【実施例】
【0020】
図面を参照して実施例のチップマウンタ10について説明する。チップマウンタ10は、回路基板100に電子部品を実装(装着)する装置である。チップマウンタ10は、表面実装機又は電子部品組立装置とも称される。チップマウンタ10は、はんだ印刷機、他のチップマウンタ、及び基板検査機とともに併設され、一連の実装ラインを構成する。
【0021】
チップマウンタ10は、複数のフィーダ20と、フィーダパレット40を備えている。フィーダパレット40は、複数のフィーダ20が着脱可能に取り付けられるフィーダ取付部の一例である。各々のフィーダ20は、複数の電子部品を収容しており、後述する可動ヘッド30へ電子部品を供給する。本実施例のフィーダ20は、テープフィーダであり、複数の電子部品はリール状に巻かれたキャリアテープに収容されている。フィーダ20は、キャリアテープを送り出すためのモータやセンサといった電気機器を有している。フィーダ20に設けられた電気機器は、フィーダパレット40から供給される電力によって動作する。フィーダ20への電力供給に係る構成については、後段において詳細に説明する。
【0022】
チップマウンタ10は、二つの基板コンベア36と、基板支持装置38を備えている。各々の基板コンベア36は、一対のコンベアベルトによって、回路基板100を搬送する装置である。基板支持装置38は、基板コンベア36が搬送した回路基板100を、所定の位置(高さ)に支持する装置である。基板支持装置38は、複数のバックアップピン38aを有し、回路基板100を基板コンベア36から持ち上げることができる。チップマウンタ10含む実装ラインでは、基板コンベア36が、隣接する他の装置の基板コンベアと一連に接続される。それにより、回路基板100は、はんだ印刷機、複数のチップマウンタ10、基板検査機の順で、複数の装置に亘って搬送される。
【0023】
チップマウンタ10は、ヘッド30とノズルステーション24を備えている。ヘッド30は、XY搬送機構28によって、前後方向及び左右方向に移動可能となっている。ヘッド30には、電子部品を吸着するノズル26と、マークカメラ34が取り付けられている。ヘッド30は、フィーダ20が供給する電子部品をノズル26によって吸着し、回路基板100上へ搬送して実装する。ノズルステーション24は、複数のノズル26を収容している。複数のノズル26は、電子部品の種類に応じて用意される。ヘッド30は、ノズルステーション24において、ノズル26を自動交換することができる。
【0024】
チップマウンタ10は、パーツカメラ22及びマークカメラ34を含む複数のカメラを備えている。パーツカメラ22は、フィーダ20と基板コンベア36との間に配置されている。パーツカメラ22は、ノズル26に吸着された電子部品を、ヘッド30に付されたマーク(コーナードックとも称される)と共に撮影する。チップマウンタ10は、パーツカメラ22による画像を処理することで、ノズル26に吸着された電子部品の正確な位置を特定する。マークカメラ34は、ヘッド30に設けられている。マークカメラ34は、ヘッド30の作業範囲内の各所に付されたマークを撮影する。マークは、例えばフィーダ20、ノズルステーション24、基板コンベア36、及び回路基板100などに付されている。チップマウンタ10は、マークカメラ34による画像を処理することで、マークが付された対象の正確な位置を特定する。
【0025】
以上、チップマウンタ10の全体的な構成について説明した。以下では、フィーダ20への電力供給に係る構成について詳細に説明する。
図2に示すように、チップマウンタ10は、電力供給回路50を備えている。電力供給回路50は、フィーダパレット40からフィーダ20へ、電力をワイヤレスで供給する。電力供給回路50によってフィーダ20へ送電された電力は、フィーダ20に設けられたコントローラ70やその他の電気機器72に供給される。
【0026】
電力供給回路50は、一対の受電電極52a、52bと、一対の送電電極54a、54bと、一対の送電電極54a、54bへ電気的に接続されたインダクタ56と、一対の送電電極54a、54bに交流電圧を印加する交流電源58と、一対の受電電極52a、52bへ電気的に接続された整流平滑回路60を備えている。一対の受電電極52a、52bは、フィーダ20に設けられており、一対の送電電極54a、54bは、フィーダパレット40に設けられている。電力供給回路50では、フィーダ20がフィーダパレット40の正規の位置に取り付けられると、一対の受電電極52a、52bと一対の送電電極54a、54bとが対向してキャパシタを形成するとともに、当該キャパシタとインダクタ56とが形成する共振回路の共振周波数が、交流電源58による交流電圧の周波数に実質的に等しくなるように構成されている。即ち、電力供給回路50は、電界共振方式のワイヤレス給電回路の一種である。
【0027】
図3に示すように、フィーダ20が正規の位置に取り付けられると、一対の受電電極52a、52bと一対の送電電極54a、54bは、所定の対向面積S1、S2及び所定の距離d1、d2で、互いに対向する。このとき、キャパシタは、所定のキャパシタンスC1を有し、キャパシタとインダクタ56とが形成する共振回路の共振周波数fresは、交流電源58による交流電圧の周波数f0に等しくなる。共振回路の共振周波数fresと交流電源の周波数f0とが等しくなると、キャパシタとインダクタ56との間で共振現象が発生し、一対の受電電極52a、52bと一対の送電電極54a、54bとが電界を介して電気的に結合される。その結果、
図4に示すように、電力供給回路50に電流が流れ、フィーダ20へ電力が供給される。
【0028】
一方、
図5に示すように、フィーダ20が正規の位置に取り付けられていないと、一対の受電電極52a、52bと一対の送電電極54a、54bとの対向面積S3、S4及び距離d3、d4は、前記した所定の対向面積S1、S2及び所定の距離d1、d2から相違する。その結果、それらのキャパシタンスC2も、前記した所定のキャパシタンスC1から相違する。この場合、キャパシタとインダクタ56とが形成する共振回路の共振周波数fresが、交流電源58による交流電圧の周波数f0に一致せず、前述した共振現象は発生しない。従って、
図6に示すように、電力供給回路50に電流は流れず、フィーダ20へ電力も供給されない。
【0029】
上述のように、フィーダ20が正規の位置に取り付けられていれば、電力供給回路50はフィーダ20へ電力をワイヤレスで供給することができ、フィーダ20が正規の位置に取り付けられていなければ、電力供給回路50はフィーダ20へ電力を供給することができない。そのことから、電力供給回路50がフィーダ20へ電力を供給しているのか否かを検出することで、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを検出することができる。この技術思想に基づき、本実施例のチップマウンタ10では、電力供給回路50がフィーダ20へ電力を供給しているのか否かを二つの方式で検出し、それによってフィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを検出するように構成されている。
【0030】
先ず、第1の方式について説明する。この方式では、電力供給回路50を流れる電流を検出する。
図4に示すように、電力供給回路50がフィーダ20へ電力を供給していれば、電力供給回路50において実質的に電流が流れる。一方、
図6に示すように、電力供給回路50がフィーダ20へ電力を供給していなければ、電力供給回路50において実質的に電流は流れない。そのことから、電力供給回路50を流れる電流を監視することで、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することができる。
【0031】
上記の見地に基づき、本実施例のチップマウンタ10では、
図2、3、5に示すように、電力供給回路50を流れる電流を検出する電流検出器62と、電流検出器62に接続された判定ユニット64が設けられている。電流検出器62による検出値Iは、判定ユニット64へ入力される。判定ユニット64は、電流検出器62による検出値Iが、所定の閾値Ithよりも大きければ、フィーダ20が正規の位置へ取り付けられたと判定して、その旨を示す信号(OK)を出力する。一方、判定ユニット64は、電流検出器62による検出値Iが所定の閾値Ithよりも小さいときは、フィーダ20が正規の位置へ取り付けられていないと判定して、その旨を示す信号(NG)を出力する。判定ユニット64が出力した信号(OK/NG)は、チップマウンタ10のコントロールユニット(図示省略)へ送信される。ここで、電流に関する閾値Ithは、フィーダ20に必要とされる取付精度に応じて定めることができる。
【0032】
次に、第2の方式について説明する。この方式では、フィーダ20に発信機を設けておき、その発信機が送信する信号を受信する。発信機は、電力供給回路50によって供給された電力によって動作するように構成される。このような構成によると、電力供給回路50がフィーダ20へ電力を供給していれば、フィーダ20に設けられた発信機は信号を送信することができる。一方、電力供給回路50がフィーダ20へ電力を供給していなければ、フィーダ20に設けられた発信機は信号を発信することができない。そのことから、発信機による信号の有無に応じて、フィーダ20正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することができる。発信機は、電磁波(電波、光を含む)を出力するものでもよいし、音波(低周波音及び超音波を含む)を出力するものであってもよい。
【0033】
上記の見地に基づき、本実施例のチップマウンタ10では、
図2、3、5に示すように、フィーダ20に設けられた発光素子66と、フィーダパレット40に設けられ、発光素子66からの光を受光する受光素子68とが設けられている。発光素子66は、フィーダ20のコントローラ70に接続され、電力供給回路50によって供給された電力によって動作するように構成されている。フィーダ20が正規の位置に取り付けられると、発光素子66は発光し、その光は受光素子68によって受光される。受光素子68は、光を受光したときに、判定ユニット64へ所定の信号を出力する。判定ユニット64は、受光素子68からの信号の有無に基づいて、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することができる。
【0034】
以上のように、本実施例のチップマウンタ10では、電界共振方式を採用する電力供給回路50の特性を利用して、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを判定する。この場合、互いに対向する一組の受電電極52a及び送電電極54aと、互いに対向する他の一組の受電電極52a及び送電電極54aは、離れて配置されることが好ましい。加えて、
図2に示すように、本実施例のチップマウンタ10では、一組の受電電極52aと送電電極54aとが、フィーダパレット40の鉛直面42において対向するように配置されており、他の一組の受電電極52bと送電電極54bとは、フィーダパレット40の水平面44において対向するように配置されている。このような構成によると、一組の受電電極52aと送電電極54aが対向する対向(即ち、水平方向)と、他の一組の受電電極52bと送電電極54bが対向する対向(即ち、鉛直方向)とが互いに相違するので、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを、複数の方向から検出することができる。
【0035】
本実施例のチップマウンタ10では、上述した二つの方式が同時に採用されているが、二つの方式を同時に採用する必要は必ずしもなく、一方の方式のみを採用してもよい。即ち、
図7に示すように、発光素子66と受光素子68を設けることなく、電流検出器62のみを設けてもよい。あるいは、
図8に示すように、電流検出器62を設けることなく、発光素子66と受光素子68のみを設けてもよい。
【0036】
本明細書で説明した技術、特に、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを検出する技術は、フィーダ20に限られず、チップマウンタ10を構成する他のユニットにも適用することができる。具体的には、ヘッド30、XY搬送機構28、マークカメラ34、パーツカメラ22、ノズルステーション24、基板コンベア36、基板支持装置38、フィーダパレット40といった、チップマウンタ10に対して着脱可能なユニットが挙げられる。ここで、一部のチップマウンタでは、複数のフィーダをフィーダパレットと共に交換できるように、台車タイプのフィーダパレットが採用されている。本明細書で説明した技術は、そのようなフィーダパレットにも有効に採用することができる。また、フィーダ20は、テープフィーダに限られず、電子部品をトレイ上に収容するトレイフィーダ(トレイユニット)であってもよい。これらのユニットに本明細書で説明した技術を適用することで、これらのユニットに電力をワイヤレスで供給できるとともに、これらのユニットが正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することができる。
【0037】
加えて、本明細書では説明を省略したが、チップマウンタ10は、フラックスユニットや検査装置をさらに備えてもよい。ここで、フラックスユニットは、ノズル26に吸着された電子部品にフラックスを付するための装置である。また、検査装置は、ヘッド30に取り付けられるカメラを有し、電子部品が実装された回路基板100を撮影する装置である。検査装置がヘッド30に取り付けられると、チップマウンタ10は基板検査装置として機能する。チップマウンタ10がフラックスユニットや検査装置を備える場合は、フラックスユニットや検査装置にも本明細書で説明した構成を適用することができる。それにより、フラックスユニットや検査装置に電力をワイヤレスで供給できるとともに、フラックスユニットや検査装置が正規の位置に取り付けられているのか否かを判定することができる。
【0038】
さらに、本明細書で説明した技術は、チップマウンタ10に限らず、任意の装置に適用することができる。特に、フィーダ20が正規の位置に取り付けられているのか否かを検出する技術は、任意の装置を構成するユニットに好適に適用することができる。
【0039】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0040】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。