(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976817
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】熱回収システム及び熱回収方法
(51)【国際特許分類】
F22D 1/18 20060101AFI20160817BHJP
F22D 1/02 20060101ALI20160817BHJP
F22D 11/00 20060101ALI20160817BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20160817BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20160817BHJP
C01B 31/20 20060101ALI20160817BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
F22D1/18
F22D1/02
F22D11/00 C
B01D53/14 220
B01D53/62
C01B31/20 B
B01D53/78
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-534287(P2014-534287)
(86)(22)【出願日】2013年8月23日
(86)【国際出願番号】JP2013072614
(87)【国際公開番号】WO2014038412
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2014年12月25日
(31)【優先権主張番号】13/605199
(32)【優先日】2012年9月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】本城 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】辻内 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 基文
(72)【発明者】
【氏名】ウー ティファニー
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−37180(JP,A)
【文献】
特開平9−152103(JP,A)
【文献】
特開平7−286703(JP,A)
【文献】
特開2011−190696(JP,A)
【文献】
特開平7−293808(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0216540(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0025609(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 1/00 − 11/06
B01D 53/14
B01D 53/62
B01D 53/78
C01B 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中のCO2を吸収液に吸収させる吸収塔と、前記吸収塔においてCO2を吸収した吸収液からCO2を放出させる再生塔とを有し、前記再生塔でCO2を放出した吸収液を前記吸収塔で再使用するCO2回収装置と、
蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮する復水器と、
前記再生塔から放出されたCO2を圧縮する圧縮機と、
前記復水器で生成された凝縮水と、前記圧縮機で圧縮されたCO2とが熱交換する第1熱交換部と、
前記第1熱交換部で加熱された凝縮水と、ボイラから排出され空気予熱器を通過した排ガスとが熱交換する第2熱交換部と、
前記第2熱交換部で加熱された凝縮水がボイラ給水として直接供給される脱気器と、
前記脱気器から導入される前記ボイラ給水を加熱するボイラと、
を備える熱回収システム。
【請求項2】
前記第1熱交換部及び前記第2熱交換部で熱交換する前記凝縮水は、前記復水器で生成される前記凝縮水が全量使用されている請求項1に記載の熱回収システム。
【請求項3】
前記蒸気タービンから抽気された蒸気によって、前記復水器で生成された凝縮水を加熱し、加熱された凝縮水をボイラへ供給する給水ヒータを備えない請求項1に記載の熱回収システム。
【請求項4】
前記第2熱交換部で加熱された凝縮水を加熱し、加熱された凝縮水を前記第2熱交換部へ戻す第3熱交換部と、
前記第2熱交換部で加熱された凝縮水の供給先を、前記ボイラ又は前記第3熱交換部へ切り替える制御部と、
を更に備える請求項1に記載の熱回収システム。
【請求項5】
排ガス中のCO2を吸収液に吸収させる吸収塔と、前記吸収塔においてCO2を吸収した吸収液からCO2を放出させる再生塔とを有し、前記再生塔でCO2を放出した吸収液を前記吸収塔で再使用するCO2回収装置と、
蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮する復水器と、
前記復水器で生成された凝縮水と、前記CO2回収装置の前記再生塔で回収されたCO2とが熱交換する第1熱交換部と、
前記第1熱交換部で加熱された凝縮水と、ボイラから排出された排ガスとが熱交換する第2熱交換部と、
前記第2熱交換部で加熱された凝縮水がボイラ給水として供給されるボイラと、
前記第2熱交換部で加熱された凝縮水を加熱し、加熱された凝縮水を前記第2熱交換部へ戻す第3熱交換部と、
前記第2熱交換部で加熱された凝縮水の供給先を、前記ボイラ又は前記第3熱交換部へ切り替える制御部と、
を備える熱回収システム。
【請求項6】
排ガス中のCO2を吸収液に吸収させる吸収塔と、前記吸収塔においてCO2を吸収した吸収液からCO2を放出させる再生塔とを有し、前記再生塔でCO2を放出した吸収液を前記吸収塔で再使用するCO2回収装置を用いた熱回収方法において、
蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮する第1ステップと、
前記再生塔から放出されたCO2を圧縮する第2ステップと、
生成された凝縮水と、前記第2ステップにおいて圧縮されたCO2とが第1熱交換部で熱交換する第3ステップと、
前記第1熱交換部で加熱された凝縮水と、ボイラから排出され空気予熱器を通過した排ガスとが第2熱交換部で熱交換する第4ステップと、
前記第2熱交換部で加熱された凝縮水をボイラ給水として脱気器へ直接供給する第5ステップと、
前記脱気器から導入される前記ボイラ給水を前記ボイラで加熱する第6ステップと、
を含む熱回収方法。
【請求項7】
前記第2熱交換部で加熱された凝縮水を前記ボイラと異なる第3熱交換部で加熱し、前記第3熱交換部で加熱された凝縮水を前記第2熱交換部で加熱する第7ステップを更に含む請求項6に記載の熱回収方法。
【請求項8】
排ガス中のCO2を吸収液に吸収させる吸収塔と、前記吸収塔においてCO2を吸収した吸収液からCO2を放出させる再生塔とを有し、前記再生塔でCO2を放出した吸収液を前記吸収塔で再使用するCO2回収装置を用いた熱回収方法において、
蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮する第1ステップと、
生成された凝縮水と、前記CO2回収装置の前記再生塔で回収されたCO2とが第1熱交換部で熱交換する第2ステップと、
前記第1熱交換部で加熱された凝縮水と、ボイラから排出された排ガスとが第2熱交換部で熱交換する第3ステップと、
前記第2熱交換部で加熱された凝縮水をボイラ給水としてボイラへ供給する第4ステップと、
前記第2熱交換部で加熱された凝縮水を前記ボイラと異なる第3熱交換部で加熱し、前記第3熱交換部で加熱された凝縮水を前記第2熱交換部で加熱する第5ステップと、
を含む熱回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱回収システム及び熱回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CO
2回収装置は、火力発電所等で化石燃料を燃焼したときに発生する二酸化炭素(CO
2)を回収する。CO
2回収装置は、アミン化合物の水溶液(以下「吸収液」という。)をボイラから排出された燃焼排ガスと接触させ、燃焼排ガスに含まれるCO
2を除去し、大気に放出することなく貯蔵する。
【0003】
CO
2回収装置は、燃焼排ガスと吸収液を接触させる吸収塔と、CO
2を吸収した吸収液を加熱し、CO
2を放出すると共に、吸収液を再生する再生塔とを備える。再生された吸収液は、吸収塔に搬送されて、再使用される。
【0004】
そこで、CO
2回収装置は、CO
2を発生する発電設備と併設されるが、CO
2回収装置と発電設備が統合(インテグレーション)されることによって、全体として効率の良いプラントが成立することが望ましい。
【0005】
特許文献1及び2には、ボイラへ供給するボイラ給水を加熱するため、CO
2回収装置の廃熱を利用する技術が開示されている。また、特許文献3には、ボイラへ供給するボイラ給水を加熱するため、ボイラから排出された排ガスの廃熱を利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2012−37180号公報
【特許文献2】日本国特開2006−213580号公報
【特許文献3】日本国特開2006−308269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CO
2回収装置は、CO
2を吸収した吸収液からCO
2を放出させる際、低圧蒸気を用いて加熱する必要がある。そのため、低圧蒸気タービンの出力が低下し、発電効率が低下する。したがって、低圧蒸気タービンから抽気される蒸気量を可能な限り低減し、低圧タービンの出力低下を抑えることが望ましい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、低圧蒸気タービンから抽気される蒸気量を低減することが可能な熱回収システム及び熱回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様に係る熱回収システムは、排ガス中のCO
2を吸収液に吸収させる吸収塔と、前記吸収塔においてCO
2を吸収した吸収液からCO
2を放出させる再生塔とを有し、前記再生塔でCO
2を放出した吸収液を前記吸収塔で再使用するCO
2回収装置と、蒸気タービンと、前記蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮する復水器と、
前記再生塔から放出されたCO2を圧縮する圧縮機と、前記復水器で生成された凝縮水と、前記
圧縮機で圧縮されたCO
2とが熱交換する第1熱交換部と、前記第1熱交換部で加熱された凝縮水と、ボイラから排出され
空気予熱器を通過した排ガスとが熱交換する第2熱交換部と、前記第2熱交換部で加熱された凝縮水がボイラ給水として
直接供給される
脱気器と、
前記脱気器から導入される前記ボイラ給水を加熱するボイラとを備える。
【0010】
この構成によれば、復水器で生成された凝縮水は、第1熱交換部でCO
2回収装置の再生塔で回収されたCO
2と熱交換し、第2熱交換部でボイラから排出された排ガスと熱交換することから、CO
2回収装置の廃熱及びボイラ排気系統の廃熱を回収できる。
【0011】
本発明の第1態様において、前記第1熱交換部及び前記第2熱交換部で熱交換する前記凝縮水は、前記復水器で生成される前記凝縮水が全量使用されてもよい。
【0012】
この構成によれば、復水器で生成された凝縮水の全量が、第1熱交換部及び第2熱交換部で熱交換されて、ボイラ給水としてボイラに供給される。このとき、凝縮水を加熱しボイラへ供給する給水ヒータが省略される。その結果、給水ヒータのための蒸気タービンからの蒸気の抽出(抽気)をなくすことができ、蒸気消費量を低減してタービン効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の第1態様において、前記蒸気タービンから抽気された蒸気によって、前記復水器で生成された凝縮水を加熱し、加熱された凝縮水をボイラへ供給する給水ヒータを備えなくてもよい。
【0014】
この構成によれば、凝縮水を加熱しボイラへ供給する給水ヒータが省略され、復水器で生成された凝縮水は、給水ヒータで加熱されることなく、第1熱交換部及び第2熱交換部で熱交換されて、ボイラ給水としてボイラに供給される。その結果、給水ヒータによる蒸気タービンからの抽気をなくすことができ、蒸気消費量を低減してタービン効率を向上させることができる。
【0015】
本発明の第1態様において、前記第2熱交換部で加熱された凝縮水を加熱し、加熱された凝縮水を前記第2熱交換部へ戻す第3熱交換部と、前記第2熱交換部で加熱された凝縮水の供給先を、前記ボイラ又は前記第3熱交換部へ切り替える制御部とを更に備えてもよい。
【0016】
この構成によれば、第2熱交換部で加熱された凝縮水は、供給先が切り替わることによって、第3熱交換部にて加熱され、再び第2熱交換部で加熱される。例えば復水器から供給される凝縮水の温度が低い場合や、CO
2回収装置の起動時において第1熱交換部で熱交換可能な熱量が少ない場合に、第2熱交換部と第3熱交換部間で循環路を形成することによって、第2熱交換部の低温化を防ぐことができる。
【0017】
本発明の第2態様に係る熱回収方法は、排ガス中のCO
2を吸収液に吸収させる吸収塔と、前記吸収塔においてCO
2を吸収した吸収液からCO
2を放出させる再生塔とを有し、前記再生塔でCO
2を放出した吸収液を前記吸収塔で再使用するCO
2回収装置を用いた熱回収方法において、蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮する第1ステップと、
前記再生塔から放出されたCO2を圧縮する第2ステップと、生成された凝縮水と、前記
第2ステップにおいて圧縮されたCO
2とが第1熱交換部で熱交換する第
3ステップと、前記第1熱交換部で加熱された凝縮水と、ボイラから排出され
空気予熱器を通過した排ガスとが第2熱交換部で熱交換する第
4ステップと、前記第2熱交換部で加熱された凝縮水をボイラ給水として
脱気器へ
直接供給する第
5ステップと、
前記脱気器から導入される前記ボイラ給水を前記ボイラで加熱する第6ステップとを含む。
【0018】
本発明の第2態様において、前記第2熱交換部で加熱された凝縮水を前記ボイラと異なる第3熱交換部で加熱し、前記第3熱交換部で加熱された凝縮水を前記第2熱交換部で加熱する第5ステップを更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ボイラ給水を加熱する際、CO
2回収装置から回収された廃熱及びボイラ排気系統から回収された廃熱が利用されるため、低圧蒸気タービンから抽気される蒸気量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るボイラ給水系統を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るボイラ排気系統を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るCO
2回収装置を示す概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るボイラ給水系統の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態に係るボイラ給水系統1について、
図1を参照して説明する。
ボイラ給水系統1は、
図1に示すように、復水器3と、プレヒータ4と、ガスヒータ5などからなる。ボイラ給水系統1は、低圧蒸気タービン2から排出された蒸気を復水器3で凝縮し、復水器3で凝縮されて生成された凝縮水を加熱しながらボイラ7に供給する。ボイラ給水系統は、熱回収システムの一例であり、凝縮水を加熱する際、CO
2回収装置11の廃熱や排ガスの廃熱などを回収する。
【0022】
低圧蒸気タービン2は、例えば中圧タービン(図示せず。)から中圧蒸気が供給されて回転駆動する。低圧蒸気タービン2は、回転軸を介して発電機(図示せず。)と接続され、回転駆動力が発電機における発電に用いられる。低圧蒸気タービン2は、生成された低圧蒸気を復水器3へ排出する。
【0023】
復水器3は、低圧蒸気タービン2から供給された低圧蒸気を凝縮する。復水器3で低圧蒸気が凝縮されることによって生成された凝縮水は、プレヒータ4へ供給される。復水器3からプレヒータ4へ供給される凝縮水の温度は、例えば約38℃である。
【0024】
プレヒータ4は、復水器3で生成された凝縮水が復水器3から供給される。また、プレヒータ4は、
図3に示すCO
2回収装置11の再生塔27で回収されたCO
2が供給される。プレヒータ4では、復水器3で生成された凝縮水と、CO
2回収装置11の再生塔27で回収されたCO
2とが熱交換する。凝縮水は、プレヒータ4を通過することによって加熱され、加熱された凝縮水は、ガスヒータ5へ供給される。これにより、プレヒータ4は、CO
2回収装置11の廃熱を回収できる。プレヒータ4からガスヒータ5へ供給される凝縮水の温度は、例えば約75℃である。
【0025】
ガスヒータ5は、プレヒータ4で加熱された凝縮水がプレヒータ4から供給される。また、ガスヒータ5は、ボイラ7から排出された排ガスが供給される。ガスヒータ5では、プレヒータ4で加熱された凝縮水と、ボイラ7から排出された排ガスとが熱交換する。凝縮水は、ガスヒータ5を通過することによって加熱され、加熱された凝縮水は、ボイラ7に接続された脱気器6へ供給される。これにより、ガスヒータ5は、ボイラ排気系統の廃熱を回収できる。ガスヒータ5から脱気器6へ供給される凝縮水の温度は、例えば約137℃である。
【0026】
そして、復水器3で生成された凝縮水は、プレヒータ4とガスヒータ5で加熱された後、脱気器6で脱気されて、ボイラ給水としてボイラ7へ導入される。
【0027】
以上、本実施形態に係るボイラ給水系統1によれば、復水器3で生成された凝縮水は、プレヒータ4でCO
2回収装置11の再生塔27で回収されたCO
2と熱交換し、ガスヒータ5でボイラ7から排出された排ガスと熱交換する。その結果、ボイラ給水系統1は、CO
2回収装置11の廃熱及びボイラ排気系統の廃熱を回収できる。
【0028】
また、上述したボイラ給水系統1では、復水器3からボイラ7に到る経路で分岐されることなく、復水器3で生成された凝縮水の全量が、プレヒータ4及びガスヒータ5で熱交換されて、ボイラ給水としてボイラ7に供給される。
【0029】
従来、復水器3で生成された凝縮水をボイラ7へのボイラ給水として供給する際、
図5に示すように、低圧蒸気タービン2から低圧蒸気を抽気して、低圧給水ヒータ40で凝縮水と低圧蒸気とを熱交換させることによって、凝縮水を加熱していた。本実施形態では、温度条件を調整し、復水器3で生成された凝縮水の全量が、ボイラ給水としてボイラ7に供給されるようにすることで、低圧給水ヒータ40を省略することができる。その結果、低圧給水ヒータ40のための低圧蒸気タービン2からの抽気をなくすことができ、蒸気消費量を低減してタービン効率を向上させることができる。
【0030】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係るボイラ排気系統と、ボイラ排気系統におけるガスヒータ5の設置例について説明する。
ボイラ排気系統は、ボイラ7から排出された排ガスから煤塵を取り除いたり、脱硫処理したりして、排ガスを大気に放出させる。ボイラ排気系統は、例えば空気予熱器8と、ガスヒータ5と、乾式電気集塵機9と、脱硫装置10と、CO
2回収装置11と、スタック12などからなる。
【0031】
空気予熱器8は、外部から大気が供給される。また、空気予熱器8は、ボイラ7から排出された排ガスが供給される。空気予熱器8では、ボイラ7へ導入される大気とボイラ7から排出された排ガスとが熱交換する。空気予熱器8を通過した排ガスは、冷却されて、ガスヒータ5へ供給される。また、空気予熱器8を通過した大気は、加熱されて、ボイラ7へ導入される。
【0032】
ガスヒータ5は、上述したとおり、プレヒータ4で加熱された凝縮水と、ボイラ7から排出された排ガスとが熱交換する。ガスヒータ5を通過した排ガスは、冷却されて、乾式電気集塵機9へ供給される。排ガスは、空気予熱器8とガスヒータ5を通過することによって、乾式電気集塵機9に導入される前に温度が低下し、乾式電気集塵機9における煤塵及びSO
3の除去性能を向上させることができる。
【0033】
乾式電気集塵機9は、冷却された排ガスから煤塵を除去する。煤塵が除去された排ガスは、脱硫装置10へ供給される。脱硫装置10は、排ガスから、主に亜硫酸ガスを吸収除去すると共に、煤塵を除去する。脱硫装置10を通過した排ガスは、CO
2回収装置11へ導入される。
【0034】
そして、CO
2回収装置11は、排ガスからCO
2を除去する。CO
2が除去された排ガスは、スタック12を経て、大気へ放出される。また、排ガスから除去されたCO
2は、圧縮されて、貯留工程へ送出される。
【0035】
以上、説明したとおり、復水器3で生成された凝縮水は、ボイラ排気系統のガスヒータ5でボイラ7から排出された排ガスと熱交換する。なお、上述したボイラ排気系統では、排ガス流れの上流側からガスヒータ5、乾式電気集塵機9の順に配置されるとしたが、本発明はこの例に限定されず、例えば、排ガス流れの上流側から乾式電気集塵機9、ガスヒータ5の順に配置されてもよい。
【0036】
次に、
図3を参照して、本実施形態に係るCO
2回収装置11と、CO
2回収装置11におけるプレヒータ4の設置例について説明する。
CO
2回収装置11では、例えばボイラ7やガスタービン(図示せず。)等の設備から排出されたCO
2を含有する排ガス20が、図示されないブロワによって冷却塔22へと供給されている。冷却塔22へと供給された排ガス20は、冷却塔22で冷却水21によって冷却される。
【0037】
冷却されたCO
2を含有する排ガス20は、排ガスライン23を介して吸収塔24の下部から供給される。吸収塔24において、例えば、アルカノールアミンをベースとするCO
2吸収液25(アミン溶液)が、排ガス20と対向流接触される。これにより排ガス20中のCO
2は、CO
2吸収液25に吸収され、産業設備から排出された排ガス20からCO
2が除去される。CO
2が除去された浄化ガス26は、吸収塔24の塔頂部24aから排出されている。浄化ガス26は、上述したスタック12から大気中へ送出される。
【0038】
吸収塔24でCO
2を吸収したCO
2吸収液25は、塔底部24bに貯留され、ポンプ35により再生塔27へと送り込まれる。
CO
2吸収液25(リッチ溶液)は、再生塔27においてリボイラ28で発生させた蒸気によって加熱されることによってCO
2が放出され、CO
2を吸収可能なCO
2吸収液25(リーン溶液)として再生される。この再生されたCO
2吸収液25は、ポンプ29により熱交換器30、リーン溶液冷却装置31を介して冷却された後、再び吸収塔24に供給され、再利用される。
【0039】
再生塔27においてCO
2吸収液25から放出されたCO
2は、プレヒータ4、冷却器32及び気液分離器33を順に経て、CO
2圧縮装置34へと送気されて圧縮され、貯留工程へと送出される。
【0040】
CO
2回収装置11の再生塔27には、複数段(例えば、2段又は3段等)の再生部が設置される。再生部は、CO
2吸収液25(リッチ溶液)を降下させるノズル36と、ノズル36から降下するCO
2吸収液を蒸気と対向流接触させて加熱する充填層37と、一部CO
2が除去されたCO
2吸収液25(セミリーン溶液)を貯留するトレイ部38とを有する。
【0041】
供給管L
1は、再生部のトレイ部38に貯留されたCO
2吸収液25(セミリーン溶液)を、再生部の充填層37にノズル36を介して供給する。
【0042】
CO
2圧縮装置34は、CO
2を圧縮する圧縮機(図示せず。)と、圧縮されて昇温したCO
2を冷却する冷却器(図示せず。)と、気液分離器(図示せず。)を備える。本実施形態では、CO
2圧縮装置34において、冷却器と並列して、又は冷却器の代わりに本実施形態に係るプレヒータ4が設置されてもよい。このとき、プレヒータ4では、圧縮された高温のCO
2とボイラ給水系統1を流れる凝縮水とが熱交換する。プレヒータ4を通過したCO
2は冷却される。一方、プレヒータ4を通過した凝縮水は加熱される。
【0043】
以上、説明したとおり、復水器3で生成された凝縮水は、再生塔27においてCO
2吸収液25から放出されたCO
2、又は、CO
2圧縮装置34で圧縮されたCO
2と熱交換する。
【0044】
次に、本実施形態に係るボイラ給水系統1の起動方法について説明する。
ボイラ給水系統1には、上述した構成に加えて、
図3に示すように、ガスヒータ5の出口側と入口側に接続される戻り管L
2が設けられ、戻り管L
2に補助加熱器14が設置される。また、ボイラ給水系統1の配管には、制御バルブ15,16が設置される。制御バルブ15は、ガスヒータ5の入口側における戻り管L
2との合流点よりも上流側に設置され、制御バルブ16は、ガスヒータ5の出口側における戻り管L
2との合流点よりも下流側に設置される。
【0045】
復水器3から供給される凝縮水の温度が低い場合や、CO
2回収装置11の起動時においてプレヒータ4で熱交換可能な熱量が少ない場合、ガスヒータ5が低温化されすぎてしまう。
【0046】
そこで、プレヒータ4出口部の凝縮水の温度を検出して、検出された温度が所定の温度よりも低い場合、制御バルブ15,16の開度を絞る方向に調整して、凝縮水をガスヒータ5から補助加熱器14へ供給する。補助加熱器14には蒸気が供給され、供給された蒸気とガスヒータ5で加熱された凝縮水とが熱交換する。補助加熱器14を通過することによって、凝縮水が更に加熱され、その後再びガスヒータ5によって加熱される。
【0047】
凝縮水がガスヒータ5と補助加熱器14の間で循環することによって、ガスヒータ5へ供給される凝縮水の温度が短時間で上昇する。これにより、ガスヒータ5における熱交換器内の例えばフィンチューブの低温化を防止でき、フィンチューブの表面に凝縮した液滴硫酸による腐食を抑制できる。
【0048】
その後、プレヒータ4出口部の凝縮水の温度が所定の温度よりも高くなった場合、制御バルブ15,16の開度を開く方向に調整して、補助加熱器14への凝縮水の供給量を低減する。これにより、通常運転動作に移行し、復水器3で生成された凝縮水の全量が、プレヒータ4及びガスヒータ5で熱交換された後、ボイラ給水としてボイラ7に供給される。
【0049】
以上、本実施形態では、復水器3で生成された凝縮水の全量が、プレヒータ4及びガスヒータ5で熱交換されて、ボイラ給水としてボイラ7に供給される構成について説明した。この構成によれば、上述したとおり、従来の低圧給水ヒータ40(
図5参照)の代わりにプレヒータ4及びガスヒータ5で凝縮水を加熱できる。
【0050】
特に、CO
2回収装置11とボイラを含む発電設備が併設されるプラントを新設する場合、低圧給水ヒータ40が不要となったり、低圧蒸気タービン2からの抽気に必要な設備が不要となったりするため、プラントの設備構成を簡素化し、かつ、初期費用を低減できる。
【0051】
なお、本発明は、低圧給水ヒータ40が設置されない場合に限定されない。例えば、
図4に示すように、既存の発電設備における低圧給水ヒータ40を有するボイラ給水系統に対して、並列して上述した本実施形態に係るボイラ給水系統1を増設してもよい。この場合でも、
図5に示した従来のボイラ給水系統に比べて、低圧蒸気タービン2から低圧給水ヒータ40へ供給する抽気蒸気を低減でき、タービン効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ボイラ給水系統
2 低圧蒸気タービン
3 復水器
4 プレヒータ
5 ガスヒータ
6 脱気器
7 ボイラ
8 空気予熱器
9 乾式電気集塵機
10 脱硫装置
11 CO
2回収装置
12 スタック
14 補助加熱器
15,16 制御バルブ
20 排ガス
24 吸収塔
27 再生塔
28 リボイラ
34 CO
2圧縮装置
35 ポンプ
40 低圧給水ヒータ