上の構成要素の動作を制御して、組織部位105における被適用圧力を管理する。
【0042】
一実施形態では、コントローラ170は、組織部位105の目標圧力を決定する。目標減圧は、組織部位105に対してユーザが定義できる減圧とし得る。目標減圧はまた、コントローラ170によって決定され得る。一例では、目標圧力は、組織部位105に効果的な治療を行いかつ組織部位105に減圧を行うことに関連した安全性の問題を考慮した減圧である。
【0043】
一例では、圧力センサー155は、組織部位105における被適用圧力を検出し、および減圧測定値をコントローラ170に入力する。コントローラ170は、圧力センサー155から受信した減圧を目標圧力と比較して、圧力の差、すなわち、それらの間の「被適用圧力差」を判断し得る。次いで、コントローラ170は、被適用差圧に基づいて減圧管理機能を実行し得る、または減圧治療システム100の構成要素に実行させるようにし得る。一実施形態では、被適用差圧に基づいた減圧管理機能の実行において、コントローラ170は、目標圧力超の被適用圧力に応えて、または被適用差圧の最大値を超えることによって、減圧源110によって生成された減圧、すなわち、供給圧力を低下させる。
【0044】
例えば、減圧源110が電動式またはその他の電気的に操作される、例えば直流モータ114のような減圧源である場合、減圧源110が生成する供給圧力量を低下させるように、モータまたは電気的な処理を減速させ得る。別の実施形態では、コントローラ170は、単に、圧力センサー155によって測定された被適用圧力に応答して、減圧源110の電源を切るまたは運転停止させる。別の実施形態では、圧力センサー155によって測定された減圧に応答して、コントローラ170は逃がし弁175を開放し、組織部位105における被適用圧力を減少させる。被適用差圧の最大値は、ユーザまたは減圧治療システム100の構成要素、例えばコントローラ170によって設定され得る。一例では、被適用差圧の最大値は、組織部位105における組織の安全性を保証するのを助ける閾値である。それゆえ、この実施形態は、単一の圧力センサー155を使用する安全機構として実装し得る。
【0045】
別の例では、被適用圧力差に基づく減圧管理機能の実行において、コントローラ170は、減圧源110によって生成された供給圧力を高める。例えば、減圧源110が電動式またはその他の電気的に操作される、例えばモータ114のような減圧源である場合、モータまたは電気処理の速度は、減圧源110が生成する供給圧力量が増えるように、速められ得る。別の実施形態では、コントローラ170は、圧力センサー155によって測定されるような、組織部位105における被適用圧力の応答性を、減圧源110から生成される供給圧力を増加させるように決定する。一例では、コントローラ170は、供給圧力の上昇または低下の時点を検出し得る。例えば、コントローラ170は、モータの速度または減圧源110の圧縮速度の上昇または低下の時点を検出できてもよい。そのような上昇または低下を判断するために、コントローラ170によって検出され得る他のパラメータは、モータの電流引き込みを含み、これは、ポンプの速度を示し得る。コントローラ170はまた、圧力センサー155によって測定された被適用圧力と目標圧力との比較に基づいて、減圧源によって生成された供給圧力が上昇または低下することを推論できるようにしてもよい。
【0046】
一実施形態では、コントローラ170は、インジケータ180に入力し、圧力センサー155によって測定されたような、供給圧力の上昇に対して非応答の組織部位105における被適用圧力に応答して、信号を発する。一実施形態では、インジケータ180は、発光ダイオード、または「LED」である。この実施形態では、インジケータ180は、供給圧力の上昇に対して非応答の組織部位105における被適用圧力に応答して、照明する。別の実施形態では、インジケータ180は、音を発する装置、例えばスピーカである。この実施形態では、インジケータ180は、供給圧力の上昇に対して非応答の組織部位105における被適用圧力に応答して、音を発する。
【0047】
場合によっては、組織部位105における被適用圧力が、供給圧力の上昇に応答して予め定められた期間内で高まらないとき、組織部位105における被適用圧力は供給圧力の上昇に対して非応答である。そのような非応答は、減圧治療システム100の1つ以上の構成要素、例えば供給チューブ135または減圧源チューブ130が閉塞されていることまたはそこに漏れがあることを示し得る。例えば、液体、例えば組織部位105からの滲出液は、供給チューブ135または減圧源チューブ130を詰まらせ得る。別の例では、供給チューブ135または減圧源チューブ130に沿った個所で破裂が発生した可能性もある。予め定められた期間は任意の期間としてもよく、および減圧治療システム100のユーザ、または減圧治療システム100の構成要素、例えばコントローラ170によって設定され得る。一例では、予め定められた期間は、1秒〜10秒または4秒〜6秒の範囲である。具体的な非限定的な一例では、予め定められた期間は5秒である。
【0048】
別の実施形態では、組織部位105における被適用圧力が、供給圧力の上昇に応答して、予め定められた期間内で目標圧力に達することができないとき、組織部位105における被適用圧力は供給圧力の上昇に対して非応答である。上述した実施形態と同様に、そのような非応答は、減圧治療システム100の1つ以上の構成要素、例えば供給チューブ135または減圧源チューブ130が閉塞されているまたはそこに漏れがあることを示し得る。
【0049】
本発明の別の実施形態では、減圧源110が真空ポンプ112およびモータ114である場合、真空ポンプ112またはモータ114にセンサーが結合され、ポンプまたはモータの速度を測定し得る。センサーが入手した測定値を使用して、ポンプによって供給された供給圧力を推論し、それにより、漏れまたは閉塞が存在するかどうかを判断しかつそれらを区別するための機構を提供し得る。例えば、漏れの検出は、ポンプ112またはモータ114のいずれかまたは双方の速度を監視することによって実行し得る。減圧治療を施している最中に漏れが発生する場合、ポンプの速度またはモータの速度のいずれかまたは双方は高まる傾向があり、ポンプが生成する供給圧力が上昇していることを示す。閉塞が発生する場合、ポンプまたはモータのいずれかまたは双方の速度は低下する傾向がある。ポンプまたはモータの速度センサーからの出力をコントローラ170が使用して、漏れまたは閉塞条件の最中に、インジケータ180を使用して信号を発し得る。
【0050】
具体的な例示的一例では、減圧源110は、モータの速度を検出するためにモータおよびセンサーを含む。インジケータ180は、モータの速度が閾値量だけ変化するときに信号を発し得る。閾値量は任意の量としてもよく、および減圧治療システム100のユーザ、または減圧治療システム100の構成要素、例えばコントローラ170によって設定され得る。閾値量は、有限量、百分率、またはそれらの任意の組み合わせを単位として表し得る。
【0051】
ここで図2を見ると、本発明の例示的実施形態による、組織部位における減圧を管理するためのプロセスを示すフロー図200が示されている。図2に示すプロセスは、コントローラ、例えば図1のコントローラ170によって、減圧治療システムの他の構成要素、例えば図1の減圧治療システム100の構成要素と共に、実行され得る。プロセスは、目標圧力を決定し、かつ単一の圧力センサーを使用して組織部位における被適用圧力を検出することによって開始する(ステップ201)。プロセスは、被適用圧力と目標圧力を比較し、かつ比較信号を提供して、フロー図200の残りの部分に示すように比較信号に基づいて減圧管理機能を実行する。
【0052】
プロセスは、被適用圧力が目標圧力を超えているかどうか判断することによって進む(ステップ205)。プロセスが、被適用圧力は目標圧力を超えていないと判断する場合、プロセスは、供給圧力を上昇させる(ステップ245)。プロセスは、目標期間後に、被適用圧力が目標圧力に達したかどうか判断することによって進む(250)。被適用圧力が目標圧力に達したら、プロセスは終了する。しかしながら、プロセスが、予め定められた目標期間後に、被適用圧力がまだ目標圧力に達していないと判断する場合、プロセスは警報を発するようにし(ステップ260)、同様に、システムに漏れが発生した可能性があることをユーザに示して、プロセスを終了させる。ステップ205に戻ると、プロセスが、被適用圧力が目標圧力を超えていると判断する場合、プロセスは、減圧源によって生成される供給圧力を低下させる(ステップ210)。
【0053】
次に、プロセスは、被適用圧力が目標圧力を予め定められた最大閾値だけ超えているかどうかを判断する(ステップ215)。プロセスが、被適用圧力が予め定められた最大閾値だけ目標圧力を超えていないと判断する場合、プロセスは終了する。ステップ215に戻ると、プロセスが、被適用圧力が予め定められた最大閾値だけ目標圧力を超えていると判断する場合、プロセスは、逃がし弁を開放することによって被適用圧力を低下させるかどうかを判断する(ステップ220)。プロセスが、逃がし弁を開放することによって被適用圧力を低下させると判断する場合、プロセスは逃がし弁を開放して、組織部位における被適用圧力を低下させる(ステップ225)。ステップ220に戻ると、プロセスが、逃がし弁を開放することによって被適用圧力を低下させないと判断する場合、プロセスは、供給圧力を止めることによって被適用圧力を低下させるかどうかを判断する(ステップ230)。プロセスが、供給圧力を止めることによって被適用圧力を低下させることを判断する場合、プロセスは供給圧力源の電源を切り(ステップ235)、その後、終了する。ステップ230に戻ると、プロセスが、被適用圧力源の電源を切ることによって被適用圧力を低下させないと判断する場合、プロセスは終了する。
【0054】
3.DCモータ用のモータ駆動システム
本発明の別の実施形態では、モータ114はDC駆動モータとしてもよく、およびポンプ112は、DC駆動モータによる、ダイヤフラムタイプの機械式駆動としてもよい。より具体的に図3〜5を参照すると、コントローラ170は、DC駆動モータに定電流Iをもたらすモータ駆動システム300を含んでもよく、このDC駆動モータは、好ましくは、ダイヤフラムポンプ302を駆動させるのに十分な高い定格電圧Vを有するブラシ付きDCモータ301である。モータ駆動システム300は、DCモータ301によって引き込まれる電流(I)を制御し、モータ電流Iを定電流Iレベルに維持する。定電流Iは、所望の圧力療法としてユーザによって選択された目標圧力Pに近い供給圧力Pをダイヤフラムポンプ302に生成させるモータ速度を達成するように選択する。例示的な一実施形態では、DCモータ301は、定電流Iが約67ミリアンペアにあるといわれる状態で約4.5ボルトの定格電圧Vを有するため、ダイヤフラムポンプ302は、約125mmHgの供給圧力Pを生成する。
【0055】
モータ駆動システム300はコントローラ170に組み込まれてもよく、コントローラは、上述の通り機能し続け得る、または減圧治療システム100の別個の構成要素として構成され得る。モータ駆動システム300は、組織部位105における被適用圧力を感知する圧力センサー155と連動してまたはその代わりに動作し、かつ特定の適用例に応じて単一ルーメン導管またはマルチルーメン導管のいずれかを利用し得る。圧力センサー155は、コントローラ170に入力情報を提供して、ポンプ302によって生成された供給圧力Pとは異なり得る、組織部位105における被適用圧力を直接測定する。
【0056】
定電流モードでは、定電流IがDCモータ301に印加されると、DCモータ301は、高速で動くことによって、周囲からの供給圧力Pを目標圧力Pまで高め始める。初めは、モータの両端子間の電圧降下(V)が、DCモータ301の定格電圧Vに急上昇し、その後、DCモータが供給圧力Pの上昇に応答して減速するにつれて、DCモータ301の速度に比例して低下する。供給圧力Pが目標圧力Pに達すると、DCモータ301は、モータ電圧Vが非常に低い値まで比例して降下した状態で、失速点まで減速する。失速電圧(V)は公称電圧レベルとして選択され、モータ電圧Vは、供給圧力Pが恐らく目標圧力Pに達したことおよびDCモータ301を停止する必要があることを示す信号を提供する前に、このレベル未満に下がってはいけない。モータ駆動システム300は、モータ電圧Vを測定し、モータ電圧Vを失速電圧Vと比較し、およびモータ電圧Vが失速電圧V未満に下がると、DCモータ301への電流を切断する。本質的に、モータ電圧Vが失速電圧V未満に下がると、モータ駆動システム300は、供給圧力Pを直接測定する圧力センサーを使用せずに、供給圧力Pが目標圧力Pに達したという間接的な表示を提供する。
【0057】
DCモータは、一般に、定電圧を使用して動作し、モータ電流は、DCモータの回転速度が増すと降下する。DCモータに負荷がかけられ、DCモータのロータを減速させると、モータによって引き込まれた電流、すなわち、モータ電流(I)は増加し、それにより、そのような減速で要求される電力を増加させる。減圧システムにおける定電流モータ駆動は、定電圧モータ駆動に勝る少なくとも2つの利点を提供する。第1に、供給圧力Pが目標圧力Pに到達したときにDCモータが定電圧システムにおいて減速すると、圧力負荷の増加によって、DCモータはより多くの電流を引き込むようになる。モータ電流およびモータ電圧の双方とも高いため、DCモータは、ポンプが目標圧力P付近の供給圧力Pを生成している長い期間、より多くの電力を必要とする。DCモータ301が上述の通り定電流システムにおいて減速すると、モータ電圧Vは低下して、電力需要も、定電圧駆動システムの電力需要を下回るレベルまで、降下する。
【0058】
第2に、モータ電圧Vが失速電圧V未満に降下すると、DCモータ301は、供給圧力Pが上述した通りの所望の目標圧力Pの付近にあると仮定して、電源を切られ得る。その結果、電力消費がさらに減少される。より重要なことは、供給圧力Pは、供給圧力Pを直接測定する別個の圧力センサーを必要とせずに、または圧力センサーを使用するシステムに必要とされる負のフィードバック回路を必要とせずに、制御される。前述の通り、供給圧力Pを測定するための圧力センサーを除外することは、コストおよび汚染源の可能性を大幅に減らす。それゆえ、モータ駆動システム300は、定電流IをDCモータ301にもたらし、かつモータ電圧Vと失速電圧Vとの電圧差を監視して、追加的な圧力センサー、または圧力センサーを使用するシステムに必要とされる任意のフィードバック回路がなくても、ポンプ302によってもたらされた供給圧力Pを制御できると推論する。
【0059】
モータ駆動システム300は定電流発生器304を含み、定電流発生器は、サージ開始電力ブースト回路、すなわち、サージブーストモジュール303を介して、DCモータ301にモータ電流(I)として定電流Iをもたらす。サージブーストモジュール303は、単に、何らかの理由で停止後にDCモータ301に低電力レベルが再印加されるときに、DCモータ301が信頼性高く確実に始動するようにする。目標圧力Pは、所望の目標圧力Pを達成する定電流Iを設定するために定電流発生器304に信号を提供する目標圧力設定モジュール305によって設定される。目標圧力モジュール305は、減圧治療システム100の製造者または場合によってはユーザによって、望ましい圧力療法の範囲内、例えば、120〜150mmHgに目標圧力Pを調整するために定電流Iを変化させるように調整できる入力装置を含む。DCモータ301の量端子間でのモータ電圧V、すなわち、原(raw)モータ電圧V(raw)は、低域フィルター306によってフィルタリングされ、かつバッファモジュール307によってバッファリングされ、あらゆる変動を平滑にする。フィルタリングされたモータ電圧VMFは差動増幅器(図示せず)に印加されて、モータ駆動システム300の他の構成要素、例えば比較器に接地基準(ground−reference)信号を提供し得る。
【0060】
モータ駆動システム300は、いくつかの動作モード、例えば、「電源オンブースト(power−on boost)」モードなどを含み得る。このスアートアップモードでは、設定期間、すなわち、電源オンブースト期間(TPB)だけDCモータ301により多くの電力が印加され、DCモータ301の始動後、より迅速に供給圧力Pを引き下げ、すなわち、より高い負圧を達成する。基本的には、全定格電圧がDCモータ301に印加されて、より迅速にDCモータ301の速度を高めるため、所望の供給圧力Pがより迅速に達成され得る。例えば、モータ電圧Vは、約4.5ボルトまで増加され、圧力曲線の上昇部P(1)に示すように供給圧力Pが目標圧力Pに達すると、電源オンブースト期間TPB後に約1.5ボルトの動作電圧まで降下し得る。公称定電流条件下では、供給圧力Pは、やがて、圧力曲線の上昇部P(I)によって示すように目標圧力P、例えば、145mmHgまで上昇する;モータ電圧Vの増加は、単に、供給圧力Pをより速く引き下ろす。
【0061】
電源オンブーストモードは電源オンブーストモジュール310を含み、電源オンブーストモジュールは、パワーブースト信号311を定電流発生器304に提供し、DCモータ301に印加されたモータ電圧Vを増加させる。モータ電圧Vがより高くなると、DCモータ301の回転速度を高めるため、供給圧力Pは、より迅速に目標圧力Pに達する。電源オンブーストの特徴は、モータ駆動システム300を定電流条件からこの短い期間(TPB)外すことを理解されたい。なぜなら、DCモータ301により多くの電力を印加してより迅速に供給圧力Pを高めるように、モータ電圧Vを増加させるためである。電源オンブーストモードは、一般に、創傷療法治療の開始時に使用されるが、同様に、他のとき、例えば、介護者がドレッシング115を変更した後にも使用され得る。
【0062】
より具体的に図5Bを参照すると、図5Aに示す短期間(T)にわたって供給圧力Pに関連付けられたモータ電流I、原モータ電圧V(raw)、およびフィルタリング済みモータ電圧VMFの図である。スタートアップ時の電源オンブースト期間(TPB)がタイムアウトした後、モータ駆動システム300は、モータ電流I図5Bに示すような定電流Iの設定にほぼ等しい定電流条件に戻る。モータ駆動システム300は、供給圧力Pが目標圧力Pに達するのにかかる時間に依存して、可変期間(TON)、定電流条件に留まる。時間が経つにつれてドレッシング115がより漏れを生じるため、例えば、モータ駆動システム300は、漏れに対抗するためにより働き、そのためタイムオン(time−on)期間TONは、タイムオン期間T1、T2、T3、およびT4によって示すようにより長く続くようになり、タイムオン期間T4はタイムオン期間T1よりも長い。
【0063】
供給圧力Pが目標圧力Pに達すると、モータ駆動システム300は、さらに、回転速度が低速すぎる場合にDCモータ301が停止される動作モード、すなわち、「低速の場合モータ停止」モードで動作するように構成される。本質的には、モータ駆動システム300は、ポンプ301を設定期間、運転停止させる回路を含む。運転停止期間(TSD)後、上述しかつ図5Bに示すようなターンオフ(turn−off)時刻tに、フィルタリング済みモータ電圧VMFは失速電圧V未満に降下する。バッファ307は、バッファリング済みおよびフィルタリング済みのモータ電圧VMFを、モータ停止または失速比較器314に提供し、そこでフィルタリング済みモータ電圧VMFを失速電圧Vと比較する。製造者またはユーザは、所望の失速電圧Vを失速比較器314に提供する設定点モジュール316を用いて失速電圧Vを設定する。
【0064】
失速比較器314は、モータ電圧Vが失速電圧V未満に降下すると、失速条件信号315をモータ停止または失速タイマー318に提供し、それにより、失速タイマー318が一定期間、すなわち、運転停止期間(TSD)動作するようにトリガする。失速タイマー318が運転停止期間TSDをカウントダウンするように設定されると、停止信号320を定電流発生器304に提供して、モータ電流(I)を、例えば、各タイムオン期間(T1〜T4)の最後にマークしているt、t、t、およびtの時刻でのオフタイム(toff)で示すように、ゼロに低下させる。運転停止期間(TSD)の経過後、停止信号320は除去されるため、定電流発生器304は、サージ開始ブースト303をトリガし、オンタイム(ton)の時刻t、t、t、およびtでDCモータ301を電流源に再接続して、モータ電流Iおよび原モータ電圧V(raw)を急上昇させるが、上述のようにフィルタリング済みモータ電圧VMFは急上昇させない。
【0065】
例えば、失速電圧Vは約1.25ボルトの値に設定されるので、図5Bに示すようなオフタイム(toff)の時刻t、t、t、およびtでフィルタリング済みモータ電圧VMFが失速電圧V未満に降下すると、失速比較器314は失速条件信号を失速タイマー318に提供し得る。失速タイマー318は、毎回停止信号320を提供し、および毎回、DCモータ301の運転を停止して、低速の場合モータ停止モードにおいて、モータ電圧Vが運転停止期間TSDゼロまで降下するようにする。運転停止期間(TSD)の経過後、DCモータ301は低電力レベルで再始動し、およびフィルタリング済みモータ電圧V(filter)は、オンタイム(ton)の時刻t、t、t、およびtにおいて、失速電圧Vを上回る動作電圧まで増加し、この動作電圧は、V(1)、V(2)、V(3)、およびV(4)で示すように約1.5ボルトの値とし得る。それゆえ、DCモータ301の完全な動作サイクルは、定電流モードの最中の可変タイムオン期間TON(T1、T2、T3、およびT4)と、図5Bに示すような一定の運転停止期間TSDとを含む。
【0066】
モータ駆動システム300はまた、キック始動動作モードを含み、モータ駆動システム300が電源オンブーストモードまたは低速の場合モータ停止モードにない限り、DCモータ301の動作サイクル期間中どんなときでも、ポンプ301の停止時間が長くなりすぎないことを保証する。電源オンブースト信号311および停止信号320の双方とも、同様に、キック始動タイミング信号325をサージ開始ブーストモジュール303に提供して上述のように動作させるキック始動タイマー324の抑止入力端子(I)に適用され得る。キック始動タイミング信号325は、他の動作モードのいずれによっても抑止されないときに、一定の周波数または期間(TKS)で連続的なパルス328を提供する非同期パルス信号とし得る。各パルス328は、サージ開始ブーストモジュール303をトリガして、DCモータ301を短期間停止させかつ低電力の再始動モードで再始動させるようにする。DCモータ301が電源オンブーストモードで速く動いているときまたは停止されているときは、キック始動タイマー324は必要ではないため、電源オンブースト信号311および停止信号320は、キック始動タイマー324が、それらの各期間にサージ開始ブーストモジュール303を無効にすることを禁じる。
【0067】
運転停止期間TSDおよび電源オンブースト期間TPBの経過後、停止信号320および電源オンブースト信号311は、もはや、キック始動タイミング信号325を抑止しないため、サージ開始ブーストモジュール303を、小さな負のスパイク505によって示すようなキック始動タイミング信号325のパルス328によってトリガできる。このスパイクは、定電流動作モードの最中にフィルタリング済みモータ電圧V(filter)において発生し、定電流発生器304がDCモータ301に確実に電力を供給するようにする。いくつかの負のスパイク505が、タイムオン期間T5中などの定電流モードのタイムオン期間TONの最中に発生し得る。キック始動タイマー324およびサージ開始ブーストモジュール303はウォッチドックタイマーの役目を果たし、DCモータ301が、確実に、定電流モードで運転し続けるようにし、そのようなものとして、それらは、モータ駆動システム300の動作には必須ではない安全機能の役目を果たすようにする。
【0068】
例として再度図5Bを参照すると、停止信号320は、t、t、tおよびtでのオフタイム(toff)で発生し、これらオフタイムはキック始動タイミング信号325を抑止するので、DCモータ301を始動させるようにはサージ開始ブーストモジュール303がトリガされない。運転停止期間TSDがオンタイム(ton)の時刻t、t、t、およびtで期限切れになると、キック始動タイミング信号325はもはや抑止されず、サージ開始ブーストモジュール303をトリガし続け、DCモータ301が確実に再始動して供給圧力Pを目標圧力P付近に維持するようにする。DCモータ301が低電力レベルで再始動後、フィルタリング済みモータ電圧VMFは上昇して、約1.5ボルトの動作速度まで戻る。モータ停止モードは、著しい漏れがない場合に供給圧力Pを目標圧力Pにまたはその付近に維持し、減圧治療システム100からの通常の動作漏れレベルを補償する。キック始動モードは、低電力で、すなわち、固定電流および低電圧で動作しているときにDCモータ301が確実に運転し続けるようにする。
【0069】
前述の通り、モータ停止モードは、著しい漏れがない場合に、供給圧力Pを目標圧力P付近に維持する。著しい漏れがあり、および組織部位105における被適用圧力を急速に降下させる場合、モータの速度は、フィルタリング済みモータ電圧VMFによって示すようにポンプ302への負荷が減ることに応答して、高まる。フィルタリング済みモータ電圧は、モータ電圧V(5)によって示されるのと同時に上昇する。モータ駆動システム300の一実施形態では、ユーザは、モータ電圧Vの上限を特定値、すなわち、漏れ電圧(V)を選択する。フィルタリング済みモータ電圧VMFが、任意の大幅な設計余裕だけ漏れ電圧(V)を上回るとき、著しい漏れ条件がシステムに存在する。それゆえ、モータ駆動システム300はまた、「高速の場合パワーブースト」動作モードを含み、これは、システムに著しい漏れがあることの表示を提供するモジュールを含む。バッファ307も、フィルタリング済みモータ電圧VMFを圧力漏れ比較器330に提供する。製造者またはユーザは、漏れ電圧Vを入力装置332において設定し、この入力装置は、漏れ電圧Vを反映する漏れ信号を漏れ比較器330に提供する。モータ電圧Vが漏れ電圧Vに等しいかまたはそれよりも大きい場合、漏れ比較器330は、漏れインジケータ信号333を漏れタイマー334に提供し、漏れタイマーは、パワーブースト信号336を圧力漏れパワーブーストモジュール338に提供する。圧力漏れパワーブーストモジュール338はパワーブースト信号340を、上昇した電力レベル、すなわち、ブースト漏れ電力(boost leak power)で駆動する定電流発生器304に提供する。
【0070】
ブースト漏れ電力は、DCモータ301への電流を、事前設定された定電流を超えるように増加させること、または再度、DCモータ301に印加されるモータ電圧Vを増加させることのいずれかによって、生成され得る。ブースト漏れ電力は追加的な供給圧力Pを生成し、減圧治療システム100の著しい漏れを補償する。漏れタイマー334は、ブースト漏れ電力がDCモータ301に印加されている漏れブースト期間(TLB)後にタイムアウトする。漏れブースト期間TLBの経過後、圧力漏れタイマー334は、フィルター306のコンデンサに放電信号342を提供し、漏れ比較器330をリセットし得るため、もはやDCモータ301にブースト漏れ電力は印加されない。DCモータ301は、著しい漏れが直される場合の速度に関連した動作モータ電圧Vによって示されるように、その通常の速度に戻る必要がある。圧力漏れタイマー334はまた、パワーブースト信号336をキック始動タイマー324に提供し、再度、キック始動タイミング信号325を抑止し、かつパワーブースト信号340が定電流発生器304に適用されている最中に上述のようなサージ開始ブーストモジュール303を無効にする。漏れブースト期間TLBの経過後、キック始動タイミング信号325はもはや抑止されないため、上述の通りサージ開始ブーストモジュール303をトリガし続ける。
【0071】
再度図5Bを参照して、高速の場合パワーブーストモードの動作の例を説明する。製造者またはユーザは、漏れ電圧Vを2.0ボルトの値に設定し得る。著しい漏れが時刻tで発生するとする場合、供給圧力Pは、目標圧力P未満に、例えば、P(2)などの値まで降下していて、それによりDCモータ301の動きを速くするであろう。その結果、フィルタリング済みモータ電圧VMFも増加し、最終的には507において漏れ電圧Vを超え、それにより、漏れ比較器330に漏れタイマー334をトリガさせる。漏れタイマー334がトリガされると、例えば、モータ電流Iを漏れブースト期間(TLB)だけ、定電流Iを上回る値IPBに増加することによって、ブースト漏れ電力が定電流発生器304に印加される。ブースト漏れ電力は、DCモータ301の動きをさらに速くし、供給圧力Pの損失を克服し、かつ供給圧力Pを上昇させて、供給圧力P(3)で示すような目標圧力Pまで戻す。供給圧力Pが目標圧力P付近に留まる場合、フィルタリング済みモータ電圧VMFは、漏れが克服されたことを示す。なぜなら、漏れブースト期間(TLB)の経過後、モータ電圧V(6)によって示されるように、フィルタリング済みモータ電圧VMFは漏れ電圧V未満に降下して、失速電圧V未満まで下がって戻るためである。
【0072】
それにもかかわらず、パワーブーストされたDCモータ301は、漏れブースト期間(TLB)の経過後にも、持続する著しい漏れおよび供給圧力Pの対応する損失を克服できなくてもよい。この状況は、圧力漏れインジケータ330が再度漏れ条件信号333を提供する場合に示される。なぜなら、時刻t10におけるモータ電圧は、モータ電圧V(7)によって示されるように、依然として漏れ電圧Vを上回っているためである。これは、供給圧力Pはまだ目標圧力Pに達していないこと、または目標圧力Pに達して、供給圧力P(4)で示されるように再度目標圧力P未満に降下したことを示していると推論できる。それゆえ、パワーブースト信号340は、定電流発生器304を再トリガして、ブースト漏れ電力をDCモータ301に提供する。漏れ比較器330は、フィルタリング済みモータ電圧VMFが漏れ電圧V未満に降下するときのみ、漏れタイマー334へのトリガを停止する。場合によっては、漏れは十分にひどいので、そのために、供給圧力Pは、失われた圧力を補償できず、および決して漏れ電圧V未満に降下することのないフィルタリング済みモータ電圧VMFによって示されているような目標圧力Pに達した状態には、決してならない。そのような場合、圧力センサー155を使用して、インジケータ172が示すように著しい漏れが依然として存在することを確認し得る。圧力センサー155は、本発明の動作には必須ではないが、システムが適切に動作することを保証するように、ある程度支援できる。
【0073】
それゆえ、DCモータ301は、通常、予め定められた範囲、例えば、約1.5〜1.75ボルトで変動するので、フィルタリング済みモータ電圧VMFによって示されるような目標圧力Pを維持するのに十分な速度で動作する。しかしながら、DCモータ301は、高速で動作し始め、フィルタリング済みモータ電圧VMFが漏れ電圧V超に急上昇しかつ漏れタイマー334をトリガしてパワーブーストをDCモータ301にもたらすときに、フィルタリング済みモータ電圧VMFによって示されるような著しい漏れから生じる供給圧力Pの損失を克服し得る。スペクトルの他方の端部では、DCモータ301は、かなりの低速度に減速し得る。なぜなら、システムには、ほとんど漏れがないため、目標圧力Pを維持するために小さな供給圧力Pのみが必要であるためである。この条件は、フィルタリング済みモータ電圧VMFが事前設定停止電圧V未満に降下しかつモータ停止タイマー318をトリガして単にDCモータ301を停止させ、目標圧力Pが一貫した値に保持されているときに節電すると、検出される。次いで、キック始動タイマー324が、運転停止期間TSDの経過後におよび圧力漏れ信号320がない場合にDCモータ301が運転し続けていることを確認する。
【0074】
一実施形態では、モータ駆動システム300は全てハードウェアに実装され、ソフトウェアの実施形態にモータ駆動システム300を実装することに関連して複雑な構成となるのを回避し、かつ調整による遅れがないようにする。モータ駆動システム300の要素は、回路基板、集積回路、または個々に接続された要素の一部とし得る。例えば、トレース、ワイヤ、または他の導電媒質が、図3に示すブロック図で説明するようなモータ駆動システム300のモジュールを電気的に接続され得る。
【0075】
ここで図4を参照すると、本発明の例示的実施形態による、減圧を生成するためのポンプを駆動するモータを制御するプロセスを示すフロー図400が示されている。プロセスは、モータ駆動システム、例えば上述のモータ駆動システム300、または減圧治療システム100の他の構成要素、例えば、コントローラ170などによって実装され得る。プロセスは、所望の圧力療法を達成するために目標圧力Pを選択することによって開始する(ステップ401)。次いで、プロセスは、モータに定電流を提供することによって、およびモータ電圧がすぐにモータの速度をある速度まで上昇させ、その後供給圧力Pの上昇に対するモータの応答が遅いことにより降下する当該モータ電圧を測定することによって、電源オン手順を開始する(ステップ405)。プロセスはまた、パワーブースト期間(TPB)により多くの電力をモータに印加し、より急速に供給圧力Pの引き下げを行う電源オンブースト手順(ステップ410)を含んでもよく、例えば、電力は、モータ電圧を増加することによって増加され、それにより、モータの速度を、既に説明したような公称定電流条件にあるときよりも急速に速くなり得る。これにより、効果的に、モータがより多くの電流を引き込むため、短期間の電源オン時間だけプロセスを定電流条件から外す。
【0076】
供給圧力Pが目標圧力Pに達すると、モータ電圧が定電流モードにおいて通常の動作レベルまで比例的に降下しながら、モータは減速する(ステップ420)。その後、プロセスは、モータ電圧を反映するようなモータの速度が通常のレベルに留まっているかどうか、または動きが速すぎたり遅すぎたりしないかを判断するために確認する(ステップ430)。モータが依然として通常の速度で運転している場合、そのようにし続けて、定電流モードで定電流を引き込む(ステップ420)。しかしながら、モータ電圧が予め選択された低い値、すなわち、失速電圧まで比例的に降下しながら、モータが失速点まで減速すると、プロセスはモータ停止信号を提供して、モータを運転停止期間(TSD)だけ定電流からモータから切り離して、モータが失速する前にモータを停止させるようにする(ステップ435)。電流源は、運転停止期間(TSD)の経過後でモータを再始動させるサージ開始ブーストプロセス(440)を経て接続を切られる。本質的には、失速電圧は、供給圧力Pが目標圧力Pに達したことの間接的な指標である。
【0077】
プロセスがモータ停止信号を提供した後、プロセスは、ユーザまたは別の制御信号が電力を切ったかどうか確認した後で(ステップ445)定電流モードに戻り(ステップ420)、プロセスを終了して(ステップ450)、治療を終了する。制御信号は、既に説明したものなどの減圧管理システムによって認識または感知された事象の結果、トリガされ得る。ステップ430に戻ると、減圧システムの著しい漏れから生じる可能性があるようにモータの動きが速すぎる場合、モータ電圧はまた、予め選択された高い値、すなわち、漏れ電圧まで比例して増加する。モータ電圧が漏れ電圧を超えると、プロセスは、圧力漏れパワーブースト(ステップ460)をモータに漏れブースト期間T(LB)提供し、追加的な供給圧力Pを生成して、システムの圧力漏れを補償する。プロセスが圧力漏れパワーブーストを提供した後、プロセスは定電流モードに戻る(ステップ420)。
【0078】
プロセスは、タイミング、すなわち、タイミングステップ410、435、および460を含むステップの全てを監視し(ステップ465)、それらのいずれか1つがアクティブかどうか判断する(ステップ470)、すなわち、タイマー分析ステップ470。タイミングステップ410、435、および460は、対応する動作期間、すなわち、パワーブースト期間(TPB)、運転停止期間(TSD)、および漏れブースト期間(TLB)の期間中、アクティブであるとみなされる。プロセスは、タイマー分析ステップ470の出力信号をキック始動タイマープロセスに提供し(ステップ480)、キック始動タイマープロセスは、一定の条件下でキック始動信号485をサージ開始ブーストプロセス440に提供する。例えば、いずれのタイミングステップもアクティブではない場合、プロセスは、モータを短期間停止しかつ再始動させるサージ開始ブーストプロセス440へのキック始動信号485を有効にし、モータを確実に稼働させる。時間分析ステップ470は、タイミングステップのいずれかがアクティブにならないかどうかを確認し続ける。タイミングステップのいずれか1つがアクティブになると、タイマー分析ステップ470は、キック始動タイマープロセス480を抑止して、キック始動信号485がサージ開始ブーストプロセス440に適用されないようにし、かつタイミングステップのいずれか1つが依然としてアクティブであるかどうかを確認し続ける。キック始動信号485は非同期であり、プロセスは、今説明したように抑止されているときを除いてプロセスの通常動作には関係なく、信号を有効にし続ける。
【0079】
ここで図6を参照すると、本発明の例示的実施形態としてモータ駆動システム600の別の実施形態が示されている。モータ駆動システム600は、図1に示すようなコントローラ170の構成要素として含まれてもよいし、または減圧治療システム100の別個の構成要素として構成されてもよい。モータ駆動システム600は、圧力センサー155と連動してまたはその代わりとして動作し得る。図3のモータ駆動システム300のように、モータ駆動システム600は、ダイヤフラムポンプ(図示せず)を駆動する上述のDCモータ301と実質的に同様のモータ601に定電流Iを提供する。モータ駆動システム600は、モータ駆動システム300と実質的に同様の方法で動作するため、同じ専門用語を使用して、図6に示す電気的な概略図を説明する。
【0080】
モータ駆動システム600は定電流駆動モジュール602を含み、定電流駆動モジュールは、定電流Iをサージ開始ブーストモジュール603に提供してから、モータ電流Iとしてモータ601に提供する。目標圧力Pは、目標圧力設定モジュール605によって設定され、後者は、所望の目標圧力Pを達成する定電流Iを設定するために信号を定電流駆動モジュール602に提供する。目標圧力モジュール605は、望ましい圧力療法の範囲内、例えば、140〜150mmHgで目標圧力Pを調整するために定電流Iを変化させるように減圧治療システム100の製造者または場合によってはユーザが調整できる入力装置を含む。モータ601にわたるモータ電圧、すなわち、原モータ電圧V(raw)は、低域フィルター606によってフィルタリングされ、変動を平滑にし、かつフィルタリング済みモータ電圧VMFを提供する。電力は、電力モジュール604によって定電流駆動モジュール602に提供され、電力モジュールは同様に電源オンブーストモジュール607に電力を供給する。
【0081】
モータ駆動システム600はまた、いくつかの動作モード、例えば、「電源オンブースト」モードなどを含み得る。このスアートアップモードでは、モータ601の始動後に、より多くの電力が、設定期間、すなわち、電源オンブースト期間(TPB)中にモータ601に印加され、より急速に供給圧力Pの引き下げ、すなわち、より高い負圧を達成する。基本的には、全定格電圧が上述のようにモータ601に印加されてもよいし、またはモータ電流Iが、モータ601の速度をより急速に速くするために定電流I超に増加されてもよいため、所望の供給圧力Pはより迅速に達成される。例えば、モータ電流Iは、電源オンブーストモジュール607によって増加され、後者は、電源オンブースト信号608を定電流駆動モジュール602の入力端子(M)に提供してモータ電流Iを電源オンブースト期間TPB、事前設定最大値に増加し得る。公称定電流条件下では、供給圧力Pは、そのうち目標圧力P、例えば、145mmHgまで上昇する;モータ電流Iが増加することによって、単に、供給圧力Pをより速く引き下ろす。電源オンブーストモードは、電源オンブースト信号608に応答してモータ601に印加されたモータ電流Iを増加させ、それにより、モータ601の回転速度が速くなるため、供給圧力Pはより迅速に目標圧力Pに達する。電源オンタイマーモジュール607はまた、電源オンブースト信号608をキック始動タイマーモジュール624の抑止入力端子(I)に提供し、これを以下で詳細に説明する。
【0082】
図5Aに示す短期間(T)にわたって供給圧力Pに関連付けられたモータ電流I、原モータ電圧V(raw)、およびフィルタリング済みモータ電圧VMFを示す図5Bをより具体的に参照する。スタートアップ時の電源オンブースト期間(TPB)がタイムアウトした後、モータ駆動システム600は定電流条件に戻り、そこでは、モータ電流Iは、図5Bに示されているような定電流Iの設定にほぼ等しい。モータ駆動システム300は、供給圧力Pが目標圧力Pに達するまでの時間に依存して可変期間(TON)、定電流条件に留まる。ドレッシング115が、時間が経つにつれてより漏れを生じるため、例えば、モータ駆動システム600は、漏れに対抗するためにより稼働し、そのため、タイムオン期間TONは、期間T1、T2、T3、およびT4によって示されているようにより長く続くようになり、タイムオン期間T4はタイムオン期間T1よりも長い。
【0083】
モータ駆動システム600は、さらに、供給圧力Pが目標圧力Pに達すると、回転速度が低速すぎる場合にモータ601が停止される動作モード、すなわち、「低速の場合モータ停止」モードで動作するように、構成される。本質的には、モータ駆動システム600は、ポンプ601を設定期間、運転停止させる回路を含む。運転停止期間(TSD)後、既に説明しかつ図5Bに示すようなターンオフ時刻tに、フィルタリング済みモータ電圧VMFは失速電圧V未満に降下する。低域フィルター606は、フィルタリング済みモータ電圧VMFを、モータ停止または失速比較器614の低電圧基準入力端子(L)に提供し、そこでフィルタリング済みモータ電圧VMFを失速電圧Vと比較する。製造者またはユーザは、所望の失速電圧Vを失速比較器614に提供する設定点モジュール616を用いて失速電圧Vを設定する。
【0084】
失速比較器614は、モータ電圧Vが失速電圧V未満に降下すると、失速条件信号615をモータ停止または失速タイマーモジュール618に提供し、それにより、失速タイマーモジュール618が一定期間、すなわち、運転停止期間(TSD)運転するようにトリガする。運転停止期間TSDの期間中、失速タイマーモジュール618は停止信号620を定電流駆動モジュール602の抑止入力端子(I)に提供して、モータ電流(I)を、例えば、各タイムオン期間(T1〜T4)の最後にマークしているt、t、t、およびtの時刻におけるオフタイム(toff)によって、図示の通りゼロまで減少させる。運転停止期間(TSD)の経過後、停止信号620は除去されるため、定電流発生器602は、サージ開始ブースト603をトリガし、オンタイム(ton)の時刻t、t、t、およびtでモータ601を電流源に再接続して、モータ電流Iおよび原モータ電圧V(raw)を急上昇させるが、既に説明したようにフィルタリング済みモータ電圧VMFは急上昇させない。
【0085】
例えば、失速電圧Vは約1.25ボルトの値に設定され得るので、図5Bに示すようなオフタイム(toff)の時刻t、t、t、およびtでフィルタリング済みモータ電圧VMFが失速電圧V未満に降下すると、失速比較器614は失速条件信号を失速タイマーモジュール618に提供する。失速タイマーモジュール618は、毎回停止信号620を提供し、および毎回、モータ601の運転を停止して、低速の場合モータ停止モードにおいて、モータ電圧Vが運転停止期間TSDの期間中ゼロまで降下するようにする。運転停止期間(TSD)の経過後、モータ601は低電力レベルで再始動し、およびフィルタリング済みモータ電圧VMFは、オンタイムの時刻t、t、t、およびtにおいて、失速電圧Vを上回る動作電圧まで増加し、この動作電圧は、V(1)、V(2)、V(3)、およびV(4)で示すように約1.5ボルトの値とし得る。それゆえ、モータ601の完全な動作サイクルには、定電流モードの期間中の可変タイムオン期間TON(T1、T2、T3、およびT4)と、図5Bに示すような一定の運転停止期間TSDとが含まれる。停止信号620はまた、キック始動タイマーモジュール624の抑止入力端子(I)に提供される。
【0086】
モータ駆動システム600はまたキック始動動作モードを含み、モータ駆動システム600が電源オンブーストモードまたは低速の場合モータ停止モードにない限り、モータ601の動作サイクルの期間中どんなときでも、ポンプ601の停止時間が長くなりすぎないことを保証する。電源オンブースト信号608および停止信号620の双方とも、同様に、既に説明したようにキック始動タイマーモジュール624の抑止入力端子(I)に適用され得る。キック始動タイマー624はキック始動タイミング信号627をサージ開始ブーストモジュール603に提供し、既に説明したように動作させる。キック始動タイミング信号627は、他の動作モードのいずれによっても抑止されないときに、一定周波数または期間(TKS)で連続的なパルス628をサージブーストモジュール603に提供する非同期信号である。各パルス628は、サージ開始ブーストモジュール603をトリガして、モータ601を短期間停止させかつ再始動させ、モータ601が無期限に停止しないことを保証する。キック始動タイマーモジュール624は、電源オンブースト信号608または停止信号620がない場合は、キック始動タイミング信号627を提供し続ける。しかしながら、いずれかの信号が存在することによって、キック始動タイマーモジュール624を抑止する抑止信号629を提供する。
【0087】
抑止条件は、モータ601が電源オンブーストモードにおいて高速で運転しているまたは停止しているときにはキック始動タイマー624が必要でないために、発生する。それゆえ、電源オンブースト信号608および停止信号620は、キック始動タイマー624がそれぞれの期間サージ開始ブーストモジュール603を無効にしないようにする。電源オンブーストモジュール607は、キック始動タイミング信号の開始前、スタートアップ時にタイムアウトするように構成され得るので、キック始動タイマーモジュール624を抑止するために電源オンブースト信号608を適用する必要はない。運転停止期間TSDおよび電源オンブースト期間TPBの経過後、停止信号620および電源オンブースト信号608は、もはや、キック始動タイミング信号627を抑止しないので、サージ開始ブーストモジュール603は、定電流動作モードの期間中にフィルタリング済みモータ電圧V(filter)で発生する小さな負のスパイク505によって示されているようなキック始動タイミング信号627のパルス628によってトリガされ、サージ開始ブーストモジュール603が、モータ601に確実に電力をもたらしているようにする。いくつかの負のスパイク505が、定電流モードのタイムオン期間TONの期間中、タイムオン期間T5の期間中などに発生し得る。キック始動タイマー624およびサージ開始ブーストモジュール603はウォッチドックタイマーの役目を果たし、モータ601が定電流モードで確実に運転し続けるようにし、かつ、そのようなものとして、モータ駆動システム600の動作には必須ではない安全機能の役目を果たす。
【0088】
例として再度図5Bを参照すると、停止信号620は、キック始動タイミング信号627を抑止する時刻t、t、t、およびtにおけるオフタイム(toff)で発生するため、サージ開始ブーストモジュール603はモータ601を付勢しない。運転停止期間TSDがオンタイム(ton)の時刻t、t、t、およびtにおいて期限切れになると、キック始動タイミング信号627はもはや抑止されないため、サージ開始ブーストモジュール603をトリガし続け、モータ601が確実に再始動して、供給圧力Pを目標圧力P付近に維持するようにする。モータ601の再始動後、フィルタリング済みモータ電圧VMFは上昇し、約1.5ボルトのモータ電圧に等しい動作速度に戻る。モータ停止モードは、著しい漏れのない場合に供給圧力Pを目標圧力Pにまたはその付近に維持し、減圧治療システム100からの通常の動作漏れレベルを補償する。キック始動モードは、目標圧力Pで発生するように、低電力、すなわち、固定電流および低電圧で動作しているときに、モータ601が確実に運転し続けるようにする。
【0089】
前述の通り、モータ停止モードは、著しい漏れがない場合に、目標圧力Pの付近に供給圧力Pを維持する。漏れが著しく、組織部位105における被適用圧力が急速に低下する場合、モータ電圧V(5)によって示すのと同時に上昇するフィルタリング済みモータ電圧VMFによって示すように、ポンプにかかる負荷が低下することに応答してモータの速度は速くなる。モータ駆動システム600の一実施形態では、システムの製造者またはユーザは、モータ電圧Vの上限を特定値、すなわち、漏れ電圧(V)を選択する。フィルタリング済みモータ電圧VMFが、任意の大幅な設計余裕だけ漏れ電圧(V)を超えるとき、著しい漏れ条件がシステムに存在する。
【0090】
それゆえ、モータ駆動システム600はまた、システムの著しい漏れを表示するモジュールを含む「高速の場合パワーブースト」動作モードを含む。低域フィルター606はまた、フィルタリング済みモータ電圧VMFを圧力漏れ比較器630の高基準電圧入力端子(H)に提供する。製造者またはユーザは、入力装置632において漏れ電圧Vを設定し、この入力装置は、漏れ電圧Vを反映する漏れ信号を漏れ比較器630に提供する。モータ電圧Vが漏れ電圧V以上である場合、漏れ比較器630は、漏れインジケータ信号633を漏れタイマーモジュール634に提供し、この漏れタイマーモジュールは、パワーブースト信号636を、定電流駆動モジュール602のブースト入力端子(B)およびキック始動タイマー624の抑止入力端子(I)に提供して、上述のような場合には、キック始動タイマーモジュール624を無効にする。定電流駆動モジュール602は、パワーブースト信号640をサージ開始ブーストモジュール603に提供し、このサージ開始ブーストモジュールは、高い電力レベル、すなわち、ブースト漏れ電力でモータ601を駆動する。
【0091】
ブースト漏れ電力は、事前設定された定電流I超にモータ電流Iを増加すること、または再度モータ601に印加されたモータ電圧Vを増加することのいずれかによって、生成され得る。ブースト漏れ電力は追加的な供給圧力Pを生成し、減圧治療システム100の著しい漏れを補償する。漏れタイマーモジュール634は、ブースト漏れ電力がモータ601に印加されている漏れブースト期間(TLB)後にタイムアウトする。漏れブースト期間(TLB)の経過後、モータ601は、著しい漏れが直された場合の速度に関連した動作モータ電圧Vによって示されるような、モータの通常の速度に戻る必要がある。圧力漏れタイマー634はまた、パワーブースト信号636をキック始動タイマー624に提供し、再度抑止信号629をトリガして、キック始動タイミング信号627を抑止し、かつ上述の通りサージ開始ブーストモジュール603を無効にする。漏れブースト期間TLBの経過後、キック始動タイミング信号627はもはや抑止されないため、上述のように停止信号620がない場合にサージ開始ブーストモジュール603をトリガし続ける。
【0092】
高速の場合パワーブーストモードの動作の例として再度図5Bを参照すると、製造者またはユーザは、漏れ電圧Vを2.0ボルトの値に設定し得る。著しい漏れが時刻tで発生する場合、供給圧力Pは、目標圧力P未満に、例えば、P(2)など、同様に図5Aの圧縮した時系列に示される約100mmHg減圧の値まで降下する。それゆえ、モータ601はより速く動き、失われた圧力を補償して、フィルタリング済みモータ電圧VMFを増加させ最終的に507で漏れ電圧Vを超えるようにする。フィルタリング済みモータ電圧VMFが漏れ電圧Vを超えると、漏れ比較器630は、漏れタイマー634をトリガし、漏れタイマーは、例えば、モータ電流Iを定電流I超の値IPBまで漏れブースト期間(TLB)中増加することによって、ブースト漏れ電力を定電流発生器602に印加する。ブースト漏れ電力は、モータ601をより速く動かし、漏れから生じる供給圧力Pの損失を克服し、かつ供給圧力Pを上昇させて戻し、およびおそらく、供給圧力P(3)に示すように目標圧力Pを超える。供給圧力Pが目標圧力Pの付近に留まる場合、フィルタリング済みモータ電圧VMFは、モータ電圧V(6)によって示されているように、漏れブースト期間(TLB)の経過後にフィルタリング済みモータ電圧VMFが漏れ電圧V未満に降下して失速電圧V未満に戻るため、漏れを克服したことを示す。
【0093】
それにもかかわらず、パワーブーストされたモータ601は、漏れブースト期間(TLB)の経過後にも、持続する著しい漏れおよび供給圧力Pの対応する損失を克服できない可能性がある。この状況は、圧力漏れインジケータ630が再度漏れ条件信号633を提供した場合に、明らかになる。なぜなら、時刻t10のモータ電圧Vが依然として、モータ電圧V(7)によって示されているように漏れ電圧Vを上回るためである。これは、供給圧力Pがまだ目標圧力Pに達していないこと、または目標圧力Pに達して、供給圧力P(4)で示されているように、再度目標圧力P未満に降下したことにより推論できる。それゆえ、電源オンブースト信号636は定電流発生器602を再度トリガして、ブースト漏れ電力をモータ601に提供する。漏れ比較器630は、フィルタリング済みモータ電圧VMFが漏れ電圧V未満に降下するときのみ、漏れタイマー634をトリガするのをやめる。場合によっては、漏れは十分にひどいので、供給圧力Pは、失われた圧力を補償できず、かつ決して漏れ電圧V未満に降下しないフィルタリング済みモータ電圧VMFによって示されているような目標圧力Pには、決して達しない。そのような場合、圧力センサー155を使用して、著しい漏れが依然として、インジケータ172によって示すように存在していることを確認し得る。圧力センサー155は本発明の動作に必須ではないが、システムが適切に動作することを保証するように、ある程度支援できる。
【0094】
それゆえ、モータ601は、通常、予め定められた範囲、例えば、約1.5〜1.75ボルトで変動するときにフィルタリング済みモータ電圧VMFで示すような目標圧力Pを維持するのに十分な速度で動作する。しかしながら、モータ601は高速で動作し始め、漏れ電圧V超に急上昇するときフィルタリング済みモータ電圧VMFによって示されるような著しい漏れから生じる供給圧力Pの損失を克服し、かつ漏れタイマー634をトリガして、パワーブーストをモータ601に提供し得る。スペクトルの他方の端部では、モータ601は非常に低速に減速し得る。なぜなら、システムにはほとんど漏れがなく、少ない供給圧力Pのみが、目標圧力Pを維持するために必要とされるためである。
【0095】
この条件は、フィルタリング済みモータ電圧VMFが事前設定停止電圧V未満に降下すると検出され、およびモータ停止タイマー618をトリガし、単にモータ601を停止させて、目標圧力Pが一貫した値に保持されているときに節電する。次いで、キック始動タイマー624が、運転停止期間TSDの経過後および圧力漏れ信号620がない場合にモータ601が運転し続けていることを確認する。
【0096】
一実施形態では、モータ駆動システム600は全てハードウェアに実装され、ソフトウェアの実施形態にモータ駆動システム600を実装することに関連して複雑な構成となるのを回避し、かつ調整による遅れがないようにする。モータ駆動システム600の要素は、回路基板、集積回路、または個々に接続された要素の一部とし得る。例えば、トレース、ワイヤ、または他の導電媒質が、図6に示すブロック図で説明するようなモータ駆動システム600のモジュールに電気的に接続され得る。
【0097】
ここで図7A〜Cを参照すると、モータ駆動システム700の別の実施形態が、本発明の例示的実施形態として示される。モータ駆動システム700は、図1に示すようなコントローラ170の構成要素として含まれてもよいし、または減圧治療システム100の別個の構成要素として構成されてもよい。モータ駆動システム700は、圧力センサー155と連動してまたはその代わりに動作し得る。図6のモータ駆動システム600のように、モータ駆動システム700は、定電流Iを、上述のモータ601と実質的に同様のモータ701に提供し、このモータはダイヤフラムポンプ(図示せず)を駆動する。モータ駆動システム700は、モータ駆動システム600と実質的に同様の方法で動作し、かつ本質的に、図6に示すブロック図のより詳細な概略図であるため、同じ専門用語および同様の符号を使用して、図7A〜7Cに示す電気回路図を説明する。しかしながら、図6に示すシンボルおよび信号は、図7A〜7Cに示す構成要素および回路と正確に一致しないことがあることを理解されたい。例えば、抑止信号は、回路の特定の構成要素内に事実上含まれるとし得る。
【0098】
符号に関して、例えば、参照符号の下2桁は同じであるため、図7Aで説明される電源オンタイマーモジュール707は、全体的に、そのモジュールの構成要素として、図6で述べる電源オンタイマーモジュール607に関連付けられる。これらの概略図で使用されるシンボルは当業者に公知であり、その多くが、例示でありかつ所望の目標圧力を達成しかつ供給圧力Pを所望の範囲に維持するのに必要なように調整できる特定値を示す。ダイオードは全て、そうではないと示されない限り、Fairchildから供給されるものなどの4148タイプのダイオードとし得る。トランジスタは全て、そうではないと示されない限り、Fairchildから供給されるものなどの547または557タイプのトランジスタとし得る。電界効果トランジスタは全て、そうではないと示されない限り、Fairchildから供給されるものなどの170タイプのトランジスタとし得る。演算増幅器は全て、そうではないと示されない限り、National Semiconductorから供給されるものなどのタイプ660の演算増幅器とし得る。タイマーは全て、そうではないと示されない限り、National Semiconductorから供給されるものなどの555タイマーとし得る。当業者には、他の構成要素を使用して、回路構成の変形を含め、本発明で予定される同様の結果を達成することが明白である。従って、本発明は、当業者が理解するように、図7A〜7Cに示すようなモータ駆動システム700に関連付けられた特定の構造および構成要素に限定されない。
【0099】
モータ駆動システム700は定電流駆動モジュール702を含み、定電流駆動モジュールは、定電流Iをサージ開始ブーストモジュール703に提供してから、モータ電流Iとしてモータ701に提供する。目標圧力Pは、所望の目標圧力Pを達成する定電流Iを設定する信号を定電流駆動モジュール702に提供する目標圧力設定モジュール705によって設定される。目標圧力モジュール705は、減圧治療システム100の製造者または場合によってはユーザによって調整できる入力装置を含み、所望の圧力療法の範囲内、例えば、140〜150mmHgに目標圧力Pを調整するように定電流Iを変化させる。モータ701にわたるモータ電圧、すなわち、原モータ電圧V(raw)は、低域フィルター706によってフィルタリングされ、原モータ電圧V(raw)のいかなる変動も平滑にし、かつフィルタリング済みモータ電圧VMFを提供する。
【0100】
定電流駆動モジュール702は、モータ701に電力を供給し、かつ図示の通り演算増幅器およびトランジスタ回路を含み、演算増幅器およびトランジスタ回路は、モータ701を通る電流を調整することによって直列回路の(series−pass)抵抗器の電圧を目標圧力モジュール705の可変抵抗器の電圧に等しく維持する。サージ開始ブーストモジュール703は、高いエネルギーの短いパルスを提供するRC回路を含み、電力がモータ701に再印加されるときはいつでもモータ701の摩擦を克服する。電力モジュール704は、定電流駆動モジュール702を含むモータ駆動システム700全体にDC電力を提供する。目標圧力モジュール705は、定電流発生器702によって提供された定電流(I)を設定する可変抵抗器を含む。
【0101】
モータ駆動システム700はまた、いくつかの動作モード、例えば、「電源オンブースト」モードを含み得る。このスアートアップモードでは、より多くの電力が設定期間、すなわち、電源オンブースト期間(TPB)中、モータ701に印加され、モータ701の始動後に、より迅速に供給圧力Pの引き下げ、すなわち、より高い負圧を達成する。基本的には、全定格電圧は、上述の通りモータ701に印加され得るか、またはモータ電流Iは、定電流I超に増加されて、より迅速にモータ701の速度を上げるため、所望の供給圧力Pがより迅速に達成される。それゆえ、モータ駆動システム700はまた、電源オンブースト期間(TPB)の期間中にスイッチが入れられると全ての電力をモータ701に印加するRCネットワークおよび関連のトランジスタを含む電源オンブーストモジュール707を含む。
【0102】
例えば、モータ電流Iは、電源オンブースト信号708を定電流駆動モジュール702の入力端子(M)に提供する電源オンブーストモジュール707によって増加され、モータ電流Iを、事前設定最大値まで電源オンブースト期間TPB中増加させ得る。公称定電流条件下では、供給圧力Pはそのうち目標圧力P、例えば、145mmHgまで上昇する;モータ電流Iの増加は、単純に、より速く供給圧力Pを下げる。電源オンブーストモードは、電源オンブースト信号708に応答してモータ701に印加されるモータ電流Iを増加させ、それにより、モータ701の回転速度を速くするため、供給圧力Pは、より迅速に目標圧力Pに達する。電源オンブーストモジュール707はまた、電源オンブースト信号708をキック始動タイマーモジュール724の抑止入力端子(I)に提供してもよく、これを以下詳細に説明する。
【0103】
図5Aに示す短期間(T)にわたって供給圧力Pに関連した、モータ電流I、原モータ電圧V(raw)、およびフィルタリング済みモータ電圧VMFの図である図5Bをより具体的に参照する。スタートアップ時の電源オンブースト期間(TPB)がタイムアウトした後、モータ駆動システム700は、供給圧力Pが目標圧力Pに達する時間に依存した可変期間(TON)中、モータ電流Iが定電流条件にほぼ等しいという定電流条件に戻る。時間が経つにつれてドレッシング115がより漏れを生じるため、例えば、モータ駆動システム700は、漏れに対抗するためにより稼働し、そのためタイムオン期間TONは、期間T1、T2、T3、およびT4によって示されているようにより長く続くようになり、タイムオン期間T4はタイムオン期間T1よりも長い。
【0104】
供給圧力Pが目標圧力Pに達すると、モータ駆動システム700は、さらに、回転速度が低速すぎる場合にモータ701が停止される動作モード、すなわち、「低速の場合モータ停止」モードで動作するように構成される。本質的には、モータ駆動システム700は、ポンプ701を設定期間、運転停止させる回路を含む。運転停止期間(TSD)後、既に説明しかつ図5Bに示すようなターンオフ時刻tに、フィルタリング済みモータ電圧VMFは失速電圧V未満に降下する。低域フィルター706は、フィルタリング済みモータ電圧VMFをモータ停止または失速比較器714の低電圧基準入力端子(L)に提供し、そこでは、フィルタリング済みモータ電圧VMFを失速電圧Vと比較する。製造者またはユーザは、所望の失速電圧Vを失速比較器714に提供する設定点モジュール716を用いて失速電圧Vを設定する。
【0105】
失速比較器714は、モータ電圧Vが失速電圧V未満に降下すると、失速条件信号715をモータ停止または失速タイマーモジュール718に提供し、それにより、失速タイマーモジュール718が一定期間、すなわち、運転停止期間(TSD)運転するようにトリガする。失速タイマーモジュール718が運転停止期間TSD後にタイムアウトすると、停止信号720を定電流駆動モジュール702の抑止入力端子(I)に提供し、例えば、各タイムオン期間(T1〜T4)の最後にマークしているt、t、t、およびtの時刻におけるオフタイム(toff)によって、図示のようにモータ電流(I)をゼロまで低下させる。運転停止期間(TSD)の経過後、停止信号720は除去されるため、定電流発生器702は、サージ開始ブースト703をトリガし、オンタイム(ton)の時刻t、t、t、およびTでモータ701を電流源に再接続して、モータ電流Iおよび原モータ電圧V(raw)を急上昇させるが、上述のようにフィルタリング済みモータ電圧VMFは急上昇させない。
【0106】
例えば、失速電圧Vは約1.25ボルトの値に設定されるので、図5Bに示すようなオフタイム(toff)の時刻t、t、t、およびtでフィルタリング済みモータ電圧VMFが失速電圧V未満に降下すると、失速比較器714は失速条件信号715を失速タイマーモジュール718に提供する。失速タイマーモジュール718は、毎回停止信号720を提供し、および毎回、モータ701の運転を停止して、低速の場合モータ停止モードにおいて、モータ電圧Vが運転停止期間TSD中、ゼロまで降下するようにする。運転停止期間(TSD)の経過後、モータ701は低電力レベルで再始動し、およびフィルタリング済みモータ電圧VMFは、オンタイムt、t、t、およびtの時刻において、失速電圧Vを上回る動作電圧まで増加し、この動作電圧は、V(1)、V(2)、V(3)、およびV(4)で示したように約15ボルトの値とし得る。それゆえ、モータ701の完全な動作サイクルは、図5Bに示されているような、定電流モード中の可変タイムオン期間TON(T1、T2、T3、およびT4)と、一定の運転停止期間TSDとを含む。停止信号720もキック始動タイマーモジュール724の抑止入力端子(1)に提供される。
【0107】
モータ駆動システム700はまた、キック始動動作モードを含んで、モータ駆動システム700が電源オンブーストモードまたは低速の場合モータ停止モードにない限り、モータ701の動作サイクル中はいつでも、確実に、ポンプ701の停止時間が長くなり過ぎないようにする。電源オンブースト信号708および停止信号720の双方とも、また、上述の通りキック始動タイマーモジュール724の抑止入力端子(I)に適用される。キック始動タイマー724はキック始動タイミング信号727をサージ開始ブーストモジュール703に提供し、上述のように動作させる。キック始動タイミング信号727は非同期信号であり、いかなる他の動作モードによっても抑止されていないとき、一定周波数または期間(TKS)で連続的なパルス728をサージブーストモジュール703に提供する。各パルス728は、サージ開始ブーストモジュール703をトリガして、モータ701を短期間停止しかつ始動させ、モータ701が無期限に停止しないことを保証する。キック始動タイマーモジュール724は、電源オンブースト信号708または停止信号720がない場合にキック始動タイミング信号727を提供し続ける。しかしながら、いずれかの信号が存在すると、キック始動タイマーモジュール724を抑止する抑止信号729を提供する。
【0108】
抑止条件は、電源オンブーストモードにおけるモータ701の運転が速いときまたは停止しているときにはキック始動タイマー724が必要でないため、発生する。それゆえ、電源オンブースト信号708および停止信号720は、キック始動タイマー724を抑止して、サージ開始ブーストモジュール703をそれらのそれぞれの期間無効にする。電源オンブーストモジュール707は、キック始動タイミング信号の開始前、スタートアップ時にタイムアウトするように構成し得るため、キック始動タイマーモジュール724を抑止するために電源オンブースト信号708を適用する必要がない。運転停止期間TSDおよび電源オンブースト期間TPBの経過後、停止信号720および電源オンブースト信号708は、もはやキック始動タイミング信号727を抑止しないため、サージ開始ブーストモジュール703は、定電流動作モード中にフィルタリング済みモータ電圧VMFに発生する小さな負のスパイク505で示されるようなキック始動タイミング信号727のパルス728によってトリガされ、サージ開始ブーストモジュール703が確実に電力をモータ701に提供するようにする。いくつかの負のスパイク505が、定電流モードの、タイムオン期間T5中のようなタイムオン期間TON中に発生し得る。キック始動タイマー724およびサージ開始ブーストモジュール703はウォッチドックタイマーの役目を果たし、モータ701が定電流モードで確実に運転し続けるようにし、そのようなものとして、それらは、モータ駆動システム700の動作には必須ではない安全機能の役目を果たす。
【0109】
例として再度図5Bを参照すると、停止信号720は、時刻t、t、t、およびtのオフタイム(toff)で発生し、これらオフタイムは、キック始動タイミング信号727を抑止するので、サージ開始ブーストモジュール703はモータ701を付勢しない。運転停止期間TSDがオンタイム(ton)の時刻t、t、t、およびtにおいて期限が切れると、キック始動タイミング信号727はもはや抑止されないため、サージ開始ブーストモジュール703をトリガし続け、モータ701が再始動して、供給圧力Pを目標圧力P付近に維持することを保証する。
【0110】
モータ701の再始動後、フィルタリング済みモータ電圧VMFは上昇し、約1.5ボルトのモータ電圧に等しい動作速度に戻る。モータ停止モードは、著しい漏れのない場合に供給圧力Pを目標圧力Pにまたはその付近に維持し、減圧治療システム100からの通常の動作漏れレベルを補償する。キック始動モードは、モータ701が低電力、すなわち、固定電流および低電圧で動作しているときに、モータ701が確実に運転し続けるようにし、かつ目標圧力Pで発生する必要がある。
【0111】
前述の通り、モータ停止モードは、著しい漏れのない場合に、目標圧力Pの付近に供給圧力Pを維持する。漏れが著しく、および組織部位105における被適用圧力が急速に低下する場合、モータ電圧V(5)によって示されるのと同時に上昇するフィルタリング済みモータ電圧VMFによって示されるように、ポンプにかかる負荷が低下することに応答してモータの速度は速くなる。モータ駆動システム700の一実施形態では、システムの製造者またはユーザは、モータ電圧Vの上限を特定値、すなわち、漏れ電圧(V)を選択する。フィルタリング済みモータ電圧VMFが、任意の大幅な設計余裕だけ漏れ電圧(V)を超える場合、著しい漏れがシステムに存在する。それゆえ、モータ駆動システム700はまた、システムの著しい漏れがあることを示すモジュールを含む「高速の場合パワーブースト」動作モードを含む。低域フィルター706はまた、フィルタリング済みモータ電圧VMFを圧力漏れ比較器730の高基準電圧入力端子(H)に提供する。
【0112】
製造者またはユーザは、漏れ電圧Vを反映する漏れ信号を漏れ比較器730に提供する入力装置732において漏れ電圧Vを設定する。モータ電圧Vが漏れ電圧V以上である場合、漏れ比較器730は、漏れインジケータ信号733を漏れタイマーモジュール734に提供し、この漏れタイマーモジュールは、パワーブースト信号736を定電流駆動モジュール702のブースト入力端子(B)およびキック始動タイマー724の抑止入力端子(I)に提供して、上述のような状態が存在する場合、キック始動タイマーモジュール724を無効にする。定電流駆動モジュール702はパワーブースト信号740をサージ開始ブーストモジュール703に提供し、このサージ開始ブーストモジュールは、高い電力レベル、すなわち、ブースト漏れ電力でモータ701を駆動する。
【0113】
ブースト漏れ電力は、事前設定された定電流I超にモータ電流Iを増加すること、または再度モータ701に印加されたモータ電圧Vを増加することのいずれかによって、生成され得る。ブースト漏れ電力は追加的な空気の流れを生成し、減圧治療システム100の著しい漏れを補償する。漏れタイマーモジュール734は、ブースト漏れ電力がモータ701に印加されている漏れブースト期間(TLB)後にタイムアウトする。漏れブースト期間(TLB)の経過後、モータ701は、著しい漏れが直された場合の速度に関連した動作モータ電圧Vによって示されるような、モータの通常の速度に戻る必要がある。圧力漏れタイマー734はまた、パワーブースト信号736をキック始動タイマー724に提供し、再度抑止信号629をトリガして、キック始動タイミング信号727を抑止し、かつパワーブースト信号740がサージ開始ブーストモジュール703に適用されているとき、上述の通りサージ開始ブーストモジュール703を無効にする。漏れブースト期間TLBの経過後、キック始動タイミング信号727はもはや抑止されないため、上述のように停止信号620がない場合にサージ開始ブーストモジュール703をトリガし続ける。
【0114】
高速の場合パワーブーストモードの動作の例として再度図5Bを参照すると、製造者またはユーザは、2.0ボルトの値に漏れ電圧Vを設定し得る。著しい漏れが時刻tで発生するとする場合、供給圧力Pは、目標圧力P未満に、例えば、P(2)などの値まで降下しており、それによりモータ701の動きを速くする。その結果、フィルタリング済みモータ電圧VMFも増加し、最終的に、507において漏れ電圧Vを超え、それによって漏れ比較器730に漏れタイマー734をトリガさせる。漏れタイマー734がトリガされると、ブースト漏れ電力は、例えば、モータ電流Iを漏れブースト期間(TLB)中に定電流I超の値IPBまで増加させることによって、定電流発生器702に印加される。ブースト漏れ電力は、モータ701がさらに速く動くようにして、漏れから生じる供給圧力Pの損失を克服し、かつ供給圧力Pを上昇して、供給圧力P(3)で示すように目標圧力Pまで戻す。供給圧力Pが目標圧力Pの付近に留まる場合、フィルタリング済みモータ電圧VMFは、モータ電圧V(6)によって示されているように漏れブースト期間(TLB)の経過後にフィルタリング済みモータ電圧VMFが漏れ電圧V未満に降下して失速電圧V未満に戻るため、漏れを克服したことを示す。
【0115】
それにもかかわらず、パワーブーストされたモータ701は、漏れブースト期間(TLB)の経過後にも、持続する著しい漏れおよび供給圧力Pの対応する損失を克服できない可能性がある。この状況は、圧力漏れインジケータ730が再度漏れ条件信号733を提供する場合に、示される。なぜなら、時刻t10のモータ電圧Vが依然として、モータ電圧V(7)によって示されているように漏れ電圧Vを上回るためである。これは、供給圧力Pがまだ目標圧力Pに達していないこと、または供給圧力P(4)で示されているように、目標圧力Pに達して再度目標圧力P未満に降下したことを推論できる。それゆえ、電源オンブースト信号736は定電流発生器702を再度トリガして、ブースト漏れ電力をモータ701に提供する。漏れ比較器730は、フィルタリング済みモータ電圧VMFが漏れ電圧V未満に降下するときのみ、漏れタイマー734をトリガするのをやめる。場合によっては、漏れは、十分にひどいので、供給圧力Pは、失われた圧力を補償できず、かつ決して漏れ電圧V未満に降下しないフィルタリング済みモータ電圧VMFによって示されているような目標圧力Pには、決して達しない。そのような場合、圧力センサー155を使用して、著しい漏れが依然として、インジケータ172によって示すように存在していることを確認し得る。圧力センサー155は本発明の動作に必須ではないが、システムが適切に動作することを保証するように、ある程度支援できる。
【0116】
それゆえ、モータ701は、通常、予め定められた範囲、例えば、約1.5〜1.75ボルトで変動するので、フィルタリング済みモータ電圧VMFで示されるような目標圧力Pを維持するのに十分な速度で動作する。しかしながら、モータ701は高速で動作し始め、フィルタリング済みモータ電圧VMFが漏れ電圧V超に急上昇し、かつ漏れタイマー734をトリガして、パワーブーストをモータ701に提供するときフィルタリング済みモータ電圧VMFによって示すような著しい漏れから生じる供給圧力Pの損失を克服し得る。スペクトルの他方の端部では、モータ701は、非常に低速に減速し得る。なぜなら、システムにはほとんど漏れがなく、少ない供給圧力Pのみが、目標圧力Pを維持するために必要とされるためである。
【0117】
この条件は、フィルタリング済みモータ電圧VMFが事前設定停止電圧V未満に降下すると検出され、およびモータ停止タイマー718をトリガして、単にモータ701を停止させて、目標圧力Pが一貫した値に保持されているときに節電する。次いで、キック始動タイマー724が、運転停止期間TSDの経過後および圧力漏れ信号720がない場合にモータ701が運転し続けていることを確認する。
【0118】
示した異なる実施形態のフロー図およびブロック図は、装置および方法のいくつかの考えられる実装例のアーキテクチャ、機能性、および動作を示す。いくつかの代替的な実装例では、ブロックに示した1つまたは複数の機能は、図面に示した順序と異なって発生してもよい。例えば、場合によっては、連続して示した2つのブロックは、実質的に同時に実行されてもよいし、またはブロックは、含まれる機能性に依存して逆の順序で実行されることがあってもよい。
【0119】
例示的実施形態は、現在使用されている減圧治療システムよりも消費する電力が少なくなるように軽量および低コストシステムとなるように構成され得る。サイズおよび重量を削減することは、重傷度の軽い創傷および歩行可能患者の創傷を治療するためのシステムを使用するときに特に重要である。これらの創傷および患者は、控えめかつ軽量なシステムを必要とするため、患者にとって快適でないこと、および動くときに邪魔になることが最小限となる。
【0120】
コスト、重量、および電力消費を最小にする1つの方法は、圧力を測定するためのセンサーを1つのみ使用することである。上述の通り、伝統的なシステムは、一般に、2つの圧力センサー、一方は組織部位の圧力を測定し、他方は減圧源の圧力を測定するセンサーを使用する。しかしながら、減圧源の圧力を測定する圧力センサーをなくすことによって、必要な電子回路の量、およびシステムが消費する電力量を著しく削減できる。さらに、2つのセンサーの読み取り値を比較するために使用される任意の回路およびソフトウェアを、排除する。そのうえ、例示的実施形態は、予め定められた減圧を組織に行うことができるようにする一方、以前のシステムよりも少数の構成要素で、ある種の異常なシステム条件を検出しかつ通知する。
【0121】
上記から、著しい利点を有する発明が提供されたことが明白である。本発明を数例の形式でのみ示すが、それには限定されず、発明の趣旨から逸脱せずに様々な変更および修正を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C