【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
<実施例1>
攪拌器、窒素注入装置、微粉注入装置、温度調節器、冷却器およびフィルタリングシステムを取り付けた50Lの反応器に窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)39,000gを入れた後、反応器の温度を25℃に合わせ、p−PDA(para-Phenylene Diamine)2,013.55g(18.62mol)を微粉注入装置を用いて投入する。その後、攪拌を行いながら溶解させ、この溶液を25℃に維持した。そして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)1,000gを用いて、反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解p−PDAを洗い落としながら溶液に溶解させた。この際、溶液の円滑かつ確実な溶解のために、反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、付加的な方法として、本発明のような商用化のための大きいスケールの反応器の場合は、その攪拌性能の限界により反応器の最低部位に未溶解物が存在する可能性が多いので、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させ、攪拌性能の死角ゾーンである反応器の最下端の攪拌性能を追加する。
【0061】
その後、前述のp−PDA完全溶解を確認した後、さらに反応器の温度を25℃に合わせ、BPDA(3,3’,4,4’-Biphenyltetracarboxylic Dianhydride)1,627.06g(5.53mol)を、微粉注入装置を用いて投入する。その後、攪拌を行いながら溶解させ、この溶液を25℃に維持した。そして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)2,000gを用いて、反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解BPDAを洗い落しながら溶液に溶解させる。反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させる。
【0062】
その後、前述のBPDA完全溶解を確認した後、さらに反応器の温度を25℃に合わせ、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)2,814.52g(12.90mol)を、微粉注入装置を用いて投入する。この際、PMDAは、前記の量を1回で投入してもよく、一定の時間間隔(10分〜3時間)をおいて2〜5回に分けて投入してもよい。
【0063】
好ましくは、最終投入量の約99wt%を先に投入し、一定の時間(30分〜1時間)反応の後、その粘度などから反応進行程度または重合度を間接テストした後、剰余量を0.5wt%ずつ段階別に投入する方法が有利である。
【0064】
各投入段階別にN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を用いて、反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解PMDAを洗い落としながら溶液に溶解させる。このシャワーリング過程の場合、PMDAの段階が2〜5番に該当するので、毎段階のシャワーリング過程時に消費されるN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)量の総量は1,500gとする。
【0065】
反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させる。
【0066】
最後に、前述の方法で重合された溶液に対して、ポアサイズ1μmのフィルターを用いて異物除去工程としてのフィルタリング工程を行う。本フィルタリング工程のフィルターのタイプ、材質および形態は特に限定されない。
【0067】
その後、24時間攪拌して粘度100poiseのポリアミド酸溶液(Mw=110,000)を得た。この際、ポリアミド酸溶液の粘度はブルックフィールド社のビスコメーターを用いて測定した値である。
【0068】
フレキシブルディスプレー用基材層または保護層に使用されることを模写し評価するために、得られたポリアミド酸溶液を真空脱泡した後、常温に冷却し、ステンレス板に60〜100μmの厚さにキャストして150℃の熱風で10分間乾燥させた後、450℃まで昇温して30分間加熱し、しかる後に、徐々に冷却して支持体から分離して厚さ10〜15μmのポリイミド膜を得た。
【0069】
<実施例2>
実施例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)3,288.28g(15.07mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)1,108.88g(3.77mol)に組成を変更して実施した。
【0070】
<実施例3>
実施例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)3,783.63g(17.35mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)567.08g(1.93mol)に組成を変更して実施した。
【0071】
<実施例4>
実施例1と同様にしたが、同スペックのフィルターでフィルタリングを2回に変更して実施した。
【0072】
<実施例5>
実施例1と同様にしたが、ポアサイズ0.5μmのフィルターでフィルタリングを変更実施した。
【0073】
<実施例6>
実施例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)2,360.98g(10.82mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)2,123.14g(7.22mol)に組成を変更して実施した。
【0074】
<参考例1>
攪拌器、窒素注入装置、微粉注入装置、温度調節器、冷却器およびフィルタリングシステムを取り付けた50Lの反応器に窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)39,000gを入れた後、反応器の温度を25℃に合わせ、p−PDA(para-Phenylene Diamine)2,013.55g(18.62mol)を、微粉注入装置を用いて投入する。その後、攪拌を行いながら溶解させ、この溶液を25℃に維持した。そして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)1,000gを用いて、反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解p−PDAを洗い落としながら溶液に溶解させた。この際、溶液の円滑かつ確実な溶解のために、反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、付加的な方法として、本発明のような商用化のための大きいスケールの反応器の場合は、その攪拌性能の限界により反応器の最低部位に未溶解物が存在する可能性が多いので、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させ、攪拌性能の死角ゾーンである反応器の最下端の攪拌性能を追加する。
【0075】
その後、前述のp−PDA完全溶解を確認した後、さらに反応器の温度を25℃に合わせ、BPDA(3,3’,4,4’-Biphenyltetracarboxylic Dianhydride)2,598.48g(8.83mol)を微粉注入装置を用いて投入する。その後、攪拌を行いながら溶解させ、この溶液を25℃に維持した。そして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)2,000gを用いて、反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解BPDAを洗い落しながら溶液に溶解させる。反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させる。
【0076】
その後、前述のBPDA完全溶解を確認した後、さらに反応器の温度を25℃に合わせ、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)1,926.38g(8.83mol)を、微粉注入装置を用いて投入する。この際、PMDAの場合、前記の量を1回で投入してもよく、一定の時間間隔(10分〜3時間)をおいて2〜5回に分けて投入してもよい。
【0077】
好ましくは、最終投入量の約99wt%を先に投入し、一定の時間(30分〜1時間)反応の後、その粘度などから反応進行程度または重合度を間接テストした後、剰余量を0.5wt%ずつ段階別に投入する方法が有利である。
【0078】
各投入段階別にN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を用いて、反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解PMDAを洗い落としながら溶液に溶解させる。このシャワーリング過程の場合、PMDAの段階が2〜5番に該当するので、毎段階のシャワーリング過程時に消費されるN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)量の総量は1,500gとする。
【0079】
反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させる。
【0080】
最後に、前述の方法で重合された溶液に対して、ポアサイズ1μmのフィルターを用いて異物除去工程としてのフィルタリング工程を行う。
【0081】
本フィルタリング工程のフィルターのタイプ、材質および形態は特に限定されない。
【0082】
その後、24時間攪拌して粘度100poiseのポリアミド酸溶液(Mw=110,000)を得た。この際、ポリアミド酸溶液の粘度はブルックフィールド社のビスコメーターを用いて測定した値である。
【0083】
フレキシブルディスプレー用基材層または保護層に使用されることを模写し評価するために、得られたポリアミド酸溶液を真空脱泡した後、常温に冷却し、ステンレス板に60〜100μmの厚さにキャストして150℃の熱風で10分間乾燥させた後、450℃まで昇温して30分間加熱し、しかる後に、徐々に冷却して支持体から分離して厚さ10〜15μmのポリイミド膜を得た。
【0084】
<参考例2>
参考例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)1,509.57g(6.92mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)3,054.38g(10.38mol)に組成を変更して実施した。
【0085】
<参考例3>
参考例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)1,109.48g(5.09mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)3,491.99g(11.87mol)に組成を変更して実施した。
【0086】
<参考例4>
参考例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)725.11g(3.32mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)3,912.39g(13.30mol)に組成を変更して実施した。
【0087】
<参考例5>
参考例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)355.57g(1.63mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)4,316.59g(14.67mol)に組成を変更して実施した。
【0088】
<参考例6>
実施例1と同様にしたが、フィルタリングを施さなかった。
【0089】
<参考例7>
実施例1と同様にしたが、ポアサイズ3μmのフィルターでフィルタリングを変更実施した。
【0090】
<参考例8>
実施例1と同様にしたが、p−PDA(para-Phenylene Diamine)の代わりに、APAB(2-(4-aminophenyl)-5-aminobenzoxazole)4,194.12g(18.62mol)に投入組成を変更して実施した。
【0091】
<参考例9>
実施例1と同様にしたが、p−PDA(para-Phenylene Diamine)の代わりに、ODA(3,3-Oxydianiline)2,013.55g(18.62mol)に投入組成を変更して実施した。
【0092】
<参考例10>
実施例1と同様にしたが、原料投入後、シャワーリング工程を施さなかった。
【0093】
<参考例11>
実施例1と同様にしたが、原料投入後、溶解過程中に不活性ガスバブル過程を施さなかった。
【0094】
(1)熱膨張率(Coefficient of Thermal Expansion)
熱膨張率の測定に先立ち、該当サンプルに対して450℃で10分間アニーリングを行った。熱膨張率の測定方法は、ポリイミドコーティング層サンプルの一部を幅4mm×長さ24mmに切ってTA社の熱機械分析装置(Thermal Mechanical Apparatus)を用いて熱膨張係数値(Coefficient of thermal expansion)を測定することにより実施した。サンプルを支持台にかけ、50mNの力を加えた後、窒素雰囲気中で50℃〜450℃まで5℃/minの昇温速度で加熱して熱膨張率を測定した。熱膨張率は50℃〜450℃の範囲内で小数点第一位まで求めた。単位は[ppm/℃」で表される。
【0095】
(2)熱分解温度
熱分解温度は、PerkinElmer社のTGA測定装置を用いて測定した。3mm×3mmのサイズにイミド膜を細切りにし、前処理および秤量されたFanにのせた後、110℃で30分間断熱処理し、常温に冷却した後、さらに600℃まで分当たり5℃の速度で加熱して重量減少を測定した。熱分解温度は、重量減少比率が最初ロードしたイミド膜の重量に対して1%となるように定めて計算した。
【0096】
(3)異物
異物分析は、製作された製品40g(370mm*470mmサイズのディスプレー製造の際に使用される量)をNMP[N−メチル−2−ピロリドン]で希釈する(製品40g+溶媒360g=総400g)。
【0097】
希釈された400gの溶液を真空を加えて0.5μmのフィルターでフィルタリングする。前記フィルターを約80℃のオーブンで乾燥させる。但し、この際に異物が追加流入しないように密封を最大限実施する。乾燥したフィルターに対して光学顕微鏡などを用いて異物の個数を数える。
【0098】
【表1】
上記物性評価の結果、本発明の実施例に係るポリアミド酸溶液は、イミド化およびコートするには問題がなかった。実施例1〜6に係るポリアミド酸溶液から得られるポリイミドコーティング層は、50〜450℃の温度範囲での熱膨張率測定結果が5ppm/℃以下であり且つ熱分解温度が500℃以上であるので、高温工程で優れた寸法安定性を確保しながらも揮発物質を誘発しないことを期待することができる。
【0099】
しかも、実施例1〜6に係るポリイミドコーティング層は、その異物の個数も30個以下であって、ディスプレー製造の際にそのディスプレーの物性低下や不良発生などをもたらさないことを期待することができる。
【0100】
これに対し、参考例1〜5乃至参考例8〜9に係るポリアミド酸溶液から形成されたポリイミドコーティング層は、満足な熱分解温度を有するが、熱膨張率が5ppm/℃を超えるので、実施例に係るポリアミド酸溶液に比べて表示素子の基材層または保護層の形成に使用するときにより最適性において劣ることが分かる。
【0101】
参考例6〜7に係るポリイミドコーティング層は、その異物の個数が30個超過であって、ディスプレー製造の際にそのディスプレーの物性低下や不良発生などをもたらす可能性が非常に大きいため、ディスプレー表示素子の基材層または保護層の形成に使用するときにより最適性において劣ることが分かる。
【0102】
したがって、ポリアミド酸溶液は、柔軟性が要求される表示素子用基材層または保護層にも適用可能であり、特に実施例に係るポリアミド酸溶液が最適であることが分かる。
【0103】
また、ポリアミド酸溶液から形成されたポリイミドコーティング層は、固定のために使用される支持板(金属箔、ガラス板など)に接着剤を使用する必要がないので、接着のための追加工程が発生しないため、工程の簡素化を図ることができることが分かる。
【0104】
また、実施例に係るポリアミド酸溶液を適用して表示素子を製造する場合、温度に大きく左右されないので、表示素子製造工程の設計が容易であることが分かる。