特許第5976821号(P5976821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976821
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】チップマウンタと装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20160817BHJP
   H02J 50/00 20160101ALI20160817BHJP
【FI】
   H05K13/04 B
   H02J17/00 C
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-537861(P2014-537861)
(86)(22)【出願日】2012年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2012074491
(87)【国際公開番号】WO2014049679
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 壮志
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 慎二
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−079786(JP,A)
【文献】 特開2010−283257(JP,A)
【文献】 特開2007−109753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
H025 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニットと、
前記ユニットが取り付けられるユニット取付部と、
前記ユニット取付部から前記ユニットへ電力をワイヤレスで供給する電力供給回路と、
前記電力供給回路を流れる電流を検出する電流検出器と
前記電流検出器による検出値が所定の閾値よりも大きいのか否かを判定する判定回路とを備え、
前記電力供給回路は、
前記ユニットに設けられている一対の受電電極と、
前記ユニット取付部に設けられている一対の送電電極と、
前記一対の送電電極へ電気的に接続されているインダクタと、
前記一対の送電電極に交流電圧を印加する交流電源とを備え、
前記ユニットが前記ユニット取付部の正規の位置に取り付けられた時に、前記一対の受電電極と前記一対の送電電極とが対向してキャパシタを形成するとともに、当該キャパシタと前記インダクタとが形成する共振回路の共振周波数が、前記交流電源による交流電圧の周波数に実質的に等しくな
前記判定回路は、前記電流検出器による検出値と前記閾値との大小関係に応じて、前記ユニットが前記正規の位置に取り付けられているのか否かを判定する、装置。
【請求項2】
前記判定回路は、前記電流検出器による検出値が前記閾値よりも大きいときに、前記ユニットが前記正規の位置へ取り付けられたことを示す信号を出力する、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記判定回路は、前記電流検出器による検出値が所定の閾値よりも小さいときに、前記ユニットが前記正規の位置へ取り付けられていないことを示す信号を出力する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記一対の受電電極の一方と前記一対の送電電極の一方は第1の方向において対向し、
前記一対の受電電極の他方と前記一対の送電電極の他方は第2の方向において対向し、
前記第1の方向と前記第2の方向は互いに異なる、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の方向は鉛直方向であり、前記第2の方向は水平方向である、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記電力供給回路は、前記ユニットに設けられているとともに、前記一対の受電電極に電気的に接続された整流器をさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記ユニットに設けられており、前記電力供給回路によって供給された電力によって動作する発信機と、
前記ユニット取付部に設けられており、前記発信機からの信号を受信する受信器と、
をさらに備える請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記受信器による受信の有無に応じて、前記ユニットが前記正規の位置に取り付けられているのか否かを判定する第2の判定回路をさらに備える、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記発信機は、光を発する発光素子を有し、
前記受信機は、前記発光素子からの光を受光する受光素子を有する、
請求項又はに記載の装置。
【請求項10】
前記発光素子は少なくとも一つの発光ダイオードを含む、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、回路基板に電子部品を実装するチップマウンタである、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記ユニットは、ヘッド、XY搬送装置、マークカメラ、パーツカメラ、ノズルステーション、フラックスユニット、基板コンベア、基板支持装置、フィーダ、テープフィーダ、フィーダパレット、トレイユニット、検査装置のいずれか一つである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ユニットは、回路基板へ実装される電子部品を収容するフィーダである、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、回路基板に電子部品を実装するチップマウンタ(表面実装機又は電子部品組立装置とも称される)及びその他の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010−283257号公報に、従来のチップマウンタが開示されている。このチップマウンタは、電子部品を収容するフィーダと、フィーダが取り付けられるフィーダ取付部と、フィーダから回路基板へ電子部品を搬送するヘッドと、フィーダ取付部からフィーダへ電力をワイヤレスで供給する電力供給回路を備えている。電力供給回路は、フィーダ取付部に設けられた送電コイルと、フィーダに設けられた受電コイルとを備え、二つのコイル間で生じる電磁誘導を利用して、フィーダへ電力を供給するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フィーダに限らず、いかなる装置においても、ユニットへワイヤレスで電力を供給する場合、当該ユニットが正規の位置に取り付けられていないと、給電効率が著しく低下する。そのことから、上記した従来のチップマウンタでは、フィーダが正規の位置に取り付けられているのか否かを検出するために、フィーダとフィーダ取付部との間で光通信を行う検出装置が設けられている。しかしながら、この検出装置は、比較的に複雑な構造を有しているため、チップマウンタ又はその他の装置の製造コストを上昇させるおそれがある。
【0004】
本明細書は、装置を構成するユニットが、正規の位置に取り付けられているのか否かを、簡素な機構で検出するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示される装置は、ユニットと、ユニットが取り付けられるユニット取付部と、ユニット取付部からユニットへ電力をワイヤレスで供給する電力供給回路とを備える。電力供給回路は、ユニットに設けられている一対の受電電極と、ユニット取付部に設けられている一対の送電電極と、一対の送電電極へ電気的に接続されているインダクタと、一対の送電電極に交流電圧を印加する交流電源とを備え、ユニットがユニット取付部の正規の位置に取り付けられた時に、一対の受電電極と一対の送電電極とが対向してキャパシタを形成するとともに、当該キャパシタとインダクタとが形成する共振回路の共振周波数が、交流電源による交流電圧の周波数に実質的に等しくなるように構成されている。
【0006】
上記した装置では、ユニットがユニット取付部へ取り付けられると、送電電極と受電電極とが対向して、キャパシタを形成する。ユニットが正規の位置に取り付けられていれば、キャパシタは所定のキャパシタンスを有することから、キャパシタとインダクタとが形成する共振回路の共振周波数は、交流電源による交流電圧の周波数に実質的に等しくなる。この場合、キャパシタとインダクタとの間で共振現象が発生し、一対の受電電極送と一対の電電極とが電界を介して電気的に結合される。その結果、電力供給回路はユニットへ電力をワイヤレスで供給することができる。
【0007】
一方、ユニットが正規の位置に取り付けられていないと、受電電極と送電電極とが正しく対向しないために、そのキャパシタンスが前記所定のキャパシタンスから相違する。この場合、キャパシタとインダクタとが形成する共振回路の共振周波数が、交流電源による交流電圧の周波数に一致しない。従って、前述した共振現象は発生せず、電力供給回路はユニットへ電力を供給することができない。
【0008】
上述のように、ユニットが正規の位置に取り付けられていれば、電力供給回路はユニットへ電力をワイヤレスで供給することができ、ユニットが正規の位置に取り付けられていなければ、電力供給回路はユニットへ電力を供給することができない。そのことから、電力供給回路がユニットへ電力を供給しているのか否かを検出することで、ユニットが正規の位置に取り付けられているのか否かを検出することができる。
【0009】
この技術思想に基づき、装置は、電力供給回路を流れる電流を検出する電流検出器をさらに備えることが好ましい。電力供給回路がユニットへ電力を供給していれば、電力供給回路において実質的に電流が流れ、電力供給回路がユニットへ電力を供給していなければ、電力供給回路において実質的に電流は流れない。そのことから、電力供給回路を流れる電流を検出することで、ユニットが正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することができる。
【0010】
それに加えて、あるいは、それに代えて、装置は、ユニットに設けられている発信機と、ユニット取付部に設けられているとともに、発信機からの信号を受信する受信機とを備えることも好ましい。この場合、発信機は、電力供給回路によって供給された電力によって動作するように構成されていることが好ましい。このような構成によると、ユニットが正規の位置に取り付けられたときに限って、発信機は信号を発信することができ、受信機はその信号を受信することができる。そのことから、受信器による受信の有無に応じて、ユニットがユニット取付部に取り付けられているのか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】チップマウンタの全体構成を模式的に示す。
図2】テープフィーダとフィーダパレットの電気的な構成を示すブロック図。
図3】テープフィーダが正規の位置に取り付けられたときの電力供給回路を示す。
図4図3に示す状態における電力供給回路の共振周波数fresと電源電圧f0の関係を示すグラフ。
図5】テープフィーダが正規の位置に取り付けられていないときの電力供給回路を示す。
図6図5に示す状態における電力供給回路の共振周波数fresと電源電圧f0の関係を示すグラフ。
図7】一変形例のテープフィーダとフィーダパレットの電気的な構成を示すブロック図。
図8】他の一変形例のテープフィーダとフィーダパレットの電気的な構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本技術の一実施形態では、装置(例えばチップマウンタ)が、電流検出器による検出値が所定の閾値よりも大きいのか否かを判定する判定回路をさらに備えてもよい。この場合、判定回路は、電流検出器による検出値と前記閾値との大小関係に応じて、ユニットが正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することがより好ましい。本技術の装置(例えばチップマウンタ)では、ユニットが正規の位置に対して正確に取り付けられているほど、電力供給回路に流れる電流が大きくなる。そのことから、電力供給回路に流れる電流を所定の閾値と比較することで、ユニットが正規の位置に対して所定の精度で取り付けられているのか否かを判定することができる。そのことから、当該閾値は、ユニットに必要とされる取付精度に応じて設定するとよい。
【0013】
上記した実施形態において、判定回路は、電流検出器による検出値が前記閾値よりも大きいときに、ユニットが正規の位置へ取り付けられたことを示す信号を出力することが好ましい。加えて、又は、それに代えて、判定回路は、電流検出器による検出値が所定の閾値よりも小さいときに、ユニットが正規の位置へ取り付けられていないことを示す信号を出力することが好ましい。これらの信号を受けて、装置は動作を開始したり、停止したりすることができる。
【0014】
本技術の一実施形態では、一対の受電電極の一方と一対の送電電極の一方は第1の方向において対向し、一対の受電電極の他方と一対の送電電極の他方は第2の方向において対向し、第1の方向と第2の方向は互いに異なることが好ましい。このような構成によると、複数の方向に関して、ユニットが正規の位置に取り付けられているのか否かを、正しく判定することができる。一例ではあるが、第1の方向を鉛直方向とし、第2の方向を水平方向とすることができる。
【0015】
通常、送電電極から受電電極には高周波の交流電力が送電され、ユニットの電気機器はその交流電力をそのまま使用することができない。そこで、本技術の一実施形態では、電力供給回路が、ユニットに設けられているとともに、一対の受電電極に電気的に接続された整流器をさらに備えることが好ましい。加えて、電力供給回路は、平滑器をさらに備えることも好ましい。
【0016】
本技術の一実施形態において、装置(例えばチップマウンタ)は、ユニットに設けられた発信機と、ユニット取付部に設けられているとともに、発信機からの信号を受信する受信器をさらに備えることが好ましい。この場合、発信機は、電力供給回路によって供給された電力によって動作することが好ましい。本技術の装置では、ユニットが正規の位置に取り付けられたときに限って、電力供給回路はユニットへの電力を供給することができる。従って、ユニットが正規の位置に取り付けられたときに限って、発信機は信号を発信することができ、受信機はその信号を受信することができる。そのことから、受信器による受信の有無に応じて、前記ユニットが正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することができる。
【0017】
上記した実施形態において、装置(例えばチップマウンタ)は、受信器による受信の有無に応じて、ユニットがユニット取付部に取り付けられているのか否かを判定する第2の判定回路をさらに備えることが好ましい。このような構成によると、装置(例えばチップマウンタ)は、ユニットが正規の位置に取り付けられているのか否かを、自ら判定することができる。ここで、第2の判定回路は、前述した判定回路から独立した回路であってもよいし、前述した判定回路と共通の回路で構成されてもよい。
【0018】
上記した実施形態において、発信機は光を発する発光素子を有し、受信機は発光素子からの光を受光する受光素子を有することが好ましい。この場合、発光素子は少なくとも一つの発光ダイオードを含むことが好ましい。このような構成によると、発信機及び受信機の構成を簡素なものとすることができる。
【0019】
本技術は、チップマウンタに好適に適用することができる。この場合、本技術の一実施形態では、ユニットが、ヘッド、XY搬送装置、マークカメラ、パーツカメラ、ノズルステーション(ノズルマガジン)、フラックスユニット、基板コンベア、基板支持装置、フィーダ、テープフィーダ、フィーダパレット、トレイユニット、検査装置のいずれか一つであることが好ましい。これらのユニットは、チップマウンタにおいて正確に取り付けられることが特に必要とされるユニットである。そのことから、本技術は、これらのユニットに対して有効に適用することができる。ただし、本技術は、これらのユニットに限られず、チップマウンタ又はその他の装置を構成する他のユニットにも適用することができる。例えば、ユニットは、チップマウンタ又はその他の装置のフレームを構成する柱や梁であってもよい。加えて、本技術は、その他の基板作業機又はそれに関連する装置を構成する各種のユニットにも適用することができる。ここでいう基板作業機とは、基板に対して所定の作業を行う装置であり、例えば、チップマウンタの他に、基板印刷機や基板検査機が含まれる。
【実施例】
【0020】
図面を参照して実施例のチップマウンタ10について説明する。チップマウンタ10は、回路基板100に電子部品を実装(装着)する装置である。チップマウンタ10は、表面実装機又は電子部品組立装置とも称される。チップマウンタ10は、はんだ印刷機、他のチップマウンタ、及び基板検査機とともに併設され、一連の実装ラインを構成する。
【0021】
チップマウンタ10は、複数のフィーダ20と、フィーダパレット40を備えている。フィーダパレット40は、複数のフィーダ20が着脱可能に取り付けられるフィーダ取付部の一例である。各々のフィーダ20は、複数の電子部品を収容しており、後述する可動ヘッド30へ電子部品を供給する。本実施例のフィーダ20は、テープフィーダであり、複数の電子部品はリール状に巻かれたキャリアテープに収容されている。フィーダ20は、キャリアテープを送り出すためのモータやセンサといった電気機器を有している。フィーダ20に設けられた電気機器は、フィーダパレット40から供給される電力によって動作する。フィーダ20への電力供給に係る構成については、後段において詳細に説明する。
【0022】
チップマウンタ10は、二つの基板コンベア36と、基板支持装置38を備えている。各々の基板コンベア36は、一対のコンベアベルトによって、回路基板100を搬送する装置である。基板支持装置38は、基板コンベア36が搬送した回路基板100を、所定の位置(高さ)に支持する装置である。基板支持装置38は、複数のバックアップピン38aを有し、回路基板100を基板コンベア36から持ち上げることができる。チップマウンタ10含む実装ラインでは、基板コンベア36が、隣接する他の装置の基板コンベアと一連に接続される。それにより、回路基板100は、はんだ印刷機、複数のチップマウンタ10、基板検査機の順で、複数の装置に亘って搬送される。
【0023】
チップマウンタ10は、ヘッド30とノズルステーション24を備えている。ヘッド30は、XY搬送機構28によって、前後方向及び左右方向に移動可能となっている。ヘッド30には、電子部品を吸着するノズル26と、マークカメラ34が取り付けられている。ヘッド30は、フィーダ20が供給する電子部品をノズル26によって吸着し、回路基板100上へ搬送して実装する。ノズルステーション24は、複数のノズル26を収容している。複数のノズル26は、電子部品の種類に応じて用意される。ヘッド30は、ノズルステーション24において、ノズル26を自動交換することができる。
【0024】
チップマウンタ10は、パーツカメラ22及びマークカメラ34を含む複数のカメラを備えている。パーツカメラ22は、フィーダ20と基板コンベア36との間に配置されている。パーツカメラ22は、ノズル26に吸着された電子部品を、ヘッド30に付されたマーク(コーナードックとも称される)と共に撮影する。チップマウンタ10は、パーツカメラ22による画像を処理することで、ノズル26に吸着された電子部品の正確な位置を特定する。マークカメラ34は、ヘッド30に設けられている。マークカメラ34は、ヘッド30の作業範囲内の各所に付されたマークを撮影する。マークは、例えばフィーダ20、ノズルステーション24、基板コンベア36、及び回路基板100などに付されている。チップマウンタ10は、マークカメラ34による画像を処理することで、マークが付された対象の正確な位置を特定する。
【0025】
以上、チップマウンタ10の全体的な構成について説明した。以下では、フィーダ20への電力供給に係る構成について詳細に説明する。図2に示すように、チップマウンタ10は、電力供給回路50を備えている。電力供給回路50は、フィーダパレット40からフィーダ20へ、電力をワイヤレスで供給する。電力供給回路50によってフィーダ20へ送電された電力は、フィーダ20に設けられたコントローラ70やその他の電気機器72に供給される。
【0026】
電力供給回路50は、一対の受電電極52a、52bと、一対の送電電極54a、54bと、一対の送電電極54a、54bへ電気的に接続されたインダクタ56と、一対の送電電極54a、54bに交流電圧を印加する交流電源58と、一対の受電電極52a、52bへ電気的に接続された整流平滑回路60を備えている。一対の受電電極52a、52bは、フィーダ20に設けられており、一対の送電電極54a、54bは、フィーダパレット40に設けられている。電力供給回路50では、フィーダ20がフィーダパレット40の正規の位置に取り付けられると、一対の受電電極52a、52bと一対の送電電極54a、54bとが対向してキャパシタを形成するとともに、当該キャパシタとインダクタ56とが形成する共振回路の共振周波数が、交流電源58による交流電圧の周波数に実質的に等しくなるように構成されている。即ち、電力供給回路50は、電界共振方式のワイヤレス給電回路の一種である。
【0027】
図3に示すように、フィーダ20が正規の位置に取り付けられると、一対の受電電極52a、52bと一対の送電電極54a、54bは、所定の対向面積S1、S2及び所定の距離d1、d2で、互いに対向する。このとき、キャパシタは、所定のキャパシタンスC1を有し、キャパシタとインダクタ56とが形成する共振回路の共振周波数fresは、交流電源58による交流電圧の周波数f0に等しくなる。共振回路の共振周波数fresと交流電源の周波数f0とが等しくなると、キャパシタとインダクタ56との間で共振現象が発生し、一対の受電電極52a、52bと一対の送電電極54a、54bとが電界を介して電気的に結合される。その結果、図4に示すように、電力供給回路50に電流が流れ、フィーダ20へ電力が供給される。
【0028】
一方、図5に示すように、フィーダ20が正規の位置に取り付けられていないと、一対の受電電極52a、52bと一対の送電電極54a、54bとの対向面積S3、S4及び距離d3、d4は、前記した所定の対向面積S1、S2及び所定の距離d1、d2から相違する。その結果、それらのキャパシタンスC2も、前記した所定のキャパシタンスC1から相違する。この場合、キャパシタとインダクタ56とが形成する共振回路の共振周波数fresが、交流電源58による交流電圧の周波数f0に一致せず、前述した共振現象は発生しない。従って、図6に示すように、電力供給回路50に電流は流れず、フィーダ20へ電力も供給されない。
【0029】
上述のように、フィーダ20が正規の位置に取り付けられていれば、電力供給回路50はフィーダ20へ電力をワイヤレスで供給することができ、フィーダ20が正規の位置に取り付けられていなければ、電力供給回路50はフィーダ20へ電力を供給することができない。そのことから、電力供給回路50がフィーダ20へ電力を供給しているのか否かを検出することで、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを検出することができる。この技術思想に基づき、本実施例のチップマウンタ10では、電力供給回路50がフィーダ20へ電力を供給しているのか否かを二つの方式で検出し、それによってフィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを検出するように構成されている。
【0030】
先ず、第1の方式について説明する。この方式では、電力供給回路50を流れる電流を検出する。図4に示すように、電力供給回路50がフィーダ20へ電力を供給していれば、電力供給回路50において実質的に電流が流れる。一方、図6に示すように、電力供給回路50がフィーダ20へ電力を供給していなければ、電力供給回路50において実質的に電流は流れない。そのことから、電力供給回路50を流れる電流を監視することで、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することができる。
【0031】
上記の見地に基づき、本実施例のチップマウンタ10では、図2、3、5に示すように、電力供給回路50を流れる電流を検出する電流検出器62と、電流検出器62に接続された判定ユニット64が設けられている。電流検出器62による検出値Iは、判定ユニット64へ入力される。判定ユニット64は、電流検出器62による検出値Iが、所定の閾値Ithよりも大きければ、フィーダ20が正規の位置へ取り付けられたと判定して、その旨を示す信号(OK)を出力する。一方、判定ユニット64は、電流検出器62による検出値Iが所定の閾値Ithよりも小さいときは、フィーダ20が正規の位置へ取り付けられていないと判定して、その旨を示す信号(NG)を出力する。判定ユニット64が出力した信号(OK/NG)は、チップマウンタ10のコントロールユニット(図示省略)へ送信される。ここで、電流に関する閾値Ithは、フィーダ20に必要とされる取付精度に応じて定めることができる。
【0032】
次に、第2の方式について説明する。この方式では、フィーダ20に発信機を設けておき、その発信機が送信する信号を受信する。発信機は、電力供給回路50によって供給された電力によって動作するように構成される。このような構成によると、電力供給回路50がフィーダ20へ電力を供給していれば、フィーダ20に設けられた発信機は信号を送信することができる。一方、電力供給回路50がフィーダ20へ電力を供給していなければ、フィーダ20に設けられた発信機は信号を発信することができない。そのことから、発信機による信号の有無に応じて、フィーダ20正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することができる。発信機は、電磁波(電波、光を含む)を出力するものでもよいし、音波(低周波音及び超音波を含む)を出力するものであってもよい。
【0033】
上記の見地に基づき、本実施例のチップマウンタ10では、図2、3、5に示すように、フィーダ20に設けられた発光素子66と、フィーダパレット40に設けられ、発光素子66からの光を受光する受光素子68とが設けられている。発光素子66は、フィーダ20のコントローラ70に接続され、電力供給回路50によって供給された電力によって動作するように構成されている。フィーダ20が正規の位置に取り付けられると、発光素子66は発光し、その光は受光素子68によって受光される。受光素子68は、光を受光したときに、判定ユニット64へ所定の信号を出力する。判定ユニット64は、受光素子68からの信号の有無に基づいて、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することができる。
【0034】
以上のように、本実施例のチップマウンタ10では、電界共振方式を採用する電力供給回路50の特性を利用して、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを判定する。この場合、互いに対向する一組の受電電極52a及び送電電極54aと、互いに対向する他の一組の受電電極52a及び送電電極54aは、離れて配置されることが好ましい。加えて、図2に示すように、本実施例のチップマウンタ10では、一組の受電電極52aと送電電極54aとが、フィーダパレット40の鉛直面42において対向するように配置されており、他の一組の受電電極52bと送電電極54bとは、フィーダパレット40の水平面44において対向するように配置されている。このような構成によると、一組の受電電極52aと送電電極54aが対向する対向(即ち、水平方向)と、他の一組の受電電極52bと送電電極54bが対向する対向(即ち、鉛直方向)とが互いに相違するので、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを、複数の方向から検出することができる。
【0035】
本実施例のチップマウンタ10では、上述した二つの方式が同時に採用されているが、二つの方式を同時に採用する必要は必ずしもなく、一方の方式のみを採用してもよい。即ち、図7に示すように、発光素子66と受光素子68を設けることなく、電流検出器62のみを設けてもよい。あるいは、図8に示すように、電流検出器62を設けることなく、発光素子66と受光素子68のみを設けてもよい。
【0036】
本明細書で説明した技術、特に、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを検出する技術は、フィーダ20に限られず、チップマウンタ10を構成する他のユニットにも適用することができる。具体的には、ヘッド30、XY搬送機構28、マークカメラ34、パーツカメラ22、ノズルステーション24、基板コンベア36、基板支持装置38、フィーダパレット40といった、チップマウンタ10に対して着脱可能なユニットが挙げられる。ここで、一部のチップマウンタでは、複数のフィーダをフィーダパレットと共に交換できるように、台車タイプのフィーダパレットが採用されている。本明細書で説明した技術は、そのようなフィーダパレットにも有効に採用することができる。また、フィーダ20は、テープフィーダに限られず、電子部品をトレイ上に収容するトレイフィーダ(トレイユニット)であってもよい。これらのユニットに本明細書で説明した技術を適用することで、これらのユニットに電力をワイヤレスで供給できるとともに、これらのユニットが正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することができる。
【0037】
加えて、本明細書では説明を省略したが、チップマウンタ10は、フラックスユニットや検査装置をさらに備えてもよい。ここで、フラックスユニットは、ノズル26に吸着された電子部品にフラックスを付するための装置である。また、検査装置は、ヘッド30に取り付けられるカメラを有し、電子部品が実装された回路基板100を撮影する装置である。検査装置がヘッド30に取り付けられると、チップマウンタ10は基板検査装置として機能する。チップマウンタ10がフラックスユニットや検査装置を備える場合は、フラックスユニットや検査装置にも本明細書で説明した構成を適用することができる。それにより、フラックスユニットや検査装置に電力をワイヤレスで供給できるとともに、フラックスユニットや検査装置が正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することができる。
【0038】
さらに、本明細書で説明した技術は、チップマウンタ10に限らず、任意の装置に適用することができる。特に、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを検出する技術は、任意の装置を構成するユニットに好適に適用することができる。
【0039】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0040】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0041】
10:チップマウンタ
20:フィーダ
22:パーツカメラ
24:ノズルステーション
26:ノズル
30:ヘッド
34:マークカメラ
36:基板コンベア
38:基板支持装置
38a:バックアップピン
40:フィーダパレット
50:電力供給回路
52a:受電電極
54a:送電電極
56:インダクタ
58:交流電源
60:整流平滑回路
62:電流検出器
64:判定ユニット
66:発光素子
68:受光素子
70:コントローラ
72:電気機器
100:回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8