(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976819
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】相対位相不連続を低減するための送信電力の調節
(51)【国際特許分類】
H04W 52/42 20090101AFI20160817BHJP
H04W 52/08 20090101ALI20160817BHJP
H04W 52/18 20090101ALI20160817BHJP
【FI】
H04W52/42
H04W52/08
H04W52/18
【請求項の数】21
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-535213(P2014-535213)
(86)(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公表番号】特表2014-534693(P2014-534693A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】IB2012055526
(87)【国際公開番号】WO2013054294
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年9月4日
(31)【優先権主張番号】61/545,736
(32)【優先日】2011年10月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/645,632
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】パーク, チェスター
(72)【発明者】
【氏名】バラチャンドラン, クマール
【審査官】
伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】
Ericsson, ST-Ericsson,UE requirements on relative phase discontinuity,3GPP TSG-RAN WG4♯60bis,3GPP,2011年10月 3日,R4-115067
【文献】
Ericsson, ST-Ericsson,Impact of relative phase discontinuity on eNB performance,3GPP TSG-RAN WG4♯60bis,3GPP,2011年10月 3日,R4-115063
【文献】
Ericsson, ST-Ericsson,Model of relative phase discontinuity,3GPP TSG-RAN WG4♯60bis,3GPP,2011年10月 3日,R4-115061
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービングノードであるNodeB(28)において、サウンディング参照信号(SRS)と物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)との間の相対位相不連続(RPD)を低減するべく複数の送信器チェーンを有するユーザ端末(UE)(31)の送信電力を調節するための方法であって、
前記UEから前記UEのRP特性(32)を受信するステップ(11)と、
前記RP特性に基づいて、前記RPDを低減するように前記UEのためのSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択するステップ(12)と、
前記SRSまたはPUSCH送信電力レベルを、前記NodeBによって選択されたレベルにセットするように前記UEに指示するステップ(13)とを含む方法。
【請求項2】
前記NodeBが、前記UEの前記RP特性を格納するステップと、
前記UEから新しいRP特性情報を受信したとき、前記NodeBが前記格納されたRP特性を更新するステップとをさらに含み、
前記UEのための前記SRSまたはPUSCH送信電力レベルは、前記更新済みの格納されたRP特性に基づいて選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記UEのためのSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択するステップが、前記SRSまたはPUSCH送信電力を同じ動作モードに属するものにさせるSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記UEのためのSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択するステップが、前記UEの動作モードを切り換えて、前記SRSと前記PUSCHとの間の前記RPDを低減させるSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記UEのRP特性を受信するステップが、
前記UEにおける複数の送信器チェーンのスイッチングポイントの測定値、
前記スイッチングポイントの電力レベルの測定値、および
UEの能力情報
の中の少なくとも1つを受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記UEの能力情報が、
前記UEの電力増幅器(PA)のタイプを示す情報、
前記UEのスイッチングポイントの電力レベルの測定値、および
所定のレベルを超えるRPを有するスイッチングポイントの数を示す情報
の中の少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記指示するステップが、前記SRSの帯域幅および電力オフセットを変えることによって、前記SRS送信電力を前記PUSCH送信電力に近づけるように動かすように前記UEに指示することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記SRSの前記電力オフセットを変えることは多重化利得を低下させ、前記SRSの前記帯域幅および前記電力オフセットを変えるステップは、前記SRSの前記電力オフセットを変化させるときにRPDの改善と多重化利得の低下とのトレードオフを行うことを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記指示するステップは、前記PUSCH送信電力を前記SRS送信電力に近づけるように調節するように前記UEに指示する送信電力制御(TPC)コマンドを前記サービングノードであるNodeBから前記UEに対して送信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記PUSCH送信電力を変えることは電力制御の精度を低下させ、前記TPCコマンドを前記サービングノードであるNodeBから前記UEに対して送信するステップは、前記PUSCH送信電力を調節するときにRPD改善と電力制御精度の低下との間のトレードオフに基づいて前記TPCコマンドをセットすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
無線通信ネットワークにおいて、サウンディング参照信号(SRS)と物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)との間の相対位相不連続(RPD)を低減するべく複数の送信器チェーンを有するユーザ端末(UE)(31)の送信電力を調節するためのNodeB(28)であって、
前記UEから前記UEのRP特性(32)を受信するべく構成された受信器(29)と、
前記RP特性(32)に基づいて、前記RPDを低減するように前記UEのためのSRSまたはPUSCH送信電力レベル(39)を選択するべく構成された送信電力決定ユニット(34)と、
前記SRSまたはPUSCH送信電力レベルを、前記NodeBによって選択されたレベルにセットするように前記UE(31)に指示を送信するべく構成された送信器(38)とを含む、NodeB。
【請求項12】
前記送信電力決定ユニットは、前記SRSまたはPUSCH送信電力を同じ動作モードに属するものにさせるSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択することによって、前記UEのための前記SRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択するべく構成されている、請求項11に記載のNodeB。
【請求項13】
前記送信電力決定ユニットは、前記UEの動作モードを切り換えて、前記SRSと前記PUSCHとの間の前記RPDを低減させるSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択することによって、前記UEのための前記SRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択するべく構成されている、請求項11に記載のNodeB。
【請求項14】
前記UEのRP特性が、
前記UEにおける複数の送信器チェーンのスイッチングポイントの測定値、
前記スイッチングポイントの電力レベルの測定値、および
UEの能力情報
の中の少なくとも1つを含む、請求項11に記載のNodeB。
【請求項15】
前記UEの能力情報が、
前記UEの電力増幅器(PA)のタイプを示す情報、
前記UEのスイッチングポイントの電力レベルの測定値、および
所定のレベルを超えるRPを有するスイッチングポイントの数を示す情報
の中の少なくとも1つを含む、請求項14に記載のNodeB。
【請求項16】
前記UEへの前記指示が、前記SRSの帯域幅および電力オフセットを変えることによって、前記SRS送信電力を前記PUSCH送信電力に近づけるように調節するように前記UEに指示するものである、請求項11に記載のNodeB。
【請求項17】
前記SRSの前記電力オフセットを変えることは多重化利得を低下させ、前記送信電力決定ユニットは、前記SRSの前記電力オフセットを調節するときにRPDの改善と多重化利得の低下とのトレードオフを行うべく構成されている、請求項16に記載のNodeB。
【請求項18】
前記UEへの前記指示が、前記PUSCH送信電力を前記SRS送信電力に近づけるように調節するように前記UEに指示するものである、請求項11に記載のNodeB。
【請求項19】
前記PUSCH送信電力を変えることは電力制御の精度を低下させ、前記送信電力決定ユニットが、前記PUSCH送信電力を調節するときにRPD改善と電力制御精度の低下との間のトレードオフを行うべく構成されている、請求項18に記載のNodeB。
【請求項20】
第1無線通信ノード(28)において、第2無線通信ノード(31)における無線トランシーバによる送信の第1位相と第2位相との間の相対位相不連続(RPD)を低減するべく前記無線トランシーバの送信電力レベルを調節するように前記第2無線通信ノードに指示するための方法であって、
前記送信の第1位相の間の前記送信電力レベルは、前記送信の第2位相の間の前記送信電力レベルと異なり、
前記方法は、
前記第2無線通信ノード(31)から、前記第2無線通信ノードにおける前記無線トランシーバの相対位相(RP)特性(32)を受信するステップ(11)と、
前記RP特性に基づいて、前記送信の第1位相と第2位相との間のRPDを低減するように、前記送信の2つの位相の選択された一方のために前記第2無線通信ノード(31)における前記無線トランシーバのための送信電力レベルを前記第1無線通信ノード(28)によって選択するステップ(12)と、
前記送信の選択された位相の間に、前記無線トランシーバの送信電力レベルを前記第1無線通信ノードによって選択されたレベルにセットするように前記第2無線通信ノードに指示するステップ(13)とを含む、方法。
【請求項21】
前記第1および第2無線通信ノードは、ロング・ターム・エボリューション(LTE)無線アクセスネットワークにおいて動作し、
前記第1無線通信ノードはNodeBであり、
前記第2無線通信ノードはユーザ端末(UE)であり、
前記送信の第1位相は、サウンディング参照信号(SRS)の前記UEによる送信であり、
前記送信の第2位相は、物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)上での前記UEによる送信である、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照:
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)の下で、2011年10月11日に出願された米国仮出願第61/545736号に基づく優先権の利益を主張するものであり、当該仮出願の開示内容の全体は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0002】
本発明は、全般的に無線通信システムに関する。より具体的には、限定を意図するものではないが、本発明の特定の実施形態は、サウンディング参照信号(SRS)と物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)上の送信との間の相対位相不連続(RPD)を低減するべくユーザ端末(UE)の送信電力を調節するための方法およびNodeBに関する。
【背景技術】
【0003】
マルチ入力・マルチ出力(MIMO)は、ロング・ターム・エボリューション(LTE)や高速パケットアクセス(HSPA)等の多くの無線通信技術のための高速無線通信用エア・インタフェースの重要な要素である。MIMOは、チャネルにおけるダイバーシティを利用し、レイヤとして知られる複数のストリームの同時送信を可能にすることによって多重化利得を提供することができる。送信アンテナ、受信アンテナ、およびレイヤの数をそれぞれNT、NR、およびRによって示すと、Rは、NTおよびNRの最小値より大きいものとして範囲が定められる。MIMOの可能な実施形態の1つは、プリコーダは、多くの場合レイヤシグナルベクトル(R×1)にプリコーディングマトリクス(NT×R)を左乗算したものとして数学的に表現されるプリコーダを使用する。プリコーディングマトリクスは、コードブック、すなわち予め定められたマトリクスの組から選択される。各プリコーディングマトリクスは、ランクインジケータ(RI)およびプリコーディングマトリクスインジケータ(PMI)によってインデックスを付される。プリコーディングマトリクスのr番目の列ベクトルは、r番目のレイヤのアンテナスプレディング重みを表す。プリコーディングマトリクスは、通常は線形独立の列からなり、したがってRは、コードブックのランクと称される。この種のプリコーダの目的の1つは、受信される信号の電力を高め、またある程度レイヤ間干渉を低減させて各レイヤの信号対干渉および雑音比(SINR)を改善するように、プリコーディングマトリクスをチャネル状態情報(CSI)にマッチングさせることである。その結果として、プリコーダ選択には、送信器がチャネル特性を認識していることが必要となり、一般的には、CSIの精度が高くなるほど、プリコーダのマッチングも良好になる。
【0004】
3GPP LTEアップリンク(UL)の場合には、受信器(NodeB)がプリコーダ選択を行うので、チャネル情報を送信器に送り返す必要はない。(本開示全体にわたって、「プリコーダ選択」は、ランク選択のみならず、プリコーディングマトリクス選択も含む。)その代わりに、受信器がチャネル情報を取得する必要があるが、これは既知の信号、LTE ULの場合では、復調用参照信号(DM−RS)およびサウンディング参照信号(SRS)を送信することによって通常は容易化することができる。DM−RSおよびSRSの両方は、周波数領域において定義され、Zadoff−Chu系列から導出される。しかし、DM−RSは、SRSがプリコードされていない間にプリコードされるので、DM−RSから取得したチャネル情報は、Rレイヤが経験する等価なチャネルとなり、NTアンテナが経験する物理チャネルではない。数学的には、NR×NTを物理チャネルマトリクスとすると、NT×RプリコーディングマトリクスとNT×R等価チャネルは、それぞれH、W、およびEで表され、したがって、以下のようになる。
【数1】
式中、DはN
T×N
T対角行列であって、対角要素は送信器チェーンによって導入された位相シフトを表す。後述するように、位相シフトは一様ではなく、また一定である必要はない。詳細には、i番目の対角要素はd
i=exp(jφ
i)で与えられる。次の項で示すように、送信器チェーン間の相対位相が、送信のある位相から他の位相に変化するとき、例えばSRSから物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)に変化するとき、その位相シフトによって顕著な性能の低下が生じ得る。
【0005】
上述の表記法を用いて、E
PUSCH、E
DMRS、およびE
SRSで示される、PUSCH、DM−RS、およびSRSの等価チャネルは、次のように表される。
【数2】
【0006】
ここでは、PUSCH、DM−RS、およびSRSの中でチャネルの変動がなく、Dは、相対位相変動のみが問題になるという事実のため、一般性を失うことなくPUSCHおよびDM−RSのための識別情報マトリクスにセットされることが仮定されている。PUSCHおよびDM−RSが、同じチャネルを経験することも仮定されていることに留意されたい。また、式(2)のH
SRSはSRSから直接得られ、H
SRSに基づいて、仮定されたプリコーダWの関数としての等価チャネルE
SRSを、E
SRS=H
SRSWとして求めることができることにも留意されたい。
【0007】
プリコーダ選択はSRSに基づいていることが好ましい。チャネル、すなわち式(2)における物理チャネルHDについての完全な知識を用いずに、より容易に選択ができるからである。SRSに基づいて推定された物理チャネルに基づいて、受信器によって最良の送信モードが選択され、送信器に送り返される。送信モード選択の基準の1つは、スループットを最大化することである。例えば、各プリコーダに対する、すなわちランクおよびプリコーダマトリクスの各選択に対する効果的なSNRが計算され、適切なスループットが計算され、かつスループットを最大化するプリコーダが選択される。したがって、プリコーダ選択が、測定時間(SRS)と実際のデータ送信時間(PUSCH)との間でのアンテナ間不均衡の変動の影響を受けるということが容易に理解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、送信電力を調節するための既存の処理から生ずる問題を取り扱うものである。例えば、明確化のため2つの送信アンテナを備えたユーザ端末(UE)を考える。(但し、以下の議論は、3つ以上の送信アンテナを備えたUEにも同様に適用できる。)相対位相(RP)は、2つの送信器チェーンの間の位相差として定義される。したがって、送信器ブランチ#1、#2の絶対位相をそれぞれφ
1(t)およびφ
2(t)と表すと、RPは、δφ(t)=φ
1(t)−φ
2(t)として定義される。相対位相不連続(RPD)は、PUSCHにおけるデータ送信位相とSRS送信位相との間のRPの時間差として定義される。したがって、RPDは、2つの時刻t
1とt
2の間のRPの差、すなわちδφ(t
1)−δφ(t
2)として定義される。
【0009】
ある送信器ブランチのRPDは、一般的には、電力依存期間と時間依存期間とを含む。電力依存期間は送信電力に左右され、時間依存期間は経時的に変動する。モデル化という観点からは、電力依存期間は現在の送信電力の関数として与えられ、時間依存期間は追加のランダム過程として与えられ得る。
【0010】
電力依存RPDは主に、そのスイッチングによって各送信器ブランチが利得/バイアス状態を切り換える、電力/構成モード(すなわち動作モード)スイッチングから生じる。電力依存RPDの起源としての可能性のあるものは以下のように要約することができる。
【0011】
・電力モードスイッチング:多くの最新の電力増幅器(PA)は、電力効率を改善するために、送信電力に応じて電力モードを切り換える。追加の設計上の工夫(すなわち回路の追加)をしていない場合、2つの送信器ブランチは、電力モードスイッチングに異なる形で応答し、それによりスイッチングポイントの前後でのRPDを生ずる傾向がある。
・構成モードスイッチング:電力消費を低減するために、送信電力に応じて、高周波/アナログベースバンド(RF/ABB)は、利得スイッチング、適応的バイアス、信号パススイッチング等によって特徴付けられる構成モード同士を切り換える。追加の設計上の工夫(すなわち回路の追加)をしていない場合、2つの送信器ブランチは、スイッチングポイントの前後で異なる位相変動を経験しやすい。したがって、構成モードスイッチングの場合、送信器は無視できないRPDを経験する傾向がある。
・AM−PM歪み:PAは、一般的には電力効率を最大化するために圧縮ポイント付近で動作されるため、PAは、追加の回路(例えば、デジタルプレディストーション)がない場合、無視できないAM−PM歪みを経験する可能性がある。
【0012】
プリコーダ選択について言えば、関心の対象となるRPDは、測定値と適切なプリコーディングとの間のRPDである。SRSが、プリコーダ選択のための自然な選択であることを想起すると、関心の対象となるRPDは、プリコーダ選択のために用いられるSRS送信と、プリコーダに適用されるその後のPUSCH送信との間のRPDとみなすことができる。そのRPDは、無線チャネルがNodeBに完全に知られている場合でさえ、最適でないプリコーダ選択をもたらす可能性がある。これにより、無視できない性能の低下がもたらされる可能性がある。プリコーダ選択は、一般的には送信器チェーンの位相情報に依拠しているからである。
【0013】
したがって、関心の対象となる時間フレームは、いくつかの(または数十の)サブフレームであることになる。その時間フレームは、処理時間(測定およびプリコーダ選択)およびSRSの周期性に応じて決まる。例えば、処理時間が4ミリ秒で、SRS送信の時間が10ミリ秒である場合、時間フレームとして、最小8ミリ秒、最大18ミリ秒が想定されるべきである。そのような時間フレームを考えると、電力依存期間は、RPDに対して時間依存期間より大きい影響を与え、したがって本開示は、電力依存期間をどのように取り扱うかに焦点を当てている。
【0014】
現在の送信電力をP(t)で表すと、絶対位相は次のように与えられる。
【数3】
式中、f
1(x)および=f
2(x)は、2つの送信器ブランチの絶対位相の電力依存度を表す。RPの電力依存度を、f
1,2(x)=f
1(x)−f
2(x)と定義すると、対応するRPは次のように与えられる。
【数4】
【0015】
つまり、RPは、現在の送信電力の関数として与えられる。同様に、t
1とt
2の間のRPDは、次のように与えられる。
【数5】
【0016】
したがって、RPDは、2つの時刻の送信電力の関数として与えられる。つまり、RPDを引き起こすのは送信電力の変化である。したがって、送信電力が変化しないとき、すなわちP(t
1)=P(t
2)の場合にはRPDは生じない。さらに、一定のレベルの送信電力の変化がある場合、生ずるRPDは、RPの電力依存度によって影響されることになる。当然ながら、RPが送信電力から独立している場合、すなわちf
1,2(P)=C(定数)の場合、RPDは生じない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示の特定の実施形態は、RPDを低減する送信電力調節を提供する。一実施例は、SRSとPUSCHの間の送信電力の調節であり、これによりプリコーダ選択の最適性を維持するのを助ける。
【0018】
ここに開示する送信電力調節は、2つの部分からなる。すなわち、SRS送信電力の調節とPUSCH送信電力の調節である。まず、SRS送信(すなわち関連するパラメータ)は、RPDを最小化するように構成される。次に、PUSCH送信電力は、スケジューリングおよび/または電力制御を調節することによってRPDを最小化するべくオフセットされる。さらに、開示される送信電力調節は、UEの測定値またはUEの能力(UE特有のもの)に基づいていてよい。UEは、RPDの最小化を助けるために、関連するUE情報(すなわちRP特性)をeNodeBにフィードバックしてもよい。
【0019】
一実施形態では、本開示は、サービングノードであるNodeBにおいて、SRSとPUSCHとの間のRPDを低減するべく複数の送信器チェーンを有するUEの送信電力を調節するための方法に関する。前記方法は、前記UEから前記UEのRP特性を受信するステップと、前記RP特性に基づいて、前記RPDを低減するように前記UEのためのSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択するステップと、前記SRSまたはPUSCH送信電力レベルを、前記NodeBによって選択されたレベルにセットするように前記UEに指示するステップとを含む。
【0020】
別の実施形態では、本開示は、無線通信ネットワークにおいて、SRSとPUSCHとの間のRPDを低減するべく複数の送信器チェーンを有するUEの送信電力を調節するためのNodeBに関する。前記NodeBは、前記UEから前記UEのRP特性を受信するべく構成された受信器と、前記RP特性に基づいて、前記RPDを低減するように前記UEのためのSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択するべく構成された送信電力決定ユニットと、前記SRSまたはPUSCH送信電力レベルを、前記NodeBによって選択されたレベルにセットするように前記UEに指示を送信するべく構成された送信器とを含む。
【0021】
本開示は、より一般的に、第2ノードにある無線受信器が送信の2つの位相の間に異なる電力レベルで送信し、第1ノードが前記第2ノードに対して前記第1ノードで選択されたレベルにその送信電力をセットするように指示することが行われる、あらゆる2つの無線通信ノードに対しても適用される。したがって、この実施形態において、本開示は、第1無線通信ノードにおいて、第2無線通信ノードにおける無線トランシーバによる送信の第1位相と第2位相との間のRPDを低減するべく前記無線トランシーバの送信電力レベルを調節するように前記第2無線通信ノードに指示するための方法であって、前記送信の第1位相の間の前記送信電力レベルは、前記送信の第2位相の間の前記送信電力レベルと異なることを特徴とする方法に関する。前記方法は、前記第2無線通信ノードから、前記第2無線通信ノードにおける前記無線トランシーバのRP特性を受信するステップと、前記RP特性に基づいて、前記送信の第1位相と第2位相との間のRPDを低減するように、前記送信の2つの位相の選択された一方のために前記第2無線通信ノードにおける前記無線トランシーバのための送信電力レベルを前記第1無線通信ノードによって選択するステップと、前記送信の選択された位相の間に、前記無線トランシーバの送信電力レベルを前記第1無線通信ノードによって選択されたレベルにセットするように前記第2無線通信ノードに指示するステップとを含む。
【0022】
以下の項では、図面に示された例示的な実施形態を参照して、本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】UEの送信電力(P)の関数としての相対位相(RP)のグラフであり、相対位相不連続(RPD)を示す図である。
【
図2】UEのPの関数としてのRPのグラフであり、PUSCH送信電力の分布を示す図である。
【
図3】RP連続を達成するべくUEの送信電力を調節するための方法全体の例示的な実施形態を示す流れ図である。
【
図4】SRS送信電力がPUSCH送信電力に近づくように動かされる方法の例示的な実施形態の流れ図である。
【
図5】UEのPの関数としてのRPのグラフであり、PUSCH送信電力をSRS送信電力に近づけるように調節するための手順を示す図である。
【
図6】本開示の例示的な実施形態におけるNodeBの、単純化したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の詳細な説明では、本開示を完全に理解できるようにするため、多数の特定の細部について記載している。しかし、ここに開示された発明がこれらの特定の細部のない形態でも実施できることは、当業者に理解されよう。他の例では、本開示が内容不明確にならないようにするため、よく知られた方法、手順、構成要素、および回路は記載しなかった。さらに、本開示は、主として3GPP LTE携帯電話ネットワークの文脈のなかで説明されているが、これは本発明の範囲を上述のシステムのみに限定するものと見なすべきではない。WCDMA(登録商標)、WiMax、UMB、GSM(登録商標)、およびWLANを含む他の無線システムも、本開示のなかに提示された技術思想の利用から利益を得ることができる。
【0025】
NodeBおよびUE等の用語は、非限定的なものと解すべきであり、これらの2つの間の一定の階層的な関係を含意していない。すなわち、一般的に「NodeB」は装置1、[UE」は装置2と考えることができ、これらの2つの装置は何らかの無線チャネルを介して相互に通信するものである。
【0026】
本明細書全体で、「一実施形態」または「ある実施形態」は、その実施形態に関連して記載されたある特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含められていることを意味する。したがって、本明細書中の各所にある「一実施形態において」または「ある実施形態では」または「一実施形態によれば」等の言い回し(または類似の意味合いをもつ言い回し)は、必ずしも全てが同一の実施形態を指すものではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方式で組み合わせられてもよい。
【0027】
図1は、UEの送信電力(P)の関数としての相対位相(RP)のグラフであり、相対位相不連続(RPD)を示す。RPDは、送信電力がいくつかの送信電力レベル(以下、スイッチングポイントと称する)の前後で急激に変化するときに発生する。
図1では、SRS送信電力とPUSCH送信電力とが、スイッチングポイントを挟んで反対側にあり、それによって無視できないRPDが導入されている。
【0028】
図2は、UEのPの関数としてのRPのグラフであり、PUSCH送信電力の分布を示す。SRS送信電力は、極端に高速で移動するUEの場合を除いて、関心の対象となる時間フレーム(数サブフレーム〜数十サブフレームまで)の間には著しく変動しないことに留意されたい。一方、PUSCH送信電力は、例えばスケジューラによって決定されるリソース割り当てのために、同じ時間フレームの間により動的に変動する。したがって、PUSCH送信電力は、平均電力の周りに分布する。
【0029】
図3は、RP連続を達成するべくUEの送信電力を調節するための方法全体の例示的な実施形態を示す流れ図である。ステップ11において、サービングノードであるNodeBが、UEからそのUEのRP特性を受信する。RP特性は、UEにおける複数の送信器ブランチのスイッチングポイント(スイッチングポイントは、UEの送信器(例えば電力増幅器)がある一定の閾値より大きいRPを経験する送信電力レベルとして定義される)の測定値(すなわち、電力レベルであるとともにRPレベルでもある)、あるいはスイッチングポイントの電力レベルであり得る。代替的または追加的に、RP特性はUEの能力であってよく、UEの能力としては、例えばUEの電力増幅器(PA)のタイプ、またはそのRPが所定のレベルを超えるスイッチングポイントの数を示す情報等がある。NodeBは、UEのRP特性を格納し、新たなRP特性情報をUEから受信したときに格納されたRP特性を更新する。
【0030】
ステップ12において、NodeBは、RP特性に基づいて、UEの動作モードを切り換えるように、または少なくともRPDを低減させるように、そのUEのためのSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択する。これは、格納された更新済みのRP特性に基づいて行われてもよい。NodeBは、SRSまたはPUSCH送信電力を同じ動作モードに属するものにさせるSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択してもよい。あるいは、NodeBは、UEの動作モードを切り換えて、SRSとPUSCHとの間の相対位相不連続(RPD)を低減させるようなSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択してもよい。ステップ13では、NodeBは、SRSまたはPUSCH送信電力レベルを、NodeBによって選択されたレベルにセットするようにUEに指示する。これは、例えば、サービングノードであるNodeBからそのUEに送信電力制御(TPC)コマンドを送信することによって行われてもよい。
【0031】
図4は、SRS送信電力がPUSCH送信電力に近づくように動かされる方法の例示的な実施形態の流れ図である。3GPP TS 36.213,”3GPP;Technical specification group radio access network;E−UTRA;Physical layer procedure”において指定された電力制御手順によれば、SRS帯域幅およびSRS電力オフセットを変化させることによってSRS送信電力を動かすことが可能である。これらのパラメータは、元々は異なる目的で導入されたものなので、そのパラメータの変化は、システムの性能低下を避けられるように制限されるべきである。例えば、SRS電力オフセットは、干渉を低減させて多重化利得を高めるために、負の数値にセットされるのが一般的である。したがって、SRS電力オフセットは、RPDと多重化利得の間のトレードオフに基づいてセットされるべきである。
【0032】
ステップ21では、UEは、干渉を低減させて多重化利得を高めるべく、PUSCH送信レベルからオフセットされたレベルにセットされたSRS送信電力で当初は作動される。ステップ22では、RPDが高すぎるか否かが判定される。高すぎると判定されなかった場合には、何も変更されず、システムはRPDレベルのモニタリングを継続する。RPDレベルが高すぎると判定された場合には、前記方法はステップ23に移行して、NodeBが、SRS送信電力をPUSCH送信電力に近づけるように漸進的に調節するようにUEに対して指示する。ステップ24では、NodeBが、生じたRPDの低下による性能の向上を決定する。ステップ25では、NodeBが、生じた多重化利得の低下による性能の低下を決定する。ステップ26では、正味の性能利得の増加があるか否かが判定される。増加がある場合は、前記方法はステップ23に戻り、NodeBが再度、SRS送信電力をPUSCH送信電力に近づけるように漸進的に調節するようにUEに対して指示する。このプロセスは、SRS送信電力が正味の性能利得の増加が最大化される最適レベルに到達するまで、SRS送信電力をPUSCH送信電力に近づけるように継続して漸進的に動かす。ステップ26において、SRS送信電力の漸進式の調節が正味の性能利得の増加をもたらさない場合(すなわち、性能利得増に変化がないか、低下するかのいずれかの場合)、前記方法はステップ27に移行して、NodeBが、SRS送信電力をPUSCH送信電力から離れるように漸進的に調節するようにUEに対して指示する。このことによって、正味性能利得の増加の最大化が確実になされる。前記方法は、次に28で停止する。
【0033】
図5は、UEのPの関数としてのRPのグラフであり、PUSCH送信電力をSRS送信電力に近づけるように調節するための手順を示す。3GPP TS 36.213において指定されているように、PUSCH送信電力は、送信電力制御(TPC)コマンドをUEに送信することによって調節することができる。TPCコマンドは、性能の低下を避けることができるようにセットされるべきである。同様に、TPCコマンドは、RPDと電力制御の精度との間のトレードオフに基づいてセットされるべきである。PUSCH送信電力調節のSRS送信電力調節より有利な点の1つは、その調節が、原理上、サブフレーム単位でRPDを低下させることが可能なことである。(SRS帯域幅とSRS電力オフセットは、半静的に構成されているに過ぎないので、RPDを動的に低下させることができないことに留意されたい。)
図5では、SRS送信電力がPUSCH送信電力より低くなっているが、これは常にこのようであるとは限らない。例えばPUSCH帯域幅がSRS帯域幅および/またはSRS電力オフセットより広いときには、SRS電力はPUSCH電力より高くてもよいからである。
【0034】
SRSまたはPUSCH送信電力は、SRS多重化利得またはスケジューリング/リンク適応利得を犠牲にして調節される必要がある場合もある。しかし、わずかな送信電力の変化であっても、RPDを大きく低下させるのを助け得ることに留意しなければならない。RPはスイッチングポイントの周辺で急激に変化するので、スイッチングポイントについての知識が、部分的または大まかであってもある程度あれば、それがeNBにフィードバックされる場合には、NodeBが、(SRS多重化利得またはスケジューリング/リンク適応のいずれも犠牲にすることなく)SRSまたはPUSCH送信電力をわずかに調節することによってRPDを低下させるのを助けることができる。
【0035】
開示された送信電力調節には、NodeBがUEの送信電力とRPDの間の関係、少なくともスイッチングポイントの送信電力レベルを知っている必要がある。(いくつかの方式では、スイッチングポイントの電力レベルを知っていれば十分である。たとえスイッチングポイントのRPレベルを知らなくても、SRSまたはPUSCH電力レベルを調節し、RPDを低減させることは可能である。)RPDが異なるUEの間で異なっている(すなわち異なるデバイス間で差がある)ので、NodeBは、各UEのRPD情報を記録するものであり得る。したがって、各UEは、異なる送信電力レベルについてのそのRPD、または少なくともスイッチングポイントの電力レベルを測定し、その情報をNodeBにフィードバックするものであり得る。RPDの測定は、NodeBとの連続した通信と通信の間に周期的に行われてよく、無線キャリブレーション手順に含められてもよい。その測定結果は、UE内に格納され周期的に更新され得る。あるいは、UEは、独立したキャリブレーション手順を行うことなくRPDまたは少なくともスイッチングポイントの電力レベルを測定し、(おそらく測定値の精度低下という犠牲を払って)単に実際の通信期間に依拠してもよい。
【0036】
製造時に既に決定されているUEの能力情報のシグナリングに基づいて送信電力を調節することがより実際的な場合もある。したがって、この場合はUE側でのいかなる測定も必要としない。UEの能力には、電力増幅器(PA)のタイプ、例えば、スイッチモードPAか、エンベロープトラッキングPAか等が含まれる。UEが、(電力モードを切り換える)スイッチモードPAを備えている場合には、NodeBは、SRSまたはPUSCH送信電力を調節してRPDを低減させる。UEが、(スイッチモードPAとは異なり、電力モードの切り換えを行わない)エンベロープトラッキングPAを備えている場合には、NodeBは、SRSまたはPUSCH送信電力を調節しない。
【0037】
UEの能力には、スイッチングポイントの電力レベル、または単に、スイッチングポイントの数も含まれる。NodeBは、スイッチングポイントの数を、スイッチングポイントの電力レベルに(および、場合によっては、スイッチングポイントのRPレベルに)どのようにマッピングするかについての情報を有していてもよい。NodeBは、特にUEからの測定値をNodeBで利用できない場合には、スイッチングポイントの電力レベルが実測値より精度が低いものであったとしても、この情報を直接用いてRPDを低減できるものであってよい。
【0038】
加えて、UEの能力には、そのRP段差(すなわち、2つの電力モード間のRPの差)が一定の予め定められたレベルを超えているスイッチングポイントの数が含まれる。例えば、ある特定のUEは、PR段差>30度のスイッチングポンントは有しておらず、RPD>15度のスイッチングポイントを1つ、RPD>5度のスイッチングポイントを3つ有している。このことは、各スイッチングポイントが、30度未満のRPDを導入していることを意味している。NodeBは、一旦UEの能力のシグナリングを受けると、スケジューリングおよび電力制御アルゴリズムに応じて、次のサブフレームにおいてSRSまたはPUSCH送信電力を調節する必要があるか否かを決定することが可能なものであってよい。
【0039】
図6は、本開示の例示的な実施形態におけるNodeB28の単純化したブロック図である。受信器29は、
図3を参照して上述したように、UE31からUEのRP特性32を受信する。NodeBは、PR特性格納部33にUEのRP特性を格納することができ、またそのUEから新たなRP特性情報を受信したときに格納されたRP特性を更新することができる。SRS/PUSCH送信電力決定ユニット34は、RP特性を取得し、そのRP特性に基づいて、RPD決定ユニット35によって報告されたRPDが高すぎるときにはUEの動作モードを切り換えるように、そのUEのためのSRSまたはPUSCH送信電力レベルを決定する。SRS/PUSCH送信電力決定ユニットはまた、RPD利得決定ユニット36と協働して、SRSまたはPUSCH送信電力の提案された変化によって引き起こされるRPDの変化から生ずるシステム性能の向上を決定する。SRS/PUSCH送信電力決定ユニット34は、SRSの帯域幅、電力オフセット等を変えることによってSRS送信電力レベルをPUSCH送信電力に近づけるように調節することができる。SRS送信電力が調節される場合、SRS/PUSCH送信電力決定ユニットは、多重化利得決定ユニット37と協働して、多重化利得の変化と、その結果の性能の低下を決定することもできる。SRS/PUSCH送信電力決定ユニット34は、
図4に示すように、RPDに対する効果と多重化利得に対する効果とのトレードオフを行って、SRSおよびPUSCH送信電力の最適送信電力レベルを達成することができる。
【0040】
このトレードオフに関連する手順は、NodeB28とUE31の間でも実行され得ることに留意されたい。例えば、eNBは、SRS送信電力レベルをPUSCH送信電力に近づけるように調節し、例えばDM−RS測定値に基づいてその結果のUL性能を測定することができる。このシナリオでは、eNBは、UL性能が低下し始める電力レベルにSRS送信電力が達するまで、SRS送信電力をPUSCH送信電力に近づくように調節し続ける。
【0041】
SRS/PUSCH送信電力決定ユニット34は、スケジューリングおよび/または電力制御を調節することによって、PUSCH送信電力レベルを調節することができる。しかし、PUSCH送信電力の調節は、電力制御の精度の低下を引き起こすことがある。この場合、SRS/PUSCH送信電力決定ユニットは、RPDの改善と電力制御の精度の低下とのトレードオフを行うものであり得る。
【0042】
SRS/PUSCH送信電力決定ユニット34は、SRSおよびPUSCH送信電力が同じ動作モードに属するようにSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択することができる。あるいは、SRS/PUSCH送信電力決定ユニットは、UEの動作モードを切り換えてSRSとPUSCHとの間のPRDを低下させるようにSRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択することもできる。送信器38は、選択されたSRS/PUSCH送信電力39を、SRSまたはPUSCH送信電力レベルを選択されたレベルにセットする命令とともに、UEに対して送信する。これは、例えばサービングノードであるNodeB28からUEに送信電力制御(TPC)コマンドを送信することによって行うことができる。
【0043】
NodeB28の動作は、例えば、それに接続された非一時的メモリ41に格納されたコンピュータプログラム命令を実行するべく構成されたプロセッサ40によって制御される。
【0044】
実際上は、UEのRPDは、電力を変更することで常に増加するとは限らないことに留意されるべきである。RPDと送信電力との関係はスイッチングポイントとそれに対応する位相シフトに応じて決まるからである。このことは、SRS送信電力とPUSCH送信電力を相互に近づけるように動かすことによって常にRPDが低下するとは限らないことを含意している。したがって、例えば前述したSRS多重化利得等のシステム性能を犠牲にすることなく、PRDを低減させることが可能な場合もある。換言すれば、SRS送信電力とPUSCH送信電力とが相互に離れるように強いて変えることが望ましい場合もある。そのような決定は、UEの測定値かUEの要求のいずれかに基づいてなされるべきである。このことが、上述のRPD能力についてのUEフィードバックが有用であることの根拠となる。
【0045】
当業者には理解されるように、本出願に記載された革新的な概念は、幅広い応用例にわたって改変、変更することが可能である。したがって、本願の発明主題の範囲は、上述の特定の例示的な内容に限定されるべきではなく、特許請求の範囲の請求項の記載によって規定される。