(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の熱交換器において前記プロセス凝縮水と前記排ガスとの間で熱交換されて、前記プロセス凝縮水が加熱されるとともに前記排ガスが冷却され、前記加熱されたプロセス凝縮水が前記吸収液再生塔に送給される請求項2に記載の排ガス処理システム。
【背景技術】
【0002】
石炭や重油などの化石燃料を燃焼させて発電する火力発電システムでは、多量のCO
2が排出される。近年、地球の温暖化現象の原因の一つとして、CO
2による温室効果が指摘され、地球環境を守る上で国際的にもその対策が急務となってきた。このため、排出抑制への要求が一層強まる傾向にある。
【0003】
火力発電システムにおいては、ボイラの下流側流通路にCO
2回収装置を備える排ガス処理システムが設置される。CO
2回収装置は、例えば特許文献1及び特許文献2に例示されるように、CO
2吸収塔と再生塔とを備える。CO
2吸収塔ではボイラからの燃焼排ガスをアミン系CO
2吸収液と接触させ、燃焼排ガス中のCO
2を除去する。CO
2を吸収した吸収液は再生塔に搬送される。再生塔では、CO
2を吸収した吸収液が加熱され、吸収液からCO
2を放出されて吸収液が再生される。再生塔で再生された吸収液は、CO
2吸収塔に循環されて再使用される。CO
2回収装置により燃焼排ガスから回収されたCO
2は、大気へ放出することなく貯蔵されるか,原油増産等に利用される。
【0004】
上記CO
2回収装置は燃焼設備に付加して設置されるため、その操業費用もできるだけ低減させなければならない。特に吸収液を再生する工程は多量の熱エネルギーを消費するので、可能な限り省エネルギープロセスとする必要がある。
【0005】
特許文献1の排ガス処理システムでは、CO
2吸収塔の底部から抜出されてCO
2再生塔に送給される吸収液の一部が、再生塔底部から抜き出されてCO
2吸収塔に送給される再生吸収液との間で熱交換を行う前に、CO
2再生塔のリボイラの蒸気と熱交換することで予熱させる。このような構成とすることにより、再生塔内の吸収液の顕熱を上昇させ、CO
2除去設備へ供給する蒸気量を低減させている。
【0006】
特許文献2の火力発電システムでは、ボイラから排出される排ガスを冷却することによって回収した熱量を、CO
2吸収塔から再生塔に送給されるCO
2を吸収した吸収液の加熱に用いている。また、タービンから送られる水蒸気を水に戻す復水器からの復水を、CO
2吸収塔内で吸収液の回収に使用される水洗水の冷却に使用するとともに、再生塔で離脱したCO
2の冷却に使用している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る排ガス処理システムの概略図である。排ガス処理システム1は、ボイラ2などの燃焼設備の下流側に設置される。図中の矢印は、ボイラ2で発生した排ガスの流れを表している。排ガス処理システム1は、ガス上流側から順に、脱硝装置3、エアヒータ4、乾式電気集塵装置6、湿式脱硫装置7、CO
2回収装置10、及び、煙突8を備える。第1実施形態の排ガス処理システム1では、エアヒータ4と乾式電気集塵装置6との間に排ガス熱交換器5が設置される。排ガス熱交換器5は、乾式電気集塵装置6と湿式脱硫装置7との間に設置されても良い。
【0021】
図2は、第1実施形態に係る排ガス処理システムにおけるCO
2回収装置を説明する概略図である。第1実施形態のCO
2回収装置10は、CO
2吸収塔11と、吸収液再生塔16と、リボイラ21とを備える。CO
2吸収塔11の上流側には、燃焼設備から排出された排ガスを冷却水によって冷却する排ガス冷却装置(不図示)が設置される。
【0022】
冷却されたCO
2を含む排ガスは、CO
2吸収塔11の下部からCO
2吸収塔11内に送給される。CO
2吸収塔11は、ガス上流側から順にCO
2回収部12と水洗部13とで構成される。
【0023】
CO
2回収部12において、排ガス中にCO
2吸収液が散布される。CO
2吸収液は、例えばアミン系溶液をベースとする。これにより、排ガスとCO
2吸収液とが向流接触して、排ガス中のCO
2が化学反応によりCO
2吸収液に吸収される。
【0024】
CO
2が除去された排ガスは、水洗部13に搬送される。水洗部13の上方から、排ガス中に循環洗浄水が散布される。これにより、排ガスと循環洗浄水とが気液接触して、排ガス中に含まれる水分が凝縮し、回収される。CO
2及びCO
2吸収液が除去された排ガスは、CO
2吸収塔11上部から系外(
図1の煙突8)に排出される。
【0025】
水洗部13で凝縮した排ガス中の水分及び循環洗浄水は、水洗部13の下方に設置されたトレイ14で回収される。回収された液の一部は、循環洗浄水として水洗部13に散布される。回収された液の別の一部は、プロセス凝縮水としてCO
2吸収塔11から排出され、凝縮水送給管15を通じて吸収液再生塔16の底部に送給される。
【0026】
CO
2回収部12でCO
2を吸収したCO
2吸収液(リッチ溶液)は、CO
2吸収塔11の下部に貯留される。リッチ溶液は、ポンプ(不図示)によりCO
2吸収塔11から排出され、リッチ溶液送給ライン17を通じて吸収液再生塔16の上部に送給される。
【0027】
吸収液再生塔16内部に再生部18が設けられる。再生部18は複数段設けられても良い。リッチ溶液は、再生部18の上部から吸収液再生塔16内部に散布される。再生部18の下方から吸収液再生塔16内に蒸気が供給される。再生部18においてリッチ溶液と蒸気とが気液接触し、吸熱反応によりリッチ溶液からCO
2の大部分が放出される。一部または大部分のCO
2が放出されたCO
2吸収液(セミリーン溶液)は、吸収液再生塔16の底部に到達するころには、ほぼすべてのCO
2が除去されたCO
2吸収液(リーン溶液)に再生される。
【0028】
吸収液再生塔16の底部には、CO
2吸収液(リーン溶液及び凝縮水)が貯留される。吸収液再生塔16の底部に貯留されたCO
2吸収液の一部は、ポンプ(不図示)によりリーン溶液送給ライン19を通じてCO
2吸収塔11のCO
2回収部12上部に搬送され、CO
2吸収塔11内の排ガス中に散布される。リッチ溶液送給ライン17及びリーン溶液送給ライン19にリッチ・リーン溶液熱交換器20が設置される。リッチ・リーン溶液熱交換器20において、リッチ溶液とリーン溶液との間で熱交換が行われ、リッチ溶液が加熱されるとともにリーン溶液が冷却される。
【0029】
吸収液再生塔16の底部に貯留されたCO
2吸収液の一部は、リボイラ21に送給される。ボイラ2からの蒸気がリボイラ21に送給される。リボイラ21の再生加熱器において、CO
2吸収液とボイラ2からの蒸気との間で熱交換が行われる。これにより、CO
2吸収液が蒸気となって吸収液再生塔16に送給される。一方、蒸気は冷却されてスチーム凝縮水となり、リボイラ21から排出される。
【0030】
リボイラ21から排出されたスチーム凝縮水の一部が熱交換器22に送給される。残りのスチーム凝縮水は、ボイラに循環される。熱交換器22において、凝縮水送給管15を流通するプロセス凝縮水と、スチーム凝縮水との間で熱交換が行われる。これにより、プロセス凝縮水が加熱される一方、スチーム凝縮水が冷却される。
【0031】
熱交換器22で熱交換されたプロセス凝縮水及びスチーム凝縮水は、排ガス熱交換器5に送給される。排ガス熱交換器5において、ボイラ2から排出され乾式電気集塵装置6に流入する前の排ガスと、プロセス凝縮水及びスチーム凝縮水との間で熱交換が行われる。これにより、排ガスは冷却され、排ガス熱交換器5の下流側に搬送される。プロセス凝縮水は加熱されて、吸収液再生塔16の底部に送給される。
【0032】
スチーム凝縮水は上記熱交換により加熱されて気液二相流となり、気液分離器23により気相と液相とに分離される。気相(水蒸気)はリボイラ21の蒸気上流側に送給され、ボイラ2からの蒸気と混合されてリボイラ21に送給される。液相はリボイラ21の蒸気下流側に送給され、リボイラ21から排出されたスチーム凝縮水と混合される。このように、第1実施形態の排ガス処理システムでは、蒸気及びスチーム凝縮水の一部がリボイラ21と排ガス熱交換器5との間で循環する。
【0033】
第1実施形態の排ガス処理システムにおいて、CO
2回収装置10のCO
2吸収塔11内でのプロセス凝縮水の温度は約40〜60℃に管理される。上記温度でCO
2吸収塔から排出されたプロセス凝縮水は、熱交換器22において70〜100℃まで昇温される。リボイラ21から排出されたスチーム凝縮水は、熱交換器22において75〜105℃程度に冷却される。
【0034】
第1実施形態の排ガス処理システムでは、ボイラ2から排出された排ガスは、エアヒータ4を通過することにより130〜200℃程度に冷却されて排ガス熱交換器5に流入する。排ガス熱交換器5での熱交換により、排ガスは80〜120℃まで冷却される。一方、プロセス凝縮水は120〜160℃に更に昇温されて、スチーム凝縮水が120〜190℃に昇温される。
【0035】
熱交換器22によるプロセス凝縮水の温度上昇幅及びスチーム凝縮水の温度低下幅は、プロセス凝縮水の流量や蒸気の流量により制御される。排ガス熱交換器5によるプロセス凝縮水及びスチーム凝縮水の温度上昇幅、及び、排ガスの温度低下幅は、プロセス凝縮水の流量やスチーム凝縮水の流量により制御される。
【0036】
吸収液再生塔16の再生部でCO
2吸収液から脱離したCO
2は、リッチ溶液及びセミリーン溶液から放出された水蒸気を伴って吸収液再生塔16の頭頂部から排出され、CO
2分離部24に搬送される。
【0037】
CO
2分離部24は、コンデンサ25と分離ドラム26とを備える。吸収液再生塔16から排出された水蒸気を含むCO
2は、コンデンサ25により水蒸気が凝縮され、分離ドラム26にて水が分離される。水が分離されたCO
2は、系外に放出される。放出されたCO
2は、圧縮機(不図示)により圧縮され、回収される。
【0038】
分離ドラム26でCO
2から分離された水は、ポンプ(不図示)にて吸収液再生塔16の上部に供給される。
【0039】
本実施形態の排ガス処理システム1は、系内での熱交換によりプロセス凝縮水及びスチーム凝縮水を加熱しているため、装置全体での熱効率が向上する。装置全体での熱効率が向上したことにより、リボイラで必要とされる熱量を低減させることができる。また、スチーム凝縮水を再加熱して蒸気とし、リボイラ21に循環させているので、リボイラ21に外部(ボイラ2)から供給する蒸気量を低減できる。
【0040】
排ガス熱交換器5を乾式電気集塵装置6のガス上流側に設置した場合は、上述した排ガス熱交換器5により冷却された排ガス温度は、SO
3の露点以下の温度である。従って、排ガスが排ガス熱交換器5を通過すると冷却され、排ガス中のSO
3が凝縮する。凝縮したSO
3のミストは排ガス中のダストに付着する。SO
3が付着したダストは乾式電気集塵装置6で集塵される。
【0041】
また、排ガス中には重金属類が蒸気として含まれる。重金属類は冷却されることにより凝縮して固体状態となる。エアヒータ4にて排ガスが150℃程度に冷却される際に大部分の重金属類が凝縮するが、一部は蒸気としてガス下流側に搬送される。エアヒータ4のガス下流側に設置される排ガス熱交換器5において更に排ガスが冷却されることにより、ほぼ全ての重金属類が凝縮する。凝縮した重金属類は、主として乾式電気集塵装置6で捕集される。
【0042】
このように、排ガス熱交換器を乾式電気集塵装置6に流入する前に設置する場合には、SO
3及び重金属類の除去率が向上する。
【0043】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態に係る排ガス処理システムにおけるCO
2回収装置を説明する概略図である。
図3では、
図2と同じ構成に同一の符号を付している。なお、排ガス処理システム全体の構成は、
図1と同一である。
【0044】
CO
2回収装置30は、リボイラ21から排出されたスチーム凝縮水の全てが、熱交換器22及び排ガス熱交換器5で熱交換された後、ボイラ2に循環される点で第1実施形態と異なっている。
【0045】
第1実施形態と同様に、第2実施形態におけるCO
2吸収塔11内でのプロセス凝縮水の温度は約40〜60℃に管理されており、熱交換器22によりプロセス凝縮水は70〜90℃まで昇温される。リボイラ21から排出されたスチーム凝縮水は、熱交換器22において75〜105℃程度に冷却される。
【0046】
また、エアヒータ4により130〜200℃程度に冷却された排ガスは、排ガス熱交換器5での熱交換により、80〜120℃まで冷却される。一方、プロセス凝縮水は120〜160℃に更に昇温され、スチーム凝縮水が120〜190℃に昇温される。
【0047】
このように本実施形態の排ガス処理システム1は、CO
2回収装置10に流入する前の排ガスの熱量をCO
2回収装置10内のプロセス凝縮水及びスチーム凝縮水の加熱に使用しているため、装置全体での熱効率が向上する。
【0048】
第2実施形態の構成を採用することにより、気相と液相とが混在したスチーム凝縮水をボイラ給水としてボイラに循環可能となる。本実施形態によれば、従来よりも高い温度でボイラ給水をボイラに供給可能となるので、ボイラの効率を向上させることができる。
【0049】
本実施形態の排ガス処理システムにおいても、排ガス熱交換器5を乾式電気集塵装置6のガス上流側に設置することによって、排ガス処理システムでのSO
3の除去効率及び重金属類の除去率も向上する。
【0050】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態に係る排ガス処理システムにおけるCO
2回収装置を説明する概略図である。
図4では、
図2と同じ構成に同一の符号を付している。排ガス処理システム全体の構成は、
図1と同一である。
【0051】
第3実施形態におけるCO
2回収装置40では、CO
2吸収塔11の水洗部13下方のトレイ14から排出されたプロセス凝縮水が、熱交換器22でスチーム凝縮水と熱交換された後、排ガス熱交換器45を経ずに吸収液再生塔16に供給される構成となっている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0052】
第3実施形態におけるCO
2吸収塔11内でのプロセス凝縮水の温度は約40〜60℃に管理されており、熱交換器22によりプロセス凝縮水は70〜100℃まで昇温される。リボイラ21から排出されたスチーム凝縮水は、熱交換器22において75〜105℃程度に冷却される。
【0053】
エアヒータ4により130〜200℃程度に冷却された排ガスは、排ガス熱交換器45での熱交換により、80〜120℃まで冷却される。一方、スチーム凝縮水は120〜190℃に昇温される。
【0054】
第3実施形態の排ガス処理システム40は、排ガスの熱量をスチーム凝縮水の加熱に使用しているため、装置全体での熱効率が向上する。
【0055】
<第4実施形態>
図5は、第4実施形態に係る排ガス処理システムにおけるCO
2回収装置を説明する概略図である。
図5では、
図2と同じ構成に同一の符号を付している。排ガス処理システム全体の構成は、
図1と同一である。
【0056】
第4実施形態のCO
2回収装置50では、リッチ・リーン溶液熱交換器20のリッチ溶液上流側において、リッチ溶液送給ライン(第1のリッチ溶液送給ライン)17とリッチ溶液送給ライン(第2のリッチ溶液送給ライン)57とに分岐されている。CO
2吸収塔11から排出したリッチ溶液の一部は、リッチ溶液送給ライン57を通じて熱交換器22及び排ガス熱交換器5に送給された後、吸収液再生塔16に送給される。
【0057】
熱交換器22においてリッチ溶液とスチーム凝縮水との間で熱交換が行われる。第4実施形態のCO
2回収装置において、CO
2吸収塔11の底部に貯留されるリッチ溶液は約40〜60℃に管理される。この温度でCO
2吸収塔11から排出されたリッチ溶液は、リッチ溶液送給ライン57を経由して熱交換器22に搬送され、熱交換器22において70〜100℃まで昇温される。一方、スチーム凝縮水は、熱交換器22において75〜105℃程度に冷却される。
【0058】
熱交換が行われた後のリッチ溶液とスチーム凝縮水とが、排ガス熱交換器5に送給される。排ガス熱交換器5において、リッチ溶液、スチーム凝縮水、及び、排ガスとの間で熱交換が行われ、リッチ溶液及びスチーム凝縮水が加熱されるとともに、排ガスが冷却される。第4実施形態の排ガス処理システムでは、ボイラ2から排出された排ガスは、エアヒータ4を通過することにより130〜200℃程度に冷却されて排ガス熱交換器5に流入する。排ガス熱交換器5での熱交換により、排ガスは80〜120℃まで冷却される。一方、リッチ溶液は120〜160℃に更に昇温されて、スチーム凝縮水が120〜190℃に昇温される。
【0059】
排ガスの熱により加熱されたリッチ溶液は、リッチ溶液送給ライン57を通じて、吸収液再生塔16の再生部18に供給される。排ガスにより加熱されたリッチ溶液の一部が吸収液再生塔16内にフラッシュされたときの吸収液のCO
2ローディングと、吸収液再生塔16内の吸収液のCO
2ローディングとが同程度となる高さにおいて、リッチ溶液が吸収液再生塔16の再生部18に供給されることが好ましい。
なお、「CO
2ローディング」とは、吸収液(アミン)濃度に対するCO
2濃度の比率(CO
2濃度/吸収液(アミン)濃度)で定義される。
【0060】
第4実施形態の排ガス処理システム50では、排ガスの熱量をリッチ溶液及びスチーム凝縮水の加熱に使用しているため、装置全体での熱効率が向上する。気化されたスチーム凝縮水をリボイラ21に循環させているので、リボイラ21に外部(ボイラ)から供給する蒸気量を低減できる。また、リッチ溶液を加熱して吸収液再生塔に供給しているので、リボイラ21に必要な蒸気量を低減できる。
【0061】
本実施形態の排ガス処理システムにおいても、排ガス熱交換器5を乾式電気集塵装置6のガス上流側に設置することによって、排ガス処理システムでのSO
3の除去効率及び重金属類の除去率も向上する。
【0062】
<第5実施形態>
図6は、第5実施形態に係る排ガス処理システムにおけるCO
2回収装置を説明する概略図である。
図6では、
図2と同じ構成に同一の符号を付している。排ガス処理システム全体の構成は、
図1と同一である。
【0063】
第5実施形態におけるCO
2回収装置60では、第4実施形態と同様に、リッチ・リーン溶液熱交換器20のリッチ溶液上流側において、リッチ溶液送給ライン(第1のリッチ溶液送給ライン)17とリッチ溶液送給ライン(第2のリッチ溶液送給ライン)67とに分岐されている。CO
2吸収塔11から排出したリッチ溶液の一部は、リッチ溶液送給ライン67を通じて熱交換器22に送給された後、排ガス熱交換器65を経由せずに吸収液再生塔16に送給される。
【0064】
熱交換器22において、第4実施形態と同様の熱交換が実施される。
【0065】
図6に示すように、熱交換器22を通過したリッチ溶液は、熱交換器20を通過したリッチ溶液と略同じ高さから吸収液再生塔16内に流入している。但し、熱交換器22を通過したリッチ溶液は、加熱されたリッチ溶液の一部が吸収液再生塔16内にフラッシュされたときの吸収液のCO
2ローディングと、吸収液再生塔16内の吸収液のCO
2ローディングとが同程度となる高さで吸収液再生塔16に供給されることにより,回収した熱を最も有効に活用することができる。そのため,リッチ溶液の供給場所はこれに限定されず、例えば、熱交換器22を通過したリッチ溶液と熱交換器20を通過したリッチ溶液との温度差に応じて,熱交換器20を通過したリッチ溶液の供給ラインの上方又は下方から熱交換器22を通過したリッチ溶液が吸収液再生塔16内に供給される構成としても良い。
【0066】
第5実施形態の排ガス処理システム60は、排ガスの熱量をスチーム凝縮水及びリッチ溶液の加熱に使用しているので、装置全体の熱効率が向上する。また、加熱されて気化されたスチーム凝縮水をリボイラ21に循環させているので、リボイラに外部(ボイラ)から供給する蒸気量を低減できる。
【0067】
[実施例1]
図2に示されるCO
2回収装置を備える排ガス処理システムを使用して排ガスの処理を行った場合にリボイラで必要とされる熱量の計算を実施した。計算では、プロセス凝縮水の圧力を6atm,温度を、熱交換器入口:49℃、熱交換器出口:82℃、排ガス熱交換器出口:149℃に設定した。スチーム凝縮水の温度を、熱交換器入口:100℃に設定した。排ガスの温度を、排ガス熱交換器入口:177℃、排ガス熱交換器出口:90℃に設定した。プロセス凝縮水の流量を11.2ton/hr、排ガス熱交換器入口のスチーム凝縮水の流量を20.3ton/hrに設定した。熱量は、排ガス熱交換器での熱交換によりスチーム凝縮水が気化して発生したスチーム分のエンタルピーを考慮して算出した。
【0068】
[実施例2]
図3に示されるCO
2回収装置を備える排ガス処理システムを使用して排ガスの処理を行った場合にリボイラで必要とされる熱量の計算を実施した。計算では、プロセス凝縮水、スチーム凝縮水及び排ガスの温度を実施例1と同じように設定した。プロセス凝縮水の流量を11.2ton/hr、スチーム凝縮水の流量を20.3ton/hrに設定した。
【0069】
[実施例3]
図4に示されるCO
2回収装置を備える排ガス処理システムを使用して排ガスの処理を行った場合にリボイラで必要とされる熱量の計算を実施した。計算では、プロセス凝縮水の温度を、熱交換器入口:49℃、熱交換器出口:96℃に設定した。スチーム凝縮水の温度を、熱交換器入口:100℃に設定した。排ガスの温度を、排ガス熱交換器入口:177℃、排ガス熱交換器出口:90℃に設定した。プロセス凝縮水の流量を11.2ton/hr、排ガス熱交換器入口のスチーム凝縮水の流量を36.1ton/hrに設定した。熱量は、排ガス熱交換器での熱交換によりスチーム凝縮水が気化して発生したスチーム分のエンタルピーを考慮して算出した。
【0070】
[実施例4]
図5に示されるCO
2回収装置を備える排ガス処理システムを使用して排ガスの処理を行った場合にリボイラで必要とされる熱量の計算を実施した。計算では、リッチ溶液の圧力を10atm,温度を、熱交換器入口:39℃、熱交換器出口:82℃、排ガス熱交換器出口:149℃に設定した。スチーム凝縮水の温度を、熱交換器入口:100℃に設定した。排ガスの温度を、排ガス熱交換器入口:177℃、排ガス熱交換器出口:90℃に設定した。リッチ溶液の流量を12.0ton/hr、排ガス熱交換器入口のスチーム凝縮水の流量を18.4ton/hrに設定した。熱量は、排ガス熱交換器での熱交換によりスチーム凝縮水が気化して発生したスチーム分のエンタルピーを考慮して算出した。
【0071】
[実施例5]
図6に示されるCO
2回収装置を備える排ガス処理システムを使用して排ガスの処理を行った場合にリボイラで必要とされる熱量の計算を実施した。計算では、リッチ溶液、スチーム凝縮水及び排ガスの温度を実施例4と同じように設定した。リッチ溶液の流量を20.6ton/hr、排ガス熱交換器入口のスチーム凝縮水の流量を31.6ton/hrに設定した。熱量は、排ガス熱交換器での熱交換によりスチーム凝縮水が気化して発生したスチーム分のエンタルピーを考慮して算出した。
【0072】
[比較例]
図7に示されるCO
2回収装置を備える排ガス処理システムを使用して排ガスの処理を行った場合にリボイラで必要とされる熱量の計算を実施した。
【0073】
図7には、
図2と同じ構成に同一の符号を付している。
図7のCO
2回収装置70では、CO
2分離部24においてコンデンサ25のガス上流側に熱交換器27が設置される。冷却後のボイラ給水が、CO
2分離部24の熱交換器27及び排ガス熱交換器75を経由してボイラに循環されるように、ボイラ給水配管71が設置される。一方、
図7のCO
2回収装置70は、プロセス凝縮水やリッチ溶液をリボイラから排出されたスチーム凝縮水と熱交換させてから吸収液再生塔に送給する構成になっていない。また、スチーム凝縮水を排ガス熱交換器で加熱してリボイラに循環させる構成になっていない。
【0074】
熱交換器27において、ボイラ給水と吸収液再生塔16から排出されたCO
2との間で熱交換が行われる。これにより、ボイラ給水が加熱され、CO
2が冷却される。ついで、排ガス熱交換器75において、ボイラ給水と排ガスとの間で熱交換が行われる。これにより、ボイラ給水が加熱され、排ガスが冷却される。
【0075】
計算では、ボイラ給水の温度を、熱交換器出口:83℃、排ガス熱交換器出口:174℃、及び、排ガスの温度を、排ガス熱交換器入口:177℃、排ガス熱交換器出口:90℃にそれぞれ設定した。ボイラ給水の流量を31.6ton/hrに設定した。
【0076】
表1に実施例1〜実施例5について、比較例の計算結果を基準としたときのリボイラで必要とされる熱量比を示す。
【0078】
表1に示すように、ボイラからの蒸気をリボイラに供給することにより、リボイラでの必要熱量比が低減した。すなわち、実施例のCO
2回収装置を備える排ガス処理システムは、比較例のCO
2回収装置を備えるシステムに比べて熱効率が上昇することを示された。更に、スチーム凝縮水を排ガス熱交換器で加熱してリボイラに循環させる構成とした実施例1,3〜5では、必要熱量比が大幅に低下しており、熱効率の観点でより有利であると言える。
実施例2は,スチーム凝縮水が排ガス熱交換器で加熱され,ボイラに供給されるので,ボイラの熱効率も向上する。