(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976809
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】試料処理量を高めるための内挿センサデータの外挿
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20160817BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
G01N27/26 371F
G01N27/416 300T
G01N27/416 336C
【請求項の数】35
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-526195(P2014-526195)
(86)(22)【出願日】2012年8月16日
(65)【公表番号】特表2014-521982(P2014-521982A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2012051049
(87)【国際公開番号】WO2013025859
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】13/210,810
(32)【優先日】2011年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506391864
【氏名又は名称】インストゥルメンテーション ラボラトリー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】マンスーリ,ソフラブ
(72)【発明者】
【氏名】セルベラ,ホセ,マリア
【審査官】
黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0102441(US,A1)
【文献】
特表2005−520662(JP,A)
【文献】
特表2010−530531(JP,A)
【文献】
特開2008−82876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
G01N 31/00−31/22
G01N 5/00−9/36
G01N 21/00−21/74
G01N 33/00−33/46
G01N 35/00−37/00
G01N 25/00/25/72
G01N 23/00−23/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料処理量を高めるためのシステムであって、
試料内の分析物に曝露されたことに応答してデータ信号を生成するように構成されたセンサと、
前記データ信号と関連付けられたデータポイントを記録し、
動的領域時間範囲の一部に対応する一連のデータポイントを前記記録されたデータポイントから選択し、
前記選択されたデータポイントを、動的領域時間範囲の一部に対応することから、対数時間スケールに対応するように変換し、
前記変換されたデータポイントを評価し、
前記評価され選択されたデータポイントにあてはまる曲線を決定し、
前記曲線に対応する曲線あてはめ方程式を決定し、前記曲線あてはめ方程式が、s(t)=a*(log(t))^2+b*log(t)+cという形であり、式中、tは時間を表し、a、b及びcは二次多項式のためのフィットパラメータであり、初期センサ応答に基づいて決定され、
前記曲線あてはめ方程式を用いて前記センサのエンドポイント応答を外挿し、及び
前記試料処理量を高めるために前記外挿されたエンドポイント応答を用いて前記分析物に対応する値を計算する
ように構成されたプロセッサと
を含む、システム。
【請求項2】
前記データポイントが、等間隔で記録される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記動的領域時間範囲が、前記センサが前記分析物に最初に曝露される第1の時間から、前記センサにより生成された前記データ信号が前記センサの実際のエンドポイント応答と実質的に類似したものとなる第2の時間までにわたる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記動的領域時間範囲の前記一部が、前記センサが前記分析物に曝露されてから約15秒後に始まる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記動的領域時間範囲の前記一部が、前記センサが前記分析物に曝露されてから約30秒後に終わる、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記曲線あてはめ方程式を用いて前記センサのエンドポイント応答を外挿することが、その後前記センサにより生成される前記データ信号が前記センサの実際のエンドポイント応答と実質的に類似したものとなる時間について、前記曲線あてはめ方程式を解くことを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記センサが、拡散制御応答を有するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、さらに、
前記計算されたエンドポイント応答を用いて前記分析物の濃度を決定し、
前記決定された前記分析物の濃度を提示する
ように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、さらに、前記計算された前記分析物に対応する値を検証するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記計算されたエンドポイント応答を検証することが、
変動係数を決定すること、
決定係数を決定すること、及び
前記決定された変動係数及び決定係数が許容可能な限度の範囲内にあるか否かを判断すること
を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサが、さらに、
前記計算されたエンドポイント応答を用いて前記分析物の濃度を決定し、
前記決定された変動係数及び決定係数が許容可能な限度内にあると判断した時には、前記決定された前記分析物の濃度をフラグなしで提示し、及び
前記決定された変動係数及び決定係数の少なくとも一方が許容可能な限度内にないと判断した時には、前記決定された前記分析物の濃度をフラグ付きで提示する
ように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記計算された前記分析物に対応する値を出力として提示すること
をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
試料処理量を高めるための方法であって、
試料内の分析物に曝露されたことに応答して生成されたデータ信号をセンサから受信する工程と、
前記データ信号と関連付けられたデータポイントを記録する工程と、
動的領域時間範囲の一部に対応する一連のデータポイントを前記記録されたデータポイントから選択する工程と、
前記選択されたデータポイントを対数時間スケールに変換する工程と、
前記選択されたデータポイントにあてはまる曲線を決定する工程と、
前記曲線に対応する曲線あてはめ方程式を決定する工程であって、前記曲線あてはめ方程式が、s(t)=a*(log(t))^2+b*log(t)+cという形のものであり、式中、tは時間を表し、a、b及びcは二次多項式のためのフィットパラメータであり、初期センサ応答に基づいて決定される、決定する工程と、
前記曲線あてはめ方程式を用いて前記センサのエンドポイント応答を外挿する工程と、
前記試料処理量を高めるために前記外挿されたエンドポイント応答を用いて前記分析物に対応する値を計算する工程と
を含む、方法。
【請求項14】
動的領域時間範囲の一部に対応する一連のデータポイントを前記記録されたデータポイントから選択する工程が、前記センサが前記分析物に最初に曝露された時に始まり、前記センサによって生成される前記データ信号が前記センサの実際のエンドポイント応答と実質的に類似したものとなる時に終わる期間に対応するデータポイントを選択することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
動的領域時間範囲の一部に対応する一連のデータポイントを前記記録されたデータポイントから選択する工程が、前記センサが前記分析物に曝露されてから約15秒後に始まり、前記センサが前記分析物に曝露されてから約30秒後に終わる期間に対応するデータポイントを選択することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記曲線あてはめ方程式を用いて前記センサのエンドポイント応答を外挿する工程が、その後前記センサにより生成される前記データ信号が前記センサの実際のエンドポイント応答と実質的に類似したものとなる時間について、前記曲線あてはめ方程式を解くことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記計算されたエンドポイント応答を用いて前記分析物の濃度を決定する工程と、
前記決定された前記分析物の濃度を提示する工程と
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記プロセッサが、さらに、前記計算された前記分析物に対応する値を、
変動係数を決定すること、
決定係数を決定すること、及び
前記決定された変動係数及び決定係数が許容可能な限度の範囲内にあるか否かを判断すること
によって検証するように構成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
コンピュータ実行可能命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ実行可能命令は、コンピュータにより実行される際に、前記コンピュータに、
センサから、試料内の分析物に曝露されたことに応答して生成されたデータ信号を受信させ、
時間範囲に対応する前記データ信号と関連付けられた一連のデータポイントを選択させ、
前記一連のデータポイントを対数時間スケールに変換させ、
前記センサから受信された前記一連のデータポイントにあてはまる、二次方程式により定義される曲線を決定させ、前記曲線あてはめ方程式が、s(t)=a*(log(t))^2+b*log(t)+cという形であり、式中、tは時間を表し、a、b及びcは二次多項式のためのフィットパラメータであり、初期センサ応答に基づいて決定され、
前記曲線を用いて前記センサのエンドポイント応答を外挿させ、及び
前記外挿されたエンドポイント応答を用いて前記分析物に対応する値を計算させる、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
さらなるコンピュータ実行可能命令を記憶しており、前記コンピュータにより実行される際に、前記コンピュータに、
前記計算された前記分析物に対応する値を用いて前記分析物の濃度を決定させ、及び
前記決定された前記分析物の濃度を提示させる、請求項19に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項21】
さらなるコンピュータ実行可能命令を記憶しており、前記コンピュータにより実行される際に、前記コンピュータに、
変動係数を決定すること、
決定係数を決定すること、及び
前記決定された変動係数及び決定係数が許容可能な限度の範囲内にあるか否かを判断すること
によって前記計算された前記分析物に対応する値を検証させる、請求項19に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項22】
試料処理量を高めるために分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記アプリケーションは、
プロセッサに1個以上のセンサからデータ信号を受信させるセンサ通信モジュールと、
前記プロセッサに前記データ信号からデータポイントを捕捉し記録させるデータポイント報告モジュールと、
前記プロセッサに前記データポイントから予め規定されたデータポイントを選択させるデータポイント選択モジュールと、
前記プロセッサに前記予め規定されたデータポイントに対応する時間の対数関数を取得させる曲線あてはめモジュールであって、前記時間の対数関数はs(t)=a*(log(t))^2+b*log(t)+cという形の曲線あてはめ方程式から取得されるものであり、式中、tは時間を表し、s(t)は時間tにおけるデータポイントを表し、a、b及びcは二次多項式のためのフィットパラメータであり、前記予め規定されたデータポイントに基づいて決定される、曲線あてはめモジュールと、
前記プロセッサに前記1個以上のセンサからのセンサのエンドポイント応答を外挿させる外挿モジュールと、
前記プロセッサに前記エンドポイント応答を検証させる検証モジュールと、
試料処理量を高めるために、前記プロセッサに前記エンドポイント応答を用いて試料内の分析物の濃度を決定させる分析物濃度記録モジュールと、
を含む、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項23】
前記データポイント選択モジュールが、さらに、前記予め規定されたデータポイントが前記センサの前記応答の動的領域内にあるように前記予め規定されたデータポイントを選択するよう構成される、請求項22に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項24】
前記動的領域は、前記センサが分析物に最初に曝露される第1の時間から、前記センサによって生成された前記データ信号が前記センサのエンドポイント応答と実質的に類似したものとなる第2の時間までにわたる、請求項23に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項25】
前記動的領域が、前記センサが分析物に曝露されてから約15秒後に始まる、請求項24に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項26】
前記動的領域が、前記センサが分析物に曝露されてから約30秒後に終わる、請求項24に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項27】
前記データポイント選択モジュールが、さらに、等しい時間間隔で前記データポイントを記録するよう構成される、請求項22に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項28】
前記曲線あてはめモジュールが、さらに、前記予め規定されたデータポイントをプロットするよう構成される、請求項22に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項29】
前記外挿モジュールが、さらに、前記曲線あてはめ方程式を用いて前記エンドポイント応答を外挿するよう構成される、請求項22に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項30】
前記外挿モジュールが、さらに、前記センサ応答曲線の平衡領域内にある時間において前記曲線あてはめ方程式を評価するよう構成される、請求項22に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項31】
前記検証モジュールが、さらに、変動係数および決定係数を決定するよう構成される、請求項22に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項32】
前記変動係数(CV)は、
CV=(実測値の標準偏差)/(実測値の平均)
により求められ、
前記決定係数(R2)は、
により求められるものであって、
yiはi番目の実測値(データ信号)であり、
はyの平均(平準)値であり、
fiは前記曲線あてはめ方程式から計算されたi番目の値である、請求項31に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項33】
前記検証モジュールが、さらに、前記変動係数および前記決定係数が予め規定された許容可能な限度の範囲内にあるか否かを決定するよう構成される、請求項31に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項34】
前記分析物濃度報告モジュールが、さらに、前記変動係数および前記決定係数が前記予め規定された許容可能な限度の範囲内にないと決定された場合は、前記分析物の前記濃度と、前記変動係数および前記決定係数が前記予め規定された許容可能な限度の範囲内にないことを示すフラグとを報告するよう構成される、請求項33に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項35】
前記分析物濃度報告モジュールが、さらに、前記変動係数および前記決定係数が前記予め規定された許容可能な限度の範囲内にあると決定された場合は、前記分析物の前記濃度を報告するよう構成される、請求項33に記載の分析物濃度測定アプリケーションを記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料処理量を高めることに関する。本発明は、より具体的には、体液(例えば、血液)の自動臨床分析器などのデバイス、及び体液試料中の分析物の存在に応答する電気化学的センサのエンドポイント応答を予測することによって当該分析器による試料処理量を高めるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な臨床的状況において、患者の血液の特定の化学的特性(例えば、pH、ヘマトクリット、カルシウム、カリウム、塩化物、ナトリウム、グルコース、乳酸塩、クレアチニン、クレアチン、尿素のイオン濃度、O2及び/又はCO2の分圧など)を測定することは重要である。こうした状況は、通常の病院訪問、手術室(surgical suite)、集中治療室、又は救急室において生じ得る。分析応答が得られる速度は、治療及び治療結果を決定する上で重要である。センサの応答時間の遅延は、診断を遅らせ、それに伴い、適切な治療の適用を遅らせる。そのような遅延は、予後及び臨床結果に影響を与え得る。
【0003】
米国特許第6,652,720号明細書、同第7,632,672号明細書、同第7,022,219号明細書、及び同第7,972,280号明細書(その各々の全開示内容が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているもののような電気化学的センサが、典型的に、患者の血液の血液化学分析を提供するために使用される。
【0004】
従来の微小電極は、血液試料の化学的特性に比例して電気信号を生成する。こうした電気信号を生成するために、センサシステムは、化学的又は生化学的認識成分(例えば、酵素)と物理的変換器(例えば、白金電極)とを併せ持ち得る。従来からの化学的又は生化学的認識成分は、目的の分析物と選択的に相互作用して、必要とされる電気信号を、直接的又は間接的に、変換器を通じて生成する。
【0005】
特定の生化学的認識成分の選択性により、電気化学的センサが、複雑な分析物混合物(例えば、血液)中であっても特定の生物学的分析物を正確に検出することが可能になる。これらのセンサが応答を提供する際の精度及び速度は、自動臨床分析器の重要な特徴である。
【0006】
臨床試料分析システム製造業者の目標の1つは、試料処理量を高めることである。近年の革新は、センサがエンドポイント応答を提供するのに要する時間であるセンサのエンドポイント応答時間を短縮することにその注意を集中してきた。従来の臨床分析システムにおいては、センサがエンドポイント応答を提供すると、その応答がコンピュータに提供され、コンピュータが様々な数学的演算を行って、エンドポイント応答を体液試料内の分析物の濃度に変換する。センサがエンドポイント応答を提供するのに要する時間は、試料が分析される時間に影響し、これが最終的に、試料処理量を決定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、診断及び治療的介入を促進するために、体液試料を分析するのに要する時間を短縮する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、先行技術のデバイス及び方法の欠点を克服するものであり、試料中の分析物の分析のためのセンサのエンドポイント応答時間を予測することによって試料(例えば、体液試料)処理量を高める技術に向けられている。本明細書に記載される種々の実施形態によれば、本発明は、試料中の分析物に曝露されたことに応答してセンサによって生成されるデータ信号から導出される曲線あてはめ方程式を決定することによってセンサのエンドポイント応答を外挿する技術を記述している。種々の実施形態において、曲線あてはめ方程式は、s(t)=a(log(t))
2+b(log(t))+cという一般形を有する二次対数多項式であり、式中、a、b及びcは、変換されたデータポイントに基づいて決定される多項式係数であり、s(t)は、特定の時間tにおける計算されたセンサ出力である。
【0009】
1つの態様において、試料処理量を高めるためのシステムは、試料内の分析物の測定値と関連付けられた複数のデータ信号を生成するように構成されたセンサを含む。当該システムは、プロセッサをさらに含み、プロセッサは、動的領域内の特定の時間範囲に対応するデータポイントを記録し、その記録されたデータポイントを時間スケールの対数関数に変換し、その変換されたデータポイントをプロットする。プロセッサは、次いで、そのプロットされたデータポイントにあてはまる曲線を決定し、その曲線について曲線あてはめ方程式を決定する。曲線あてはめ方程式が決定されると、プロセッサは、その曲線あてはめ方程式を用いてセンサのエンドポイント応答を外挿する。次いで、その外挿されたエンドポイント応答を用いて分析物濃度などの値が計算される。
【0010】
別の態様において、試料処理量を高めるための方法は、試料内の分析物に曝露されたことに応答してセンサによって生成されたデータ信号を受信する工程を含む。データ信号が受信されると、そのデータ信号と関連付けられたデータポイントが記録される。その記録されたデータポイントから動的領域時間範囲の一部に対応する一連のデータポイントが選択され、次いで時間スケールの対数関数に変換され、プロットされる。データポイントにあてはまる曲線が生成され、その曲線についての二次対数方程式が決定される。曲線あてはめ方程式が決定されると、プロセッサは、その曲線あてはめ方程式を用いてセンサのエンドポイント応答を外挿する。次いで、その外挿されたエンドポイント応答を用いて分析物濃度などの値が計算される。
【0011】
さらに別の態様において、コンピュータ可読記憶媒体は、試料内の分析物に曝露されたことに応答してセンサによって生成されたデータ信号を受信するためのコンピュータ実行可能命令を含む。データ信号が受信されると、データ信号と関連付けられたデータポイントが記録される。その記録されたデータポイントから動的領域時間範囲の一部に対応する一連のデータポイントが選択され、次いで時間スケールの対数関数に変換され、プロットされる。データポイントにあてはまる曲線が生成され、その曲線についての二次対数方程式が決定される。曲線あてはめ方程式が決定されると、プロセッサは、曲線あてはめ方程式を用いてセンサのエンドポイント応答を外挿する。次いで、その外挿されたエンドポイント応答を用いて分析物濃度などの値が計算される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明のこれらの実施形態及び他の態様は、下記の詳細な説明及び添付の図面から容易に理解できるであろう。当該詳細な説明及び図面は、本発明を例示することが意図されるものであって本発明を限定することが意図されるものではない。ここで、図面は次のとおりである。
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態に従う分析物濃度測定システムの例示的な構成図を図示したものである。
【
図2】
図2は、本発明の1つの実施形態に従うグルコースの濃度を測定するためのセンサによって生成された実験データについての時間に対する電圧の例示的なプロットを示したものである。
【
図3】
図3は、本発明の1つの実施形態に従う
図2の実験データの一部を用いた時間の対数関数に対する電圧の例示的なプロットを示したものである。
【
図4】
図4は、本発明の1つの実施形態に従うセンサのエンドポイント応答を予測するための例示的な論理流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、試料中の分析物の分析のためのセンサのエンドポイント応答時間を予測することによって自動臨床分析器における試料(例えば、体液試料)処理量を高める技術に向けられている。本明細書に記載される種々の実施形態によれば、本発明は、試料に曝露されたことに応答してセンサによって生成されるデータ信号から導出される曲線あてはめ方程式を決定することによってセンサのエンドポイント応答を外挿する技術を記述している。種々の実施形態において、曲線あてはめ方程式は、s(t)=a(log(t))
2+b(log(t))+cという一般形を有する二次対数多項式であり、式中、a、b及びcは、変換されたデータポイントに基づいて決定される多項式係数であり、s(t)は、特定の時間tにおける計算されたセンサ出力である。このように、試料分析システムは、試料を分析し、試料中のセンサにより測定された分析物の濃度の決定を提供するために、センサエンドポイント応答時間の全継続期間を待つ必要はもはやなくなり得る。さらに、センサ応答時間を短縮することによって、したがって試料曝露時間を短縮することによって、センサが回復するのに要する時間であるセンサ回復時間も短縮されて、より大きな処理量が可能になる。
【0014】
本発明は、添付の図面と共に読まれるべき以下の説明を通してより完全に理解されるであろう。本説明において、同じ番号は、本発明の種々の実施形態中の同様の要素を表す。本説明中、特許請求の範囲に記載された発明は、実施形態に関して説明される。当業者であれば、本明細書に記載された方法及びシステムは例示にすぎず、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変更を加え得ることを容易に理解するであろう。
【0015】
次に図面を参照すると、
図1は、本発明の1つの実施形態に従う分析物濃度測定システム102の構成図を図示したものである。特に、分析物濃度測定システム102は、プロセッサ104、記憶装置106、及び記憶装置106中に記憶された分析物濃度測定アプリケーション110を含み得る。分析物濃度測定アプリケーション110は、概して、1個以上のセンサ140A〜N(以後一般的にセンサ140と呼ぶ)と通信するように構成され得る。種々の実施形態において、センサ140は、分析物に曝露されたことに応答して、電圧測定信号(voltmetric signal)又は電流測定信号(amperometric signal)を生成し得る電気化学的センサであり得る。種々の実施形態において、第1のセンサ140Aは、試料内の第1の分析物に応答し得、第2のセンサ140Bは、試料内の第2の分析物に応答し得、そして第nのセンサ140Nは、試料内の第nの分析物に応答し得る、などである。センサ140に関するさらなる詳細は以下に示される。
【0016】
分析物濃度測定アプリケーション110は、試料内の分析物の濃度を決定するために特定の機能又はタスクを実行するように構成された1個以上のモジュールを含み得る。種々の実施形態において、分析物濃度測定アプリケーション110は、センサ通信モジュール112、データポイント報告モジュール114、データポイント選択モジュール116、曲線あてはめモジュール118、外挿モジュール120、検証モジュール122、及び分析物濃度報告モジュール124を含み得る。種々の実施形態において、分析物濃度測定アプリケーション110は、追加のタスクを実行するための追加のモジュールを含んでもよいし、上に列挙されたモジュールの一部のみを含んでもよいということが理解されるべきである。
【0017】
分析物濃度測定アプリケーション110は、試料内の分析物に曝露された時にセンサによって生成されたデータ信号を受信し、そのデータ信号から抽出されるデータポイントを記録し、時間スケールの対数関数上のデータポイントを評価し、その評価されたデータポイントに適合する曲線を決定し、センサのエンドポイント応答を外挿するために利用され得る曲線あてはめ方程式を決定し、センサの外挿されたエンドポイント応答に基づいて分析物の濃度を正確に推定するように、概して構成され得る。
【0018】
種々の実施形態において、センサ通信モジュール112は、センサ140からデータ信号を受信するように構成され得る。センサが電気化学的センサであり得る一部の実施形態において、データ信号は、アンペアの単位で測定され得る電流測定出力、又はボルトの単位で測定され得る電圧測定出力であり得る。種々の実施形態において、これらのデータ信号は、経時的に変化し得、典型的に、最終的に経時的に安定する出力値を生成し得る。安定化した出力値は、典型的に、センサのエンドポイント応答であり得る。分析物に曝露されたことに応答してデータ出力信号を生成し得る任意の種類のセンサがセンサ140として利用され得るということが理解されるべきである。
【0019】
データポイント記録モジュール114は、生成されたデータ信号からデータポイントを捕捉し、記録するように構成され得る。データポイントは、分析物濃度測定システム102の記憶装置において、又は分析物濃度測定アプリケーション110によってアクセス可能な任意の他の記憶媒体にて記憶され得る。種々の実施形態において、データポイント記録モジュール114は、第nの一定期間後毎にデータ信号の測定値を記録し得る。一定期間は、分析物濃度測定アプリケーション110により予め規定され得る。一定期間は、既存システムの技術的制約により規定され得るものであり、いかなる特定の範囲にも限定されることは意図されていないということが理解されるべきである。しかしながら、一部の実施形態において、一定期間は、1ミリ秒〜数秒の範囲であり得る。代替的な実施形態において、データポイント記録モジュール114は、不規則な又は不定の期間後にデータ信号の測定値を記録し得る。
【0020】
データポイント選択モジュール116は、記録されたデータポイントから適切なデータポイントを選択するように構成され得る。種々の実施形態において、データポイント選択モジュール116は、時間スケールの対数関数上にプロットされた場合に、選択されたデータポイントにぴったりとあてはまりかつ許容可能な限度の範囲内にあるセンサのエンドポイント応答を予測するという結果ももたらす曲線を分析物濃度測定アプリケーションが決定することを可能にし得る、データポイントを選択し得る。種々の実施形態において、最も正確な結果を提供し得るデータポイントは、経験的に決定される時間範囲から選択され得、センサ及び分析物の特性によって様々であり得る。
【0021】
種々の実施形態において、データポイント選択モジュール116は、記録されたデータポイントから動的領域時間範囲に対応する一連のデータポイントを選択し得る。動的領域時間範囲とは、データポイントがセンサ応答の動的領域内にあるところの任意の時間範囲をいう。典型的に、動的領域は、センサが分析物に曝露される第1の時間から、センサによって生成されたデータ信号がセンサのエンドポイント応答と実質的に類似したものとなっていない、すなわちセンサ応答が平衡に達するまでの、第2の時間にかけて起こる。換言すれば、センサによって生成されたデータ信号がセンサのエンドポイント応答と実質的に類似した状態になれば、データ信号は、平衡領域において生成されている。種々の実施形態において、データポイント選択モジュール116は、動的領域時間範囲の一部に対応する一連のデータポイントを選択し得る。1つの実施形態において、時間範囲は、センサが分析物に曝露されてから約15秒後に始まり得る。さらに、時間範囲は、センサが分析物に曝露されてから約30秒後に終わり得る。どのデータポイントを選択すべきかについてのさらなる詳細は、以下に
図4に関して示されている。
【0022】
曲線あてはめモジュール118は、変換されたデータポイントが時間スケールの対数関数上で評価され得ることとなるように、選択されたデータポイントを時間スケールの対数関数に変換するように構成され得る。次いで、曲線あてはめモジュールは、その評価されたデータポイントにぴったりと適合する曲線を決定し得る。種々の実施形態において、曲線あてはめモジュール118は、選択されたデータポイントを時間スケールの対数関数上にプロットし得、そのプロットされたデータポイントにぴったりと適合する又はあてはまる曲線を決定し得る。曲線を決定すると、曲線あてはめモジュールは、曲線に対応する曲線あてはめ方程式を決定し得る。種々の実施形態において、曲線あてはめ方程式の方程式は、s(t)=a(log(t))
2+b(log(t))+cという一般形を有する二次対数方程式であり得、式中、a、b及びcは、変換されたデータポイントに基づいて決定される多項式係数であり、s(t)は、特定の時間tにおける計算されたセンサ出力である。a、b及びcの厳密な値は、使用される各センサ構成について経験的に決定されるものであり、分析物の濃度、試料の大きさ、温度、センサ装置構成の形状寸法、及び他のパラメータによってある程度決まる。
【0023】
外挿モジュール120は、曲線の平衡領域内のある時間について曲線あてはめ方程式を解くことによってセンサのエンドポイント応答を外挿するように構成され得る。種々の実施形態において、分析物濃度測定アプリケーション102は、経験的方法を用いて曲線の平衡領域内にある時間を決定し、次いでその決定された平衡領域時間を、それを用いて曲線あてはめ方程式を解くべき予め規定された時間として記憶し得る。
【0024】
検証モジュール122は、計算されたエンドポイント応答を、変動係数(CV)及び決定係数(R
2)を決定することによって検証するように構成され得る。変動係数(CV)及び決定係数(R
2)を決定するための以下の式は、当該技術分野において周知であり、計算されたエンドポイント応答を検証するために検証モジュール122によって使用され得る。
CV=標準偏差(y
i)/平均(y
i);及び
R
2=1−(総和((y
i−f
i)
2)/(総和((y
i−平均(y
i))
2);
式中、y
i及びf
iは、それぞれある特定の時間における実測値及び計算値である。
【0025】
本開示により、センサ応答時間が短縮されると同時に試料曝露時間が短縮されるということが理解されるべきである。試料曝露時間の短縮の結果として、センサ、特に酵素センサ(グルコース及び乳酸塩を測定するためのセンサが挙げられるが、これらに限定されない)は、短縮されたセンサ回復時間を有し得る。センサがより速く回復し得るほど、より大きな処理量が達成され得る。
【実施例】
【0026】
分析物濃度記録モジュール124は、計算されたエンドポイント応答を用いて試料内の分析物の濃度を決定し、検証モジュール122がCV及びR
2が許容可能な限度の範囲内にないと判断した場合はフラグ付きで分析物濃度を報告する。逆に、CV及びR
2が許容可能な限度の範囲内にある場合は、その時は、分析物濃度記録モジュール124はフラグなしで分析物の濃度を報告し得る。本発明の方法に従って測定され得る分析物としては、例えば、ヘマトクリット、カルシウム、カリウム、塩化物、ナトリウム、グルコース、乳酸塩、クレアチニン、クレアチン、尿素のイオン濃度、O2及び/若しくはCO2の分圧、又はそのためのセンサが存在するあらゆる他の分析物が挙げられるが、これらに限定されない。種々の実施形態において、フラグは、旗、記号として視覚的に、又は警告音、電子音として聴覚的に、又はCV若しくはR
2のいずれかが許容可能な限度の範囲内にないことを使用者に知らせ得る任意の他の表示で示され得る、データビットであり得る。
【0027】
次に
図2を参照すると、グルコースの濃度を測定するためのセンサにより生成された実験データについての時間に対する電圧の例示的なプロットが示されている。特に、プロットは、センサ140により生成されたデータ信号から捕捉される一連のデータポイント202A〜Nを示している。データポイントは、出力値(例えば、電圧、電流、又は電荷)を示す。種々の実施形態において、生成された信号からのデータポイントは、経時的に記録され得、時間に対してプロットされ得る。
図2に示されたプロットは、記録されたデータポイント202A〜Nを時間に対してプロットすることによって生成されている。本実施形態において、データポイントは、1秒毎に記録される。しかしながら、種々の実施形態において、データポイントは、1秒よりも短い又は1秒よりも長い時間間隔で記録され得る。
【0028】
1秒よりも短い時間間隔でデータポイントを記録することにより、より多くのデータが生成されるということが理解されるべきであり、これは、より正確なプロットを可能にし得るが、システムリソースによっては望ましくないことがあり得るさらなるコンピューティングリソースを利用する場合もあり得る。或いは、1秒を大幅に超える時間間隔で記録されるデータポイントは、より正確でないプロットを提供し得る。いずれにせよ、データポイント間の時間間隔の長さは、種々の要因(例えば、センサのエンドポイント応答時間、コンピューティングリソースに関する制約、センサ及び分析物の性質など)に基づいて決定され得る実施の際の選択事項(implementation choice)である。
【0029】
次に
図3を参照すると、
図2の実験から得られたグルコースデータの一部を用いた時間の対数関数に対する電圧の例示的なプロットが示されている。上に記載したように、センサから受信されたデータ信号に対応するデータポイントが記録されると、データポイント選択モジュール114は、その記録されたデータポイントから適切なデータポイントを選択し得る。次いで、その選択されたデータポイントは、対数スケール(例えば、底10又は自然対数)に変換され得る。データポイントを対数スケールに変換すると、その変換されたデータポイント302A〜Nは、時間の対数関数に対する電圧値としてプロットされる。
【0030】
図3に示されるように、変換されたデータポイントが時間スケールの対数関数に対する電圧でプロットされると、プロット300が示され得る。これは、曲線あてはめモジュール118が、変換されたデータポイント302A〜Nにぴったりと適合する曲線306を決定することを可能にする。次いで、曲線あてはめモジュール118は、曲線306に基づいて、センサ技術において利用されている既存の曲線あてはめ方程式よりも単純な曲線あてはめ方程式を決定し得る。既存の曲線あてはめ方程式は、非線形方程式の根を求める必要があるが、本明細書に開示される技術は、そのような根を求める必要はない。非線形方程式の根を求めることは計算集約的であり、高処理量を有するシステムを扱う場合は、この問題の深刻さがより一層明らかになる。結果、分析物濃度測定システム102は、非線形方程式の根を求める必要のない曲線あてはめ方程式を利用することにより、既存のシステムよりも少ない計算リソースを必要とする。これは、既存のシステムに勝る種々の利点(処理量の増加、製造コストの低減、及びより小さな物理的及びエネルギーフットプリントが挙げられるが、これらに限定されない)に繋がる。さらに、曲線あてはめ方程式は、データポイントをプロットする必要もデータポイントにあてはまる曲線を描く必要もなく決定され得るので、表示工程は必要がないことがあり得るということが理解されるべきである。
【0031】
種々の実施形態によれば、曲線あてはめ方程式は、典型的に、
s(t)=a(log(t))
2+b(log(t))+c
という一般形を有する二次対数方程式であり得、式中、a、b及びcは、変換されたデータポイントに基づいて決定される多項式係数であり、s(t)は、特定の時間tにおける計算されたセンサ出力である。a、b及びcの厳密な値は、使用される各センサ構成について経験的に決定されるものであり、分析物の濃度、試料の大きさ、温度、センサ変換器構成の形状寸法、及び他のパラメータによってある程度決まる。a、b及びcの値がセンサ構成について決定されると、曲線あてはめ方程式が使用されて、試料中の分析物の濃度が迅速に推定され得る。本発明によれば、分析物濃度を決定するためにセンサがその最終の読みを与えるのを待つ必要がない。
【0032】
変換されるべきデータポイントの選択が、曲線あてはめ方程式の精度を決定することにおいて重要な役割を果たすということが理解されるべきである。しかし従来の見識は、あてはめられる曲線を決定するために利用されるデータポイントの数が多ければ多いほど好ましいということを示唆するであろう。
【0033】
本発明は、そのような見識が必ずしもあてはまらないことを開示している。むしろ、データポイントが選択される範囲の方が、なおさらに重要な役割を果たし得る。種々の実施形態において、時間スケールの対数関数に変換されるために選択されたデータポイントは、分析物がセンサに最初に曝露されてから15〜30秒後に生成されたデータポイントであった。他の実施形態において、分析物がセンサに最初に曝露されてから15〜35秒後からのデータポイントは、精度の著しい改善なしに使用された。同様に、分析物がセンサに最初に曝露されてから10〜25秒後からのデータポイントが使用されたが、十分に正確ではないいくつかの結果を生じた。選択されるデータポイントは、他の要因の中でも特に、センサ及び分析物の種類、エンドポイント応答時間に基づき変化し得るということが理解されるべきである。種々の実施形態において、データポイントを選択するための時間範囲は、経験的方法によって決定され得る。
【0034】
上に記載したように、センサのエンドポイント応答値は、センサ応答曲線の平衡領域内にある時間について方程式を解くことによって計算され得る。エンドポイント分析物関連値が曲線あてはめ方程式を用いて計算されると、エンドポイント応答値は、例えば較正値(例えば、定量(ration)、較正点、差値など)を含む方法を用いて、分析物の濃度に対応する値に変換される。
【0035】
次に
図4を参照すると、試料内の分析物の濃度を推定するための例示的な論理流れ図が示されている。ルーチン400は操作402から始まり、操作402で、センサ140が、分析物を含有する試料に曝露される。上に記載したように、電気化学的センサ140は、試料内の分析物の濃度のレベルに応答し得る。
【0036】
操作402から、ルーチン400は操作404に進み、操作404で、センサ140が、分析物への曝露に応答して1つ以上のデータ信号を生成し得る。種々の実施形態において、データ信号は、電圧、電流、電荷の形態、又は任意の他の種類の測定可能な出力であり得る。これらのデータ信号は、分析物への曝露の間中、センサ140によって連続的に生成されている。
【0037】
操作404から、ルーチン400は操作406に進み、操作406で、データポイント記録モジュール114が、データ信号からデータポイントを記録し得る。これらのデータポイントが記録される際の粒度は、他の要因の中でも特に、センサの種類、分析物の量、試料の大きさ、温度によって決定され得る。1つの実施形態において、データ信号は、1秒毎に記録される。しかしながら、これらのデータポイントが記録される頻度は、毎秒1データポイントより高くてもよいし、低くてもよいということが理解されるべきである。データポイントは、分析物濃度測定システム102の記憶装置内に記憶されてもよいし、分析物濃度測定アプリケーション110によってアクセス可能な場所に遠隔記憶されてもよい。
【0038】
操作406から、ルーチン400は操作408に進み、操作408で、データポイント選択モジュール116が、データポイント記録モジュール114によって記録されたデータポイントの一部を選択し得る。種々の実施形態において、データポイント選択モジュール116は、プロットされた場合に、将来の時間に外挿されるとセンサ140の実際の結果に近似する結果を生成する方程式を有する曲線を決定するのに役立ち得る、データポイントを選択し得る。種々の実施形態において、データポイント選択モジュール116は、任意の数のデータポイントを選択し得る。データポイントを選択する際にデータポイント選択モジュール116が考慮しなければならない相殺バランスがある。あまりに多すぎるデータポイントを選択することは、あてはめられる曲線の精度に悪影響を与え得る外れ値の数も増加させ得、また、時間があまりに先過ぎるデータポイントを選択することは、分析物濃度測定システム102が分析物濃度を決定し得る時間を遅延させ得る。特に、記録された最初の少数のデータポイントを選択することは、分析物濃度測定システムに不正確な結果を生じさせる原因となり得る。これは、センサ140が、分析物に最初に曝露された時に、他の望ましくない影響の中でも特に、ノイズ信号を生成し得るからである。したがって、経験的方法に基づいて、動的領域からではあるがセンサ140の初期応答後のものから選択されるデータポイントは、精度について著しく妥協することなしに、最も短い時間で分析物の濃度を決定する必要性のバランスを取りながら、最も正確な結果を生成し得る。
【0039】
操作408から、ルーチン400は操作410に進み、操作410で、曲線あてはめモジュール118が、特定の時間に対応する出力値を有する選択されたデータポイントを時間の対数関数の単位に変換する。種々の実施形態において、対数スケールの底は、底10であり得る、又は自然対数(ln e)であり得る。そうすることにより、プロットされた変換されたデータポイントによって生成される曲線は、既存のあてはめ方程式に比べてより正確であり得、かつより少ないデータポイントを利用する。
【0040】
操作410から、ルーチン400は操作412に進み、操作412で、曲線あてはめモジュール118が、変換されたデータポイントをグラフ上にプロットし得る。種々の実施形態において、Y軸は、センサ140により生成されたデータ信号から収集された出力値であり、X軸は、時間の対数関数である。操作412から、ルーチン400は操作414に進み、操作414で、曲線あてはめモジュール118が、プロットされたグラフについて曲線あてはめ方程式を決定し得る。種々の実施形態において、曲線あてはめモジュール118は、s(t)=a(log(t))
2+b(log(t))+cという形を有する二次対数多項式である曲線あてはめ方程式を決定し得、式中、a、b及びcは、変換されたデータポイントに基づいて決定される多項式係数であり、s(t)は、特定の時間tにおける計算されたセンサ出力である。a、b及びcの厳密な値は、使用される各センサ構成について経験的に決定されるものであり、分析物の濃度、試料の大きさ、温度、構成の形状寸法、及び他のパラメータによってある程度決まる。曲線あてはめモジュールは、データポイントにあてはまる曲線を決定するために、必ずしもデータポイントをプロットしなくてもよいということが理解されるべきである。一部の実施形態において、曲線あてはめモジュール118は、データポイントをプロットする必要なしに、データポイントにあてはまる曲線を決定することができ得る。市販の曲線あてはめソフトウェアが、選択されたデータポイントにあてはまる曲線及び対応する方程式を決定するために利用され得る。
【0041】
操作414から、ルーチン400は操作416に進み、操作416で、外挿モジュール120が、平衡領域の範囲内にある時間について曲線あてはめ方程式を解くことによって、センサ140の計算されたエンドポイント応答を外挿する。操作416から、ルーチン400は操作418に進み、操作418で、検証モジュール122が、精度についてエンドポイント応答を検証する。一部の実施形態によれば、検証プロセスは、上に示されている変動係数(CV)及び決定係数(R
2)の式を用いてCV及びR
2を決定することを含む。
【0042】
操作418から、ルーチン400は操作420に進み、操作420で、検証モジュールは、CV及びR
2が分析物濃度測定システム102により予め規定された許容可能な限度の範囲内にあるか否かを判断する。種々の実施形態において、これらの限度は、当業者により既知であり得る許容可能な範囲に入るCV及びR
2を考慮し得る。1つの実施形態において、この限度は、0.98〜1の間に入るR
2を考慮し得る。決定係数(R
2)は、どの程度よくデータ及び曲線あてはめ関数が適合しているかを示す。R
2の値が近ければ近いほど、より良い適合である。
【0043】
操作420において、検証モジュール122がCV、R
2のいずれか又はCV及びR
2の両方が許容可能な限度の範囲内にないと判断した場合は、ルーチン400は操作422に進み、操作422で、分析物濃度報告モジュール124が、外挿されたエンドポイント応答を用いて分析物の濃度を決定し、結果が許容可能な限度の範囲内にないことを示すフラグ付きで分析物濃度を報告する。
【0044】
しかしながら、操作420において、検証モジュール122がCV及びR
2の両方が許容可能な限度の範囲内にあると判断した場合は、ルーチン400は操作424に進み、操作424で、分析物濃度報告モジュール124が、外挿されたエンドポイント応答を用いて分析物の濃度を決定し、フラグなしで分析物濃度を報告する。操作422及び424から、ルーチン400は、操作426で終了する。
【0045】
種々の実施形態によれば、センサ140の較正のためのシステムを提供することが望ましいことがあり得る。分析物濃度を測定するための自己較正システムを、センサの製造時の不正確さを補正するために使用し得、そうすることで製造時間及びコストを削減し得る。さらに、自己較正システムは、センサ又は分析物濃度測定システム102の他の構成要素によって生成される小規模のノイズを補償するために使用され得る。
【0046】
種々の実施形態によれば、本明細書に示される開示内容は、電気化学的センサの重要な応答時間を決定するための時間を短縮するために利用され得る。一部の実施形態において、電気化学的センサは、例えばpO2、pCO2、グルコース及び乳酸塩の濃度レベルを計算するために、拡散制御応答環境において使用され得る。また、当該方法は、Na、K、Cl及びCaなどのイオン選択性電極のエンドポイント検出のためにも使用され得る。しかしながら、そのようなセンサは典型的に速い応答を示すので、エンドポイントセンサ応答予測は必要でないことがあり得る。