特許第5976839号(P5976839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976839
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】ポリアミド酸溶液
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   C08G73/10
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-549989(P2014-549989)
(86)(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公表番号】特表2015-503652(P2015-503652A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】KR2012011460
(87)【国際公開番号】WO2013100558
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年6月27日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0143786
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ホン キ−イル
(72)【発明者】
【氏名】ミン ウン−キ
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0105659(KR,A)
【文献】 国際公開第2011/108542(WO,A1)
【文献】 特開昭60−206639(JP,A)
【文献】 特開昭61−111359(JP,A)
【文献】 特開昭62−077921(JP,A)
【文献】 特開昭64−065132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00−73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアンヒドリド類としてのピロメリト酸無水物およびビフェニルテトラカルボン酸無水物であって、ビフェニルテトラカルボン酸無水物を芳香族ジアンヒドリド類の総量100モル%に対して10〜40モル%で含むものと、芳香族ジアミン類としてのp−フェニレンジアミンとの反応生成物たるポリアミド酸溶液であって、
ポリアミド酸溶液をステンレス板に60〜100μmの厚さにキャストして150℃の熱風で10分間乾燥させ、450℃まで昇温して30分間加熱した後、支持体から分離して得られたイミド化膜に対して、下記の熱膨張率測定方法で測定された50〜450℃の温度範囲での熱膨張率(Thermal Expansion Coefficient)が5ppm/℃以下であり、熱重量分析器による熱分解測定の際に重量減少比率が1%に到達する時点の温度として定義される熱分解温度が500℃以上である、表示素子の基材層または保護層形成用ポリアミド酸溶液。
前記熱膨張率の測定は、イミド化膜サンプルに対して450℃で10分間アニーリングを行った後、このイミド化膜サンプルの一部を幅4mm×長さ24mmに切ってTA社の熱機械分析装置(Thermal Mechanical Apparatus)を用いて測定することにより行う。この際サンプルを支持台にかけ、50mNの力を加えた後、窒素雰囲気中で50℃から450℃まで5℃/minの昇温速度で加熱して熱膨張率を測定し50℃〜450℃の範囲内で小数点第一位まで求める
【請求項2】
ブルックフィールド・ビスコメーターを用いて測定された粘度が50〜5,000poiseである、請求項1に記載の表示素子の基材層または保護層形成用ポリアミド酸溶液。
【請求項3】
反応生成物は、製造スケールが一度重合の際に5L以上である、請求項1に記載の表示素子の基材層または保護層形成用ポリアミド酸溶液の製造方法
【請求項4】
反応生成物が、反応溶媒の必要量を分割投入することにより、粉末状の芳香族ジアンヒドリド類または芳香族ジアミン類原料の投入後に反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解粉末状の原料を洗い落としながら溶液に溶解させるシャワーリング工程を含んで得られたものである、請求項に記載の表示素子の基材層または保護層形成用ポリアミド酸溶液の製造方法
【請求項5】
反応生成物が、シャワーリング工程後に反応器の温度を40〜80℃程度昇温して攪拌を行う工程を含んで得られたものである、請求項に記載の表示素子の基材層または保護層形成用ポリアミド酸溶液の製造方法
【請求項6】
反応生成物が、原料投入後の溶解過程中に反応器の最下端に不活性ガスを吹き込んでバブリングするバブリング工程を含んで得られたものである、請求項のいずれか1項に記載の表示素子の基材層または保護層形成用ポリアミド酸溶液の製造方法
【請求項7】
請求項1のポリアミド酸溶液から形成されたポリイミドコーティング層。
【請求項8】
請求項のポリイミドコーティング層を保護層として含む表示素子。
【請求項9】
請求項のポリイミドコーティング層を基材層として含む表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド酸溶液およびその製造方法に係り、特に、各種表示素子の基材層または保護層に使用することが可能なポリアミド酸溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
いつどこでも情報に接することが可能なユビキタス(ubiquitous)時代に向けて、コンピュータ、通信機器、情報家電機器が融合または複合しているデジタルコンバージェンス(digital convergence)が急速に進んでいる。このため、電子情報機器と人間のインターフェイスの役目をするディスプレー(display)の重要性が益々高まっている。これとともに、高解像度、高輝度および高鮮明度を実現した画像の情報に対する要求がさらに強まっており、これにふさわしい大画面の液晶ディスプレー(liquid crystal display)やプラズマディスプレー(plasma display))、有機発光ダイオード(OLED)などが競合している。
【0003】
最近は、携帯を目的とする次世代ディスプレーの一つである、撓んだり曲がったりすることが可能なフレキシブルディスプレーが注目を浴びている。このようなフレキシブルタイプのディスプレーを実現するためには、既存のガラス基板の代わりに、柔軟性を持つ新しい素材の基板が求められる。
【0004】
現在、フレキシブルディスプレーの形態は、受動型または能動型駆動素子をベースとしてLCD、OLED、EPDなどの方式に発展している。これらはフレキシブルな高分子素材の基板上に受動型または能動型駆動素子を構造物としてのせてディスプレーを駆動する方式であり、漸次、受動型よりは高精度の画素実現が可能な能動型へ関心が移っている。特に、能動型フレキシブルディスプレーは、高分子素材の基板上にゲート、絶縁膜、ソース、ドレインを構造的に積層して形成し、最終的に電極と表示素子を形成することによりディスプレーの単位素子を構成する。ところが、能動型ディスプレー素子の製作の際には大部分の製造工程が高温で行われるので、耐熱性のない高分子基板素材を使用した場合は、素子製作の際に高分子素子基板の寸法が変形し易く、熱的変性を起こすため、回路パターンのアライメントの整合性がとれず、高分子基板の表面特性に変化を生じさせるため、ディスプレー用基板への使用には問題がある。
【0005】
よって、フレキシブルディスプレー用として様々な高耐熱プラスチック素材の開発が試みられている。その代表的な耐熱性プラスチック素材としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)などが挙げられるが、これらプラスチック素材も、ガラス転移温度(Tg)が300℃未満であり、Tgまでの熱膨張率が20〜60ppm/℃であるので、300℃以上の高温での寸法安定性が良くなく、これらのプラスチック素材から素子を製作する場合、ディスプレーの品質に良くない影響を及ぼす可能性がある(John Scheirs and Timothy E. Long, Modern Polyesters: Chemistry and Technology of Polyesters and Copolyesters, 2004; and Sumilite FS-1300, Sumitomo Bakelite Catalogue)。
【0006】
また、前記素子のプラスチックフィルムを使用した場合は、自体に支持力がないので、金属箔またはガラス板上に接着させてディスプレー素子を製作しなければならず、この場合、接着剤を用いてプラスチックフィルムと金属箔またはガラス板との接着および剥離工程がさらに発生するという欠点があり、接着が円滑に行われなければ平滑度に問題が生ずるおそれもある。
【0007】
このような点を考慮に入れ、本出願人は、低い熱膨張率を有するとともに優れた剛性および弾性率を有するため、表示素子の基材層または保護層に適用できるポリアミド酸溶液について既に特許出願したことがある(韓国特許公開第10−2010−0080301号)。ところが、ここでは十分に低い程度の熱膨張率と高温での寸法安定性を満たしていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、500℃以上の高温でも寸法安定性に優れたフレキシブルディスプレー用高分子素材であって、優れた耐熱性および低い熱膨張率を有する表示素子の基材層または保護層に使用できる高分子素材を提供しようとする。
【0009】
また、本発明で提供しようとするポリアミド酸は液状として提供されるが、これは、フィルムとして提供される場合、フィルム自体には形態を維持することが可能な支持力がないので、金属箔またはガラス板上に接着させてディスプレー素子を製作しなければならない。この場合、接着剤を用いて高分子フィルムと金属箔またはガラス板との接着し、および剥離する工程がさらに発生するという欠点があり、接着が円滑でなければ平滑度に問題が生ずるおそれがあるためである。そして、現在のディスプレー素子製作工程は、その工程温度が450℃であって高温工程で行われる。ところが、この際、前述したような金属箔またはガラス板と接着する方式を取る場合、その接着剤として前述の高温向けの接着剤が存在しないので、前述したような方式は実工程には適さない。
【0010】
したがって、本発明で提供しようとするポリアミド酸は、フィルム状ではなく、液状として提供され、前処理されたセラミック支持体上またはガラス板など(その他の支持体でも構わない)に塗布されて乾燥した後、イミド化膜を形成することになる。これは、前処理されたセラミック支持体上またはガラス板など(その他の支持体でも構わない)において形態を維持し表示素子を製造するための工程を容易にするためである。
【0011】
また、本発明は、高い熱分解温度および低い熱膨張率を有するプラスチック素材から提供されるために、その素材の商用化のための製造方法を提供しようとする。
【0012】
商用化のための製造方法とは、実験室スケールでの製造ではなく、実際のディスプレー素子製作工程に適用可能なスケールでの製造方法をいう。本発明では、50L(溶液基準)のスケールを使用したが、そのスケールの基準は5L(溶液基準)以上であれば特に限定されない。
【0013】
商用化のためにはポリアミド酸製造工程などから発生しうる異物などに対しても特化されなければならない。その理由は、ディスプレー素子製作工程上で異物の存在は製作失敗または不良の発生原因として作用し、その製作収率などに莫大な影響を及ぼすためである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明は、好ましい第1実施形態として、芳香族ジアンヒドリド類と芳香族ジアミン類との反応生成物であり、イミド化膜を形成したときに50〜450℃の温度範囲で測定された熱膨張率(Thermal Expansion Coefficient)が5ppm/℃以下であり、熱重量分析器による熱分解測定の際に重量減少比率が1%に到達する時点の温度として定義される熱分解温度が500℃以上である、表示素子の基材層または保護層形成用ポリアミド酸溶液を提供する。
【0015】
前記実施形態によるポリアミド酸溶液は、50〜5,000poiseの粘度を有してもよい。
【0016】
前記実施形態において、反応生成物は、芳香族環の間に−O−、−CO−、−NHCO−、−S−、−SO−、−CO−O−、−CH−および−C(CH−鎖を含まない硬性芳香族ジアンヒドリド類と硬性芳香族ジアミン類の反応生成物であることが好ましい。
【0017】
具体的な一実施形態において、反応生成物は、芳香族ジアミン類としてのp−フェニレンジアミンと、芳香族ジアンヒドリド類としてのピロメリト酸無水物およびビフェニルテトラカルボン酸無水物との反応生成物であり、好ましい一実施形態において、反応生成物は、ビフェニルテトラカルボン酸無水物を全芳香族ジアンヒドリド類に対して最大40モル%で含むものである。
【0018】
本発明の一実施形態において、反応生成物は、製造スケールが1回重合の際に5L以上である、商業的な考慮を伴う。
【0019】
製造方法的な考慮の観点から、本発明の一実施形態において、反応生成物は反応溶媒の必要量を分割投入し、粉末状の芳香族ジアンヒドリド類および芳香族ジアミン類原料の投入後に反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解粉末状の原料を洗い落としながら溶液に溶解させるシャワーリング工程を含んで得られたものであってもよい。
【0020】
さらに、反応生成物は、シャワーリング工程後に反応器の温度を40〜80℃程度昇温して攪拌を行う工程を含んで得られたものであってもよい。
【0021】
また、別途または追加的に、反応生成物は、原料投入後の溶解過程中に反応器の最下端に不活性ガスを吹き込んでバブリングする工程を含んで得られたものであってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態では、前述した一実施形態から得られたポリアミド酸溶液から形成されたポリイミドコーティング層を提供する。
【0023】
本発明の例示的な一実施形態では、このようなポリイミドコーティング層を保護層として含む表示素子、またはそのポリイミドコーティング層を基材層として含む表示素子を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0025】
本発明は、好適な一実施形態として、芳香族ジアンヒドリドと芳香族ジアミンとの反応生成物であり、イミド化膜形成後の50〜450℃の温度範囲での熱膨張率(Thermal Expansion Coefficient)が5ppm/℃以下であり、熱分解温度が500℃以上である、ポリアミド酸溶液を提供する。ここで、熱分解温度は、熱重量分析器による熱分解測定の際に重量減少比率が1%に到達する時点の温度、すなわちTd1%として定義される。
【0026】
前記温度範囲内での熱膨張率および熱分解温度は、ポリアミド酸溶液を塗布した後にイミド化したイミド化膜を表示素子の基材層または保護層として適用するとき、表示素子の製造工程を介しての熱的環境変化を模写したものであって、高温での寸法安定性および熱分解安定性を考慮したものである。
【0027】
表示素子において、基材層は、表示素子製造工程の過程上で高温環境に反復的に晒されるが、この際、熱膨張が小さいほど表示素子の製造に有利であり、かつ製造工程を容易に設計するためには工程温度の範囲内で揮発性分解物質を誘発してはならない。
【0028】
すなわち、電極および駆動素子などを製造する工程において、高分子素材の熱膨張がセラミック支持体および駆動素子の熱膨張に比べて大きい場合、回路作業が不可能となり、表示装置が撓むことになり、駆動素子などとのミスアライメント(Misalignment)が発生することを考慮するとき、ポリアミド酸溶液は、イミド化膜を形成したときに50〜450℃で測定された熱膨張率が5ppm/℃以下であることが好ましい。また、高温工程を経て高分子素子が熱分解による揮発性有機物を生成させる場合、製造設備などを汚染させるので、製造工程自体が実施不可能になるおそれもある。よって、高温での素子製作を可能とするためには、熱分解温度、特に少量の重量減少を前提とする熱分解温度が高い高分子素材を使用しなければならない。
【0029】
高分子素材自体に異物が多量に存在する場合、表示素子製造工程中に回路作業が不可能となるおそれもあり、作業が可能であってもその異物部位が不良として作用して最終形態としてのディスプレーの不良につながるおそれもある。
【0030】
したがって、高分子素材自体に製造工程中に異物を減らす或いは無くすことが可能な特別な組成、条件および工程が必ず伴うべきである。
【0031】
このようなポリアミド酸溶液を提供するために、ポリアミド酸溶液は、芳香族環の間に軟性鎖(Flexible chain)が存在しないジアンヒドリドとジアミン単量体(以下、硬性単量体)の重合から得られたものであってもよい。ここで、硬性単量体とは、具体的には芳香族環の間に−O−、−CO−、−NHCO−、−S−、−SO−、−CO−O−、−CH−および−C(CH−鎖、すなわち軟性鎖が存在していない単量体として定義できる。
【0032】
例えば、ジアンヒドリドとしては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-Biphenyltetracarboxylic Dianhydride、BPDA)、ピロメリト酸二無水物(Pyromellitic dianhydride; 1,2,4,5-benzentetracarboxylic dianhydride、PMDA)などがあり、ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン(para-Phenylene Diamine、pPDA)、アミノフェニルアミノベンゾオサキゾール(2-(4-aminophenyl)-5-aminobenzoxazole、APAB)などがあるが、好ましくはp−フェニレンジアミンである。
【0033】
通常、ジアミンとジアンヒドリドは、1:0.9〜0.9:1のモル比で使用でき、上述した目的を満たすための単量体モル比の範囲内であれば、ジアンヒドリドとジアミンをそれぞれ1種使用してもよく、ジアンヒドリドを少なくとも2種使用し、ジアミンを少なくとも1種使用してもよく、ジアミンを少なくとも2種使用し、ジアンヒドリドを少なくとも1種使用してもよい。特に、熱膨張係数を低め且つ熱分解温度を高めるためには、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を全芳香族ジアンヒドリド類に対して最大40モル%で含むことが好ましい。
【0034】
ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を重合するとき、有機溶媒中にジアンヒドリド成分とジアミン成分をほぼ同モル量となるようにして溶解させて反応させることにより、ポリアミド酸溶液を製造することができる。
【0035】
反応時の条件は特に限定されないが、反応温度は−20〜80℃が好ましく、反応時間は2〜48時間が好ましい。また、反応の際にアルゴンや窒素などの不活性雰囲気であることがより好ましい。
【0036】
前記ポリアミド酸溶液の重合反応のための有機溶媒は、ポリアミド酸を溶解させる溶媒であれば特に限定されない。公知の反応溶媒として、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトンおよびジエチルアセテートの中から選ばれた少なくとも1種の極性溶媒を使用する。この他にも、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどの低沸点溶液またはγ−ブチロラクトンなどの低吸収性溶媒を使用することができる。
【0037】
前記有機溶媒の含量に対して特に限定されないが、適切なポリアミド酸溶液の分子量および粘度を得るために、有機溶媒は全ポリアミド酸溶液に対して50〜95重量%が好ましく、さらに好ましくは70〜90重量%である。
【0038】
このように製造されたポリアミド酸溶液をイミド化して製造されたポリイミド樹脂は、熱安定性を考慮して、ガラス転移温度が300℃以上であることが好ましい。
【0039】
すなわち、ポリイミド系高分子は、公知の高耐熱素材であって、高いTgおよび低い熱膨張率を示すため、400℃以上の温度でTFTなどを製作することができるので、ポリアミド酸溶液を塗布および硬化させると、パターン形成に有利であり、接着剤を使用しなくても支持体上に固定させることができるから、容易に平滑度を維持することができ、結果としてフレキシブルディスプレーの実現に非常に有利な素材である。
【0040】
しかも、ポリアミド酸溶液を用いてポリイミドコーティング層に製造するとき、ポリイミドコーティング層の表面特性、熱伝導性などの様々な特性を改善させる目的でポリアミド酸溶液に充填剤を添加する既存発明の場合、このような充填剤がディスプレー素子工程中に不良として作用する可能性があり、最終的にディスプレーの不良または収率低下をもたらすおそれがあるので、本発明ではいかなる充填剤も添加しないと限定する。
【0041】
前述したように充填剤を添加しなくても、ポリアミド酸製造工程中などにおいて異物などが発生する或いは入り込むおそれがあるので、その異物の解決方案としてはフィルタリング工程を経ることなどが挙げられる。
【0042】
そのフィルタリング工程は、通常の工程で行われ、特に限定されない。但し、そのフィルターは、必ずポアサイズ10μm以下のものを使用しなければならず、好ましくは1μm以下のものを使用する。
【0043】
ポリアミド酸溶液からイミド化膜を製造する方法は、フレキシブルディスプレー製造工程を模写した方法を使用することができるが、ポリアミド酸溶液を支持体に均一に塗布した後にイミド化する方法を挙げることができる。すなわち、ディスプレー素子製造工程は、一般に、基材層の上面に電極および表示部などが順次積層される順で行われるので、ポリアミド酸溶液を基材層に適用する一方法としては、別途の支持体上にポリアミド酸溶液をコートし、イミド化してイミド化膜を製造し、イミド化膜上に通常の方法による表示素子積層工程を行った後、最終的に支持体を剥離する方法を挙げることができる。この場合は、フィルム形態のプラスチック素材を基板に適用した場合に比べて、基材層の平坦性を高める観点から有利である。
【0044】
しかも、フィルム形態であれば、支持体と追加の接着層が存在しなければならないが、現在のディスプレー素子工程における高温で使用可能な接着層は未だ存在しないので、本発明で提示する支持体にポリアミド酸溶液を塗布する方式が唯一の方法である。
【0045】
また、ポリアミド酸溶液を表示素子に積層された部品上に塗布してイミド化したポリイミドコーティング層を、保護層として適用することもできる。
【0046】
この際、塗布作業性とコーティング均一性を考慮し、ポリアミド酸溶液の粘度は50〜5,000poiseであることが好ましい。
【0047】
この粘度は、塗布方式および要求されるイミド化膜の厚さなどによって決定できる。
【0048】
また、本発明は、商用化が可能なスケールの製造方法として、バッチタイプ(Batch Type)で5L(溶液基準)以上を一度で重合することが可能なスケールの製造方法を提示する。
【0049】
このような大きいスケール(5L以上)の場合、それ以下の実験室スケールの場合とは異なり、反応器および反応方法において特別な方式が要求される。最も大きく違うことが粉末状原料の溶解である。大きいスケールの反応器では、通常、その攪拌能力の限界により原料の溶解が円滑ではない。よって、本発明ではこのようなことに対する解決策も提示する。
【0050】
本発明では、反応溶媒の必要量を初期投入の際に全て投入せず、初期には一定の量を除いた量のみを投入する。そして、全ての粉末状原料の投入後の溶液の円滑かつ確実な溶解のために、各粉末状原料の投入後に反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解粉末状の原料を洗い落としながら溶液に溶解させる。この過程をシャワーリング工程と称する。そして、各シャワーリング工程後に追加の方法として前記反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、本発明のような商用化のための大きいスケールの反応器の場合、その攪拌性能の限界により反応器の最低部位に未溶解物が存在する可能性が多いので、付加的な方法として、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させ、攪拌性能の死角ゾーンである反応器の最下端の攪拌性能を追加する。これをバブリング工程という。
【0051】
この際の不活性ガスの投入量はその投入バルブの形態および溶液の粘度によって異なる。
【0052】
前述したような反応器の昇温、シャワーリング工程および不活性ガスバブリング工程などの溶解方法は、溶液の溶解状態に応じて全て行われてもよく、1つ以上の方法のみ使用されてもよく、全て使用されてもよい。
【0053】
ところが、好ましくは反応器の昇温、シャワーリング工程および不活性ガスバブリング工程などの溶解方法を全て使用することが有利である。
【0054】
こうして得られたポリアミド酸溶液は、溶液40gを基準とするとき、0.5μm以上の異物が30個以下であって、異物が殆どない。ここで、異物とは、光学顕微鏡(倍率約50〜500倍)を介して肉眼で測定された異物である。
【0055】
このようなポリアミド酸溶液をコートしてイミド化することによりポリイミドコーティング層を形成することができるが、イミド化膜形成の際に適用可能なイミド化法としては、熱イミド化法、化学イミド化法、または熱イミド化法と化学イミド化法の組み合わせを適用することができる。化学イミド化法は、ポリアミド酸溶液に酢酸無水物などの酸無水物で代表される脱水剤と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジンなどの第3級アミン類などで代表されるイミド化触媒を投入してイミド化する方法である。熱イミド化法、または熱イミド化法と化学イミド化法の組み合わせを使用する場合、ポリアミド酸溶液の加熱条件はポリアミド酸溶液の種類、要求されるイミド化膜の厚さなどによって変動できる。
【0056】
熱イミド化法と化学イミド化法の組み合わせを使用する場合、イミド化膜形成方法の例をより具体的に説明すると、ポリアミド酸溶液に脱水剤およびイミド化触媒を投入して別途の支持体上にキャストした後、80〜200℃、好ましくは100〜180℃で加熱して脱水剤およびイミド化触媒を活性化することにより、部分的に硬化および乾燥させた後、200〜400℃で1〜120分間加熱することにより、イミド化膜を得ることができる。
【0057】
このようなイミド化膜上に前述の方法で表示素子部品などを順次積層することもでき、ポリアミド酸溶液に脱水剤およびイミド化触媒を投入した溶液を表示素子部品上に塗布した後にイミド化膜を形成して保護層として適用することもできる。
【0058】
上述したように、ポリアミド酸溶液を表示素子に適用することにより、熱的安定性に優れるうえ、適切な柔軟性および機械的強度を有する表示素子を提供することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
<実施例1>
攪拌器、窒素注入装置、微粉注入装置、温度調節器、冷却器およびフィルタリングシステムを取り付けた50Lの反応器に窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)39,000gを入れた後、反応器の温度を25℃に合わせ、p−PDA(para-Phenylene Diamine)2,013.55g(18.62mol)を微粉注入装置を用いて投入する。その後、攪拌を行いながら溶解させ、この溶液を25℃に維持した。そして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)1,000gを用いて、反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解p−PDAを洗い落としながら溶液に溶解させた。この際、溶液の円滑かつ確実な溶解のために、反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、付加的な方法として、本発明のような商用化のための大きいスケールの反応器の場合は、その攪拌性能の限界により反応器の最低部位に未溶解物が存在する可能性が多いので、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させ、攪拌性能の死角ゾーンである反応器の最下端の攪拌性能を追加する。
【0061】
その後、前述のp−PDA完全溶解を確認した後、さらに反応器の温度を25℃に合わせ、BPDA(3,3’,4,4’-Biphenyltetracarboxylic Dianhydride)1,627.06g(5.53mol)を、微粉注入装置を用いて投入する。その後、攪拌を行いながら溶解させ、この溶液を25℃に維持した。そして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)2,000gを用いて、反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解BPDAを洗い落しながら溶液に溶解させる。反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させる。
【0062】
その後、前述のBPDA完全溶解を確認した後、さらに反応器の温度を25℃に合わせ、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)2,814.52g(12.90mol)を、微粉注入装置を用いて投入する。この際、PMDAは、前記の量を1回で投入してもよく、一定の時間間隔(10分〜3時間)をおいて2〜5回に分けて投入してもよい。
【0063】
好ましくは、最終投入量の約99wt%を先に投入し、一定の時間(30分〜1時間)反応の後、その粘度などから反応進行程度または重合度を間接テストした後、剰余量を0.5wt%ずつ段階別に投入する方法が有利である。
【0064】
各投入段階別にN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を用いて、反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解PMDAを洗い落としながら溶液に溶解させる。このシャワーリング過程の場合、PMDAの段階が2〜5番に該当するので、毎段階のシャワーリング過程時に消費されるN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)量の総量は1,500gとする。
【0065】
反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させる。
【0066】
最後に、前述の方法で重合された溶液に対して、ポアサイズ1μmのフィルターを用いて異物除去工程としてのフィルタリング工程を行う。本フィルタリング工程のフィルターのタイプ、材質および形態は特に限定されない。
【0067】
その後、24時間攪拌して粘度100poiseのポリアミド酸溶液(Mw=110,000)を得た。この際、ポリアミド酸溶液の粘度はブルックフィールド社のビスコメーターを用いて測定した値である。
【0068】
フレキシブルディスプレー用基材層または保護層に使用されることを模写し評価するために、得られたポリアミド酸溶液を真空脱泡した後、常温に冷却し、ステンレス板に60〜100μmの厚さにキャストして150℃の熱風で10分間乾燥させた後、450℃まで昇温して30分間加熱し、しかる後に、徐々に冷却して支持体から分離して厚さ10〜15μmのポリイミド膜を得た。
【0069】
<実施例2>
実施例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)3,288.28g(15.07mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)1,108.88g(3.77mol)に組成を変更して実施した。
【0070】
<実施例3>
実施例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)3,783.63g(17.35mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)567.08g(1.93mol)に組成を変更して実施した。
【0071】
<実施例4>
実施例1と同様にしたが、同スペックのフィルターでフィルタリングを2回に変更して実施した。
【0072】
<実施例5>
実施例1と同様にしたが、ポアサイズ0.5μmのフィルターでフィルタリングを変更実施した。
【0073】
<実施例6>
実施例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)2,360.98g(10.82mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)2,123.14g(7.22mol)に組成を変更して実施した。
【0074】
<参考例1>
攪拌器、窒素注入装置、微粉注入装置、温度調節器、冷却器およびフィルタリングシステムを取り付けた50Lの反応器に窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)39,000gを入れた後、反応器の温度を25℃に合わせ、p−PDA(para-Phenylene Diamine)2,013.55g(18.62mol)を、微粉注入装置を用いて投入する。その後、攪拌を行いながら溶解させ、この溶液を25℃に維持した。そして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)1,000gを用いて、反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解p−PDAを洗い落としながら溶液に溶解させた。この際、溶液の円滑かつ確実な溶解のために、反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、付加的な方法として、本発明のような商用化のための大きいスケールの反応器の場合は、その攪拌性能の限界により反応器の最低部位に未溶解物が存在する可能性が多いので、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させ、攪拌性能の死角ゾーンである反応器の最下端の攪拌性能を追加する。
【0075】
その後、前述のp−PDA完全溶解を確認した後、さらに反応器の温度を25℃に合わせ、BPDA(3,3’,4,4’-Biphenyltetracarboxylic Dianhydride)2,598.48g(8.83mol)を微粉注入装置を用いて投入する。その後、攪拌を行いながら溶解させ、この溶液を25℃に維持した。そして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)2,000gを用いて、反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解BPDAを洗い落しながら溶液に溶解させる。反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させる。
【0076】
その後、前述のBPDA完全溶解を確認した後、さらに反応器の温度を25℃に合わせ、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)1,926.38g(8.83mol)を、微粉注入装置を用いて投入する。この際、PMDAの場合、前記の量を1回で投入してもよく、一定の時間間隔(10分〜3時間)をおいて2〜5回に分けて投入してもよい。
【0077】
好ましくは、最終投入量の約99wt%を先に投入し、一定の時間(30分〜1時間)反応の後、その粘度などから反応進行程度または重合度を間接テストした後、剰余量を0.5wt%ずつ段階別に投入する方法が有利である。
【0078】
各投入段階別にN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を用いて、反応器の壁面および攪拌器などに残存している未溶解PMDAを洗い落としながら溶液に溶解させる。このシャワーリング過程の場合、PMDAの段階が2〜5番に該当するので、毎段階のシャワーリング過程時に消費されるN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)量の総量は1,500gとする。
【0079】
反応器の温度を40〜80℃程度に昇温して攪拌を行う。また、反応器の最下端にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込んで反応器内の溶液にバブルと共に投入させる。
【0080】
最後に、前述の方法で重合された溶液に対して、ポアサイズ1μmのフィルターを用いて異物除去工程としてのフィルタリング工程を行う。
【0081】
本フィルタリング工程のフィルターのタイプ、材質および形態は特に限定されない。
【0082】
その後、24時間攪拌して粘度100poiseのポリアミド酸溶液(Mw=110,000)を得た。この際、ポリアミド酸溶液の粘度はブルックフィールド社のビスコメーターを用いて測定した値である。
【0083】
フレキシブルディスプレー用基材層または保護層に使用されることを模写し評価するために、得られたポリアミド酸溶液を真空脱泡した後、常温に冷却し、ステンレス板に60〜100μmの厚さにキャストして150℃の熱風で10分間乾燥させた後、450℃まで昇温して30分間加熱し、しかる後に、徐々に冷却して支持体から分離して厚さ10〜15μmのポリイミド膜を得た。
【0084】
<参考例2>
参考例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)1,509.57g(6.92mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)3,054.38g(10.38mol)に組成を変更して実施した。
【0085】
<参考例3>
参考例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)1,109.48g(5.09mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)3,491.99g(11.87mol)に組成を変更して実施した。
【0086】
<参考例4>
参考例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)725.11g(3.32mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)3,912.39g(13.30mol)に組成を変更して実施した。
【0087】
<参考例5>
参考例1と同様にしたが、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)355.57g(1.63mol)とBPDA(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic Dianhydride)4,316.59g(14.67mol)に組成を変更して実施した。
【0088】
<参考例6>
実施例1と同様にしたが、フィルタリングを施さなかった。
【0089】
<参考例7>
実施例1と同様にしたが、ポアサイズ3μmのフィルターでフィルタリングを変更実施した。
【0090】
<参考例8>
実施例1と同様にしたが、p−PDA(para-Phenylene Diamine)の代わりに、APAB(2-(4-aminophenyl)-5-aminobenzoxazole)4,194.12g(18.62mol)に投入組成を変更して実施した。
【0091】
<参考例9>
実施例1と同様にしたが、p−PDA(para-Phenylene Diamine)の代わりに、ODA(3,3-Oxydianiline)2,013.55g(18.62mol)に投入組成を変更して実施した。
【0092】
<参考例10>
実施例1と同様にしたが、原料投入後、シャワーリング工程を施さなかった。
【0093】
<参考例11>
実施例1と同様にしたが、原料投入後、溶解過程中に不活性ガスバブル過程を施さなかった。
【0094】
(1)熱膨張率(Coefficient of Thermal Expansion)
熱膨張率の測定に先立ち、該当サンプルに対して450℃で10分間アニーリングを行った。熱膨張率の測定方法は、ポリイミドコーティング層サンプルの一部を幅4mm×長さ24mmに切ってTA社の熱機械分析装置(Thermal Mechanical Apparatus)を用いて熱膨張係数値(Coefficient of thermal expansion)を測定することにより実施した。サンプルを支持台にかけ、50mNの力を加えた後、窒素雰囲気中で50℃〜450℃まで5℃/minの昇温速度で加熱して熱膨張率を測定した。熱膨張率は50℃〜450℃の範囲内で小数点第一位まで求めた。単位は[ppm/℃」で表される。
【0095】
(2)熱分解温度
熱分解温度は、PerkinElmer社のTGA測定装置を用いて測定した。3mm×3mmのサイズにイミド膜を細切りにし、前処理および秤量されたFanにのせた後、110℃で30分間断熱処理し、常温に冷却した後、さらに600℃まで分当たり5℃の速度で加熱して重量減少を測定した。熱分解温度は、重量減少比率が最初ロードしたイミド膜の重量に対して1%となるように定めて計算した。
【0096】
(3)異物
異物分析は、製作された製品40g(370mm*470mmサイズのディスプレー製造の際に使用される量)をNMP[N−メチル−2−ピロリドン]で希釈する(製品40g+溶媒360g=総400g)。
【0097】
希釈された400gの溶液を真空を加えて0.5μmのフィルターでフィルタリングする。前記フィルターを約80℃のオーブンで乾燥させる。但し、この際に異物が追加流入しないように密封を最大限実施する。乾燥したフィルターに対して光学顕微鏡などを用いて異物の個数を数える。
【0098】
【表1】
上記物性評価の結果、本発明の実施例に係るポリアミド酸溶液は、イミド化およびコートするには問題がなかった。実施例1〜6に係るポリアミド酸溶液から得られるポリイミドコーティング層は、50〜450℃の温度範囲での熱膨張率測定結果が5ppm/℃以下であり且つ熱分解温度が500℃以上であるので、高温工程で優れた寸法安定性を確保しながらも揮発物質を誘発しないことを期待することができる。
【0099】
しかも、実施例1〜6に係るポリイミドコーティング層は、その異物の個数も30個以下であって、ディスプレー製造の際にそのディスプレーの物性低下や不良発生などをもたらさないことを期待することができる。
【0100】
これに対し、参考例1〜5乃至参考例8〜9に係るポリアミド酸溶液から形成されたポリイミドコーティング層は、満足な熱分解温度を有するが、熱膨張率が5ppm/℃を超えるので、実施例に係るポリアミド酸溶液に比べて表示素子の基材層または保護層の形成に使用するときにより最適性において劣ることが分かる。
【0101】
参考例6〜7に係るポリイミドコーティング層は、その異物の個数が30個超過であって、ディスプレー製造の際にそのディスプレーの物性低下や不良発生などをもたらす可能性が非常に大きいため、ディスプレー表示素子の基材層または保護層の形成に使用するときにより最適性において劣ることが分かる。
【0102】
したがって、ポリアミド酸溶液は、柔軟性が要求される表示素子用基材層または保護層にも適用可能であり、特に実施例に係るポリアミド酸溶液が最適であることが分かる。
【0103】
また、ポリアミド酸溶液から形成されたポリイミドコーティング層は、固定のために使用される支持板(金属箔、ガラス板など)に接着剤を使用する必要がないので、接着のための追加工程が発生しないため、工程の簡素化を図ることができることが分かる。
【0104】
また、実施例に係るポリアミド酸溶液を適用して表示素子を製造する場合、温度に大きく左右されないので、表示素子製造工程の設計が容易であることが分かる。