(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976820
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】排煙処理方法および排煙処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/50 20060101AFI20160817BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20160817BHJP
B01D 53/79 20060101ALI20160817BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
B01D53/50 200
B01D53/78
B01D53/79
B01D53/81
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-536854(P2014-536854)
(86)(22)【出願日】2013年9月17日
(86)【国際出願番号】JP2013074996
(87)【国際公開番号】WO2014046079
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2015年2月9日
(31)【優先権主張番号】13/623,323
(32)【優先日】2012年9月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】杉田 覚
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−212891(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/078721(WO,A1)
【文献】
特開昭63−171622(JP,A)
【文献】
実開平06−064715(JP,U)
【文献】
特開昭60−084131(JP,A)
【文献】
特開平10−305210(JP,A)
【文献】
特開2002−204925(JP,A)
【文献】
特開平08−281058(JP,A)
【文献】
特開平09−323024(JP,A)
【文献】
特開2011−200781(JP,A)
【文献】
特開2007−245074(JP,A)
【文献】
特開2008−259992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/50
B01D 53/78
B01D 53/79
B01D 53/81
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともSO2及びSO3を含有する排煙中のSO3濃度をSO3濃度計によって検出するステップと、
前記SO3濃度を検出された排煙中に粉体を供給するステップと、
前記粉体を供給された排煙から熱を回収して該排煙を冷却するステップと、
前記冷却された排煙中の粉塵を捕集するステップと、
前記粉塵を捕集された排煙中の少なくともSO2を吸収液に吸収除去するステップと
を含む排煙処理方法であって、
前記粉体を供給するステップが、前記粉体の供給量を、前記SO3濃度(S)に対する前記排煙中の煤塵濃度(A)と前記粉体濃度(P)の合計量の質量比{(A+P)/S)}が2.0以上となるように制御することを含み、
前記煤塵濃度が、下式(1):
煤塵濃度(g/Nm3)=(石炭投入量)x(石炭中灰分濃度)x(煤塵到達率)/(排煙流量)・・式(1)
(式中、
石炭投入量は、前記少なくともSO2及びSO3を含有する排煙を発生させる石炭の投入
量であり、
石炭中灰分濃度は、前記石炭中に含まれる灰分の濃度であり、
粉塵到達率は、前記石炭中に含まれる灰分のうち、前記粉体供給ステップの前までに到達する灰分の割合であり、
排煙流量は、前記粉体供給ステップの前までに前記少なくともSO2及びSO3を含有する排煙の流量である。)
によって算出される排煙処理方法。
【請求項2】
少なくともSO2及びSO3を含有する排煙中のSO3濃度をSO3濃度計によって検出するステップと、
前記SO3濃度を検出された排煙中に粉体を供給するステップと、
前記粉体を供給された排煙から熱を回収して該排煙を冷却するステップと、
前記冷却された排煙中の粉塵を捕集するステップと、
前記粉塵を捕集された排煙中の少なくともSO2を吸収液に吸収除去するステップと
を含む排煙処理方法であって、
前記粉体を供給するステップが、前記粉体の供給量を、前記SO3濃度(S)に対する前記排煙中の煤塵濃度(A)と前記粉体濃度(P)の合計量の質量比{(A+P)/S)}が2.0以上となるように制御することを含み、
前記SO3濃度を検出するステップが、さらに前記粉体を供給される前の排煙中の温度及びSO2濃度を検出することを含み、前記温度と前記SO2濃度に基づき推定SO3濃度を算出し、該推定SO3濃度と前記SO3濃度計により検出された検出SO3濃度の差を算出し、該差が所定の範囲の超えた場合に警報を発する排煙処理方法。
【請求項3】
前記排煙処理が連続して行われ、前記捕集した粉塵の少なくとも一部を、前記粉体として使用する請求項1または2に記載の排煙処理方法。
【請求項4】
少なくともSO2及びSO3を含有する排煙中のSO3濃度を検出するSO3濃度計と、
前記SO3濃度を検出された排煙中に粉体を供給する粉体供給器と、
前記粉体を供給された排煙から熱を回収して該排煙を冷却する熱交換器と、
前記冷却された排煙中の粉塵を捕集する電気集塵機と、
前記粉塵を捕集された排煙を吸収液に気液接触させることにより、排煙中の少なくともSO2を吸収除去する吸収塔と、
前記SO3濃度計からの信号により、前記SO3濃度(S)に対する煤塵濃度(A)と
前記粉体濃度(P)の合計量の質量比{(A+P)/S)}が2.0以上となるように前記
粉体の供給量を制御する粉体供給制御手段と
を備え、
前記煤塵濃度を検出するために、前記粉体供給制御手段の前に、前記少なくともSO2及びSO3を含有する排煙の一部を取り出すための取出口をさらに備える排煙処理装置。
【請求項5】
少なくともSO2及びSO3を含有する排煙中のSO3濃度を検出するSO3濃度計と、
前記SO3濃度を検出された排煙中に粉体を供給する粉体供給器と、
前記粉体を供給された排煙から熱を回収して該排煙を冷却する熱交換器と、
前記冷却された排煙中の粉塵を捕集する電気集塵機と、
前記粉塵を捕集された排煙を吸収液に気液接触させることにより、排煙中の少なくともSO2を吸収除去する吸収塔と、
前記SO3濃度計からの信号により、前記SO3濃度(S)に対する煤塵濃度(A)と
前記粉体濃度(P)の合計量の質量比{(A+P)/S)}が2.0以上となるように前記
粉体の供給量を制御する粉体供給制御手段と
を備え、
前記粉体供給器の前流に、前記粉体を供給される前の排煙中の温度及びSO2濃度を検出する温度計とSO2濃度計を備え、
前記粉体供給制御手段が、前記温度計と前記SO2濃度計からの信号に基づき推定SO3濃度を算出し、前記SO3濃度計からの信号により前記推定SO3濃度と前記検出SO3濃度の差を算出し、該差が所定の範囲の超えた場合に警報を発する排煙処理装置。
【請求項6】
さらに、前記電気集塵機で捕集した粉塵の少なくとも一部を、前記粉体として使用するために前記電気集塵機と前記粉体供給器が接続されている請求項4または5に記載の排煙処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排煙を処理する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電プラント等における例えば重質油焚きボイラの排煙には、硫黄酸化物として、SO
2(二酸化硫黄)の他にSO
3(三酸化硫黄)が含有される。しかし、排煙中のSO
3は、ヒューム化した場合、腐食性が強いためスケール発生の要因となる有害なH
2SO
4のミストとなり、しかも単なる吸収液との気液接触ではほとんど捕集できないサブミクロン粒子となる。よって、装置の腐食防止及びスケール防止のため、あるいは排煙のさらなるクリーン化の観点から、このSO
3に対し、何らかの除去処理が必要である。
【0003】
特開昭63−175653号公報には、脱硫装置入口の排ガス中のSO
2濃度を計測することによって電気集塵器入口の排ガス中のSO
3濃度を推測し、ガスガスヒータの腐食量を低く保つために電気集塵器出口における排ガス中のSO
3濃度とダスト濃度との比が所定値となるようにダスト捕集量を制御する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−175653号公報
【発明の概要】
【0005】
排ガス中のSO
2濃度を計測することによってSO
3濃度を推測する方法では、SO
3濃度の正確性に欠けるために、安全のために不必要に多くの煤塵を添加しなければならず、後流の電気集塵器やサイロなどの設備が大型化するばかりで無く、ガスガスヒータ(GGH)管群の磨耗を引き起こす可能性がある。本発明の目的は、これらの設備を最低限なものとしつつ、GGH管群の磨耗の防止を図ることができる排煙処理装置および方法を提供することである。
【0006】
本発明は、少なくともSO
2及びSO
3を含有する排煙中のSO
3濃度をSO
3濃度計によって検出するステップと、前記SO
3濃度を検出された排煙中に粉体を供給するステップと、前記粉体を供給された排煙から熱を回収して該排煙を冷却するステップと、前記冷却された排煙中の粉塵を捕集するステップと、前記粉塵を捕集された排煙中の少なくともSO
2を吸収液に吸収除去するステップとを含む排煙処理方法であって、前記粉体を供給するステップが、前記粉体の供給量を、前記SO
3濃度(S)に対する前記排煙中の煤塵濃度(A)と前記粉体濃度(P)の合計量の質量比{(A+P)/S)}が2.0以上となるように制御することを含む排煙処理方法を提供する。
この排煙処理方法の好ましい態様では、前記煤塵濃度が、下式(1):
煤塵濃度(g/Nm
3)=(石炭投入量)x(石炭中灰分濃度)x(煤塵到達率)
/(排煙流量)・・式(1)
(式中、
石炭投入量は、前記少なくともSO
2及びSO
3を含有する排煙を発生させる石炭の投入量であり、
石炭中灰分濃度は、前記石炭中に含まれる灰分の濃度であり、
粉塵到達率は、前記石炭中に含まれる灰分のうち、前記粉体供給ステップの前までに到達する灰分の割合であり、
排煙流量は、前記粉体供給ステップの前までに前記少なくともSO
2及びSO
3を含有する排煙の流量である。)
によって算出される。この排煙処理方法の別の好ましい態様では、前記排煙処理が連続して行われ、前記捕集した粉塵の少なくとも一部を、前記粉体として使用する。この排煙処理方法のさらに別の好ましい態様では、前記SO
3濃度を検出するステップが、さらに前記粉体を供給される前の排煙中の温度及びSO
2濃度を検出することを含み、前記温度と前記SO
2濃度に基づき推定SO
3濃度を算出し、該推定SO
3濃度と前記SO
3濃度計により検出された検出SO
3濃度の差を算出し、該差が所定の範囲の超えた場合に警報を発する。
本発明は、少なくともSO
2及びSO
3を含有する排煙中のSO
3濃度を検出するSO
3濃度計と、前記SO
3濃度を検出された排煙中に粉体を供給する粉体供給器と、前記粉体を供給された排煙から熱を回収して該排煙を冷却する熱交換器と、前記冷却された排煙中の粉塵を捕集する電気集塵機と、前記粉塵を捕集された排煙を吸収液に気液接触させることにより、排煙中の少なくともSO
2を吸収除去する吸収塔と、前記SO
3濃度計からの信号により、前記SO
3濃度(S)に対する煤塵濃度(A)と前記粉体濃度(P)の合計量の質量比{(A+P)/S)}が2.0以上となるように前記粉体の供給量を制御する粉体供給制御手段とを備える排煙処理装置を提供する。
この排煙処理装置の好ましい態様では、前記煤塵濃度を検出するために、前記粉体供給制御手段の前に、前記少なくともSO
2及びSO
3を含有する排煙の一部を取り出すための取出口をさらに備える。この排煙処理装置の別の好ましい態様では、さらに、前記電気集塵機で捕集した粉塵の少なくとも一部を、前記粉体として使用するために前記電気集塵機と前記粉体供給器が接続されている。この排煙処理装置のさらに別の好ましい態様では、前記粉体供給器の前流に、前記粉体を供給される前の排煙中の温度及びSO
2濃度を検出する温度計とSO
2濃度計を備え、前記粉体供給制御手段が、前記温度計と前記SO
2濃度計からの信号に基づき推定SO
3濃度を算出し、前記SO
3濃度計からの信号により前記推定SO
3濃度と前記検出SO
3濃度の差を算出し、該差が所定の範囲の超えた場合に警報を発する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明に係る排煙処理装置の一つの実施の形態を概略的に示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る排煙処理装置の別の実施の形態を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、排煙処理装置の一例を示す。
符号2で示すものは、排煙の熱により石炭等の燃料を燃焼するボイラ1に供給される燃焼用空気を加熱するエアヒータ(ボイラ側機器)であり、この場合このエアヒータ2より以降の部分が本発明の対象となる排煙処理装置又は排煙処理方法である。
本発明は、例えば、重油、オリマルジョン、VR焚き、CWM/重油といった、各種油系の燃料を用いるボイラの排煙用として用いて、特に高い効果が得られるが、例えば石炭/重油混焼ボイラに使用しても同様の効果が得られる。また、石炭専焼ボイラであっても、起動時や試運転時等には、油系の燃料を燃やすことがあるので、そのような場合には、本発明を適用すると有効である。
【0009】
エアヒータ2の出口には、排煙Aの温度を検出する温度計8と、排煙A中のSO
2濃度を検出するSO
2濃度計9と、排煙中のSO
3濃度を検出するSO
3濃度計10が設けられている。これら3つの検出機器の配列順序は任意であり、自由に選択でき
図1に示す順序に限られない。
粉体供給制御手段11は、これらの3つの検出機器の信号C、D、Eの入力を受けて、例えば流量制御弁12を制御して粉体供給器3から供給される粉体量を調節する機能を有するものである。粉体供給制御手段11は、例えばマイクロコンピュータやロジックシーケンス回路等よりなる演算部と、この演算部の指令に基づいて例えば流量制御弁12の駆動部に駆動電流を加えるドライバ回路等よりなる。
【0010】
粉体供給器3から供給される粉体の供給量は、SO
3濃度(S)に対する煤塵濃度(A)と前記粉体濃度(P)の合計量の質量比{(A+P)/S)}が2.0以上となるように制御する。例えば、SO
3濃度が50mg/m
3Nの場合、煤塵と粉体の合計を100mg/m
3N以上投入すればよい。質量比が2.0以上となるように排煙中に粉体を供給すれば、硫酸ミストの付着によるGGH管群の腐食やスケールの発生が信頼性高く防止できる。
【0011】
粉体によるミストの除去作用は、SO
3を排煙中の粒子表面に凝結させるという物理的なものであるので、通常の電気集塵機や脱硫装置の吸収塔において捕集可能な粉体であれば、粉体の種類は特に限定されないが、石炭専焼発電プラントにおける排煙処理設備の電気集塵機により捕集された石炭灰が好ましい。
【0012】
粉体は、例えば気流搬送やスラリ搬送により供給できる。
粉体をスラリとして散布する場合には、SO
3が粉体粒子表面に捕集される作用が高く発揮されるように、スラリを構成する液を排煙の熱により即座に蒸発するものとすることが好ましいが、この液としては、例えば一般的な工業用水等の水で十分である。エアヒータ2の出口における排煙の温度は160℃程度と高温のため、散布されたスラリ中の水分は即座に蒸発するからである。
また、スラリの粉体濃度も脱硫装置5における吸収剤スラリの固形分濃度と同程度(例えば、20〜30重量%程度)でよい。なお、発明者らの試算によれば、このようにスラリとして散布する場合でも、排煙の温度は数℃程度しか低下せず、その後のGGHでの熱回収にはなんら問題ない。
【0013】
排煙中のSO
3濃度(S)は、SO
3濃度計10による計測値に基づき決定される。このように、オンラインでSO
3濃度を計測することにより、排煙中のSO
3濃度を正確に計測することができるため、粉体の供給量を最小限にすることが可能となり、後流の電気集塵器やサイロなどの設備を最小限にしつつ、不必要な粉体の投入による動力を削減することが可能となる。SO
3濃度計としては、例えば、FTIRと量子カスケードレーザーを組み合わせものが市販されており、連続的にリアルタイムでSO
3濃度を測定できる。
【0014】
排煙中の煤塵濃度(A)は、高濃度煤塵濃度計が存在しないため、オンラインで計測することができない。
しかしながら、例えば石炭専焼発電プラントにおいては、石炭投入量、石炭中に含まれる灰分濃度、及び煤塵到達率の実測値に基づき、下式(1)により煤塵濃度を算出することができる。
煤塵濃度(g/Nm
3)=(石炭投入量)x(石炭中灰分濃度)x(煤塵到達率)
/(排煙流量)・・式(1)
上式(1)中、石炭投入量は、少なくともSO
2及びSO
3を含有する排煙を発生させる石炭の投入量である。石炭中灰分濃度は、石炭中に含まれる灰分の濃度である。粉塵到達率は、石炭中に含まれる灰分のうち、粉体を供給する前までに到達する灰分の割合であり、具体的にはエアヒータの出口における煤塵到達率である。排煙流量は、粉体を供給する前までに少なくともSO
2及びSO
3を含有する排煙の流量であり、例えばボイラ負荷から求めることができる。
煤塵濃度は、石炭投入量、石炭中に含まれる灰分濃度、エアヒータの出口における煤塵到達率の実測値、及び排煙流量を検出する各機器の信号の入力を受けたマイクロコンピュータ等よりなる演算部により算出することができる。
上式(1)中の煤塵到達率は、上述したように、石炭中に含まれる灰分のうちエアヒータの出口まで到達する灰分の割合を意味する。この煤塵到達率は、具体的には、実際の運転中にエアヒータ出口の煤塵濃度を計測し、その際に燃焼している石炭中の灰分と石炭の燃焼量に基づき、下式(2)により算出することができる。なお、煤塵濃度の計測方法としては、EPA Method-5等を用いることができる。
煤塵到達率(%) = [エアヒータ出口煤塵濃度実測値(g/Nm
3) xエアヒータ出口排煙流量実測値(Nm
3/h)]/ [石炭燃焼量(g/h) x 石炭中灰分(wt%)]x 100 ・・式(2)
煤塵到達率は、エアヒータ出口煤塵濃度実測値、エアヒータ出口排煙流量実測値、及び石炭中に含まれる灰分濃度を入力し、石炭燃焼量を検出する機器の信号Bの入力を受けたマイクロコンピュータ等よりなる演算部により推算することができる。このエアヒータ出口煤塵到達率は、石炭の燃焼状態や種類によっても変化するため、一度計測しても常に一定値となるわけではない。したがって、燃焼する石炭の種類を変更するたびにエアヒータ出口の煤塵濃度を実測することにより、到達率の精度を向上することができる。
このエアヒータ出口の煤塵濃度を実測するために、本排煙処理装置の好ましい態様では、粉体を供給する前に、少なくともSO
2及びSO
3を含有する排煙の一部を取り出すための取出口をさらに備える。取出口は、エアヒータ2の後、粉体供給制御手段11の前であればどこに設けられてもよく、温度計8とSO
3濃度計10との間に設けられてもよい。
【0015】
排煙A中SO
3濃度を検出すれば、排煙A中の温度及びSO
2濃度を検出する必要はない。しかし、温度及びSO
2濃度を検出できれば、特開昭63−175653号公報に記載するように、温度とSO
2濃度に基づき推定SO
3濃度を算出でき、推定SO
3濃度と前記SO
3濃度計により検出された検出SO
3濃度の差を算出し、該差が例えば10%の範囲の超えた場合に警報を発するように粉体供給制御手段を設定する。これにより、SO
3濃度計の異常を早期に確認でき、SO
3濃度の信頼度を高める。また、SO
3濃度計に異常がある場合は、推定SO
3濃度を検出SO
3濃度に換えて使用でき、温度計9及びSO
2濃度計が、SO
3濃度計のバックアップ装置となる。
なお、特開昭63−175653号公報による推定SO
3濃度の算出方法を簡単に記載しておく。石炭をボイラで燃焼させると、石炭中の硫黄分はほとんどSO
2になり、そのSO
2の2〜3%がSO
3に転化する。転化したSO
3が排煙Aに残存する割合(残存率)は、排煙A中の温度と相関し、横軸に温度、縦軸に残存率をプロットしたグラフを予め作成しておくと、そのグラフから特定温度におけるSO
3の残存率を得られる。したがって、推定SO
3濃度は、(測定されたSO
2濃度)×(SO
2からSO
3への転化率:2〜3%)×(測定された温度におけるSO
3の排煙残存率)から求められる。
【0016】
粉体供給装置3の後流には、粉体が投入された排煙から熱を回収して排煙を冷却する熱交換器(GGHの熱回収部)4を備える。例えば、排煙の温度は160℃程度から100℃程度に冷却される。
【0017】
熱交換器(GGHの熱回収部)4の後流には、排煙中の煤塵を捕集する電気集塵機5を備える。電気集塵機5は、フライアッシュ等の煤塵、粉体供給器により供給された粉体、煤塵及び粉体に付着した硫酸ミストを捕集できる。石炭焚きボイラ用の排煙処理設備などでは、熱交換器4を電気集塵機5よりも前流側に配置して、熱回収工程を電気集塵よりも先に行う方式(いわゆる高性能システム)が普及している。この方式は、排煙の温度が低いと粉塵の比抵抗の関係で集塵機の容量当たりの集塵性能が向上するという作用に着目し、より簡素かつ小型な装置構成で高い除塵性能を得んとするものである。
【0018】
電気集塵機5の後流側は吸収塔6を備え、煤塵が除去された排煙は、吸収塔6に導入されて少なくともSO
2と僅かに残留した煤塵の一部が除去され、その後煙突7から大気中に除去される。
吸収塔6は、例えば、吸収液が供給される一つのタンクの上部に、二つの液柱式吸収塔(並流式と向流式)を並べて設置し、排煙が順次各吸収塔に導かれてそれぞれの吸収塔で排煙とタンク内の吸収液との気液接触が行われる構成としたものである。
これらの処理中に起きる主な反応は以下の反応式(3)乃至(5)となる。
(吸収搭排煙導入部)
SO
2 +H
2O → H
++HSO
3- ・・(3)
(タンク)
H
+ +HSO
3- +1/2O
2→ 2H
+ +SO
42- ・・(4)
2H
+ +SO
42- +CaCO
3+H
2O → CaSO
4・2H
2O +CO
2 ・・(5)
こうしてタンク内には、定常的には石膏と吸収剤である少量の石灰石と微量の粉塵が懸濁するようになっており、このタンク内のスラリがスラリポンプにより固液分離機に供給され、ろ過されて水分の少ない石膏として採り出される。一方、固液分離機からのろ液の一部は、吸収剤スラリを構成する水分として循環使用できる。
【0019】
図2は、排煙処理装置の別の例を示す。
図1に示す従来例と同様の要素には同符号を付して重複する説明を省略する。
図2は、粉体供給器として、電気集塵機5の後流側に排煙中から除去された粉塵を回収するサイロ3aを備え、捕集した粉塵の少なくとも一部を粉体として使用する。この粉体として再使用される煤塵は、例えば、石炭専焼発電プラントにおける石炭の燃焼による石炭灰である。すなわち、排煙処理は連続して行われ、電気集塵機5によって捕集された煤塵の少なくとも一部は、一旦サイロ3aに供給される。粉体供給制御手段は、少なくともSO
3濃度を検出するSO
3濃度計10の信号Eの入力を受けて、例えば流量制御弁12を制御して粉体供給器3の変形例であるサイロ3aから供給される粉体量を調節し、サイロ3aから粉体を例えば空送ブロワ13を用いて熱交換器4の前流側に供給し循環使用される。サイロ3aから熱交換器4の前流側に供給されないものは、排出先Fに送られてもよい。
【0020】
以上、本発明を好ましい実施の形態を用いて説明してきたが、本発明の範囲を既述した特定の形態に限定することを意図したものでなく、それどころか、添付の特許請求の範囲で規定する本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の変形例、改変例および均等例が行い得ることを意図するものである。
【符号の説明】
【0021】
1 ボイラ
2 エアヒータ
3 粉体供給装置
3a サイロ
4 熱交換器
5 電気集塵機
6 吸収塔
7 煙突
8 温度計
9 SO
2濃度計
10 SO
3濃度計
11 粉体供給制御手段
12 流量制御弁
13 空送ブロワ
A 排煙
B、C、D、E 信号
F 排出先